1 : 以下、名無しにかわ... - 2012/05/23 14:52:29 cQUCzZhJ0 1/33

「うん」

「どういうルールなんだ?」

「私が痛ければ痛いほど高額のお金がもらえるんだよ」

「つまり思いっきり殴ればたくさんお金がもらえるわけだ」

「その通り!」

「出資は?」

「国だよ」

「国なら仕方ないな」

元スレ
兄「妹を腹パンするとお金がもらえるだって?」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1337752349/

2 : 以下、名無しにかわ... - 2012/05/23 14:53:40 cQUCzZhJ0 2/33

「メリケンはアリか?」

「道具はダメみたい」

「ダメか……頼れるのは己の拳のみってわけだ」

「うん」

「ふぅ……軽く準部体操していいか?」

「どうぞどうぞ」

5 : 以下、名無しにかわ... - 2012/05/23 14:56:39 cQUCzZhJ0 3/33

「いっちに、さんっし! ごぉろく、しっちはちッ!」

「身体固いね」

「俺は帰宅部。これで普通」

「ふーん」

「今の態度、何かむかついたな」

「やる気上がった?」

「泣かしてやる」

「できるもんならど」

「おらぁッ!」 ボコッ 妹「うく……ッ」

6 : 以下、名無しにかわ... - 2012/05/23 14:59:17 cQUCzZhJ0 4/33

「はぁ、はぁ……どうだ!」

「……三円」

「なんだと?」

「三円。全然痛くない」

「うくっ、とか言ってたろッ!?」

「殴られ慣れてないもん、痛いよ。でも今は全然」

「くっ、このぉ!」 ボコッ ボコッ

「……っ……五円」

「ご、五円っ!? たったッ!? たった五円ッ!?」

11 : 以下、名無しにかわ... - 2012/05/23 15:02:32 cQUCzZhJ0 5/33

「三発目は慣れたから」

「……」

「兄って……貧弱?」

「……」 プツンッ

「この調子じゃ一生かかっても、本一冊も買えな……」

「おらぁッ!」 ブンッ

「ひ……っ! く、うっ、ひ……ぃっ」 ガクッ

「どうだよッ!? まだ痛くないかッ!? あぁッ!?」

「き……キックは……ルールいは……ん……っ」

「知るか!」

12 : 以下、名無しにかわ... - 2012/05/23 15:05:16 cQUCzZhJ0 6/33

「最……低……ッ」

「……あ、悪い。その、カッとなって」

「……」

(気まずい……)

「……」

「じゃ、じゃあな」

(逃げるわけじゃない……逃げるわけじゃない……)

13 : 以下、名無しにかわ... - 2012/05/23 15:07:33 cQUCzZhJ0 7/33

「……俺は何を間違えたんだ」 フラフラッ

「妹に貧弱なんて言われて……」

「くそ……俺が、俺が悪いんじゃない……俺が悪いんじゃない……」

「おらぁッ!」「ごふッ」「へばるには早いだろうがよ!」

「な、なんだ、あれは……喧嘩?」

「けっ。殴りがいもねえぜ」

「……」

「なに見てんだ」

「い、いえ、あの……強いな、と思って」

「あぁ?」

15 : 以下、名無しにかわ... - 2012/05/23 15:09:33 cQUCzZhJ0 8/33

「俺なんて、人も満足に殴れないし、その癖、すぐに切れるし」

「全然ダメだな、って」

「……お前、名前は?」

「兄です」

「俺を殴ってみろ」

「え?」

「いいから殴ってみろ」

「でも」

「お前はそれでも金玉付いてんのかッ!?」

「ひっ!? うわぁぁ!」 ポフッ

「腰が入ってねえんだよ!」

16 : 以下、名無しにかわ... - 2012/05/23 15:11:28 cQUCzZhJ0 9/33

「こ、こし?」

「お前の拳は肩だけで殴ってるんだよ。そんなもんが効くわけないだろうが」

「な、なるほど」

「まず下半身だ。走り込みから始めろ」

「え?」

「強くなりたいんだろう」

「……は、はい!」

17 : 以下、名無しにかわ... - 2012/05/23 15:12:54 cQUCzZhJ0 10/33

数週間後

「……」 ゴゴゴゴゴッ

「あ、兄?」

「なんだ?」

「なんか……変わった?」

「ああ。まあな」

「そ、そうなんだ」

「妹」

「なに?」

「殴るぞ」

「え?」

20 : 以下、名無しにかわ... - 2012/05/23 15:14:20 cQUCzZhJ0 11/33

「殴るぞ」

「……え?」

「殴っていいんだろ?」

「い、いいけど……」

「いいんだな?」

「い、いいよ」

「……」

「……」

「腹に力入れろ」

「お腹に?」

「しっかり入れろよ」

25 : 以下、名無しにかわ... - 2012/05/23 15:19:15 cQUCzZhJ0 12/33

「うん……んっ」 キュッ

「ふぅ。……おらぁッ!」 ブォンッ

「へ、うぐぇ……ッ、う、ぎッ、い……いッ……いッ……」 ビクビクンッ

「……」

「い……ッ、い……ッ、いだッ……いだ……い゛……ッ」

「で?」

「痛いぃ……痛い……っ」

「で、いくらなんだよ?」

「う……う……っ」

「いくらかって聞いてんだよ!」

「ご……五二三円……」

「安いな」

「うぅ……う……っ」

26 : 以下、名無しにかわ... - 2012/05/23 15:23:24 cQUCzZhJ0 13/33

「俺さぁ、欲しい物があるんだよね」

「ほ、欲しいもの……?」

「パソコン買い換えたいんだよね」

「ぱ、パソコン!?」

「十万もあればいいかな」

「も、も、もっと安いのあるよ!」

「やっぱ良いの欲しいじゃん?」

「私が使ってるあげるから」

「俺が今使ってるのの方が新しいじゃん」

「で、でも、十万円分も殴られたら私っ!?」

「……なあ、妹」


「死ぬかもしれない一発と、死ぬほど痛い数発……どっちがいい?」

31 : 以下、名無しにかわ... - 2012/05/23 15:28:00 cQUCzZhJ0 14/33

「どっちもやだ! やだぁ!」

「逃げるなよ。しょうがない奴だなぁ」 ギュッ

「ひっ、ひぃぃっ!」

「おらよ、っと」 グイッ

「は、放して、放して!」

「どっちも嫌なら仕方ないよな。死なない程度に痛いくらいにしとこう」

「そ、それ、それがいい!」

「つまり、さっきの拳だな。一発五百円だから、二百発か」

「に、にひゃ?」

「まあ大丈夫だ。内臓にダメージ入れば一発分の値段も勝手に上がるだろ」

「や、やだ、やだぁぁ!」

「いっぱぁぁつ!」 ブォンッ

「ひ、ぐ……うぇ、えぇぇ……ッ」

34 : 以下、名無しにかわ... - 2012/05/23 15:33:23 cQUCzZhJ0 15/33

「にぃぃぃはつ!」 ブォンッ

「うご……ぉ……ぉ……」 ビクンッ

「さぁぁぁんはぁぁつ!!」 ブォォンッ

「ぎゅ、う、うぇ、うぇぇぇ……ッ!」 ブルブルッ

「よぉぉぉんはぁぁつ!!!」 ブォォォンッ

「やめ、やめ……、えぐぅ……ッ!?」

「……痛いか?」

「あ、あっ、あぐ、うっ、うっ……」 ピクピクッ

「いくらだ?」

「うぐ、う、うぅ……」

「いくらかって訊いてんだよ」

「さ、三四九〇円……」

「まだまだだな」

37 : 以下、名無しにかわ... - 2012/05/23 15:38:52 cQUCzZhJ0 16/33

「も、もうやめて……死ぬ……死んじゃう……」

「……同じ所ばかり殴ってると、本当に死ぬかもな」

「う、うん、死んじゃう! 死んじゃう!」

「ここ、殴るぞ」

「え……?」

「ほら、下っ腹殴るもの飽きたし、たまに上の方をな」

「え……え……?」

「いくぞぉぉ!」 ブォォンッ

「ひ……おぶッ、ぐ、うげぇェ……ッ」

「……」

「う、うぇ、おぇぇぇぇ……ッ」 ビチャビチャッ

40 : 以下、名無しにかわ... - 2012/05/23 15:42:08 cQUCzZhJ0 17/33

「もう一発いくぞ」

「おぇ、うぇぇ……!」 ブンブンッ

「にぃぃぃはつ!」 ブゥゥンッ

「うぐぇぇぇッ! えぶっ、うッ、うッ!」 ビチャッ ビチャッ

「さぁぁぁんはつ!」 ブゥゥゥンッ

「うぶぅぅぅ! うぐぇ!? うぐうぇぇッ!?」 ビグビグンッ

「……」

「うぶっ、うっ、うぶ……っ」 ビクビクンッ

「ふぅ」

「うふぇッ、え……え……ッ」

「あ……あ……?」

「吐き終わったか?」

「う……」

45 : 以下、名無しにかわ... - 2012/05/23 15:48:28 cQUCzZhJ0 18/33

「今の合計は?」

「は……八七……七五円……」

「まだ一万円にもなってないのか。残念だ」

「……はぁ……はぁ……」

「おいおい、今からそんな調子じゃ、十万円になる頃には死んじゃうぞ?」

「う……うぅ……」 ポロポロッ

「俺だって、妹に死んで欲しくはないんだけどな……」

「じゃ……やめてよ……っ」

「なんていうかさ……俺、お前を殴って三円って言われた時、男として恥ずかしかったんだよ」

「……」

「たった三円だぜ。俺の拳に三円の価値しかないって言われてさ、変わりたいと思ったんだよ」

「そんなの知らないよ……」

「大丈夫だ。変わった俺をこれからたっぷり知ってもらうんだからな」

50 : 以下、名無しにかわ... - 2012/05/23 15:52:56 cQUCzZhJ0 19/33

「やだ……やだぁ……!」 ジタバタ

「うぉ?」 スルッ

「はぁ……はぁ……!」 タッタッ

「……まあ、いいか。一度に十万を稼ぐ必要もないわけだし」

51 : 以下、名無しにかわ... - 2012/05/23 15:54:19 cQUCzZhJ0 20/33

(殺される……)

(逃げなきゃ……)

「はぁ……はぁ……」

「おっと」

「きゃっ」

「大丈夫か?」

「た……助けてください!」

「ほう」

54 : 以下、名無しにかわ... - 2012/05/23 15:56:36 cQUCzZhJ0 21/33

「……」

「で、そろそろ事情を話してくれなきゃあ、俺にも何ともできないんだがな」

「……あの」

「ん?」

「私、帰ります……」

「ああ?」

「失礼しました……」

「いやいや。さすがにそのまま帰すわけにはいかねえだろ。何かあったんだろ?」

「でも」

「話せよ。悪いようにはしねえさ」

55 : 以下、名無しにかわ... - 2012/05/23 15:59:27 cQUCzZhJ0 22/33

「……それで、兄が、私のお腹を何度も、何度も……」

「なるほど、な。……ちょっと見せてみろ」

「見せる、って……」

「腹だよ、腹」

「……」

「見せて減るもんじゃねえだろ」

「……はい」 ピラッ

「……こいつは酷いな」

「……」

「あんだけ教えてやったのに、こんな汚ねぇ殴り方しやがって」

「あ、あの、それって」

「あ? あいつに殴り方を教えてやったのは俺だって話だよ」

58 : 以下、名無しにかわ... - 2012/05/23 16:03:04 cQUCzZhJ0 23/33

「え? え?」

「見てみろよ、この痣。打点が散りすぎてまばららで汚ねぇ」

「ちょ、ちょっと、あの」

「俺ならもっと綺麗に、もっと苦しませてやれるのにな」

「ひ……っ!?」

「ん? 何怯えてるんだよ。お前だって知ってたんだろ?」

「な、何を?」

「殴った奴は金をもらう。それと同じ額だけお前も金をもらう。そういうシステムなんだからよ」

「ど、どうしてそれを?」

「俺にも昔な、家族がいたんだよな」

61 : 以下、名無しにかわ... - 2012/05/23 16:07:28 cQUCzZhJ0 24/33

「俺は妹じゃなくて、姉貴がな」

「昔の俺は細っちくて、弱くてな」

「姉貴は俺が強くなるように鍛えてくれてなぁ」

「姉貴を殴ると、姉貴も俺も幸せになる」

「金もたくさん貰ったな」

「ただ……ちょっとな、俺は、人を殴るのが好きになりすぎてな」

「……ああ、まあ、事故だったな。ああ」

「一日中、ずっと姉貴を殴ってたら、姉貴、死んじまってな」

「何か言ってた気もするなぁ。やめて、とか、痛い、とか。すぐに言わなくなったから、まあ、大丈夫だと思ったんだけどな」

「まあ、事故だな、事故」

「あれからはちゃんと俺も手加減はするようにしてるんだけど、こうな。鍛えると面白そうな奴とか、殴りがいがありそうな奴とか見つけるとな」

「放っておけないんだよな」

「……なあ。あんたを殴ると、俺もあんたも幸せになれるわけだしさ……な? 今度はちゃんと手加減するからよ。な?」

64 : 以下、名無しにかわ... - 2012/05/23 16:12:14 cQUCzZhJ0 25/33

「……と、そうだ。漢さんに報告しておかないとな」


「漢さん、漢さん!」

「……あぁ、誰だッ!?」

「うわ! な、なんですか、漢さん」

「……ああ、お前か。で、何か用か?」

「いや、漢さんにお礼言っとかないとな、と」

「お礼?」

「いやぁ、漢さんに鍛えられたおかげで俺、変われましたよ!」

「そうか。そりゃ良かったな。俺もお前を鍛えたかいがあるぜ」

「……あれ」

「あんだ?」

「……」

「あんだよ?」

「失礼します」

「おい!」

66 : 以下、名無しにかわ... - 2012/05/23 16:15:36 cQUCzZhJ0 26/33

「……ぅ……ぁ……」 プランプランッ

「……」

「ったく、勝手に入るなよな」

「漢さん、これ」

「お前の妹だろ? 偶然会ってな。殴りがいありそうだったから、ついな」

「俺、聞いてないですよ」

「言ってないからな。まあ、面白かったぞ。小便やら胃液やらで床が汚れちまったが、まっ、後で片づけりゃいいさ」

「……漢さん」

「だから何だよ」

「人ん物横取りしちゃあ……いかんでしょう……」

「ほう」

「漢さん……あんた、やりすぎましたよ」

「やりすぎたら何なんだ? あぁ?」

「はははっ」

「ははははっ」

70 : 以下、名無しにかわ... - 2012/05/23 16:18:39 cQUCzZhJ0 27/33

「……ぅ……あ……?」

(あれ……ここ……)

(どこだっけ……)

「あんた、遊びすぎなんですよ」

「違いねえな……」

「人を痛ぶることばっか考えてるから、こうなるんですわ」

「けっ……」

「右腕、もらいますわ」

「好きにしろ」

「よいしょ……と」 ボキィッ

「……っ」

「養生してくださいや」

75 : 以下、名無しにかわ... - 2012/05/23 16:20:39 cQUCzZhJ0 28/33

「……」

「病院行くぞ」

「兄……」

「……」

「なんで?」

「背中、乗れよ」

「……」 ギュッ

「よし」

78 : 以下、名無しにかわ... - 2012/05/23 16:24:52 cQUCzZhJ0 29/33

「……」 スタッ スタッ

「……」

「思うにだな」

「ん」

「俺がお前をあんなにも殴りたかったのは、お前に認めて欲しかったからだ」

「……?」

「男のプライドを傷付けられた俺はだな、お前を殴らずにはいられなかったわけだ」

「……」

「しかしだ。俺はお前が嫌いだから殴りたいんじゃない。お前を俺の物にしたいから殴りたいんだ」

「狂ってる……」

「ああ。狂ってるさ。でもな、俺は漢さんみたいに『誰でもいい』なんて思えないな」

「あの人は誰でも彼でも痛ぶりたがる。俺のこともな。だから負けた。そこが俺とあの人の違いだな」

「なあ、妹」

「俺はこれから毎日お前を殴るから、俺を憎みたいだけ憎んでいいぞ? どうしようが俺はお前を殴るから」

「……死ね……キチガイ……」

79 : 以下、名無しにかわ... - 2012/05/23 16:27:27 cQUCzZhJ0 30/33

一ヶ月後

「……やっぱり、いないか」

「漢さんは、もう戻って来ないだろうな」

「……」

「ありがとうございました」

84 : 以下、名無しにかわ... - 2012/05/23 16:31:27 cQUCzZhJ0 31/33

「……帰ってきた」

「妹、どこだー?」

「……」

「また隠れてるのか。ったく、いい加減無駄だって気付かないかねぇ」

「……」

「そこだろ」 ガチャッ

「ひっ!?」

「やっぱりな。ほら、早く出て来いよ」

「放して!」

「ははははっ」

「……死ね! 死んじゃえ!」

「俺が死ぬ時はお前に殺されたいもんだな。さあ、今日も始めようぜ」 ブゥゥンッ

「うぐぇ……ッ……!」

「合計は?」

「……十万、飛んで、三一円……っ」

85 : 以下、名無しにかわ... - 2012/05/23 16:31:45 cQUCzZhJ0 32/33

完!

98 : 以下、名無しにかわ... - 2012/05/23 16:46:20 cQUCzZhJ0 33/33

時間があれば今の三倍は妹を殴らせてたとは思う
誰か腹パンSS書きたい人いたら好きに書いていいんだよ?

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