帰り道
梓「もう、高校三年生だね……」
純「うん。早いね」
憂「お姉ちゃんもいなくなっちゃったし、ね」
梓「寂しくない? 憂」
憂「ううん。大丈夫だよ」
梓「そっか」
元スレ
憂「親友でいられるよ。絶対」
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1284209724/
純「ねぇ、憂。今度の休みどこか行かない?」
憂「あ、いいね! どこ行こうか?」
梓「遊園地、とか?」
純「遊園地かー、最近行ってないなー」
梓「じゃあ、そこでよくない?」
憂「いいかも! でも、どこの遊園地?」
純「ディズニーランド、とか?」
梓「えー、待ち時間だけで一日終わっちゃうよ」
憂「じゃあ、フレンズランドは?」
純「あー、隣街の?」
憂「うん」
梓「いいかもね、そこにしよっか」
憂「何曜日の何時に行く?」
純「今度の土曜日くらいでいいんじゃないかな」
梓「早く家出ない? そしたらたくさん遊べるし」
純「そうしよっか」
梓「じゃあ、土曜日の6:00ぐらいに、桜駅の前で待ち合わせね」
土曜日
梓「うーん、早く来すぎちゃったかな」
梓「まだ4:00だし」
梓「周りに誰もいないしなー」
梓「暇だー!」
梓「…………」
梓「何やってるんだろ。私」
梓(それにしても暇だなぁ)
梓(何かテンションあがってきたぞ)
梓「あ、梓ちゃん待った?」
梓「ううん。憂、早いね」
梓「梓ちゃんの方が早いよ~」
梓「純遅いね」
梓「そうだね」
梓「髪のセットに手間取ってるんだろうね」
梓「純ちゃん、クセ毛だからね」
梓「あぁー、なんか徹夜とかしてそう」
梓「もしかしたら、まだ寝てたりしてね」
憂「……梓ちゃん」
梓「ひぃぃぃぃっ! な、いたなら言ってよ!」
憂「話しかけようとしたらね、『あ、梓ちゃん待った?』とか言い出すから、びっくりしたんだ」
梓「言わないでね! 純には言わないでね!」
憂「うん……あと、全然似てなかったよ」
梓「そ、そう? 憂の口調はそっくりじゃなかった?」
憂「うーん、いまいち」
梓「がーん」
憂「それにしても、梓ちゃん早いね。いつ来たの?」
梓「今さっきだよ」
憂「一人で暇じゃなかった?」
梓「暇だから声まねやってたんだ。誰もいないから、テンションあがってね」
憂「そっかー」
梓「今何時?」
憂「4:30」
梓「まだ一時間半もあるんだー」
憂「うん。お弁当作りのために早く起きてたんだけどね。意外と早く作れちゃった」
梓「え? お弁当?」
憂「うん。おひるごはんにね」
梓「うわー、私、お昼ご飯持って来ちゃった」
憂「じゃあさ、それ朝ごはんにしたら?」
梓「あ、それいいかも」
憂「でしょ。私も朝ごはん用のを別に作ってるんだ」
梓「準備いいねー、憂」
憂「えへへ」
梓「あーあ、後は純か」
憂「何してるんだろうねー」
****************************************
ジリリリリリリリリリリリ!!! 純「うるさーーい!」 バン! ……リン
純「ふぁ~あ、今何時………」
純「うぅん? まだ4:30じゃない。何でこんなに早く目覚ましなるのよ」
純「今日なんかあったっけ……」
純「…………………………」
純「……あ。そうだ、遊園地」
純「まだ4:30だしなぁ。もう少し寝れるなぁ」
純「うーん、でも髪のセットに時間かかるからなぁ」
純「おきた方がいいよね……」
純「はー、昨日ずっとゲームやってて、肩がこるよ」
純「ま、いいや。顔洗おう」
****************************************
梓「そう言えばさ、進路希望調査の紙だした?」
憂「うん。出したよ」
梓「どこにするの? 大学」
憂「うーんと、私はN女。梓ちゃんは?」
梓「私は音大かN女だね」
憂「へえ。音大って、ミュージシャンになりたいの?」
梓「うーん、なりたい職業ってのは、まだ決めてないんだけど」
梓「音楽に関係する職業につきたいなーって」
梓「憂は何かなりたいものある?」
憂「小学校のころは、お姉ちゃんのお嫁さんって書いてたんだけどね」
梓「憂らしい」クスッ
憂「今は……、うん。大学しか決まってないなぁ」
梓「高校三年生でこれって、やばいのかな?」
憂「さあ? でも、大学でなりたい職業決めればいいよ」
梓「かもね」
憂「それに、理想があったって、努力しなきゃ叶わないんだから。まずは、大学に入る努力をするよ」
梓「何か、お説教されてるみたい」
憂「え? ごめん」
梓「いいって。でも、理想かぁ……」
梓(実際のところ、HTTで音楽界デビューとか、してみたいけど)
梓(もう、無理だろうなぁ)
梓(先輩達、大学でサークル作ってるのかな?)
梓(……私も、N女行ってみようかな)
憂「うわー、朝日が出てきたよ!」
梓「本当だ!」
憂「うーん、明るくなると心も弾むね」
梓「そうだね。今何時?」
憂「えーと、5:00前」
****************************************
純「うー! 寝癖とれない!」
純「あああ! 遅れちゃう!」
純「もう! なんでこんなクセ毛なのよ!」
純「あー! もういい! このまま縛る!」
純「こうして、……よし。出来た!」
純「…………うわー」
純「なんでこんなに、ツインが膨らんでるの?」
純「笑われるなぁ、これじゃあ」
純「しゃーない。寝癖と格闘するか」
純「もう。寝癖取れなさいよ!」
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梓「そう言えばさ、唯先輩って今元気?」
憂「うん。三日に一回は電話して来るんだ」
梓「ふーん」
憂「向こうでも四人で仲良くやってるみたいだよ」
梓(……いいなぁ)
憂「あ、忘れてた。お姉ちゃんから『あずにゃんに言っといてー』って言われてたんだ!」
梓「え?」
憂「N女で待ってるから来てねって……」
梓「待ってる……」
憂「向こうでね、新放課後ティータイムって名乗って、バンド活動してるんだって」
梓「ふうん」
梓(待ってるか……)
梓(先輩達が、私を……)
梓(N女、本当に志望しようかな)
憂「梓ちゃん?」
梓「え?」
憂「いや、いきなり黙りこくっちゃって、どうしたのかなーって」
梓「ううん。ちょっと考え事してただけ」
憂「そっか」
梓「今何時?」
憂「えーと、5:30」
梓「あと30分しかないのに。純どうしたんだろ」
憂「まさか、寝坊とか?」
梓「まさか……ね」
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純「やっと髪直った……って、もう五時半!?」
純「朝ごはん食べてる暇ないよ! もう出なきゃ!」
純「もう! クセ毛に産んだお母さんの馬鹿ー!」
純(家から駅まで20分……途中でコンビニによる時間は、ある!)
純(コンビニでおにぎり買って、それを朝飯にすれば……)
純(よし、完璧!)
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梓「あー! もう、純のやつなにしてるのよ!」
憂「電話しようか?」
梓「そうした方がいい……かなぁ?」
憂「微妙だよね」
梓「うん。ぎりぎりに来そうだからね」
憂「それで、『6時には間に合ってるじゃん!』とか言うの」
梓「あ、似てる似てる」
憂「えへへ、そうかな」
梓「うん」
純「お、お待たせ~」ハアハア
梓「あ、純! 遅いよ!」
純「えー? い、今何時よ?」
憂「今は5:56だよ」
純「ろ、6:00には間に合ってるじゃん!」
梓(憂の言ったとおりだ……)
純「間に合っただけいいじゃん、ね。憂?」
憂「う、うん」
純「でしょ? で、駅に来たはいいけど、何時に電車出るの?」
梓「あと十分後よ」
十分後
電車内
純「いやー、必死で自転車漕いでここまで来たから、疲れたよ」
純「つーかさ、隣町なんだから、自転車で行けばよくなかった?」
梓「いまさら言っても遅いわよ。それに、自転車だったら帰りは疲れすぎて大変よ」
純「あ、そうかもね」
憂「それより皆、朝ごはん食べようよ」
梓「あ、うん」
純「へー、朝からそんな食べるの? 梓」
梓「あ、これ? お昼ご飯の代わりに作ってきたのよ」
純「え? お昼ごはんいるの?」
憂「私が三人分作ってきたから大丈夫だよ」
純「なんだ、よかった」
梓「純は何が朝ごはんなの?」
純「私? おにぎり」
梓「コンビニの?」
純「うん。寝坊しちゃってさ」
憂「大変だったねー」
純「うん。髪の毛のクセと一時間は格闘したね」
隣町
純「あー、やっときたね」
憂「うん。もう7:00だね」
梓「あ、フレンズランドも7:00開園じゃなかった?」
憂「うん。丁度いいね」
純「じゃ、行こうか」
憂「うん!」
フレンズランド
純「着いた着いたー! 何乗る?」
梓「何でも乗れるんじゃない? 時間もあるし、あまり客もいないし」
憂「そうだね。あ、じゃあさ、メリーゴーランドに乗らない? あれ、結構好きなんだよね」
梓(なんかファンシー……)
純「うん、メリーゴーランドに乗ろうか」
憂「じゃあ、私白いお馬さんね!」
梓「いや、みんな馬でしょ」
純「馬によっても違いがあるのよ。それよりさ、梓、一緒に乗らない?」
梓「へ?」
純「メリーゴーランドとかにさ、二人で乗ってみたかったの」
梓「いや、まぁいいけど」
純「じゃ、早く乗ろうよ!」
憂「乗ろう乗ろう!」
三人がメリーゴーランドに乗る。軽快な音楽と共に、作り物の馬達が動き出す。
憂「いやー! 楽しー!」
純「何か、憂の意外な一面が見えたって言うか……」
梓「うん。メリーゴーランドに乗って大ハシャギしてる高校生なんて、始めてみたよ」
純「でも、こうして久々に乗ると、楽しくなるかも」
梓「かもね。どこか懐かしいし」
純「ねえ、次何乗る?」
梓「フリーフォールは?」
純「何それ?」
梓「一気に上まで上って、そこから落下するの。ぐぅーん! って」
純「へえ、面白そう! 乗ってみようか!」
フリーフォール
純「高い高い高い高い!! やだー! やめてー!」
梓「純! 暴れると落ちるよ!」
憂「うわぁ……絶景」
梓「でしょ? 結構高さあるから、遊園地全体を見渡せるんだよねー」
純「たーーかーーいーーー!!」
梓「大丈夫だよ、もう少しで落ちるから」
純「え?」
ごうん、と音を立てて。
純「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
梓たちを乗せた長椅子が、落下する。
純「怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖いいいいいいいいいいい!!!!」
数秒後―――。
純「……舌噛んで死ぬかと思った……」
梓「純、涎出てるよ」
純「えぇ? 本当?」
純(もう、二度と乗らない……)
梓「次何にする?」
憂「ジェットコースター?」
梓「うん、そうしよっか」
純「ばけものだ……、あんな気持ち悪くなるの乗って、ジェットコースター乗ろうなんて……」
梓「いいから行くよ。追いてっちゃうよ」
純「……死ねる、これは死ねる……」
ジェットコースター、ミラーハウス、海賊船、その他さまざまな遊具で遊んで、昼になった。
梓「いやー、楽しかったね」
憂「うん、とても!」
純「つ、疲れた……」
梓「お客さんも増えてきてるね……そうだ、もうお昼ごはん食べない?」
憂「あ、いいね!」
梓「あそこに芝生あるじゃん、そこにしようよ」
憂「うん!」
純「や、やっとお昼だ……うぷ、気持ち悪い」
梓「大丈夫? ジェットコースター乗り終わった辺りからそんな状態だけど」
純「なんとか……」
芝生
純「いただきまーす!」
梓「お昼ごはんになったら突然元気になったなぁ」
純「へへ、立ち直りが早いんだよ」
梓「……そうかなぁ?」
純「細かいことは気にしないー、それにしても、憂のお弁当美味しいね!」
憂「えへへ、ありがとう」
純「もう、完璧! これ売れるよ!」
梓「どれどれ……本当! 美味しい!」
純「でしょ? 憂と結婚できた人は幸せだろうなー」
憂「照れくさいなー」
純「憂食べないの?」
憂「あ、待って。その前にトイレ行ってくるよ」
梓「んー」
憂はとてとてと、トイレに向かう。
梓「美味しいねー、憂の料理」
純「うん」
梓「……………………」
純「……………………」
梓(気まずい……何か話題を……)
純「あ、あのさ」
梓「? 何?」
純「志望校、どこにしたの?」
梓はすこし、既視感をおぼえた。
梓「私は……N女だよ」
純「あ、私と同じ」
梓「へえ、純もなんだ」
純「うん。ねえ、梓」
梓「んー?」
純「大学行っても、仲良くいようね」
梓「もちろんだよ。憂も一緒だしね」
純「うん。また、三人でさ、プール行ったりしようよ」
梓「いいね、それ」
梓(大学行っても、ううん、大人になっても)
梓(ずっと、三人一緒でいよう)
憂「ふいー、混んでたよ、トイレ」
と、そこに憂が帰ってきた。
憂「何の話してたの?」
梓「うん。大学行ってもずっと一緒だって話」
憂「ずっと、一緒かぁ」
梓「うん」
憂「いれるかな? ずっと」
梓「いれるよ。ずっと」
憂「……楽しみだなぁ、大学」
梓「え?」
憂「こうやって、また三人で大学いけるなんて、楽しいことだと思わない?」
純「あー、まあ、確かに」
憂「でしょ? だから、楽しみなんだ」
時刻は12:45
初夏の日差しが、三人を照らしていた。
****************************************
昼食をとった三人はその後、まだ遊んでいない遊具に乗った。
遊園地内の遊具をあらかた経験したころには、時刻は4:00を指していた。
憂「まだ、乗ってないのある?」
梓「うーん、あ、あった!」
憂「何?」
梓「観覧車!」
****************************************
観覧車に三人は乗り込んだ。
すこしの振動と共に、機体が動き出す。
浮上する感覚。
梓「最後って感じがするね」
憂「うん」
純「あーあ、何かこうしてみるとむなしいなー」
梓「まあ、確かに感傷的になるね」
憂「でもさ、楽しかったよね?」
純「うん、まあ」
純「フリーフォールやジェットコースターさえなければ、かなり良かったよ」
梓「まだ、トラウマなんだね」
純「だって、あれは怖すぎるよ」
梓「何度も乗ってたら、慣れるよ」
純「あれだけは慣れたくないね」
憂「……あ、見て! 綺麗!」
純「どれどれ、お、本当だ!」
観覧車内からは街が見渡せた。
純「あ、あれ私の家かも」
ずっと向こうをゆびさして、純が言う。
憂「じゃあ、私の家はあれかな」
梓「あ――桜高」
純「え? どこどこ?」
梓「ほら、向こう」
純「あ、本当だ!」
摘めそうなほど小さく、桜高が見える。
純「何だか、巨人になったみたい」
憂「うん」
梓(……雄大だなぁ)
梓「あーあ、疲れちゃった」
憂「あ、そうかも。遊び疲れがきたよ」
梓「何せ私は12時間も外にいるからなー。もう腰が痛くって」
純「梓、おばあちゃんみたい」
梓「なにおー! 失礼な!」
純「でも、確かに疲れたね」
梓「でしょ?」
純「うん」
憂「また、勉強の毎日かぁ」
純「受験生だからね」
憂「憂鬱だなぁ。ずっと、遊んでいたいよ」
梓「唯先輩みたいなこと言うね」
憂「姉妹だからね」
梓「ふうん」
やがて、観覧車が地上へゆっくりと落下していく。
憂「終わっちゃうね」
純「うん」
梓「いやいや、帰るまで楽しもうよ」
憂「あ、確かにね」
梓「帰るまでが、遠足なんだしさ」
憂「遠足じゃないけどね」
梓「小っちゃいことは気にしない」
三人は観覧車から出る。
憂「日が長くなったね。まだ夕日じゃない」
純「うん」
梓「帰るころには夕日だよ、きっと」
憂「かもね」
三人はフレンズランドの出口へと向かった。
電車に揺られておよそ1時間。
三人は見慣れた桜駅に到着した。
純「おお、梓の言ったとおり、もう夕焼けだ」
梓「でしょ?」
憂「結構綺麗だねー」
梓「うん」
純「あれ? みんなどうやって駅に来たの?」
梓憂「徒歩」
純「私だけ自転車か……」
梓「押してけば?」
純「うん、そうするよ」
純は駐輪場へ向かい、数秒して自転車を持ってきた。
純「じゃ、行こうか」
梓「うん」
赤く染まった道を、三人はゆっくりと歩く。
梓「また行こうね」
憂「うん」
純「今度はフリーフォールなしね」
梓「えー、つまんなーい」
憂「あ、それでさ。夏になったらさ、プール行こうよ」
梓「あれ? そういえば夏になったら唯先輩たち戻ってくるの?」
憂「あ、うん。帰省してくると思うよ。楽しみだなぁ」
梓「そのとき、教えてよね」
憂「もちろんだよ」
純「……なんかさ、来年は大学生になるって言う実感がわかないなぁ」
梓「確かに、ね」
梓「あ、でも浪人してるんじゃないの?」
純「うう、それは考えたくないなぁ」
梓「ま、私も頑張らなきゃね。N女行くんだから」
憂「あ、そうそう。いつの間にN女にしたの? 朝の時点では音大にしようか悩んでいるって言ってたのに」
梓「だって、先輩達が待ってるんだもん。N女を選ぶよ」
憂「よかった、お姉ちゃん喜ぶよ」
純「みんなで、絶対現役合格しようね」
梓「うん。絶対」
憂「……あれ? でも、そんなうまくいくかな? よく考えたら」
梓「うまくいくよ。私たちなら」
純「そうだよ。何しろ私たちだもん!」
憂「理由になってないような気がするけど……自信が出てくるよ」
梓「大丈夫だって、信じれば夢は叶うって言うじゃん」
純「そうだ、合格したらパーティ開こうよ! 三人でさ、美味しいもの食べるの」
梓「いいね! それ」
憂「楽しみー」
梓「――あ、そういえば。もう少しで修学旅行あるね」
純「修学旅行かー」
憂「京都だよね、行くの」
梓「うん」
純「京都で何食べようかなー」
梓「純は本当、食べるの好きなんだね」
純「へへ、まーね」
純「あ、私こっちだから。じゃあね」
梓「あ、うん。また学校で」
憂「じゃあね、純ちゃん」
梓「……二人だけになっちゃったね」
憂「うん」
梓「ねえ、梓」
憂「なぁに?」
梓「私たち、純も憂も私も、――ずっと親友でいられるかな?」
憂「親友でいられるよ。絶対」
梓「社会に出ても、ずっと、一緒かな?」
憂「社会に出ても一緒、かどうかはわからないけどさ」
梓「けどさ、何?」
憂「月に一度はこうやって、三人で遊ぼうよ。週に一度だっていいや」
梓「いいかもね、それ」
憂「三人でね遊ぶんだよ。楽しくさ」
憂「大人になっても、ずっと、ずっと」
梓「――――そうだね」
憂「いつまでも子供じゃいられないけどさ。そうやって遊ぶのって、悪くないと思うんだ」
梓「今日みたいに、遊園地行ったり?」
憂「お酒飲んだり、ね」
梓「今からわくわくするよ」
憂「私もだよ」
憂「まずは、N女に入ろうね。みんなで」
梓「うん。皆で」
憂「――頑張ろうね」
梓「うん」
梓(勉強、頑張らないとなぁ……)
梓(純たちと、同じ大学行って、そして……)
梓(そのためにも!)
気がつくと、声に出していた。自分をいきり立たせるように。
梓「目指せ、N女現役合格、おー!」
梓はいきなり手を振り上げた。
それを見た憂も。
憂「おー!」
と、手を振り上げた。
それを見ながら少しばかりの嬉しさを感じる。
きっと私たちなら大丈夫――梓はそう思うことにした。
終わり