紀元前四世紀ぐらいに小さな王国がありました。
しかし、その王国は長い間戦争が絶えませんでした。
一方的に支配しようとする王国側。それに反抗する名もなき村達……争い、戦い、ペロペロし合う……そんな時間が永遠と続くと思われた時です。
一人の少女が現れました。
その少女は戦いの真っ只中に一人で踏み込み、両陣営の代表に自らをペロらせ戦争を止めたという……。
そうして数十年に渡って続いていた戦争は終わり、平和が訪れました。
そしてその平和の象徴として新しい王国、あずにゃん王国が誕生したのです。
元スレ
唯「あずにゃん王国!」~絶対王政ペロペロ~
http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1304687190/
パタン──
澪「こんな感じでどうです?」
梓「う~んなんかインパクト足りなくない?
後世の人が見て「あずにゃん王国やべぇっ」ってなるようなやつがいいんだよね~」
澪「はは。ではまたやり直しと言うことで。おい、これまた書き直しだ」
純「ははっ」
梓「は~暇だな~」
この人があずにゃん王国第一代国王、あずにゃんことペロペロ女神梓。
澪「暇と言うことはそれだけ平和ということですよ梓国王。よいことではありませんか」
この人はあずにゃん王国ペロの三騎士の一人、澪。
あずにゃん国王の側近である。
梓「むぎゅー何か面白いことない?」
紬「耳かきとかどうかしら?」
この人もペロの三騎士の一人、紬。
梓「また~? こないだもやったばっかじゃん。これ以上やったら耳から血が出ちゃうよ」
紬「まあ、酷いですわあずにゃん国王」
梓「わちゃんは? なんかない?」
和「のどかですよ国王。何回言わせる気ですかもう……」
この人も三騎士の一人、和。
和「そうですね……そろそろ選民の時期ではございませんか?」
梓「選民か~。そだね。暇だし足もかゆくなって来たことだし、早速準備してよ」
和「はっ!」
黄金に染まる都市、あずにゃん王国にズラッと並ぶ人影。
それは何キロもの列を作り続いていた。
その人影はどんどん城の中に入って行く。
がやがや……わいわい……
澪「静かにしろ!!! 国王の御前だぞ!!!」
シーン……
和「ゴホン。ではこれより第九十九回目の選民を行う。一人づつゆっくり前へ進みなさい」
それを聞きゆっくり民衆は前へ、前へと進んで行く。
その先には……
梓
民
民
民
民
民
・
・
・
梓「次」
偉そうな椅子にこれまた偉そうにふんぞり帰った梓国王がいた。
梓国王は右足をこれまた美しい細工が施された黄金の足置きに置いている。
民衆「ありがたやありがたや……」
澪「後がつかえているのだ、早くしろ」
民衆「ははっ!」
澪に一喝されるとすごすごと梓国王の前に行き、腰を下ろす。
民衆「では、失礼致します」
梓「うむ」
屈むような格好になりながら足置きに乗せられた梓国王の足を……
民衆「ペロペロ」
──舐めた
梓「……うむ。いいだろう。よし次」
こうして繰り返されるペロペロ。
これぞあずにゃん王国の絶対王政、ペロペロである。
この絶対王政ペロペロは、通称選民と呼ばれて何ヶ月かに一回行われる。
梓国王が自らをペロらせて戦争を止めたことから、平和の象徴となる梓国王をペロることでそのペロった民衆達も平和へのありがたさ、意識、争いの虚しさなどをわからす為に行なっている。
梓「ん」民衆「ペロペロ」
梓「ふっ」民衆「ペロペロ」
梓「はっ」民衆「ペロペロ」
梓「くくっ」民衆「ペロペロ」
梓「あはっ」民衆「ペロペロ」
梓「んひっ」民衆「ペロペロ」
梓「あふんっ」民衆「ペロペロ」
梓「むにゃんっ」民衆「ペロペロ」
澪「梓国王。少しお疲れではないのですか?
列を止めてもよいのですよ?」
梓「これくらいどうってことないよ、気にするな。
それよりも最近は大したペロリストはいないなぁ」
澪「左様でございますか」
梓「私を唸らせるようなペロリストは出てこないものか……次!」
しかし、それは表向きの顔。
裏向きは平和を脅かす者達をいぶり出す事である。
律「……」
澪「おい、お前! 何止まっている! さっさとペロペロせんか!」
律「くっ……」
澪に恫喝されながらも前に進もうとはしない。
澪「貴様……まさか反ペロリストか!?」シャキン
腰に掛けてあった剣を抜くと切っ先を律に向ける。
律「っ……」
剣を向けられ焦ったのかようやく律が梓国王の前へと歩を進める。
そして屈み、台座の上に置かれた眩いばかりの梓国王の足に舌を下ろす……。
律「ベロベロ」
梓「!!!!!」
梓「このものを引っ捕らえろ!」
律「っ!?」
澪「はっ! 貴様! こいっ!」
律「私はなにもっ……」
梓「ふん、そのようなザラザラした舌で舐めるとは……不届き者め!」
律「それはっ……あんたらがちょっとしか水を配ってくれないから!」
澪「ええい国王に言い掛かりをつけるとは何事か! この剣の錆びにしてくれよう!」
梓「待て澪。いい余興だ……この者をペロ跳ねの刑に処す!!!」
澪「はっ! おい! あれを用意しろ!」
純「……はっ」
律「いやだっ! 離せっ!」
ジタバタする律を押さえつけると木の板に革紐のベルトがついたものにうつ伏せに固定される。
律「くっ……」
身動きが取れなくなった律はただ下から澪を見つめるしかない。
澪「舌を出せ」
律「断る!!!」
澪「……おい」
純「はっ!」
モップ頭の使用人が律の口を無理やりこじ開けると舌を引っ張り出す。
そう、ペロ跳ねとは……簡単に言えば舌を落とすことである。
切り落とされた舌が踊る様に跳ねることからペロ跳ねと呼ばれているのだ。
律「ふぁめろ! ふぁふてくれ!」
澪「問答無用……梓国王こそが絶対なのだ。恨むならそのペロペロも出来ない舌を恨むのだな!!!」シャキン
抜かれた剣が輝きを増す。
もう見つめることしか出来ない律にとってそれは恐怖としか言いようがないだろう。
そして……
澪「……はあっ!!!」
純「!!!」
律「!!!!」
「待ってください!!!」
澪「」ピタッ
純「!?」
律「ゴホッゴホッ……」
梓「む?」
唯「国王、彼女の変わりに私がペロ跳ねの刑を受けます」
澪「なんだ貴様! 梓国王に指図するとは……」
梓「よい。お前はその者の家族か何かか?」
唯「いえ、全くの他人でございます」
梓「ほう、全くの他人の為に自らの舌を落とすと?」
唯「勿論条件がございます」
梓「条件? まあいい。聞くだけ聞いてやろう」
唯「私のペロペロを国王がよしとしなければ容赦なく私の舌を跳ねてください」
梓「ほう……」
澪「貴様ァ! 舐めたことを!!!」シャキン
梓「面白いです。受けて立とうじゃないですか」
澪「梓国王!」
梓「それほどペロペロに自信があるのだろう……私が気になると言っているのだ、澪」
澪「……梓国王が言うなら……わかりました」
梓「うむ、ではやってみるがいい。ただし私は並のペロペロじゃ微動だにしないからな」
唯「はは~。では、遠慮なく」ペロペロ
梓「!!!!?」
梓「(こ、これは……!)」
唯「ペロペロ」
梓「(この柔らかくもしっとりとした絶妙な舌!)」
唯「ペロペロ」
梓「(仔犬を連想させる舐め顔!)」
唯「ペロペロ」
梓「(そして一番は……)」
唯は両手で梓の足を持ち上げると足の裏をペロペロと舐め回す。
梓「(このテクニックっ……!)」
親指を優しくペロると次に人差し指、中指、と順にペロっていく。
一通りペロると返す刀、舌裏で舐めながら足裏を下降して行く。
梓「んふぁ……」
唯「ふふ……」
踵の辺りを舌舐めずりで一周させると今度は踝を一周。
ぬちゃりという音が聞こえる度梓の淫靡な声が漏れ出す。
梓「あっ……んんっ……」
唯「ペロペロ」
そしてまた表面に舌がたどり着くと血管をなぞるように這いながら優しくペロる。
梓「んあ……そこっ……もうっ……」
唯「ペロペロ」
唯がペロペロする速度を段々と上げて行く……。
梓「ダメっ……ダメっ……あっ! ああっ!!!」
梓「」ビクンビクンッ
唯「満足していただけましたか?」ニコニコ
梓「はぁ……はあ……(イっちゃった? まさかこの私が? 足をペロられたぐらいで……?」
梓「……名前を聞こう」
唯「唯でございます。梓国王」
梓「唯……か。よいペロペロであった」
唯「では!?」
梓「ああ。あの者及びお前を不問と処す」
唯「やったぁっ!!!」
澪「くっ……」
律「なんかよくわからないが助かったみたいだな……。ほら、これ外せよ!」
純「……」カチャリ
律「全く……」
澪「助かったからと言って貴様の罪が許されたわけではないぞ!
次の選民の時に覚悟しておくんだな……!」
律「へっ……(起こらねぇよ……次の選民なんてな!)」
梓「唯、良かったら私専用の……」
和「国王、早く次に。今日中に終わらせねば」
梓「くっ……わかっている! ……次! さっさとしろ!」
律「いや~死ぬかと思った。助かったよ!」
唯「どういたしまして」
律「私は律。あんたは唯だっけ?」
唯「うん!」
律「お礼と言っちゃなんだけどこれから私の村で食事していってくれよ。そんな大したもんは出せないけどさ」
唯「でも私早く帰らないと……」
律「大丈夫。時間はとらせないよ。約束する」
唯「そういうことなら……ごちそうになろうかな」
デコ村
律「お~い帰ったぞ~」
聡「あっ、姉ちゃんおかえり! どうだった?」
律「危うく舌落とされるとこだったよ」
聡「マジかよwww さっすが恐怖の魔王梓国王だな」
律「でもこの人が助けてくれたんだ。入ってよ、唯。小さな家で悪いな」
唯「お邪魔しまーす」
聡「なっ……!」
唯「ん? 何か私の顔についてる?」
聡「で、デ、デコが出てない!!!」
唯「へ?」
律「失礼だぞ聡。この村の人じゃないんだから当たり前だろう」
聡「そ、そうだった! 久しぶりにデコが出てない女の人みたよ。新鮮でいいな~」
律「ほ~ら出来たぞ。デコ村名物デコカレーだ」
唯「わーい」
聡「わーい」
律「……食べながらでいいから聞いてくれないか」
唯「んふぇ?」モグモグ
律「このデコ村はさ……見ての通り小さな村だ。でもみんなが生き生きとしていい村だったんだよ……」
唯「……」
律「でもそれをあいつらが奪ったんだ……! あずにゃん王国が……!
やつら私達が使っていた水飲み場を勝手に管理し始めたんだ!
小さいからってこの村に渡される水は雀の涙くらいさ! とても足りやしない!」
唯「そうなんだ……」
律「それだけじゃない!」
律「少しペロペロが乱れると平和を乱す不穏分子だとか言ってあの始末!!!
うちの村の人も何人も戻って来ちゃいない。
噂じゃ舌を跳ねた後に縫合してから地下牢に入れてるって話だ……殺さず生かさず……ただペロペロ出来なかった自らを責めさせる。
地獄さ……あそこは」
唯「……」モグモグ
聡「……」モグモグ
律「はは、悪いね……飯時にこんな話してさ。こんなこと言ってもどうにもなんないのにな……」モグモグ
唯「……」
律「美味いな、デコカレー。ほんとにありがとな、唯。あんたがいなかったら味わえないとこだったよ」
唯「……そろそろ帰るね。妹が心配だから」
律「妹さんがいるのか。……よし、ちょっと待ってな」ゴソゴソ
律「ほら、持って帰りな、デコカレー」
唯「いいの?」
律「命の恩人の妹さんだ。食ってもらわないとバチが当たる」
聡「(姉ちゃんそれ朝め(ry」
律「(我慢しな」
聡「(はい……」
唯「……じゃあ遠慮なく。ありがとう律」
律「りっちゃんだ。ここじゃそう呼ばれてる」
唯「ありがとう、りっちゃん」
律「ああ。また来いよな、唯」
唯「すっかり遅くなっちゃった」
律の家を出て、デコ村の入口に差し掛かった時だった。
「もし、この現状を変えられるとしたらどうする!!!???」
唯「!?」
大声に反応し、唯が振り向くとそこにはさっきまで話していた律がいた。
薄暗くなった夜に月が降り、デコ村をほんのり照らしている。
唯「どういう……」
律「あんたは満足してんのか!? こんな虐げられた暮らしで!
何が平和だ! あんなもの支配だろう!!?」
唯「それは……」
律「私達は近々村同士で手を合わせてやつらを叩く!!!
デコ村の生き方こそが正しいんだ!!! それをやつらにわからせてやる!!!」
律「だからあんたの村にも協力して欲しい! 帰ったら村長さんにそう言ってくれないか?」
唯「でも……」
律「助けてもらった手前でこんなこと言うのはデコ違いなのはわかってる! けどもう仲間が死ぬのを見たくないんだ……頼むよ、この通りだ」
唯「そんなっ! 土下座なんかされても……私……」
律「ちがぁうっ! デコスリツケだ。デコ村じゃ地面にデコをスリツケるのは最大級の禁忌なんだぞ!
それをやるぐらい本気ってことだ!」
唯「……そうなんだ」
唯「でも……私達は協力出来ないよ」
律「こんなに頼んでも駄目かっ!?」
唯「ううん……そうじゃなくて……私達二人だから……」
律「えっ」
唯「妹がペロペロ病で……移るからって村を追い出されたの」
律「ペロペロ病……だと」
唯「だからごめんね……りっちゃん。私だけならともかく妹は巻き込みたくないんだ」
律「そっか……それじゃ仕方ないな。無理に誘って悪かった」
唯「ううん。じゃあ妹が待ってるから。カレーありがとう」
律「ああ。また絶対に来いよな! 次は妹さんと一緒に! デコカレー作ってやるからさ!」
唯「うんっ!」タッタッタッ……
律「……かのものがデコと共にあらんことを」
デコ村の入口にあるデコ神の像、それが一瞬光った気がした。
所変わってお城。
梓「ふぅ、やっと終わった」
澪「お疲れ様です梓国王」
和「5万人中反ペロリストは15人でしたね。日に日に増えていってるのが気になります」
梓「……」
和「国王?」
梓「ん? ああ……そうだな」
澪「どうかされましたか?」
梓「な、何でもないぞ!」
和「さてはあのペロリストが気がかりになっておられるのですね?」
梓「なっ」カァァ
和「図星ですか。全く、国王はわかりやすいですね」
澪「私は認めてないからな! あんな者が梓国王を……!」
紬「かの者達の処置終わりました。
あら? また随分と賑やかね。何のお話かしら?」
和「お疲れ様。今日梓国王をイかせ(ry」
梓「こらあーーー!」
和「ふふ、冗談ですよ。あの唯とか言うペロリストの話よ」
紬「ああ……あの子ね。可愛かったわね~」
澪「ふんっ、梓国王の何万分の1だがな」
和「で、王宮に呼ぶのですか? 国王」
梓「え゛?! なんでわかったの!?」
和「バレバレですよ」
梓「むむむ……、さすが賢者の和と言われるだけのことはある」
和「国王がわかりやすすぎなだけですよ」
澪「私は反対です!!! あんなものを入れては王宮、敷いてはこのあずにゃん王国の汚点となりましょう!」
梓「でも……」
澪「梓国王の専属ペロリストは私達だけで十分でございませんか!?
それとも私達に至らぬことがありますか!?」
梓「あの……その……」
和「ほら、澪。国王が怖がってるじゃない」
澪「あっ……失礼しました」
紬「よしよし」
梓「……ん」
和「この国を収めるためとは言えあまりにも荷が重すぎるわよね……」
梓「わ、私は……大丈夫だ」
澪「梓国王……」
梓「三人の時は呼び捨てでいいです。澪先輩」
澪「……もう先輩じゃないだろ、梓」
和「そうね……私達にはもう帰る場所もない。ここしか……ね」
紬「……」
梓「……暗い話はやめにしましょう。せっかく平和が戻って来たんです。少しでもそれを長引かせられるよう努力しましょう」
澪「ああ……そうだな」
和「例え恨まれることになろうとも……ね」
紬「ええ」
すると三人は同時に片膝をつき、目を閉じる。
澪「我らペロの三騎士。どこまでも貴方と共に」
紬「我らペロの三騎士。どこまでも貴方と共に」
和「我らペロの三騎士。どこまでも貴方と共に」
梓「ならばあずにゃん王国、国王として命じる。唯をこの王宮に迎え入れろ」
澪「ははっ」
紬「ははっ」
和「ははっ」
唯の家
唯「ただいま~遅くなってごめんね~憂」
憂「おペ姉ロちぺゃんロ」
唯「これ! 今日友達になった子が作ってくれたんだぁ。食べさせてあげるね」
憂「わぺぁ楽ろしぺみろ」
唯「はい憂。あ~ん」
憂「ペロあーんペロ」
舌が下に下がった瞬間を狙ってデコカレーを咀嚼させる。
憂「ゴホッゴホッ」
唯「憂っ!? 大丈夫!?」
憂は何故かカレーを吐き出してしまう。
憂「ごペめロんねペお姉ロちゃん……ペロペロ」
違う、噛めないのだ。
ずっとペロペロしているが故に。
これがペロペロ病。
常に舌をペロペロしていることからついた病名だ。
治す手段は未だに見つからず、一度かかれば後は疲れはて、舌が動かなくなったのが最後……舌は壊死し、口の内部から腐って行く。
そして最終的に待っているものは……死だ。
唯「憂……前は少しはペロペロするの我慢出来たのに……」
憂「……ペロんねペロちゃん」
侵攻状況により具合は異なるが酷くなれば憂のようにご飯さえ食べられなくなる。
舌と体が別物になってしまうのだ。
それが嫌になって自らの舌を噛みきり、自殺するものも珍しくはない。
唯「……食べさせてあげるね」
憂「無理ペロ……お姉ペロ」
唯「大丈夫だよ、憂」
そういうと唯はデコカレーを自分の口に含み、噛む。
憂「ペロペロ?」
唯「ほら、口開けて」
憂「ペロペ……ん」
唯はそのまま憂に口移しでデコカレーを流し込む。
喉に詰まらせないように唯の舌が憂の舌を絡み付けるように抑え込む。
憂「んん……ん」ヌチャ
唯「そのままごっくんして」ヌチャリ
憂「……」ゴクリ
唯「良くできました」よしよし
憂「……ペロペロ」ニコ
唯「さあもう一口どうぞ」
そしてまた一連の行動を繰り返す。
お皿の上のデコカレーが全てなくなる頃には1時間が経過していた。
唯「美味しかった?」
憂「」コクコク
ペロペロしているのを見られたくないのか口を閉じてただニコニコ頷く憂。
しかし頬の動きから内部では高速でペロペロしていることが容易に伺える。
唯「……じゃあ歯を磨いて寝よっか!」
憂「うん」
口を開けたまま、喉の動きだけで短い言葉を返した。
唯「ごっしごっし」
憂「……」
汚れを落とす葉っぱを木に巻き付け、それで歯を擦る。
それがこの時代の歯の磨き方だった。
憂「……」
憂の手が止まる。
唯「どうしたの? 憂」
優しく聞き返す唯、しかし憂が言い出す前にそれを察した。
唯「ふふ、お姉ちゃんに任せなさい!」フンスッ!
憂「」ニコリ
この棒だと前歯は綺麗に出来ても奥歯はどうしても舌が邪魔をして上手く磨けないのだ。
唯はそれを瞬時に察していた。
唯「ごっしごっし♪」
憂「ペロペロ♪」
唯「じゃあおやすみ、憂」
憂「おペやロすペみロ、お姉ちゃん」
そういうと憂は何かを口に嵌める。
それは木の棒の先端を歯形に合わせて掘っており、そこに歯を乗せる。
半開きとなった口の中ではペロペロと絶え間なく舌が動いていた。
寝ている最中も当然ペロペロしてしまうこのペロペロ病、故にもし寝ている間にうっかり舌を歯で挟んでしまったら大変だから、と唯が憂の為に作った歯止めだった。
唯「くぅ……くぅ……」
窓から薄明かりが二人の葉っぱのベッドを照らす。
憂「……ッ……ッ……ンッ……」
そこで唯に背を向け、憂は小さく体を震わせながら泣いていた。
唯「憂……?」
憂「!?」
唯「どうしたの?」
寝返る形で振り向いた唯はそのまま憂の背中のすぐ傍まで来た。
憂「ヒック……ック……」
唯「泣いてるの……? 憂」
憂「……」
憂はゆっくりと歯止めを外し、唯に向き直る。
憂「こんな妹でごめんね」
舌を噛みそうになりながらも、涙を流しながらも、はっきりとそう告げた。
唯「憂……」
憂「お姉ちゃん……!」
そのまま姉の胸に抱きつく。
それをゆっくりとなでながら、「そんなことないよ……憂は大切な妹だよ」と囁いた。
唯「絶対に治してあげるからね……どんなことをしたって……必ず」
翌朝
澪「話によると……ここか……」
そこは唯と憂の家と書かれた立て札があるだけで、見た目は張りぼて同然の家だった。
澪「すまない、誰かいるか?」コンコン
憂「」そぉ~チラッ
澪「ああ、妹さんかな? 私はあずにゃん王国の三騎士、剣者の澪だ。突然の訪問すまない」
憂「」フルフル
澪「唯はいるか?」
憂「」コクコク タッタッタッ
澪「喋れないのかな……」
しばし待つこと10分。
唯「ふぁ~い」
澪「遅いっ!!! 貴様この私を10分も待たせるとは!!! 梓国王の命でなければ斬り捨てているところだっ!」
唯「ふぉ? なんのごようですかー?」
澪「うむむむ……! まあいい。梓国王がお呼びだ。一緒に王宮まで来てもらおう」
唯「へ? なんで?」
澪「ぐぬぬぬぬ……! 梓国王がお呼びだとさっき言ったろう!!! 早く支度をしろ!」
唯「ふぁ~い」トタトタトタ
澪「一つ一つの行動がなんて遅いやつなんだ……! 見ててイライラする!
梓国王はなんでこんなやつを専属ペロリスト何かに……」
憂「」そぉ~チョコン
澪「ん? なんだ? くれるのか?」
憂「」コクコク
澪「ふむ、国民からの差し入れとあっては断るわけにはいかないな。どれ、頂くとしよう」
澪「」モグモグ
澪「……これは……憂草のお団子か?」
憂「」コクコク
澪「優しい味だな。苦味もない。よく調理出来ている」
憂「」ニコニコ
唯「よしっ! 準備完璧っ! さあ行きましょう!」フンスッ!
澪「更に用意に1時間……だと」カタカタカタ
澪「お、落ち着け……梓国王の命令だ……抜くわけには」カタカタカタ
唯「それじゃ行ってくるね、憂。ちゃんと留守番してるんだよ」
憂「」コクコク ニコニコ
澪「憂?」
唯「さあ行きましょう! え~とぉ」
澪「澪でいい」
唯「じゃあ行こっか! 澪ちゃん」
澪「ちゃん……ま、まあいい」ワナワナ
憂「行っペてらロっしゃペいロ」フリフリ
唯「いってきま~す」フリフリ
澪「あれは……」
澪「……妹さん、ペロペロ病なのか」
唯「えっ、なんでそれを……」
澪「あずにゃん王国を舐めるな。医療も最先端だ」
唯「それじゃ……!」
澪「それでも……ペロペロ病の原因も治療法もわかっていないのが現状だがな」
唯「そう……なんだ」
澪「心配するな。うちの医師、紬は天才だからな。ペロペロ病が治るのも時間の問題だ」
唯「ほんとに!?」
澪「ああ。妹さんの病気が治ると、この剣に誓って約束しよう」
唯「わぁ~っ!」
唯「ありがとう澪ちゃんっ!」ぎゅっ
澪「お、おいっ! やめろっ! くっつくなっ!」
唯「そういえば何で私はあずにゃん国王に呼ばれたの?」
澪「お前……なんか昨日と雰囲気違うな」
唯「昨日は憂にちゃんとしていきなさいって怒られちゃってー」テヘ
澪「……まあいい。何で呼ばれたかは梓国王に直接聞くといい」
唯「……はっ! まさか私昨日のことでやっぱり舌をチョンパされちゃうんじゃ……!」アワアワ
澪「それはないから安心しろ。寧ろお前にとってはいい話だ。とてもな」
唯「いい話……?」
澪「いいからちゃんとついてこい。この辺りはデコ族がいるからな。いくらまとめているとは言え何してくるかわからん連中だ。
離れるなよ」
唯「……はーい」
唯「とうちゃ~く」
澪「ふぅ、全く。歩くのが遅い! 私だけなら半分の時間でつけた」
唯「ごめんなさい……」
澪「まあいい。一応は客人だからな」
唯「うわぁ~綺麗だね~」
澪「ああ。ここがこの世界の中心、黄金都市あずにゃん王国だ。もっとも黄金なのは前王の趣味らしいがな」
唯「あ~いい匂いがする~」フラフラ
澪「あ! おいっ! どこへ行くっ!」
~黄金と平和に染められし都市~あずにゃん王国
屋台の親父「へいらっしゃいっ!」
唯「うへ~美味しそう~」
屋台の親父「1つ2ペロになるよ」
唯「2ペロ? なにそれ」
澪「通貨だ。全くそんなことも知らないんだな、田舎者は」
唯「通貨?」
澪「お金だよお金。ここあずにゃん王国ではペロという通貨で物のやりとりをしてるんだ」
唯「ほへ~何か凄いね~」
澪「うちの執務官が考えた制度でな? これが綺麗に決まってだな……コホンッ! そんなことはいい。寄り道せずにさっさと王宮に行くぞ」
屋台の親父「あ、あなた様は澪様! このペロまんじゅうを是非食べてください! ささ、お連れの方もどうぞ」
澪「民の差し入れとあれば……」
唯「わーい!」モグモグ
澪「やれやれ……」モグモグ
唯「ん~おいし~」モグモグ
澪「全く……貴様はここに何しに来たんだ」
唯「唯でいいよ~」
澪「お前の名前など覚える必要はない」
唯「ひど~い」
澪「ふんっ」
あずにゃん王国の民「澪様! お帰りなさいませ!」
澪「ああ、ただいま」
あずにゃん王国の民「澪様! うちの生まれたばかりの赤ん坊です! 抱いてやってください」
澪「可愛いな。梓国王みたいないい子に育てよ」
赤ん坊「おぎゃあおぎゃあ」ギュッギュッ
あずにゃん王国の民「こら! 澪様の神を引っ張るなんていけませんよ!」
澪「構わないさ。気に入ってもらって何よりだよ」
あずにゃん王国の民「まあまあすみません」
唯「……」モグモグ
剣者澪の兵「お帰りなさいませ! 澪隊長!」
澪「見張りご苦労。変わったことは?」
剣者澪の兵「異常なしであります!」
澪「よろしい。午後からは稽古だ。しっかり食べておけよ」
剣者澪の兵「はっ!」
きらびやかな門を潜ると二人は王宮に足を踏み入れた。
下には赤の絨毯が無限と敷かれており、上にはシャンデリア、側面にはエメラルドやダイヤモンドが散りばめられた壁が宮殿を覆い尽くす。
唯「何回見ても綺麗だね~」
澪「ふん、こんなもの眩しいだけだ」
唯「……澪ちゃんは人気者さんなんだね」
澪「……」
唯「凄いね」
澪「……私なんてまだまださ。梓国王に比べたらな」
澪「」スッ
唯「」アセアセ スッ
澪が片膝をついたのを見て唯も見おう見真似する。
澪「三騎士が一人剣者、澪……ただいま戻りました」
梓「うむ、ご苦労であった。下がってよし」
澪「ははっ」
梓「よく来たな、唯」
唯「は、はは~。ありがたき幸せ~」ヒラニ~ヒラニ~
梓「そんな畏まらなくてもいい。今日は他の民もいないしな」
唯「?」
梓「ゴホンッ! 単刀直入に言おう。そなたを王宮に迎えたい」
唯「……へ?」
梓「私の専属ペロリストの一人になってはくれないか? 唯」
唯「え、えええええっ!?」
和「国王ったらあなたのペロに夢中なのよ」
梓「こらあーーーー!」
和「すみません」
唯「あの……その……」
紬「そんな難しく考えなくていいのよ。梓ちゃんはただ唯ちゃんと一緒に居たいのよ」
梓「こらこらあーーーー!!」
紬「失礼しました」ペロッ
唯「私……」
梓「来てはくれないだろうか? 無論食べ物、水、住むとこまで全て面倒みよう」
唯「……私なんかで勤まるのでしょうか?」
梓「勤まるとも。いや、寧ろあなた以外には勤まらないと言ってもいい」
紬「まあまあ」
和「愛の告白ね」
澪「くっ……私は認めないからな」
梓「もうっ! ちょっと静かにしててよ!」プンプンッ
唯「ぷ……ぷふふ……あはははっ」
梓「?」
澪「貴様! 梓国王を笑うとは何事か!」
和「いいから少し黙ってなさい」
紬「うふふ」
梓「何がおかしい?」
唯「あはははっ! いひひっ! だって何か変なんだもん! 梓国王ってもっとお堅い人だと思ってました」
梓「そ、そうか? まあ民を守るために敢えて厳しくせねばならないこともある……」
唯「そのいつもとは違う一面を見せたと言うことは私は民ではないのですか?」
梓「ああ、唯はもう私達と同じ扱いだ。もし断られてもその方針を変えるつもりはない」
唯「そうですか……ありがとうございます……? なのかな」
梓「そろそろ答えを聞こうか」
唯「ではお断りします」
梓「えっ?」
澪「」チャキン
和「」スッ
紬「まあまあ、続きを聞きましょう。理由は何なのかしら?」
唯「私には妹がいます。命より大切な妹が。その妹を置いてここで暮らすことは出来ません」
梓「なら妹もここで住めばいい」
澪「国王! それはなりません!」
梓「な、なんでだ?」
和「そんなホイホイと王宮に入れては他の者に示しがつきませんからね。なら私も、自分も、と言い出すものが現れること必死です」
梓「むぅ……しかしだな」
唯「それに妹は……ペロペロ病なんです」
梓「なっ!」
和「なんですって!?」
紬「ペロペロ病……」
澪「……」
唯「だから妹をここには連れてこれません」
梓「……」
紬「待って唯ちゃん。ペロペロ病は確かに難病よ。けれどここならその進行を送らせることが出来るわ」
唯「憂草……ですよね」
紬「え、ええ。何故それを?」
唯「うちの妹はペロペロ病になってからもう3年生きています」
紬「3年……ですって?」
梓「なんだ? 凄いのか?」
紬「普通ペロペロ病に感染したら感染者は1ヶ月で発狂、または舌が動かなくなると言われています……それを3年なんて前例がないわ」
澪「こいつの家の周りには一面に憂草が生えていた。そのせいだろう」
紬「でも……それだけじゃとても3年なんて」
唯「それにペロペロ病は……移るから」
紬「えっ……」
唯「なにか?」
紬「な、なんでもないわ」
唯「というわけでお断りします。せっかくのお誘いを蹴ってしまってすみません」
梓「……」
唯「では、私はこれで」タッタッタッ……
和「……残念だったわね、梓。まあ仕方ないわ。他にも優秀なペロリストは沢山」
梓「ダメなんですッ! 唯じゃないと……! どうしても……!」
和「梓……」
澪「梓国王……」
紬「……」
唯「……」
澪「待て!」
唯「ん?」
澪「梓国王はああ言ったが私は許さない。いや、本当はお前がいなくなって清々するがそれで梓国王が悲しむならお前がいる方を私は選ぶ!
だから来い!」
唯「無茶苦茶だよ澪ちゃん」
澪「筋が通ってないのはわかってる……けど梓国王は私よりお前のことが気になってるんだ。
なら私は梓国王の騎士としてその手伝いをするしかできない……どうしても来ないと言うなら」シャキン
澪「決闘だ」
唯「……あずにゃんが好きなんだね」
澪「う、うるさい! 決闘だ決闘だ!」
唯「澪ちゃんがそれで納得するって言うなら……いいよ」
澪「ふんっ! この私に挑むとは、多少は腕に覚えがあるようだな」
澪「場所を変えよう、いつも訓練で使っているところがある」
唯「うん」
───
澪兵「なんだなんだ?」
澪「おい! 隊長がやり合うってよ! 他のやつも呼んでこい!」
澪「お前が負けたら問答無用で王宮に入ってもらう、いいな?」
唯「いいよ」
澪「心配するな。妹も必ずなんとかする。何なら一面憂草で敷き詰めた部屋を用意させる。
団子をもらった礼もしたいしな」
唯「あはは、ありがとう。でも負けないから大丈夫だよ」
澪「なにぃ? ふん……まあいい。その吠え面すぐに雨に濡れた仔犬の顔にしてやる」
澪「つかえ」
ドサッ
唯「いいよ、武器は使わない」
澪「……お前はどこまでも私をイラつかせるな。唯!!!」
澪が地を駆ける──
唯「あ、やっぱり一つだけ武器使うね」
もはや言葉などどうでもいいと言った具合にグンッとその距離は縮まる。
後三歩、いや、二歩か。時間にして1秒かからないだろう。
しかし、唯はゆっくりとこう告げた。
唯「舌だけは使わせてもらうから」
澪「!!?」
だが、もう遅い──
懐に飛び込んでいる澪が剣を振り上げる。
澪「安心しろ!!! 峰打ちで終わらす!!!」スッ
唯「」ペロ……
澪「なっ……!」
唯は舌を出したかと思うと、何故か次の瞬間澪の一撃を軽くかわした。
澪が驚くのも無理はない、これはもはや唯が避けたと言うより澪の剣が唯の舌を斬るのを嫌がった、と言った方が自然だろうか。
澪「このっ……!」
だがさすがはペロの三騎士剣者の澪、持ち手を変え、すかさず斬り上げの体勢に入った。
唯「ペロペロ」
澪「あっ……」
その隙を見逃さず唯は澪をペロペロ。
澪「このっ……!」
唯「」ペロ
澪「あれっ?」スカッ
唯「ペロペロ」
澪「ん……っ」
澪「このっ」スカッ
唯「ペロペロ」
澪「ひゃうんっ」
澪「」グター
唯「私の勝ちかな?」
澪「こんな……ことが……!」
澪兵「隊長が……負けた?」
澪兵「嘘だろおい……」
澪「認めるものか……! たかが舌一つに私が負けるなんて……!」
唯「梓国王は一ペロられでこの世界を平和にしたと聞きましたけど?」
澪「それは……」
唯「じゃあ約束通り帰るね澪ちゃん! また遊びには来るからね」ニコッ
澪「くっ……唯……あいつは何者だ」
澪「それにしても……いいペロペロだったな。人に舐められるというものはあんなにも気持ちがい……」
澪「///」カァァ
澪「私は何を言ってるんだ!!! バカッ!」
澪兵「ペロペロさせてください隊長!!!」
澪兵「お、俺にもお願いします!!!」
澪「ええい馬鹿者どもが! さっさと訓練するぞ! さっきのを見て私に勝てそうなどと思ったやつは来い!
その幻想叩き折ってくれる!
いいか! さっきのは半分の力も出してないんだからなっ! 本当だぞっ!」
紬「……」
和「覗き見とは関心しないわね」
紬「どうしても気になって……でもそれも確信に変わったわ」
和「もしかしたら彼女が?」
紬「ええ。なら梓ちゃんの求めようもわかる」
和「ペロられし者とペロりし者……二つが集いし時永劫の平和が訪れん、か。胡散臭いわね」
紬「それでも私達はそれに頼らないといけないの……この偽りの平和が終わる前に」
唯と憂の家
唯「ただいま~」
憂「お帰りなさいお姉ちゃん……ペロ」
唯「あれ? 憂喋れるようになったの?」
憂「うん。今日は何だか具合がよくて、ペロ。あんまりペロペロしなくてもいいみたいペロ」
唯「そっか! 段々良くなって来てるのかもね!」
憂「うんっ! これもお姉ちゃんのおかげペロペロ!」
唯「そんなことないよぉ。憂の頑張りとこの憂と同じ名前の子が憂を守ってくれてるからだよ」
憂「うんっ! ありがとう、憂」ニコ
唯「じゃあ今日は奮発してお姉ちゃん川にお魚を取りに行っちゃうよ!」
憂「私もいくー」
唯「危ないから憂は木の実を集めて! ね?」
憂「むぅ~お姉ちゃんがそう言うならわかったぁ」
川
唯「……」
唯「……グスッ」
唯「なんで……なんで憂が……」
唯「神様……私は憂の為なら何でもします! だから妹を、憂を助けてあげてください!」
そう願っても、現実は変わらない。
唯「……」
唯もわかっていた。
この目の前に泳ぐ魚達をただ見ているだけではどうしようもないことに。
唯「ペッ」
舌を丸め、乗せた枝を拳銃の様に打ち出す。それは見事泳いでいた魚を捉え水面にぷかりと浮かんだ。
唯「憂を助けるためなら……なんだって」
もう何年も前に誓ったことを再び言葉にする。
言葉にしなければ、揺らいでしまいそうな思いだった。
食事の後、唯は憂を外に連れ出した。
憂「お姉ちゃんどこ行くの?」
唯「ふふ、いいからいいから」
山の斜面をひたすら登る二人。山育ちだけあって山登りは二人とも得意のようだった。スイスイと登って行く。
いつもならペロペロし続ける為酸欠になりやすい憂も今日はほとんどペロペロしていない為、唯の手をかけるまでもなく登り切った。
憂「こんな上まで上がってどうするの?」
唯「まあまあ。えっと~獅子座があっちだから~もうちょいかな」
憂「ふぅん?」
唯「そろそろかな! あっちの方! よ~く見ててよ憂~」
憂「うん?」
納得しないまま唯に指差された方向を見続ける憂。
唯「さんはいっ!」
パァアアアアアア
憂「わぁ~なにあれ!」
唯「電気って言うらしいよ! これからは夜でも明るくなるんだって!」
憂「でんき?」
唯「私も詳しくは知らないけど火さんの親戚とかじゃないかなぁ?」
憂「そうなんだ~。綺麗だね~お姉ちゃん」
唯「うん、とっても綺麗」
電気の灯りに照らされて、闇夜の中一点、黄金が輝く。
もしかしたら二人は人類初の夜景を見たのかもしれない。
再び唯と憂の家
唯「憂、具合どう?」
憂草のベッドに横たわる二人が顔を向け合う。
憂「大丈夫だよ。もう全くペロペロしなくても良くなったみたい」
唯「……そっか! じゃあきっと治ったんだね! 良かったね憂!」
憂「うん。……治ったらね、ずっと……ずっと……お姉ちゃんに言いたかったことがあるの」
唯「なぁに?」
憂「お姉ちゃん……ありがとうって、大好きって」ぎゅっ
唯「憂……」
憂「いっぱいいっぱい迷惑かけてごめんねって。いっぱいいっぱい大変な思いさせてごめんねって……!」
憂「ずっと……ずっと……言いたかった」
泣きながらも笑顔を向け、そう言う。
唯「いいんだよ……そんなこと思わなくて。だって私はお姉ちゃんだもん。
憂のこと誰よりも大好きで大切に思ってるお姉ちゃん」
憂「うん…うんっ……!」
唯「これからもずっと一緒だよ、憂」
憂「うん。お姉ちゃん……。これからは……ちゃんと自分のことは自分でやるか……ら……」
唯「ふふ。舌を気にしなくて寝るのなんて三年ぶりだもんね。ゆっくりおやすみ、憂。
これからもっともっと楽しいこと二人でしようね。平和に……幸せに生きていこうね」
朝、それは光と共に幸せな空気も運んでくる。
そんな風がこの唯と憂の家にも吹いていることは間違いないだろう。
唯「美味しいね~憂~」
憂「今日はちょっと朝も奮発してみました。よく眠れたからかな? 凄いやるぞ~ってなって」
唯「偉いよ憂! こんないい妹を持ってお姉ちゃんは幸せだよ!」
憂「えへへ」
唯「じゃあお姉ちゃんも頑張って働いて来るかな」
憂「うん、頑張ってねお姉ちゃん!」
唯「よいこらしょっとぉ!」
荷を背中に担ぐとふらつきながらも体勢を立て直す。
憂「大丈夫?」
唯「へいきへいき! この憂草団子達が帰りにはフルーツや干し魚、もしかしたらもしかして木の椅子とかになっちゃうかもかもよ!?」
憂「そうなってくれたら私もお団子も嬉しいな」
唯「いってきまーす」フリフリ
憂「いてらっしゃ~い」フリフリ
最愛の妹に手を振りながら重たい荷物を担ぎえっちらおっちら。
唯「まずはデコ村から行こうかな」フンスッ!
唯が行おうとしてるのは物々交換である。
昨日憂と二人で作った憂草団子をいっぱいに詰めて村まで行き、その団子と何かを交換してくれませんか? と尋ねるのだ。
二人で暮らす唯達にとって必要なものは少なくない。
唯「やっぱり保存が効く干し魚がいいな~。ほっし魚~ほっし魚~」
干し魚の歌を即興で作りつつデコ村へと歩路を取る。
唯「フフ、相変わらず変な銅像」
「変だとはなんだよ変だとは。この村に喧嘩売ってんのか~?」
唯「あ、りっちゃん!」
律「よっ! 久しぶり。音沙汰ないからこっちから行こうとしてたとこだよ」
唯「えへへ、まあ色々ありまして」
律「色々ねぇ。ところでなんだその荷物? 体に不釣り合いもいいとこだな」
唯「よくぞ聞いてくれました! これは私と憂が作った憂草のお団子だよ!」
律「マジか! くれるのか?」
唯「甘いよりっちゃん、デコカレーより甘いよ!」
律「な、なにぃ!?」
唯「さあ! みんなを読んで! ここは物々交換と行こうじゃないか!」
律「なるほど、そう来たか! 等価交換はこの世界のルール、いいだろう!」
デコ1「デコが出てないおなごだと?」
デコ2「何が始まるんです?」
デコ3「いい匂いじゃあ……」
律「皆の者! 静粛にー! この人は私の恩人の唯だ!」
デコ4「おお、彼女が戦士律を助けてくれた恩人か!」
デコ2「一体何が始まるんです?」
デコ5「ありがたやありがたや……」
律「その唯からみんなに話があるんだ。聞いてくれ」
唯「こんにちは! ご紹介にたまわりました唯です! その件ではお世話になりました! デコカレーとっても美味しかったです!」
デコ6「綺麗なデコしてそうだなあの子」
デコ2「一体何が(ry」
デコ7「まありっちゃんのデコには敵わないさ。あれは村一のべっぴんデコだからな」
律「そこ! 真面目に聞けよ!」
唯「そのことは忘れてもらって、今日はちょっと行商人として来ました!」
デコ1「行商?」
デコ3「何を待って来たんだい?」
唯「これです!!!」バサッ
デコ長老「むぅ! これは!」
デコ長老婦人「憂草のお団子!」
唯「そうです! しかもこのお団子を作った子の名前も憂です!」
デコ婦人「あら、なんだか縁起がいいわね」
デコッパチ「こいつぁ縁起がいいや!」
律「というわけでこれが欲しいやつは物々交換だ! 家にあるもん持ってこーっい!
言っとくけど……これめちゃくちゃ美味いからな!」
わーわーわーわーデコわーわー
最後の言葉が止めとなり、蜘蛛の子を散らすように家に品物を取りに戻るデコ村の人達。
律「早くしないとなくなるぞ~ってな」
唯「ありがとうりっちゃん」
律「なに、事実を言っただけさ。宣伝費として一個もらうぜ」ヒョイ
唯「ふふ、どーぞ」
律「いただきまーす」モグモグ
律「うま……なにこれうま……えっ? てかデコカレーまずっ!
これに比べたらまずっ!」
唯「デコカレーも美味しいよぉ」
律「だ、だよな? いや、あまりの美味さに思わず村の特産品否定してたわ。こりゃ村長が食べたら残り少ない歯がとんじまうなwww」ニッ
唯「も~りっちゃんったら大げさだよぉ」
しかし、律の言葉通り試食で少し食べた村人達の反応は皆同じだった。
デコ「うまっ、なにこれ」
デコ「あっ……んんっ? うまっ」
デコ「これデコカレーまずくね?」
デコ「デコカレー完全敗北www」
聡「まず目で味わい、次は鼻で味わった後に一く」
律「さっさと食え!」ドンッ
聡「ゴホッ!ガッハッ! なにすんだよ姉ちゃん!」
律「お前がトロトロ食ってっからだよ」
デコ長老「……美味い」
デコ長老婦人「美味しいですわ」
唯「ありがとうございます。では早速物々交換の方に……」
デコ「これと交換してくれ!」
デコ「じゃあ俺はこれだ!」
デコ「ならば俺はこのデコを出そう!」
唯「デコはちょっと……無理かな?」
憂草団子は様々なものと交換されとうとう唯の持って来た背負い式の荷袋には入りきらないほどとなった。
唯「みなさん……ありがとうございます!」
明らかに不釣り合いな交換をあっち側から無理やり申し込んで来るもので唯もたじたじだった。
勿論唯が得な交換のは言うまでもない。
デコ「何言ってんだよ、俺らもう仲間じゃん?」
デコ「ほら、だからそのキューティクルなデコを……さ、ぺろんって」
唯「それはちょっと嫌です」キッパリ
デコ「あうううんっ」デコ「デコゲッ」
唯「ではそろそろ次の村に行かないといけないので」
デコ「え~もっといなよ~」
デコ「デコ~」
唯「すみません。妹が待ってるので早く回りって帰りたいんです」
デコ長老「ふむ。ならこの団子を作った憂という子に言っておいてくれまいか?
デコ村一同あなたのお団子の美味さにデコまげた、と」
唯「……」
律「……」
聡「……」
デコ長老「コホンッ! たまげた、と。また良ければ持って来てくれ」
唯「はい。必ず」
律「じゃあな~唯~」
聡「唯さ~んまた~」
デコ達「唯がデコと共にあらんことを」
デコ長老「……」
デコ長老婦人「……いいんですか長老? みんなであんなに騒がせて」
デコ長老「仕方あるまい。律の話では彼女は梓国王を倒せる唯一の者と聞く。なればこのぐらいは……な」
デコ長老婦人「普通に美味しくないですけどね、これ。作った本人はどんな味覚してるのやら」
唯「良かった、みんなに美味しいって言ってもらって」
唯「こんなに色々……嬉しいな」
唯「ほんとはもっと色々回るつもりだったけど今日はあそこにだけよって帰ろう」
唯「……みんな元気にしてるかな」
優しさ村
唯「久しぶりだな、この村に来るのも」
唯「私達が住んでた村……そして追い出された村」
優しい住人「お前……もしかして唯か?」
唯「おじさん! お久しぶりです」ペコリ
優しいおじさん「何しに来た……」
唯「えっ…?」
優しいおじさん「何しに来たって言ってるんだ!!!」
唯「私はただみんなに憂草のお団子を……」
優しいおじさん「憂だぁ? よくその名前が出せたもんだな! お前達のせいでこの村で何人ペロペロ病で死んだと思ってんだ! あ!?」
唯「だ、だから……ちょっとでもお詫びが出来たらなって……お団子を」
優しいおじさん「いるかこんなもの!!!」
唯「あ……」
唯が取り出したお団子を手で払いのける。
唯「憂のお団子が……」
優しいおじさん「疫病神が! 二度とこの村に足を踏み入れるな!」
優しい村の長老「なんだ、騒々しい」
唯「長老様……」
優しい長老「唯、か。ここには二度と来るなと言った筈じゃが?」
唯「な、中には入りませんから。ただこのお団子を食べてみてください!
憂と私で作ったんです! 気に入ってもらえたら毎日でも持って来ますから!」
優しいおじさん「こいつ毎日来る気か……! 長老! こんな疫病神とっとと追い出しましょう!」
優しい長老「待て。この村とてあずにゃん王国が出来た今、食料は分配性、余分なものは溜め込めなくなっておる。
それはいざというとき何もないと言うことだ。元とは言えこの村の住人がせっかく持って来てくれたのだ。ありがたく受け取ろうではないか」
唯「長老!」
優しい長老「ただし、美味ければの話だじゃがな」
そうして試食することになった憂草団子。
唯と他数人が見つめる中、試食会が始まる。
唯「どうぞ」
優しい長老「うむ」
優しい長老「」モグモグ
唯「(デコ村総出で美味しいって言ってくれたんだもん大丈夫だよ!
それに憂が作ったものが不味いわけ……)」
しかしそれは次の瞬間、裏切られることになる。
優しい長老「ペッ。ふざけおって。こんな草の味しかしない団子でその罪を許してもらおうなんぞ片腹痛いわ」ポイッ
唯「ああっ」
優しい長老「二度とここへは近づくな。呪われた姉妹め」
優しいおじさん「全く憂とつくものは何をやっても駄目だな」
唯「…なんで……どうして……」
捨てられた憂草団子を拾いあげ、かじる。
唯「……」モグモグ
唯「こんなに美味しいのに……なんであんなこと言うのかな」
唯「確かに私達はこの村に多大な迷惑をかけた……だから少しでも罪滅ぼしがしたいのに……それさえ出来ないなんて……」
『憂とつくものは何をやっても駄目だな』
唯「そんなことない!」
虚影を振り払うかのように首を振る。
唯「……きっと味の好みが違うんだ。次はもっと憂草の味を薄くしよう」
唯「大丈夫だよ……きっといつかみんなわかってくれるから……そしたらまたここで暮らそうね、憂」
所変わって王宮
梓「こらあーーー! なんだこの書類は! もっと詳しく明記させろ!」
和「は、はっ!」
梓「こらあーーー! 最近の兵はたるんでいるぞ! もっと鍛えさせろ! あんなもので王国が守れるか!」
澪「はっ! 申し訳ございません!」
梓「こらあーーー! もっと右の方もちゃんと掃除せんか!」
紬「今からやることころ梓国王」ホジホジ
使用人1「荒れてますわね国王様」
使用人2「何でも意中の人を手に入れられなかったのが原因だとか」
使用人3「確か王宮に呼ばれたのに断ったのでしょう? バカな人もいるわね。
このあずにゃん王国は世界の中心、更にその王宮ともなればこの黄金のような人生を約束されたも同然なのに」
梓「こらあーーー! 口じゃなく手を動かせ!」
使用人123「はっ、はいっ!」
梓「全く……」
紬「やっぱりあの子が気になる?」
梓「……うん」
紬「ふふ、私達のペロは飽きられちゃったかしら」
梓「そんなことはない! そんなことはないけど……ただ……優しかった、暖かかったんだ、唯のペロは」
紬「そう」
梓「あんなに優しくペロられたのは初めてだった……まるでお姉ちゃんみたいだったなぁ……」ポケー
紬「あらあら。妬けちゃうわ」
梓「あ、ちっ、違うぞ! そういう意味じゃなくてだな!
あれにペロられたら執務が捗るな~っていうか! ああもうっ!」
紬「はいはい♪」
梓「無理なのかな……ここに来てもらうことって」
紬「……」
梓「妹さんが一緒じゃないといけなくて……その妹さんはペロペロ病で……」
梓「私の独断で民に害をなすことはあってはならない……わかってはいるのだ、けど……」
紬「ペロペロ病は、移らないの」
梓「なっ! 本当か!?」
紬「ええ。最近わかったんだけどね。最初は広まり方から見て伝染病の類いかと思ってたのだけどどうやら違うみたいなの」
梓「じゃあ早くそれを伝えに」
紬「駄目です、国王」
梓「なんで!!!」
紬「……あの子は、村外追放を受けてます」
梓「なっ……」
紬「恐らく妹さんがペロペロ病を発症したからでしょう」
梓「でも移らないなら……いいじゃないか……こっちでちょっとぐらいいい暮らしをしても」
紬「しかしそれを見た唯ちゃんを追い出した村民はどう思いますか?
自分達がのけ者にして追い出した子達が自分達より格段にいい暮らしをしている……なんてきっと苦虫を噛み潰す思いでしょう」
梓「でも……」
紬「……デコ村に動きがあるのはご存知ですよね?」
梓「ああ、何でも村同士結託しているとか」
紬「もしここで唯ちゃん達を王宮に迎え入れればたちまち噂は全土に広まるでしょう。当然それは唯ちゃん達が住んでいた村にも届く。
そうしたらあずにゃん王国への反感が高まることは間逃れません。もしそれでデコ村に協力して攻めて来たりすれば私達の作ってきた平和は……終わりを迎えます」
梓「……」
紬「しかし唯ちゃん一人なら問題ありません。選民で梓国王を喜ばせたと言う噂は既に伝わってるはず。
ここで専属ペロリストとして王宮入りしてもなんら不思議はないでしょう」
梓「でも……きっと唯は来ない。あの目は何か大切なものを持ってる目だ。
よほど妹さんが大切なのだろう……」
紬「どうしてもと言うのであれば……アレを」
梓「!? そんなことが出来るか!! 唯の妹だぞ……!」
紬「梓国王、それが唯ちゃんの為でもあるんです」
梓「しかし……」
紬「多分もう長くは持たないでしょう……。どのくらいの進行状況にあるかはわかりませんが……ペロペロ病の者がペロペロをやめた時、それは死ぬ一歩手前。そうなってはもう……」
純「……」
澪「おい貴様! 何をしている」
純「は、はっ! 国王に書き直しを命じられた書物を持って参りました!」
澪「そうか。毎回手をかけさせて悪いな」
純「いえ、とんでもないです」
モップのような頭の中から書物を取り出し渡す。
澪「そう言えばお前はモップ族だったな」
純「はい……」
澪「私は見ての通り髪長族だ。ペロペロ大戦の折りには色々あったが……今はそんなこと忘れてこうして同じ国王の元仕えている。
平和になったものだ。これも梓国王のおかげと言うべきか」
純「……そうですね」
澪「……うむ、確認した。これなら梓国王も納得するだろう」
純「はい」
澪「では通常業務に当たってくれ。今日もペロ神の加護があらんことを」
純「……澪様!」
澪「ん?」
純「あの……唯って子、王宮入りするんですか?」
澪「」チャキン
それを聞いた刹那──
純の喉元には澪の剣が添えられていた。
純「ひっ」
澪「どこで聞いた」
純「先ほどこれを持って行こうとしたら梓国王と紬様の声が耳に入ってしまって……お許しくださいませ」
澪「……ふんっ、まあいい」チャキン
純「っはあ……」
澪「何故かはわからないが梓国王はやけにあいつにご執心でな。何とかして王宮入りさせたがっている」
純「なんと……一民が本当に王宮入りを」
澪「あんなやつのどこがいいんだっ! 時間にルーズで通貨も知らない田舎者が!」
純「はぁ」
澪「確かに……気持ちいいペロだったのは認めるが……」ボソボソ
純「はい?」
澪「何でもない! まあ私達はただ国王の意のままに従うだけだ」
純「……不思議に思ってたんですけど、澪様達三騎士は他の方達みたいに王国が大事って言うより国王様が大事って感じがしますよね」
澪「国王あっての王国だろう。どちらも一緒だ」
純「それはそうなんですけど……」
澪「私達はあの戦争で敵同士だった……それをあの人に救われたんだ」
純「えっ」
澪「おっと稽古の時間だ。この話はまたいつか、な」
純「はい。是非聞かせてください」
書物庫
和「これでもない……あれでもないわね……」
賢者の和の兵「どうかされましたか?」
和「いえ、ちょっと調べものをね」
和兵「何の書物で?」
和「ペロの魔術師について調べているのだけれど……」
和兵「ああ、伝説の魔法使いですか。あれってほんとに実在したんですかね?」
和「火のないところに煙は立たない。書物も同じよ。存在しないものが書物になったりしないわ。
まあ中には見間違いが伝説と化した、なんてこともあるけどね」
和兵「ペロの魔術師もその類いじゃないですか? やれ一舐めで家が建ち~やれ二舐めで雨が降り~やれ三舐めで王宮の出来上がり」
和「ペロの魔術師、18ページ目の第二節ね」
和兵「ペロペロして王宮が立つなら私達は苦労しませんよね」
和「そうとも言えないわ」
和兵「へ?」
和「実際に梓国王はペロらせることであの長く泥沼と化していた民族戦争を終わらせた。ペロには何か特別な力がある気がしてならないのよ」
和兵「そんなもんですかね」
和「(あの伝承録にペロの魔術師が度々出てきていた。永劫の平和を得るにはまだ一つピースが足りない……そんな気がするのよね)」
和「さ、仕事するわよ」
和兵「はーい」ゴソゴソ
和「梓……私達に隠し事なんて、してないわよね?」
和「ううん、そんなことするわけないわ。だって同じ学校でずっと一緒に育った私達だもの……」
澪「1!2!3!」ブォン
澪兵「ペロ!」ブォン
澪「4!5!6!」ブォン
澪兵「ペロ!」ブォン
澪の掛け声に合わせて素振りし続ける澪の兵隊達。
澪「後3000回!」
澪兵「ウッス!!!」
澪「(邪念は捨てろ、煩悩は消せ! ただ私は梓の剣となりこの国を守る、それだけでいい)」ブォン!ブォン!
澪「(他のことは考えるな! 梓が誰を好きになろうと私には関係ない……!)」ブォン!ブォン!
ポツ、ポツ、と、澪の長い黒髪に雨が当たり、弾く。
澪兵「隊長雨ですよ! 中に戻りましょう!」
澪「私はいい。お前達は先に戻っていろ」
澪兵「隊長~」
澪「」ブォン!ブォン!ブォン!
剣を振る度雫が飛び、また雨となって地面に落ちる。
澪「迷うな! 迷うな! 迷うな!」ブォン!ブォン!ブォン!
澪「2998……2999……3000!」ブゥン!
ザシュッ
3000回振り終わると同時によろけ、剣を地面に穿ち体を支える。
澪「っはあ……はあっ……」
外は雨で寒気が伴っていると言うのに、澪の吐く息はいつまでも熱気を保っていた。
まるで己の無力さを吐き出すように大きな息を繰り返す。
澪「こんなことしか出来ない私を許してくれ……梓」
空を見上げる。
澪「雨か、」
飛沫に遮られながらも薄曇りな空をただ、見上げる。
澪「……嫌な雨だな。何も起こらないといいが」
澪「この世界がいつまでもいつまでも……平和でありますように」
そう言い、最後にもう一振り──
剣は一瞬だけ雨を斬り裂いた。
そう、ほんの一瞬だけ。
唯と憂の家
唯「わわわっ。凄い雨だよ! てぃへんだてぃへんだ~」
手を傘にしながら自らの家に飛び込む。
唯「すぐさま浸水箇所を確認の後、このデコ村のみんなにもらったお皿で防ぐよ!」
早い話が雨漏りである。
大樹の下にあるとは言え全く雨が降りてこないわけではない。
大きく長い葉っぱを屋根にしているこの家にとって雨は大敵なのだ。
唯「とう!」ポンッ
唯「てや!」カンッ
唯「よいしょっ!」テンッ
唯「何だかいい音だね~。ね、憂」
憂「……」
唯「う……い?」
ベッドの方を振り返ると、舌をだらしなく出したまま横たわる憂の姿があった。
憂「おはぁえり……おねへひゃん……」
唯「憂!? 大丈夫!?」
憂「だいりょうぶだよ……おへぇしゃん」
唯「憂……舌が」
憂の舌の先端が紫色に変化し、一目で壊死しかけているのがわかった。
唯「なんで……どうして……」
憂にしがみつくように目を伏せる。
憂「おねへちゃん……泣かないで」
唯「これからなのに……何もかも……まだまだ一緒にしたいこといっぱいあるのに……!」
憂「だいひょうぶだよ……わたひがひなくひゃっても……おねへちゃひゃんはだいひょうぶ」ニコ
唯「大丈夫じゃないよ!!! 全然大丈夫なんかじゃない!!!」
ブンブンと首を振り、憂に泣きつく。その頭を憂が優しく撫でた。
憂「ひっぱい迷惑はぁへてごめんへ」
唯「そんなことない……」
憂「こへから返ひたかったふぉに……ごめんへ」
唯「そんなことしなくていいから……ただ、側にいてくれるだけでいいから……憂ぃ」
憂「ごめんへ……おへえひゃん……だめないもうとで……ごめんね」
唯「っ!!!」
ふっ、と顔をあげ、憂の顔を見る。
その衝撃で目にたまっていた涙が振り払われ、中空の雨と混じった。
唯「うい……?」
憂「……」
唯「ういい?」ユサユサ
憂「」
唯「ういいいいいいっ!!!!」
梓「はあ……」
紬「ペロペロ」
梓「ふぅ……」
紬「ペロペロ」
梓「ほぉ……」
紬「もう、梓ちゃんったらすっかり上の空ね。せっかく私がペロペロしてるのに」
梓「ごめんね、ムギ先輩」
紬「いいのよ。自分の気持ちに嘘はつけないもの」
梓「私は愚かな王です。平和の為と称してはいますが端から見れば狂人に変わりはない」
紬「それは……!」
梓「わかってます、必要なことですから。でも……そこで私は圧し殺せないんです、自分を」
紬「……」
梓「王に感情はいらない……ただ平和に尽くせばいい。そうしてまた新たな平和に潰されて行くなら……それでもいいです」
紬「梓ちゃん……」
梓「それでも私は求めてしまう、唯を」
────貴様!!! なんのつもりだ!!!
────お願いです!!! この子を! 憂を治してください!!!
紬「表が騒がしいわね」
梓「何かあったのかもしれない。行こう」
全裸の体に金のバスローブを纏い、部屋の出口へと向かう梓。
紬「……もしもの時は、覚悟しないといけないかもね」
小さな声で呟いた後、それに紬も続いた。
梓「何事だ! 騒々しい!」
澪「はっ! 実は……」
唯「この子を助けてください!!! その為ならなんだってします!!! だから……だから……!」
梓「唯……それと……」
唯の背に抱かれていたのは唯にそっくりな女の子、憂だった。
二人とも雨に打たれびしょびしょになっている。
唯「憂です、国王様。どうか……どうか憂を……!」
ひたすら頭を下げ、懇願する唯。
澪「ええい見張りは何をやっている!!! ペロペロ病の者を王宮に入れるなど前代未聞だ!!!
即刻ペロ跳ねの刑にしてやる!!!」
和「さっき見てきたら全員気絶していたわ。あなたが敵わないんですもの、無理もないわ」
澪「くっ……そんなことは……」
唯「罰は後でいくらでも受けます! ですから憂を……」
梓「……紬、治せるか?」
紬「見たところ壊死がかなり進行しています……もしかしたら手遅れかもしれませんが……」
梓「治療出来る限りしてやってくれ」
紬「わかりました」
澪「国王!!!」
唯「ありがとうございます国王様!!!」
和「梓国王……! もしこの王宮にペロペロ病が蔓延したら……!」
梓「安心しろ。ペロペロ病は移らない。伝染病じゃないんだ。紬がそう言っている」
和「ですが……!」
梓「ならお前はもうここにある薬の一切を使うな。紬を信用出来ないのだろう?」
和「ぐっ……わかりました。国王の判断に従います」
ざわざわ……ざわざわ……
梓「病室に連れていけ」
紬「はっ! 手伝ってくれるかしら?」
純「は、はい!」
澪「私は……認めない」
和「(ペロペロ病が移らない? 何故そんな大事なことを二人は黙っていたの……?
どうしてよ……梓、ムギ)」
唯「良かっ……た」パタリ
梓「おいっ! 大丈夫か!?
救護班! この者も病室に運べ! 急げ!!!」
ざわざわ……ざわざわ……。
唯「(憂……また一緒に……お団子……作ろう……ね)」
────
────
唯「ん……」
和「あら。やっと目が覚めたのね」
唯「あなたは?」
和「自己紹介してなかったわね。賢者の和。澪と同じく三騎士よ」
唯「澪ちゃんと同じ……」
唯「そういえば憂はっ!?」
和「心配しないで。あの後何とか一命は取り止めたわ」
唯「よかっ……た……」ふにゃあ
和「あなたもかなりの高熱だったんだから無理しないの」
唯「高熱?」
和「あなたここにきって三日も寝込んでたのよ。紬がいなければ死んでたわ」
唯「ありがとう……ございます」
和「まあ不本意ながら王宮入りしたんですもの。専属ペロリストなら立場も五分、歳も同じくらいだし敬語は使わなくていいわよ」
唯「……?」
和「あなたはこれから王宮で過ごしてもらうわ。梓国王のペロリスト兼使用人としてね」
唯「へ? えええええっ!?」
────
梓「よってここに王宮入りすることを認める。あずにゃん王国第一代国王、梓」
パチパチパチ
唯「どもども~」
澪「ぐぅぬ」
和「まだ唸ってるの? もう決まったことなんだから」
澪「わかってる!!!」
和「はあ……そんなにあの子が嫌い? 話してみれば気さくでいい子よ?」
澪「別にあいつが嫌いなわけじゃない……。ただ……」
和「ただ?」
澪「何でもないっ!」
和「はあ~……」
こうして唯はあずにゃん王国の専属ペロリスト兼使用人として王宮入りを果たした。
それがどんな結末を呼ぶことになるかも知らずに……。
────
翌朝から唯は使用人の仕事を覚えるために奮闘していた。
唯「なんか私だけふりふりが三割増しなような……」
王宮の使用人服に身を包んだ唯が自分の体を見渡しながら呟く。
純「あなたは国王のお気に入りですからね。ちょっと贔屓されてるんでしょう」
唯「何かみんなに悪いな~」
純「安心してください。専属ペロリストなら当然の処置ですから。こうして私なんかが教えてること自体がおかしいんです」
唯「ふ~ん」
純「ではまず掃き掃除から行きましょうか」
唯「よいしょっ! よいしょっ!」
純「……なにやってるんですか?」
唯「何ってモップかけを……」
純「なら何で私を持ち上げようとしてるんですか!」
唯「モップじゃないのっ!?」
純「違います! いや合ってますけどここは否定させてもらいます!」
純「ちゃんとこういう道具があるんです。こっちを使ってください」
唯「は~い。おお~こっちは純ちゃんと違ってかる~い」
純「箒と比べたらそりゃ重いですよ……(疲れるな~この人」
純「掃き掃除、拭き掃除と終わったら次は中庭の手入れをします」
唯「なっかにわなっかにわ~」
純「ここに咲く百合はとても綺麗なんですよ」
唯「ほへ~」
純「虫に食われたり枯れかけた百合は摘んでこの篭に入れてください」
唯「摘んじゃうの?」
純「はい。見た目も綺麗じゃないし国王がそれを見て遺憾になられたら大変でしょう?」
唯「……見た目が悪くたって……同じ花なのに」
純「? 何か言いました?」
唯「なんでも。じゃあ摘んでくるね!」タッタッタッ……
純「……そう、私達はこの枯れた花も同然です。それでも……捨てられるだけじゃ終わらない」ギリッ
純「……大体終わったかな。あの人はどこまで行ったんだろ……あんな奥整えたところで国王は見ないのに」
純「はあ……」
憂「」チョンチョン
純「ん?」
純が振り向くとそこにはニコリと笑った憂が立っていた。
純「あなたは……唯さんの妹さんだよね」
憂「」コクコク
純「治療室を出ていいんですか? いくら国王がペロペロ病は移らないと断言してもやっぱり周りはよく思わない人がたくさんですよ」
憂「」シュン……
純「お姉さんに用事ですか? なら呼んで……」
憂「」ギュ、フルフル
純「お姉さんは呼ぶなって?」
憂「」コクコク
純「はあ……なら何の用?」
そう言うと憂は純の手を取り手のひらに文字を書く。
純「あ、り、が、と、う?」
憂「」コクコク
純「私が病室まで運んだこと覚えてたの?」
憂「」コクコク
純「もしかしてわざわざそれを言いに抜け出して来たの?」
憂「」コクコク
純「……そりゃどうもありがとう。でも家から運んで来たお姉ちゃんの方がずっとずっと大変だったと思うよ」
憂「……」
純「ん? も、う、め、い、わ、く、か、け、た、く、な、い?」
憂「」コクコク
純「そっか……あんたも色々あるんだね。私も色々さ、色々板挟みになってる」
憂「……」
純「元気だして、か、ありがと」
純「そろそろお姉ちゃん帰って来るかもよ?」
憂「」コクコク
純「またね、か。確か憂だっけ? 私は純、よろしくね」
憂「」ニコニコ
純「じゃあまたね、憂」
憂「」コクコク
純「憂か……いい子だったな。ペロペロ病なんかにならなかったらきっと仲良くなれたのに……」
純「紬様の話じゃ後持って数日……仲良くなってすぐ死んじゃったら悲しいよ……だからごめんね、憂」
純は憂との思い出を捨てるように崩れかけた百合の花々を焼却場に捨て去った。
そして夜、唯は梓の部屋に呼ばれた。
コンコン
梓「入れ」
唯「おじゃましま~す」
梓「よく来たな。まずはこれでも飲め」
そう言うと梓は曇りがかった緑色のボトルをグラスに傾ける。
唯「お酒?」
梓「いや、ぶどうを搾ったジュースというものらしい。果実を潰すなどもっての他だと持って来た時はコックを怒鳴り付けてやったが……飲んでみるとこれが案外美味くてな」
唯「ふふ、そうなんですか」
梓「ああ。その後澪と一緒に謝りに行ったよ」フフフ
唯「ふふふ、国王様でも謝るんですね」
梓「まあ、な。それじゃ乾杯と行こうか。音頭は任せる」
両者グラスを掲げ、見つめ合う。
唯「コホンッ! では、不肖ならが私が音頭を取らせていただきます」
唯「あずにゃん王国の繁栄と、この世界がいつまでも平和に、幸せでありますように」
梓「……ああ」
「乾杯」カラン
唯「」ゴクゴク……
梓「」ゴクゴク……
唯「ぷは~」
梓「ぷは~」
唯「美味しいですね国王!」
梓「ああ……」
唯「国王?」
梓「その国王というの、やめろ」
唯「ならなんて呼べば……?」
梓「あ、あずにゃんでいい。昔はみんなからそう呼ばれていた」
唯「あずにゃん……なんか可愛いですね」
梓「後敬語もいい。私の方が年下だ」
唯「それは……」
梓「二人きりの時だけでいいんだ」
唯「……わかったよ、あずにゃん」
梓「」パァァ
梓「もっとジュース入りますか? 唯先輩」
唯「先輩?」
梓「目上のものを下の者が呼ぶとき敬意を込めて先輩、とつけるらしいです。私の学校でもそうでした。だから、唯先輩」
唯「なんか先輩っていい響き~。偉くなった感じがするよね!」
梓「気に入ってもらってなによりです」
梓「二人きりの時は身分関係なく接してください。その方が私も嬉しいです」ニコリ
唯「はうっ」
梓「どうかしましたか?」
唯「その……国王……あずにゃんってニコっとしたら凄い可愛いなって」
梓「なっ……!」カァァ
梓「そんなこと……」
唯「いつもニコニコしてたらいいのに。勿体無いよ」
梓「……私は国王ですから。感情は必要ないんです。ただ、平和の為になれば」
唯「……悲しいね」
梓「それが国王たる者の定めです。さ、もう一杯どうぞ、唯先輩」
そしていよいよ……唯の専属ペロリストとしての初仕事となる。
唯「あずにゃん、そろそろ」
梓「……はい」
そう言うと梓は着ていた物を一枚づつ脱ぎ、丁寧に折り畳んで床に置く。
梓「よ、よろしくお願いします……唯先輩」
唯「任せといてよ!」
胸と秘部を隠しながら梓はベッドへと歩き、俯せになって横たわる。
唯「綺麗な体だね、あずにゃん」
梓「///」カァァ
それに乗り掛かるようにして唯がゆっくりと舌を梓の肩の辺りに滑らせた。
梓「ひゃっ」
唯「ペロペロ」
あずにゃん王国では平和の祈願として国王は三日に一回は全身をペロられなければならない、という掟がある。
ペロらせて終わった戦争の奇跡にあやかったものだ。
この平和がいつまでも続くように、彼女はいつまでもペロられなければならない。
ペロの鎖に囚われているのだ。
唯「ペロペロ」
梓「んっ……」
唯の生暖かい舌が梓の腰辺りまで下降する。
細く、少し背骨が浮き出ている背中を更にペロる。
唯「ペロペロ」
梓「にゃっ……」
そして唯の舌は小さく丸みを帯びたお尻へと到達する。
唯「ペロペロ」
梓「んっ……んっ……」
ペロる度にプルンと唯の舌を押し返す程の弾力。
唯が最高のペロリストとしたら、梓はその対極、最高のペロラレストだろう。
ペロり、ペロられ、お互いの興奮を高めて行く……。
唯「……ペロペロ」
しかし、唯の本当の気持ちはここにはなかった。
梓「……」
背中やお尻、太もも、足を一通り舐め終えた唯は「ふぅ」と一息をついた。
これで自分の仕事は終わりだと言わんばかりに。
そう、彼女にとってこれは仕事であって私欲ではない。
憂を助ける為にやっていることだ。
勿論嫌々やっているわけでもない。唯の性格上助けてもらった恩義は全力で返す、そういう子だろう。
唯「お疲れさまでした~あずにゃん」
しかし、それでは一線は越えない。
梓から言えば、越えてくれない、だろうか。
梓「前も……お願いします。唯先輩」
唯「えっ? あ、あずにゃん!? ダメだよ! 色々見えちゃってるよ!」
仰向けになった梓に対し手で目隠しを作りながら反応する唯。
梓「唯先輩……」
梓は少し起き上がると、そのままの姿で唯を抱き締めた。
唯「あず……にゃん?」
梓「私……どうしようもなく寂しいんです。みんな国王としての私しか見てくれない、興味がない」
梓「だから私もそう在ろうとしたんです……ただ平和に尽くす国王に。 でも……」
唯の肩に梓の涙が零れ落ちる。
梓「駄目でした……。もう耐えられないんです……だからずっと誰かにすがりたくて……わがまま言いたくて……」
唯「あずにゃん……」
梓「他のみんなに心配かけないようにすると……一人でいる時感情が溢れて零れちゃうんです……」
唯「よしよしだよ、あずにゃん」
梓「唯先輩……国王の命令でも何でもいいです……お願いだから側にいてください」
梓「大好きなんです……唯先輩が。あの時ペロられた時からずっと……」
唯「……私はずっと一緒にいるよ。憂も」
梓「……」スッ
憂の名前が出た途端梓は唯から離れる。
梓「やっぱり一番は妹さんなんですね……」
唯「……うん、ごめんねあずにゃん」
梓「……」
一瞬泣きそうな顔になりながらも、止める、ギリギリ笑顔と呼べる表情を。
梓「憂、良くなるといいですね」ニコリ
唯「うん。そしたらみんなでピクニックいこっ!」
梓「みんな?」
唯「私に憂にあずにゃんに澪ちゃんに和ちゃんに……後はあの眉毛が可愛い子とモップ頭の純ちゃんと後はデコ村のりっちゃん!」
梓「王宮の管理職全員じゃないですか。全くもう……でもいつか行ってみたいですね」
唯「うんっ!」
────
それからしばらくは平和な日が続いた。
途中澪にまた決闘を挑まれたり、和の研究の為にメガネ谷まで花を摘みに行ったり、王国の中で買い物したりなどもあったが、基本的には平和であった……。
しかし、未だに憂には会えず仕舞いでいた唯は、ひっそりと仕事を抜け出して憂のいる病室へと足を運んだ。
唯「もしも~し」
シーン……
唯「誰もいませんかー?」
シーン……
唯「憂~?」
シーン……
唯「いないのかな? よいしょっと」
中庭に面した病室の窓から中に侵入する。
唯「憂~? どこ~?」
そう、ここに憂はいない。
では肝心の憂はどこに言ったのかと言うと……。
憂「」ニコニコ
純「はあ、またあんた抜け出して来たの?」
憂「」コクコク
純「まあいいけどさ。私も暇だしね~。あんたが来た時に降った雨以来降らないからさ。百合も元気いいよ」
憂「」ニコニコ
純「……///」
純「あんたがそうやって笑ってるだけで何かこっちまで嬉しくなるよ。何がペロペロだよ。あんたの笑顔の方がよっぽど平和に繋がるっての」
憂「」フルフル
純「そんなことないって? まあ現にペロペロさせて戦争を止めたって言うんだからバカには出来ないけどさ。
それでも私はあんたの笑顔の方が好きだよ」
憂「」ニコニコ
純「ん? ういって呼べ? ……わかったよ、憂」
純「憂、お姉ちゃんには会わなくていいの?」
憂「……」
純「会ったらいいじゃん。きっと唯さん憂のこと心配してるよ」
憂「……」
純「会って、また、心配かけたくない?
私のことは、忘れてほしい?」
憂「」コクリ
純「はあ……そんな独りよがりな考え方してちゃ駄目だよ?」
憂「?」
純「人はね、自分が良くってもそれが相手に伝わらなきゃ駄目なの。わからないの。
だから唯さんが憂のこと気にかけてる以上憂にはそれをどうするかちゃんと言わなきゃいけない義務があるの」
憂「……」
純「勿論全く興味がない人間どうしならそんな義務ないよ? というよりこんな話にもならない。
けどさ、二人は姉妹なんだから。お姉ちゃん好きなんでしょ?」
憂「……」コクリ
純「じゃあちゃんと会って言いたいこと言いな。お姉ちゃんの為にも、憂のためにもね」
病室
唯「憂や~い。出ておいで~」
紬「憂ちゃんならお出かけ中よ」
唯「あ、へんなまゆげの人!」
紬「紬よ。ムギでいいわ。よろしくね唯ちゃん」
唯「よろしくムギちゃん! それで憂がどこ行ったか知らない? ずっと会ってないから会いに来たんだぁ」
紬「……唯ちゃん、ちょっとお話をしましょう」
唯「でも憂が」
紬「待ってたらきっと帰ってくるわ。それに憂ちゃんのことについての大事な話だから」
唯「……うん、わかった」
紬「唯ちゃんはペロペロ病についてどれぐらい知ってるの?」
唯「……昔長老様の本でちょっと読んだぐらいです」
紬「そ……。知ってるとは思うけどペロペロ病はかなりの難病よ。
一度かかって治ったって記録はないわ」
唯「だから諦めろって言うんですか? 憂を」
紬「……正直に言うわ。憂ちゃんは持って後数日。というより今までが奇跡的過ぎたのよ。
三年も生きられたことが……」
唯「……あの時憂を助けてくれたことには感謝しています。だから私はこうして恩返しに働いてます。
でも……そんな諦めてしまったような言い方をするあなたのこと、嫌いです」
紬「嫌われてもいいわ。それが仕事だもの。
ただ現実は理想のようにはいかないわ。それを知ってもらいたくて話したの」
唯「……憂は死ぬんですか?」
紬「……可能性は高いわね。もう壊死がかなり進行してるわ。
あのままだと後数日で喉から腐りだして苦痛の中で死んで行くでしょう……」
唯「そんな……ことって……」
紬「それが嫌なら安楽死をお勧めするわ。毒薬を注射すれば眠るように逝ける」
唯「そんなことさせないっ!!!」ガバッ
紬「唯ちゃん……くるし……」
唯「もし憂にそんなことしてみろ……殺すから……全員……この王宮の人達全員っ!!!」バッ
紬「っはあ……はあ……ならあなたは憂ちゃんに苦しんで死ねと言うの!?」
唯「違うっ! 憂は私と生きるんだ! ずっと一緒に!」
紬「甘えないで! 言うだけなら誰でも出来るわ! 唯ちゃんはただ嫌だからって駄々を捏ねてるだけよ!」
唯「それでも……私は憂と一緒にいます。安楽死なんてさせないからっ……!」タッタッタッ……
紬「唯ちゃん!!!」
紬「……はあ。憎まれ役は大変よね、梓ちゃん」
紬「もっとも梓ちゃんはこの非じゃないけど……ね」
紬「どうしても死なせたくない……。なら、もう………私達で…………」
紬「……ごめんね、唯ちゃん。これも憂ちゃんの為なのよ」
百合園
純「じゃあ次会ったらちゃんと言うんだよ?」
憂「」コクコク
純「ありがとう? ううん、どういたしまして」
純「じゃあ私はこれで」
憂「」フリフリ
王宮の中に戻って行く純に笑顔で手を振りながら見送る憂。
憂「……」
どこか視点を落としたまま、憂もゆっくりと歩き始めた。
「うううううううううううううううう」
憂「!?」
火事が起きた時に知らせる為の音のような声が聞こえる。
「いいいいいいいいいいいいいいいい」
憂「!!?」
その声はどんどん憂に近づいてくる。
唯「どびっしゃ~んっ!」ぎゅむ
憂「んむ」
抱きつかれた衝撃で音に近い声が漏れる。
唯「会いたかったよぉ~妹よぉ~」スリスリ
憂「……」
ただされるがままに頬擦りされる憂。しかしどこか嬉しそうな表情だった。
唯「うい? 寂しかった」
憂「……」フルフル
唯「えぇ~……」
憂「……」
唯「寂しかったのはお姉ちゃんだけじゃない? って? 憂も言うようになったね!」
憂「……」コクコク
唯「もう子供じゃないんだからって? そっか、憂もう17だもんね……私の方がずっと子供だよね」
憂「……」
唯「憂。また一緒にあそこに戻ろ」
憂「……」
唯「ここにいたら何されちゃうかわからないから。ね?」
憂「……」
唯「帰るなら自分一人で帰って……って?」
憂「」コクコク
唯「……そんなこと言わないでよ。私は憂の為に……」
憂「……」
唯「ここなら食べ物にも困らないし食べやすい料理をわざわざ作ってくれる? 食べやすい料理か……私も頑張るから一緒に帰ろ!」
憂「……」
唯「それだけじゃない? ここは雨漏りもしなくてベッドも綺麗でよく眠れる?
そう来ましたか……う~ん……なら帰ったら屋根とベッドを改装しよう!
お姉ちゃんうんといいの作るから! ね?」
憂「……」
唯「……ここならもうお姉ちゃんに頼らなくていいから……お姉ちゃんの機嫌伺うことなくていい?」
唯「……憂、それ本気で言ってるの?」
憂「……、……」コクコク
唯「……そっか。ならもう私は好きにしていいんだね?」
憂「……」
唯「お姉ちゃんのやりたいことして、好きに生きたらいい? 私のことはほっといて?」
唯「わかったよ、憂。そこまで言うなら好きにさせてもらうからねっ!」
憂「……」
唯「……」
憂「……」
唯「……」
憂「……?」
唯「……」フンスッ!
憂「……」
唯「なにやってるのって? 当然好きにさせてもらってるんだよっ!」
憂「!!」
唯「憂が私を嫌いでも、私は憂が好きだから。やっぱり離れられないよ。
嫌われたら、また仲良しになるまでずっと側にいるもん。絶対いるもん」
憂「……ぉねぇひゃん……」
唯「だから一緒に帰ろ、憂。二人でゆっくり暮らそ? ね?」
憂「…………」
唯「憂じゃない、私が憂に側にいてほしいの。これは私のわがままなの。憂はそれに付き合ってくれたらいいの。
迷惑かけてるなんて思う必要ないんだよ!」
唯「憂、大好きだよ。一番一番、大好き」
憂「……」コクリ
必死に涙を堪えながら、憂も頷いた。
こうして、二人はあの家に帰ることにした。
もう一度、二人で暮らすことを夢見て。
その夜、唯は一足早くあずにゃん王国を抜け出し、我が家へと足を運んでいた。
憂のいる病室は夜見張りがついており抜け出せないが、朝方の交代の際に数十分無人の状態がある、
と、使用人の先輩である純から聞いた為、実際に憂を連れ出すのは朝方となったのだ。
二人でここを抜け出すと言った時、純は快く王宮からの脱出方法を唯に教えてた。
今こうして誰にもバレずに抜け出せたのも彼女のお陰と言える。
こうしてひそひそ抜け出さなくてはならない理由は王宮入りの条件にあった。
一度王宮に入ったものは死ぬまで王宮で暮らさなければならないという掟に反するのだ。
見つかれば、ペロ跳ねは間逃れないだろう。
それでも唯は憂と暮らすことを選んだ。
憂との短い時間を過ごした後はどうなってもいい、本当にそう思っているような行動だった。
唯と憂の家
唯「ただいま……」
唯が木彫りの表札を撫でる。
唯「しばらく見ない間にボロボロになったな~」
それでも、唯にとっては大切な家なのだろう。
中に入ると散乱した葉っぱや木の実を拾い始めた。
唯「屋根とベッドを変えないと。
憂を連れてくるまでに終わらせてびっくりさせてやるんだ~。喜ぶかな、憂」
ニコニコしながら作業に取り掛かった。
二人で暮らす為の家。
しかし、そこに憂が帰ることは……もう……なかった。
王宮
純「唯さんと憂上手く逃げられるかな? まああそこを使えばまず安心だと思うけど……」
───○○○○○!!!
───○○○○○○!!!!
───○○○○○○?!!
純「なんだろ……騒がしいな……っ……」
いつもはほとんど通らない道、今日は唯達の抜け道の下見でたまたま通った純だったが、そこで恐ろしいものを見てしまう。
紬「唯ちゃんは!!?」
澪「探したけどいないんだ……! どこにも! あのバカっ……こんな時にどこ行ったんだ!」
純「(あれは……!)」
僅かに開いた扉から中の様子を伺う純。
机の上では憂がもがき苦しみ、寄声をあげていた。
梓「……ムギ先輩、もう」
紬「……ギリギリね。後数時間もしたら……」
澪「くっ……」
純「(えっ……憂が……死んじゃうの?)」
わかっていたことだった、知っていたことだった。
けれど目の当たりにすると途端に信じられなくなる。
人が死ぬという現実に。
梓「……やろう、ムギ先輩、澪先輩」
紬「梓ちゃん……」
澪「梓……」
人称がおかしいことよりもその会話の内容が気になって仕方ないと言った具合に純はもっと体を扉に近づけた。
梓「このまま数時間地獄の苦しみの中に死んでいくのはあまりにも可哀想です……だから」
次の瞬間、純は息を飲む。
澪が、剣を抜いたのだ。
澪「……ムギ、頼む」
紬「……ええ」
紬が憂の頭を押さえつけると顎を押し込み、口を開かせる。
中からドス黒く変色した舌が現れ、それを見たものはみな顔をしかめた。
そしてそれを指で引っ張り出し……。
純「(うそ……)」
澪は剣を高々に天空へと掲げている。
梓は、それを黙って眺めている。
ペロ跳ね──
純の頭にその文字が浮かび上がる。
澪「一瞬だ、痛みはないからな……憂ちゃん」
紬「……」
梓「……」
純「まっ……!」
勢い良く扉を開ける、しかし、既に、澪の剣は振り下ろされ、憂の舌を、寸分違わず切断していた。
梓「……」
その帰り血を浴びた梓と純の目が合う。
その顔は、どうしようもないぐらい、無表情だった。
「はっ……はっ……はっ……!」
闇夜の中をただ走る。
純「殺した……憂を……あいつらがっ!」
元々死ぬとはわかっている。
けどあんな残酷な殺し方をする意味があったのだろうか?
ない、絶対にない!
あってたまるもんか……!
純「あんな狂った奴らにもうついていけない……!」
この事実をみんなに知らせるんだ。それがモップ村からスパイとして王宮に送りこまれた私の使命!
純「戦争だ!!! あんな国……ぶっ潰してやる!!!
私の大切な憂にあんなことした報いを受けさせてやる……!」
足は勝手に一番近くの協力している村、デコ村へと向かっていた。
純「誰か! 誰かいませんか!」
律「なんだよこんな夜中に……ふぁ~」
純「律さん! 私です! 純です!」
律「ああ、モップ村の。どうした? てかあの時助けなかったろお前!
危うくペロ跳ね喰らうとこ……」
純「……」グスッ
律「どうしたんだよ。お前が泣くなんて珍しいな」
純「憂が……! 憂が……!」
律「憂……? 唯の妹か? 確かペロペロ病を治療するために王宮にいたって話だけど」
純「殺されました……国王と他の二人によって」
律「なっ……!」
純「ペロ跳ねされたのを見たんです……私止めようとしたけど……間に合わなくて」
律「……今から一族を集める。詳しく聞かせてもらおうか」
デコ集会
デコ「ゆるさねぇ!!! 絶対にだ!!!」
デコ「あいつらはもうただの鬼畜だ! 何が平和の為だ! ふざけやがって!」
デコ「滅ぼせ! あんな王国滅ぼしちまえ!」
律「待て、ことはそう簡単じゃないんだ」
デコ長老「左様。ペロペロ病の患者を楽にするためにやった、と言われたら返しようがない。
呻き声をあげるほど末期だったのであれば我らとてそうするやもしれん。勿論舌を跳ねたりはせんがの」
デコ「でもよ……」
デコ「納得いかないぜ」
純「……私は憂とちょっとしか話したことないです。けどあんなやつらよりよっぽど優しくて……暖かくて……あんな死に方……絶対納得出来ません!」
律「……ああ、私もだ」
純「律さん!」
律「長老、憂ちゃんは私の命の恩人、唯の妹です。そして一度デコカレーの絆を交わした仲間、これはもう一族が侮辱されたも同然ではないでしょうか?」
デコ長老「ふむ……確かにの」
デコ「では!?」
デコ長老「あずにゃん王国、終わる時が来たようだ」
律「お前ら……行くぞ」スッ
律が立ち上がるとゆっくりとカチューシャを外す。
その他の者達も各々デコを出すための道具を外していく。
デコ族がデコを隠す時、それは神聖なるデコを汚さない為、つまりは……。
律「戦争だ。あずにゃん王国に宣戦布告する!!!!!!!!!」
デコ達「デコおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
近くに戦争の火種が燻っていると言うことにも気づかず、唯はひたすらベッドと屋根をリフォームしていた。
唯「これでいいかな? でもちょっと寝にくいかな~?」
首をひねりながら左から、右からとベッドを眺める。
唯「もうちょっと草がいるかな。集めてこよっと」
約束の時間まではまだまだある。
それまでに納得の行くベッドを作る為、唯は何度目かの暗闇に身を投じた。
澪「……どこへ行っていた」
唯「うわっ」
家の目の前で唯より一回り大きい澪にぶつかり、はね飛ばされる。
唯「澪ちゃん……」
澪「こんなところでお前は何をしてるんだ……一体!」
唯「……私達は王宮を出るんだ! そしてまたここで二人で暮らす!」
澪「……お前がそんなのだから憂ちゃんは……憂ちゃんは!」
澪「死んだんだ!!!」
唯「えっ……」
澪「どうしようもなかった……もう末期で後は苦しんで死ぬだけって……だから私は……本当はしたくなかった!
あんなこと……!」
唯「憂が……死んだ?」
澪「最後にお前が看取ってやらなくてどうするっ!」
唯「あはは……嘘だよね? 憂が私を置いて行くわけ……」
バチンッ!!!
澪「現実を見ろ! この腑抜け! お前の妹は死んだんだ……!
私が殺した……舌を跳ねてな!!!」
唯「─────」
澪「生かすだけ生かして、最後に一番苦しい死に方をさせたお前にあの子を悲しむ資格はない」
唯「……」
澪「もう王宮には二度と来るな。恐らくこれから戦争になる」
唯「……」
澪「どこでも好きなとこに行って妹の分まで長く生きろ。それがお前に出来る唯一のことだ」
澪「やはりお前達を迎えるべきじゃなかった。お前達のせいで平和は終わったんだ。
その罪を死ぬまで背負って生きろ!」
澪「じゃあな、二度と会うこともないだろう」タッタッタッ……
唯「憂が……しん……」
ただ、もう何もかもどうでもよくなって、私は……大声で、泣きながら、ただ彼女の名前を叫んだ。
唯「ういいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいうああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!
!!!!!!!!!!
!!!!!!!!!!」
翌日、朝と共に王宮に一通の手紙が届いた。
和「我ら、デコ族とその近隣村民は、あずにゃん王国に対し宣戦布告することをここに宣言する」
和「貴殿達のやり方にはもはや従うことは出来ず、また、話し合いで解決するつもりもない」
和「全面武装解除の後、国王と幹部数人の身柄を差し出せば国民の被害も少なくて済むだろう。
これが受け入れられない場合、武力をもってこれを殲滅することをここに書す。
デコ村の長老……ですって」
紬「……やはり彼女は」
梓「ああ、内通者だったか。……紬は気にするな、全責任は私にある」
紬「何言ってるのよ。これは王国全体の問題だから、梓ちゃん一人で抱え込まなくていいわ」
和「……何の話よ」
梓「気にするな。それよりどう受ける、この手紙。賢者の意見を聞こう」
和「そうね……私達が出ていって殺されたらそれが一番早いかもね。でもまあ国名がデコ王国になって上が変わるだけど」
梓「……それじゃ意味がない。それに……その後確実にこの世界は滅びるだろう」
和「……なら徹底抗戦するの? まあ戦力的に見てうちが負けることはないけど。
平和を謳ってた国が戦争で隣村潰してりゃ世話ないわね」
紬「和ちゃん……!」
和「あなた達……私になに隠してるの?」
梓「……」
和「私にも言えないことなの?」
梓「ただ、信じてください和先輩。私とムギ先輩を……」
和「……そ、わかったわ。なら私に任せなさい。争う気もなくすぐらいの戦術敷いて撤退させてやるわ」
梓「ありがとうございます、和先輩」
澪「今戻った」
紬「お帰りなさい、どうだった?」
澪「あの使用人はやっぱりスパイだったよ。ギリギリのところでデコ村に逃げ込まれた」
紬「そう……きっと勘違いしたのね」
澪「いいんだな? ほんとに」
紬「言ったところで仕方ないもの」
澪「そう……か」
梓「唯先輩は……?」
澪「自分の家で憂ちゃんの為に何かしてたよ……」
梓「……」
澪「大丈夫、また会えるよ、きっと。今はこの起こってしまった火種をどう消すか考えよう」
梓「はい……!」
唯先輩……ごめんなさい。
今はただ謝ることしか出来ません。
でも、次に会った時は……みんなでピクニック、出来たらいいな。
律「さて、どう崩す?」
デコじゃない「突撃すりゃいいんだよ!!!」
デコじゃない「気が合うな兄弟!!!」
律「バカか! あっちには三騎士の一人賢者の和がいるんだぞ!
返り討ちに合うだけだ」
聡「いや、案外そうとは限らねぇよ……姉ちゃん」
律「なに?」
大きな迷彩柄のバンダナを巻き、デコを隠している聡。
聡「知略故に正面からは弱い……恐らくどこからでも来ていいように罠を分散させてるはずだ」
デコじゃない「なっ……」
デコじゃない「聡が……まともなこと言ってやがる!」
聡「なら隊を分散させるより真っ正面からぶつかった方が勝算がある……違うか?」
律「お前デコ隠すとキャラ変わるよな……」
律「しかし戦力が少ないな……三騎士の出身の村は協力してくれないだろうし。
デコ村、モップ村、後は優しい村ぐらいか……」
デコじゃない長老「それなら心配するな。助っ人を呼んである」
律「助っ人?」
純「よ、呼んできました!」
斎藤「全く……老人をしつこく戦場に戻すものじゃないぞ、デコ村長」
デコじゃない「あ、あの方は!!!」
デコじゃない「なんだ知ってるのか?」
デコじゃない「あ、ああ……第一次、第二次ペロペロ大戦を生き残り……ペロった数なら世界一とまで言われている伝説のペロリスト……!」
デコじゃない村長「そうじゃ、やつこそが執事村の生きる伝説……ペロリ斎藤じゃ!」
斎藤「もうペロることはないと思ってたんだがな。ここの村長には借りがある。存分にペロらせてもらおうか」
律「執事村も参戦となれば面白くなって来たな!」
デコじゃない「この戦争勝てるぞ!」
デコじゃない「ああ! 何があずにゃん王国だ! ふざけた名前つけやがって!」
デコじゃない「みんな!!! 俺達にはデコ神様がついている!」
デコじゃない「デーコ! デーコ!」
デコじゃない長老「ではこちらが設定した時間までに全面武装解除が行われない場合正面から全員で攻め込む!!! いいな!!!」
デコじゃない達「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
王宮
和「いい、多分やつらは多角的に罠を展開してくると読むわ。
だからこの王宮へ続く直線に全罠を設置」
澪「全部……だと?」
和「そうよ。もし周りからこられても建物で遮られた迷路のような街をこちらは上から一望出来るもの。
このトランシーバーを使えばここから私が指示を出せるわ」
澪「なんか不思議だな……離れてても声が聞こえるなんて」
和「技術力は圧倒的にこっちの方が上だもの。蟻がいくら噛みついて来ても象は倒せないわ」
和「澪の隊は本隊と遊撃部隊にわけて。澪は遊撃部隊に配置、私が指示を出すからその通りに動いて」
澪「わかった」
和「ムギの隊は後方援護、もしもの為に治療の準備をお願い」
紬「わかったわ」
和「国王、これでよろしいですか?」
梓「はい、それで行きましょう」
決戦前──
唯は自分の家のベッドで寝続けていた。
唯「……」
ただ静かに横たわる。もう、何の意味もなくなったのだ。
憂の為にご飯を作ることもなく
憂の為に村と仲違いすることもなく
憂の為に生きることもない
唯「……」
この生きている時間が無為、なら、どうすればいいのだろう。
唯「憂を……殺したんだ。あいつらが……」
恨む、しかない。
どうしようもない衝動をぶつけるしかない。
唯「……!」スッ
立ち上がる。
ただ舌を跳ねたと言ったあいつを殺す為だけに。
唯「憂は生きてたのに……殺したんだ!!!澪ちゃんが!!!!」
その事実だけしか見ず、唯はデコ村に向かう。
かつての友と共にあずにゃん王国を滅ぼす為だけに……己の力を振るう。
その先には何もないと知っていても……。
デコ村 見張り台
律「動きは?」
聡「いや、特にないよ。でも明かりが消えてる。この時間ならいつもはつける筈なのに」
律「今の間に罠を仕込んでるんだろう。一応平和を謳ってるんだ、あっちから攻めてくるってことはないだろうが警戒はしといてくれ」
聡「あいよ」
律「……聡、怖いか?」
聡「ああ。死ぬかもしれないしな」
律「逃げてもいいんだぞ? お前はまだ若い、これからもっと色々なことをして……」
聡「姉ちゃんだって若いだろ。それに姉ちゃんおいて逃げれるかよ。
たった二人の家族だろ。それに……」
律「……ああ、父さんと母さんがペロ跳ねされてからずっと待ってた……いつか復讐してやるってさ」
聡「やっと来たんだよな……やっと」
──スッ
律「」
聡「姉ちゃん後ろ!」
律「なっ……!」
律が気づき、腰にあるナイフを抜こうとするが、その上に手を添えられる。
律「(なんて力だ……全く動かせないっ)」
突如現れた侵入者に焦りもがいていた律だったが声を聞いてそれが止まる。
唯「りっちゃん、私だよ。唯だよ」
律「ゆ、唯?」
唯「うん。久しぶり。聡君も」
聡「唯さん……てっきり王国側についたのかと」
唯「ううん。私も二人と一緒に戦うよ。憂の仇を取るために……」
律「そうか……ならもう何も言わない。一緒に戦おう、唯。
憂ちゃんの弔い合戦だ」コツ
唯「ありがとう、りっちゃん。やっぱりりっちゃんが一番の友達だよ」コツ
拳を合わせ、協戦を誓う。
戦争はいよいよ明日に迫っていた。
翌朝、王宮
大広間には王宮に仕える全人口が集まっていた。
壇上に上がった国王が辺りを見渡した後、言葉を発する。
梓「皆のもの……ううん、皆さん、聞いてください」
ざわざわ……ざわざわ……
梓「今日は国王としてじゃなく、平和を求める一人として皆さんにお願いします」
ざわざわ……ざわざわ……
澪「梓……」
梓「今このあずにゃん王国は未曾有の危機に晒されています。それを招いたのは他でもない私です」
ざわざわ……! ざわざわ……!
紬「梓ちゃん……」
梓「しかし、それは他の危機からみんなを守る為に取った行動が誤解に繋がっただけなんです。
信じてくれはとはいいません……けど、私はこのあずにゃん王国を、世界を、守りたいんです」
和「第二次ペロペロ大戦を終わらせたのは他でもない梓よ。私達はその奇跡を信じて彼女についてきたんでしょう?」
ざわざわ……ざわざわ……
和「なら最後まで信じましょう。梓を、この国の国王を」
…………
澪「もう一度奇跡を、平和を、梓なら起こしてくれる!」
…………!
紬「その為にみんなで協力しましょう! 私達は今から戦争をするんじゃないわ! そのことだけは忘れないで!」
おお……おおおおお……
おおおおおお……おおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!
もう一度奇跡を!!!
梓様こそが平和の象徴!!!
我々には三騎士がついている!!!
梓「ありがとう……ございます……みなさん」
デコ村
デコじゃない長老「……壮景だな、律よ」
律「はい、長老。私達の為にこれだけの数が集まってくれたこと……私はこの恩を一生忘れません」
デコじゃない長老「開戦の号令、お前に任せる」
律「いいんですか? 長老」
デコじゃない長老「若くて麗しいものがとった方が士気もあがるじゃろうて」
律「そんな……」
デコじゃない長老「心配せんでええ。律、お前さんは誰から見ても立派に、綺麗に育ったわい。産んだあやつもあっちで喜んでおるだろう」
律「……お母さん」
律「長老、号令の件、ありがたくお受けします」
律「不肖ながら長老の代わりに開戦の号令に当たらせてもらうデコ村の律だ」
聡「頑張れ姉ちゃ~ん」
律「コホンッ! 私達は愚かな戦いを繰り返して来ました。民族戦争はやがてあの忌まわしき第二次ペロペロ大戦に発展しました……」
律「それを止めたのがあずにゃん王国の国王、梓です。しかしやつもまた私達に偽りの平和しか与えてはくれませんでした」
律「選民と言う名の尊厳殺し、水、食料は管理され、王国では豊かな暮らし……」
律「そして、我々の同士もたくさんたくさんペロ跳ねされ、殺されてきました」
律「私の両親も、そこにいる私の命の恩人、唯の妹も彼女達に殺されました」
ざわざわ…… ざわざわ……
律「だからってわけじゃないです。ただ、私達は平和が欲しい。
誰も殺されず、幸せで、お腹いっぱい食べられる世界が……」
律「私達合村連合が勝てば、そうなると信じています」
律「その為に、力を貸してください」
うおおおおおおおおおおおおおおおおおお
りつうううううううううううううう
デコおおおおおおおおおおおおおお
律「……現時点をもって回答の時刻を過ぎました。よってこれからあずにゃん王国に全面戦争を仕掛けます」
律「全員進軍!!!」
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
「あ~あ。こりゃ負けるわね、おデコちゃん達」
「契約を守らないあっちにつくよりデコちゃん側についてまた次の世代を見守った方が面白いかもしれないわね」
「さて、それじゃ久しぶりにちょっと働きましょうか」
さわ子「ペロの魔術師として、ね」
和「来たわよ! 準備はいい!?」
ガガッ
澪『ああ』
和「追撃はしなくていいわ。あくまで追い払うだけよ!」
澪『わかってる』
和「梓……」
梓「なんですか?」
和「全部終わったら話してもらうわよ。あなた達が私に隠していること全部、ね」
梓「はい。約束します」
和「それじゃ行きましょうか……」
和「あずにゃん王国防衛作戦開始!!!」
律「うおおおおおおお」
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
澪兵「なんて数だ……予想外だぞ」
澪兵「やつら正面から突っ込んでくるぞ!!! だ、大丈夫なのか!?」
澪「うちの賢者を信じろ」
澪兵「澪様!」
澪兵「澪様!」
澪「すまない、お前達にはそんな役回りをさせたな」
澪兵「とんでもないです。ここを守れるのなら」
澪兵「死んでも本望ですよ」
澪「ありがとう。でもこれだけは命令しておく」
澪「死ぬなよ」
澪兵「えっ」
澪「遊撃部隊は私と続け!!! 打ち漏らした敵を迎撃する!」
おおおおおおお!!!
澪兵「死ぬなよってさ」
澪兵「ああ。隊長直々にそんなこと言われちゃ……」
澪兵「生きるしかないだろ!!!」
和「第一の地獄、針地獄へようこそ……安心しなさい、死なない程度に設置してあるから」
うあああああああああああああああ
どうしたああああああああああああ
下から針があああああああああああああああ
チクショウおおおおおおおおおおおおおおおお足をやられたああああああああああああ
シュッシュッシュッシュッ
次々に沸き出す針を紙一重で避けていく律。
律「怯むな! これぐらいの罠は想定内だ!
衛生兵!! 怪我をしたものを連れて後退しろ! ここにいたらいい的だ!」
了解!!!!
律「ちっ、唯のやつどこ行きやがった! 独断行動しやがって!」
和「あの黄色いのがリーダー格かしら。左右に展開し出したわね、さすがに露骨すぎたかしら」
ガガッ
和「澪、そこを右、そのまま直進して一個小隊を迎撃後、リーダー格をやるわ。
あんまり時間をかけないで、最悪でも中心部に押し出すだけでいいわ」
澪『わかった』
和「さて、そろそろあっちの本部隊は二の地獄、感電地獄かしら」
和「ふふふ、あなた達にとって未知のエネルギーに戦きなさい」
ビビビビビリリリリビビビビビリリリリリリリするううううううううううう
ああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
イヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ
澪「全く……無茶言ってくれるようちの賢者さんは」
ぐあああああ
うほおおおおおお
澪が通り過ぎる度に敵が地面に伏して行く。
澪「リーダー格は確かこの先か……」
角を曲がるとあっちから走ってくる長い前髪の持ち主を澪が視認する。
澪「あいつか」
和『ええ。出来れば捕まえてちょうだい』
澪「やってみる」
剣を地面に突き刺すと、憮然した態度で立ち止まる澪。
あちらも気づいたのか、周りの隊に止まる号令を出す。
澪「私はあずにゃん王国ペロの三騎士が一人、剣者の澪!
あなたに一対一を申し込む」
律「……(唯より先に出会っちまったか。でも私もこいつには借りがある。二人の舌を跳ねたのはこいつだろうしな……)」
律「デコ村の斬り込み隊長の律だ。受けて立つ」
律は短剣、澪は長剣での戦い。
一見長い長剣が有利に見えるが懐に入れば逆に短剣が有利な為まさにどちらも一長一短の戦いだ。
律が様子を伺うように澪の周りをゆっくりと回る。
澪はただそれを目だけで追う。
律「っ!!!」
次の瞬間律が駆ける。
澪「!!!」
それに呼応し澪を長剣の切っ先を律に向け、迎撃体勢。
澪「やあああっ!」
走り込んで来た律に水平斬り、しかし屈まれ、髪の毛を数本持って行くだけに留まる。
律「おらよっ!」
律はそのままの低姿勢で潜り込むと澪の足を払いに来た。
澪「くっ……」
見事に足を掬われた澪の体は一瞬中空に留まり、そして重力により落ちる。
律「もらった!!!!」
飛び込むようにしてナイフを澪に突き立てる、が、突き立てたのは黄金の都市の床。
澪は転がるようにして律のナイフを回避するとすぐさま立ち上がり、構える。
澪「やるな」
律「あんたもな」
律がナイフをクルクルと弄んだ後、キッと澪を睨み付け再び駆けた。
律「おらっ!!!」
短剣を数本投擲、
キンッという金属同士がぶつかると出る独特な音がした後、澪の長剣によって短剣が叩き落されたと知る。
律「遅いっ!」
その間を使い既に至近距離まで詰めていた律が素早く短剣を振るう。
澪「」キンッキンッ
それに焦る様子もなく澪は淡々と律の短剣受ける。
律「~っ!」
いつまでも受けきられるのに痺れを切らしたのか集中力が下がり、ほんの一瞬だけ隙が出来る。
澪「もらった!!!」
その隙を逃さずコンパクトに脇を畳み、間接を目一杯曲げ、斬り上げる。
律「うわっ」
それは律の前髪を削ぎ落とし、擦り傷ながらデコに跡を残した。
律「てめぇ……!」
澪「お前は……あの時の」
律「神聖なるデコに傷をつけるとは……!」
律はイライラしたようにいい放つとバックパックのようなものからカチューシャを取り出し、髪型を整える。
律「もう傷ついちまったんだ、なら出しても問題ないか。
あの時は世話になったな、そして両親も……唯の妹もな!!!
次は殺す」
デコを腕で拭うと両手に短剣を構える律。
澪「くっ……」
言葉で気圧されたのか澪の構えが鈍い。
律「おらァっ!」
そこをつけこまれ一気に仕掛ける律。
両手に持つ短剣を体ごと回転させることで素早く、かつ強力に、そして出所がわからなくなる。
澪「くっ……(攻撃を返す間がない!)」
和『澪!!! 急いで中央の部隊に合流して!!! はやく!!!』
澪「そんなこと……言われてもっ!」
律「ははは! こんなもんかよ三騎士さんよ!
これじゃ落とすのも時間の問題だな! 何があずにゃん王国だ!
平和を語った悪魔共が!」
澪「!!! 違う!!! 私達は!!!」
律「なっ……!」
短剣を恐れず無理やり前に出て、肩からの体当たりで律を吹き飛ばした。
その代わりに澪の頬にはざっくりと短剣が斬りつけた跡が残る。
澪「ただ平和を守るためにこうするしかなかったんだ!!! お前に何がわかる!!!」
律「このぉ……!」
デコじゃない「律! 中央が開いたらしい!!! 国王を取りに行くぞ!!!」
律「なに!? 本当か!? ちっ、あんたは唯にくれてやるよ!
私は国王をもらう!!!」タッタッタッ……
澪「まっ……ぐっ……少し深いか」ガクッ
頬の傷に手を当てながら顔をしかめる。
和『早く!!! 今私達の隊も降りて戦いに参加するわ!!!
梓は絶対守るわよ!!!』
澪「それよりなんで中央が破られたんだ! 自慢の罠は!?」
和『予想外だったわ……まさかあっちにペロの魔術師がつくなんてッ!』
澪「なんだと……?」
王宮の奥から岩が雪崩れ落ちてくる。
さわ子「それ~」ペロペロ
しかしさわ子が一舐めしただけでそれは減速、ゆっくりとゆっくりと地面に落ちてきた。
こんなものに当たるのはせいぜい蟻ぐらいなものだろう。
さわ子「さ~みんないよいよ王宮よ。頑張りなさい」
うおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!
なんだあのお方は!!!!!!!!!!
あの人こそ我々に勝利をもたらす女神に違いない!!!!!!
さわ子「なかなかわかってるわね」
斎藤「あんたまで出ばって来るとは、本気で落とすつもりだな、ここを」
さわ子「あら。あんたまだ生きてたの? しぶといわね」
斎藤「生憎な。この歳になってまでペロらなきゃならんとは……人と言うものはとことん愚かな生き物だな」
さわ子「なに人間やめたみたいな言い方してんのよ」
斎藤「本当にやめたあんたがそれを言うか」
澪兵「ここは一歩たりとも通さん!!!」
澪兵「澪様の為に!!!」
斎藤「邪魔だ、どいてろ」ペロリッ
澪兵「ぐはああああ」
澪兵「ぐほおおおお」
斎藤「若造が、身の程を知れ」
さわ子「あんたも相変わらずね」
斎藤「まあ雇われた身だ、やることはやらせてもらう」
さわ子「儚いものよね、平和なんて。あの子なら本当に統治出来ると思ったんだけど、見込み違いだったかしらね」
王宮に雪崩れ込む合村革命軍達。
もはや勝敗は明らかだった。
和兵「和様! やつらの大半がこの王宮に入り込んでます!!!
中にはあのペロリ斎藤もいるとのことで……まるで赤子を捻るかのようにここへ進軍してきます!!!」
和「まさかペロリ斎藤まで用意するなんて……! 完璧予想外だったわ……。
そもそも予想出来たとしても勝てなかったわね……あの二人が来れば」
梓「……やはり来ましたか、魔術師」
梓「和先輩、全軍に通達してください。私達の負けだと。これ以上いくらやっても両者に怪我人が出るだけですから」
和「でもっ! そんなことしたら!」
梓「大丈夫です。何とか私一人の命で済むよう交渉しますから」
和「梓……」
梓「さよならです、和先輩。学校で色々あなたから習ったこと、忘れません」
澪「くっ!!! お前達!!!」
澪兵「隊長……ご無事で」
澪「なんで……どうしてこんなことに」
澪兵「梓国王を……守って……あげて……ください」ガクッ
澪「……。お前達の意思、無駄にはしないからな」
紬「澪ちゃん!」
澪「ムギ! 無事だったか!」
紬「えぇ、なんとか。あ、傷が……」
澪「大したことないよ。他のみんなに比べたらこれぐらい」
紬「いいえ。これから普通の女の子として生きていくのにこんな傷残したら駄目よ。
すぐ終わるからじっとしてて」
澪「あ、ううん、もう……わかったよ」
紬「……この戦い、私達の負けね」
澪「……」
紬「でも、私達は精一杯やったわ。二つの敵と戦って、頑張ってきた」
澪「でも、負けた。結局守れなかった、みんなを」
紬「そうね……。でも守れたものもあるじゃない」ニコ
澪「……ああ。確かに、な」
紬「はい、出来たわよ澪ちゃん」
澪「ありがとう。ムギ」
紬「じゃあ私は傷ついてる人片っ端から治療していくわね。澪ちゃんは梓ちゃんを守ってあげて、今はもうあなたにしか出来ないことだから」
澪「ああ……わかってる」
澪「……」
澪「ムギ!」
紬「?」
澪「もう会えないかもしれないから、先に言っとくよ。会えて良かった」
紬「うん。私も」
そうして二人は最後に笑い合い、互いの道を行く。
これが自分達の信じた道だと、疑うこともなく。
和「くっ……トランシーバーがイカれてる! これも魔女の仕業って言うの!?」
梓「……」
和兵「駄目です!!!!!!! 最終防衛ライン突破!!!!!
ここに来ます!!!!!!」
律「一番槍はもらったああああああっ!」
和「くっ! やらせないわよ!」チャキン
律「あんたが賢者の和か! 確かに賢そうだがなぁ!!!」キンッ
和「あっ……」
律「賢さだけで人を幸せに出来ると思うなよ!!!!」
梓「そこまでです!」
律「」ピタッ
律「なんだよ王様。もうあんたが命令出来る時代は終わったんだよ」
梓「はい。終わりました。私達の負けを認めます……だからその最高責任者である私を殺して終わりにしてください。
他の人達には手を出さないでください!」
律「ずいぶんと潔いいな」
梓「お願いします、この通りです……」
律「はっ、今更土下座するぐらいならもっと早くしろよ!!!」ゲシッ
梓「ぐっ」
律「お前のせいでどんだけの人間が死んだと思ってんだよっ!」ゲシッ
梓「かはっ」
律「ただここで皆殺しなんてことしたら私達もあんたらと同じだ。だからあんたの要求を飲んでやるよ、一部な」
梓「じゃあ!」
律「国王梓、他三騎士のみ、公開ペロ跳ねの刑で幕を下ろす。みんなもそれでいいな!」
うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!
俺達の勝利だ!!!!!!!!!!!!!!
梓「そんな……私だけで……私だけでお願いしますっ! 和先輩達は私の指示に従っただけで」
律「残念だったな、もう決まった。今さっきな」
澪「どけえええええええっ!!!!!」
ザンッ! ザンッ!
うわああああああああああああああ
澪「邪魔だああああっ!!!!!」
ザンッ! ザンッ! ザンッ!
ふおおおおおおおおおおおおおおお
澪「梓国王!!!!」
律「なんだぁ? 今更ナイトの登場か?
遅いよ、もう話は決まった。あんたらの公開ペロ跳ねでな」
澪「そんなこと……させない!」
律「おいおい、周りを見ろよ。一体何人いると思って……」
澪「はあっ!!!」
ザンッ!
ぶふおおおおおおおおおあああああ!!!
律「なっ……」
澪「ここにいる全員倒して逃げさせてもらうよ。国は勝手にするといい。
お前達が真の平和を作れるのなら、私達は喜んで退場してやる!」
律「この場に及んで悪あがきとは……!」
澪「悪いがさっきみたいに手加減出来ないから。梓を守るためならここにいる全員……」
梓「澪先輩っ!!!」
澪「悪いな、梓……。ムギに頼まれたんだ……だからここでお前を殺させるわけにはいかない。それにどうせこのまま捕まっても全員仲良く殺されるだけだ。
なら最後の最後に私に賭けて見てくれないか?」
梓「澪先輩……」
律「ペラペラとよく喋る舌だな!!! 私達の両親同様跳ね飛ばしてやろうか!!!」シュッ!!!
短剣を下に向けて柄を握り、斬り上げる。
澪「っ……!」
それをスウェー気味にかわすと、すぐさま前に向き直る澪。
律「今度とらせてもらう!!! 仇を!!!」
澪「悪いけど、それは出来ない」
澪「ペロ流奥義……」
律「なっ……!」
澪「ペロペ露十字斬り……!」
すれ違い様に鮮やかな鮮血が飛び散る……。
律「か……は……」
梓「まさか……」
澪「大丈夫。殺してはないよ。さ、今のうちに窓から逃げよう!
ペロリ斎藤や魔術師が来たらさすがに私でもまずい」
梓「でも……」
澪「生きて、それからまた考えよう。きっとみんなわかってくれる日が来るから!」
梓「……うん!」
澪が和を担ぐ、周りを牽制しつつもジリジリと窓に体が近づく。
澪「(ここから王宮の屋根に出て……それから屋根裏部屋を使って地下から出ましょう。ムギなら大丈夫、きっと上手く逃げるから」
梓「」コクリ
これから生き延びて、また、やり直せるだろうか、本当に。
わからない、けど……もし、生きられるのなら……私は生きていたい。
ただ毎日を平凡に過ごすだけでいい……そんな平和をまだ掴めるのなら……。
澪「行こう! 梓!」
手が差しのべられる。あの時と同じ手が
あの時もこの手を握り、私は始めた……みんなで平和を探す旅を。
そう願った筈なのに、いつの間にか狂ってしまった歯車、それをまた……戻せるのなら。
梓「私は!」
ザンッザンッザンッ───
澪「あっ……」
梓「澪……先輩?」
目の前にあった道が閉ざされる、真っ赤な鮮血を撒き散らしながら。
唯「行かせるわけないじゃん、ねぇ? あーずにゃん」
そして、窓から、大好きだった唯先輩が降りてきた。
私に終わりを持って来てくれた、、、、、、
コツ……コツ……コツ……。
コツ……コツ……コツ……。
一段一段登って行く。
私達の終わりへと。
コツ……コツ……コツ……。
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!
下には大勢の人達が、私達が死ぬのを今か今かと待ちわびている。
両腕を鎖で縛られ、足も同じように拘束されている。
「そこで止まれ!!!」
これは私達四人に向けられた言葉。
そのまま後ろから倒されると、木の板に、紐のようなものがついたもので体を固定される。
「一人づつ行くからな。楽しみにしてろ」
恐怖を煽るようにして発せられる言葉。
誰だろう、この人。名前も知らない人に殺されるなんて、ちょっと残念だ。
唯先輩なら良かったのに……。
多分後、数分で私の命は終わる。
それまでに、少しだけ昔を思い返してみよう。
何が間違っていたのか、どうしてこうなったのか……わかるかもしれないから。
────
私はツインテール村に生まれたごく普通の女の子だった。
村の中で当たり前に遊んだり、食べたり、寝たりしていた。
外は争いが絶えないらしいけど、中立を保っていたツインテール村は至って平和だった。
そんなある日、村の中に学校というものが出来た。
多くを学び、これからに役立てようという名目で建てられた学校には私のような子供がいっぱいいた。
その中で出会ったのが、和先輩、ムギ先輩、そして、澪先輩だった。
梓『(他の村の人もいるんだ……なんか新鮮)』
澪『隣、いい?』
梓『は、はいっ』
澪『私は澪。見ての通り髪長族だよ。種族は違うけど同じところで学ぶ仲だ、よろしくね』
梓『梓です! よ、よろしくです!』
和『和よ。眼鏡族ね。よろしく』
紬『紬です。ムギでいいからね。まゆげー族よ』
三人ともこの紛争で両親を亡くし、身寄りがないところをこの村の村長さんに呼ばれたそうです。
三人は学校に住んでいました。
他に家がないので、仕方ないと笑って言ってたのを覚えています。
私は度々家から色々なものを持って行き、夜遅くまで三人と一緒にいました。
澪『綺麗な髪だな、梓』
澪先輩は優しくて。
紬『いつもありがとう梓ちゃん』
ムギ先輩は暖かくて。
和『でも明日の学校の宿題は自分でやりなさいよ?』
和先輩は賢くて。
私は三人からいっぱいいっぱい思い出をもらいました。
でも、第二次ペロペロ大戦が勃発し、私達の村も容赦なく戦争に巻き込まれて行きました。
当然学校はなくなり、大人達は仕方なく武器をとりました。
生きるために。
それでも村長さんは澪先輩達を殺したりはしませんでした。
ここにいるよりは元の村に帰った方がいいと言うことで、私達はまたバラバラになることになりました。
和『みんな……元気でね』
紬『うんっ……また絶対一緒に学校行こうね』
澪『ああ、約束だ。平和になったらまた四人で学校行こうな』
梓『絶対です。約束ですからね……』
そして、とうとう戦争に行ったお父さんも帰って来なくなりました。
さらにツインテール村は焼き討ちに合い、家にいて逃げ遅れた母は……焼け死んだ。
私は三人が帰って来るのを学校で待っていた為に命だけは助かりました。
けれど……後はもう何もありませんでした。
あてもなくただフラフラと歩き、空腹で力尽きて倒れました。
梓『なんで……どうして……平和にならないんだろう……』
死ぬ間際、そう呟く。
その時だった、あの声が聞こえたのは。
さわ子『それはね、平和が大嫌いな人がいつもそれを壊しに来るからなのよ』
梓『平和が大嫌いな人……?』
さわ子『平和は全員が守らなければ成り得ないけど、戦争は一人でも壊すものがいれば起こりうるわ。その一人が、平和が大嫌いな人なの』
梓『そんなの……じゃあ絶対平和は来ないじゃないですか』
さわ子『そうね。多分これから先何千年立っても人々は争い続けるでしょうね』
梓『……そんなこと……駄目です。そしたら……またみんなで学校行けなくなっちゃいます』
さわ子『……欲しい? 平和が』
梓『……はい』
さわ子『平和の代償は勿論ただじゃないわ。
どんなにあなたが苦しむことになっても構わないかしら?』
梓『……このまま死ぬぐらいなら、私は……』
平和の為に、みんなの為に死にたい!!!
さわ子『契約成立ね。これであなたは自らを差し続ければ、未来永劫の平和を手に出来るわ』
梓『……?』
さわ子『あなたを舐めたものは争いなんてしなくなる。ただ普通の生活を当たり前に送ってくれるわ』
梓『……舐める……?』
さわ子『そう。この世界じゃペロペロは磨けば戦争にも使えるし、また日常的にもされていることだから』
梓『どうすればみんなに……舐めてもらえるんでしょうか?』
さわ子『さあ? それは自分で考えなさい。ただあなたは平和の為にその体を犠牲にして生きなさい。
それが平和を祈ったものの重みよ』
さわ子『じゃ、そろそろ行くわね。この紙に色々条件も書いておいたから。破ったら取り立てちゃうわよ?』
そう言い残して、彼女は消えた。
私にペロられを与えて。
私はその足ですぐさま戦場に行き、両陣営がぶつかる丁度真ん中で……降り頻る雨の中、思い切り大声で叫んだ。
梓『本当にあなた達は争いたいのか!!!??? 本当は平和が欲しいんじゃないのか!!!?』
初めは誰も聞いてくれなかった、でも、諦めずに声を張り上げた。
梓『平和が欲しいなら私をペロれ!!! 私こそが平和の象徴です!!!』
何度も何度も殺されそうになりながらも、自らをペロらせることによって一人一人戦意を奪っていった。
その情報は瞬く間に戦場を駆け巡り、そしてとうとうそこで争っている三民族の長達に、自らをペロられせることに成功した。
そして戦争は終わった。
本当に何事もなく、ただ、終わったのだ。
そうしてまた私達は再開した、半壊したツインテール村の学校で。
澪『驚いたよ、梓がうちの村長を納得させたって聞いて』
紬『私の村長もよ』
和『どんな手品使ったの?』
そこで私は話した、自らを差し出すことで平和を継続出来ることを。
魔術師については黙っていた。渡された紙に能力を誰かにもらったと言ってはいけないと書いてあったからだ。
和『にわかには信じられないわね……』
紬『でも梓ちゃんは本当にあの三民族を平和にしてみせたわ』
澪『ああ。もしかしたら長く戦争ばかりだったこの世界に平和が訪れるかもしれない』
そして───
私達は誓い会った──
和『どうやってペロらすかは私が考えるわ。
そうね、今戦争を引き起こしてる張本人、あの金ぴかの王宮に住んでる王様には退場してもらって私達が新たに国を仕切るなんてどうかしら』
いつもスケールが大胆な和先輩。
その時はただの笑い話だったけど、その数ヵ月後それは現実のものとなる。
そしてその更に数年後……今に至る。
紬『私は戦争で傷ついた人達を治療したいわ』
暖かくて優しいムギ先輩。最後まで敵味方分け隔てなく治療してくれたと聞いて、私は涙を流さずにいられなかった。
誰よりも誰かを助けたムギ先輩……それがこんな形で恨まれるなんて……本当にごめんなさい。
澪『私はみんなを守れるように強くなりたい……誰よりも』
優しくて、カッコ良くて、真面目な澪先輩。
戦争で親をなくした者達を集めて剣の修行をし、みんなを守る為に戦った。
和『剣を持つってことは誰かを殺すってことよ、澪』
そんな和先輩の小難しい質問にも、澪先輩ははっきりと答えた。
澪『私の剣は誰も殺さない。約束するよ、みんなと』
そしてその約束は、今現在も守られている。
手が差しのべられた。
三人から、私に。
「言い残すことはないか? 賢者の和」
和「……」
和『一緒に平和な国を作りましょう、梓』
和先輩……。
和「梓。私はあの時交わした約束を後悔してないから。
束の間の平和だったけど、次は必ず未来永劫の平和を実現させてみせるわ」
梓「和先輩……」
涙で視界が曇る。
もう彼女を見られる最後の機会なのに、手が使えないから拭うことも出来ない。
和「じゃあね、みんな。先にあっちの世界が平和なのか確かめてくるわね」
────バシャッ
「あんたは出来れば殺したくはなかった……紬さん」
紬『みんなで力を合わして誰もが平和で苦しまなくて済む世界を作りましょう……梓ちゃん』
ムギ先輩……。
紬「その気持ちを次の平和に向けてね。もう誰も殺さないで、約束よ?」
「ああ、約束する」
紬「梓ちゃん。きっとみんなは気づいてくれるわ、私達がやって来たことに。だから心配しないで」
梓「ムギ先輩ぃっ……!」
最後までこの人は、笑顔だった。
紬「次生まれて来るときは、梓ちゃんのお姉ちゃんがいいな」
────バシャッ
「剣者の澪もこうなると可愛いものだな」
澪『私は梓達を守る。だから梓は平和で世界を守ってくれ』
澪先輩……。
澪「ああ~学舎に集いし我ら~」
「な、なんだ? 気でも狂ったか?」
梓「その歌は……」
澪「見た目や性格も違うけれど、学ぶ心は同じさ~」
梓「ああ~我ら~よ、永久に、あれ」
澪「ああ~我ら~よ、平和で、あれ」
梓「校歌……覚えてたんですね」
澪「忘れるもんか。また学校行くんだろ? 一緒に」
梓「はい、絶対に……絶対に行きましょう!」
澪「ん。待ってる。平和な世界で、梓達みんなと学校に行ける日を」
────バシャッ
「国王、最後はあんただ。覚悟はいいか?」
梓「……」
梓「みんなで、この世界を平和にしましょう」
梓『みんなで、この世界を平和にしましょう』
「あ? なにいってんだか……それは今から俺達が作っていく。
壊したあんたの後始末をしてやるよ」
もう、何も言い残すことはない。
後は、唯先輩……。
あなたにすべてを託します。
すべてを知っても、やっぱりあなたは私達を許さないかもしれません。
それでも……。
梓「やっぱり大好きでした、唯先輩」
次会うときは、わかり合えるといいな。
────バシャッ
律「終わったな……」
唯「うん……」
律「人が死ぬのを見るのはやっぱり嫌なもんだな。私が言ったこととは言え」
唯「仕方ないよ、けじめだもん。他に任せてたら王国の全員がペロ跳ねされててもおかしくなかった」
律「お前、仲良かったんだろ? あいつらと」
唯「……ちょっとだけ、ね」
律「……正直な話な、お前の妹さんが殺されたこと利用させてもらったんだ。
この世界を変えるための火種になってもらった」
唯「酷いね、りっちゃんは」
律「ああ、酷いさ。けど、そうしないと変わらなかった。実際弔い合戦ってのは本当だったしな」
唯「そっか、まあいいよ。終わったことだもん」
律「まあ、な」
律「これからどこ行くんだ?」
唯「わかんない」
律「優しい村の村長さんが戻って来ないか? って言ってたぞ」
唯「移らない病を私達のせいにして追い出したところにわざわざ戻りたくなんてないよ」
律「そっか。ならデコ村に来るか? 楽しいぞ」
唯「やめとくよ、おデコ出すのはちょっとね」
律「ははっ、言ってくれるな」
唯「じゃあね、りっちゃん。聡君にもよろしく」
律「ああ……また遊びにこいよな、絶対。デコカレー作って待ってるから」
唯「いいよ、別にあれ美味しくないから」
律「やっぱり? 私も最近そう思ってた」
手を振る、と言う行為は相手に自分の気持ちを伝える一番のジェスチャーが採用されているらしい。
手を左右に大きく振りながら唯を見送る。
律「またな~唯~」
唯は、それを見て、ほんの少しだけ手を振り返してきた。
どうやらまだまだ気持ちが足りなかったようだ。
次はもっと大きく手を振る。
律「またな~!」
すると、唯も大きく手を振り返してきた。
伝わったのだろうか、私の思いが。
たった一人の友達、多分それは今失った。
唯はもう帰って来ない、それは唯の気持ちがさっきので私にわかったからだ。
律「じゃあな、唯」
いなくなった友達に、何度目かのさよならを告げた。
律「ペロペロ」
それにしても、舌がムズ痒い。
誰もいない王宮を一人歩く。
きらびやかだった黄金の王宮は戦闘によりボロボロに傷ついていた。
何故ここに来たのか、それはあの人に言われたから。
全てを知りる権利があると言われたから。
唯「さわちゃんが言ってたのは確か……」
更に奥に進む。
いつか純ちゃんが私と憂を抜け出させる為に用意してくれた道、その反対側に地下へと降りる道がある。
カチャリ、という音がし、錠が落ちる。
この鍵も、さわちゃんからもらったものだ。
更にその奥へと進む。全く光のない、暗闇の中に。
いつかりっちゃんが言っていた。
舌を跳ねた後に縫合し、地下牢に閉じ込める……そんな噂があると。
確かに言っていた。
私はその時はただ怖いな、と思っていた……。
でも、もしかしたら……本当は違うのかもしれない、と、今になって思うようになった。
わざわざ舌を跳ねるというめんどくさい殺し方……。
ペロペロ病の蔓延……。
選民……。
それらが私の中で繋がって行く。
そして、暗闇の中に光が射した────
キィィィィ
光が漏れ出しているドアを開けると、そこは明るい空間だった。
唯「これって……」
この明るさはあの電気と言うやつだろう。
「あれ? どちら様ですか?」
唯「えっ……」
「すみません。初めて見えた方なので。いつもは澪さんか紬さんか梓国王しかいらっしゃらないもので」
唯「あの、えっと……」
「ここに来たってことは三人の関係者なんですよね?
いや~最近誰も来ないから心配しましたよ。仲間の中で誰か様子を見に行こうってなってたんですが、もしかして誰かにペロペロ病が移っては大変ですから」
唯「……あなたは、もしかして」
「ええ。選民の際に舌をちょっと跳ねられたものですよ。まああの後すぐ治療してもらいましたがね」
舌をべーと出して見せたが、今はそんなに目立っていなかった。
というより、
唯「ほんとにペロペロ病だったんですか?」
「ああ。すっごいペロペロしてたよ」
しかし、その人の舌は私達と同じピンク色だった。
「舌っていうのは案外丈夫らしくてね、人間が噛みきろうとしても出来ないぐらいらしいんだ。詳しくは僕はわからないけどね」
唯「ほんとに……ほんとに……そうだとしたら!」
唯「あ、あのっ! りっちゃんのご両親の方いらっしゃいますか?」
「私だが」
「律のお友達?」
唯「あっ……ああっ……」
詳しくはわからない、けど確かにペロ跳ねされたとされる人達は生きていた、ここに。
いや、もしかしたらそんな話ではない。
これまでの行動全てに何か理由があったと仮定しても不思議じゃない。
それより、舌を跳ねられらものには、他に誰がいた?
けど、澪ちゃんは確かに言った、殺したと。
なら、憂がここにいるわけが……
憂「お姉ちゃん、待ってたよ」
唯「う、い?」
憂「来たのがお姉ちゃんだけってことは……他の三人はもう」
唯「何言ってるの……? わかんないよ……全然……わかんないよ……?」
憂「言えることはね、全部平和の為だったってことぐらいかな」
唯「わかんないよ……憂。澪ちゃんは憂を殺したって……だから私は……!」
憂「助かる確率は低かったから、お姉ちゃんに期待を持たすようなこと言いたくなかったんじゃないかな」
唯「そんなので納得出来ないよ!!!」
唯「普通に死んだって言えばいいじゃない!!! なら私は澪ちゃんにあんなことすることなかったのに……!」
憂「ううん、違うよお姉ちゃん。もしあそこで澪さんが私が死んだ事実だけを述べたら、お姉ちゃんはきっと自分を責めたよね?」
唯「っ……」
憂「そしてあそこで澪さんがお姉ちゃんを優しく慰めたら、多分お姉ちゃんは王宮の味方をしたんじゃないかな。
私や私を最後まで看取ってくれたみんなを守るために」
唯「だからって……」
憂「巻き込みたくなかったんだよ。私達を。本当にただそれだけだったんだよ」
唯「なんで……どうして……みんな……言ってくれなかったの」
憂「これ、梓ちゃんにいつかお姉ちゃんが来たら渡してくれって頼まれてたの」
唯「ノート……?」
唯はその1ページ目を開く。
そこには幸せそうな四人が描かれた絵があった。
2.3ページ目へ。
どうすればあずにゃんをペロペロさせることが出来るかなどの案が様々にあげられていた。
そして、選民のところにニジュウマルがされている。
4.5ページ目へ
王様を追い出した後、小さな村に移住させる計画が事細かにかかれていた。
これは王様からの、願いでもあったらしい。
6.7ページ目へ
たくさんの王国の名前があげられていた。
梓大合州国×
ペロにゃん王国△
梓と子リスさん達の国?
あずにゃん王国○
8.9ページ目へ
王の格式はなんたるか、や、剣士の心得、仮にも人を従えるものとしての対応など、色々難しいことが書いていた。
10.11ページ目へ
この頃から忙しくなったのか、書かれていることが疎らになっている。
最初ビッシリ文字を埋めていた綺麗な字の持ち主は、いなくなっていた。
そして、12.13ページ目へ
ペロペロ病について
唯「これだ……」
私はそれを瞬きもせずに目に映す。
平和な世界が続いていく中、突如この辺りで蔓延しだした病気、それがペロペロ病だ。
一度かかると治ることがなく、ただペロペロし続け、最後には死ぬという恐ろしい病気だ。
もしかしたら、私をペロペロし、平和を得る代わりの副作用なのかもしれない。
なら、どうしたらいいのか?
このまま諦めて世界を投げ出すくらいなら、私達はその病気と戦って行こうと思う。
紬が言うにはペロペロ病には憂草が効くそうだ。
それを煎じてみんなに飲ましてみよう。
唯「……」
すぐさま他のペロペロ病について書いてるページを探す。
唯「あった……18ページ目」
このところ、ペロペロ病の患者が増えてきた気がする。
ペロペロ病の人は、他の人と舐め方が異なることが最近わかってきた。
これを利用してペロペロ病の人にだけ何か治療が出来ればいいんだけどな。
唯「……選民は二重の意味があったんだ……!
一つはあずにゃんを舐めさすこと、もう一つはペロペロ病の患者をみつけること」
唯「でもどうしてペロ跳ねなんて荒っぽい真似したんだろ……ちゃんと言えば……」
次のペロペロ病については、24ページ目だった。
とうとう、ムギ先輩がペロペロ病の治し方を見つけた。
早速それを選民の時に見つけたペロペロ病患者に話してみた……しかし、これを断固拒否。
それはそうかもしれない。なんせこの治療は舌の一部を直接切り取るという恐ろしいやり方なのだから。
しかし、本人の了承なく手術(ムギ先輩が名目)をすることは出来ない。
しかし、放っておけばペロペロ病の患者は増え続け、このままだとどちらかを捨てなくてはならなくなる。
私が作った平和か。
私達の体裁か
なら、そんなもの捨てる方は決まっているだろう?
唯「……」
25ページ目
平和を脅かす為と称して、ペロ跳ねという舌を落とす残虐な見せしめを考案した。
これならば、否定することも出来ず舌を差し出すしかない。
澪先輩の腕は誰よりも信じてますから、大丈夫ですよね?>ああ、任せとけ
ちょっとだけ痛いかも、いや、凄い痛いかもしれないけど……死ぬよりはいいはず。
そう信じて、私は今日も悪い国王を演じます。
26ページ目
最近私をペロペロしてもただ反感を表す人が増えてきた。
ムギ先輩の話では水と豊富な食べ物がある場所とそうでない場所とではその差が何倍もあるらしい。
多分私の体を舐めた後、飲み食いする内に効力が下がってくるのだろう。
申し訳ないとは思いつつ、その村の食料や水を王国が管理することにした。
デコ村と言うらしい。
可愛い名前なのに、ごめんね。
もしかしたら、私の力がなくなってるのもあるかもしれない……。
パタンッ……
唯「」
憂「もういいの?」
唯「うん、みんながどれだけ平和の為に色々犠牲にしてたのかは痛いほどわかったから」
憂「でも、最後にここだけは見て」
唯「……」
65ページ目
唯先輩が王宮入りしてくれた!
妹さんの具合は良くないらしいけど、きっと治して見せますからね!
でも唯先輩の妹さんの舌を跳ねるなんて……出来ないよぉ……。
ムギ先輩は飲み薬で何とかしてみるって言ってたけど、もしどうしてもって時になったら……。
そして次のページに、
唯「私とあずにゃんの絵……」
唯「うっ……うぅっ……」
唯「ごめんなさい……あずにゃん……ごめんなさい……」
泣きながらただ謝ることしか出来なかった、だってもう……みんなはこの世界にいないのだから。
憂「お姉ちゃん、忘れないで」
唯「うんっ……うんっ……」
憂「誰よりも平和の為に頑張って、みんなに責められても……みんなを守るために続けて、自らを犠牲にし続けて来た人達のことを」
唯「うん……、絶対に、忘れないから」
憂「私も、忘れないよ。みんなのこと」
唯「……憂、私行かなきゃ。あずにゃん達にお別れ言ってないから」
憂「そっか。じゃあ行ってらっしゃい、お姉ちゃん」
唯「うん、行ってきます」
夕暮れに染まった処刑台。
そこには誰もいない、あるのはただ死体と化した四つの物だった。
埋葬されないまましばらく見せしめとして晒されるのだろう。
唯「っ……!」
それを見て、ただ自分への憤りしか感じられない。
澪ちゃんに言われた通り、私に悲しむ資格なんてないのだ。
知らずとは言え、彼女達をここに追いやったのは他でもない、私なのだから。
一人一人の拘束を解き、担ぐ。
ちゃんと埋葬してあげるぐらいしか、今の私には出来ない。
ごめんね、ごめんね……。
和ちゃん、ムギちゃん、澪ちゃん、そして……。
唯「あずにゃん……」
この小さな小さな体で、どれだけの重荷を背負っていたのだろう。
唯「もう……ゆっくりしていいんだよ、あずにゃん」
最後にぎゅっと抱き締めた後、ゆっくりと穴に落とし、土を被せていく。
唯「おやすみ、あずにゃん……みんなと仲良くね」
さわ子「結局人間ってやめられないのよね、争いを」
唯「さわちゃん……」
さわ子「それにみんながみんな当たり前に平和が与えられるもんだ、なんて勘違いしてる。
その影にはどれぐらい頑張ってる人がいて、何をしてるかも知らずにね」
唯「……」
さわ子「私が彼女に言ったことは3つ。
私から能力をもらったことを人には言わないこと。
三日に一回は全身をペロペロされること。
そして最後は……」
さわ子「幸せになること」
唯「……」
さわ子「別に平和にしろなんて言ってないの。ただ彼女には幸せになってもらいたかったんだけどね。
私も頑張ったけど万能じゃないから。契約違反でどんどん力が弱まって行ったんでしょうね」
唯「だから……最後に?」
さわ子「そ、取り立てたの。平和になる度あの子は幸せじゃなくなって行ったから」
唯「そんなの矛盾してるよ! 平和になる能力を与えておいて、幸せにならなきゃ取り立てるなんて……」
さわ子「それもおかしくないかしら、唯ちゃん。
平和になればその人は幸せになれないの?」
唯「えっ……」
さわ子「じゃあそれは何のための平和なの?
教えて、唯ちゃん」
唯「……」
さわ子「わからないわよね。私が何百年追ってもわからないんだもの」
さわ子「だからやっぱりね、平和ってものは一生来ないものなの」
唯「ううん、違うよ、さわちゃん」
唯「確かにあずにゃん達はこの国に平和をもたらしたんだ……短い間でも……それは確かにみんなの胸に残ってる」
さわ子「そんな証拠どこにあるのかしら?
一人一人の心の中でも見たの?」
唯「見なくてもわかるよ。一週間後、ここに来てみて。そしたら嫌でもわかるから。
私にはその自信がある」
さわ子「いいわ、一週間後ね。何がどうなってるか楽しみにして待ってるわ」
そして、一週間後──
さわ子「……はは、やられたわね」
前までは何もなかったただの土の上に、しっかりと墓標が立てられていた。
その周りには、まるで花畑が引越ししてきたかのような量の花達が並んでいる。
唯「遅かったね、さわちゃん」
さわ子「あなた、あっち側に全部バラしたでしょう?」
唯「えへへ、バレちった。まあそれだけじゃないんだけどね。
第二次ペロペロ大戦を終わらせたのは間違いなくあずにゃんだし、他にも身寄りのない人達をバンバン王国に入れてたらしいからね。
そのことを覚えている人もいるんだよ、ちゃんと」
さわ子「全く……。でもまあ、いいわ。これだけ報われたら、彼女達も幸せでしょう」
唯「……確かにあずにゃん達にも失敗はあった。ちゃんとみんなで話し合えばわかってくれたかもしれないのに。
四人で抱えすぎたんだよ」
さわ子「そうね」
唯「だから、その四人の失敗を無駄にしない為にも、それを次に活かして行かなきゃならないんだよ」
さわ子「そこまでわかっているならもう私は必要ないかしら」
唯「うん。さわちゃんに頼らなかったペロペロ病も発症しないしね」
さわ子「私の性みたいに言わないでよ。あれは平和にするための副作用的なものなんだから。
私だってなくせるものならなくしたいわ」
唯「でももう大丈夫。そんな魔法がなくったてみんながちゃんと平和に生きてくれるよ」
さわ子「そうね。新しい魔法がかかったもんね、゛この子達が進んだ平和への道 ゛っていう魔法が、ね」
唯「もう道を踏み外さないから、ううん……もし踏み外したとしても、私達が残した平和への道が次の世代、次の世代に行って最後にはきっと平和になるから!」
さわ子「そうなると良いわね……」
さわ子「じゃあそろそろ行くわね」
唯「どこに?」
さわ子「さあ、どこかしら。平和にするために色々やってたら不老不死なんかになっちゃって、正直困ってるのよ」
唯「さわちゃんも平和にする為の道を進んだ人だったんだね」
さわ子「まあね。ずっと昔のことだし、たどり着いたのはこんな間違いだらけの魔法だし、本当困ったわ」
唯「じゃあさ、もしいつか平和な世の中になって……当たり前に学校? っていうのに行けて……私達の生まれ変わりみたいな子がいたらさ、先生になってよ! それがあずにゃん達の夢だったから」
さわ子「先生……そうね。もしそんな世界になったら……そうやって生きていくのも悪くないかもね」
唯「約束だよ、さわちゃん」
さわ子「ええ、約束ね」
それからも人々は争い、戦い、殺し合い続けた。
もう終わらしてしまおうかと思った。
あんな約束なんて違えて、自らの命をどうにか絶てないかそんなことばかり考えるようになった。
でも、唯ちゃんや他の子達みたいにいい人もいた。
だから、頑張れた。
ずっとずっと待ち続けた。
紀元前四世紀ぐらいから……今まで、ずっと……ずっと。
そして───
「担任の山中さわ子です。新任だから至らない点もあると思うけど、皆さん一年間よろしくね」
唯「よろしくさわちゃん先生!」
澪「バカッ! さわ子先生だろ!」
律「よろしくさわちゃん!」
紬「よろしくお願いしますしま~す」
和「軽音部、あんまりさわ子先生困らせちゃ駄目よ?」
アハハハハ
私は教師になった。
あの時の約束通り、みんなの。
さわ子「(梓ちゃんは一つズレちゃったけど……やっぱり後輩ポジションに生まれる運命にあると言うことでそのままにしときましょ)」
さわ子「じゃあ皆さん、一時間目の授業は────」
ああ、今日も平和だ。
どうしようもないくらいに。
帰り道
唯「あ~ずにゃん」ぎゅっ
梓「ひあっ! 何するんですかいきなり!」
唯「えへへ~出来心出来心」
梓「出来心で抱きつかれたんじゃたまりませんよ全く」
唯「ではお詫びにこれをあげよう!」
梓「なんですか? これ」
唯「ペロペロアメだよ!」
梓「へー……」
唯「一緒にペロペロしようよあずにゃ~ん」
梓「ちょ、やめてくださいっ」
唯「ペロペロ」
梓「ひゃっ」
唯「……む、どこか懐かしい味がしたような、そんな気が……」
梓「なにバカなこと言ってるんですか! 唯先輩は! もう!
先帰りますからねっ!」
唯「ああん待ってよあずにゃ~ん!」
唯「ペロペロ」
梓「ペロペロ」
唯「こうしてベンチで二人でペロペロアメなめてるなんて……」
梓「なんですか?」
唯「平和だね~」
梓「そうですね」
唯「ずっとこうしていたいね、あずにゃん」
梓「食べ終わったので帰りますね」
唯「もう、あずにゃんいけずぅ~」
そうして私達は家に帰る。
それが当たり前だから。
そんな当たり前も、何かを積み重ねて成ったもの。
この平和も、ずっとずっと積み重ねて成ったものなのだ。
当たり前にあるけど、忘れてはいけない。
唯「平和が一番だね! あずにゃん」
梓「当たり前です」
その平和(当たり前)の大切さを。
おしまい
690 : 以下、名... - 2011/05/08(日) 06:40:57.92 J1xR77zRO 221/226終わりました
一つだけ入れ忘れた伏線があるので、ちょっと補足します
703 : 以下、名... - 2011/05/08(日) 06:51:38.57 J1xR77zRO 222/226と思ったらページ指定とかしてやがる……。
まあ脳内補完でよろしくお願いします
ペロペロ病の病気の進行具合。
1 味覚症状が起きる
2 舌がムズムズする
3 舌がたまにペロペロする
4 舌がペロペロする(止められるレベル)
5 ペロペロがとまらない
6 ペロペロで直ちに問題が出るレベル
7 ペロペロが止む
8 舌が壊死しだす
9 死ぬ
こんな感じです。
唯や律が憂の団子を美味しく感じて、村の人達がまずく感じたのはこの為。
ちなみにデコカレーは美味しいです。
即興でやると拾い忘れが出るのが痛いですね
なにはともあれ終わりです。
まず、ここまで読んでくれた方々に感謝。
そして保守してくれた人達に感謝。
そしてこれを読んで批判でも何でも意見をくれた人に感謝です。それを読んでまた次に活かしたいと思います。
実はそういう意味も込められた題材だったりします。
705 : 以下、名... - 2011/05/08(日) 06:53:39.68 iZ155Y3b0 223/226>>703
味覚障害じゃないのか
もう寝ようぜ
715 : 以下、名... - 2011/05/08(日) 06:58:40.34 J1xR77zRO 224/226>>705
味覚障害ですね……。
寝ます
本当に長い間お疲れさまでした。
これからもけいおんSSをよろしくお願いします
では
719 : 以下、名... - 2011/05/08(日) 07:04:17.37 yx7Slv0g0 225/226乙
読み返すと律のprprが常人と違ったりとか、伏線も多いが回収できていないものも多い
矛盾や解せない点が多いのは仕方ないだろう
大作には付き物だから
724 : 以下、名... - 2011/05/08(日) 07:11:29.09 J1xR77zRO 226/226>>719
その時から律はペロペロ病でその差をペロペロとベロベロにしました
回収出来てないのはほわほわ見てください
歯も磨いたので今度こそ寝ます
あずにゃん王国行ってきます