1 : 以下、名... - 2010/09/13(月) 23:18:40.80 rqBfPkY4O 1/153

8月31日。

「今日で夏休みも終わりかぁ~」

「宿題はちゃんとやった?」

「うん!バッチリ!なんてたって受験生だからね!もう終わったよ~」

「そうなんだ。よかったね~」

「うん、和ちゃんとみんなのお加減だよ~」



元スレ
唯「ブラックアウト」
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1284387520/

2 : 以下、名... - 2010/09/13(月) 23:23:14.89 rqBfPkY4O 2/153

「あ、もう夏休みも終わりだし最後に二人で何かやろうよ!」

「何かって何やるの~?」

「う~ん……」

「花火とか?」

「花火はもうやったよ~何か別の事をやろうよ!」

「別の事かぁーう~ん……」

「う~ん……」


4 : 以下、名... - 2010/09/13(月) 23:28:17.77 rqBfPkY4O 3/153

「やっぱり夏休みの最後の日はダラダラしてるのが1番だよ~」

「えー最後だし何かやろうよ!」

「でも何をやるかを考えてたら貴重な夏休みの時間が過ぎて行くよ!やっぱりダラダラしてるのが1番だよ!」

「じゃあ一緒にダラダラしよ~」

「おおっ!それ名案!」


5 : 以下、名... - 2010/09/13(月) 23:33:05.33 rqBfPkY4O 4/153

「名案かなぁ?」

「名案だよ~じゃあ憂こっちに来て~」

「うん!」

「一緒に寝よ~」

「は~い」

「はぁ~明日、学校かぁ~」

「うん!楽しみだね~」

「楽しみだけど私はもう少し夏休みを満喫したいな~」


6 : 以下、名... - 2010/09/13(月) 23:41:03.52 rqBfPkY4O 5/153

「私は少しでも早く学校に行きたいなぁ~」

「えーなんでぇー?」

「だってお姉ちゃんと学校に行けるし梓ちゃんや純ちゃんとも毎日会えるもん」

「あーそっかぁ!私もみんなと毎日会いたい!みんな勉強が忙しいみたいだから、あまり会って無いもんなぁ~」

「大変なんだねー……お姉ちゃんは大丈夫なの?」

「うん!大丈夫!」


8 : 以下、名... - 2010/09/13(月) 23:46:31.56 rqBfPkY4O 6/153

「本当の本当に大丈夫なの?」

「うん!大丈夫なんじゃないかなぁ~?」

「ちゃんとお勉強しなきゃダメだよ?」

「わかってる!」

「そっかぁ……でも、ちゃんと勉強しないと……コチョコチョコチョコチョ」

「あははははや、やめて~」


10 : 以下、名... - 2010/09/13(月) 23:51:18.06 rqBfPkY4O 7/153

「明日からちゃんと勉強する?」

「す、するからコチョコチョやめて~あははは」

「約束だよ~?」

「わかりました~だ、だからコチョコチョやめてー」

「じゃあやめる!」

「は、はぁ~もー憂ってば~」

「えへへ~」


11 : 以下、名... - 2010/09/13(月) 23:56:33.61 rqBfPkY4O 8/153

「私もコチョコチョしちゃおうかなー!」

「やめてよ~」

「さっきのお返しー!」

「やめて~!」

「……っとその前にトイレトイレ~」

「えぇー!」

「私がトイレから帰ったら続きね!」

「わかったぁ~」


13 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 00:03:06.64 HAz4a8o2O 9/153

「はぁ~お姉ちゃんのお腹プニプニしてて可愛いかったなぁ~」

「でも、少しだけ太ったような……気のせいかなぁ?」

「今日の夜ご飯はお野菜中心にしよっと」

「………………」

「お姉ちゃん遅いなぁ……」


17 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 00:10:11.13 HAz4a8o2O 10/153

・・・・・・・

「お姉ちゃん本当に遅いなぁ~もう20分ぐらい立ってるよ。早くお姉ちゃんからコチョコチョして貰いたいなぁ~」

「お姉ちゃーん!まだトイレにいるのー?」

「………………」

「あ、お姉ちゃん!長かったね~」

「…………え?」


19 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 00:30:45.45 HAz4a8o2O 11/153

「う、憂?」

「どうしたの?」

「何で私リビングにいるのかなぁ?トイレに居たはずなんだけど……」

「え?」

「いつの間にかリビングにいる!」


22 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 00:36:04.00 HAz4a8o2O 12/153

「どう言う事?」

「リビングに行った記憶が無い、ど忘れしたのかなぁ?」

「ど忘れ?」

「うーん分かんない。本当に何も覚えてないよ~あうっ……何だか急に頭が痛くなって来た……」

「だ、大丈夫?」


23 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 00:41:37.66 HAz4a8o2O 13/153

「う、うん……大丈夫だよ」

「本当に?少し横になろ?」

「うん……よいしょ」

「何か飲む?」

「あ、オレンジジュース飲みたいなぁ」

「うん、わかった。頭痛が治まるまでジッとしててね?」

「はーい」


24 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 00:47:39.52 HAz4a8o2O 14/153

「オレンジジュース持って来たよ」

「ありがとー」

「それと頭痛薬何だけど飲む?」

「うーん軽い頭痛だと思うからいいや」

「そっかぁ~あ、一応熱を計ってみるね」

「うん!」


25 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 00:52:37.32 HAz4a8o2O 15/153

「うーん熱は無いみたいだね」

「よかったぁ~」

「もう頭は痛く無い?」

「うん!憂のおかげでもう痛くないよ!」

「えへへ~よかったね!」

「うん!ありがとね!」


26 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 00:59:09.57 HAz4a8o2O 16/153

「でも、不思議な感じだなぁ~」

「何が?」

「だってトイレにいたのに、いつの間にかリビングにいるんだよ~」

「そう言えばお姉ちゃん?」

「どーしたの?」

「トイレで20分も何してたの?」


27 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 01:08:40.60 HAz4a8o2O 17/153

「トイレに20分もいなかったよ?」

「でも、お姉ちゃんがトイレに行ってリビングに来るまでの時間は20分ぐらい掛かってたよ」

「そうなの?私は5分ぐらいでトイレを終えて……そこから記憶が無い」

「うーん…そんな急にど忘れするものなのかなぁ?」

「だからど忘れって言うんだよ!」


28 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 01:15:09.38 HAz4a8o2O 18/153

「うーん……本当にお姉ちゃん大丈夫?」

「うん!」

「記憶喪失とかになったらどうしよう……」

「えへへー大丈夫だよ~」

「そ、そうかなぁ?」

「うん!大丈夫!あ、アイス食べようよ~」

「そうだね!えっと、今は何時かなぁ?」


32 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 01:22:34.82 HAz4a8o2O 19/153

「今は6時ぐらいかなぁ~あぁ!貴重な夏休みの時間がどんどん過ぎて行く……」

「そっか、6時かお夕飯の支度しなきゃ!」

「アイスーアイスー」

「ご飯食べてからにしようよ~」

「えー!」

「我慢したら二つ食べていいよ」

「じゃあ我慢する!」


33 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 01:28:39.51 HAz4a8o2O 20/153

・・・・・・・

「ごちそうさまでしたー」

「ごちそうさまでしたー」

「今日も憂の料理は美味しかったよ~」

「ありがとう」

「さてと、アイスアイス~」


34 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 01:36:26.21 HAz4a8o2O 21/153

「あれー?憂ー!アイス二つしか無いよ~」

「うん!そうだよー」

「憂の分のアイスが無い」

「私の事は気にしなくていいからアイス二つ食べていいよ」

「それじゃあなんか申し訳ないよ~一緒に食べよ?」

「いいの?」

「うん!早く一緒に食べようよアイス溶けちゃうよ~」

「うん!ありがとうお姉ちゃん」


36 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 01:45:42.62 HAz4a8o2O 22/153

「アイス美味しいね~」

「うん!」

「はぁ~今日で本当に夏休みが終わるんだね~」

「何だか寂しいね」

「だね~夏の終わりって感じで本当に寂しい」

「アイス食べ終わったら一緒にお風呂入ろ?」

「いいよ~」


37 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 01:55:09.79 HAz4a8o2O 23/153

・・・・・・・

「ふーいいお湯だったね~」

「だね~今日はもう寝るの?」

「うん!明日は早いしね~憂、今日は一緒に寝よ?」

「うん!」

「えへへ~じゃあ私の部屋で一緒に寝よっか!」


39 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 02:02:27.12 HAz4a8o2O 24/153

「憂ーもう少し横にズレて~」

「え~お姉ちゃん場所取り過ぎだよ~」

「そうかな~?」

「私、ベットから落っこちちゃうよ~」

「じゃあ場所帰る?」

「ううん大丈夫だよ。お姉ちゃんおやすみ」

「うん、おやすみ~」

「学校楽しみだね~」

「うん!」


41 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 02:11:10.03 HAz4a8o2O 25/153

九月一日。

「お姉ちゃーん起きてー!」

「ん……んふっ!ふわぁ~」

「おはようお姉ちゃん」

「おはよう……今、何時?」

「7時だよ!学校の支度しよう?」

「えー夏休みだから学校の支度はしなくていいんだよ~」

「お姉ちゃん寝ぼけてるの~?今日で夏休みは終わりだよ」

「あ、そーだったぁ~」


42 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 02:22:12.72 HAz4a8o2O 26/153

・・・・・・・

「はぁ~今日から本当の本当に学校なんだね~この現実が受け止められそうにないや」

「私はみんなと早く会いたいなぁ~」

「あ、ムギちゃんのお菓子が食べれるかも!」

「今日は午前中だけだから持って来て無いんじゃないかなぁ?」

「いいや!私はムギちゃんを信じるよ!あー何かやる気が出て来たよ!憂、早く学校行こう!」

「うん、そだね~」


43 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 02:29:47.07 HAz4a8o2O 27/153

「いってきまーす」

「…………はぁ~」

「暑いね~」

「残暑だよ!もう、ホントに暑いよぉ~」

「頑張って学校に行こうよ」

「う、うん……あーつーいー」


45 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 02:37:42.36 HAz4a8o2O 28/153

「はぁ~学校まで後どのくらいかなぁ~」

「もう少しだよ~」

「しばらく行って無いから距離感が分かんないよ~」

「あ……ごめんお姉ちゃんケータイ忘れたみたい」

「えぇ!そうなの?」

「うん、どうしよう……」

「まだ時間あるんだし取りに行っても間に合うんじゃないかなぁ?」

「……じゃあ、取りに行こうかな。お姉ちゃん先に行ってていいよ」

「ラジャー!」

「それじゃあバイバイ」

「バイバ~イ」


47 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 02:45:04.23 HAz4a8o2O 29/153

「はぁ~憂もいなくなったし退屈だな~」

「暑いし……タイツ着て来なきゃよかったよ!足が蒸れちゃうよ~」

「嫌だな~暑いな~」

「はぁー……えーとハンカチあったっけ?」

「あったあった……私、独り言が多いなぁ~」


48 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 02:50:47.36 HAz4a8o2O 30/153

「はぁ~このハンカチで汗拭きたくないなぁ~可愛いネズミさんが台なしになっちゃうよ!」

「でも、タオル持って来て無いし仕方ないよね」

「あ!私のハンカチがぁ!」

「ま、待ってー!」


49 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 03:00:42.29 HAz4a8o2O 31/153

「はぁはぁはぁはぁ……あ、あれ?」

「私、こんな所まで来たっけ?」

「また……記憶が飛んでる」

「あ、ハンカチがポケットの中に……」

「またど忘れしちゃったのかなぁ?」

「でも、そんな頻繁にど忘れするのかなぁ?」


50 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 03:12:57.96 HAz4a8o2O 32/153

「それに……何だか少しだけ息切れしてるし」

「ハンカチいつの間にか持ってる……」

「う~ん……あ、早く学校に行かなきゃ」

「何でかなぁ~まさか本当に記憶喪失に……まさかそれは無いよね~」


51 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 03:19:59.88 HAz4a8o2O 33/153

・・・・・・

「おー唯、おはよう」

「あ、澪ちゃんおはよー」

「ちゃんと起きれたかー?」

「あ!りっちゃん!」

「唯ちゃんおはよう」

「ムギちゃんだぁ!何だかこうやってみんなで学校に揃って挨拶するのも久しぶりだね~」

「そうね~」


52 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 03:26:24.57 HAz4a8o2O 34/153

「唯、おはようちゃんと起きれた?」

「和ちゃん!私はそんなにおねぼうさんじゃないもん!」

「でも、憂ちゃんに起こして貰ったんだろ?」

「てへへ~」

「唯は憂ちゃんがいないとダメだな~」

「そうだね~私には憂がいないと死んでしまうよ~」

「言い過ぎじゃないか?」

「そうかな~?」


54 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 03:38:01.36 HAz4a8o2O 35/153

さわ子「みんな~久しぶり席に着きなさ~い」

「あ、さわちゃ……さわ子先生!」

さわ子「久しぶり唯ちゃん。みんな早く席に着きなさい」

「はいはーい」

「あ、唯ちゃん?今日はケーキ持って来たからみんなで食べましょ?」

「本当に?やったぁ!」

さわ子「コラそこー」

「ごめんなさーい」


55 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 03:44:17.13 HAz4a8o2O 36/153

・・・・・・

「さようなら~」

さわ子「さようなら気をつけて帰るのよ」

「終わったぁ~疲れたぁ~」

「ほとんどホームルームだけだったろ」

「だけど疲れた~」

「あ、そろそろ部室に行こうぜ~」

「ケーキ!」

「唯ちゃん今回のケーキは凄いのよ~」

「わぁ~楽しみ!」


56 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 03:51:06.12 HAz4a8o2O 37/153

「おー何だか懐かしいなぁ~」

「そうね~」

「久しぶりの部室だね!」

「あ、皆さんもう来てたんですか」

「あ、あ…あずにゃーん!」

「きゃっ!!」


57 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 04:01:43.61 HAz4a8o2O 38/153

「もう!いきなり抱き着かないで下さい」

「いーじゃーん」

「ほら、唯そろそろ離してやれ」

「はぁーい」

「それより早くケーキ食べようぜー」

「私、用事するわね~」

「あずにゃん!今日のムギちゃんのケーキ凄いんだよ~」

「そ、そうなんですか?」

「そうよ~」


58 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 04:12:02.42 HAz4a8o2O 39/153

「紅茶よ~」

「ムギちゃんありがとう!」

「それじゃあ。ケーキみたい人ー?」

「はいはーい!」

「見たいみたーい」

「じゃじゃーん!」

「おぉー!フルーツがいっぱいだぁ!」

「す、凄い……」

「早く食べよー食べよー」

「わかったわぁ~」


62 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 04:21:15.57 HAz4a8o2O 40/153

「はい唯ちゃんの分よ~」

「わぁ!ありがとう」

「でも、こんな高そうなケーキどうしたんですか?」

「お父様がみんなの為にケーキ屋さんに作ってくれて頼んでくれたの!」

「みんなって私達の事か?」

「えぇ!紬がお世話になってるからってみんなに渡すように頼まれたの」

「お世話になってるのは私達だけどなぁ~…」

「さ、早く食べましょう?」

「わ、私は後から食べるよ」


63 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 04:30:51.65 HAz4a8o2O 41/153

「ん?どうしたんだ?」

「わ、私は後から食べるよ」

「さっきまで早く食べよーとか言ってたのにいきなりどうしたんだ?」

「……ん?澪ちゃん何か言った?」

「……え?」

「あ、早くケーキ食べようよーお腹空いた~」

「な、何だそれぇ!」

「はーやーくー!」


65 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 04:33:53.57 HAz4a8o2O 42/153

「そ、そうね。早く食べましょ」

「もう唯先輩ったら」

「ほぇ?」

「いっただきまーす」

「あ!いっただきまーす!」


67 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 04:46:40.44 HAz4a8o2O 43/153

「お、美味しい!」

「本当だ……凄く美味しいです!」

「うふふ~」

「こんな美味しいケーキ初めてだ!」

「ありがとうなムギ」

「えぇ!その言葉お父様にも伝えるわね」

「うん!本当にありがとうムギちゃん」


68 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 04:58:33.60 HAz4a8o2O 44/153

・・・・・・

「じゃあまたなー」

「バイバ~イ」

「うん!バイバ~イ」

「二人共気をつけてね~」

「さようなら~」

「じゃあ私はこっちだからあずにゃんムギちゃんバイバイ」

「えぇ!」

「気をつけて下さいね」

「もちろん!じゃあまたね~」


69 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 05:02:27.99 HAz4a8o2O 45/153

「ムギちゃんのケーキ美味しかったなぁ~」

「また機会があれば食べたいなぁ~」

「はぁ~明日から授業が始まっちゃうよ~」

「嫌だなぁ~」

「………………まただ」


73 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 05:12:49.80 HAz4a8o2O 46/153

子供「お姉ちゃんありがとー」

「…………え?」

子供「じゃあまたねー」

「……あの子に私何かしたかなぁ?」

「それにまた記憶が飛んでる……」

「なんでかなぁ?」


74 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 05:23:35.35 HAz4a8o2O 47/153

「憂おかえりー」

「あ、お姉ちゃんおかえり」

「ねーねー憂?」

「どうしたの?」

「今日もまたねーど忘れしたんだぁー」

「えぇ!?大丈夫なの?」

「多分、大丈夫だと思うよ~私、忘れっぽい性格だし」

「一応、病院行った方がいいんじゃないのかなぁ?」


76 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 05:31:45.28 HAz4a8o2O 48/153

「えぇー病院!?」

「うん、何かあるからそんなに、ど忘れするんじゃない?」

「きっと何も無いと思うけどなぁ~」

「でも、一応行って見よ?何かあってからじゃ遅いし……」

「う~ん……わかったぁ」

「じゃあ病院行こっか!」

「はぁーい」


78 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 05:39:38.61 HAz4a8o2O 49/153

・・・・・・

「得に何も無いってよかったぁ~」

「うん、本当によかった……」

「でも、何でど忘ればっかりするのかなぁ?」

「う~ん……」

「まぁ、何も無いんだしあまり深く考えなくていいよね!」

「本当に大丈夫かなぁ?」

「大丈夫だって~お医者さんが言うんだから間違いないよ~」


79 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 05:52:49.19 HAz4a8o2O 50/153

「ふわぁ~……」

「眠たいの?」

「うん…お姉ちゃんが無事だって分かる気が抜けちゃって」

「えへへ~心配してくれてたんだぁ~」

「うん!」

「よーし今日、憂は休んでて私がお料理作るから!」

「本当に?ありがとう!」

「いえいえ~」


81 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 06:11:31.59 HAz4a8o2O 51/153

九月五日

「早く練習しましょうよー!」

「お菓子が先だよ~」

「私も唯に賛成!」

「私は練習が先!」

「先にお菓子が食べたいわ~」

「三対二でお菓子が先にけってぇ~」

「うぅ……っ」


82 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 06:18:52.28 HAz4a8o2O 52/153

「やっぱりムギちゃんのお菓子はおいしいよ~」

「うふふ。ありがとう唯ちゃん」

「この後はみっちり練習ですよ!」

「わかってるよ~ねーりっちゃん?」

「勿論だとも!」

「あ、それよりみんな少し話があるんだ」


84 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 06:26:16.55 HAz4a8o2O 53/153

「話しってなんだ?」

「みんなでボーリング行かないか?」

「ボーリング?何でボーリングなの?」

「いや……それは」

「あ、お前まだあの事気にしてたのか?」

「……………」

「何かあったの?」

「いや……実は」


85 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 06:42:14.78 HAz4a8o2O 54/153

「いや、澪とボーリング言った時の話何だけど……」

「何かあったんですか?」

「それがさー澪ボーリングが下手くそでさ!子供用のボールを使ったり。ボールを足に落としたり……それにボールを後ろ方向に投げたりしてさぁ~」

「し、仕方ないだろぉ!ボーリング初めてだったんだ!でも、あれから特訓したんだぞ」

「あーだからみんなをボーリングに誘ったのか……あれ?特訓したって事はもしかして……一人でボーリングしたのか?」

「え?そうだけど……」

「む、虚しいよ澪ちゃん!」


86 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 06:47:38.90 HAz4a8o2O 55/153

「む、虚しいのかなぁ?」

「正直……少しだけ」

「……………」

「私、ボーリングやってみたいわ!」

「ムギはボーリングやった事ないのか?」

「えぇ!」

「わ、私は律にリベンジしたい!」

「じゃあボーリング大会しようよ!」

「そうだな!」


87 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 06:54:32.87 HAz4a8o2O 56/153

「じゃあ何時にする?」

「そうだな~今週の日曜日は?」

「あ、ごめんなさいその日は純から猫を預からなきゃいけないので……」

「そっかぁ~じゃあ来週の日曜日は?」

「それなら大丈夫です!」

「じゃあ来週の日曜日なえーと日付は……9月18日な!」

「私、凄く楽しみだわぁ~」

「私も!」


88 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 07:03:21.16 HAz4a8o2O 57/153

さわ子「み、みんな!」

「あ!さわちゃん!」

さわ子「早く帰りなさい!隣町で女の子が刺されたらしいわ!」

「え?」

「通り魔か?」

さわ子「そうみたい。万が一の事があるかも知れないからみんな早く帰った方がいいわ」

「そ、そうですね……」

「怖いわね…みんな早く帰りましょう?」

「あ、あぁ……」


90 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 07:17:20.08 HAz4a8o2O 58/153

「でも、通り魔なんて怖いね」

「そうですね……」

「隣町だからって気わ抜けないな……」

「そ、そうだな……早く帰えろう」

「じゃあ私と澪は二人で帰るけどみんなはどうするんだ?」

「私は皆さんと道が違いますし……一人で帰らないと行けませんね」

「あ、梓!いたいた」


91 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 07:24:28.83 HAz4a8o2O 59/153

「あ、純……」

「探したんだよ。通り魔の話知ってる?怖いから二人で帰らない?」

「よかったぁ~」

「あずにゃん本当によかったね~」

「そろそろみんな帰ろう暗くなったらもっと危険になるし」

「そうね……唯ちゃん行きましょ」

「うん!みんなバイバイ」

一同「さような~ら~」


92 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 07:33:52.07 HAz4a8o2O 60/153

「何だか何時も通ってる道なのに凄く怖いわね」

「そうだね~でも、隣町だから流石に桜ヶ丘町には来てないんじゃないかなぁ?」

「そうだといいわね……」

「あ、ねぇねぇムギちゃん?」

「なぁに?」

「この前持って来てくれたケーキ凄く美味しかったけど何処のお店のケーキなの?」


93 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 07:44:11.57 HAz4a8o2O 61/153

「あのケーキはお父様がお店のパティシエに頼んで作って貰った特別なケーキだから売ってないわよ~」

「そっかぁ~また食べたいのに売って無いんだね~」

「よかったら。またお父様に頼んでみるけど…」

「えー!いいの?」

「えぇ!いいわよ~」

「やったぁ~」


97 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 07:55:48.27 HAz4a8o2O 62/153

「その時まで凄く楽しみだよ!」

「よかったらみんなを誘って私のお家で食べない?」

「え!いいの?」

「えぇ、今週の日曜日はお家開いてるから」

「行くよー!みんなもきっと……あずにゃん……」

「そう言えば梓ちゃんは今週の日曜日は猫を預かるって言ってたわね……」

「他の日はダメなの?」

「開いてるのは今週の日曜日だけなの……」

「うーんどうしよう?」


98 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 08:05:45.04 HAz4a8o2O 63/153

「あ!あずにゃんにケーキをお土産するって言うのはどうかな?」

「いいわね!梓ちゃんもきっと喜んでくれると思うわ」

「うん!じゃあ私から澪ちゃんとりっちゃんを誘ってみるよ」

「本当?ありがとう」

「ううん。あ、駅に着いたね」


100 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 08:17:08.52 HAz4a8o2O 64/153

「唯ちゃんこれから一人で帰るの?」

「うん、でも此処からだと家から近いし大丈夫!」

「でも心配だわ……」

「大丈夫だって!人通りも少なくは無いし近くに交番だってあるもん」

「そうなの?けど、本当に気をつけてね?」

「うん、ありがとう!それじゃあバイバイ」

「さようならー」


101 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 08:30:13.29 HAz4a8o2O 65/153

「あ!お姉ちゃんおかえり」

「………………」

「お姉ちゃん?」

「…………っはあ!あ、あれ?」

「どうしたの?」

「あ、あれ?私さっきまで駅にいたのに……」

「……?」

「いつの間にか家にいる……また記憶が飛んでる!!」


104 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 08:52:41.42 HAz4a8o2O 66/153

・・・・・・

「そっか……紬さんと別れた途端にいつの間にか家に帰って来たんだね」

「うん!ムギちゃんと別れてからの記憶が無いんだよ!」

『たった今、入ったニュースをお伝えします。刃物を持った男が……』

「ね、ねぇ……お姉ちゃん?この場所?」

『桜ヶ丘町で暴れているようです。近くにお住まいの方は鍵を閉め決して外に出ないようにして下さい』

「私達の通学路だ……」


106 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 09:08:28.41 HAz4a8o2O 67/153

「ムギちゃん大丈夫かな!?」

「電話掛けてみようよ!」

「うん!……あ、ムギちゃんから電話だ。よかった無事みたいだね」

『も、もしもし唯ちゃん?』

「ム、ムギちゃん!聞いた?」

『えぇ!聞いたわ唯ちゃんの通学路でしょ?大丈夫なの?』

「うん、大丈夫だよ。今は家にいる」

『そう……よかった』


107 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 09:20:12.08 HAz4a8o2O 68/153

「ムギちゃんは今何処にいるの?」

『電車の中よ。お父様から電話があってたった今知ったの』

「そ、そっか……よかったぁ~」

「あ……お姉ちゃん捕まったみたいだよ!」

「ムギちゃん捕まったってさ!」

『そうなの?これで一安心ね……あ、電車の中だからそろそろ切るわね』

「う、うん!バイバイ」

『さようなら』

「ムギちゃんが無事でよかったぁ~」


108 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 09:29:06.21 HAz4a8o2O 69/153

「でも通り魔なんて怖いね……」

「私も少し遅かったら……そう考えるだけで凄く怖いよ」

「うん…………」

「あ……そろそろご飯の支度しよ?」

「そうだね…」


128 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 19:12:30.88 HAz4a8o2O 70/153

9月7日。

「いってきまーす」

「最近、涼しくなって来たね~」

「えーまだ暑いよ~」

「そうかなぁ?」

「まだ30℃近くあるってテレビの天気予報で言ってたじゃん!」

「でも夏休みの頃に比べたら全然涼しいよ~」

「う~ん……あ、憂?今日もまた別の道で学校行こう?」

「う、うんいいよ」


130 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 19:16:16.09 HAz4a8o2O 71/153

「通り魔は捕まったけどまだ、やっぱり何時もの道は通る気にはならないよ……」

「そうだよね……少し怖いしね」

「うん、怖いよ!ムギちゃんもあの道は避けて通ってるみたい」

「紬さんも大変だね」

「本当だね~。あ、猫ちゃんだぁ!」


131 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 19:25:34.94 HAz4a8o2O 72/153

「憂ー!猫ちゃんだよ~。あ!待って待ってー」

「可愛いね~……ダメ!お姉ちゃん車!」

「………………」

「お姉ちゃん!車が来てるよ!!」

「………私、知ってるよ」


132 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 19:34:25.74 HAz4a8o2O 73/153

「お、お姉ちゃん…………」

「いきなり道に飛び出してくるな危ねぇだろ!!」

「…………っはっ!あ、あれ?」

「だ、大丈夫?怪我は無い?」

「何かあったの?」

「お姉ちゃん今、車に轢かれそうだったんだよ!」


135 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 19:51:18.90 HAz4a8o2O 74/153

「私、車に轢かれそうだったの?」

「うん……また忘れたの?」

「うん……」

「でも、お姉ちゃん知ってるみたいだった……」

「知ってるって何が?」

「車に轢かれそうになる所を知っているみたいだった」


136 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 20:03:54.07 HAz4a8o2O 75/153

「どう言う事?」

「えっと、お姉ちゃん車には全く気付いてなかった様子だったのにね。車に轢かれそうになるのが分かっていたみたいに轢かれる寸前の所でピタッって足を止めてたから……」

「そんな分けないよぉ~」

「そうだよね。私の思い違いかなぁ?あ、お姉ちゃん?」

「なぁに?」

「気をつけなきゃダメだよ?」

「はぁ~い!」


137 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 20:12:38.01 HAz4a8o2O 76/153

・・・・・・・

「みんなおはよ~」

「おいーす。あ、ムギから聞いたぞ唯」

「何を?」

「ほら、ムギの家にケーキを食べに行くって話だよ」

「あーっ!りっちゃん達に言うの忘れてたぁ!」

「本当、そんな大事な話忘れるなよー!」

「まぁまぁ澪ちゃん」


138 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 20:24:53.52 HAz4a8o2O 77/153

「それより梓はどうするんだ?」

「あずにゃんにはお土産を持って行くんだよ」

「そっか。それなら梓も喜ぶと思うな」

「そうね~」

「それよりムギの家か……どんなのだろう?」

「凄そうだよね!」


139 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 20:35:10.77 HAz4a8o2O 78/153

「確かに凄そうだな~」

「紬お嬢様!」

「恥ずかしいわ~」

「楽しみだなぁ~」

「私も凄く楽しみだ。あ、そろそろさわちゃん来ると思うから席に座ろうぜー」


141 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 20:48:07.30 HAz4a8o2O 79/153

9月11日。

「うん、朝ご飯食べてから行くね~」

『えぇ!分かったわ』

「じゃあバイバイ~」

『楽しみにしてるわ!』

「私も~それじゃあ」

「ムギちゃん家かぁ~どんなのかなぁ?」

「お姉ちゃん朝ご飯出来たよ~」

「分かったーすぐ降りて来るねー」


143 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 20:57:17.22 HAz4a8o2O 80/153

「朝ご飯~朝ご飯~」

「昨日の残り物でごめんね」

「ううん!全然大丈夫だよ!憂のロールキャベツを二日連続で食べれる何て幸せだよ~」

「えへへ~ありがとう」

「いただきまーす」

「いただきます」


144 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 21:09:32.77 HAz4a8o2O 81/153

「お姉ちゃん今日は紬さんの家に行くんでしょう?」

「うん!早く行きたいなぁ~」

「紬さんのお家大きそうだね~」

「リビングでフットサル出来るぐらいの大きさかも!」

「そんな事しちゃダメだよ?」

「分かってるよ~」


146 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 21:17:37.56 HAz4a8o2O 82/153

「ごちそーさまでしたー」

「ごちそうさまでした」

「よーし!それじゃあ洋服に着替えてムギちゃん家に行こうかなー」

「あ、今日は少し涼しいらしいよ」

「本当?よかったぁ~じゃあ着替えて来るよ」

「うん!」


147 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 21:25:42.68 HAz4a8o2O 83/153

・・・・・・・

「じゃあ行ってくるね~」

「うん!いってらっしゃい気をつけてね?」

「分かってるよ~じゃあね~」

「うん!」

「ふぃ~少し涼しくなって来たのかなぁ?」

(あ、りっちゃんから電話だ)


149 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 21:36:50.66 HAz4a8o2O 84/153

「もしもし、りっちゃん?」

『おー唯おはよう』

「おはよー」

『もう向かってるか?』

「うん、もう向かってるよ~」

『あーそっかぁ。私達は少しだけ遅れるよ』

「えー何でぇ?」

『いや、澪がさ着て行く服に迷っててさぁ……』

『だってムギの家って凄そうだろぉ!?ちゃんとした格好で行かないと……』

「あ、澪ちゃんおはよう」

『お、おはよう……』


153 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 21:49:08.11 HAz4a8o2O 85/153

『あの……唯は何着て行ってる?』

「私は普通の格好だよ~」

『そ、そっか……やっぱり普通の格好がいいのかなぁ?』

「うん、普通が1番だよ澪ちゃん!」

『そっかぁ……じ、じゃあ普通の格好で行こうかな……普通の格好ってどんなのかなぁ?』

「もう制服で行ったら?」

『あ、そうだな。よし、制服にしよう』

『澪の着て行く洋服が決まったし私達もそろそろ行くよ駅で待っててくれ』

「はーいじゃあ切るね~」

『あぁじゃあまたな』


154 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 21:58:43.77 HAz4a8o2O 86/153

(着て行く洋服で遅刻しるなんて澪ちゃんらしいなぁ~)

「あ、着いた着いた……ここの近くで通り魔が暴れてたんだよね……か、考え無いようにしよっ!」

(どうしよう……外で待とうかなぁ?切符を買って中で待とうかな)

(中の方が涼しそうだし……)


155 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 22:09:10.86 HAz4a8o2O 87/153

「はぁ……やっぱり日蔭があるだけで絶対違うな~」

「……澪ちゃん達遅いなぁ~電車もう来ちゃうよ!」

(……何か私の後ろに立ってる男の人不気味だなぁ)

『間もなく電車が到着致します。白線の外側までお下がり下さい』

(まだかなー澪ちゃん達まだかなー)


158 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 22:15:52.20 HAz4a8o2O 88/153

「ゆ、唯!大丈夫か?おい唯!」

「…………え?あれりっちゃん?」

「男が!男が電車に轢かれた!」「じ、自殺だ!」「マジかよ……」

「うっ……おぇええええ!」

「え?み、澪ちゃん……?」


161 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 22:28:44.43 HAz4a8o2O 89/153

「自殺だぁ!」「人身事故だ……お、おい救急車!誰か救急車呼べ!」

「自殺?事故……?」

「っはぁはぁ……ひ、酷いこんなのって……」

「りっちゃん!何が起こったの?」

「はぁはぁはぁ……」

「あと、す、少しで……一緒に………しね死ねた、たのに……」

「お、おいまだ生きてる!まだ生きてるぞ」

「…………え?」

「み、見るな唯!」

「あ、あ……いやああああぁぁっ!」


163 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 22:37:17.27 HAz4a8o2O 90/153

・・・・・・

「あ、あぁ……ごめんなムギ……うん大丈夫だからそれじゃあ」

「…………」

「…………」

「二人共……大丈夫か?」

「…………」

「…喉渇いただろ?飲み物買ってくるな」


167 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 22:46:04.24 HAz4a8o2O 91/153

「…………」

「…………」

「ね、ねぇ澪ちゃん?」

「……な、なんだ?」

「あの……言いにくいんだけど何が起こったのかな?」

「男の人が電車に轢かれた……」

「やっぱりそうだったんだ……」

「……覚えてないのか?」

「う、うん……」

「そっかショックで……私も忘れてしまいたいよ」


170 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 22:55:26.69 HAz4a8o2O 92/153

「人が死ぬ所……初めて見た……まだ震えが止まらないよ」

「…………」

「二人共、ジュース買って来たぞ」

「あ、ありがとう」

「ありがとう……」

「今日はもう帰ろう……唯、送ってくよ」

「ありがとう……」


172 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 22:59:57.29 HAz4a8o2O 93/153

「唯……生きててよかった……」

「…………本当に生きててよかった」

「うん……」

「あの男の人……唯の手を掴もうとしてた」

「…………え?」

「あ、ごめん……あまり思い出したくないよな」

「……よかったら詳しく聞かせて欲しいな」

「え、でも……」

「お願い……」

「あ、あぁ分かった」


174 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 23:18:13.54 HAz4a8o2O 94/153

「電車の時間に間に合わないって思ってさ、急いで澪と二人で駅のホームまで走ったんだ」

「うん……」

「……ようやく間に合った…っと思ってたら唯の姿が見えて、それで声をかけようと思ったんだ。そしたら後ろの男が唯の手を掴もうとしてた」

「私の手を?」

「うん……そしたら唯がさ後ろを見た後にその手を避けて右に倒れてその後に……」

「男の人が電車に轢かれた……?」

「うん……心中しようとしてたのかな?」

「……わかんない」


175 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 23:32:56.61 HAz4a8o2O 95/153

「それに……男の人が私の手を掴もうとした事も倒れた事も覚えてないよ……」

「そ、そうなのか?」

「うん……」

「きっと電車に轢かれた男の人を見たショックで忘れてたんだよ」

「そう……かな?」

「うん……あ、そろそろ家に着くな」

「そうだね……二人共送ってくれてありがとうバイバイ」

「あ、あぁ……」

「じゃあな……」


176 : 以下、名... - 2010/09/14(火) 23:45:57.07 HAz4a8o2O 96/153

・・・・・・

「ただいま……」

「あ、お姉ちゃんおかえり!早かったね」

「う、うん……」

「紬さんのお家どうだった?」

「あ、いや……行ってないよ」

「……何かあったの?」

「う、うん……」

「そっか……」

「少しだけ寝るよ……今日は何だか疲れたから」

「うん、分かった……」


179 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 00:01:16.97 9BOiQqHVO 97/153

9月16日。

「みんな…おはよう」

「あら澪ちゃん!」

「澪ちゃん!久しぶり!」

「うん……迷惑かけてごめんな」

「ううん。そんな事ないよ」

「澪もようやくあの日から立ち直ってくれてさ……本当にみんなのおかげだよ」

「本当に……大変だったみたいね電車事故」

「う、うん……でもみんなのおかげで元気が出たよ。本当にありがとう」


180 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 00:09:07.74 HAz4a8o2O 98/153

「あのさ、ボーリングの事何だけど……」

「あぁ、ボーリングな…」

「う、うん……色々あったけどボーリングに行こうみんな」

「無理しなくていいのよ?」

「ううん。もう、大丈夫だから……色々心配かけてごめんな」

「ううん!いいっていいって!」

「みんなありがとう!」


183 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 00:18:22.63 9BOiQqHVO 99/153

「あ、そうだ今日はまたあのケーキ持って来たの!」

「ほ、本当に!?」

「えぇ!」

「やったぁー!またあのケーキが食べられるのか!」

「放課後が待ち通しいな!」

「うん!」


184 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 00:27:28.35 9BOiQqHVO 100/153

「ムギちゃん何時もケーキとか持って来てくれてありがとうね」

「うふふ。いいのよ私はみんなの喜ぶ顔が見たいだけだから~」

「優しいなムギ」

「その優しさを私にも分けてくれー!」

「りっちゃんも充分優しいよ~」

「そ、そうかぁ?」

さわ子「ホームルーム初めるわよ~席に座りなさーい」


185 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 00:39:03.36 9BOiQqHVO 101/153

9月18日。

「お姉ちゃん起きてー今日はみんなとボウリングに行くんでしょー?」

「んっ……今何時?」

「9時だよ~」

「そっかぁ~まだ9時かぁ~……ええっ9時!?」

「少し起こすの遅かったかなぁ?」

「うん!でも、起こしてくれてありがとう!」


186 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 00:46:52.19 9BOiQqHVO 102/153

「よしっ!着替え終わった!早くみんなと待ち合わせしてるバス亭まで急がなきゃ!」

「お姉ちゃんもう行くの?」

「うん!集合時間は10時間だからね!えーと今何時?」

「9時40分だよ!」

「あぁー!間に合うかなぁ?」

「ご、ごめんね。起こすのが遅くて」

「憂のせいじゃないよ!」


187 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 00:57:21.88 9BOiQqHVO 103/153

「あ、お姉ちゃん朝ご飯は?」

「バス亭に向かいながら食パンを食べるよ」

「そっか!」

「それじゃあバイバイ!走って間に合うかなぁ~?」

「頑張ってね!それと食パンだよ」

「ありがとう!行ってきまーす」

「行ってらっしゃーい!」


190 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 01:03:40.73 9BOiQqHVO 104/153

「はぁはぁはぁはぁ」

おばちゃん「あら唯ちゃんおはよう」

「おはよう!」

おばちゃん「そんなに急いでどうしたんだい?」

「友達と待ち合わせしてるから!バイバイ」

おばあちゃん「そう、気をつけてね」

「うん!ありがとう!」

「は、走りながら食パン食べるのって無理だよぉ~」


192 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 01:10:43.45 9BOiQqHVO 105/153

・・・・・・・

「はぁはぁはぁはぁ」

「やっと来たか唯」

「う、うん……はぁはぁはぁ」

「唯ちゃん大丈夫?」

「な、何とか……」

「しっかしギリギリだなぁ……」

「でも、間に合ったでしょ?」

「えぇ!バスもあと少しで来るわよ」

「…………ダメ!バスに乗ったらダメ!!」


194 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 01:20:55.36 9BOiQqHVO 106/153

・・・・・・

「………………はっ!」

「……………」

「……………」

「ゆ、唯先輩……?」

「ほぇ?……あぁっまた記憶が飛んでる!」

「ううっ……ぐすっ」

「澪ちゃん何で泣いてるの?……あれ?おかしいな私も泣いてる……悲しくないのに何で泣いているんだろ?」

「唯先輩……」

「…………ヤダよ唯ちゃん……嫌だよ」

「ムギちゃん?」


195 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 01:25:36.61 9BOiQqHVO 107/153

「き、今日はボウリングは無しな!」

「え?何で?」

「いや……急に用事が入っちゃって」

「用事?それにみんな何か表情が暗いよ?」

「そ……そんな事無いですよ。ね、ムギ先輩」

「えぇ……ぐすっ」

「みんなどうしたの!?何かあったから泣いてるんだよね?教えてよ!私、記憶が飛んじゃって何が何だかわかんないよ……」


197 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 01:34:40.52 9BOiQqHVO 108/153

「な、何も無いぞ。本当だ、だからもう何も聞かないでくれ……」

「…………分かったよ。もう何も聞かないよ……でも何時か教えてね?」

「……はい、今日は皆さんもう帰りましょ?唯先輩私送って行きますよ」

「私も送って行くわ」

「うん、みんなで唯を家に送ってやろう」

「そうだな……」

(みんな本当にどうしたんだろう?私が記憶を無くした時に何があったんだろう?……分かんないよ)

「みんな行こっか……」


198 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 01:44:41.06 9BOiQqHVO 109/153

10月26日。

「お姉ちゃん……………」

「あ、憂……おはよう!えへへ~まだ眠いや」

「お姉ちゃん!!」

「わわっ!いきなり抱き着いて来てどうしたのぉ~?」

「ううん、ずっとこうしたかった……」

「もー憂ってば甘えん坊さんなんだから」

「えへへー…………ずっと一緒だからねお姉ちゃん」




END





202 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 01:52:31.57 9BOiQqHVO 111/153

憂「ブラックアウト」


205 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 02:02:04.28 9BOiQqHVO 112/153

10月10日。

私は遺影の中でニッコリと笑うお姉ちゃんを見ながら静かに手を合わせる。

9月1日。
この日、お姉ちゃんはトラックに轢かれ死んでしまった。

神様は息をするように私からお姉ちゃんを奪った。

お姉ちゃんが死んでから私の生活は変わった。
何をするにも無気力で、ご飯もコンビニの物ばかり食べている。
学校にはたまに行く程度で私を気遣う友達の言葉もほんの慰め程度ぐらいにしかならなかった。


208 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 02:09:14.60 9BOiQqHVO 113/153

遺影に写るお姉ちゃんの顔が少しだけ変わったように見えた。

きっと目の錯覚なのだろう。

ふと時計を見ると時刻は夜の9時を回っている。
今日はもう寝よう。

そう考え腰を上げた瞬間に酷い頭痛がした。

両手で頭を押さえるが頭痛は更に酷くなる一方で、私はその場に寝転び、ただひたすら頭痛が治まるのを待った。

体が重くなり視界が……白くなる。次の瞬間、私の意識は遥か遠くに飛んでしまった。


211 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 02:17:28.83 9BOiQqHVO 114/153

不思議だ。
ついさっきまで私はお姉ちゃんの仏壇の前にいたのにいつの間にかトイレにいる。

トイレに行った記憶も無いしさっきまでの酷い頭痛も消えてしまっている。

お姉ちゃんが死んでからろくに寝ていない。
きっと私は疲れているんだろう。

とりあえずトイレを出て洗面所で自分の姿を写しだす。
だけど、鏡に写ったのは私ではなかった。

「お姉ちゃん!?」


212 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 02:26:01.34 9BOiQqHVO 115/153

それは、紛れも無く私のお姉ちゃんだった。
後ろを振り返るが誰もいない。

それに、やけに外が明るい。
大きな疑問感じながら鏡の前で右手を動かす。

全く同じ動きをした。
もしかして私、お姉ちゃんになってしまったの?

もう一度、右手を動かし今度は頬をつねる。
微かな痛みを感じる。
これは……夢ではないのか?

現実なのか?私は幻を見てしまっているのか?
分からない。

視界の隅に日めくりカレンダーが見えた。
8月31日。
お姉ちゃんが死んだ一日前だ。


219 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 02:37:28.46 9BOiQqHVO 116/153

もし、これが現実なら私はお姉ちゃんの姿を借りて過去へ戻ったって事になる。

だけど、そんな事って有り得るの?
あまりにも非現実的過ぎて何が何だか分からずにいる。

夢……なのかな?
さっき頬をつまんで痛みを感じたけど夢の中でも多少の痛みぐらいは感じるだろう。

だけど、よかった。
夢でも現実でもお姉ちゃんの姿を見る事が出来たのだから。


221 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 02:43:44.82 9BOiQqHVO 117/153

私は洗面所を出てリビングへと向かった。
テレビが何かだろう微かに数人の声が聞こえた。

「お姉ちゃーん!まだトイレにいるのー?」

微かなテレビの音に混じり私の声が聞こえた。

「………………」

リビングの中央には私がいた顔を上げジッと私を見詰めている。

「あ、お姉ちゃん!長かったね~」

「…………え?」

また意識が遥か遠くに飛んだ。


223 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 02:51:35.14 9BOiQqHVO 118/153

畳みの上に倒れていた私は重い体を無理矢理起こす。

「……あ、あれ?」

お姉ちゃんの仏壇の前にいる。
それに、外は暗い。

元に戻ったのか?それとも夢から覚めたのか?
きっと夢から覚めたのだろう。

「お姉ちゃん……」

久しぶりに見るお姉ちゃんの顔はとっても可愛しかった。


224 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 02:59:22.89 9BOiQqHVO 119/153

10月11日。

この日、私は学校には行かなかった。
友達からのメールも無視してただひたすらお姉ちゃんの遺影をずっと見つめていた。

午後を過ぎた頃、また激しい頭痛が私を襲った。
視界が白く染まり体が軽くなる。

次の瞬間、私はお姉ちゃんがトラックに轢かれた場所に立っていた。


227 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 03:09:11.82 9BOiQqHVO 120/153

カーブミラーで自分の姿を確認する。また、お姉ちゃんになってる。

遠くの方を見るとハンカチが風に揺られヒラヒラと空中を漂っている。

制服のポケットに重みを感じる。
ポケットに手を突っ込みそれを取り出す。

お姉ちゃんのケータイだ。
ケータイを開いて日付を確認する。

8月1日。
お姉ちゃんが死んだ日だ。
この日、私が忘れ物なんかしなければ……お姉ちゃんはまだ生きていたのに。


228 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 03:17:05.71 9BOiQqHVO 121/153

空中を漂うハンカチはやがて地面に落ちた。
その先で見覚えのあるトラックが私の視界から消えた。

あれは……お姉ちゃんを轢いたトラック。
寒気がして体が小さく震える。

私はトラックを追うように歩き出し道端に落ちていたハンカチをポケットに入れた。

あのトラックさえ……ここを通らなければお姉ちゃんは……。

視界が白く染まり体が軽くなる。


231 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 03:25:32.98 9BOiQqHVO 122/153

「はい唯ちゃんの分よ~」

「わぁ!ありがとう」

「でも、こんな高そうなケーキどうしたんですか?」

「お父様がみんなの為にケーキ屋さんに作ってくれて頼んでくれたの!」

「みんなって私達の事か?」

「えぇ!紬がお世話になってるからってみんなに渡すように頼まれたの」

「お世話になってるのは私達だけどなぁ~…」

「さ、早く食べましょう?」

いつの間にか私は軽音部の部室にいた。

「わ、私は後から食べるよ」

きっとこのケーキはお姉ちゃんのケーキだろう。
夢の中だからってお姉ちゃんの食べ物を奪うのはよくない。


232 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 03:29:23.53 9BOiQqHVO 123/153

「ん?どうしたんだ?」

「わ、私は後から食べるよ」

「さっきまで早く食べよーとか言ってたのにいきなりどうしたんだ?」

また視界が白く染まり体が軽くなる。

次はどの場所に行くんだろう?


233 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 03:39:48.59 9BOiQqHVO 124/153

「………………まただ」

今度は通学路にいた。
空は赤く染まりひぐらしの声が私の心を切なくさせた。

背後に軽い衝撃。
後ろを振り返ると子供が倒れていた。

子供「あ痛ててて……」

「大丈夫?」

よく見ると子供は膝を擦りむいていた。
私はお姉ちゃんの鞄を漁り絆創膏を取り出す。

「コレ、あげるよ」

視界が白く染まり体が軽くなる。
今度は自分の体へと戻り元いた場所に戻っていた。


235 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 03:51:07.58 9BOiQqHVO 125/153

「…………何だったんだろ?」

夢から覚めた私は頭をフルに回転させ考えていた。
今まで私に起こった事はあまりにもリアルだ。

紬さんが持って来たであろうフルーツケーキの甘い匂い。
喉の震え夏の暑さ絆創膏を触る感触。

全てがリアルに感じた。
夢か現か……思考が曖昧で区別がつかない。

リリリリリとケータイの着信音が辺りに響く。
紬さんから電話だ。

余りにも珍しい人から掛かって来たので私は無視出来ず電話に出た。


236 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 04:00:35.18 9BOiQqHVO 126/153

『憂ちゃん……?』

「あ、はい…どうしたんですか?」

何だか紬さんの声は震えていた。
何故だか分からないが泣いているのだろう。

『ごめんなさい!本当に……あの時私が唯ちゃんを唯ちゃんを一人で帰らせなかったら……通り魔に刺される事は無かったのに……本当にごめんなさい』

涙ながらに話している彼女に悪いが言っている事が全く理解出来ない。

「あ、あの……どうしたんですか?」

『憂ちゃん本当にごめんなさい!!』


237 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 04:12:22.09 9BOiQqHVO 127/153

「あ、あの……電話もう切りますね……」

『はい……憂ちゃん本当にごめんなさい』

「……さようなら」

何故、紬さんは私に謝っていたのだろう?
その疑問はすぐに解決した。

リビングにあるテレビに聞き覚えのある名前が聞こえた。

テレビを見ると見覚えのある道。
多くの花束やお菓子が通沿いに沢山置いてある。
また聞き覚えのある名前が聞こえた……平沢唯。

テレビは私に告げた。
私のお姉ちゃんが9月5日に通り魔に刺され……死んだ?

「そんな……嘘だ」


238 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 04:27:22.33 9BOiQqHVO 128/153

私のお姉ちゃんは9月1日に死んだ筈だ。
おかしい何かがおかしい。

お姉ちゃんは9月5日に死んでいない……通り魔になんか殺されてなんかない。

「どーして?」

テレビに疑問を投げ掛けるが当然、答えなんかは帰って来ない。

まさか、今日起きたあの事と関係があるのかな?
いや、他に考えようが無い関係があるに違いない。

疑問が確信に変わったよ。
私はお姉ちゃんの姿を借りて過去へと戻っていた。

これは現実だったんだ。


241 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 04:56:23.97 9BOiQqHVO 129/153

10月13日。

学校から帰って来た私はすぐにお姉ちゃんの仏壇の前へと座った。

この二日間、何故お姉ちゃんは通り魔に刺されて死んだのかを私は考えていた。

その考えは下校中にようやく答えを見い出だす事が出来た。

お姉ちゃんは元々トラックに轢かれ死ぬ運命だったけど、お姉ちゃんの姿を借り私が過去に戻る。そして私が試行錯誤している内にトラックはお姉ちゃん轢かずに通り過ぎた。

それから、過去の出来事が変わってしまい今度は通り魔に刺されてしまった。


242 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 05:03:26.28 9BOiQqHVO 130/153

過去が変わった事により未来も変わってしまう。
だから紬さんは私に謝っていたのか……。

もしかしたら、お姉ちゃんを救える事が出来るかもしれない。

私がお姉ちゃんを救う……。
またお姉ちゃんと一緒に暮らせる。

急に頭が痛くなり視界が白く染まる。
体が軽くなり次の瞬間、私はお姉ちゃんが通り魔に刺された場所にいた。

「私がお姉ちゃんを救わなきゃ」


243 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 05:08:38.06 9BOiQqHVO 131/153

「よし……」

確かこの先を行った所でお姉ちゃんは刺された筈だ。

だから……このまま違うルートで帰ればお姉ちゃんは助かる。

「よし……行こう」

出来るだけ注意して家に向かおう。
そして、お姉ちゃんを救おう。


245 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 05:16:39.32 9BOiQqHVO 132/153

「…………ふぅ」

元に戻った私はお姉ちゃんの遺影を見上げた。
お姉ちゃんを救う事が出来た……がまだ救えていない。

まだお姉ちゃんは死んでいる。
きっと、違う日付違う死因で過去が変わっているはず。

テレビを付けてニュースが放送しているか確認するがこの時間帯はアニメとバラエティー番組しかやっていない。

リビングにまとめられている新聞を手に取る。
もしかしたら、新聞に載っているかも知れない。

お姉ちゃんの死んだ日付や死因が。


246 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 05:22:33.96 9BOiQqHVO 133/153

「あった……」

新聞の記事には9月7日にお姉ちゃんが交通事故で死亡と小さくまとめられている。

9月7日に私がお姉ちゃんを車に轢かせないようにすれば……。

「待っててねお姉ちゃん」


255 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 06:17:44.30 9BOiQqHVO 134/153

10月15日。

「お、おはよう憂」

「うん!おはよう純ちゃん」

「な、何か最近元気だね?」

「そうかなぁ?」

頭がおかしいと思われたく無いのでとりあえずあの事は伏せて置いた。

それよりも、早く過去に戻ってお姉ちゃんを救いたい。


259 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 06:23:25.94 9BOiQqHVO 135/153

・・・・・・

「…………あうっ!」

「う、憂!?大丈夫?」

「う、うん……」

授業中に急に頭が痛み出す。
やっと来た……これで過去に戻りお姉ちゃんを救う事が出来る。

「……………」

視界が白く染まり体が軽くなる。

「せ、先生!憂が倒れましたぁ!」


260 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 06:28:50.43 9BOiQqHVO 136/153

「憂ー!猫ちゃんだよ~。あ!待って待ってー」

「可愛いね~……ダメ!お姉ちゃん車!」

「………………」

何故だか分から無いけど過去へと戻った私は走っていた。

車のエンジン音が聞こえる。

「お姉ちゃん!車が来てるよ!!」

「………私、知ってるよ」

足を止めると車が猛スピードで私の目の前を去った。


263 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 06:33:38.92 9BOiQqHVO 137/153

「…………はぁはぁ」

「う、憂?大丈夫?」

「う……うん」

「急に倒れるんだもん……びっくりしたよ」

「うん……大丈夫だよ。心配してくれてありがとうね」

また、お姉ちゃんを救う事が出来た。
今回は少し危なっかったけど。


266 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 06:42:52.97 9BOiQqHVO 138/153

10月20日。

次に私がやるべき事はわかっている。
9月11日。
この日、お姉ちゃんは男の自殺に巻き込まれ電車に轢かれて死んでしまう。

今日の朝、律さんと澪さんから電話が掛かって来た。
私達が遅刻しなければ唯は死ななかった本当にごめんと言っていた。

違うこの二人が悪いんじゃない。
お姉ちゃんを自殺に巻き込んだ男が悪いんだ。


267 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 06:50:56.90 9BOiQqHVO 139/153

・・・・・・

「あ、危なっかった……」

この日、私は間一髪の所だったけどお姉ちゃんを電車事故から救う事が出来た。

今回は本当に危なかった……そして、出来るだけ死体をお姉ちゃんに見せたくは無かった。

きっと見てしまったんだろうな……。

リリリリリリ。
ケータイ電話が鳴る純ちゃんからだ。


268 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 06:55:29.36 9BOiQqHVO 140/153

「も、もしもし?」

『あ、憂?あのさ……今日こそ梓のお見舞い行かない?きっと梓、寂しがってると思うし』

「梓ちゃんのお見舞い?」

『う、うん……行かない?』

「梓ちゃんに何かあったの?」

『……え?』


269 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 07:06:11.14 9BOiQqHVO 141/153

「梓ちゃんが……どうかしたの?」

『どうかしたのって……9月18日のバスの事故で……』

「9月18日?詳しく聞かせて、お願い!」

『えっと……どうしたの憂?何かおかしいよ?』

「純ちゃん…………お願い」

『…………ごめん切るね。憂少し休んだ方がいいよ』

「あ……純ちゃん待って!……切れちゃった」


272 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 07:17:15.48 9BOiQqHVO 142/153

10月25日。

私は知った。
9月18日に何が起こっかを知ってしまった。

その日の新聞を読むと大きな事故があったらしい。
本当に大きな事故でお姉ちゃんや軽音部の皆さんを乗せたバスもその事故に巻き込まれてしまった。

澪さんや梓ちゃんは重傷を負っているらしく今は病院に入院。

紬さんと律さんは骨折だけで済んだらしい。

……その事故でお姉ちゃんは死んでしまった。
お姉ちゃんはその大きな事故でただ一人だけの死者だった。


273 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 07:23:36.17 9BOiQqHVO 143/153

こんな言い方をするのはどうかと思うけど……どうしてお姉ちゃんだけ死んだの?

新聞の記事を見る限りこの事故は本当に大きな事故だ。
死者、一人だけはどう考えても不自然だ。

最悪の考えが頭を過ぎて振り払う。

「お姉ちゃん……」

また頭が痛くなる視界が白く染まり体が軽くなる。


275 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 07:35:15.03 9BOiQqHVO 144/153

過去へと戻った……。
目の前には軽音部の皆さんがいる。
この人達も救わないと……。

「えぇ!バスもあと少しで来るわよ」

「…………ダメ!バスに乗ったらダメ!!」

「……ん?どーかしたのか?」

「あ、あの……ダメなんですバスに乗ったらダメなんです!」

「どうしたんですか?急に敬語なんて使って」


277 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 07:39:23.78 9BOiQqHVO 145/153

「あ、梓ちゃん……」

「梓ちゃん?あ、バスが来たぞ」

「ダ、ダメです!」

澪さんの腕を強く掴む。

「痛っ!ど、どうしたんだ!?」

「お願いです乗らないで下さい!あのバス事故に合うんです!」

「……は、はぁ?」


280 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 07:49:51.92 9BOiQqHVO 146/153

「お願いです……あのバスに乗らないで下さい……」

「唯ちゃん泣かないで……とりあえず何かあったのか聞かせてくれる?」

「はい……あの、私は憂なんです。信じて貰え無いですよね?」

「憂……?」

「うん……あの未来から来た平沢憂なんです」

「……未来から?」


281 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 08:00:00.42 9BOiQqHVO 147/153

「で、でも姿や声は唯先輩……ですよね?」

「お姉ちゃんの姿を借りて過去へと戻ってるから……あの、おかしいですよね私」

「おかしく何か無いわよ……」

「紬さん……」

「あぁ、私もおかしいとは思わ無いよ……少しぶっ飛び過ぎてると思うけど、目の前に泣いて話を信じてくれって頼んでる人がいるんだもん憂ちゃんや唯じゃなくてもその話、信じるよ」

「律さん……ありがとうございます」

「あの、憂ちゃん?どうして唯ちゃんの姿で過去に戻ったの?」


283 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 08:16:18.63 9BOiQqHVO 148/153

「えっと……それはお姉ちゃんが死ぬのを助ける為に過去へと戻って来てるんです……」

「唯が死ぬのか!?」

「い、今は大丈夫です……バスももう通り過ぎましたから……」

「で、でもやっぱり少し信じられないよ。唯先輩が死ぬだなんて」

「あ、あの……お姉ちゃんは通り魔に一度殺されているんです!その、次は電車事故で……」

「………あの電車事故の時に唯は死んだのか?」

「はい……本当はトラックに轢かれて死ぬ運命だったんですけど……私が過去を変えちゃって今まで何とかお姉ちゃんを救って来ました」


284 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 08:30:26.58 9BOiQqHVO 149/153

「えっと……未来の憂ちゃんが過去の唯の姿を借りて過去の唯を死から助けてたって事か?」

「はい……でも助けても助けてもお姉ちゃんは死んだままで……助からないんです」

「私、今の憂ちゃんの状況と少しだけ似た映画を見た事あるよ……」

「……どんな映画ですか?」

「……死ぬ運命からは絶対逃れられないって設定の映画だよ」

「…………やっぱりそうだったんですね」


286 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 08:38:33.67 9BOiQqHVO 150/153

「…………え?」

「私ずっと疑問に感じてたんです。何度も何度もお姉ちゃんを救っても死んでしまう……ただ私はお姉ちゃんが死ぬ運命を引き延ばしてただけなのかなって……」

「そんな……」

「痛っ!……そろそろ時間みたいです。あの、この事はお姉ちゃんには言わないでおいて下さいね」

「ぐすっ……それが本当なら……嫌だよぉ……」

「それじゃあ……さようなら」


287 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 08:41:42.23 9BOiQqHVO 151/153

・・・・・・

「………………はっ!」

「……………」

「……………」

「ゆ、唯先輩……?」

「ほぇ?……あぁっまた記憶が飛んでる!」

「ううっ……ぐすっ」

「澪ちゃん何で泣いてるの?……あれ?おかしいな私も泣いてる……悲しくないのに何で泣いているんだろ?」

「唯先輩……」

「…………ヤダよ唯ちゃん……嫌だよ」

「ムギちゃん?」


289 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 08:47:34.99 9BOiQqHVO 152/153

10月26日。

「お姉ちゃん……………」

「あ、憂……おはよう!えへへ~まだ眠いや」

「お姉ちゃん!!」

「わわっ!いきなり抱き着いて来てどうしたのぉ~?」

「ううん、ずっとこうしたかった……」

「もー憂ってば甘えん坊さんなんだから」

「えへへー…………ずっと一緒だからねお姉ちゃん」

びっくりした。
お姉ちゃんの部屋の扉を開けるとお姉ちゃんがいるんだもん。
本当にびっくりした。


291 : 以下、名... - 2010/09/15(水) 09:04:08.46 9BOiQqHVO 153/153

お姉ちゃんの体温を全身で感じながら私は涙を流した。

「憂、何で泣いてるの?」

「ううん。何でも無いよ」

本当にずっとお姉ちゃんを抱きしめたかった。
この優しい香りを匂いたかった。
可愛い声を聞きたかった。

だけど……だけど私はわかってる。
これからは用心してお姉ちゃんと一緒に過ごさないといけない。


「これからはずっと一緒だからね?」

「当たり前だよー!」

今までの事はほんの始まりでしか無い。
死の運命は一生お姉ちゃんに纏わり付く……。
そう、永遠に。





END


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