1 : 名無しさ... - 20/07/06 21:25:45 Xh5 1/120


「LEADER!!って聞いた?」

「ああ……新曲だっけ」

「そう! ASが歌ってんのよ。これめちゃくちゃいいから聞いてみ」

「帰ったら聞いてみるよ」

「やっぱまだミリシタやってないの?」

「まあ、そのうちかな」

元スレ
春香「プロデューサーさん!」男「えっ?」
http://wktk.open2ch.net/test/read.cgi/aimasu/1594038345/

2 : 名無しさ... - 20/07/06 21:26:37 Xh5 2/120


「いま2周年イベ始まったしさ、新曲もすごい良いから」

「うーん……」

「LEADER!!とか歌詞が良いんだよ。春香だなって感じするし」

店員「おまたせしましたー、ウーロンハイと、こっちウーロン茶ですね」

「どうもー」

3 : 名無しさ... - 20/07/06 21:27:36 Xh5 3/120


「まあ最近は、ASの動きも全然ないしな……」

「MRだって半年前ぐらいだもんなあ、最近早すぎるわ」

「ミリシタねえ」

「デレステよりは興味あるんじゃないの?」

「あー、デレは全然わかんなかったからなー」

4 : 名無しさ... - 20/07/06 21:28:16 Xh5 4/120


「ミリシタは春香いるじゃん。なんでやらないんだよ」

「まあいる、けど」

「ASのイベントもちょくちょくあるし、それにミリオンの子も結構かわいいのよ」

「ああ、SSR引いたんだっけ?」

「そう! 最初すぐ出ると思ったんだけど全然でさ、結局すげー課金しちゃって……」

5 : 名無しさ... - 20/07/06 21:29:39 Xh5 5/120


――――――
――――

ガチャ

「たーだいまー……」

(帰り道で、あの新曲を聞いた。いい曲だと思った)

(だけど、『リーダー』って言葉にはモヤモヤしてしまう)

「リーダーねえ……」

(春香は真っ直ぐ走るべき子だ。でも、リーダーって『後輩に道を譲れ』って言われているみたいで)

6 : 名無しさ... - 20/07/06 21:30:29 Xh5 6/120


(俺にとっての主役は、春香たちしかいないのに)

「はあ、キモいな」

「実際、ミリシタ以外はMR終わってからなんにもないし」

「このまま終わったりしちゃうのかぁ……」

春香「プロデューサーさん。あの、終わるって、何がですか?」

7 : 名無しさ... - 20/07/06 21:31:14 Xh5 7/120


「そんなのアイマスのことに……うわあああああ!???」

春香「えっ!?」

「はははははる、はる、春香」

春香「は、はいっ」

「天海春香っ!?」

春香「そっ。そうですけど……」

8 : 名無しさ... - 20/07/06 21:31:57 Xh5 8/120


「なん、で、えっ!? なんで! コスプレ!?」

春香「コス、プレ……えええっ? ち、違いますよ! 天海春香です、正真正銘の本物ですよっ」

「だ、だだだって、こ、こここっ」

春香「落ち着いてください、プロデューサーさん! ……私の顔、よく、見てください」

「…………春香、だ」

春香「でしょう?」

9 : 名無しさ... - 20/07/06 21:32:34 Xh5 9/120


春香「プロデューサーさんがずっと元気ないって聞いて、みんなを代表して見に来たんです」

「だ、代表……見に来た……?」

春香「はい」

「どうやって……」

春香「あっちから来ました」

「あっちって?」

10 : 名無しさ... - 20/07/06 21:33:17 Xh5 10/120


春香「あっちです」

「……PS4のこと言ってんの?」

春香「そうです」

「PS4から、ここに来たって?」

春香「遊んでみてください。ステラステージ」

「…………」

11 : 名無しさ... - 20/07/06 21:34:02 Xh5 11/120


ピッ! ウィン…

「あ、パワプロ起動中だった……」

春香「……」

「…………あ、あれ?」

春香「ふふっ」

「春香だけ、いない?」

12 : 名無しさ... - 20/07/06 21:34:38 Xh5 12/120


「春香のとこだけ、穴になってる」

春香「……」

「す、スクショも……影、影……影」

春香「信じてもらえました?」

「おまえ、本当に……」

春香「はいっ」

13 : 名無しさ... - 20/07/06 21:35:19 Xh5 13/120


春香「最初は、美希と真とやよいとあずささんと……っていうか、みんなで行こうってなってたんですけど」

「マジか」

春香「千早ちゃんが、プロデューサーさんが一番会いたいのは春香だって言ってくれたんです」

「千早が」

春香「……ずっと、最初に選んでくれてますもんね」

「うん……うん」

14 : 名無しさ... - 20/07/06 21:35:53 Xh5 14/120


春香「どうですか? 元気、出ました?」

「そりゃ出るよ」

春香「本当ですか! よかったーっ」

「俺、幸せだったよ。春香」

春香「はい?」

「最後にこんな夢を見られて」

春香「……?」

15 : 名無しさ... - 20/07/06 21:36:25 Xh5 15/120


「初めてゲーセンでおまえに会ったとき、すごい健気で、かわいくて……あの時はちょっとわがままだったけど」

春香「へ、変なこと言わないでくださいっ」

「……ずっと春香と一緒だった。2のときは仲間がほとんど辞めていったけど。アニマスで若い子も増えた。でも、シンデレラとかミリオンが出てきて」

春香「……」

「どんどん春香が、アイドルの卵じゃなくて、トップアイドルになるんだよ」

16 : 名無しさ... - 20/07/06 21:36:59 Xh5 16/120


「俺の好きな、アイドルを目指してる春香はもう居なくなっちゃったんだよ。みんなの憧れの先輩で、まとめ役、聞き分けのいい女の子で……」

春香「そんなこと」

「実際、みんな『偉大な先輩』になって……ステラみたいなゲームも、きっと出ない」

春香「……」

「生きがいがなくなるなら、死んでもいいかなあって思ってたんだ」

17 : 名無しさ... - 20/07/06 21:37:36 Xh5 17/120


春香「なっ」

「夢に出てきてくれるなんて思ってもなかったよ。最高だった」

春香「ゆ……夢?」

「目が覚めたら、いろいろ準備する。グッズは誰か貰ってくれるといいけど」

春香「プロデューサーさんっ、待ってください」

「あー、ずっと目が覚めなければな」

18 : 名無しさ... - 20/07/06 21:38:10 Xh5 18/120


春香「これ、夢なんかじゃありません!」

「やっぱり春香はかわ、いてっ、いててて!」

春香「痛いですか!?」

「いてえよ! ……え?」

春香「夢じゃありません。本当に来たんです!」

19 : 名無しさ... - 20/07/06 21:38:49 Xh5 19/120


――――
――

「じゃあ、その布団使って」

春香「はーい」

「なんかごめんな、春香」

春香「えっ? なにがですか?」

「アイドルにこんな薄い布団でさ」

20 : 名無しさ... - 20/07/06 21:39:24 Xh5 20/120


春香「あはは。なんですか、それ……あ、プロデューサーさんのにおい」

「わかるの?」

春香「分かりますよ。何年いっしょだと思ってるんですか?」

「パラレルじゃないんだ。……臭くない?」

春香「いいえ! なんだか、安心します」

21 : 名無しさ... - 20/07/06 21:39:57 Xh5 21/120


――――――
――――

春香「……サーさん」

「んあ……」

春香「プロデューサーさんっ」

「うわあ!?」

春香「きゃっ!」

「……は、春香」

22 : 名無しさ... - 20/07/06 21:40:43 Xh5 22/120


春香「あはは。おはようございます、朝ですよ」

「おはよう……」

春香「なんだか、新鮮な感じです」

「新鮮?」

春香「プロデューサーさんのおうちで、おはようって言われることです」

「ああ……ゲームじゃ、まずないもんな。こういうの」

23 : 名無しさ... - 20/07/06 21:41:20 Xh5 23/120


春香「そうですね」

「なあ……春香はさ」

春香「はい?」

「あっちの世界がゲームだって分かってるのか?」

春香「だいたい知ってますよ。私たちは『アイドルマスター』って世界の住人です」

「……その通りだ」

24 : 名無しさ... - 20/07/06 21:41:53 Xh5 24/120


春香「みんなも、小鳥さんも。もちろん社長も知ってます」

「……どうして俺の家に来てくれたの? プロデューサーなんて、他にもいっぱいいただろ」

春香「私のプロデューサーさんは、ずっとひとりですよ」

「いや、だって。ゲームはずっと」

春香「難しいことはよく分かりません。でも」

25 : 名無しさ... - 20/07/06 21:42:27 Xh5 25/120


春香「私には、あなたしかいませんから」

「……そうか」

春香「はいっ。……あ」

「どうした?」

春香「シャワー、浴びてきてもいいですか」

「いいけど……」

26 : 名無しさ... - 20/07/06 21:43:00 Xh5 26/120


春香「ありがとうございます。昨日はバタバタしちゃって」

「春香さ、着替え持ってきてないって言ってなかった?」

春香「あっ!」

「おいおい、女物なんて……あ」

春香「え?」

27 : 名無しさ... - 20/07/06 21:43:34 Xh5 27/120


ガチャ

春香「あがりましたー」

「うん。……丁度良さそうだな」

春香「いい感じです。彼女さん、私と同じぐらいの体型ですね」

「偶然ね。もう別れちゃったけど」

春香「あ……」

「なんで置いていったんだろ、捨てなきゃな」

春香「……ごめんなさい。あっあの、ご飯でも作ります!」

28 : 名無しさ... - 20/07/06 21:44:15 Xh5 28/120


「ああ、いいよ。なあ春香、こっちの世界を歩いてみないか」

春香「えっ?」

「興味ない?」

春香「あ、あります。ありますけど……外に出ても、大丈夫なんですか?」

「変装すれば大丈夫だよ。それに、春香がリアルに居るなんて、誰も思わないって」

春香「それじゃあ……」

29 : 名無しさ... - 20/07/06 21:44:59 Xh5 29/120


――

ザワザワ…

春香「すっごく広いですね」

「ここらへんで一番の広さだよ。俺も昔、めっちゃ通ったんだぞ」

春香「へぇー……あ! これですか!?」

「それそれ」

春香「うわ~! すごいすごい! 本当にゲームなんだ」

30 : 名無しさ... - 20/07/06 21:45:32 Xh5 30/120


「春香は、これのことは覚えてるの?」

春香「うーん、うまく言えないんですけど、残ってるっていうか」

「残ってる……」

春香「ここで、プロデューサーさんとお話したこと。オーディションに出たこと。それと今お話してるのは違うなって思います」

「……難しいね」

31 : 名無しさ... - 20/07/06 21:46:15 Xh5 31/120


春香「でも、いろんな記憶がごちゃまぜだってプロデューサーさんはひとりですから」

「うん」

春香「じゃあ、せっかくですし……遊んでもいいですか?」

「いいよ。100円持ってる?」

春香「あっ」

32 : 名無しさ... - 20/07/06 21:46:48 Xh5 32/120


春香「奥が深いですね~! 私、全然うまく行きませんでした。あはは」

「いやいや。ちゃんとランク上げてオーディション合格したんだから、なかなかの腕前だよ」

春香「このカード、持って帰れるかな」

「……雪歩によろしく言っといてくれ」

春香「もちろんです。雪歩、すっごく心配してたんですよ?」

33 : 名無しさ... - 20/07/06 21:47:20 Xh5 33/120


「申し訳ないな。プロデューサーなのに」

春香「……私、思うんですけど」

「ん?」

春香「プロデューサーさんって、私たちのこと、あんまり頼ってくれないですよね」

「そうかな」

春香「あ、あの! 変な意味じゃないんですけど。私たちはいつも頼りっきりなのに……って、思ったんです」

34 : 名無しさ... - 20/07/06 21:47:56 Xh5 34/120


「頼りきりだけどね」

春香「そう、ですか?」

「春香も765プロのみんなも、いつも心の中にいる」

春香「……嬉しいです」

「みんな頼ってくれるのに、選択肢からしか言葉をいえなくて、もどかしかったよ」

春香「私だって、直接お話したかったです」

35 : 名無しさ... - 20/07/06 21:48:32 Xh5 35/120


「……じゃあ、今は奇跡だね」

春香「はい。……だから、もっと今、頼ってほしいんです」

「頼る、か」

春香「こんな私に優しくしてくれて、とっても感謝してます。だから、この気持ちを今、あえて言葉にするなら……」

「『ありがとう』?」

春香「……えへへ」

36 : 名無しさ... - 20/07/06 21:49:05 Xh5 36/120


春香「あれ? これも、『アイマス』ですか?」

「ううん。ラブライブっていうアニメだよ」

春香「ラブライブ……」

「アイドルのアニメ。アイマスより人気みたいだ」

春香「プロデューサーさんは?」

「アニメは見たけど、そんなにハマらなかった」

37 : 名無しさ... - 20/07/06 21:49:40 Xh5 37/120


春香「へぇー。いろいろあるんですね」

「こっちはアイマスだよ。シンデレラガールズ」

春香「あ、卯月ちゃん」

「知ってる?」

春香「テレビ局でお喋りしたことがあるんです」

「そうなんだ……あ、そうだ。そっちの事務所に、後輩たちはいるの?」

38 : 名無しさ... - 20/07/06 21:50:15 Xh5 38/120


春香「後輩……ダンサーチームの子たちですかね」

「ああ、映画の世界なんだ」

春香「……? 映画、はわからないですけど。ダンススクールの候補生を765プロ預かりにしてます」

「なるほどな。先輩ではいるんだね」

春香「……プロデューサーさんは、アイドルを目指してる私はもう居ないって言ってましたけど」

39 : 名無しさ... - 20/07/06 21:50:48 Xh5 39/120


春香「私はいつだって、目指し続けてます」

「……」

春香「背中を見せるのがかっこいいのかもですけど、私は自分の目で、お客さんを見たいんです! 一番うしろまで」

「……春香は、きっとずっとそうなんだね」

春香「みんなも一緒です。きっと」

40 : 名無しさ... - 20/07/06 21:51:20 Xh5 40/120


「……やっぱり俺がダメだったんだ。春香たちのこと、信じられてなかった」

春香「プロデューサーさんの世界のことはよく分からないですけど。私たち、まだまだアイドルを辞めるつもりはありません」

「……ごめんな」

春香「……」ぐーっ

「あ」

春香「あ」

41 : 名無しさ... - 20/07/06 21:51:53 Xh5 41/120


――

店員「いらっしゃいませ~」

「何食う?」

春香「じゃあ、テリヤキバーガーと、コーラで!」

「男子高校生みたいだな」

春香「私、けっこうジャンクなもの食べちゃうんですよね」

「知ってる」

春香「え~。あ、席さがしてきます」

42 : 名無しさ... - 20/07/06 21:52:26 Xh5 42/120


春香「なんだかいつもより美味しい気がします」

「そりゃ良かったよ。……春香ってさ」

春香「んっ、はいっ?」

「いつかは、帰っちゃうんだよな」

春香「……ずっと一緒がいいですか?」

「……」

春香「プロデューサーさんが元気になったら、私の役目は終わりです」

43 : 名無しさ... - 20/07/06 21:53:00 Xh5 43/120


「……そうだな。ここじゃ、アイドルできないし」

春香「それとも」

「……」

春香「一生、隣にいてくれるなら」

「春香……」

春香「どうしますか? プロデューサーさん」

44 : 名無しさ... - 20/07/06 21:53:42 Xh5 44/120


「……追い返すね」

春香「あはは。ですよね」

「まだそんなことを言う歳でもないし……春香は、それで満足しないだろ」

春香「さすが、私のプロデューサーさんですね」

「まあな」

春香「……食べ終わったら、行きたい場所があるんです」

45 : 名無しさ... - 20/07/06 21:54:20 Xh5 45/120


――――

春香「わあ! 本当にそのまま……」

「二宮はさすがに時間がかかるな……」

春香「こっちに、いつも行ってた公園があるんです」

「ああ、あるね」

春香「知ってるんですか?」

「昔、来たことがあるんだ。……春香の見てる景色を見たくて」

春香「……ここ、遠いのに」

46 : 名無しさ... - 20/07/06 21:54:53 Xh5 46/120


「だいたい回ったぞ」

春香「じゃあ、私の家は行ったことありますか?」

「家……はないなぁ。たぶん、この世界にはないだろ」

春香「案外、あるかもしれないですよ?」

「どうかなあ。……案内してくれる?」

春香「もちろんです!」

47 : 名無しさ... - 20/07/06 21:55:27 Xh5 47/120


――――

春香「……このへん、なんですけど」

「フェンスの向こうか……行けないだろうな」

春香「やっぱり、ここは私の世界じゃないんですね」

「……春香の住む場所じゃないかもしれないけど、春香が居る場所ではあると思うよ」

春香「えっ?」

「パン屋のポスター、見たろ。アニメのをずっと貼ってある」

48 : 名無しさ... - 20/07/06 21:56:09 Xh5 48/120


「今でも、この街の人たちは知ってるんだよ。ここに春香が住んでること」

春香「……不思議な気持ちです。別の世界なのに」

「世界は繋がってるって、よく歌ってるじゃないか」

春香「……ひとりでは、できないことっ」

「……」

春香「なかまとなーら、できること♪」

49 : 名無しさ... - 20/07/06 21:56:44 Xh5 49/120


「……上手い」

春香「えへへっ。本当ですか?」

「……とっても、上手いよ。この歌声が大好きなんだ」

春香「プロデューサーさん……」

「大好きで、ずっと聞いてたくて……でも、ずっとは」

春香「……今いる私たちじゃ、頼りないですか」

50 : 名無しさ... - 20/07/06 21:57:17 Xh5 50/120


春香「新しい私たちじゃなくて、今の。ステラステージを目指す、765プロの私たち……」

「……頼りない、なんてことはないけど。ずっと同じことしか言ってくれないのは寂しいかな」

春香「あ……」

「新しい出会い。新しいあいさつ、新しい歌。全部、ゲームやCDが出てくれないと見られない」

春香「……どうして、ですかね」

「えっ?」

51 : 名無しさ... - 20/07/06 21:57:49 Xh5 51/120


春香「どうして私たち、ゲームなんかの中に生まれてきちゃったのかな……」

「……」

春香「この世界に生まれられたら、プロデューサーさんと出会って、一生どんな歌でもうたえるのに」

「……きっと、そうだったら俺と春香は出会えてないよ」

春香「そんなことは」

「君のプロデューサーは世界中にいるんだから」

52 : 名無しさ... - 20/07/06 21:58:24 Xh5 52/120


「ゲームで良かった。永遠に、一緒にいられるかもしれないだろう?」

春香「私は、永遠は嫌です。……進んでいきたいです」

「……ごめんな。俺にそれだけの力があれば良かったんだけど」

春香「もし私たちが、全員こっちの世界に飛び出してきたら」

「……うん」

春香「プロデューサーさんは、それでもプロデュースしてくれますか」

53 : 名無しさ... - 20/07/06 21:58:57 Xh5 53/120


「……自信ないな」

春香「そう……です、よね」

「みんなの人生を預かる自信、俺に無いよ。現実はゲームじゃないから」

春香「……」

「ゲームの『引退』なんてゲームオーバーと一緒で、また最初からやり直せるけど」

「現実で引退したら、時間は巻き戻らない。アイドルが終わってそのままだろ」

54 : 名無しさ... - 20/07/06 21:59:29 Xh5 54/120


春香「……プロデューサーさんのこと、ゲームの世界に連れていけたら良かったんですけどね」

「やっぱり、ダメなんだ」

春香「難しいみたいです。貴音さんの受け売りになるんですけど」

「うん」

春香「こっちの世界にも、私たちの居る場所にも『天海春香』はいます。だから、出てこられて。……でも私たちの居る世界にいるプロデューサーさんは、誰でもないんです」

「誰でもない、かあ」

55 : 名無しさ... - 20/07/06 22:00:04 Xh5 55/120


春香「だから、そこには行けないって」

「……難しいけど、なんとなく分かるよ」

ポツ…

春香「あ……」

「雨だ……戻ろう、春香」

春香「……はい」

56 : 名無しさ... - 20/07/06 22:00:39 Xh5 56/120


ガタン、ゴトン…

「帰ってから……春香は、やりたいこととかある?」

春香「ええと。プロデューサーさんとお話がしたいです」

「俺と?」

春香「はい。……帰ったらできないですから」

「そっか。じゃあ、そうしよう」

春香「はい!」

57 : 名無しさ... - 20/07/06 22:01:10 Xh5 57/120


春香「あっ、じゃあ。プロデューサーさん。私に、なにかお願いとかありませんか?」

「お願い?」

春香「はいっ。なんでもいいです。できることをさせてください」

「それじゃあ……手料理が食べたいかな」

春香「手料理! わかりましたっ」

「一番得意に作れるやつね」

58 : 名無しさ... - 20/07/06 22:01:41 Xh5 58/120


春香「えへへ、期待しててください」

「じゃ、帰りにスーパー行くか」

春香「いいですね」

「春香と一緒に遊んで、買い物して……ほんと不思議な気分だよ」

春香「夢じゃないですよ?」

「うん」

春香「……でも、ほっとしました」

59 : 名無しさ... - 20/07/06 22:02:14 Xh5 59/120


「なにが?」

春香「お願い……もし、その。ヘンなこと、したいとか言われたらどうしようって」

「言うわけないだろ」

春香「そ、そうですけど!」

「俺は、おまえのプロデューサーなんだから」

春香「ふふ……ほんと優しいです。プロデューサーさん」

60 : 名無しさ... - 20/07/06 22:02:47 Xh5 60/120


――――

春香「じゃーん! お待たせしました」

「おー!」

春香「オムライスです。スープも今持ってきますね」

「ありがとう。誰かにご飯作ってもらうのなんて、久しぶりだよ」

春香「えへへ。響ちゃんのレシピなんですけどね」

61 : 名無しさ... - 20/07/06 22:03:28 Xh5 61/120


「……春香の分は?」

春香「ああ、1回で1人分しか作れないんです。フライパンの大きさが……」

「じゃあ、待っててもいいか」

春香「いいんですか?」

「うん。一緒に食べたい」

春香「わかりました。ちゃちゃっと作ってきます!」

62 : 名無しさ... - 20/07/06 22:04:00 Xh5 62/120


春香「いただきまーす」

「いただきます」

春香「……ん。いいかんじ」

「おいしい」

春香「本当ですか! よかったぁ」

「春香の料理が食べられるなんて。考えたこともなかったよ」

63 : 名無しさ... - 20/07/06 22:04:33 Xh5 63/120


春香「えへへ。私、プロデューサーさんにご飯作ってあげたの初めてです」

「向こうでも?」

春香「はい。おうちに行ったりしませんから」

「そっか。すごい幸せ者だなあ、俺」

春香「良かったです。そんなに喜んでもらえたら作った甲斐があります」

「春香は料理がうまいもんな」

64 : 名無しさ... - 20/07/06 22:05:11 Xh5 64/120


春香「昔は、お菓子しか作れなかったんですよね。でも、いつのまにか普通の料理も作れるようになってて……」

「……設定が変わったんだ」

春香「設定?」

「こっちから見た話になるんだけど」

春香「はい」

「律子とか伊織とか、けっこう変わったんだよ。見た目とか、性格もだいぶ……。それでプロデューサーを引退した知り合いがいっぱいいて」

65 : 名無しさ... - 20/07/06 22:05:46 Xh5 65/120


「春香だっていろいろ変わってさ。わがままじゃなくなった」

春香「わ、わがまま……でした?」

「そんなに腹立つようなのじゃないよ。女の子だったら当たり前」

春香「そうですか……よかった」

「春香はみんなのまとめ役になってさ。常に頑張ってて、息抜きを知らなくて。昔はレッスンサボったりもしたのに」

春香「う、えへへ……」

66 : 名無しさ... - 20/07/06 22:06:19 Xh5 66/120


「俺はちょっと寂しかったんだ」

春香「寂しかった、ですか?」

「昨日も話したかもしれないけど。春香をプロデュースしてるつもりがどんどん置いてかれちゃって。俺がプロデュースされてるみたいだった」

春香「……どういう、ことですか」

「今の春香に見合う男になれ、って言われてるような感じかな。もちろん誰も言ってないんだけど」

67 : 名無しさ... - 20/07/06 22:07:01 Xh5 67/120


「二人三脚したいつもりが先導されてるみたいな。だんだん、つらくなってきて。プロデューサーを辞めるってことは全然考えなかったけど」

春香「……後悔してますか?」

「え?」

春香「私と、出会ったこと」

「そんなわけないよ」

68 : 名無しさ... - 20/07/06 22:07:34 Xh5 68/120


「……後悔なんかするわけない。春香がいたから、俺は頑張ってこれたんだ」

春香「……うん」

「でも、春香について行くのに必死で、最初の頃の気持ちをだんだん思い出せなくなって」

春香「……っ」

「ミリオンライブは……やっぱり、違うんだ。うまく言えないけど、あの春香は」

69 : 名無しさ... - 20/07/06 22:08:12 Xh5 69/120


「後輩がいて、常にアイドルらしく居て。完璧すぎるんだ」

春香「……」

「春香は、俺がいなくてもトップアイドルになれちゃうんだよ。それを考えたら」

春香「私は……プロデューサーさんに、ずっとプロデュースしてもらいたいです」

「ありがとう。……俺もそう思ってる」

70 : 名無しさ... - 20/07/06 22:08:45 Xh5 70/120


「みんなのお喋りとかを見るのは好きだよ。でも、違うんだ。それだけなのは……。ただ見てるんじゃなくて、一緒に。ただ、一緒に頑張りたいだけなんだよ」

春香「……私たちが、もっと、プロデューサーさんに寄り添えたら良かったんですけど」

「ううん。俺のせいだよ」

春香「そんな」

「俺が納得できないのが悪いんだ」

71 : 名無しさ... - 20/07/06 22:09:23 Xh5 71/120


「……ごめん。食事中に」

春香「い、いえ」

「本当に美味しいよ。スープも優しい味で……」

春香「……プロデューサーさんが許してくれるなら、ずっと、隣にいます。ご飯も作ります!」

「ダメだよ」

春香「っ……」

72 : 名無しさ... - 20/07/06 22:09:58 Xh5 72/120


「春香の夢は?」

春香「……トップアイドルです」

「この世界に本物の765プロはない。千早や美希もいないし、本物のプロデューサーだっていない」

春香「ここじゃ、なれませんか」

「そういうわけじゃないけど。春香が輝ける場所は、他にあるよ」

春香「……」

「ありがとう。一緒にいたいなんて言ってくれて」

73 : 名無しさ... - 20/07/06 22:10:30 Xh5 73/120


――――

「春香。お風呂入る?」

春香「あ……入りたいです」

「うん。洗ってくるから待ってて」

春香「はい。あ、あの」

「ん?」

春香「私も、洗います」

74 : 名無しさ... - 20/07/06 22:11:02 Xh5 74/120


春香「一緒に洗いませんか?」

「……じゃあ、ぜひ」

春香「ありがとうございます」

「アイドルに風呂掃除までさせるなんて……申し訳ない」

春香「えっ? いえ、私がやりたいって言ったんです。気にしないでください」

「でも……そんなプロデューサー、居ないだろ」

75 : 名無しさ... - 20/07/06 22:11:34 Xh5 75/120


春香「あはは……あ、スポンジ取ってください」

「うん」

春香「みんな、びっくりするかなー。流石にお風呂の掃除してるとは思ってないかもですね」

「そうだな。……みんなも、こっちに来ることは出来るんだっけ」

春香「はい。でも、全員で来たら迷惑ですから、私が代表で」

「そっか」

76 : 名無しさ... - 20/07/06 22:12:07 Xh5 76/120


春香「会いたいですか?」

「うーん、そりゃ、会いたいけど……」

春香「呼んできましょうか。亜美と真美、来られなくてすごくガッカリしてましたし」

「ううん、いいよ。春香と会えただけで充分だ」

春香「そ、そうですか?」

「うん。……それにあいつらはイタズラ目的だろうしな」

77 : 名無しさ... - 20/07/06 22:12:40 Xh5 77/120


春香「ふふ、わかりました。ふたりには内緒にしておきますね」

「……あとさ、伊織とか律子とか、なんか怖いもん」

春香「ふふっ」

「せっかく春香に向かわせたのに、なに料理とか作らせてるのよー、とか言われたら、何も返せないし」

春香「あははっ。モノマネ、似てますね」

「そりゃあな。何年も一緒だから」

春香「でも……ふたりとも、すごく心配してますから。怒っても照れ隠しですよ、きっと」

「心配か……」

78 : 名無しさ... - 20/07/06 22:13:16 Xh5 78/120


春香「……私、ダメですね」

「どうして?」

春香「プロデューサーさんのこと、元気づけようと思って来たのに。むしろ、落ち込ませちゃって」

「そんなことないってば」

春香「もっと、元気になってほしいんです。私プロデューサーさんに恩返しっ、わ、わわっ」

「春香!」

春香「きゃあ!」

79 : 名無しさ... - 20/07/06 22:13:54 Xh5 79/120


――――

「ほい。タオル」

春香「……ごめんなさい」

「大丈夫だよ。もうすぐお風呂沸くから、そしたら入っておいで」

春香「プロデューサーさんも、びちょびちょです」

「俺はいいよ」

春香「良くないです! 風邪ひいちゃいま……あっ。お、お背中流させてくださいっ!」

「ええっ!?」

80 : 名無しさ... - 20/07/06 22:14:27 Xh5 80/120


カラン…

春香「……だ、大丈夫ですよ? 目、あけても……」

「いやいや。アイドルにこんなことしてもらってるだけでも、犯罪だし」

春香「は、犯罪って」

「ごめんな、春香……すぐ出てくから」

春香「ふ、服着てますから。大丈夫です」

「……うん」

81 : 名無しさ... - 20/07/06 22:15:05 Xh5 81/120


春香「流していきますね」

「ありがとう……」

春香「……」

「ほ、ほんとに背中だけで。俺はすぐ出ていくから」

春香「わ、わかりました」

「……」

82 : 名無しさ... - 20/07/06 22:15:36 Xh5 82/120


春香「……」

「春香さ」

春香「はいっ?」

「トップアイドルになったあとのこと、考えてる?」

春香「え……あとのこと、ですか」

「うん」

83 : 名無しさ... - 20/07/06 22:16:10 Xh5 83/120


春香「まだ……考えられない、です。まずはオーディションを勝って、進んで」

「……そっか」

春香「考えたほうが、いいですか?」

「俺は……そのあとのことも、考えてほしいと思う。春香だけじゃなくてみんなにも」

春香「そのあと……」

「そうしたら、たとえ『アイマス』が終わってもその先で生きていけるかもしれない。アイドルを、たとえ諦めても……」

84 : 名無しさ... - 20/07/06 22:16:49 Xh5 84/120


春香「……プロデューサーさんは、男の人だから分からないかもですけど」

「……うん」

春香「女の子って、みんなトップアイドルを目指してるんです。でも、途中で、目が覚めちゃったり、打ちのめされて……現実に、気づいていくんですけど」

「……」

春香「私たち……765プロにいるみんなは、アイドルを諦められずにここまできた、みんななんです。だから、アイドルじゃない私たちは」

「……アイドルじゃなくなったら、春香はもう、春香じゃない?」

85 : 名無しさ... - 20/07/06 22:17:21 Xh5 85/120


春香「……はい」

「そうか」

春香「私たちの生きる場所は、アイドル。きっと、それしかないんです」

「ごめん、春香」

春香「い、いえっ。私こそ、偉そうになってすみません……お湯、かけます」

「うん……」

86 : 名無しさ... - 20/07/06 22:17:58 Xh5 86/120


春香「プロデューサーさんは、アイドルじゃない私たちのこと。見たいですか?」

「ああ……夢を叶えたあとのみんなを見てみたいよ」

春香「先輩でも、まとめ役でも、アイドルでいる私より……ですか」

「それは」

春香「プロデューサーさん、言ってましたよね。アイドルを『目指してる』私たちが好きだって」

「……うん」

87 : 名無しさ... - 20/07/06 22:18:33 Xh5 87/120


春香「私がトップアイドルになったら、プロデューサーさんは……遠くに行っちゃうんじゃないですか?」

「そんな」

春香「今も、離れかけて……だから!」

「……春香」

春香「いやです。そんなの、あんまりですよ……」

88 : 名無しさ... - 20/07/06 22:19:07 Xh5 88/120


春香「ずっと、ずっとだいすきで……トップアイドルになったら、喜んでもらえるって。いつも、応援してくれる、その、やさしさが……」

「……春香」

春香「あ……」

「ごめん」

春香「……すみません」

「そういうつもりじゃ無いんだ。ただ、俺は……」

89 : 名無しさ... - 20/07/06 22:19:43 Xh5 89/120


「春香との、人生が……『アイマス』が終わるのが、嫌で」

春香「……私だって、嫌です」

「それなら、アイドルじゃなくても、春香が生きていける場所があるなら……って」

春香「それは、もっと嫌です……」

「……」

春香「私は、アイドルになりたいんです。アイドルじゃない私は、プロデューサーさんの隣に……いられないです」

90 : 名無しさ... - 20/07/06 22:20:32 Xh5 90/120


春香「それなら、トップアイドルになって、『アイマス』と一緒に、終わっていったほうが、いいです……」

「……春香」

春香「すみません……」

「ごめん……春香の気持ち、考えてなかった。自分のことばっかりで」

春香「……」

「先に、お風呂入ってて」

春香「プロデューサーさん……」

91 : 名無しさ... - 20/07/06 22:21:03 Xh5 91/120


ピッ…ウィン…

「……」

『アイドルマスター、ステラステージ!』

「……ほんとに、ここから」

『ちょ、ちょっと! なんでアンタ上半身裸なのよ!』

「えっ」

92 : 名無しさ... - 20/07/06 22:21:36 Xh5 92/120


『って。春香はどこなの?』

「うわ!? い、伊織!」

『なに驚いてるのよ。っていうか服着なさいっ』

「は、はいっ」

『春香は!?』

「お風呂……」

93 : 名無しさ... - 20/07/06 22:22:10 Xh5 93/120


『ま……まさか、ふたりで入ってたんじゃないでしょうね!?』

「背中だけ流してもらって……」

『はーあ!? なにそれ! 信じられないっ。こんの変態!』

「よ、夜中にあんまり大きな声出さないでくれ!」

『知らないわよッ、テレビの音量下げたら!?』

「う……。そ、そっちは朝か?」

『……ええ、そうよ。いま、5月の2週目ぐらいね』

94 : 名無しさ... - 20/07/06 22:22:42 Xh5 94/120


「……どうして、話しかけてくれたんだ」

『なによ。ゲーム起動したのは、そっちでしょ?』

「あ……」

『アンタから私たちに話したいことがあるんじゃないの』

「……なんだよ。見てたのか?」

『知らない。喧嘩でもした?』

95 : 名無しさ... - 20/07/06 22:23:16 Xh5 95/120


「ううん。……春香を、悲しませちゃって」

『……へえ』

「アイマスが終わるかもってなるのが嫌で。アイドルじゃなくてもいいから、春香たちが生き続けるところを見たいって言ったんだけど」

『……』

「私はアイドルがいいって、泣かせちゃったんだ」

『……アンタ、本気で言ったの?』

96 : 名無しさ... - 20/07/06 22:23:45 Xh5 96/120


「えっ?」

『アイドルじゃなくてもいいって』

「……うん」

『バーカ。ほんっとヘボプロデューサーね』

「……言うなよ」

『いい? 私たちはトップアイドルになるために生まれてきたの! アイドルじゃなくなったら、それは私たちじゃないでしょう。わかってる?』

97 : 名無しさ... - 20/07/06 22:24:17 Xh5 97/120


「そうだけど……それでも未来を見たいと思うのは、おかしいかな」

『おかしくない。普通よ。だから』

「だから……?」

『それを、私たちに言わないで』

「……」

『私たち、トップアイドルを目指すしかないの』

「……ごめん」

98 : 名無しさ... - 20/07/06 22:24:57 Xh5 98/120


『だから私たちが走り続けてる限り、アンタが横にいてくれなきゃ困るのよ』

「俺が……」

『だいたい、まだ”終わる”なんて一言も言ってないわ。これからよ、これから』

「……そう、だよな。俺が勝手に諦めて、悔しがって」

『わかった?』

「……うん。ありがとう、伊織」

99 : 名無しさ... - 20/07/06 22:25:31 Xh5 99/120


『にひひっ、分かればいいのよ。それじゃ、春香によろしくね』

「えっ、ちょ……」

春香「……あがりました。遅くなってすみません」

「は、春香。うん」

春香「お風呂、まだあったかいです。よかったら」

「ありがとう……」

100 : 名無しさ... - 20/07/06 22:26:03 Xh5 100/120


春香「……」

「春香……あのさ」

春香「はい?」

「風呂場のドアの近くに、いてくれないか」

春香「ドアの近く、ですか?」

「うん。少し、話がしたいんだ」

春香「話……わかりました」

101 : 名無しさ... - 20/07/06 22:26:39 Xh5 101/120


――――

「聞こえる?」

春香「聞こえます。エコーかかってます」

「そっか。良かった」

春香「……それで、お話って」

「ああ、そうだ。春香に聞きたいことがあるんだ」

102 : 名無しさ... - 20/07/06 22:27:16 Xh5 102/120


春香「聞きたいこと……」

「俺との出会いのこと、教えてくれないか」

春香「で、出会いですか?」

「そう。初めて会った日のこと。覚えてるかな」

春香「……忘れたことなんて、一度もありません」

103 : 名無しさ... - 20/07/06 22:28:00 Xh5 103/120


春香「……プロデューサーさんの思い出とは、違うかもしれないですけど。初めて会ったのは、事務所です。あのらせん階段を登って」

「だるい屋が下にある事務所か」

春香「はい! それです。懐かしいですね。……それで、事務所に入って、いろいろ掃除とかして。歩いてたら、入口のところに立ってる人がいて」

「うん」

春香「そのあと、声をかけてくれたのがプロデューサーさんです」

104 : 名無しさ... - 20/07/06 22:28:33 Xh5 104/120


「アケマスのときだ。……一緒だな」

春香「本当ですか?」

「忘れもしない。12月の、東京に雪が積もった日……電車が止まっちゃって」

春香「ええっ」

「動くまでの暇つぶしに、人がいなかったからアケマスをやったんだ。そしたら、春香が目の前に現れて……」

105 : 名無しさ... - 20/07/06 22:29:06 Xh5 105/120


「一目ぼれ、だったのかも。この子かわいいって」

春香「えへへ……」

「それからいろんな場所で、俺たちは出会ってないか?」

春香「はい。765プロに響ちゃんたちが来たときも……それから、一緒に日本中を回ったりもしましたよね」

「アイモバ、もう少しで関東制覇だったんだけどな」

春香「私たちの記憶、けっこう繋がってるんですよ」

106 : 名無しさ... - 20/07/06 22:29:38 Xh5 106/120


「……驚いた。毎回パラレルワールドなんだと思ったよ」

春香「それは、この世界での話です。私たちはプロデューサーさんに愛してもらった分だけ、記憶があります」

「……愛した分、だけ」

春香「だから愛されたアイドルは、どんどんあなたをすきになっていくんです」

「……」

107 : 名無しさ... - 20/07/06 22:30:20 Xh5 107/120


春香「すきです。プロデューサーさん」

「っ……」

春香「ゲームの中じゃ、言えないですけど」

「……春香」

春香「いつも、私たちのことを一番に考えてくれて。一緒に悩んで、行動して。あなたみたいなプロデューサーさんは、他にいません」

108 : 名無しさ... - 20/07/06 22:30:52 Xh5 108/120


春香「だから、苦しんでほしくない」

「……?」

春香「私たちがプロデューサーさんの足枷になるのなら、身を引くべきだと思うんです」

「それは違う」

春香「……」

「何度でも言える。『アイマス』とか、春香たちのことを考えて辛くなったり、泣いたことはたくさんある。でも、足枷になったことなんてない」

109 : 名無しさ... - 20/07/06 22:31:25 Xh5 109/120


春香「……」

「好きだよ、春香」

春香「……ドア越しで言うの、ずるいです」

「そっちが先にそうしたのに」

春香「だって……顔を見て言ったら、私、きっと泣いちゃいますから」

「……俺も、そうかもしれない」

110 : 名無しさ... - 20/07/06 22:31:58 Xh5 110/120


春香「じゃあ」

「ん」

春香「いまのうちに、顔を合わせたら言えないようなこと、たくさん言っちゃいましょうよ」

「……俺は顔を合わせて言いたいことのほうが多いけど」

春香「私はたくさんあります。昔、胸を触られたときの……」

「わ! 忘れてくれ!」

111 : 名無しさ... - 20/07/06 22:32:46 Xh5 111/120


――――

春香「お布団、敷いてみました」

「ありがとう。……なあ、春香」

春香「はい」

「俺、やっと決心がついてさ」

春香「……」

「どうしても、春香に。春香たちに言いたいことができたんだ」

112 : 名無しさ... - 20/07/06 22:33:19 Xh5 112/120


「俺は、たとえこの先、終わってしまうとしても。春香のプロデュースを辞めることだけは絶対にしない」

春香「……はい!」

「さっき、伊織と話したんだ」

春香「伊織と?」

「ステラステージを点けたら、伊織がいて。すごく簡単なことに気付かされちゃったよ」

春香「……簡単なこと」

113 : 名無しさ... - 20/07/06 22:33:53 Xh5 113/120


「俺は、まだ来ない終わりが怖かった。終わりを見たくなかった」

春香「……」

「でも、終わるなんて誰も言ってない。春香たちの未来は、続いていくんだ」

春香「私たちの、未来……」

「俺は、その未来を一緒に見たい」

春香「……プロデューサーさん」

114 : 名無しさ... - 20/07/06 22:34:26 Xh5 114/120


「これからも、ずっと俺にプロデュースをさせてくれ」

春香「……ずっと、ずっと待っていたんです」

「春香……」

春香「あなたの、その言葉を」

「……もしかして、もう」

115 : 名無しさ... - 20/07/06 22:34:58 Xh5 115/120


春香「私、『アイマス』の世界からここへ来られて、良かったと思います。そうじゃなきゃ、プロデューサーさんの顔、ちゃんと見られなかったから」

「また、来てくれる?」

春香「ごめんなさい」

「……だよな」

春香「これは、最後の手段なんです。私たちは、やっぱり向こうの人間ですから」

116 : 名無しさ... - 20/07/06 22:35:30 Xh5 116/120


春香「勝手なこと言ってしまって、すみません。でも、私……プロデューサーさんと1日いっしょで、すごく、すごく楽しかったです!」

「……うん」

春香「プロデューサーさんは、どうでしたか?」

「……」

春香「私と、いっしょに過ごしたこと……」

「そんなの……決まってる」

117 : 名無しさ... - 20/07/06 22:36:02 Xh5 117/120


「すごく……すごく、楽しかったよ」

春香「……ありがとう、ございます」

「春香……」

春香「向こうに戻っても、テレビをつけたら、私はいつでもいます。いつか、またここに」

「ありがとう」

春香「えへへ。これからもプロデュース、よろしくお願いしますね?」

118 : 名無しさ... - 20/07/06 22:36:50 Xh5 118/120


春香「もう少し、かかるかもしれないですけど。プロデューサーさんをガッカリさせることだけは、絶対にしません。待っていてください」

「うん。期待しておくよ」

春香「だから、笑ってください」

「……笑えてない?」

春香「ずーっと、引きつってます」

「そっか。……よし」

119 : 名無しさ... - 20/07/06 22:37:24 Xh5 119/120


P「春香。期待して待ってる!」

春香「……! はいっ!」

P「春香はさ」

春香「……?」

P「運命の出会いって、信じてる?」

春香「……はい! 私たちは、いつだって!」

120 : 名無しさ... - 20/07/06 22:38:04 Xh5 120/120


New Me, Continued
https://www.youtube.com/watch?v=BRqRA4aFxcY

終わりです。

春香、CD発売おめでとう。
これからの765プロもずっと楽しみにしてます。

ありがとうございました。

記事をツイートする 記事をはてブする