奴隷「よーし、今日も棒を押して器具を回す作業を始めるか!」グッ
ゴリゴリ…
奴隷「はぁ、はぁ、はぁ……」
ゴリゴリ…
女主人「ペースが落ちているぞ! もっと回せぇ!」ビシッ!
奴隷「ぐっ!」
女主人「回せ回せぇ!!!」バシッ!
奴隷「ぐっ……うおおおおおっ!」
ゴリゴリゴリ…
元スレ
奴隷「今日も棒を押して器具を回す作業を始めるか!」女主人「回せ回せぇ!!!」ビシッ バシッ
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1593432003/
奴隷「はぁ、はぁ、はぁ……」
女主人「ほら、特製のドリンクだ」ポイッ
奴隷「あざっす」パシッ
奴隷「……」グビグビ
奴隷「うめえ~!」
女主人「いよいよ大会が間近に迫ってきたな」
奴隷「ええ」
奴隷「棒を押して器具を回す作業の大会で優勝することは、奴隷とその主人にとっては最大の誉れですから」
女主人「うむ、なんとしても優勝しよう」
奴隷「じゃ、さっそく特訓を再開しましょう」
女主人「大丈夫か?」
奴隷「ええ……回したくてウズウズしてるんです!」
女主人「分かった……ならば手加減はしないぞ! 存分に鞭を振るってくれる!」
…………
……
大会当日――
ワイワイガヤガヤ…
奴隷「いよいよ大会ですね」
女主人「コンディションはどうだ?」
奴隷「バッチリです。あなたこそどうです?」
女主人「今日ほどいい鞭を打てそうな日はないといえよう」ヒュルンッ
奴隷「ゾクゾクしてきましたよ」
女主人「まったく……すっかり私の鞭に味をしめおって」
係官「これより予選会を行います!」
係官「本戦トーナメントに出場できるのは、あれを回せたペアのみとなります!」
ドン!
奴隷「あの器具を回すのは、かなりパワーがいりそうですね」
女主人「ああ、なかなか骨が折れそうだ」
「くっ、回せねえ!」ググッ…
「動かねえ……!」グッ…
「ち、ちくしょう……!」ググッ…
続々とペアが脱落する中――
係官「続いてのペア、どうぞ!」
奴隷「行きましょう」
女主人「ああ、予選などでつまずいておれんからな」
女主人「回せ回せぇ!」ビシッ! バシッ!
奴隷「むんっ!」ググッ…
ゴリゴリゴリ…
オオー… スゲー… アッサリト…
係官「合格! 本戦出場決定!」
女主人「よくやった。褒美に鞭をやろう」ビシッ!
奴隷「ありがとうございますぅん!」
奴隷「だけど他にも手強そうな奴はいます……油断はできませんね」
グラサン「リズムで回すYo!」ゴリゴリ…
マッチョ「楽勝だぜぇ!」ゴリゴリ…
ベテラン「奴隷歴40年の私にはなんてことはない」ゴリゴリ…
開会式――
国王「奴隷と主人たちよ!」
国王「古来より、棒を押すと回る器具を回転させる作業は、奴隷にとっては基本かつ最高峰の労働とされてきた!」
国王「この大会は、おぬしたちにとってはまさに晴れ舞台!」
国王「悔いの残らぬよう、全力を尽くしてもらいたい」
ワァァァァァ…
パチパチパチパチパチ…
一回戦――
奴隷(対戦相手は、予選でも妙に目立ってたファンキーな奴か……)
グラサン「Oh、よろしくNa! 正々堂々戦おうZe!」
奴隷「ああ、もちろんだ!」
審判「では両者、器具の棒を持って!」
審判「時間内により多く回せたペアを勝利とする!」
審判「始めっ!!!」
女主人「さあ、回せっ!」ビシッ!
奴隷「はいっ!」グッ
ゴリゴリゴリ…
サンバ女「さあ、踊るわよ!」
グラサン「リズムなら負けないZe!」
ゴリゴリゴリ…
実況『両ペアとも、互角の滑り出しです!』
オオッ…
サンバ女「リズムよ! リズムに乗るのよ!」
グラサン「Yo! Yo! Yo!」
ゴリゴリゴリゴリゴリ…
実況『おーっと、ここにきてグラサン・サンバ女ペアがリズムに乗ってきた!』
実況『ものすごい速さで回しております!』
女主人「なるほどな……リズム感に長けたペアか」
奴隷「だけど、リズムじゃ俺たちも負けてませんよね?」
女主人「その通りだ!」
女主人「ほいっ!」ビシッ!
奴隷「さっ!」ゴリゴリ…
女主人「ほいっ!」ビシッ!
奴隷「さっ!」ゴリゴリ…
実況『こ、これは……!?』
観客A「あれは……遠い異国の伝統技術である“モチツキ”のリズムと似ている」
観客B「モチツキ……!?」
観客A「容器に入ったもち米を、一人がハンマーで叩き、もう一人が手でこねるという作業を繰り返すのだが」
観客A「達人(マスター)クラスになると、目にも止まらぬ速度で行えるそうだ」
観客B「手を叩いたらどうすんだ……。正気の沙汰じゃねえ……!」
女主人「ほいっ!」ビシッ!
奴隷「さっ!」ゴリゴリ…
審判「勝者、奴隷・女主人ペア!!!」
ワアァァァァァ……!
グラサン「まさか俺たちがリズムで負けちまうとはYo! 大したもんだZe!」
奴隷「いや……あんたたちのリズムもすごかったよ」
パチパチパチパチパチ…
二回戦――
奴隷(二回戦は……あの怪力マッチョ!)
マッチョ「ガハハ、しょせんこの大会は腕力を競う大会!」
マッチョ「つまり、俺が絶対優勝するに決まってんだ!」
奴隷「どうかな……やってみなければ分からないさ」
審判「始めっ!!!」
奴隷「むんっ!」
マッチョ「うおおおっ!」
ゴリゴリゴリ… ゴリゴリゴリ…
実況『両ペアともよく回しておりますが、やはりマッチョ選手が優勢です!』
女主人(こういう時は……私の出番だな)
女主人「おい、マッチョの主人」
アマゾネス「なんだ」
女主人「どうやらお前では、そのマッチョの怪力を十分発揮できないようだな?」
女主人「正直、失望したぞ」
アマゾネス「なんだとォ!?」
アマゾネス「おい、マッチョ! もっとパワーを上げろ! 一気に引き離してやる!」
マッチョ「おう!」グンッ
ゴリゴリゴリゴリゴリ…
実況『マッチョペアの回す速さがどんどん上がっていくゥ!』
観客B「はええ! こりゃもうマッチョの圧勝だぜ!」
観客A「いや、これは――」
ベキィッ!
マッチョ「あっ!」
アマゾネス「あっ!」
実況『なんとぉ~! マッチョ選手、器具をぶっ壊してしまった! これは一発で失格です!』
審判「勝負ありッ!」
女主人「フッ……この作業は力だけではダメだ。器具を壊さぬようにする技と力加減もキモなのだ」
奴隷「挑発して力加減を誤らせるとは、さすがです!」
こうして二人三脚で勝ち進み……
決勝戦――
実況『いよいよ決勝戦! 棒を押して器具を回す作業大会の栄冠はどちらに輝くのか!?』
ベテラン「いい試合をしよう」
奴隷「あなたの噂はかねがね……よろしくお願いします」
審判「では両者、器具の棒を持って!」
奴隷「ここまできたら、小細工は無用……全力でひっぱたいて下さい!」
女主人「分かっている」
審判「始めっ!!!」
女主人「回せ回せぇ!」ビシッ! ビシッ!
奴隷「うおおおおおおおおおお!!!」
ゴリゴリゴリ…
婦人「こっちもいくわよ」ビシッ! バシッ!
ベテラン「ふんぬううううううう!!!」
ゴリゴリゴリ…
実況『両ペア一歩も譲らない! とんでもない勝負になってきた!』
女主人「いけっ! 回せっ!」ビシッ! バシッ!
奴隷「回して……みせますともぉっ!」
ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリ…
ワアァァァァァ……!
審判「勝者、奴隷・女主人ペア!!!」
奴隷「勝った……!」
女主人「よくやった!」
奴隷「あなたの鞭打ちのおかげです!」
ベテラン「君の若さが……私の経験に勝ったようだ」
奴隷「いえ……もう一度やったらどうなるか……」
司会「陛下より、優勝カップが贈呈されます!」
国王「うむ」
奴隷「……」ザッ
女主人「……」ザッ
国王「君たち」
二人「は、はいっ!」
国王「君たちの戦いを見ていたら……我が五体に流れる血がうずいてしまってなァ」
奴隷「え……?」
国王「ぜひ……余と勝負してもらいたいッ!!!」
かくしてスペシャルマッチが始まった。
奴隷「どうします……?」
女主人「相手は陛下だ。手を抜いて、勝たせてやろう」
奴隷「それもそうです――」
国王「……」バサァッ
国王「……」ムキッ
奴隷「な、なんだあの筋肉はッ!?」
奴隷(太さや大きさこそマッチョに劣るものの、質は……マッチョ以上ッ!)
国王「この器具……昔はよく回したものよ」
観客A「そういえば聞いたことがある!」
観客A「陛下は幼い頃、敵国に捕われ、奴隷以上の地獄のような強制労働を強いられてきたと……!」
観客A「そして、鍛え上げられた結果、陛下は自力で敵国を脱出し」
観客A「王位を継承し、敵国を打ち破った……!」
観客B「えええ……!?」
観客A「ちなみに陛下が脱出した時、パートナーだった女性が――」
国王「ゆくぞ、妃よ」
王妃「ええ」
国王「奴隷よ」
国王「おぬしは消耗している。これは決してフェアな戦いではない。モチベーションも低かろう。だから――」
国王「余に勝てたら、どんな願いでも叶えてやるぞ」
国王「死ねといわれたら死んでやる。王になりたいといえば王にしてやる」
奴隷「ありがとうございます」
奴隷「ですが、そんな条件がなくとも、俺は本気でやりますよ」
奴隷「あなたのその筋肉を見てしまったらね……」
国王「これはこれは、いらぬことを言ってしまったかな」
審判「始めっ!!!」
王妃「私は元は敵国の監督官だった……だけど」
王妃「陛下の回しっぷりに惚れて、脱出を手助けしたのよッ!」ビシッ! バシッ!
国王「ゆくぞぉぉぉぉぉ!!!」
ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリ…
実況『は、速いッ! とんでもない速さだッ! しかも器具を壊す様子もありませんッ!』
女主人「決勝以上に小細工は無しだ! ただ全力で叩くのみ!」ビシッ! バシッ!
奴隷「ええ……全力で回すのみ!」
ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリ…
実況『しかし、こちらも負けてはいない! 一体どこにこんなスタミナが残ってるのか!?』
グラサン「がんばRe!」
マッチョ「負けんじゃねえぞ!」
ベテラン「陛下は私以上の強敵……だが、君たちなら……!」
女主人「回せぇ!」ビシッ!
奴隷「はうっ!」
奴隷(俺は奴隷……だから逆境になればなるほど強くなる!)
奴隷(そして……この人の鞭で打たれれば打たれるほど強くなる!)
奴隷「もっと叩いてぇ! 俺は永久機関ン!」
ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリ…
国王(こやつ……! なんという漢(おとこ)よ……!)
……
……
国王「……よくぞ余を打ち破った」
王妃「お二人とも、素晴らしい回しっぷりでしたわ」
奴隷「ありがとうございます」
女主人「ありがとうございます」
国王「さあ、望みを言うがいい。どんな願いでも叶えてやろう」
奴隷「では、私の願いは……」
奴隷「奴隷制を……なくして頂けないでしょうか?」
国王「!」
奴隷「もちろん、急激に改革してしまっては、混乱も生じるでしょう」
奴隷「なので、少しずつ……陛下のお力で……」
パチパチパチパチパチ…
「異議なし!」 「すごい戦いを見せてくれたもんな!」 「奴隷が虐げられる時代はもう終わりだ!」
奴隷(市民からも拍手が……!)
女主人「お前の戦いぶりが認めてもらえたんだ」
国王「よかろう、約束しよう」
奴隷「ありがとうございます!」
ワアァァァァァ……!
グラサン「やったYo!」
マッチョ「悔しいが、完敗だぜ」
ベテラン「たった一日で……時代を変えてみせたねえ」
……
王妃「ねえ、あなた」
国王「ん?」
王妃「たとえあの勝負に勝っていても、なんやかんや理由をつけて奴隷制をやめるつもりだったんじゃないの?」
王妃「“余とここまで戦えるとは~”だとかいって」
国王「さぁ? なんのことやら……」
王妃「ふふっ、とぼけちゃって」
国王「奴隷の辛さ苦しさは余もよく知っているからな」
国王「市民の反発が出ないタイミングで、奴隷制撤廃を宣言したかったというのは事実だ」
王妃「あのペアのおかげで、まさに最高のタイミングが生まれたというわけね」
その後、奴隷制はなくなり、つまりこの二人も――
男「今日から、俺たちは対等の関係になったわけですね!」
女「どれほどこうなる時を待ち望んだことか……」
男「俺もです!」
女「おっと、私はもう主人ではないんだ。対等なカップルなんだ。敬語はよせ」
男「そ、そう……だな」
女「まだ時間がかかりそうだな」
女「しかし、対等の関係になったとしても、これだけはやめられんな!」
男「ああ、もちろんだ。俺の皮膚が叩かれたいとうずいている」
女「さあ、いくぞ」
男「来い」
女「回せ回せぇ!!!」ビシッ! バシッ!
男「うおおおおおっ!!!」
ゴリゴリゴリ…
おわり
キン肉マンの超人墓場のやつは一応意味があったみたいだが