無職A「いやー、無職オフ会ってのもやってみると案外楽しいな!」
無職B「ダメ同士で集まるとホッとするよね」
無職C「……」
無職A「どうした?」
無職C「俺たち、このままでいいのかな」
無職A「このままでいいって、そりゃよくはないだろ」
無職B「だけど今更働く気なんて……」
無職C「いや、なにも働けっていってるわけじゃないんだ」
無職AB「?」
元スレ
無職「人生詰んだし社会に復讐してやろうぜwww」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1592737205/
無職A「どういうことだよ?」
無職C「なんで俺たちは無職なんだと思う?」
無職A「なんでっていわれてもな……」
無職B「いい仕事がないから……」
無職C「そう」
無職C「世の中はクソみたいなブラック企業ばかりで、しかも一度ドロップアウトしたらまず人生詰む仕組みになってる」
無職C「つまり、社会が悪い」
無職AB「!!!」
無職C「もしももっといい社会だったら、きっと俺たちはホワイト企業に入って」
無職C「スーツを着こなして、朝9時から夜5時まで働いて、年収ン百万ン千万稼いで」
無職C「今頃はモデルみたいな彼女と結婚して、幸せな家庭を築いていてもおかしくなかった」
無職A「たしかにな……」
無職B「その通りだ……」
無職C「だが、現実の社会じゃ仮に今から俺たちが一念発起したところで」
無職C「ろくな仕事にありつけず、過労死か孤独死すんのが関の山だ……」
無職AB「……」
無職C「どうだ……」
無職C「どうせ人生詰んでるんだし、俺たちで無差別殺人でもかましてみないか?」
無職C「俺たちをこんなにした社会に、復讐してやるんだ」
無職C「俺たちみたいな人種を踏み台にして勝ち組人生してる奴らにひと泡吹かせてやるんだ!」
無職A「……そりゃいいな」
無職B「僕も……乗るよ」
無職C「決まりだな」
無職A「じゃあターゲットはどうする?」
無職B「数(スコア)稼ぐなら、やっぱり子供じゃない? 文字通り赤子の手をひねるように殺せるよ」
無職A「親もショックだろうしな! よし、じゃあ幼稚園や保育園を……」
無職C「いや、待て待て待て」
無職C「子供なんか狙っても、親からすれば『また作ればいいか』で終わっちまう」
無職C「ショックなんか与えられねえよ」
無職A「親なんてそんなもんか……」
無職B「じゃあ――」
無職B「女子中学生や女子高生あたりを狙うのはどうだろう?」
無職A「そりゃいいな! 女なら腕力で勝てるし!」
無職C「だが、社会への復讐っていう趣旨とはズレるな」
無職C「せっかく殺したのに、ただのヘンタイ目的の犯行だと思われちゃかなわない」
無職B「う……たしかに。ネットでもヘンタイ野郎だって叩かれそうだ……」
無職A「だとしたら、お前なら誰を狙えばいいと思うんだ?」
無職C「オフィス街の連中だ」
無職C「新卒で一流企業に入社したピカピカの新入社員……まさに勝ち組にならんとする若鳥」
無職C「こいつらはいわば、親が20数年かけて手塩にかけて作り上げた作品だ」
無職C「これを俺たちの手で壊す!」
無職C「一瞬でそいつ本人とそいつの両親の合計、60年をパーにできるんだ!」
無職C「どうだ……ゾクゾクしてこないか?」
無職A「ああ……してきた!」
無職B「“せっかくいい企業に入れたのに……”って悔やむ姿が目に浮かぶよ!」
無職C「ターゲットは決まりだな」
無職A「次はいつやるかだけど……」
無職C「夜がいい」
無職B「どうして?」
無職C「暗いから目撃される危険性が薄れるし、仕事で疲れてるから朝や昼間より殺りやすい」
無職C「場合によっては、酒も入ってるだろうからさらに殺りやすくなる」
無職C「俺は裏サイトみたいなとこで、殺し屋の体験談を見たことがあるんだが」
無職C「ああいう連中も、殺しは夜やる場合がほとんどだそうだ」
無職A「へぇ~、殺し屋なんて実在するんだ!」
無職B「勉強してるんだなぁ」
無職B「武器はどうする?」
無職A「拳銃はどうだ?」
無職C「拳銃は入手が難しいし、足がつきやすい。発砲音も響くし、素人にゃ扱えない。やめた方がいい」
無職B「ってことは刃物?」
無職C「ああ、刃渡りの大きい刃物でグサッが一番だ。一撃入れたらメッタ刺しにすればいい」
無職A「それも裏サイト情報ってやつか?」
無職C「その通りだ」
無職A「刃物はどこで手に入れるんだ? ホームセンターか?」
無職B「うーん、もっとちゃんとした刃物屋の方がいいんじゃない?」
無職C「いやいや、店でそんなもん何本も買ったら目立ちすぎる」
無職C「何でも屋を知ってるから、俺がそいつから調達するよ。とびっきりの刃物をな」
無職A「頼むぜ!」
無職B「何でも屋なんてのもいるんだ! よく知ってるなぁ」
無職C「だてに暇はしてないさ」
無職A「計画はこんなところでいいか。今日のところは解散しよう」
無職B「うん」
無職C「ああ」
無職ABC「じゃあ……決行の日は××駅に集合だ!」
―――――
――
無職A「よう」
無職B「やぁ」
無職C「みんな来たな。ほら、約束のナイフだ」
無職A「うお、すげえ!」
無職B「大きいねえ。ズシッとくるよ」
無職C「軍用ナイフだ。思いっきり刺せば間違いなく相手を殺せる」
無職A「へへへ、あとはターゲットを待つだけか」
無職A「……」
無職B「……」
無職C「……」
無職C「よさそうなのが来た! 狙いはあの三人だ!」
スーツ「……」
メガネ「……」
OL「……」
無職A「あの三人、羨ましいねえ……一流企業に就職できてよ」
無職B「まぁ、今から僕らに殺されるんだけどね」
無職C「俺はあのちょっと年食ったスーツを狙う。お前たちは残り二人を頼む」
無職A「んじゃ、俺がメガネを殺るぜ」
無職B「僕は女!」
無職C「二人とも、いい感じに殺気が乗ってきたな」
無職C「行くぞ……! 勝ち組に……社会に復讐してやるんだ!」
無職C「この殺しは、その聖戦の狼煙になる!」
無職A「うおおおおおおおお!」ダッ
無職B「覚悟ッ!」ダッ
無職C「死ねえええええっ!」ダッ
メガネ「!」
OL「きゃっ!」
スーツ「え……」
無職A(スキだらけだ! どこだって刺せる!)
メガネ「……」サッ
無職A「え!?」
ガシッ!
無職A(首を……絞められ……)
ボキィッ!
ドサッ…
メガネ「ふぅ」
無職B「だあああああっ!」
OL「はっ!」
バキッ!
無職B「ぎゃっ!(股間を……)」
OL「このナイフ、そっくりお返しするわ」グイッ
グサッ!
無職B「ぐぶっ……!」
無職C「でやあああああっ! 殺してやるぅぅぅぅぅ!」
スーツ「……」
無職C「……っともう終わっちゃったのか。演技はこれくらいでいいな」
スーツ「ふっ、いい演技だったぞ。いかにも“人生詰んでヤケクソになった奴”っぽさが出てた」
無職C「それはどうも。ま、“人生詰んだ”なんていっちょ前にほざく奴の大半が」
無職C「まだ抜け出す手はあるのに、勝手に詰んでると思い込んでる手合いなんだがな」
無職C「自分を追い詰めたのは社会じゃなく、自分自身だって最後まで気づかねえ」
無職C「それよりどうだ、殺し屋。弟子たちの初殺しはどうだった?」
スーツ「まあまあだな。いい度胸試しになった」
スーツ「ちょうどいい練習相手を調達してくれてありがとう、何でも屋」
無職C「なぁに、お安いご用さ」
無職C「今死んだあの二人は、どうせ生きててもなんの役にも立たない二人だった」
無職C「最後に殺し屋育成の役に立って幸せだろうさ」
スーツ「練習台になる殺しても問題ない奴を探すのは意外と骨が折れるんだ。感謝してる」
無職C「さーて、飲み行くか。仕事終わりのビールは最高だからな。付き合えよ」
スーツ「ああ」
メガネ「はい!」
OL「はい!」
無職C「やっぱり人間ってのは……働いてナンボだな!」
完