和「ムギ、来たのね。まずはおめでとうと言わせてもらうわ」
和「この前のデートで梓ちゃんと新たな段階に踏み込んだそうじゃない」
紬「和ちゃんのおかげよ……いいデートスポットを教えてもらっちゃったし」
和「図書館デートでいい雰囲気になれたのは、ひとえにムギの努力の賜物だと思うわ…」
紬「そうかしら? 和ちゃんは何か進展あった?」
和「ええ。実は……///」
紬「むむむっ、その顔っ! すごくいいことがあったのね!!」
和「ええ。実は唯が……」
紬「…唯ちゃんが?」
和「お菓子を作ってくれたのよ」
紬「……」
和「……」
紬「……それだけ?」
和「ええ、それだけよ」
元スレ
紬・和「梓ちゃんvs唯」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1342882504/
紬「…‥」
和「…何か変なこと言ったかしら?」
紬「……う、ううん。別に変ではないかな」
紬「だけど、お菓子を作ってくれたのを進展って呼べるのかな?」
和「あの唯が私にお菓子を持ってきてくれたのよ」
紬「…あー、うん。確かに唯ちゃんは食べる専門だもんね」
和「ええ。そうなのよ」
和「唯は本当に良い子で優しい子で明るい子で」
和「人に気遣いもできるし、楽器も上手いし、才能もあるし」
和「くっつくと暖かいし、可愛いものを見ると抱き付かずにはいられないし」
和「ときどきハッとさせられるほどカッコいい一面もあるし」
和「こんな私とも仲良くしてくれる天使みたいな子だけど……」
和「誰かにお菓子を作ってくるような子じゃないはずなの」
紬「……う、うん」
和「その唯が私のためだけにお菓子を作ってきてくれて…」
和「私、感動してしばらく泣いちゃったのよ」
和「自分は唯にすっごく大切に想われてるんだなって」
和「これからもっと唯のこと大切にしていかなきゃって」
紬「…そうなんだ。じゃあ私、部室に行くね」
和「あっ。ちょっと待ちなさいよ、ムギ」
和「まだまだ話し足りないことが沢山あるんだから」
紬「……うん。それで?」
和「私が泣いてると唯が「和ちゃんどうしちゃったの」って」
紬「……まぁ、当然聞くよね」
和「私が返事できないでいると、唯も涙目になっちゃって…」
和「私は唯をやさしく抱きしめて、「嬉しくて泣いちゃった」って耳元で囁いたの」
紬「続けて」
和「そしたら唯は「もう…和ちゃんってば」って言って、強く抱きしめ返してくれたの」
紬「ふむふむ」
和「それから二人で強く抱きしめあったわ」
紬「それからキスね!」
和「えっ…キス?」
紬「うんうん! もちろんやったよね!」
和「キスだなんて……私達にはまだ早いわ///」
紬「たまに唯ちゃんと一緒にお風呂に入って、一緒に寝てるのに?」
和「ええ、キスは特別よ」
紬「将来の約束までしてるのに?」
和「ええ」
紬(和ちゃんって変なところで奥手ね)
紬「まぁ、いいわ。ところで、その状況いつもみたいにお願いできる?」
和「唯が了承してくれたらね」
紬「それじゃあビデオカメラを持ってこなくっちゃ」
和「私達のいちゃいちゃ再現が見たいだなんて……ムギは恋人ができても全然変わらなのね」
紬「それとこれとは別腹なの~」
和「梓ちゃんは嫉妬してない?」
紬「…してるかな?」
和「どうかしら?」
紬「梓ちゃんが悲しんでるなら、やめなきゃいけないよね…」
和「……きっと諦めてると思うわ。気になるなら直接聞いてみれば」
紬「そうね」
和「それで……唯に貢ぐお菓子なんだけど」
紬「再現ビデオを撮るだめの依頼料のことね!」
和「ええ。そのお菓子、私に作らせてくれないかしら」
紬「…あれは依頼料だから、私が持ってこないと意味ない気がするけど……」
和「私が唯のために作りたいの…」
紬「……わかってる。和ちゃん。よろしくお願いするね」
和「唯は何を作ったら喜んでくれるかしら」
紬「唯ちゃん、お菓子ならなんでも喜んでくれると思うけど」
和「でも、ムギの持ってきたお菓子をいつも食べてるから、舌が肥えてるわよ、あの子……」
紬「……たしかに」
和「感動させようと思ったら、生半可なお菓子じゃ駄目そうね…」
紬「じゃあ食べたことなさそうなお菓子ならどうかな」
和「何かある?」
紬「シャルロットとか」
和「シャルロット?」
紬「クッキー生地を使ったケーキよ」
和「へー、美味しそうね。私に作れるかしら」
紬「じゃあ、私の家で一緒に作る?」
和「……うーん」
紬「…? なにか問題がある?」
和「浮気にならないかしら…」
紬「……和ちゃんはいい旦那さんになりそうね」
和「そうじゃないの。唯は気にしないと思うわ。あの子、そういう事に対しておおらかだから」
紬「ということは……梓ちゃんのことね」
和「ええ、付き合ったばかりで一番大事な時期なのに……」
紬「…それじゃあ、やめておくべきかな……でも和ちゃんの応援もしたいし……」
紬「…! そうだ! 梓ちゃんも誘いましょ」
和(…………また二人のバカップルぶりを見せつけるつもりね)
紬「どうかした?」
和「なんでもないわ。それじゃあムギ、宜しくお願いするわ」
紬「ええ。梓ちゃんとお菓子作り……今から楽しみ~」
和(すでに目的と手段が入れ替わってるんじゃないかしら…)
和「そういえばムギも一歩前進したって聞いたけど、何があったの?」
紬「ふっふっふっふっ…聞きたい?」
和「……聞きたいような聞きたくないような…」
和「でもムギと梓ちゃんって、大胆にも初デートでキスしちゃったのよね」
紬「うんうん。あの時の梓ちゃんかわいかったなぁ~」
紬「真っ赤になりながら「……ムギ先輩。私のファーストキス奪って下さい」って言ってくれて」
紬「だけど、私も初めてだったからおでこ同士のキスになっちゃって」
紬「その後、目を見開いたままキスして……」
紬「そのまま二人は目を閉じて……」
和「その話は聞き飽きたわ」
紬「そう?」
和「でもキスを済ましてるなら……行くところまで行ってしまったのかしら?」
紬「あのね、和ちゃん///」
和「うん」
紬「実はね……私……」
和「うん」ゴクリ
紬「……梓ちゃんと手を繋いじゃったの!」
和「…えっ?」
紬「だからっ、手、繋いじゃったの!!」
和「……」
紬「……」
和「……」
紬「……なにか言って…」
和「アァ、ウン、ソウネ」
紬「ええ、そうなの。和ちゃんに言われた通り、あの日は図書館デートにしたんだけどね」
和(ムギってこうなったら止まらないのよね)
紬「和ちゃんに教えてもらった「月の裏側」って本を二人で読んでたんだけど…」
和「恩田陸ね。……二人で?」
紬「うん。二人でぴったりくっついて、私が右、梓ちゃんが左に座って」
和「すごく読み難かったんじゃない? 読むペースが違うだろうし…」
紬「1ページ読み終わる毎に、私の肩を梓ちゃんの肩にトンってそっと当てるの」
紬「それが読み終わった合図」
紬「梓ちゃんが読み終わっていれば、すぐにページを捲くってくれる」
紬「読み終わっていなければ、梓ちゃんが読み終わった時点でページを捲ってくれる」
和「……斬新な読書法ね」
紬「梓ちゃんの鼓動から息遣いまで全部伝わってくるの」
紬「すごくドキドキしたけど、とっても楽しいデートができたわ」
紬「和ちゃん。図書館をすすめてくれてありがとう」
和(ムギったら…公衆の面前でよくやるわ)
和「私もちょっとやってみたくなったけど……唯はあんまり本を読まないのよね」
紬「和ちゃんが読んであげれば?」
和「音読するってこと?」
紬「うん。唯ちゃんきっと喜んでくれると思うな」
和「でも、音読じゃくっつく理由にならないんじゃないかしら」
紬「唯ちゃんとくっつきたいの?」
和「///」
紬「…よく聞こえるように耳元で読みたい、って言えばいいんじゃないかな」
和「…勉強になるわ」
紬「そうだ! ロミオとジュリエットなんてどうかしら」
紬「耳元で愛のことばを囁くの。きっと唯ちゃんメロメロになっちゃうんだから!」
和「そうね。考えておくわ」
紬「ええ。私たちはロミオにもジュリエットにもなれるんだから」
和「そうね。恋のためには多少我儘にならないと」
紬「愛とは躊躇わないことだからね」
紬「梓ちゃんとのデートの話に戻すね」
和「まだ続くんだ」
紬「ラストページに近づくにつれて、なんだか感慨深くなっちゃって…」
紬「最後には私、泣いちゃったんだ」
和(あの小説、泣くようなところあったかしら)
紬「そしてたら梓ちゃんは私の頭をなでなでしてくれて、それから手を差し伸べてくれたの」
紬「私はその手をとって、本を返してから、二人で図書館の外に出たわ」
紬「それから家に帰るまで、ずっと手は繋いだまま」
紬「一言もしゃべらなかったけど……幸せな時間を過ごせたわ」
和「……ムギ。良かったわね。本当に……」
紬「後は一緒に御飯を食べて、お風呂で洗い合いっこして、一緒のベッドで寝たわ」
紬「……人生最良の日かもしれない」
和「今さらっと「お風呂で洗い合いっこ」って言ったかしら」
紬「言ったけど」
和「いつの間にそんなに進展してたの?」
紬「えっ…和ちゃんはやってないの?」
和「髪と背中は洗ってあげるけど…」
紬「和ちゃん! そんなんじゃ、もったいないお化けが出てきちゃうわ!」
和「そういうものかしら。……今度唯に頼んでみようかな」
紬「うん! 唯ちゃんのことだからきっと喜ぶと思うよ
和「そうかしら//」
紬「再現もお願いするね」
和「……はぁ…ムギはアダルトビデオでも撮るつもり?」
紬「そうね。記録に残しておくのはやりすぎよね」
和「わかってくれればいいのよ…」
紬「うん。撮影はやめておくね。この目にしっかり焼き付けるから」
和「………はぁ。もう好きにしていいわ」
紬「うんっ! 梓ちゃんと一緒に観賞させてもらうね」
和(いちゃつく口実が欲しいだけなんじゃ……)
和「……」
紬「どうかした?」
和「こんな幸せな日々がいつまで続くのかしら」
紬「ずっと続くよ」
和「そうかしら?」
紬「もし運命が二人を引き裂こうとしたら、運命の方を捻じ曲げちゃうんだから!」
和「ふふふっ。ムギならやりかねないわね」
紬「うん。世界一かわいい恋人を作ったんだから、世界一幸せな人生を送らなきゃ」
和「……世界一かわいい恋人?」
紬「あっ……しまった」
和「ムギ、あなたのことはいい友だちだと思ってるわ」
紬「うん私も」
和「でも世界一かわいいのは唯よ」
紬「和ちゃん……やっぱり私達分かり合えないね」
和「そうね。もうこうなったら戦争するしかないわ」
紬「ごめんね。和ちゃん。愛とはためらわないことなの」
紬「私、財力にものを言わせて梓ちゃんの可愛さを証明しちゃうから!」
紬『斎藤、今すぐ私兵を200ほど連れてきて』
和「いい覚悟ね。それでこそムギだわ」
和「ならば私も生徒会長としての全権力を濫用して立ち向かうわ!」
和『生徒会、委員会メンバーは全員集合。各部活動の生徒も可能な限り集まること』
和『活躍した部活は、来季の予算にプラス査定よ』
紬「じゃあいくわよ」
和「ええ」
紬「けいどろで決着をつけましょ!」
和「どろけいで決着をつけるわ!」
___
紬「決着、つかなかったね」
和「同率一位ってことかしら」
紬「…! そうだね」
和「ねぇ、ムギ。今度ダブルデートでもしない」
紬「ダブルデート? 行く行く~」
和「どこに行こうかしら?」
紬「そうね……」
紬「梓ちゃんの行きたいところにしましょ」
和「唯の行きたいところがいいわ」
紬「……」
和「……」
紬「ダブルデート、楽しみだね」
和「そうね」
おしまいっ!