女泥棒「もー、こうなったら正攻法だ! 鍵を開けて正面から忍び込んでやる!」
女泥棒「じゃじゃーん、ピッキングツール! 針金をこう……曲げてそれっぽい形にしたのだ!」
女泥棒「くくく、これさえあればどんな鍵もイチコロよ!」
女泥棒「さーて、開けるとしますか!」
かちゃかちゃ
女泥棒「手ごたえあり……よし、あと少し……」
~1時間後~
女泥棒「……」カチャカチャ
元スレ
女泥棒「きゃっ!…またドジっちゃったわ」ズテン
http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1322828658/
女泥棒「……」カチャカチャ
女泥棒「……ふう、もうちょっとだけがんばろ」カチャカチャ
女泥棒「……」カチャカチャ
女泥棒「ぐすっ、どうして開かないの……? 漫画だとこれで開いてるのに」カチャカチャ
女泥棒「お金欲しいよ、美味しい食べ物食べたいよ……お腹空いた」カチャカチャ
ぱきん
女泥棒「あ、針金が折れて鍵穴の中に入っちゃった。……とれない」
女泥棒「ど、どうしよう。これってもう鍵差し込めないよね。え、じゃあ一生部屋に入れないって事? え、そ、そんな!」
女泥棒「あわわわわ」アタフタ
女泥棒「こ、ここは一旦離れて――」
男「なにやってんすか、家の前で」
女泥棒「はう!」ビクッ!
男「……何か用ですか?」
女泥棒「あ、あああああああの。よ、よ。夜ですね!」
男「……はあ?」
女泥棒「つ、月が綺麗ですね!」
男「月って……まあ、そうですね」
女泥棒「えっと、また、ま、また来ます!」タッタッタ!
男「……何だったんだアレ。宗教か? 夜来るなよ……」カチャカチャ
男「って鍵が入らん。ざけんな」
――
――
女泥棒「よし、今度はこのいかにもお金持ちが住んでそうな家を狙おう」
女泥棒「夜も更けてきたし、きっと家の人はぐっすり夢の中……ふふふ、まるで怪盗見たい」
女泥棒「私キャッツアイにあこがれてこの世界に入ったんだよなー」
女泥棒「……」
女泥棒「よし、今度こそ成功させるぞ!」
女泥棒「まずはこの塀をよじ登って……ッ!」ガシッ!
つるん
女泥棒「きゃん! っててて、もっと凹凸をはっきりさせてよ……バカ!」
女泥棒「もういい、今日は寝る! 寝床にもどろっと!」
女泥棒「我が家は無事健在のようね。よく知らない男の人が壊したりすのよね。まったく、いい迷惑だわ」
女泥棒「うう、寒くなって来た……」ガサガサ
女泥棒「……寝よ……」
女泥棒「……」
女泥棒「……ぐすっ」ポロポロ
女泥棒「いつか、いつか大金持ちになってやるんだから……ひっく」ポロポロ
女泥棒「……お腹空いたよ……」ポロポロ
――
――
女泥棒「夜も更けたし、絶好の泥棒日和ね! 今日こそは、今日こそは必ず成功させてやるんだから!」
女泥棒「よーし、今日は昨日目をつけたあのお金持ちっぽい家を狙うわよ!」
女泥棒「そして公園脇に放置されていたこの梯子! これを掛ければあっという間に乗り越えられる筈!」
女泥棒「くくく、この手際の良さ、今日の私はルパンもビックリね」
女泥棒「さて、梯子を担いで……」グググ
女泥棒「んー!」グググ!
女泥棒「……」ハァハァ
女泥棒「そいやー!」グググ!
~3時間後~
女泥棒「は、はあ、はあああああああああ!」グググ!
女泥棒「お、お腹が、お腹がすき過ぎて力が出ない」ハァハァ
女泥棒「……」
女泥棒「……どうして、どうして私はこんなに何も出来ないの……?」
女泥棒「おかしいよ、だって、わたしこんなに頑張ってるのに……頑張ってるのに!」
??「お姉ちゃん?」
女泥棒「!」ビク!
??「お姉ちゃんだよね?」
女泥棒「い、妹!?」
妹「お姉ちゃん、何処に行ってたの今まで。お母さんやお父さん、心配してるよ?」
女泥棒「い、妹!」
妹「な、なにっ? 逆ギレ?」ビク!
女泥棒「夜遅くにこんな人気のない所に来ちゃダメでしょ!? 何かあったら大変じゃ無い! ほら、早く家に帰りなさい!」
妹「お、お姉ちゃん!」
女泥棒「あ……わ、私はお姉ちゃんじゃありません! 女泥棒です!」
妹「お姉ちゃん、もう漫画に影響されちゃダメだよ! 今まで一体どれだけ色んな人に迷惑をかけたと思ってるの!?」
女泥棒「知りません!」
妹「この前は『忍者になる! ナルトみたいになりたい!』とか言って水面歩行の業って訳のわからない事を風呂場でやってツルっと滑って頭ぶったし」
妹「一番ひどかったのは『喧嘩で一番になる!』とか言って、ヤクザ相手に喧嘩売って本当に、本当に危なかったじゃない! 金剛とか煉獄とか、非力なお姉ちゃんが出来る芸当じゃないよ!」
女泥棒「知らないもん! 私じゃないもん! 連載再開されないかと今か今かと待ち望んでる女泥棒だもん!」
妹「もう連載は無いよ。ありえないよ。……それに、段ボールハウス作って住んでるんでしょ?」
女泥棒「う」
妹「世間体とか気にしなよ……ねえ、もう帰ってきてよ」
女泥棒「う、うううううう! 私は貴女のお姉ちゃんじゃありません! だから聞きません!」
妹「お姉ちゃん!」
妹「じゃあ聞いて。お姉ちゃん、もしだよ? もし、これから泥棒しようと思ってるんだったら……」
妹「それ、成功させてね」
女泥棒「え?」
妹「もし成功出来たら、いいよ。そのまま泥棒業に精を出しなよ」
妹「ただし! 人に見つかったり、捕まったりしたらもう終わり! 人生も終わるかもしれないけど、家に帰ってきてね!」
女泥棒「……」
妹「……お姉ちゃん、お腹空いてるでしょ?」
女泥棒「……」
妹「返事は?」
女泥棒「……」コクリ
妹「はあ……ちょっと待ってて、おにぎり、買ってくるから」
女泥棒「……」ポロポロ
妹「な、泣かないでよ」
妹「はい、おにぎり」スッ
女泥棒「……」モグモグ
妹「もう、無言になっちゃって……お姉ちゃん、じゃあそのまま黙って聞いてね」
女泥棒「……」モグモグ
妹「もう一度言うね。明日、何時でもいい。お姉ちゃんが泥棒を成功させたら、そのまま泥棒業を続ける」
妹「でも、人に見つかったり、捕まったりしたら遊びはお終い。家に帰ってくる」
妹「そうだな……盗んできたものを、私に見せてくれたらいいよ」
女泥棒「……」
妹「いいね?」
女泥棒「……」コクリ
妹「よし、決定! それじゃあ、家に帰ろうか!」
女泥棒「え?」
妹「ん? だって、外寒いでしょ? 明日の為に力を蓄えなきゃ! ね? お父さんやお母さんには内緒にするから」
女泥棒「……」
妹「大丈夫、私の部屋で寝ればいいよ。靴も部屋に隠せば大丈夫。ね? そうしよ?」
女泥棒「……うん」
妹「よし、じゃあ家に帰ろ!」ギュ!
女泥棒「……」
妹「お姉ちゃん、手、冷たいね」
女泥棒「……」ポロポロ
妹「な、泣かないでよ」
――
――
妹「さあ、女泥棒さん。お仕事の時間だよ」
女泥棒「……」
妹「ぐっすり休んだし、もう大丈夫だね!」
女泥棒「……うん」コクリ
女泥棒「……そう、私は女泥棒。世界一の大泥棒になる、女泥棒よ!」
妹「その意気だよ! あ、それと一つお願いしていい?」
女泥棒「なにかね可憐な少女よ! 女泥棒にお願いごととは酔狂な」
妹(す、すっかり調子が戻ってるわね)
妹「あのさ、私が指定する家に忍び込んできてくれる?」
女泥棒「ええ?」
妹「出来るでしょ? 世界一の大泥棒さんになるんだから」
女泥棒「と、当然だがね君! 世迷言を!」
妹「キャラ統一させてよ」
女泥棒「出来るに決まってるでしょ? 私を舐めないで頂戴」
妹「よし、じゃあ外に繰り出しますか」
女泥棒「お、おうよ!」
妹「だからキャラを統一させて」
――
――
妹「さあ、このいかにも大金持ちが住んでそうなこの家に忍び込んで来て!」
女泥棒「こ、この家は!」
女泥棒(まさに私が忍び込もうとしていた家! これも運命なのね……?)
妹「出来る? いえ、出来ないなんていわないわよね? 女泥棒さん」
女泥棒「……ふふ、当然よ。私に盗めない物は無いのだから」
妹「よし、じゃあ女泥棒さん。そこの門から入って?」
女泥棒「え? 開いてるの?」
妹「大丈夫、開いてるから。ほら、そもそも閉まって無いじゃん」
女泥棒「ほ、本当だ」
妹「入ってからが本番だよ? わかってるね?」
女泥棒「わ、わかってるわ。ま、ままま任せて頂戴!」ドキドキ
妹「じゃあ、いってらっしゃい。大切な物を盗んできてね!」
女泥棒「い、いいいいいってきます! 大切な物を盗みます!」カチカチ
妹(緊張し過ぎでしょ)
女泥棒「あう!」ズテーン!
妹「何も無い所でこけるの止めて!」
~侵入~
女泥棒(は、ははは入っちゃった! よ、よし! ど、どこからか入ろう!)
女泥棒(そ、そうだ、窓の鍵の辺りを壊して開けるって方法があったわね! それをやれば……!)
女泥棒(くくく、この時の為にちゃんと用意しておいたわよ……!)
女泥棒(じゃじゃーん! コンパスー!)
女泥棒(こう、なにかを回して開けるような感じだったからコレで開けれる筈! ガラスを外したら、腕を突っ込んで鍵を開ければ……!)
女泥棒(それでは早速……)クルクル
女泥棒「……」クルクル
女泥棒「……」クルクル
女泥棒「……開かない」
女泥棒「あれー? コンパスっぽいので切り取ってたような気がするのにー」クルクル
女泥棒「もー、使えないわね」ポイ
女泥棒「なら、やっぱり玄関から入るのがいいかしら。うん、そうしよ。この前失敗したし、リベンジよ!」テクテクテク
女泥棒「この前のように針金を壊す訳にはいかないけど……でも再チャレンジ!」
女泥棒「……」カチャカチャ
女泥棒「……」カチャカチャ
~1時間後~
女泥棒「……」カチャカチャ
ぽき
女泥棒「あ、折れた」
女泥棒「ふー……折れない心がある限り、私は何度でも挑戦するわ」
ガチャ
女泥棒「ッ!」ビク!
女泥棒(え、玄関が開いた!? ど、どうしようどうしようどうしよう!)アタフタ
お嬢様「……」
女泥棒(わー、可愛い……私より、年下かな)ボー
お嬢様「……ゴホン」
女泥棒「はっ!」
お嬢様「あ、あれー? 誰かいるように感じたんだけど……気のせいかしら。私、目が見えないからわからなのよねー」
女泥棒「え?」
お嬢様「あー、もー怖い怖い。ちょっと外を見回ってこようかしら。あー、ドアを閉めるの忘れてしまったわーまあいいかー」テクテクテク
女泥棒「……」
女泥棒「目が見えないのね……」
女泥棒「あ、ドアが開けっぱなし……」
女泥棒「閉めておこう」バタン!
女泥棒「……」
女泥棒「……」
女泥棒「……」
女泥棒「……」ボー
~10分後~
お嬢様「はあ……妹さんの頼みとはいえ、何をやっているのかしら……」テクテクテク
お嬢様「妹さん、直ぐそこにいたし、……本当にこんなのでいいのかしら。そもそも目が見えないのに見回りって……私、バカでしょ」テクテクテク
お嬢様(泥棒ごっこに付き合ってなんて、初めてよ。とりあえず壺とか、手ごろな物を盗っていってくれればいいんだけど)テクテクテク
お嬢様「ん?」チラ
女泥棒「……」ボー
お嬢様「ええっ!?」
お嬢様(ま、まだいるの!? え、何で入ってないの!?)
女泥棒「……はっ!」
お嬢様「……」
女泥棒「……」
お嬢様「……」
女泥棒「捕まえたー!」ダキッ!
お嬢様「えええええええええ!?」
女泥棒「やった! 大成功! さあ、一緒に来て!」グイグイ
お嬢様「え、ええ? な、何ですか?」ズルズル
――
――
女泥棒「はい、盗んできたよ!」
お嬢様「……」
妹「え、えー?」
女泥棒「私は世界一の大泥棒になるのよ? これ位朝飯前だわ」
妹「あの……あれー? 私が思ってたものと違う」
お嬢様「あの、妹さん。私はどうすればいいのでしょうか」
女泥棒「え、知り合いなの?」
妹「いや、知りません」
お嬢様「私も知りません」
妹「じゃなくて、お姉ちゃん! なに? 何がお姉ちゃんをそうさせたの?」
女泥棒「え? だって、この子。とっても可愛いじゃない」
お嬢様「え?」
妹「え?」
女泥棒「きっと、お父さんやお母さんに大切に育てられてきたのだと思うの。品もあるし、間違いないわ! ほら、さっき『大切な物』って言ったでしょ?」
妹「……」
お嬢様「……」
女泥棒「あ、ごめんね? 物扱いしちゃって。でもね、すっごく可愛いんだよ? 嘘じゃないからね!」
妹「……」
お嬢様「……」
女泥棒「あ、ずっと手をつないでたね。離す?」
お嬢様「……いえ、大丈夫です」
女泥棒「そう? ね、妹。どう? 認めてくれる?」
妹「あー……これはこれは、まあ一杯喰わされたような……それはそれでかなりひどい犯罪なのだけど……」
女泥棒「いいでしょ? 間違って無いでしょ?」
妹「あー……はい、もういいです。合格です」
女泥棒「やったー! 私、遂に泥棒しちゃったー!」
お嬢様「……いいのかしら。こんなので」
妹「満足させてあげれば、お姉ちゃん喜ぶでしょ? 私はその顔が見たかったのよ」
お嬢様「そう。それは良かった」
妹「ま、だからといって泥棒さんになって欲しいとは思わないけど。それにコレ泥棒とはちょっと違うし」
お嬢様「当然よね」
女泥棒「わーい! 可愛い子をゲットだぜー!」ギュ!
お嬢様「ちょ、抱きつかないでください!」
女泥棒「くくく、私が盗んだ物、者はずっと手放さないんだぜー! ヒャッハー!」
お嬢様「い、妹さん!」
妹「我慢して。こうなったらお姉ちゃん、何をしても無駄だから」
妹「それに、満更でも無いでしょ?」
お嬢様「うっ……な、なにを言ってるの?」
妹「あ、成程ね。うまいなーお姉ちゃん」
お嬢様「うまい?」
妹「これ、ルパンだよ、ルパン。まさに、大泥棒のなせる技だね」
お嬢様「人さらいが?」
妹「じゃなくて……つまり、お姉ちゃんはとんでもないものを盗んでいきました」
お嬢様「?」
女泥棒「わーいわーい!」ギュ!
妹「えー、知らないのー? ここまで言ったのにわからないなんて、世間知らずも良い所だよー」
お嬢様「せ、世間知らずで悪かったわね」
女泥棒「さあ、次は何を盗んでやろうかしら! うふふ、夢が膨らむわ!」
妹「盗んだのは、あなたの心です、ってね」
お嬢様「んな!」
女泥棒「私は世界一の大泥棒になる女泥棒だー!」
終わり