1 : 『杏子とさやかの物語』 ◆k6VgDYkyGI - 2011/07/17(日) 19:59:29.57 BzZAtF+V0 1/38

杏子「よう」

まどか「あ、杏子ちゃん……? 珍しいね、こんなところで会うなんて」

杏子「今日は一人で帰るのかい?」

まどか「うん……ほむらちゃんは、学校で用事があるからって。待ってるって言ったんだけど……、長くなるから先に帰ってて言われちゃった」

杏子「あいかわらず、アツいじゃん」ニヤリ

まどか「ティヒヒwwwwww」

杏子「耳まで赤くしちゃって……。かーっ、羨ましいねぇ」

まどか「き、杏子ちゃんだって、さやかちゃんがいるじゃない」

杏子「……」

まどか「?」

杏子「……あのさ」

まどか「……なに……?」

杏子「ちょっと話があるんだ。顔かしてくれる?」



元スレ
杏子「この前、さやかとデート中にさ・・・」
http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1310900369/

2 : 『杏子とさやかの物語』 ◆k6VgDYkyGI - 2011/07/17(日) 20:05:00.82 BzZAtF+V0 2/38

~いつものカフェ~

杏子「実はさ……、さやかの、ことなんだけど……」

まどか「さやかちゃんの?」

杏子「ああ」

まどか「えぇと、もう付き合ってしばらく経つよね?」

杏子「一ヶ月くらい、だな」

まどか「……」

杏子「……」

まどか「まさか……杏子ちゃん、うまく……いってないの……?」

杏子「……うまくは、いってないことは、ないんだけどな」

まどか「えぇと……ど、どうしたの……?」

杏子「そ、その……」

まどか「あ、もしかして……?」


5 : 『杏子とさやかの物語』 ◆k6VgDYkyGI - 2011/07/17(日) 20:09:59.65 BzZAtF+V0 3/38

杏子「ん?」

まどか「まだ、とか?」

杏子「あ? なにがだよ?」

まどか「まだなにもしてないの?」

杏子「なにってなんだよ」

まどか「キ、キス……とか」

杏子「はあっ!?」ガタッ

まどか「きょ、杏子ちゃん、そんなに驚かなくても」

杏子「いや、アンタ、そんなキャラだったか!?」

まどか「ほむらちゃんに色々と教えてもらったから……」

杏子「頬を染めながら言うんじゃねーよ。こっちが恥ずかしくなってくるっつーの」

まどか「ウェヒヒヒヒwww」


7 : 『杏子とさやかの物語』 ◆k6VgDYkyGI - 2011/07/17(日) 20:15:11.00 BzZAtF+V0 4/38

杏子「と、ともかく! アンタに相談があるんだよ!」

まどか「わたしに?」

杏子「さっきも言ったけど、さやかのことだ」

杏子「あいつ……、まだ上条のこと、忘れられないみたいなんだよ」

まどか「えっ!? でも……!」

杏子「ああ、さやかはもう上条に……」

まどか「……今は仁美ちゃんが恋人、なんだよね……」

杏子「そう、なんだけどさ」

杏子「この前、デート中に偶然、上条たちを見かけたんだよ。そしたら、上条を見るさやかの視線が……」

まどか「視線……?」

杏子「さびしかったんだよ」


11 : 『杏子とさやかの物語』 ◆k6VgDYkyGI - 2011/07/17(日) 20:20:16.82 BzZAtF+V0 5/38

杏子「さやかは、そんな素振りを見せないようにしてたけど、アタシには分かった」

まどか「さやかちゃんが……」

杏子「まだ、さやかはあいつのこと……好きなんじゃないかな」

まどか「そ、そんな!」

杏子「アンタは知ってるだろ? さやかは、ずっと上条のことを思いつづけてたんだ。毎日のように見舞いに行って、最後には、治療のために自分の魂をも売った」

まどか「うん……」

杏子「アタシは、上条にフラれて、落ちこんでるさやかを放っておけなかった。そんなもの偽善だって、人は言うかもしれない。でもアタシは……」

まどか「そんなことないよ! さやかちゃん、杏子ちゃんに救われたって、たしかにそう言ってたよ!」

杏子「はは……不思議だね……こんなことまで話すつもり、なかったんだけど。こういうの、堰を切るってのかな」


15 : 『杏子とさやかの物語』 ◆k6VgDYkyGI - 2011/07/17(日) 20:26:20.46 BzZAtF+V0 6/38

杏子「たしかに、最初はちょっと慰めてやろうってカンジだった。でもさ、会えば会うほど……惹かれていって、さ。不器用だけど、だれよりも人の幸せを願えるヤツなんだ、アイツは」

まどか「すごく、よく分かるよ。痛いくらい……」

杏子「ふと気付くとさ……なぁ、笑うなよ? さやかが人の幸せを願う分、アタシがさやかの幸せになってやりたい、なんて、そんな風に思ってたんだよ」

まどか「杏子ちゃん……」

杏子「だからさ、アタシ、さやかに言ったんだ。『アタシが――』……ハッ!」

まどか「『アタシが』……?」

杏子「い、いや、なんでもない!」

まどか「え? な、なんで?」

杏子「だ、だってよ……。こ、告ったときのセリフとか恥ずかしいじゃんか……」

まどか「杏子ちゃん、ウェヒッw」

杏子「おい、笑うなよ、ったく」


19 : 『杏子とさやかの物語』 ◆k6VgDYkyGI - 2011/07/17(日) 20:31:03.64 BzZAtF+V0 7/38

まどか「ごめんごめん。それで、さやかちゃんはなんて?」

杏子「何日か考えさせてって言われて……。でも次の日には、OKをもらって、付き合うことになったんだ」

まどか「そういういきさつだったんだ……」

杏子「さやかはアンタにはなんて言ってたんだ?」

まどか「え、えーと、実は……」モジモジ

杏子「?」

まどか「たぶんその日だと思うんだけど、ほむらちゃんとずーっと電話してたんだよね……。メールも来てて『相談があるんだけど電話いい?』って」

杏子「なんで電話してやらなかったんだよ! 友だちだろ!?」

まどか「ご、ゴメン……。深夜までずっと話してて、そのまま寝ちゃって……。メールに気付いたのも朝で……」

杏子(どんだけ相思相愛なんだよこいつらは……)


21 : 『杏子とさやかの物語』 ◆k6VgDYkyGI - 2011/07/17(日) 20:36:15.56 BzZAtF+V0 8/38

まどか「でも、さやかちゃんが杏子と付き合うことになって、ちょっと驚いたけど、うれしかったな」

杏子「うれしい?」

まどか「杏子ちゃんみたいな素敵な彼女ができるんだもん。さやかちゃん、幸せになれるなぁって思ったの」

杏子「バ、バカ、んなことねーよ!」

まどか「ウェヒw」

杏子「まぁ、それはいいとして、どう思う?」

まどか「さっきの、上条君とさやかちゃんのことだよね?」

まどか「……そうだなぁ……」

杏子(相談する相手をまちがえたかなぁ)


24 : 『杏子とさやかの物語』 ◆k6VgDYkyGI - 2011/07/17(日) 20:41:15.78 BzZAtF+V0 9/38

まどか「……えぇっと……」

杏子「……」

まどか「……うぅ~ん……」

杏子「あ"~! もういい! 本人に直接聞いてくる!」

まどか「ちょ、ちょっと待って杏子ちゃん!」

杏子「あんだよ」

まどか「あのね……、私、思うんだけど……」

まどか「今は、そっとしておいてあげた方がいいと思うの」

杏子「……なんでだよ」

まどか「さやかちゃん、その、立ち直れてないんじゃ、ないかな……」

杏子「……え」

まどか「え、あ、ごめん……」

杏子「どういうことだ、おい……」


26 : 『杏子とさやかの物語』 ◆k6VgDYkyGI - 2011/07/17(日) 20:46:16.25 BzZAtF+V0 10/38

まどか「杏子ちゃんも言ってたとおり、さやかちゃんにとって上条君は、自分の魂を投げ出すほど大切な人だった」

まどか「そんな人が、急に自分の遠いところに行っちゃったんだよ? だから、さやかちゃんが上条君のことを見る瞳が寂しくても、それは――」

杏子「……」

まどか「で、でもね、杏子ちゃん! さやかちゃんは杏子ちゃんも、同じくらい大事に思ってると思う!」

杏子「な、なんで、そんなこと分かるんだよ」

まどか「さやかちゃん、言ってたもん。上条君が仁美ちゃんと付き合ったとき、杏子ちゃんが支えてくれなかったら、自分はどうなってたか分からないって」

杏子「でも! それは……それは、『好き』とはちがうじゃねーか! あいつはまだ上条のことが好きなんだよ!」

杏子「……アタシは、アタシは、こんなんじゃ……」

まどか「杏子ちゃん……」

杏子「みじめなだけじゃねーか……」


29 : 『杏子とさやかの物語』 ◆k6VgDYkyGI - 2011/07/17(日) 20:51:17.32 BzZAtF+V0 11/38

まどか「ちがうよ、そうじゃないよ。さやかちゃんは、杏子ちゃんこと、ちゃんと好きだよ!」

杏子「……バレバレのなぐさめなら、いらないよ」

まどか「聞いて、杏子ちゃん。さやかちゃんには時間が必要なの。さやかちゃんにとって、上条君は片思いの人だけじゃなかったんだよ。子どものころからいっしょで、色んな楽しい思い出を持ってるの」

杏子「……」

まどか「家族みたいで、友だちみたいで……、いっぱい、そういうものがあって……さやかちゃんは、まだそれに縛られてるんじゃないかなって……」

まどか「ママが言ってた。『人は人との間にあるから人間になれる、でも、それは自分を縛る鎖にもなる』って。今の話を聞いて、この言葉の意味が少し分かった気がするの」

杏子「……まどか……」


31 : 『杏子とさやかの物語』 ◆k6VgDYkyGI - 2011/07/17(日) 20:56:18.28 BzZAtF+V0 12/38

まどか「それにね……、これは言わないでって言われてるんだけど、さやかちゃん、いつも杏子ちゃんのことでノロケてるんだよ。それから、いつまでたっても手を繋ぐことしかしてくれないって愚痴も言ってた」

杏子「ッ! ……マ、マジかよ……」

まどか「マジだよ! だからね、杏子ちゃん、信じてあげてほしいの。あの子には、もう杏子ちゃんしかいないから……」

杏子「……そっか」

まどか「お願い、杏子ちゃん」

杏子「ああ、分かったよ。要は、さやかはまだ心の整理がついてないってことだろ?」

まどか「だから、なにをしたらいいかとか、私には分からないんだけど……。ごめんね……」

杏子「はは、アンタがショボくれてどーすんだよ。それから先のことなら、分かる。アタシはただ、さやかを信じて待つことにするよ。自分の心に決着をつけられるのは、自分自身だけだからな」

まどか「……よかったぁ~……」


35 : 『杏子とさやかの物語』 ◆k6VgDYkyGI - 2011/07/17(日) 21:01:32.86 BzZAtF+V0 13/38

杏子「おいおい、ホッとしすぎじゃねーか?」

まどか「うん……、なんだかね、前……ずっと前にも、こうして、杏子ちゃんにさやかちゃんのことを相談されたことがあった気がするの」

杏子「はぁ? なんだそりゃ?」

まどか「そのときは……もっとずっと深刻で……、とっても悲しい相談だった気がして……」

杏子「ははっ! なんだ、予知の魔法でも使えるようになったのかい?」

まどか「そ、そんなんじゃないよ! ぼんやり、そんな気がするだけ」

杏子「……まぁ、とにかく、今日はサンキュな」

まどか「ううん。わたしにできることがあったら、いつでも言って」

杏子「あ、そうだ」ゴソゴソ

まどか「?」

杏子「食うかい?」


38 : 『杏子とさやかの物語』 ◆k6VgDYkyGI - 2011/07/17(日) 21:06:29.09 BzZAtF+V0 14/38

~同日夜 まどか自室 ほむらと電話~

まどか「――っていうことがあったの」

ほむら『そう。あの杏子が……。意外ね』

まどか「うん、それでね……わたし……」

ほむら『なに?』

まどか「嘘、ついちゃったんだ……」

ほむら『嘘?』

まどか「あのときは、杏子ちゃんとさやかちゃんが上手くいってほしくて……それで、とっさに思いついたことを……」

ほむら『美樹さやかが上条恭介の思い出に縛られていると言ったくだりね』

まどか「うん……。無責任、だよね、わたし。本当のことかも分からないことを、本当のことみたいに……」


42 : 『杏子とさやかの物語』 ◆k6VgDYkyGI - 2011/07/17(日) 21:12:05.76 BzZAtF+V0 15/38

ほむら『あなたの辛さは分かるわ』

まどか「ほむらちゃん……わたし、あんなこと言って、よかったのかな……。さやかちゃんがもし、本当に上条君をまだ好きでいたら……」

ほむら『あなたが心配することはないわ』

まどか「……どう、して……?」

ほむら『人はときに、自分自身の心ですら分からなくなる。いえ、分からないというより、そこには初めっから答えなんてないのよ。特に恋愛なんていう心の動きは、典型的なブラックボックスと言っていい』

ほむら『美樹さやかも、同じ。だから、まどかがあの子のことで何を言っても、それは嘘でも真実でもないわ』

まどか「それで、いいのかな……」

ほむら『大切なのは、真実ではないわ、まどか。本当に大切なことは、あなた自身が正しいと思うことをすることよ』

まどか「たとえ、それが嘘になるかもしれなくても……?」

ほむら『あなたは二人のためを思って、根拠のないことを言ったかもしれない。でも、少なくとも佐倉杏子は、あなたの言葉に救われたはずよ』

まどか「……そう、なのかな」


45 : 『杏子とさやかの物語』 ◆k6VgDYkyGI - 2011/07/17(日) 21:17:15.84 BzZAtF+V0 16/38

ほむら『これからなにがどう転ぶかなんてだれにも分からないわ。まして、人の心が絡んでいるなら、特に。だから、私たちにできるのは、相手のためになると信じることをアドバイスすることだけ』

まどか「……うん……」

ほむら『心配なのね、二人が』

まどか「だって! 杏子ちゃんもさやかちゃんも大切な友だちだよ! もし二人が別れるなんてことになったら、わたし……!」

ほむら『まどか……』

まどか「ご、ごめん、なんだか変な気持ちになっちゃって……」

ほむら『あなたは、あなたができる最善のことをしたわ。後は、見守ることしかできない。彼女たちの問題は、彼女たち自身にしか解決できないわ』

まどか「うん……そうだよ、ね……」


48 : 『杏子とさやかの物語』 ◆k6VgDYkyGI - 2011/07/17(日) 21:25:07.48 BzZAtF+V0 17/38

ほむら『心配しないで、まどか。美樹さやかを信じてるんでしょう?』

まどか「うん」

ほむら『それなら、後は分かるわね?』

まどか「うん、ありがとう、ほむらちゃん」

ほむら『少しは楽になったかしら?』

まどか「うん、心が軽くなった気がする」

ほむら『……まどか』

まどか「なに?」

ほむら『あなたは、人のことを思い、人の痛みを自分のことのように感じることができる。それはとっても大切なことよ。おそらく、人間にとって一番大切なこと』

まどか「きゅ、急にどうしたの? ほむらちゃん」


51 : 『杏子とさやかの物語』 ◆k6VgDYkyGI - 2011/07/17(日) 21:29:25.88 BzZAtF+V0 18/38

ほむら『私は、あなたのそういうところが大好きよ』

まどか「!」

ほむら『……』(恋話にあてられて、我ながらクサい台詞を言ってしまったわ……)

まどか「あ、あ、ありがとう」

ほむら『……』(二の句が継げない……)

まどか「ほむらちゃん」

ほむら『なに?』

まどか「わたしも、ほむらちゃんのこと、大好きだよっ!」

ほむら『!!』

まどか「ウェヒヒヒヒ///」

ほむら『こここ今度は、ちょっ、直接会って聞きたいものね、その台詞っ』

まどか「うんっ!」


55 : 『杏子とさやかの物語』 ◆k6VgDYkyGI - 2011/07/17(日) 21:34:31.58 BzZAtF+V0 19/38

~一日後 放課後 巴マミの家~

マミ「あら、いらっしゃい、美樹さん」

さやか「あ、すみません、急に……」

マミ「いいのよ。どうぞ上がって」

さやか「失礼します」

マミ「座ってくつろいでいて。今、紅茶を用意するわ」

さやか「あ、いえ、今日は結構です。いつも悪いですし……」

マミ「気にしなくていいのよ。何か相談があって来たんでしょう? ゆっくり話すには、温かい飲み物があった方がいいわ。心を落ち着けてくれるから」

さやか「……どうして……」

マミ「それに続くセリフは『相談があるって分かったんですか?』かしら? うふふ、そんな深刻な顔していたら、誰でも気づくわ」

さやか「……」

マミ「まぁ、とにかく腰を落ち着けて。リラックスしててね」


56 : 『杏子とさやかの物語』 ◆k6VgDYkyGI - 2011/07/17(日) 21:39:45.28 BzZAtF+V0 20/38

~十分後~

マミ「今日はアッサムのミルクティーにしてみたの。どうかしら?」

さやか「すごく、美味しいです」

マミ「そう、よかった」

さやか「……」

マミ「美樹さん」

さやか「は、はい」

マミ「ここ」チョン

さやか「ひやっ」

マミ「さっきから眉間にシワがよりっぱなしよ」

さやか「あ……」

マミ「ずいぶんと思いつめてるみたいね」

さやか「……はい」

マミ「何でも聞くわ」

さやか「……実は……」


58 : 『杏子とさやかの物語』 ◆k6VgDYkyGI - 2011/07/17(日) 21:45:22.99 BzZAtF+V0 21/38


マミ「……」

さやか「実は、杏子のことなんです」

マミ「佐倉さんの?」

さやか「せ、正確には、杏子と……、恭介……あたしの幼なじみの、上条恭介のことなんです」

マミ「美樹さんは今、佐倉さんとお付き合いをしているのよね?」

さやか「……はい」

マミ「今の恋人と、昔の幼なじみ――その二人がどうしたのかしら?」

さやか「あたし、あたし……」

マミ「……?」

さやか「最低なやつなんです、あたし」グスッ

マミ「み、美樹さん?」

さやか「マミさん、あたし……うぅ……グスッ……」

マミ「……」ナデナデ


61 : 『杏子とさやかの物語』 ◆k6VgDYkyGI - 2011/07/17(日) 21:53:42.06 BzZAtF+V0 22/38

さやか「あたし……あたし、恭介のことが忘れられないんです……!」

マミ「……上条君のことが?」

さやか「この前、杏子と遊んでいたときに、偶然見かけたんです。恭介、今、仁美と付き合ってて……二人で楽しそうにしてました。笑いあって、すごく楽しそうにしてました……」

マミ「……」

さやか「あたしは……あたしは……そのとき、嫉妬したんです! 仁美に! あそこにあたしがいたらって! 恭介が笑いかけてくれるのが仁美じゃなくてあたしだったらって!」

さやか「しかも、杏子がすぐそばにいるのに、そんなこと……!」

マミ「……」

さやか「そんなの、最低じゃないですか! 杏子はあたしにすごくよくしてくれてる。あたしなんかを幸せにしようとしてくれてる。でも、あたしは……! あたし……は……ヒック」

さやか「そんな杏子を裏切って、仁美に嫉妬して……! イヤになるんです! こんな自分が! こんな……うう……」

マミ「美樹さん……」

さやか「うう……グスッ……」


63 : 『杏子とさやかの物語』 ◆k6VgDYkyGI - 2011/07/17(日) 21:57:20.54 BzZAtF+V0 23/38

~十数分後~

マミ「少しは落ち着いたかしら?」

さやか「……はい……」

マミ「美樹さんは、今でも上条君のことが好きなのね?」

さやか「……はい……」

マミ「……」

さやか「あのとき……あの二人を見たとき、世界が止まったみたいに思えました。分かってたはずなのに。二人が付き合ってることなんて、とっくに」

マミ「……」

さやか「……」

マミ「そのとき、どういう気持ちになったのか、もう少し聞かせてもらえるかしら?」

さやか「……あたしが、邪魔者にされたって感じでした」

マミ「邪魔者?」

さやか「独りぼっちになったっていうか……。うまく、伝えられないんですけど……」


66 : 『杏子とさやかの物語』 ◆k6VgDYkyGI - 2011/07/17(日) 22:03:14.50 BzZAtF+V0 24/38

マミ「そう……」

さやか「マミさん」

マミ「なにかしら?」

さやか「あたし、杏子と別れるべきですよね……」

マミ「……どうしてそう思うの?」

さやか「だって! こんなのひどいじゃないですか! 他に好きな人がいるのに、彼女と付き合ってるんですよ!? 杏子は、あたしが杏子を好きだって信じてくれてるのに……」

マミ「美樹さん」

さやか「……はい……」

マミ「残念だけど、私からは何も言えないわ」

さやか「マミ……さん……」

マミ「もし、ひとつだけアドバイスできることがあるとしたら、それは、あなたのその想いを、佐倉さんに直接、告げるということよ」

さやか「杏子に……?」


68 : 『杏子とさやかの物語』 ◆k6VgDYkyGI - 2011/07/17(日) 22:07:44.14 BzZAtF+V0 25/38

マミ「別れるか、別れないか。それはひとまず置いておきましょう」

さやか「え……?」

マミ「あなたの正直な想いを告げて、佐倉さんがどう感じるか……? 答えを出すのは、それを知ってからでも遅くないわ」

さやか「……でも……」

マミ「……」

さやか「……そう、ですよね……。何だか私、私のことばっかり考えてた気がします……」

マミ「心が弱ってしまえば、見える部分も狭くなる……。それは当たり前のことよ。自分を責めることはないわ」

さやか「……やっぱり、マミさんはすごいですね」

マミ「しっかりしたアドバイスができなくてごめんなさいね」

さやか「いえいえ、充分です」

さやか「……これから、杏子のところに行ってきますね」

マミ「無理はしないでね、美樹さん」

さやか「……はい」


72 : 『杏子とさやかの物語』 ◆k6VgDYkyGI - 2011/07/17(日) 22:11:29.75 BzZAtF+V0 26/38

~一時間後 見滝原市某所~

さやか(はぁ……、さすがに気が重いなぁ……)

さやか(杏子、悲しむよね……)

さやか(どうやって切り出せばいいんだろう、こういうとき……)

さやか(マミさんに聞いておけばよかったかな……)

??「さやか」

さやか「?」

??「さやか……」

さやか「きょ、恭介ッ!?」

恭介「……」

さやか「あ、あんた、なんでここに……っ!?」

恭介「……さやか、待ってたよ」

さやか「仁美は……、仁美と一緒じゃないの?」

恭介「さやか……、僕は、君のことが好きなんだ」


76 : 『杏子とさやかの物語』 ◆k6VgDYkyGI - 2011/07/17(日) 22:15:24.29 BzZAtF+V0 27/38

さやか「は、はぁっ!? ど、どうしたの……、と、突然!? それに、恭介にはもう仁美が……」

恭介「さやかは、ぼくのことが好きじゃないのかい?」

さやか「そ、それは……」

恭介「じゃあ、あのとき、ぼくを見てたのはどうしてかな」

さやか「き、気づいてたの? あの日のこと……」

恭介「仁美とは別れる。ぼくは君のものだよ」

さやか「わ、別れるって……。ど、どうしたの? なんか変だよ? 今日の恭介……」

恭介「ぼくのことが好きじゃなかったの?」

さやか「……」

恭介「さぁ……、こっちにきてよ、さやか……」

さやか「……恭介……」

恭介「ぎゅってして、ほしいだろう……?」

さやか「……恭……介……」


80 : 『杏子とさやかの物語』 ◆k6VgDYkyGI - 2011/07/17(日) 22:20:38.02 BzZAtF+V0 28/38

(さやか……)

さやか「――はっ!」

恭介「? どうしたんだい、さやか」

さやか「……ごめん」

恭介「え?」

さやか「……恭介、ごめん! あたし、やっぱりちがう!」

恭介「なにを言ってるんだい、さやか。ぼくの胸に飛びこんでおいでよ。やさしく抱きしめてあげるから」

さやか「ちがうの。あたしは、あたしは恭介のことが好き。でも、本当に抱きしめてほしい人は、他にいるの」

さやか「……今、あたしが望んだのは、恭介のぬくもりじゃなかった」

恭介「でも、今、ぼくを好きだって言ったじゃないか」

さやか「うん、好き。大好きだよ。でも、あたしがいたい場所は、恭介の胸の中じゃない……。それが今、分かったんだ。こうして話してて、はっきり分かったの」

恭介「さやか……」


84 : 『杏子とさやかの物語』 ◆k6VgDYkyGI - 2011/07/17(日) 22:25:38.91 BzZAtF+V0 29/38

恭介「じゃあ、いいのかい? 仁美とぼくが一緒にいても。もう君の手の届かないところに行ってしまっても」

さやか「うん、そりゃあ、いい気はしないよ? ……ぶっちゃけ、悲しいよ? ……ハハハ……」

恭介「なら、どうして」

さやか「もっと大切なものがあるって気づけたから」

さやか「二人がいなくなっても、あたしには受けとめてくれる人がいるって、気づけたから」

恭介「さやか……」

さやか「間一髪?ってやつだったけどねっ!」

恭介「……」

さやか「まぁ、まったく離ればなれになるってワケじゃないんだし。これからも、ずっと友だちじゃん」

恭介「そう……それが、きみの答えなんだね」

さやか「ねぇ、なんか今日、恭介、ホント変だよ? 大丈夫?」

恭介「……それじゃあね、さやか」

さやか「……あ、う、うん……」


89 : 『杏子とさやかの物語』 ◆k6VgDYkyGI - 2011/07/17(日) 22:30:33.47 BzZAtF+V0 30/38

~同刻 路地裏~

ほむら「たいした度胸ね、佐倉杏子」

杏子「うわぁっ!?」

ほむら「……」

杏子「毎回毎回、急に現れるなよ! 驚くだろ!」

ほむら「……今の、あなたの固有魔法ね。美樹さやかに、幻覚を見せたの?」

杏子「……ああ。ってか、何でお前がここにいるんだよ」

ほむら「まどかが、あなたのことを心配していたから、様子を見に来たまでよ」

杏子「お前な……」

ほむら「それで? さっきのは何?」

杏子「……アタシは『信仰の祈り』をもとに魔法少女になったんだ。だから、元々は眩惑の魔法が使えたんだよ。色々あってその力は失ってたんだけど」

杏子「でも、それが最近、ちょっとだけ使えるように戻ってさ」


91 : 『杏子とさやかの物語』 ◆k6VgDYkyGI - 2011/07/17(日) 22:35:36.98 BzZAtF+V0 31/38

ほむら「美樹さやかを信じて待つんじゃなかったの?」

杏子「まどかから聞いたのか? ……たしかに、あのときは納得したんだけどさ。でも、ただ待ってるのって、よく考えたら、アタシ向きじゃないんだよねー」

ほむら「だから、幻を見せて、美樹さやかの本当の気持ちを確かめようとした……」

杏子「まあね」

ほむら「……もし、さっき、美樹さやかが上条恭介を選んでいたら、あなたはどうするつもりだったの」

杏子「そんなことはないって信じてたよ」

ほむら「ずいぶんと楽観的なのね。あなたの恋人なんでしょう」

杏子「だからだよ。親父が言ってた。『信じるということは、けっして疑わないということだ』って……。アタシは……これっぽっちも……疑ってなかった……」

ほむら「そう」

杏子「……」

ほむら「それじゃあ、見なかったことにしてあげるわ……、その目尻に溜まったものを」

杏子「……」ゴシゴシ

ほむら「……信じていて、よかったわね」


94 : 『杏子とさやかの物語』 ◆k6VgDYkyGI - 2011/07/17(日) 22:39:59.49 BzZAtF+V0 32/38

~同刻 見滝原市 展望台~

マミ「まさか、ああいう展開になるとはね」

QB「マミ、君があまり驚かないのはなぜだい?」

マミ「驚いてるわよ、佐倉さんがあんな手段を使うなんて思わなかったもの」

QB「そうじゃない。美樹さやかが上条恭介を選ばなかったことだよ」

マミ「それは初めから分かってたわ」

QB「どうしてだい?」

マミ「美樹さんが言ってたでしょ? 『邪魔者になった気がした』『独りぼっちになった気がした』って」

QB「それがどうかしたのかい?」

マミ「本当に嫉妬で心がいっぱいになってる人間は、そんな気持ちにならないわ。彼女が感じていたのは、おおざっぱに言えば戸惑いよ。親友と幼なじみ、こんなに近しい二人との関係が、急に全然別のものに変わってしまったんだもの」


97 : 『杏子とさやかの物語』 ◆k6VgDYkyGI - 2011/07/17(日) 22:44:33.46 BzZAtF+V0 33/38

マミ「上条君に元々好意を抱いていた美樹さんは、自分の感情を嫉妬だと思いこんだ。もちろん、少しは、そういう嫉妬心も混じっていたかもしれない。でも、それは佐倉さんとの関係を壊すほどのものではなかったはずよ」

QB「1か0かで割り切れないのかい? 様々な感情が混在するなんて。君たち人間の感情というのは、本当にわけがわからないよ」

マミ「あなたたちなら、そう言うでしょうね」

QB「それにしてもすごいね、マミ。そんな複雑な……乙女心……というのかい? それを見破ってみせるなんて。豊富な経験から結論を導いたんだね!」

マミ「ふふ、私にそんな経験があるように見える?」

QB「え?」

マミ「あなたも読んでみるといいわ、キュゥべえ」ピラッ

QB「なになに……『これでカンペキ! 実践的恋愛指南 ~これでアナタもラヴマスター~ 中級編』なんだい、これは?」

マミ「お姉さん役も楽じゃないのよ? ふふ」


100 : 『杏子とさやかの物語』 ◆k6VgDYkyGI - 2011/07/17(日) 22:48:43.35 BzZAtF+V0 34/38

~数十分後 見滝原市某所~

杏子「お~い、さ~や~か~」

さやか「杏子」

杏子「……何だってんだ? 急にこんなとこに呼び出して」

さやか「……杏子、さっそくアレだけど、ちょっと目、閉じて」

杏子「はぁ?」

さやか「いいからいいから」

杏子「なんだってんだ? ……はい、閉じたぞー」

さやか「……」チュッ

杏子「!?」


102 : 『杏子とさやかの物語』 ◆k6VgDYkyGI - 2011/07/17(日) 22:53:09.37 BzZAtF+V0 35/38

杏子「なななななななな、なにを……っ!?」

さやか「杏子、これからも、よろしくね。へへっ」

杏子「あわ、あわわわ……」

さやか「もう~、キスのひとつや二つでなにそんなに照れてんのよ~、あははっ」

杏子「な、何を……」

さやか「心機一転、あらためてお願いしますのチュー」

杏子「……な、なんだそりゃ……」

さやか「んん~? このさやかちゃんの唇が不満だったとでも?」

杏子「だ、だって、い、いきなり不意打ちは卑怯だぞっ!」

さやか「……じゃあ、不意打ちじゃないやつ、いっとく?」

杏子「えっ? ……あ……、う、うん……」

さやか「したい?」

杏子「……したい」

さやか「それじゃ、いくよ――」


―おしまい―


107 : おまけ『まどかとほむらの物語』 ◆k6VgDYkyGI - 2011/07/17(日) 22:55:15.35 BzZAtF+V0 36/38

~同日夜 まどか自室 ほむらと電話~

まどか「そっかぁ~、よかったぁ~……」

ほむら『もう心配なさそうよ』

まどか「わざわざわたしのために、ありがとう」

ほむら『まどかの心配事は私の心配事よ』

まどか「ウェヒヒヒヒwwww ほむらちゃんったらwwww」

ほむら『じゃあ、まどか、また明日ね』

まどか「あ、ちょ、ちょっとだけ、最後にもうひとつ、いいかな?」

ほむら『? なにかしら?』

まどか「言いにくいんだけど……ほむらちゃん……」


109 : おまけ『まどかとほむらの物語』 ◆k6VgDYkyGI - 2011/07/17(日) 22:59:52.79 BzZAtF+V0 37/38

ほむら『?』

まどか「あのね……」

まどか「あの……」

ほむら(ど、どうしたのかしら。まさか……)

まどか「言いにくいんだけど……」

ほむら(この重い沈黙は……まさか、別れ話!?)

まどか「……」

ほむら『……』ゴクリ…

まどか「わたしのショーツ、持って帰るのやめて……くれない、かな……」

ほむら『ほむッ!?』

まどか「ほむらちゃん?」

ほむら『なななななななんのことかしららっ!?』


113 : おまけ『まどかとほむらの物語』 ◆k6VgDYkyGI - 2011/07/17(日) 23:03:45.73 BzZAtF+V0 38/38

まどか「わたし……」

ほむら(まさか今、被ってるなんて言えない……! 一体どうしたら……っ!)

まどか「わたし、見ちゃったの。ほむらちゃんが、わたしのタンスをあさってたところ……」

ほむら『』

まどか「で、でもね、もし、もし……よかったら……」

ほむら『は、はい!』

まどか「洗ったのじゃなくて、脱いだの、あげるから……」

ほむら『』ブー!

まどか「ほむらちゃん?」

ほむら『』ピクピク…ビクンビクン

まどか「ほ、ほむらちゃん!? ほむらちゃんってば! どうしたの!?」(どうして!? 「そこに価値がある」って、この前見たアニメのドラマCDでやってたのに……!)

まどか「ほむらちゃーんっ!」


―おしまい―


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