1 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/07/21 23:55:04.60 37jRQ/wB0 1/16

「ムギ、来たのね。まずはおめでとうと言わせてもらうわ」

「この前のデートで梓ちゃんと新たな段階に踏み込んだそうじゃない」

「和ちゃんのおかげよ……いいデートスポットを教えてもらっちゃったし」

「図書館デートでいい雰囲気になれたのは、ひとえにムギの努力の賜物だと思うわ…」

「そうかしら? 和ちゃんは何か進展あった?」

「ええ。実は……///」

「むむむっ、その顔っ! すごくいいことがあったのね!!」

「ええ。実は唯が……」

「…唯ちゃんが?」

「お菓子を作ってくれたのよ」

「……」

「……」

「……それだけ?」

「ええ、それだけよ」

元スレ
紬・和「梓ちゃんvs唯」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1342882504/

2 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/07/21 23:56:10.69 fMF4mfZC0 2/16

「…‥」

「…何か変なこと言ったかしら?」

「……う、ううん。別に変ではないかな」

「だけど、お菓子を作ってくれたのを進展って呼べるのかな?」

「あの唯が私にお菓子を持ってきてくれたのよ」

「…あー、うん。確かに唯ちゃんは食べる専門だもんね」

「ええ。そうなのよ」

「唯は本当に良い子で優しい子で明るい子で」

「人に気遣いもできるし、楽器も上手いし、才能もあるし」

「くっつくと暖かいし、可愛いものを見ると抱き付かずにはいられないし」

「ときどきハッとさせられるほどカッコいい一面もあるし」

「こんな私とも仲良くしてくれる天使みたいな子だけど……」

「誰かにお菓子を作ってくるような子じゃないはずなの」

「……う、うん」

7 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/07/21 23:58:57.94 fMF4mfZC0 3/16

「その唯が私のためだけにお菓子を作ってきてくれて…」

「私、感動してしばらく泣いちゃったのよ」

「自分は唯にすっごく大切に想われてるんだなって」

「これからもっと唯のこと大切にしていかなきゃって」

「…そうなんだ。じゃあ私、部室に行くね」

「あっ。ちょっと待ちなさいよ、ムギ」

「まだまだ話し足りないことが沢山あるんだから」

「……うん。それで?」

「私が泣いてると唯が「和ちゃんどうしちゃったの」って」

「……まぁ、当然聞くよね」

「私が返事できないでいると、唯も涙目になっちゃって…」

「私は唯をやさしく抱きしめて、「嬉しくて泣いちゃった」って耳元で囁いたの」

「続けて」

「そしたら唯は「もう…和ちゃんってば」って言って、強く抱きしめ返してくれたの」

「ふむふむ」

9 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/07/22 00:00:29.60 8QKBS91a0 4/16

「それから二人で強く抱きしめあったわ」

「それからキスね!」

「えっ…キス?」

「うんうん! もちろんやったよね!」

「キスだなんて……私達にはまだ早いわ///」

「たまに唯ちゃんと一緒にお風呂に入って、一緒に寝てるのに?」

「ええ、キスは特別よ」

「将来の約束までしてるのに?」

「ええ」

(和ちゃんって変なところで奥手ね)

「まぁ、いいわ。ところで、その状況いつもみたいにお願いできる?」

「唯が了承してくれたらね」

「それじゃあビデオカメラを持ってこなくっちゃ」

11 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/07/22 00:02:49.73 8QKBS91a0 5/16

「私達のいちゃいちゃ再現が見たいだなんて……ムギは恋人ができても全然変わらなのね」

「それとこれとは別腹なの~」

「梓ちゃんは嫉妬してない?」

「…してるかな?」

「どうかしら?」

「梓ちゃんが悲しんでるなら、やめなきゃいけないよね…」

「……きっと諦めてると思うわ。気になるなら直接聞いてみれば」

「そうね」

「それで……唯に貢ぐお菓子なんだけど」

「再現ビデオを撮るだめの依頼料のことね!」

「ええ。そのお菓子、私に作らせてくれないかしら」

「…あれは依頼料だから、私が持ってこないと意味ない気がするけど……」

「私が唯のために作りたいの…」

「……わかってる。和ちゃん。よろしくお願いするね」

14 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/07/22 00:04:51.33 8QKBS91a0 6/16

「唯は何を作ったら喜んでくれるかしら」

「唯ちゃん、お菓子ならなんでも喜んでくれると思うけど」

「でも、ムギの持ってきたお菓子をいつも食べてるから、舌が肥えてるわよ、あの子……」

「……たしかに」

「感動させようと思ったら、生半可なお菓子じゃ駄目そうね…」

「じゃあ食べたことなさそうなお菓子ならどうかな」

「何かある?」

「シャルロットとか」

「シャルロット?」

「クッキー生地を使ったケーキよ」

「へー、美味しそうね。私に作れるかしら」

「じゃあ、私の家で一緒に作る?」

16 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/07/22 00:08:31.85 8QKBS91a0 7/16

「……うーん」

「…? なにか問題がある?」

「浮気にならないかしら…」

「……和ちゃんはいい旦那さんになりそうね」

「そうじゃないの。唯は気にしないと思うわ。あの子、そういう事に対しておおらかだから」

「ということは……梓ちゃんのことね」

「ええ、付き合ったばかりで一番大事な時期なのに……」

「…それじゃあ、やめておくべきかな……でも和ちゃんの応援もしたいし……」

「…! そうだ! 梓ちゃんも誘いましょ」

(…………また二人のバカップルぶりを見せつけるつもりね)

「どうかした?」

「なんでもないわ。それじゃあムギ、宜しくお願いするわ」

「ええ。梓ちゃんとお菓子作り……今から楽しみ~」

(すでに目的と手段が入れ替わってるんじゃないかしら…)

19 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/07/22 00:13:50.96 8QKBS91a0 8/16

「そういえばムギも一歩前進したって聞いたけど、何があったの?」

「ふっふっふっふっ…聞きたい?」

「……聞きたいような聞きたくないような…」

「でもムギと梓ちゃんって、大胆にも初デートでキスしちゃったのよね」

「うんうん。あの時の梓ちゃんかわいかったなぁ~」

「真っ赤になりながら「……ムギ先輩。私のファーストキス奪って下さい」って言ってくれて」

「だけど、私も初めてだったからおでこ同士のキスになっちゃって」

「その後、目を見開いたままキスして……」

「そのまま二人は目を閉じて……」

「その話は聞き飽きたわ」

「そう?」

「でもキスを済ましてるなら……行くところまで行ってしまったのかしら?」

21 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/07/22 00:18:42.70 8QKBS91a0 9/16

「あのね、和ちゃん///」

「うん」

「実はね……私……」

「うん」ゴクリ

「……梓ちゃんと手を繋いじゃったの!」

「…えっ?」

「だからっ、手、繋いじゃったの!!」

「……」

「……」

「……」

「……なにか言って…」

「アァ、ウン、ソウネ」

「ええ、そうなの。和ちゃんに言われた通り、あの日は図書館デートにしたんだけどね」

(ムギってこうなったら止まらないのよね)

23 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/07/22 00:23:23.26 8QKBS91a0 10/16

「和ちゃんに教えてもらった「月の裏側」って本を二人で読んでたんだけど…」

「恩田陸ね。……二人で?」

「うん。二人でぴったりくっついて、私が右、梓ちゃんが左に座って」

「すごく読み難かったんじゃない? 読むペースが違うだろうし…」

「1ページ読み終わる毎に、私の肩を梓ちゃんの肩にトンってそっと当てるの」

「それが読み終わった合図」

「梓ちゃんが読み終わっていれば、すぐにページを捲くってくれる」

「読み終わっていなければ、梓ちゃんが読み終わった時点でページを捲ってくれる」

「……斬新な読書法ね」

「梓ちゃんの鼓動から息遣いまで全部伝わってくるの」

「すごくドキドキしたけど、とっても楽しいデートができたわ」

「和ちゃん。図書館をすすめてくれてありがとう」

(ムギったら…公衆の面前でよくやるわ)

「私もちょっとやってみたくなったけど……唯はあんまり本を読まないのよね」

「和ちゃんが読んであげれば?」

27 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/07/22 00:26:09.23 8QKBS91a0 11/16

「音読するってこと?」

「うん。唯ちゃんきっと喜んでくれると思うな」

「でも、音読じゃくっつく理由にならないんじゃないかしら」

「唯ちゃんとくっつきたいの?」

「///」

「…よく聞こえるように耳元で読みたい、って言えばいいんじゃないかな」

「…勉強になるわ」

「そうだ! ロミオとジュリエットなんてどうかしら」

「耳元で愛のことばを囁くの。きっと唯ちゃんメロメロになっちゃうんだから!」

「そうね。考えておくわ」

「ええ。私たちはロミオにもジュリエットにもなれるんだから」

「そうね。恋のためには多少我儘にならないと」

「愛とは躊躇わないことだからね」

30 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/07/22 00:29:41.53 8QKBS91a0 12/16

「梓ちゃんとのデートの話に戻すね」

「まだ続くんだ」

「ラストページに近づくにつれて、なんだか感慨深くなっちゃって…」

「最後には私、泣いちゃったんだ」

(あの小説、泣くようなところあったかしら)

「そしてたら梓ちゃんは私の頭をなでなでしてくれて、それから手を差し伸べてくれたの」

「私はその手をとって、本を返してから、二人で図書館の外に出たわ」

「それから家に帰るまで、ずっと手は繋いだまま」

「一言もしゃべらなかったけど……幸せな時間を過ごせたわ」

「……ムギ。良かったわね。本当に……」

「後は一緒に御飯を食べて、お風呂で洗い合いっこして、一緒のベッドで寝たわ」

「……人生最良の日かもしれない」

「今さらっと「お風呂で洗い合いっこ」って言ったかしら」

「言ったけど」

31 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/07/22 00:34:42.35 8QKBS91a0 13/16

「いつの間にそんなに進展してたの?」

「えっ…和ちゃんはやってないの?」

「髪と背中は洗ってあげるけど…」

「和ちゃん! そんなんじゃ、もったいないお化けが出てきちゃうわ!」

「そういうものかしら。……今度唯に頼んでみようかな」

「うん! 唯ちゃんのことだからきっと喜ぶと思うよ

「そうかしら//」

「再現もお願いするね」

「……はぁ…ムギはアダルトビデオでも撮るつもり?」

「そうね。記録に残しておくのはやりすぎよね」

「わかってくれればいいのよ…」

「うん。撮影はやめておくね。この目にしっかり焼き付けるから」

「………はぁ。もう好きにしていいわ」

「うんっ! 梓ちゃんと一緒に観賞させてもらうね」

(いちゃつく口実が欲しいだけなんじゃ……)

34 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/07/22 00:42:04.05 8QKBS91a0 14/16

「……」

「どうかした?」

「こんな幸せな日々がいつまで続くのかしら」

「ずっと続くよ」

「そうかしら?」

「もし運命が二人を引き裂こうとしたら、運命の方を捻じ曲げちゃうんだから!」

「ふふふっ。ムギならやりかねないわね」

「うん。世界一かわいい恋人を作ったんだから、世界一幸せな人生を送らなきゃ」

「……世界一かわいい恋人?」

「あっ……しまった」

「ムギ、あなたのことはいい友だちだと思ってるわ」

「うん私も」

「でも世界一かわいいのは唯よ」

36 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/07/22 00:45:57.44 8QKBS91a0 15/16

「和ちゃん……やっぱり私達分かり合えないね」

「そうね。もうこうなったら戦争するしかないわ」

「ごめんね。和ちゃん。愛とはためらわないことなの」

「私、財力にものを言わせて梓ちゃんの可愛さを証明しちゃうから!」


『斎藤、今すぐ私兵を200ほど連れてきて』


「いい覚悟ね。それでこそムギだわ」

「ならば私も生徒会長としての全権力を濫用して立ち向かうわ!」


『生徒会、委員会メンバーは全員集合。各部活動の生徒も可能な限り集まること』

『活躍した部活は、来季の予算にプラス査定よ』


「じゃあいくわよ」

「ええ」

「けいどろで決着をつけましょ!」
「どろけいで決着をつけるわ!」


37 : 以下、名無しにかわりましてVIP... - 2012/07/22 00:46:51.72 8QKBS91a0 16/16

___
「決着、つかなかったね」

「同率一位ってことかしら」

「…! そうだね」

「ねぇ、ムギ。今度ダブルデートでもしない」

「ダブルデート? 行く行く~」

「どこに行こうかしら?」

「そうね……」

「梓ちゃんの行きたいところにしましょ」
「唯の行きたいところがいいわ」

「……」

「……」

「ダブルデート、楽しみだね」

「そうね」

おしまいっ!

記事をツイートする 記事をはてブする