櫻子「…………」ぐだぐだ
向日葵「…………」カキカキ
向日葵「ん。櫻子、せめてそこの問題だけでも終わらせてしまいなさい?」
櫻子「んー」
向日葵「なんの本を読んでるんですの?」
櫻子「…………」ぱたむ
向日葵「ちょっと、見せてくれたっていいじゃない」
櫻子「私たちのさー」
「思い出の場所って、どこかな」
元スレ
向日葵「思い出の場所?」 櫻子「探しに行こう!」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1339846248/
向日葵「は?」
櫻子「思い出の場所だよ。あるじゃんそういうの」
向日葵「いや、あるじゃんって言われても……ありましたっけ」
櫻子「そういうのって誰しも持ってるもんじゃん。私たちにはどっかないかな」
向日葵「えーっと……」
櫻子「だってさ、私たちキスもしたんだよ? だから思い出の場所のひとつふたつ持ってなきゃさー!」
向日葵「恥ずかしいことをさらっといいますわね……というかそれ、その本見て思いついたんですの?」
櫻子「あー……まあ」
向日葵「ほんと本に影響されやすいですわね……でも考えてみたこともありませんでしたわ。思い出の場所なんて」
櫻子「よし! 今度探しにいこう!」
向日葵(あなたそういうの好きですわよね……)
向日葵「私はいいですわ」
櫻子「はぁ!? なんで!?」ガバッ
向日葵「だって、あてもなく歩き回るなんて……」
櫻子「いいじゃん! 私たちの思い出の場所なんだから一緒に探さなきゃ意味ないし!」
向日葵「私だってそんなに暇じゃありませんもの……」
向日葵(んー……)
向日葵「どこかいい場所見つけたら、教えて下さいね」
櫻子「なにそれー! 冷たすぎない……?」
向日葵「見つかったら、ちゃんと私も行きますから」
櫻子(ま、まったく向日葵は……)
櫻子(大切なことなのに……///)
櫻子「いいよ。今度探してくるもん!」
向日葵(本当に、子供っぽさの抜けない子ですわね……)
――――――
*
向日葵「お肉が安くて助かりましたわねー」とことこ
向日葵「あれ、そういえば今度給食じゃなくてお弁当なんでしたっけ?」
向日葵(どうしましょう。家にあるもので大丈夫かしら)
向日葵(………あら?)
???「…………」
向日葵(誰かしら。この幼稚園はもう閉まってる時間のはずなんですけど……)
向日葵(……って、あれは……!?)
向日葵「さ、櫻子!?」
櫻子「おわっ、向日葵」
向日葵「あなた何やってますの……? 関係ない人が入っちゃダメでしょうこんなとこ」
櫻子「なんでー? 私たちここの卒園生なんだからいいじゃん!」
向日葵「だからって、閉まってる門を乗り越えてまで入ったら通報されちゃうかもしれませんわよ。ほら、出なさい」
櫻子「うー……ちょっと、あとちょっとだけ」
向日葵(もう……)
向日葵「よいしょっ」
櫻子「あー向日葵も入ってるー」アハハ
向日葵「何年ぶりかしら……ここは。こんな遊具ありましたっけ?」
櫻子「なにそれ、めっちゃ楽しんでんじゃん! 人にダメとかいっといてさ!」
向日葵「ここが、思い出の場所?」
櫻子「んー……悪くはないんだけど」
わたしたちの、はじまりの場所。
櫻子「ちょっと子供っぽすぎないかなぁ」
向日葵「まあ……そうかもしれませんわね」
櫻子「あーここ。向日葵よくここで泣いてたよね」
向日葵「や、やめなさいよ……///」
櫻子「中とか入れないかな?」
向日葵「セコム来ますわよ」
櫻子「何!? それは避けたい!」
キィ……
櫻子(このブランコ……)
櫻子(向日葵は他の子に話しかけるのが怖くて、私が手伝ってあげないとブランコを借りられなかったんだっけ)
櫻子(……ひまちゃん)
向日葵「櫻子、そろそろ帰りましょう」
櫻子「もう! 人がせっかく思い出にひたってんのに!」ギャーギャー
向日葵「私ちょっと恥ずかしい思い出しかないんですけど……」
櫻子「向日葵はこの頃の方が可愛げがあったかなー」
向日葵「…………」
櫻子「うそ! うそだよ! 泣くなよ……」
向日葵「櫻子は昔の方が頼もしかったですわね」
櫻子「…………」
向日葵「ちょ、ちょっと……冗談ですわよ?」
~
櫻子「んー。もうちょいいろいろ探してみるかー」
向日葵「見つかるまでやるんですの?」
櫻子「当たり前じゃん!」
向日葵(はぁ……)
櫻子「あーそれにしてもおなかすいたー。向日葵、私ハンバーグ食べたい」
向日葵「あらそう」
櫻子「作ってよ!」
向日葵「私は私の家のことで忙しいんですわ。撫子さんに作ってもらいなさい」
櫻子「ねーちゃんの作るのより向日葵のやつの方が美味しいんだもん」
向日葵(え……///)
櫻子「だから作って? ほらほらひき肉が見えてますよー」ガサガサ
向日葵「こ、これはだめですわ! うちの今日の夕飯の分しかありませんから!」
櫻子「まったくもう仕方ないなー向日葵は……じゃあここは櫻子様が引きますよ」
向日葵「何様……?」
――――――
*
向日葵「あら……?」
向日葵「こんにちは、花子ちゃん」
花子「あっ、ひま子ねーちゃん」
花子「あれ? 櫻子先にいっちゃったけど」
向日葵「櫻子?」
花子「一緒だったんじゃないの? さっき向こうに櫻子いたから」
向日葵「や、ちょっとわかりませんわ……行ってみようかしら」
~
向日葵(こ、こっち……小学校)
向日葵(もしかして……)
櫻子「…………」トコトコ
向日葵「櫻子!」
櫻子「えっ? なんだ向日葵ついてきたの?」
向日葵「さっきそこで花子ちゃんに教えてもらったんですわよ……今度はここ?」
櫻子「小学校は入っても大丈夫だよね」
向日葵「あの、私まだ制服なんですけど……先生に見つかったら厄介ですわ」
櫻子「いいよいいよ、入っちゃえ」
向日葵「もう……」
櫻子「あそこであそんだなー」
向日葵「櫻子あそこで盛大に転んで泣いてたことありましたわよね」
櫻子「そんなことあったっけ!?」
向日葵「ありましたわよ……何年生のときかは忘れましたけど」
櫻子(…………)
櫻子(その頃は、もう向日葵の方が頼りになってたのかな)
櫻子(ひまちゃんが、向日葵になったのはいつだっけ)
櫻子(くそ……思い出したいのに……)
櫻子(なんでそこだけポッカリと……)
向日葵「櫻子?」
櫻子「えっ……あ、何?」
向日葵「いや……何か思いつめたような顔してるから」
櫻子「う、うん……」
忘れたくないことばっかり、忘れてくんだ。
櫻子(……でも、向日葵を見てると、何か浮かんでくるものがある)
櫻子(もっと向日葵を見ていられたら、いつかピースが埋まるときがくるかもしれない)
櫻子「ここも、幼なすぎたかな」
向日葵「そうですわね。ちょっと弱いというか……他にもっといい場所があるような気がしますわ」
――――――
*
向日葵「あっ、赤座さん。櫻子見ませんでした? まだ生徒会の仕事が残ってるのにどこか行ってしまったまま帰ってこなくて……」
あかり「櫻子ちゃんなら教室で見たよ~」
向日葵「教室? 忘れ物かしら」
~
櫻子「…………」
向日葵「あ、いた。櫻子なにやってるんですの? 急にどこかへいったりして……」
櫻子「ん、ごめん」
向日葵「うわ、この時間の教室は真っ赤ですわね。夕陽がすごい……」
櫻子「綺麗だよね」
向日葵「あれっ……もしかして、これも思い出の場所探し!?」
櫻子「あったりまえじゃん! 私本気なんだから!」
向日葵「はぁ……本気なのは構いませんけど、仕事ほったらかして行くのは流石に困りますわ? せめて終わってからに……」
櫻子「だってこの夕焼けがないとダメなんだもん」プン
向日葵「…………」
机の上に座る櫻子は、赤い日に染まり、いつもより大人っぽく見えた。
櫻子「でもさ、ここって明日も明後日も来るじゃん? 来なきゃいけない場所じゃん?」
櫻子「それってちょっと思い出の場所っぽくないというかさー……迷ってるんだよね」
向日葵「確かにそうですわね……学年変われば教室も変わりますし」
櫻子「はっ!? そういえば私たち来年クラス変えで離れちゃう可能性があるのかな!?」
向日葵「……まあ、なくはないですわね」
櫻子「そんなのやだ! 離れたくない……!」
向日葵(そ、それは私だって同じですわ……)
向日葵「いやほら、まだ決まったわけじゃありませんわ? 一緒になれる可能性だってちゃんとありますもの」
櫻子「そ、そうだよね……よし! 向日葵お寺行こう! 神様にお願いしてこなきゃ!」ダッ
向日葵「いや待ちなさいよ! まだ仕事残ってますから! それに神様にお願いするならお寺じゃなくて神社ですわ」
櫻子「どうしよどうしよ……西垣先生に頼めばなんとかなるかな!?」
向日葵「西垣先生にそれを決める力があるかどうかはわかりませんわね……」
櫻子「つかえないなー西垣せんせー!」
西垣「なんだ大室、私にいいたいことがあるようだな」ニヤニヤ
櫻子「ぎゃーー! せっ、先生いつからそこに!?」
西垣「古谷が大室を抱きしめていたとこからだ」ハッハッハ
向日葵「そんなことしてませんけど!?///」
――――――
*
ガチャ
櫻子「向日葵ーいくぞー」
向日葵「……は? いきなり来て何言ってるんですの? 行くってどこに?」
櫻子「思い出の場所探しに決まってんじゃん! さっさと準備してきて、ほら」シッシッ
向日葵「いや私最初に言ったと思うんですけど、探すのはあなたに任せますわ。いい場所が見つかったら、教えてくださいねって」
櫻子「はあ? だって向日葵今のところ探しにいったとこ全部一緒についてきてたじゃん。本当は一緒に来たいんでしょ?」
向日葵「い、今までのは全部偶然見かけたりしただけですわ? ほんとにたまたまですから……」
櫻子「…………」
櫻子「今日なんか用事あるの?」
向日葵「用事は特にありませんけど……」
櫻子「……今暇?」
向日葵「…………」
櫻子「暇なんじゃん! だったらいいじゃん! ほら行くよ!」
向日葵「くっ……仕方ありませんわね……///」
櫻子「なんだーやっぱり向日葵って意外と暇人だよねー。ひまわりだけにひま人ってか」ニヤニヤ
向日葵「ほんとに偶然ですから! た・ま・た・ま! 今日は暇だったってだけですからね! あと名前は関係ありませんわ!」
櫻子「わかったから早く準備してこーい」
向日葵(くぅっ……!///)
~
向日葵「で、今日はどこにいくんですの?」
櫻子「いや? まだどこって決めたわけじゃないけど」
向日葵「えっ? 決めてないんですの?」
櫻子「どこか決めてから行くわけじゃないもん。適当に歩いて探してるよいつも」
向日葵「はぁ……私あてもなく歩くの好きじゃないんですけど」
櫻子「ぐだぐだいうなー! ちゃんといい場所が無いか探しながらあるくの!」
向日葵(そんなので見つかるのかしら……)
~
向日葵「ちょっと、もう結構来たんじゃありません?」
櫻子「んー……こっちってあんまり来ないから思い出の場所的なのは無いかもね」
向日葵「……あの、あなたがこっちの方に進んでくからついて来てるんですのよ?」
櫻子「あ、公園だ!」
向日葵「あら? この公園……」
櫻子「ここ前にきたとこじゃん! また来ちゃったね!」
向日葵「ということはここは学校の裏ですわね。なんで同じ間違いを繰り返してるんでしょう……とりあえず寄りましょうか」
櫻子「あー疲れたー」とす
向日葵「あ、足が……」モミモミ
櫻子「……ここは思い出の場所かなあ?」
向日葵「どうかしら……思い出って迷子になった思い出しかないんですけど」
櫻子「確かにそうだね」
ワン!
櫻子「うわっ!? ……え、犬……?」
向日葵「こ、この犬紐とかついてませんわよ? 逃げてきちゃったのかしら」
櫻子「おー犬とか久しぶりだー! こっちこっち」ぽんぽん
櫻子「あっははは! かわいー」なでなで
向日葵「どうしましょう……飼い主さんが探してるかもしれませんわね」
櫻子「向日葵、えさ!」
向日葵「そんなに都合よく持ってるわけないでしょう」
櫻子「むー……よし、こっちこい! 水があるぞ!」
ワンワン!
向日葵(……櫻子に犬は似合いますわね)クスッ
あかり「あっ、向日葵ちゃん!」
向日葵「赤座さん!? どうしたんですのこんなところで」
あかり「あのね、さっき犬が逃げちゃったって困ってる人がいたから、私も一緒に探してるんだけど……見なかった?」
向日葵(す、すごい……赤座さん良い人すぎますわ)
向日葵「というか、あそこで櫻子と一緒にいる犬ってもしかして……」
あかり「あーそうかも! 写真と一緒!」
櫻子「おーあかりちゃん! またここで会ったねー」
あかり「この子だ……うん! 櫻子ちゃん、この犬ね、今飼い主さんが探してるの!」
櫻子「あっ、そうだったの?」
あかり「ちょっと私この子連れてくね? ごめん二人とも~」
向日葵「いえいえいいんですのよ。 早く飼い主さんの元に返してあげるのが一番ですわ」
櫻子「じゃーねー」
~
櫻子「いやーすごいね。ここにくるとあかりちゃんに会えるのかな」
向日葵「私たちがあてもなく歩き回ってる間にも赤座さんは人助けを重ねていると考えると……やっぱり赤座さんってすごすぎますわ」
櫻子「なんか面白い思い出が増えたね。よかったよかった」
あかり「お待たせ二人とも~」
櫻子「おかえりー」
あかり「みてみて? これ、飼い主さんがドーナツくれたの! みんなで食べよ~」
櫻子「うぉーミスド! やったー超ついてるー!」
向日葵「なんか特に何もしてないのに悪いですわね……///」
あかり「だってこんなにたくさんあるよ? みんなで分けないと丁度よくならないよぉ」
向日葵「そうですか? じゃあひとつ……」
櫻子「ポンデうめー!」
~
櫻子「あーうまかったー」
向日葵「これから夕飯なのにちょっと食べすぎちゃった気もしますわね……大丈夫かしら」
櫻子「はっ! 今日私料理当番だった! 向日葵つくって?」
向日葵「私もうちで作らないといけないんですの。ちゃんと自分でやりなさい」
櫻子「けちいなー……大体今日だって私が誘わなかったらドーナツ食べられなかったんだぞ? そのお礼ということでさ!」
向日葵「お礼をねだるんじゃありません……だいたいただ歩き回って偶然犬を見つけて、いろんな偶然が重なってのドーナツだったんですから櫻子のおかげでもなんでもないですわ」
櫻子「私が向日葵を家から連れ出したのは偶然じゃないでしょ?」
向日葵(あっ……)
向日葵(むむむ……///)
向日葵「しっ、仕方ないですわね。今日は少しくらい手伝ってあげますわ///」
櫻子「やった!」ぐっ
向日葵「手伝うだけですからね? ちゃんとあなたが主な作業をするんですのよ? 私の家での仕事が無くなったわけじゃないんですから」
櫻子「うんうん。それでもいいよ」
向日葵「もう……」
――――――
*
楓「おねえちゃん、楓もう寝るの……」
向日葵「あらごめんなさいね。でも私もう少しだけ課題がありますので……机の明かりだけは使いますわよ?」
楓「うん、ありがとうなの!」
~
向日葵「…………」カキカキ
向日葵(櫻子はちゃんとやっているかしら……って、そんなわけありませんわね)
向日葵(はぁ、まったく……)
コンコン
櫻子「よっ」
向日葵「えっ……さ、櫻子!? 何しにきたんですのこんな時間に!」
櫻子「泊まりにきた! っつーか何この部屋暗い! まだ9時だぞー」かちっ
向日葵「ちょっと! 楓がもう寝てるんですのよ!」ヒソヒソ
櫻子「あーそっかそっか……悪いね」
向日葵「……で、何? 泊まる?」
櫻子「そうそう。布団出すけどいい?」
向日葵「いや、っていうか……」
スーッ
櫻子「 ∵ 」
向日葵「今日クリーニングに出しちゃったから布団無いんですけど……」
櫻子「じゃあ……///」
向日葵「…………」
向日葵「もう、仕方ありませんわね……」
櫻子「きたぁ……!」ニヤニヤ
向日葵「変なことしたら叩きますからね」
櫻子「変なことって何?」
向日葵「言わせるんじゃありません」ぽこっ
向日葵「で、なんで急に泊まりに?」
櫻子「だからほら、思い出の場所さがし」
向日葵「えぇ……?」
向日葵「もしかして、この部屋が……?」
櫻子「いぇーす」ぶいっ
向日葵「ありえないでしょう」キッパリ
櫻子「なんで!? 思い出たくさんあるよ!?」
向日葵「自分の部屋が思い出の場所っていうのも違うでしょう! じゃああなた自分の部屋は候補として考えてみましたの?」
櫻子「私の部屋?」
向日葵「…………」
櫻子「…………」
櫻子「考えてなかった……」ばたっ
向日葵(バカですわ……)
櫻子「そうだな。よくよく考えれば自分の部屋って違うなー。うんうん」
向日葵「じゃあ今日はいったい何しにきたんですの」
櫻子「いいじゃんか、普通に泊まりにきたってことでさ」
向日葵「ま、まあ……///」
櫻子「ところでそれ何やってんの?」
向日葵「……課題ですわ」
櫻子「…………」
向日葵「早く帰って持ってきなさい。見てあげますから」
櫻子「かたじけない……」
――――――
櫻子「はーやっと終わったー」
向日葵「もう11時まわってるじゃありませんの……寝ましょうか」
櫻子「!」ばっ
もぞもぞ……
向日葵(?)
櫻子「ほら……こっちおいで?」ぽんぽん
向日葵「バカじゃありませんの……?/// それ私のベッドですし」
櫻子「一回やってみたかったんだよこれ!」
向日葵「どこで覚えてくるんですの全く……」もぞもぞ
櫻子「と言いながらも入るんだね」
向日葵「だから私のベッドですから」
向日葵「…………」
櫻子「ちょっとちょっと、そっち向いて寝る感じ?」
向日葵「だ、だって顔合わせで寝るなんてそんな……///」
櫻子「いや仰向けでしょ」
向日葵「あ……なるほど」
櫻子「まあ私は向かい合わせでもいいけどね」
向日葵「……あなたって最近なんか積極的というか……グイグイ来ますわよね」
櫻子「いいじゃん! 私たちキスもしたんだからさ!」
向日葵「ちょっと、恥ずかしいからあまり言わないで欲しいんですけど……///」
櫻子「えー」ぶーぶー
向日葵「だいたいあなたあの時泣き止まなくて大変だったじゃないの」
櫻子「それは言うな! 恥ずかしい!」
向日葵「むちゃくちゃですわね……」
向日葵「櫻子……私はもうちょっとなんというか、静かでいたいですわ」
向日葵「私たちが付き合ったからどうこうとかじゃなくて、今まで通りでいたい」
向日葵(私と櫻子の距離のままでいたい……)
向日葵「櫻子のことが嫌いになったとか、そういうのじゃありませんわよ? ただ……」
向日葵「……あら?」
櫻子「zzz………」スゥスゥ
向日葵(嘘でしょ……)
向日葵「もう! バカ櫻子……!」ぷに
向日葵(まったく……///)もぞもぞ
櫻子(……ふふ。ありがとう、向日葵)
――――――
*
ピンポーン
撫子「おお、ひま子」
向日葵「櫻子います?」
撫子「それがさ、なんか今朝からいないんだよね。どこ言ったんだろ。もうお昼過ぎたのに」
向日葵(ま、また思い出の場所さがしかしら……)
撫子「もうそろそろ帰ってくるんじゃないかとは思うけど、ごめんね」
向日葵「いえ。ちょっと時間置いてまた来ますわ」
向日葵(そんなに、大事かしら……思い出の場所って)
向日葵(私を放っておいてでも探さなきゃいけないことなのかしら)
向日葵(って、それは……私が最初に行かないって言ったからか)
向日葵(でもこの前誘ってくれたときは、嬉しかったし、楽しかった)
向日葵(こんな思いするなら、一緒に行けばよかった……///)
向日葵「せっかくクッキーだって焼きましたのに、これじゃ冷めてしまいますわ」がさがさ
向日葵(……どうせあの子は、お昼も食べずに探してるんでしょうね)
向日葵(もうひとつ、カップケーキでも作ろうかしら)
~
ウ"ーン……
向日葵(…………)
向日葵(な、なんなの? さっきから胸が重い……)グッ
向日葵(どうしたのかしら私……なんか嫌な予感というか、変に緊張しているというか……)
向日葵「う、ぅ……」がくっ
向日葵(櫻子に……会いたい……)
楓「おねえちゃん、どうしたの!?」
向日葵「えっ! な、なんでもありませんわ?」
楓「うそなの……顔真っ白なの!」
向日葵「え、そんなに……??」
楓「手も冷たいの……どうかしちゃったの?」
向日葵「いえ、私は大丈夫だと思うんですけど……」
楓「…………」ソワソワ
向日葵「ふふ、心配しなくても大丈夫ですのよ楓……私はなんともありませんわ」ぽん
楓「そ、そう?」
向日葵「ええ」
どくん、どくん。
――――――
向日葵「…………」
向日葵(なぜ……チャイムを鳴らすのが怖い……)
向日葵(櫻子、いるかしら)
~♪
向日葵「あ、あら。メール……」
向日葵(え、撫子さんから?)
[ 櫻子がまだ戻ってこないんだけど、どこ行ったか知らない?
とくに書き置きとかもないからさ、もう暗くなるし……
しかも部屋見たら櫻子携帯忘れてったみたいでさ、連絡手段無いんだよ。
何か知ってたら教えてくれる? ]
向日葵「っ……!」
櫻子になにかあったんだ。
直感的にそう思った。
向日葵「櫻子!」だっ
――――――
どうにも嫌な胸騒ぎがしていた。
櫻子が、どこか遠くへ行ってしまう感覚に襲われた。
迷子になって帰れなくなっているのかもしれない。
事故にあってしまったのかもしれない。
全部の可能性が、リアルに想像できてしまう。
向日葵「嫌……いやっ! 櫻子!」
頭がいっぱいで、自分がどこに向かっているのかもわからない。
ただただ、あてもなく走った。
息がつまりそうになる。
叫び出したい。足は止まらない。
たまった涙を風で飛ばし、ただ走った。
櫻子のことだけを考えながら。
――――――
櫻子「………んー」
やばい。真面目にやばい。
櫻子「どこなんだここは……」
櫻子「完全に迷子だなこれは」
櫻子「こっちが山だから、私の家は……あれ?」
櫻子「やべーわからん! というかお腹すいたー!」
櫻子「……どうしよう、このまま迷子のまんまだったら」
櫻子「あー、そんときは誰かの家に電話借りればいいのかな」
櫻子「でも他の家に迷惑かけたらねーちゃんに怒られるしなぁ……どうしよう」
櫻子「こんなとき指笛が使えたらなぁ、じいや的な人がきてくれるかもなのに」
櫻子「あ! 向日葵にもらった鈴があったな!」チリン
櫻子「…………」
櫻子「ま、まあこれ鳴らしたところでって話だけどさ……///」
タッタッタッ……
櫻子「?」
向日葵「櫻子!」
櫻子「うぉー! 向日葵来たー!」
向日葵「はぁっ! はぁ……」
櫻子「すげーすげー! 向日葵の鈴鳴らしたら向日葵が来てくれたー!」
向日葵「うっ、ううぅぅ……」
櫻子「えっ!? お、おい何で泣いちゃうんだよ……」
向日葵「櫻子……よかった……!」
櫻子「喋るな喋るな。走った後だと息できなくなるぞ」ぽんぽん
櫻子(向日葵がこんなに疲れてるの見たことない……)
櫻子「お、あそこにベンチあるじゃん。座ろっか」
~
櫻子「…………」
向日葵「…………」ぎゅっ
櫻子「ちょっと、痛いよ」
向日葵「…………///」
櫻子(目が赤い……泣いたんだな。そんなに心配させちゃったんだ)
櫻子「ごめんね」
向日葵「……いいですわ」
櫻子「よく私がここだってわかったね」
向日葵「神様が教えてくれたんですわ」
櫻子「神様ねぇ」
櫻子「…………」なでなで
向日葵「…………///」
櫻子「今回、全然収穫なかったよ」
向日葵「……構いませんわ。でももし次に行くときは、私を誘って頂戴」
櫻子「やっぱり一緒に来たいんじゃん」
向日葵「そうですわね」
櫻子(……素直だな)
櫻子「私がいなくなるとでも思った?」
向日葵「………ええ」
櫻子「そっか……」
櫻子「で、ここどこなの?」
向日葵「…………」
櫻子「え、もしかして向日葵にもわかんない……!?」
向日葵「だ、だって私神様の声を聴くのに必死でここがどこだかなんて……」
櫻子「もう神様ネタはいいからさ! これじゃ助けに来てくれたのにあんまり状況変わんないじゃん!」
向日葵「ネタじゃありませんわ! 本当に何も考えずに走ってたらここに……走ってるときの記憶なんて全然ありませんもの」
櫻子「んー困ったなぁ……これじゃ二人とも迷子だ」
向日葵「ところで携帯ならありますわ」
櫻子「でかした!」
櫻子「とりあえずねーちゃんにかけようかな」
向日葵「撫子さんもすごく心配してましたわ」
櫻子「げ……怒られるかな」
向日葵「貸しなさい」バッ
櫻子「あ! 勝手にかけるな!」
向日葵「いいじゃない、私の携帯ですもの」
櫻子「かけるのは私のねーちゃんだぞ!」
向日葵「撫子さんは私のお姉さんでもありますわ!」プルルル
向日葵「あ、もしもし撫子さんですか? 櫻子を無事に保護しましたわ」
櫻子「一緒に迷子になってるんだから保護されたわけじゃ……」
向日葵「はい……はい」
向日葵「櫻子に代わってって」
櫻子「……も、もしもし……?」
『バカ!! どこほっつき歩いてんのさ!』
櫻子「うるっさ……」
向日葵(受話器持ってないのにここまで聞こえますわ……)
櫻子「仕方ないじゃんよ! そう! ……え? 頭は関係ないだろこらー!」
向日葵(何話してるかだいたい想像つくのが面白いですわね)
櫻子「そう! そうなの。……んーとね、なんか山の方」
櫻子「わかんないんだよ。こっち来たことないから……」
「行ったことないとこに一人でいくんじゃないよ」
櫻子「え?」
向日葵「な、撫子さん!?」
撫子「よかった。二人とも無事だね」
櫻子「え、なんで!? 電話しながら探してたの!? でもう見つけてくれたの!?」
撫子「アンタのいく場所くらいわかるんだよ。なんてったってねーちゃんだからね」
櫻子「答えになってない!」
撫子「よし帰ろう。花子たち待ってるよ」
櫻子「あー……まあ何はともあれ助かったからよかったー」
向日葵(撫子さん……本当はどうやって見つけてくれたんですの?)ヒソヒソ
撫子(あの子昔からご近所冒険が好きだったからね……靴にGPS発信仕込むなんていつものことさ)
向日葵(え……)
櫻子「なに、なんの話?」
撫子「あんたが可愛くて仕方ないって話」
櫻子「ええっ!?///」
向日葵「し、してませんわ! してませんわ!」
撫子「そうだ。面白いとこ連れてってあげるよ」
向日葵「面白いとこ?」
櫻子「帰るんじゃないのかよ」
撫子「どうしても見せたいんだよね」
撫子「私の思い出の場所」
櫻子・向日葵「!!」
あんたちちは、この町が好き?
聞くまでもないよね。
ここで生まれて、ここで出会った全て。
生まれてからほとんどの時間を一緒に過ごしている私たち。
いろんな思い出があるでしょ?
その全てが、ここからなら見渡せるんだ。
撫子「凄いでしょ?」
櫻子「うわぁ……!」
向日葵「綺麗………」
夕日に照らされた町の全てを、撫子の高台は映していた。
今日も、迷子になってよかったね。
――――――
スタスタ……
櫻子「んー……」
向日葵「何悩んでるんですの?」
櫻子「思い出の場所さがし! ねーちゃんにあんなの見せられちゃったら……あれよりすごいの見つけなきゃいけない感じするじゃん!」
向日葵「ふふ……」クスクス
向日葵「ちなみに私はもう見つけましたわ」
櫻子「うそ!? え、どこどこ!?」
向日葵「ここですわ」ぴたっ
櫻子「……は?」
向日葵「こ・こ」ぎゅっ
櫻子「えーっと……///」
櫻子「こんなしょぼい道端?」キョトン
向日葵「そうじゃありませんわよ、ここ!」
櫻子「いやだから、ここただの通学路じゃん」
向日葵「櫻子の隣ですわ」
櫻子「あ……」
向日葵「いろいろ回ってわかりました。私は櫻子が隣にいれば、どんな場所でも構わない」
向日葵「私の思い出の全部は、あなたの隣にあったんですわ」ぎゅっ
櫻子「じゃあ、私の思い出の場所は向日葵の隣ってことか」
向日葵「…………///」
櫻子「…………」
櫻子「……っふふ、あはははははは!」
向日葵「わ、笑わないでくださるっ?」
櫻子「だって向日葵今めっちゃかっこつけてたんだもん! 」
向日葵「別にいいじゃない!///」
櫻子「いやーかっこよかったよ向日葵」
向日葵「……なんかバカにされてる感じになってきましたわ」
櫻子「バカにはしてないよ!」
櫻子「じゃあ私は、向日葵の隣から離れないでいてあげなきゃだね」
向日葵「ええ……私も離れませんわ」
櫻子「私がちょっとでも離れたら向日葵泣いちゃうもんね」
向日葵「はぁ!?/// そんなことありませんわ!」
櫻子「この前泣いてたじゃん!!」
向日葵「あれは、まさか自分の住んでる町で迷子になるほど頭が足りない櫻子が可哀想で仕方なくて涙が出てしまったんですわ」
櫻子「うそつけー!! 一緒に帰れなくなってたくせにー!」
向日葵「別に私本当は帰り道ぐらいわかってましたわー櫻子と違って!」
櫻子「あーそっか! 向日葵には神様の力があるんだもんね!」
向日葵「なっ……!?///」
櫻子「あー流石に神には勝てないわー……いくら私でも神には勝てないわー」
向日葵「かっ、神様をバカにしないでくださる!?」
櫻子「神様(笑)」
向日葵「その口塞いであげましょうか」
櫻子「え? キスで?」
向日葵「窒息死させてあげますわ」ゴゴゴ
櫻子「一瞬嬉しいかと思ったけど怖いわ!」
向日葵「あれ……? ちょっと待って?」
櫻子「え?」
向日葵「ここどこですの?」
櫻子「あ、あれ!? 私たち普通に通学路歩いてて……」
向日葵「…………」
櫻子「…………」
向日葵「櫻子のせいで迷子ですわー!」
櫻子「ちょっ、私のせいにすんなー!!///」
~fin~