学校/朝
ガラガラッ
マミ「おはよう。あ……。また机の上に花瓶……」
クラスメート『ヒソヒソ』
女子生徒A「あー、巴サン生きてたの?」
女子生徒B「私たちで弔ってあげていたのに」
女子生徒C「迷惑ですわね」
マミ「えっと。ご、ごめんなさいね」
女子生徒A「自分で片付けておきなよ」
マミ「ええ……(いつまで、こんな毎日が続くのかしら)」
元スレ
マミ「友達なんかじゃねえ」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1337784304/
学校/休み時間
女子生徒C「巴さん?」
マミ「な、なにかしら」ビクッ
女子生徒C「次の時間は第二音楽室に変更らしいわよ」
マミ「そうなの? ありがとうねCさん」
女子生徒C「ふふふ。クラスメートじゃない」
第二音楽室/
マミ「あれ? 誰もこないわね……。やっぱり……嘘なのね」
教室/昼休み
マミ(ふふ、お弁当の時間ね。でも、ここでは食べられないのよね)チラッ
クラスメート『ヒソヒソ』ガタガタ
マミ「(ほら、みんな離れていく)」
トイレ/昼休み
マミ(屋上は眩しいし、ここぐらいしか。あ、誰かきたわ)
女子生徒B「ははっ。やっぱり巴のやついじめるのは気持ちいいわね」
女子生徒C「あんまりやりすぎますと、気の毒ですわよ。くすくす」
女子生徒A「なんだよ、いつも考え付くのはお前のくせに」
女子生徒C「そうだったかしら?」
マミ(Cさん……)
女子生徒B「ねえ、なんか臭くない?」
女子生徒A「お、そうだな。なんかメシ臭いな。まさか、巴のやつ」
マミ(!)ビクッ
女子生徒C「まさか、あのお品のよろしい巴さんがトイレでご飯なんて、ねえ」クスクス
女子生徒A「そうだなぁ、バケツ、バケツっと」ジャバババババ
マミ(ほっ)
女子生徒A「あるわけねえっよなっ。っこらしょっ」
ザバー
マミ(冷たいっ!)
ABC『はははははは!』
女子生徒C「あら、バケツで水撒いたりして個室が水浸しですわ」
女子生徒A「掃除だよ掃除」
女子生徒B「Aは優等生だね」
女子生徒A「だろー。はっはっは!」
マミ(……お弁当は無事)
女子生徒A「さ、教室戻ろうぜ」
マミ(あれ? 大好きな卵焼き……お砂糖沢山入れたのにしょっぱいわ……)
風見原/ゲーセン/昼
QB「やあ、杏子」
杏子「なんだよ、めずらしいじゃねーか」
QB「キミにお願いがあってね。魔女退治さ」
杏子「ふーん。でもこの辺にゃ十分すぎるくらい魔法少女はいるだろ。マミだってさ」
QB「残念だけど、そのマミが問題なのさ」
杏子「どういうことだ」
QB「僕としては早く魔女になってもらいたいんだけど、なかなかね」
杏子「おい、何言ってんだQB」
QB「エネルギー回収に力を貸してほしい、と言っているのさ」
杏子「……話を聞いてやろうじゃねーか」
学校/放課後
男性教師「巴、昼からジャージ着てたみたいだがなにかあったのか」
マミ「い、いえ。プールの傍をお散歩してたら足を滑らせてしまって」
男性教師「プールはまだ立ち入り禁止のはずじゃないか。三年にもなってなにしてるんだ」
マミ「す、すみません」
男性教師「あんまり心配かけるな。お前らしくない。以後気をつけるように」スタスタ
マミ「はい……(怒られちゃった)」
女子生徒A「巴ー」
マミ「あっ」ビクッ
女子生徒B「なにびくついてんのよ。私たちがなにかしたの?」
女子生徒C「巴さん、Aの『お掃除のこと』でも先生にお話していたのかしら」
マミ「し、していないわ、そんなこと(言ったところで、解決しないもの)」
女子生徒A「え、なに? 巴ひょっとしてあのときトイレにいたの?」
マミ「……」
女子生徒B「だからジャージだったんだ。あはは!」
女子生徒A「ごめんねー。いるなんて知らなくってさ」
マミ「い、いいの。間の悪い私がいけないの」ヒクヒク
女子生徒A「なんだよ、その目は」
マミ「ひっ」
女子生徒A「なんか私がいじめてるって言ってるみたいじゃねーか」グイッ
マミ「う、くっ」ビクビク
女子生徒C「痕が残るようなのは避けるべきですわ」
女子生徒A「わーってるよC。けどむかつくんだよ。その完璧ですよってツラがよ」
マミ「ひっ」
女子生徒A「私たちが全部間違ってるって顔が、哀れむようなその目が、全部、全部気にくわねえ」
マミ「ち、ちがっ」
女子生徒A「なんで、なんでなにもかも失ったはずのあんたが!」
女子生徒C「Aさん!」
女子生徒A「はっ……。くそっ」パッ
マミ「……」オドオド
女子生徒B「キッ」パァン
マミ「いたっ」
女子生徒C「Bさんっ」
女子生徒B「いいのよ、明日は休みだし腫れも引くわよ。みんな。帰ろ」
女子生徒A「チッ」
女子生徒C「さよなら」
マミ「ヒッ、ヒクッ。エグッ」
マミ自室/夜
マミ「パパ、ママ。もういやだよぉ。こんなの、こんなのぉ。
辛いの、苦しいの、寂しいの。ぐすっ、やだ、やだぁ……」ポロポロ
マミ「……すぅすぅ」
QB「寝てしまったね、マミ。でも、大丈夫だよ。苦しいのはもう終りだ」
杏子「ひでえな」
QB「しかたがないよ。これも魔法少女の宿命だ」
杏子「マミは……。よく頑張って……いや、なにも言えねえよ」
QB「頑張ってる、という表現は適切ではないのかい?」
杏子「こんなの根性や強さじゃねえよ。もっと別の……悲しいなんかだよ」
QB「そうかい。やっぱり人間は理解できないね」
杏子「マミ、こんな生きたまま死んでいるような日々はもう終りにしてやるよ。あたしのこの手でね」
学校/昼休み
女性教師「巴さん、最近あなたがいじめられてるって話を聞いたのだけど本当?」
マミ「え? いえ! そんなことないです」
女性教師「匿名で連絡があったの。無視されたり、数人から暴力を受けてるって」
マミ「え?」
女性教師「やっぱり本当なのね。その子たちには私から話しておくから心配しないでね」
マミ「だ、だめっ」
女性教師「いいのよ、無理しなくて。ときには大人を頼ってね」
マミ(それじゃあ、あの子たちもっと……)
校舎裏/放課後
女子生徒A「マミぃ!」パシンッ
マミ「きゃっ」
女子生徒B「まさかチクるとはね。いい度胸してるじゃない」
女子生徒C「巴さんのことは信じていたのに」
マミ「知らない、本当に知らないの」
女子生徒B「はんっ。あんたも他の連中と一緒よ。そうやって自分が一番大切なのね」
マミ「なにも、言ってないわ! 本当よ!」
女子生徒A「今更信じられるかあ!」パシンッ
マミ「きゃっ。……違うのに、違うのに」プルプル
女子生徒B「泣いたって白々しい!」ヒュンッ
屋上/同時刻
QB「限界かな」
杏子「あたしの我慢がね」
QB「ソウルジェムがだよ。でも、まだ一歩足りない」
杏子「もう十分苦しんだだろう。これ以上なにをさせるっつうんだ!」
QB「マミがマミであるうちは希望を失えないのさ。君の言っていた悲しいなにか、それがソウルジェムの最後の一点を濁さずにいるんだよ」
杏子「じゃあ、どうするんだよ。このままじゃあたしがキレちまうよ」
QB「杏子、ソウルジェムを出してくれるかい」
杏子「こうか?」
QB「それじゃあ、マミの代わりに最後の引導を渡してあげてきてくれ」キュインッ
杏子「あたしのソウルジェムの色が少しずつ変わって……」
校舎裏/同時刻
パシンッ
マミ「……ってーな」
女子生徒B「そ、その目はなによ! あんたが悪いんじゃない!」
マミ「そうだな、確かにマミも悪ぃよ。なんでも許せばいいってもんじゃねえ。勿論あたしは許さないけどな」ユラッ
女子生徒C「許すとか許さないとか、大人か神様にでもなったつもりですの?」
マミ「大人は信じられねえ。神様なんつーもんはいねえ。そんなの当たり前だろう? なに期待してんだよ」
女子生徒A「はあ?」
マミ「家庭崩壊で弟が自殺。両親が毎日喧嘩であんたにもDV。絵に書いたようなクソ家族だな」
女子生徒A「ば、バカにするなあ!」シュッ
マミ「うるせえよ」サッ ヒュンッ
ボグッ
女子生徒A「ぐうっ」
マミ「弱すぎるよ、あんた。拳も心も。まだ取り返せる場所に家族がいたのに我侭言ってんじゃねえ」
女子生徒A「がはっ、はあ、はあ。あんたに、あんたに私のなにがわかんだよ!」
マミ「ちょっと現実が嫌だからって、他人に当たるやつらの気持ちなんて、わかりたいとも思わねえよ」
女子生徒B「なによ、マミのクセに! なんの取り得もなく社会に埋まってく怖さなんて知りもしないで!」
マミ「マミが味わってきた恐怖に比べたらお前のは甘えだ。孤独に、痛みに、絶望に、怯えながら笑ってるマミの強さを舐めてんじゃねえよ」
女子生徒B「ひっ」
女子生徒C「なに一つ自分で選べない人生に希望なんてないのよ! お兄様が家のすべてで女に生まれた私はただの道具で飾りなのよ! 希望がないのよ!」
マミ「ぴーぴー鳴いてんじゃねえよ。最後の希望を自分で売ったお前が何を言ってんだ。責任とれよ」
女子生徒C「なにを言ってるのよあなたは」
マミ「QBから聞いたぜ。お前ら三人『魔女になりたい』って願ったんだってな」
屋上/同時刻
杏子「あれ? 私……佐倉さんの体に? どうして?」
QB「肉体がハードウェアならソフトウェアの交換も可能だということさ、マミ」
杏子「そんなこと聞いているんじゃないの。あそこに杏子さんがいるの? 私が受け入れてあげないとあの子たち……」
QB「それがまさに杏子の目的さ。彼女は三人を魔女にし、君を解放しようとしているのさ」
杏子「そんな」
QB「マミが受け入れている限り、三人はこの世に未練……いわば生きている希望を持ってしまう。だから、杏子は希望から突き落とすためにマミの体を使っているんだ」
杏子「私を頼ってたのは知ってたわ! だから私はずっと我慢してたの! やめて、すぐ体を戻して!」
QB「それはできない。そもそも彼女達の願いは『魔女になりたい』だったからね。叶えてあげたっていいと思うのだけど」
杏子「え?」
QB「けれどそんな願いではエネルギー効率がよくないから、少しばかり魔法少女として生きてもらったのさ」
杏子「酷い。もしかしたら希望を持てたかもしれないのに」
QB「人間で言えば酷いのは彼女達のほうじゃないかな。
社会の中でのキミの地位を貶め、日常を破綻させ、恐怖と痛みの日々を強いた。
どこに許す余地があったというんだい?」
杏子「でも、私、私は……」
QB「マミがどう思おうとも勝手だけど、そのことで胸を痛めていた人がいることも忘れてはいけないよ」
杏子「佐倉……さん」
QB「……」
校舎裏/同時刻
マミ「マミが眩しかったんだろう?
羨ましかったんだろう?
慰めて欲しかったんだろう?」
女子生徒C「うるさいうるさいうルサイ!」
女子生徒A「黙れエ!」
女子生徒B「お願い、マミやめテ!」
女子生徒A「マミ、どうしてそんなこと言ウノ? 私たち、友達じゃナい」
マミ「ふざけんな。マミを傷つけた時点で友達なんかじゃねえんだよ」
女子生徒B「ねえ、マミ。タスケテよ。こワイよ。さビシいよ」ピシッ
女子生徒C「アイシテ? だきしメテ。マミ、ワタシにホホエンデ?」キシッ
女子生徒A「ヤダ、ヤダ、マミがイナいとカエルトコロがない。ワタシ、ワタシ!」パキッ
マミ「聖母だと思った? 残念、背徳シスターでした!」
パリン
ABC『グヴォォォォォォ!』
マミ「変身っと。この体と衣装は新鮮なもんだね。しかし胸の重量感がすげえな……///」
魔女A「ギャァァ」
魔女B「ギギギ」
魔女C「キィィ」
シュシュッ
マミ「おっ、そんな場合じゃなかった。はっ」キンキンッ
魔女B「ギァアア!」ドゴンッ
マミ「Aはライオンで、Bはブリキのきこり、Cは案山子。ま、いずれにしても空っぽだな」
魔女A「グァアォ!」
マミ「くたばれ!」
魔女C「キィ!」ガガガガガ
マミ「ライ麦弾かっっ。くそっ、近づけねえ……。あ、ひょっとして」シュルッ
ヒュンヒュンッ
マミ「リボン結界だっ!」
ギュルッ
魔女A「ガァ! グァアア!」
マミ「しばらく大人しくしてなっ!」
魔女B「ギッ」ブォン
マミ「そんな斧の大振りなんてっ!」ヒュッッ
ヅゴンッ
魔女B「ギイイイアァァ!」
ドゴーン
マミ「いっちょあがり! あんたはこいつで!」
魔女C「キッ」ガガガガガ
マミ「ジャーロ・ファンタズマ! おらー!」
魔女C「キィィィィ……」
ボンッ
マミ「ふたつめあがりっ!」
魔女A「ゴァ」バキンッ
マミ「くっ、結界が解けた。まあいい、速度上げるぜ。さらに変身っ」ピカッ
魔女A「ガアッ」
マミ「やっぱ法衣は自分の方が動きやすいや。はぁっ!」ヒュヒュッ
魔女A「グォアアア」キンッ
ガキン
マミ「あたしの槍に爪で挑もうってのかい?
悪いけど、いまさら正々堂々なんてもんに付き合う気はないんだよ! とぉ!」
魔女A「グ?」
マミ「さあ、あの世でマミに詫びな! ティロ・フィナーレ!」
・
・
・
屋上/夕方
マミ「よぉ、マミ」スタッ
杏子「佐倉さん、どうしてこんなこと」
マミ「QBがマミが可哀想だから助けて欲しいって頼みにきたんだよ」
QB「僕はそんなことを言った覚えはないね。エネルギー回収を急いだだけだよ」
マミ「だったらマミごと魔女にしちまえばいいじゃねえか」
QB「キミがどう思うと勝手だけど、僕が嘘をつくメリットはないよ」
杏子「勝手に話を進めないで。
どうしてあの子たちを助けてあげなかったの、信じてあげなかったの」
マミ「うるせえ」ギュッ
杏子「え?」
マミ「お前一人が傷ついてなにが守れたんだよ。
闇雲にあいつらを苦しめただけじゃねえか。それだけじゃねえ。
あたしだって……あたしだって」
QB「彼女達が契約をした時点でもうマミが救うことはできなかったんだよ。
人間としても、魔法少女としてもね」
杏子「でも、私……一緒に魔法少女ができるかもって……お友達になれるかもって」
マミ「友達ならあたしがいるじゃねえか!
まったくどんだけ『お友達』に飢えてるんだよ。もう、離れねえから心配するな」ポンポン
杏子「そ、それじゃあ佐倉さん」
マミ「毎日うまいメシ作ってくれよ。片付けぐらいはやるからさ」
杏子「うん、うん!」
QB「それじゃあ、早く帰ってケーキでも食べようか。気になってる店があるんだ」
杏子「ふふ、QBったら」
マミ「しかし、この体であたしの法衣だと胸のソウルジェムんとこすごいことになるのな。
ちょっとびっくりしたぜ」
杏子「や、やだ、そんなこと言わないで。それに変身解いてもいいんじゃないの?」
マミ「間にタイヤキだって挟まるぜ。ほれほれ」パヨンパヨン
杏子「もう! QB早く体もとに戻してよ!」
QB「そうだね。今後魔法少女のトラブルは杏子に相談すると約束するなら考えようか」
杏子「する、するからお願いっ」
マミ「おもしろいから一晩このままにしようぜ」
QB「僕は構わないけれど、マミにキミの体を知られることになると思うよ」
マミ「うへ。じゃあケーキ買いにいくまでな」
杏子「二人とも遊ばないでよー!」
マミ「あはははは!」
杏子「もうっ! ……でも、二人とも心配かけてごめん。そして本当にありがとうね」
QB「きゅっぷい!」
マミ「ははっ!」
杏子「くすっ」
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マミ「友達なんかじゃねえ」 end.
54 : 以下、名無しにかわ... - 2012/05/24 01:00:48 5nXYm8P90 24/24コメントありがとうございました
マミさんが強気な台詞吐きながらクールにヤンキーをぶっとばすのが見たくて書いた
けどマミさん大好きだから前半書いてるときは心がすごく濁ったよ
ごめんね、マミさん
救えたんでしょうけどねぇ……