ここはサバンナの王国プライドランド。
憂「…」にこっ
王国をまとめるライオンの王、憂。
和「…」にこっ
その妻、和。
純「 」ばさっ、ばさっ…すとっ
憂の側近の鳥、純。
紬「…」すた…すた…
占い師でありながら憂の親友、マントヒヒの紬。
紬「…」すっ
赤ちゃんライオン「…?」
今日、憂と和の間に待望の第一子が生まれた!
そしてその子は、「唯」と名付けられた!
『ケイオン キング』
元スレ
紬「アアァッーーーースペンニャアァッーーーー!!!」
http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1306032080/
洞窟・信代の巣
純「信代さん!」ばさっ、ばさっ、…すとっ
信代「…zzz」
純「のーぶーよーさん!!!」
信代「…んん」ぱちっ
純「…もうお昼ですよ」
信代「ああ、姉貴んとこのうるさい鳥か…なんの用?」
純「どうして今朝の唯さん誕生の儀式に出なかったのです?」
信代「なんで出る必要があんのよ」
純「なんで!?あなたは仮にも憂の妹なんですよ!?」
信代「…で?」
純「本来なら動物たちの最前列に並ばなければいけない身分だということが分からんのですか!」
信代「…はァ~ほんとにうるさい鳥だね」
純「だいたいあなたはいつもいつも」ガミガミ
信代「…朝飯はあんたでいいや」
純「!?」
信代「 」ばくんっ!
純「うわ!ちょっ!出せ!出せぇーーーーー!!!」
「信代っ!!!」
信代「…?」ちらっ
憂「……」ゴゴゴゴゴ
信代「…ああ、姉貴かモゴ」
憂「純ちゃんを放して」
信代「ぺっ」
純「どわっ」べちゃっ
憂「どうして今朝儀式に出なかったの?」
信代「ええ?儀式?なんの?」
憂「とぼけないで!唯が生まれたの知ってるでしょ!」
信代「ああ!唯ちゃん誕生の儀式!今日だったんだ!」
憂「……」
信代「ごめん、明日だと思ってたわ」
純「ふん、よく言いますね、知ってたくせに」
信代「 」がちん!
純「ひっ」
憂「…私の跡は唯は継ぐわ。信代、あなたじゃない」
信代「どうぞご自由に」くるっ
憂「待って!私に背を向けるの!?」
信代「はんっ、あんたこそ私に背を向けない方がいいよ…?」にやり
憂「信代っ!!」だだっ
憂「それは…私への挑戦かしら…」ゴゴゴゴ
信代「おいおい…落ち着きなよ」
憂「…」
信代「私があんたに勝てるわけないだろ…?早くその物騒な牙と爪をしまってくれ」
憂「…」
信代「私も忙しいんだ。じゃあね、王サマ…」くるっ…すたすた
憂「……」
純「まったく…ほんと困ったやつだね…あいつは」
憂「…どう接すればいいのか分からない」
純「…ほっとこうよ。あんな奴」
憂「………」
信代「…ふん」すたすたすた…
翌日・早朝
唯「わぁ!お日様がちょっと顔出してる!綺麗~!」だだっ
憂「…zzz」
和「…zzz」
唯「ねぇ!憂!和ちゃん!起きて!起きてよ!」
憂「…ん…どうしたの」むにゃ
唯「ねぇ!和ちゃんも起きて!ねぇってば!こんな時に寝ててどうするの!もうっ!」かじかじ
和「んん…もう…どうしたのよ唯…」
唯「お日様が綺麗なんだってば!ほら!」
憂「ん~よっこらしょ」すっく
唯「ほら!ついてきて!」すたすたすた
憂「ふふ」のしのし
唯「綺麗だね!日の出!」
憂「そうだね」にこり
唯「ここから見える景色って、ぜ~んぶ憂のものなんでしょ?」
憂「そう。陽が当たってるところは全部そうだよ」
唯「わぁ~すごい!」
憂「将来は唯のものになるんだよ」
唯「わぁ!ぜ~んぶ私のもの!?」
憂「そうだよ。唯がこの国の王様になるの」
唯「わ~!あの影になってるところは!?」
憂「あそこは私たちの国じゃないの。だから絶対に入っちゃダメだよ」
唯「入ってみたいなぁ」
憂「めっ!絶対ダメだからね」
唯「ちぇ~」
純「憂ーっ!」ばさっばさっ!
憂「純ちゃん、おはよ」
唯「あ、純ちゃんやっほ~」
純「おはようございます唯さん!憂!ハイエナが数匹、国に入り込んだみたいだよ!」
憂「ハイエナが!?」だだっ
唯「えっ、どこいくの」
憂「純ちゃん!唯をお願い!」だだだだ!
純「わかった!」
唯「えっ、憂ーっ!どこ行くのーっ?」
純「さ、唯さん巣に戻りましょう」
プライドロック(ライオンたちの巣)
唯「あーずにゃん!」だきっ
梓「あ、唯先輩おはようございます」
唯「ねぇねぇあの遠くに見える影になってる所になにがあるか知ってる?」
梓「ああ、あそこは象の墓場があるとか聞いたことがあります」
唯「象の墓場!?ねぇ今日行ってみようよ~!」
梓「ええ!?だ、ダメですよそんなの!絶対行くなって言われてるんですから!それに象の墓ってちょっと怖いじゃないですか」
唯「怖くても私がいるから大丈夫だよ~!私は将来この国の王様になるんだよ?墓なんかに怖がってられないよ」
梓「で、でも…もし行ったことが大人たちにばれたら…」
唯「本当はあずにゃんだって気になってるくせに~」
梓「うっ…わ、私は、別に…気になってなんかないですよ」
唯「いいよじゃあ私1人で行くから」くるっ
梓「あっ」
唯「な~んてね!一緒に行こうよ~!」くるっ…だきっ
梓「うぅ~」
唯「和ちゃん!あずにゃんと遊んでくるね!」
和「巣の外に行くの?」
唯「えっ?ダメなの?」
和「遠くに行かなければいいわ。でも純をお供させるからね」
唯「えぇーっ!?」
~~~~~~
純「さぁ唯さん!梓!今日はなにをして遊びましょう!?」ばさっばさっ
梓「ちょっと!なんで純がいるんですか!」ヒソヒソ
唯「ごめん、和ちゃんが純ちゃんも一緒じゃなきゃダメだって…」ヒソヒソ
梓「これじゃ絶対に象の墓場なんて行けませんよ?」ヒソヒソ
唯「う~ん、あ、待って!私に良い考えがあるよ!」ヒソヒソ
純「ふんふ~ん♪」ばさっ、ばさっ
唯「ねぇねぇ純ちゃん」
純「はい?なんでしょう」
唯「なんか歌うたってよ」
純「いいですよ。なにがご希望ですか?」
唯「あれがいいな、なんか純ちゃんが自分の頭のこと歌ってるやつ」
純「分かりました。こほん、…では」
純「あっめの日は大嫌~い♪湿気で、テンパる天パー♪」
梓「ぷっ」
唯「ふふっ、あずにゃん、ゆっくり、そ~っと」コソーリ
純「と~りの巣な~んて♪言~わないで~♪」
梓「ぷっ、くく」コソーリ、コソーリ
唯「笑っちゃダメだよあずにゃん」コソーリ、コソーリ
~~~~
純「フリフリ!あったま、振り!放課後、jazzyなナンバーをプレイ!」
・・・・・・
~~~~
唯「やったね!上手くいったよ!」だだだだっ
梓「ぷぷ、純のやつ1人でまだ歌ってますよ」だだだだっ
唯「よし!このまま行っちゃおう!」だだだだっ
梓「はいです!」だだだだっ
~~~~~
純「アイ、ワナ、ビア、クールベ」くるっ
純「シスト…ガール…」
・・・・・・・・シーン
純「っ~~~~~~」ぞっ
純「やられた!あ~もうっ!」どひゅんっ!
王国の外
ひゅおぉ~~~~…
唯「うわぁ…」
梓「ほんとに…骨ばっかりですね…それに陽が当たらなくてちょっと寒い…」
唯「ねぇ、もうちょっと奥まで行ってみようよ」トコトコ
梓「え、もうやめましょうよ、なんだか不気味ですよここ」
唯「だ~い丈夫だよ!私は次の王様になるライオンだよ!」フンス
唯「たとえお化けやハイエナが出たって私が」
「あら~、珍しいお客さんが来てるよ」
唯梓「!?」
姫子「ほら、見てみなよいちご」すたすた
いちご「…ライオンだね」すたすた
瀧エリ「はぁ~ちょうどお腹空いてたんだよね~」すたすた
梓「ひっ…か、囲まれた…」ぞくっ
唯「だ、大丈夫だよあずにゃん、ただのハイエナたちだよ」ブルブル
姫子「おや~?あんたもしかして…憂んとこの…」
唯「そ、そうだよ!私たちに何かしたら憂が黙ってないよ…!」
姫子「はんっ!ここは私たちの国だよ」
いちご「…不法入国…」
瀧エリ「…あ~もう我慢できね」がばっ
唯「あずにゃん!逃げるよ!」だだっ!
梓「唯先輩!」だだっ
瀧エリ「がちっ」すかっ
姫子「待てコラァ!」だだ!
唯「はぁ!はぁ!」だだだだっ
梓「はぁ!はぁ!」だだだだっ
唯「うっ…やばい…こんな高い壁よじ登れない…」
梓「そんな…お、追い詰められた…」
姫子「ははは、どうした?追いかけっこはもう終わり?」すたすた
いちご「…ムカつくんだよね…あんたらライオンって」すたすた
瀧エリ「まっ、悪いのはあんたたちだし…」がばあっ
姫子「いただきまぁ~」がばあ
梓「ひっ」
唯「う、うわああ!」ひっかき!
姫子「痛っ!」
唯「はぁーっ!はぁーっ!」
梓「ゆ…唯先輩…」
姫子「……」
いちご「姫子…頬ざっくり切れてるね」
姫子「てめぇ…!」ぷるぷるぷる
唯「はあっ!はあっ!」(あずにゃんだけでも守らなきゃ…)
姫子「ぶっ殺してやる!」ぶちっ
唯「う、うわああああああ!」
梓「唯先輩!」
ひゅおっ
憂「オラァッ!!!!」どかっ
姫子「ぶっ」
エリいちご「!?」
唯梓「憂!!!!」
エリいちご「ひっ」
憂「ふんっ!」どがっ!
姫子いちごエリ「ぐえっ」ごろごろ…!
むくり
姫子「くっ…覚えてやがれ!」だだっ
いちご「ちっ」だだっ
エリ「死ね!」だだっ
憂「……」
純「憂!良かった!間に合って!」ばさっ、ばさっ
憂「うん。ありがとう純ちゃん、教えてくれて…さてと」くるっ
唯「う…い…」
憂「あなたたち…」ぎろり
唯梓「ヒイィィッ」
唯「ご、ごめ…わた…私…」
憂「……」ゴゴゴゴゴゴ
唯「ひっ」
憂「話は後だよ。まずここを出なきゃ」
唯「あ、あずにゃ…ごめん…私のせいで…」
梓「いえ…唯先輩は…勇敢でした…」
純「…」
(まったく…私が憂を呼ばなかったらどうなってたことやら)
~~~~~
王国
憂「純ちゃん、梓ちゃんを家までお願い。私は…唯と話さなくちゃ」
純「分かった」
唯「……」
純「唯さん…頑張って!」ぽんっ
憂「唯…こっちにおいで」
唯「う…憂…ごめんなさい…わた…私…」ポロ…ポロ…
憂「唯…あなたは今日、殺されかけたのよ…?あなただけじゃない。梓ちゃんまで巻き込んで…」
唯「うっ…ひっく…私も…憂みたいに怖いものなんて何もないって…勇気を見せたかったの…」ポロ…ポロ…
憂「勇敢なのと無謀とは違うんだよ…唯。それに…私にだって怖いものはあるよ…?」
唯「…?…憂にも怖いものがあるの…?」
憂「ええ。今日初めて…心の底から怖いと思ったわ。唯…あなたを…失ってしまうかも知れないと思ったから…」
唯「…!」
憂「私はあなたを失うことがなによりも怖いんだよ」
唯「う…い…」
憂「唯…おいで」
唯「うん」てとてと
憂「唯…」ぎゅっ
唯「えへへ…暖かい…」
憂「……」にこっ
唯「ねぇ、憂?」
憂「なぁに?」
唯「私たちっていつまでも一緒だよね?」
憂「うん。唯、星を見てごらん」
唯「きれい…」
憂「私の親…前の王様が言ってた。星空からは…過ぎ去りし偉大な王たちが私たちを見守ってるって」
唯「ホント?」
憂「うん。だから、1人で悩む時は思い出すんだよ?…唯を導いてくれる空の王たちを…」
憂「そして私を…」
唯「…うん。わかった」
きらきら…
洞窟・ハイエナたちの巣
姫子「くっそ!ほんとムカつくぜ!あの猫野郎!まだ頬が痛みやがる!」
いちご「悪いのはあっちなのにね」
瀧エリ「あ~今日も飯抜きだ」
信代「…しくじったか…」のそり
姫子「信代!」
信代「思いもよらないチャンスだったんだけどね…」
姫子「聞いてくれよ!あと少しであのチビを殺せそうだったんだ!」
いちご「そこで邪魔が入った」
瀧エリ「憂の野郎だ…」
信代「わかってる…」
姫子「どうすんだよ信代!憂がいる限りチビは殺せないぜ?」
信代「そうだね…まず憂を殺そう」
姫子「!?」
姫子「憂を殺す!?」
いちご「やつはサバンナ最強…」
瀧エリ「あいつを殺せるやつなんていないって」
信代「ヌーを使う」
「!?」
信代「デスデビルだよ」
姫子「おいおい正気かよ!あいつらに言葉が通じると?」
信代「言葉なんて通じなくたっていいさ…あんた達、なんであのヌーがデスデビルって呼ばれてるか知ってる?」
姫子「知らねぇよ」
信代「群れで大移動する時にあらゆる生き物を轢き殺していくからさ…ゆえに死の悪魔さ」
姫子「!…まさか」
信代「ああ。いくらサバンナ最強といえど…ヌーの群れに轢かれたらただじゃすまない」にやり
姫子「しかしどうやって轢かせるんだ?」
信代「くくく、ちゃ~んと考えてあるよ。もちろんあんたらにも協力してもらう」
姫子「はぁ!?ふざけんな!そんな危険な仕事…」
信代「ほらよ…給料前払いだ」ぶんっ
ドサッ…(シマウマの肉)
姫子いちごエリ「うひょーーーーーーっ!!!」がぶっ
姫子「やる!なんでもやらせてもらいますぜ信代さん」ガツガツもぐもぐ
信代「ああ。期待してるよ」
姫子「しかしあんたも悪だねぇ…仮にもライオンなのに…同属でしかもその王を手にかけようなんて」もぐもぐ
信代「はんっ!王にならなきゃライオンに生まれてきた意味がないのさ」
信代(ああそうとも。憂…あんたを殺して…)
信代「私は神世界の神となる」 ど ん
翌日・峡谷
唯「信代ちゃ~ん!」たたたた
信代「唯!」にこっ
唯「ねぇねぇこの谷にある凄く美味しいものってなに!?昨日信代ちゃんに聞いてから涎が止まらないよ」じゅるり
信代「はは、も~少しここで待ってればくるよ」すたすた
唯「どこいくの?」すたすた
信代「お~っと唯は付いてきちゃダメだ。呼んでくるからここで待ってるんだよ?」
唯「ん~わかった!」
信代「じゃ、あとほんの少し待てば良いからね」すたすた
唯「楽しみだなぁ~どんなものなんだろう」
唯「あずにゃんも呼んでくれば良かったな~!でも信代ちゃん絶対1人で来いって言ってたしな~」
信代「くくく、馬鹿め」
峡谷の上の草原
そこには200頭以上のヌーの大群がのんびり草を食べていた!
そして物陰からヌーの群れをうかがう三匹のハイエナ!
エリ「あ~、もう我慢できね、いいだろ?姫子!一匹ぐらい」ヒソヒソ
姫子「ダメだ!信代の合図があるまで待つよ」ヒソヒソ
エリ「くっそ~!眼の前にこんなに肉がたくさんあるのに!」ヒソヒソ
いちご「あ…信代」
遠くの高台に信代が姿を現した!
信代「 」すっ
エリ「よっしゃ合図だ!」
姫子「いくぜっ!」
三匹のハイエナが突然ヌーの群れに飛びかかった!
ヌー「!!!!!????」
峡谷
ゴゴ…ゴ…
唯「ん?」
ゴゴゴ…ゴ…ゴ…
唯「なんだろう…地響き?」くるっ
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
振り向いた唯の眼に映ったのは!
唯「 」 ざ わ っ
ヌーの群れ「 」ドドドドドドドドド
土埃を上げながら峡谷になだれ込んでくるヌーの大群だった!
唯「うっ…」ぞくり
唯「う、うわああああああああ」くるっ…ダダダダダダ
唯、走る!逃げる!しかし…!
ヌー「マディキャンディ!マディキャンディ!」ドドドドドド
ヌーの脚の方が速い!いずれ追いつかれる!
ヌー「あたまあたまくびっ!」ドドドドッドドドドドド
唯「ひいいいいいいっ!」ダッダダダだ
ヌー「アアイノオオォミライヲオオォチョウダアアアァァァァァァァァァイッ!!!!」ドドドド
唯追いつかれた!唯がヌーの群れに飲み込まれた!
しかしここで唯の身体が小さいことが幸いした!
ヌーの逞しい脚がなかなか唯の身体に当たらないのだ!
唯「!」
唯、1本の枯れかかった小さな木を見つける!
唯「 」だっ…
唯跳ぶ!
唯「 」がしっ…よじよじ
唯木の上に見事避難成功!
木「」ぐらぐらっ…みしっ
しかしヌーたちの身体が木に当たる!木は今にも折れそう!
純「ん?」
憂「どうしたの?純ちゃん」
純「ねぇあの遠くの峡谷のところ…ヌーが大移動してる…」
憂「この時期に?妙だね…」
「憂!ういー!」ダダダ
純憂「!」くるっ
信代「憂!大変だ!ヌーが暴走して峡谷になだれ込んで!峡谷には唯がいるんだ!」ハァッ!ハァッ!
憂「 」 ざ わ っ
~~~~~~
峡谷
ドドドドドドドド
木「」みしっみしっ
唯「だ、だれか…助けて」じわり
憂「唯ぃーーーーーーーーーっ!!!!!」だっ
その時!崖の上から憂がヌーの群れの中に飛び込んだ!
唯「憂!」
憂「唯!絶対その木から手を離さないで!」ダダダ
どかっ!どかっ!
憂「ぐうっ」
しかし唯と違って憂の身体は大きい!
ヌーの突進が憂を直撃する!
唯「憂!憂ぃぃぃぃぃ!」
木「」みしみし…ぼきんっ!!!
ついに木が折れた!
唯「うわあああああああ!」
憂「」だっ……かぷっ
瞬間!ヌーの群れの中から傷だらけの憂が飛び出してきて空中で見事唯をキャッチ!
憂「」だだっ
憂、唯をくわえたままジャンプ!
そして崖にしがみつく!
唯をそこに置く!
唯「憂!憂も早」
どかっ
憂「くぅっ」
憂が崖をよじのぼろうとした瞬間、ヌーの身体が直撃!
憂がヌーの群れに流される!
唯「憂ぃーーーーーっ!」だだっ
唯「だれかっ!だれか憂を助けて!憂が死んじゃう!」ポロ…ポロ…
信代「…」すたすた
信代が崖の上からヌーの群れを観察している!
純「信代さん!」バサッバサッ
信代「!」
純「なにやってんですか信代さん!早く憂を助けてあげぶっ」
信代のビンタが純を直撃!純気絶!
信代「ここからが大事なのよ…」にやり
~~~~~~
ドドドドドドドド
憂「 」だっ
ヌーの群れの中から憂が跳んだ!
そのまま崖をよじのぼる!
憂「ぐっ」はあ、はあ、
憂の前足が頂上についた!
あともう一息!
しかしそこに…
信代「…」すっ
信代が現れた!信代が憂を見下ろす!
憂「の、信代…!手を…!貸して…!」ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ
憂には最早体力が残されていない!幾度となくヌーに轢かれて身体のあちこちの骨にもヒビがはいっている!
信代「……」ゴゴゴゴ
憂「信代…?」
信代「 計 画 通 り 」にやり…
憂「!」
信代「ふんっ!」
ざくっ…
憂「ぐぅぅぅっ!」
憂の前足に信代の爪が突き刺さった!
信代「じゃあね王サマ…国は私に…」
憂「 」
信代「任せな!」ぶんっ
憂「ぬわーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
憂の身体が…!
まっ逆さまに!
ヌーの群れの中へと!
落下していった!
唯「憂ぃーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」
10分後…
ヌーの群れはもう過ぎ去り、峡谷は不気味な静寂に包まれていた!
唯「う、げほっ!ごほっ!う、憂…!」
(凄い土埃…」
唯「憂!憂!どこ…!憂いいいい!」
唯「…ん?」
憂「………」
唯「憂っ!!!!」だだだっ
憂「………」
唯「憂っ!憂っ!う…!!!」
(つ…冷たい…)
憂「………」
唯「う……い……」ポロ…ポロ…
憂「………」
唯「そんな…憂…!目を開けてよ…憂っ!」ポロポロ
憂「………」
唯「ねぇ!憂ってば!お願いだから目を開けてよぉ!」ポロポロ
憂「………」
唯「憂!憂ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
唯「うわあああああああん!あああああああああん!」
唯「誰か!誰か助けてぇぇぇ!ああああああああん!!!」
すた…すた…
信代「……」すっ
信代「唯…」
唯「!」びくっ…くるっ
唯「の、信代ちゃん…」ポロポロ
信代「唯…なにをしたの…?」
唯「うっ…うっ…ヌーの群れから私を守るために…憂が…」ポロポロ
信代「…あなたのせいで…憂は死んだのね…」
唯「うっ!うわああ!うっ!ひっく!」ポロポロ
信代「和たちがこの事実を知ったら…どうなるでしょうね…」
唯「うっ…信代ちゃん…私…どうすれば…」ポロポロ
信代「この国から…逃げな…」
唯「!」
信代「そして二度と戻ってくるな…」
唯「…!」
信代「それが残されたライオンにとっても…あんたにとっても一番良い選択なんだよ」
唯「…わ、わかった…」すっく…たた…たたたたたたた
信代「………」
すっ
その時!
信代の背後に三匹のハイエナが!
姫子「…」
いちご「…」
エリ「…」
信代「…殺せ」
姫子いちごエリ「よっしゃあ!」だだだっ
~~~~~~
唯「はぁっ!はぁっ!」だだだだだだ
「オラァ!待てコラァ!」
唯「ん!?」くるっ
姫子いちごエリ「ひゃっはー!」だだだだだだ
唯「ひっ」だだだだだだだだ
唯は逃げた!必死で逃げた!
峡谷を出て、茨の森を抜け、広大な砂漠に出た!
それでも唯は脚を止めなかった!
姫子「ちっ…この茨の森は私らの身体じゃあ抜けられねぇ!」
いちご「まあでも、あいつもいずれ砂漠でのたれ死ぬでしょ」
エリ「おーいチビ!帰ってきやがったらぶっ殺すかんなあー!」
そのうち唯の身体は、はるか地平線の彼方へ消えていった!
~~~~~~~
王国・ライオンたちの巣
和「うっ…うう…憂…唯…」ぐすん
梓「唯先輩…」ポロ…ポロ
憂と唯を同時に失ったライオンたちは、絶望と悲しみに暮れていた!
信代「憂だけじゃなく唯をも失ったことは、非常に残念だよ…」
信代「しかし私たちライオンは、サバンナをまとめる王族として、前へ進まないといけない」
信代「こうなってしまっては仕方ない。私が憂に代わって王になり…」すっ…すたすた
和「!」
信代「そして新しい時代を築く…」
ハイエナたち「 」ぞろぞろ
ライオンたち「!?」
信代「ハイエナたちと共存し、輝かしい時代を作ろう」
ゴロゴロ…ピッシャーン!
信代(くくく、これで私が…王!!!)
この日から、平和だったサバンナの王国は
暴君・信代が支配する暗黒の時代を迎えることになる!
紬「…なんてこと…」ぐすん
砂漠
唯「はぁ、はぁ、」ふら…ふら…
唯「あ…暑い…」ふら…ふら…
唯「はぁ…はぁ…」ふら…ふら…
唯「もう…だめ…」どさっ
唯「………」
唯「………」すぅ…
砂漠のど真ん中で、唯は気を失った!
第1部 完
律「なぁ澪、もう帰ろうぜ?こんな砂漠に何もねーよ…」ぐったり
澪「待って…もうちょっとで良い詩が浮かびそうなんだよ」
律「だいたいなんで詩を考える為に砂漠に来る必要があるんだよ」
澪「気分転換だよ。いつもと違う環境で……ん?」
律「どした?」
澪「ほら…あそこ…なんか倒れてないか?」
律「む?…ちょっと見てみっか」だだだだだ
澪「あ、ちょっと待ってよ律!」だだだだ
だだだだ……
律「うおっ!」
澪「うわっ!」
唯「………」
律「ライオンじゃねーか!」
澪「ひっ!に、逃げよう!律!」
律「まぁ待て!なんでこんな所にライオンが…?」
澪「そんなことどうでもいいだろ!早く逃げよう!目を覚ましたら食べられちゃうよ!」
律「だ~いじょうぶだって!ライオンっつってもまだ子供だ。それに…」
唯「……」
律「見ろよこの寝顔。なかなか可愛いじゃないか」くすっ
澪「うっ、た、確かに可愛いけど…すぐ大きくなるよ…!」
律「ん…?待てよ…?…よっしゃ!良いこと思いついた!」
澪「どうした?」
律「こいつを仲間にしよう!」
澪「はぁ!?何言ってるんだよ律!」
律「いいか?良く考えてみろ澪!こいつを仲間にして、やがてこいつが立派なライオンになったら…」
澪「!」
律「私たちはジャングルで怖いもの知らずになるぞ!」
律「よし澪!こいつをジャングルまで運ぼう!」
澪「ええ!?で、でも…」
律「ばか!こいつがいればもう黒ヒョウや虎に怯えなくて良いんだぜ?」
澪「うう…わかったよ…よいしょ」背中乗せ
律「よし急ぐぞ!」
~~~~~~~~
ジャングル
律「とりあえず水でもかけりゃ起きるだろ」ぴちゃぴちゃぴちゃ
唯「…ん…」
澪「うわっ」
唯「ん…んん…ん?」ぱちり
澪「ひっ」
唯「…?」ぽけー
律「よっ…気分はどうだ?」
唯「……」きょろ…きょろ…
唯「なんで私…こんなところに…?」
律「お前が砂漠で倒れてたところを私たちが見つけて運んできたんだ」
唯「ん…ありがとう。ところであなたたちは…だれ?」
律「私はミーアキャットの律。んでこっちがイボイノシシの澪だ」
澪「よ…よろしく…」
律「お前の名前はなんてんだ?」
唯「唯だよ…」すっく
唯「助けてくれてありがとう…じゃあね」すたすた
律「ちょ待てよ!どこ行くんだ?」
唯「別に…特にあてはないよ」すたすた
律「ははーん!あいつは今ブルーだ」
澪「いや、どう見ても金茶色だろ…」
律「ばか!そういう意味じゃねーよ!落ち込んでるって意味だ!」
唯「……」ショボーン…すたすた
律「なぁ待てよ!だいぶ落ち込んでるみてーだが…なにがあったんだ?話してみなよ」
唯「…いいよ…とても話す気になんかなれないから…」すたすた
律「わーったわーった!うん!そうだよな!誰にでも死にたくなるぐれーの失敗はある!うん!」
唯「……」
律「私も澪もな、群れを追い出されたんだよ」
唯「…そうなの…?」
澪「うん…でも…後悔はしてないよ」
律「私と澪はさ、種族は違うけど、小さいころからよく遊んでたんだよ」
澪「お互いに歌が好きでさ」
律「ああ!よく群れの仕事すっぽかして2人で歌ったり曲作ったりしてたんだ」
澪「そんなことばっかしてたから群れを追い出されたんだけどな…」くすっ
律「いや、私たちは自分から群れを出たのさ!そしてこのジャングルにたどり着いた!」
澪「うん…食べ物も豊富だし綺麗だし…良い所だよ…ここは」
律「いいか?唯!世間が自分を見なくなったら、自分から背を向けりゃ良いのさ!」
唯「…!」
律「どうしようもなく気分が落ち込んだ時に、一気に楽な気持ちになれる魔法の言葉を教えてやるよ」
唯「?」
律「ふわふわ時間さ」
唯「ふわふわ…時間…?」
澪「そう!私たちのモットーだよ」
唯「モットー?」
律「もっと教えて欲しいってか!ぷっ…!ってやかましいわ」
唯「…はは…」
律「いいか?唯…辛いことがあったら、とりあえず頭の中をふわふわにしちまおうって歌なのさ!」
唯「歌なの?」
澪「ああ!律!枝ドラム頼む!」
律「おう!1、2!1234!」タンタカタンタン
澪「君を見てると、いつもハートdokidoki♪」
唯「!」
澪「ゆれる想いはマシュマロみたいにふーわふわ♪」
澪「いーつも頑張る♪」
律「いーつも頑張る♪」
澪「きーみの横顔♪」
律「きーみの横顔♪」
唯「わぁあ~…!!」ぱあああ
澪「ずーっと見てても、気付かないよね」
唯「…♪」ノリノリ
澪「ゆーめの中なら♪」
律「ゆ」
唯「ゆーめの中なら♪」
律澪「!!」
律「そう!その調子だ唯!」
唯「うんっ!」にこっ
澪「ふーたりのきょーりー♪」
澪律唯「縮められるのーになー♪」
澪「ああカミサマお願い2人だけの♪」
律「ドリームタイムくだーさい♪」
澪「お気に入りのうさちゃん抱いてーえ♪」
律「今夜もオヤスミ♪」
澪「ふわふわ時間♪」
律「ふわふわ時間♪」
澪「ふわふわ時間♪」
唯「ふわふわ時間♪」
澪「ふわふわ時間♪」
律唯「ふわふわ時間♪」
澪律唯「イエーイ!」キャッキャッ
……
そして……
2年の月日が流れた………
今や唯の姿は、茶色いたてがみが凛々しい立派なライオンに成長していた!
唯「だけどそれが一番難しいのよ!」
律「話のきっかけとかどうしよ!」
澪「てか段取り考えてる時点で!」
唯「全然!自然じゃないよね?」
律「ああ!」
澪「もういいや!」
唯「寝ちゃお寝ちゃお寝ちゃおー!」
律澪「そう!寝ちゃおぉー!」
唯律澪「ああカミサマお願い一度だけの♪」
~~~♪
~~~~~~♪
夜
唯「ふぅ~、お腹いっぱい~!」
律「ああ!唯は今日もよく食ったなぁ!」
澪「…綺麗な星だな…」
きらきら…
唯「……」
澪「なんで星ってあんなに綺麗なんだろうな」
律「さぁな…つーかあれってでっけーホタルなんじゃねーの?」
唯「……」
澪「なぁ…唯はどう思う?」
唯「…誰かが…こんなことを言ってた…」
律「おぉ?」
唯「あの星のところから…死んでいった昔の王様たちが私たちを見守ってるって……」
律「…!」
澪「…!」
律「…死んだ連中がピカピカ輝いて見守ってるってのか…??」
唯「うん…」
律「ぷっ…!あっははははははははははは!」
唯「!」
澪「あは!あはははははは!」
律「おいおい…澪なみにメルヘンチックな野郎だな…そいつは!ぷっあははははは!」
澪「ふふふ!でもその発想、良い詩が書けそうだな!あははははは!」
唯「は…はは…そ、そうだよね、変だよね…あは、あははは…は…」
唯「はは…は…」
唯「…はぁ」すっく
律澪「!」
律「唯…?」
唯「……」すたすたすた
律「私たち…なんか気に障ること言ったか…?」
澪「いや…」
唯「……綺麗な星…」
きらきら…
唯(憂…)
唯「…はぁ」すとん!
唯「……」
~~~~~~~
紬の家
斉藤「紬お嬢様」
紬「どうしたの?斉藤」
斉藤「先日、私の部下が、遥か南の砂漠を越えたところにあるジャングルで妙なものを見つけてきまして…」
紬「…?」
斉藤「こちらでございます」すっ
紬「…茶色い…毛…?」
紬「…くんくん」
紬「!…この匂いは…」
斉藤「その部下の話によりますと、ジャングルで憂王に良く似た茶色いたてがみのライオンを見たとのことですが…」
紬「!」(まさかっ!)
紬「斉藤!この毛を占ってみるわ!水晶を持ってきて!」
斉藤「はっ!すでに持ってきております」すっ
紬「貸して!」
紬「76人の妖精たちよ…フォルテシモ…タクアン…」
水晶「」ぴかーん!
紬「!」
斉藤「!」
紬「こ…これは…!!」
斉藤「お嬢様…!」
紬「斉藤ぉーーーーーーーっ!!!」だきっ
斉藤「はううぅっ!お、おおおおおおお嬢様!?」
紬「生きてる!唯ちゃんは生きてるわ!」ポロ…ポロ…
斉藤「そ、それは…良かった…!お、お嬢様…そ、そろそろお離れ下さい!」どきどき
紬「良かった…!唯ちゃん!生きてて良かった!!」ポロポロ
斉藤「お、お嬢様…はぁ…はぁ…」
紬「斉藤!私は今すぐ唯ちゃんを迎えに行くわ!」
斉藤「なんですと!?こんな夜中に!?」
紬「ええ!お父様にはなんか適当に言っといてちょうだい!」
斉藤「そ、そんな!私が旦那様にお叱りを…」
紬「じゃあね!ここは任せたわ斉藤!」だだだだだ!
斉藤「お嬢様!お嬢様ぁーーーーー!!!」
紬「うふふ……時は来たり…!!!」だだだだだ
ジャングル
ちゅん…チュン…
澪「ん…もう朝か」
唯「…ZZZ」
律「…ZZZ」
澪「ちょっと散歩でもしてくるかな」すっく
~~~~~~
澪「う~ん最近良い詩が思い浮かばないなぁ」
がさっ
澪「!?」くるっ
・・・・・・
澪「り…律…?」
澪「…律か…?おい変ないたずらはよせ…!」
・・・・・・がさっ
澪「…?」
びゅおっ
ライオン「にゃああああ!」
澪「う、うわああああああああああ!!!!」くるっ、どひゅん!
ライオン「にゃあああああ!」だだだだだだだ!
澪「ひいいいいいいい!」だだだだだだだ!
ライオン「にゃおらあ!」がばっ
澪「ひっ」(だめだ!つかまる!)
ひゅおっ
唯「こらぁーーーーーーっ!」がばっ
ライオン「!?」
澪「唯!」
ライオン「にゃおらあ!」どか!どか!
唯「この!よくも澪ちゃんを!」どか!どか!
律「澪!大丈夫か!?」
澪「律ぅううううう!」だきっ
律「おおよしよし!今に唯が追っ払ってくれるさ!いけ!唯!そこだ!」
ライオン「にゃあ!にゃおらあ!」どかっ!
唯「ふんす!」だきっ!
律「よし!そのまま投げちまえ!」
唯「…!?」(この抱き心地と香り…まさか!)
唯「あず…にゃん…?」
ライオン「…!…え…?」すっ…後ずさり
唯「もしかして…あずにゃん!?」
ライオン「え…?…だれ…!?」
唯「私だよ…!唯だよ…!」
梓「唯…先輩…?」
唯「あずにゃん…!」にこっ
梓「唯先輩…!」
唯「あずにゃーんっ!!!!」だきっ
梓「ゆ、唯先輩いいいいいい!」
唯「あはっ!どうしてあずにゃんが!?」
梓「どうして唯先輩が!?」
わいのわいの
律澪「………」ポカーン
梓「なぜ唯先輩がここにいるんですか!?」わいわい
唯「わああ!また会えるなんて夢にも思ってなかった!」わいわい
梓「ホントに信じられないです!」わいわい
律「おいおい…これは…どうなってんだ…?」
唯「あはっ!どうなってるの!?」わいわい
梓「こっちが聞きたいです!いったいどうなってるんですか!?」わいわい
律「 お い っ !! どーなってんだよっ!」
唯「あはっ!紹介するね!私の一番の親友のあずにゃんだよ!」
梓「よろしくです!」
唯「でこっちがりっちゃん!あっちが澪ちゃんだよ!」
梓「あ、さっき襲っちゃってすみませんでした」ぺこり
澪「い、いえ…」
唯「はあ~!あずにゃんにまた会えて良かったぁ~!」だきっ
梓「私もまさかこんな所で会えるとは思ってませんでした!」
唯「ん~やっぱり可愛い~」スリスリ
梓(えへ~…やっぱ気持ちいいな…唯先輩のハグ……はっ!)
「唯先輩!あなたがここにいることを国のみんなに知らせたいです!特に和さん!きっとびっくりしますよ!」」
唯「え…」
唯「いや…知らせなくていいよ…内緒にしといてほしい…な…」
梓「どうしてですか!?みんな死んだと思ってるんですよ!?」
唯「え…ホントに…?」
梓「はい!信代からヌーの暴走のこと聞きました!」
唯「そう……他にはなにか言ってた…?」
梓「そんなことどうでもいいじゃないですか生きてたんですから!」
梓「唯先輩が生きてるんなら、王は唯先輩ですよ!」
唯「!」
律「なんだって…!?」
澪「王様!?」
律「え…おい…唯、お前…王様なのか…?」
澪「凄いじゃないか唯!」
唯「違うよ私は王様じゃない!なるはずだったってだけだよ!それも昔の話…だよ」
梓「え、唯先輩なに言ってるんですか…!?」
律「聞き捨てならねーな…王様だってのに、隠してたのか?」
唯「私はただのライオンだよ!」
梓「すみませんお2人方…ちょっと唯先輩と話したいので…席外してもらってもいいですか…?」
律「おいおいよせよ…私たちは仲間だぜ?内緒話なんて冗談じゃねーよ、な?唯?」
唯「ん~……ちょっとあずにゃんと2人にしてもらえないかな?」
律「 」
律「はぁ~あ…これだよ…もう王様気分だ…行こうぜ澪!私たちはお邪魔だとさ!」すたすた
澪「あ、ちょっと待ってよ律!」すたすた
唯「ふふ…あんなこと言ってるけど…良い子たちなんだよ」
梓「……」
唯「どうしたの?…話って?」
梓「唯先輩が生きてたなんて…王国のみんなにとっては大事件ですよ…!」
唯「……」
梓「死んだと思ってた…」じわ…
唯「あずにゃん…」ぎゅうっ
梓「ずっと…会いたかった…」ポロ…ポロ…
唯「私もだよ…あずにゃん…」ぎゅぎゅう…
~~~~~
がさごそ…じー
律「…こいつは匂うな」
澪「あ、ごめん、臭いかな?さっき追いかけられて汗かいたから…」
律「ちげーよあいつらだ!」
澪「え…?」
律「唯の野郎……恋してやがるぜ」
澪「え!唯があの梓って子に?」
律「ああ!あいつが恋をしてるってことは…」
澪「…そんな」じわ
律「また私と澪…2人だけの生活に戻っちまうな…」じわ
~~~~~
唯「あずにゃん!せっかくだからここをいろいろ教えてあげるね!」
梓「はいっ!」
その日!
唯と梓は日が暮れるまでジャングルの中を駆け回ったり抱き合ったりして遊んだ!
そして…
夜
唯「はぁー!久しぶりにあずにゃんと遊んで楽しかったー!」てくてく
梓「はい!私も楽しかったです!」てくてく
唯「良い所でしょ?ここ」
梓「はい…素敵な所ですね……ねぇ…唯先輩!」
唯「なぁに?」
梓「どうして国に戻らないんですか?みんな待ってますよ」
唯「…そんなことないよ」
梓「なに言ってるんですか!唯先輩は王様なんですよ!?」
唯「…違うよ…王様は信代ちゃんだよ」
梓「信代はハイエナと手を組みました」
唯「…え!?」
梓「もう王国は何もかもめちゃくちゃです。食料も水もない」
唯「……」
梓「なんとかしないと滅びます」
唯「……私は……戻れないよ…」
(私のせいで……憂は……)
梓「なんでですか!?」
(唯先輩はなにか隠してる…!?)
唯「あずにゃんには分からないよ……」
梓「じゃあ教えて下さいよ!」
唯「いいんだよ!そんなことはどうでもいいの!」
梓「……なんですって…?」
唯「ふわふわ時間だよ!あずにゃん!」
梓「…え?」
唯「ふわふわ時間!ここで学んだことなんだよ!」
梓「……」
唯「なにか悩みがあったら頭の中をふわふわにすれば良いの!」
梓「唯先輩っ!!!」
唯「過去は変えられないんだよ…そうだよ、なるようにしかならないんだよ…」
梓「唯先輩の責任はどうなるんですか!?」
唯「あずにゃんだって故郷を捨てたじゃん!」
梓「助けを求めて旅立ったんですよ!そして唯先輩と巡りあった!」
唯「私なんかじゃ国は救えないよ……」すたすた
梓「国を救えるのは唯先輩だけなんです!そうなんですよ!」
唯「ごめん……他を当たって…」すたすた
梓「唯先輩!!何があったんですか!?……私の知ってる唯先輩じゃない!!」
唯「そうだよ……違うんだよ……分かった?これで気が済んだでしょ?」
梓「いいえ!がっかりしました…!」
唯「そうだよ、私は憂みたいな立派な王様にはなれないんだよ……」すたすた
梓「今の唯先輩を見て憂が喜ぶと思いますか!?」
唯「…!!!」ピタッ
梓「憂だってがっかりしてますよ!」
唯「……うう!」くるっ
唯「いきなり現れて偉そうな口聞かないでよ!私の苦しみも知らないで!」
梓「じゃあ教えてくれたって良いじゃないですか!」
唯「言ったって分かんないよ!もうほっといてよ!」だだだだだ!
梓「唯先輩っ!!」
~~~~~~
丘の上
唯「私には出来ないんだよ…!」アッチニウロウロ
唯「私は戻れない……」コッチニウロウロ
唯「私の力でいったいなにが出来るっていうの…?」アッチニウロウロ
唯「私じゃ無理…出来っこないよ…」コッチニウロウロ
唯「そもそも私のせいなんだよ…」ウロウロ
唯「なにもかも…」じわり
唯「全部私のせいなんだよ…」ホシゾラミアゲ
唯「憂……!!」ポロ…ポロ…
~『1人で悩む時は思い出すんだよ?導いてくれる空の王たちを…』
~『そして、私を…』
唯「導いてくれるって言ったのにっ!」ポロ…ポロ…
唯「ううっ…うっ……憂……会いたいよぉ…」ポロ…ポロ…
唯「うっ…ひっく…うっ…」
「76keys 76人の~♪、妖精~♪」
唯「………?」
「私の~想いを~伝えて~♪」
唯「……?」
(綺麗な歌声……)
「こんばんわ♪」
唯「うわっ!」くるっ
紬「うふふ、どうしたの?浮かない顔して」
唯「なんでもないよ…」すたすた
(うわあ…金色で…ゴージャスなお猿さんだなあ)
紬「待って…どこに行くの?」にこにこ
唯「別に…ていうかあなたはなんでそんなに嬉しそうなの?そんな歌っちゃうほど良いことがあったの?」
紬「ええ!と~っても嬉しいことがあったのよ」にこにこ
唯「そう…良かったね…」すたすた
紬「あなたは落ち込んでるみたいだけど…どうしたの?」にこにこ
唯「いやちょっとね…自分が何者なのか…分かんなくなったっていうか…」
紬「あら、私はあなたがなんなのかよ~く知ってるわよ?」にこにこ
唯「私あなたみたいな金色で眉毛の太い猿知らないよ」すたすた
紬「あら待ってったら!…憂王の1人娘、唯ちゃん♪」
唯「!!」ピタッ
紬「うふふ」
唯「え…なんで…あなたは…だれ…」
紬「うふふふ」だだっ
唯「あっ!待って!」だだっ!
唯は紬を追いかけた!
そしていつの間にか神秘的な泉のある広場へと出た!
唯「はぁ、はぁ」
紬「うふふ、あなたさっき…憂ちゃんに会いたいって言ってたわね?」
唯「!」
紬「そこの泉を覗いてごらんなさい…」
唯「……」そぉ~…
水面に唯の顔が映った!
その顔は!!!
唯「う……う……い……」じわ
紬「ふふっ」
唯「い、いや違うよ!これは憂じゃない!私だよ!」プイッ
紬「違うわ、唯ちゃん。もう一度よ~く見てみて…?」
唯「…?」そぉ~
水面に映った憂に瓜二つの唯の顔!
唯「……」
水面の顔「……」
その時!
唯「……」じわ
水面の顔「……」ニコッ
唯「!!」
唯は確かに見た!
自分は笑ってない!涙ぐんでいたから絶対に笑ってない!
しかし水面に映った自分の顔は!
否!
水 面 に 映 っ た 憂 の 顔 は !
確かに優しく微笑んだのだ!
唯「う…憂…」ポロ…ポロ…
唯「憂だ…」ポロ…ポロ…
紬「…唯ちゃん」にこっ
唯「こんなところにいたんだ…憂…!」ポロ…ポロ…
紬「憂ちゃんはね…」
唯「憂…!憂ぃ…!!」ポロ…ポロ…
紬「あなたの中で……生き続けてるのよ」
唯「憂ぃぃぃぃぃ!」ポロ…ポロ…グスン
『思い出して…唯…!』
『あなたが何者か…何をすべきか…』
唯「憂!憂ぃぃぃぃぃい!』
『思い出して…唯!』
唯「憂!待って!憂ぃぃぃ!」
・・・・・・・・・・
唯「…はぁ!…はぁ!」
紬「あら?なにかしらね?今の声は…」にこにこ
唯「……」
唯「分かったよ…憂…」
紬「!」
唯「思い出した…!自分がなんなのか!」
紬「!」
唯「ふんす!」だだだだ!
紬「ちょっと!どこに行くの!?」
唯「国だよ!私が国を救うんだよ!」だだだだだ
紬「まぁ!ふふっ!そう!あはっ!あはははは!」
唯「ふんすふんすふんすふんすふんすー!!!」だだだだだだだ
紬「ふふっ!頑張って唯ちゃん!ふふっ!あはは!あははははは!」にこっ
唯はふっきれた!そして過去の自分と戦い王国を取り戻す為、この平和なジャングルを飛び出したのだ!
翌日
律「…zzz」
澪「…zzz」
梓「ねぇ…!律先輩!澪先輩!」
律「…ん?」ぱちっ
梓「ねぇ律先輩!」ドアップ
律「うおああああああああっ!」びくっ
澪「うわあああああああああっ!」びくっ
梓「ちょっ…大丈夫!落ち着いてください!大丈夫ですってば!」
律「はぁっ!はぁっ!なんだ梓か…!はぁっ!はぁっ!二度と驚かすんじゃねぇ…!はぁっ!はぁっ!」
澪「た、食べられるかと思った…!」
梓「ごめんなさい。それより…唯先輩見ませんでした?」
律「唯?…一緒じゃねーのかよ…?」
梓「どこかへ行っちゃったんですよ。知りませんか?」
「うふふふ、唯ちゃんはもうここにはいないわよ」
梓律澪「!?」くるっ
梓「ムギ先輩!!」
律澪「だれ?」
紬「王は帰られたわ!」
梓「帰った!?」ぱああああ
律「どういうこと?」
澪「?」
梓「唯先輩は戦いに行ったんですよ!」
律「だれと?」
梓「信代と!」
梓「唯先輩は信代と対決するために帰ったんですよ!」ぱああああ
紬「さぁあなたたち!私たちも唯ちゃんを追うわよ!」
梓「はいです!」だだっ
律「え?」
澪「え?え?」
梓「なにやってるんですか律先輩澪先輩!先輩たちも行くんですよ!」
律澪「え!私たちも行くの!?」
梓「当たり前じゃないですか仲間なんですから!さぁ行きますよ!」だだだだ
紬「うふふふ」だだだだ
唯!梓!律!澪!紬!
この美しき少女たちによって!今!王国奪還の戦いの火蓋が!
切って落とされたのである!
王国
ひゅおぉ~~~~……
唯「……」コソーリ
唯「そんな…」
そこには、唯の知ってる王国の姿はなかった!
草木は枯れ、灰色一色の荒野と化していた!
「これが今の王国の現状ですよ、唯先輩」
唯「ん!」くるっ
梓「唯先輩!」にこっ
唯「あずにゃん!」だきっ
律「うわっ…ひっでーところだな」
澪「本当に王国なのか?」
唯「りっちゃん!澪ちゃんまで!来てくれたんだ!」ぱあああ
紬「私もいるわよ、唯ちゃん」にこっ
唯「あっ、金色のお猿さん!」
梓「この人は占い師のムギ先輩ですよ!唯先輩も小さい頃お世話になったんですよ?」
唯「え、そうなの?ご、ごめんムギちゃん」
紬「うふふ、良いわよ」にこっ
律「しかしよぉ、唯…本当にこんな所の為に戦うのか?」
唯「…今は変わり果てちゃってるけど…それでも私の王国なんだよ。絶対に取り戻すよ」
梓「唯先輩…!」ぽっ
澪「しかしどうするんだ?ハイエナが至る所にいるぞ?」
唯「うん。まずあのハイエナたちをなんとかしなきゃ…」
律「誰かが囮になって引き付けるか?」
唯「!…そうだね!それしかないよ!」
律「だな!よし、じゃあ囮役はあずs」
唯「りっちゃん澪ちゃんお願い!」
律「…はい?」
唯「りっちゃんと澪ちゃんしかいないんだよ!」
律「ふざけんな!なんd」
紬「分かったわ!私も一緒に囮になる!」
梓「ムギ先輩も一緒なら安心ですね!」
律「おい!話を勝手に進めるな!」
澪「お、おい、律、あんまり大きい声だすなよ」
紬「さぁりっちゃん澪ちゃん行くわよ!ハイエナは私たちに任せて!」
唯「うん!ありがとうムギちゃん!」
梓「気を付けて下さいね!」
~~~~~
姫子「あ~、腹減ったな…」
いちご「…うん」
~ちゃんちゃんらんらんらら~ら~♪(翼をください)
エリ「ん?」
紬「♪」
律「♪」(くそっ!なんでこんなこと…)
澪「♪」びくびく
姫子「おいおい…なんだそりゃ…翼をくださいか?」すたすた
いちご「猿とミーアキャットとイボイノシシ…」すたすた
エリ「ごちそうだ!」すたすた
姫子「かかれ!」だだっ
紬「逃げるわよ!」どひゅん!
律澪「あ、ああ!」どひゅん!
姫子「待てコラァ!」ドヒュン!
~~~~~~
唯「……」コソーリ
梓「ムギ先輩たち…上手くやってくれたみたいですね」コソーリ
唯「うん…!あずにゃん!」
梓「はい!」
唯「こんな時に言うのもおかしいけど…今…言っておきたいから…」
梓「…?」
唯「あずにゃん!この戦いが終わって…私が王位を取り戻したら…結婚しよう!」
梓「えぇっ!?」どっきーん!
唯「ずっと好きだったよ…あずにゃん」
梓「えっえっえっ」かぁ~
唯「返事は今しなくていいよ。私の気持ちを伝えたかっただけだから」にこっ
梓「いっいっいっ今っ!今返事しますっ!」かぁ~
唯「え…!」
梓「わ、私も…ずっと好きでした…お願いします…」かぁ~
唯「あずにゃん!」がばっ
梓「ゆっ…唯先輩…」かぁ~
唯「あずにゃ~ん!」スリすり
梓「ううっ…で、でも…まずはこの戦いに勝たないと…!」
唯「そうだね!よし!じゃああずにゃんは他のライオンたちを集めてくれる…?」
梓「分かりました!」
唯「頼んだよ!私は……信代のところへ!」ゴゴゴゴ
梓「一騎打ちですね……」
唯「うん!」ふんす!
梓「唯先輩!約束してください!」
唯「え?」
梓「絶対…死なないって…!」
唯「あずにゃん…」
梓「死んだりなんかしたら…許しませんからね!」
唯「うん…!分かったよ!」にこっ
唯「それじゃああずにゃん!頼んだよ!」たたたた
梓「はい!」たたたたた
唯(絶対にこの国を…取り戻してみせる!)
~~~~~~~
ゴゴゴゴ
空は今にも夕立がきそうな曇り空!遠くで雷の音が轟いていた!
信代「和ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
ゴロゴロピッシャーん!近くに雷が落ちた!
和「……」すたすたすた
信代「……」ゴゴゴゴ
和「……」
信代「なぜ狩りへ行かない!?」
和「もう獲物がいないのよ…」
信代「捜し方が足りないんだよ!もっと遠くまで探せ!」
和「無駄よ。もうこの国は終わりだわ。遠くへ旅立つしかない」
信代「ダメだ!私の王国から出ることは許さん」
和「なにが王国よ…!あなたなんか憂の足元にも及ばないわ!」
信代「…なに?」ぴくっ
和「あなたは王座に就いてからなにか王様らしい働きをしたの!?1日中寝てただけじゃない!」
信代「その名を口に出すなと言ったはずだよ!」ビンタ!
和「うっ」どかっ!ごろごろ
「信代ぉっ!!!」
信代「!?」
和「!?」
唯「……」ゴゴゴゴゴゴ
信代「なっ…!」
和「う…」
信代「憂!?なぜ!?お前は…死んだはず!」アトズサリ
唯「……」すたすた
唯「和ちゃん…ただいま」ぎゅっ
和「憂……憂なのね?」ポロ…ポロ…
唯「くすっ…違うよ…私だよ…唯だよ」にこっ
和「唯!?…まぁ…!生きていたなんて!」ぎゅう
唯「ふふ、ごめんね。もう大丈夫だからね」
信代「唯…」
(ちっ…生きていやがったか!)
唯「…信代…」ギロリ
信代「!」
唯「……」ゴゴゴゴ…すたすたすた
信代「は、はは…唯…立派になったね…憂にそっくりだ」
唯「今すぐ王座を明け渡して」
信代「そうしたいのはやまやまなんだけどさ…」
唯「…?」
信代「納得しない連中がいてね…」チラッ
唯「!」
ハイエナたち「グルルルルル!」
信代「殺気立ったこいつらを説得するのは無理な話さ」にやり
唯「……」
信代「どうする?多勢に無勢だと思うけど…こいつらと戦うかい?」にやり
「多勢に無勢なんかじゃありませんよ」
信代「!?」
ライオンたち「グルルルルル!」
梓「唯先輩!ありったけのライオンたちを集めてきました!」
唯「あずにゃん…」にこっ
信代「くっ」
唯「さぁどうするの信代!今ここで私たちと戦うか!王座を明け渡すか!」
信代「くっ…おいおい待て待て…私は暴力は嫌いなんだ…」
唯「……」
信代「唯…過去を乗り越えたみたいだね…」
唯「うん…!」
信代「あんたは乗り越えることが出来ても……後ろの連中はどうなのかしらね…」
和「…?」
梓「…?」
和「唯…!いったいなんの話をしているの!?」
信代「!」(はっは~ん…)
信代「へぇ~!そうか!まだあの秘密を打ち明けてなかったのか!唯!」にた~り
唯「…!」
梓「…唯先輩?」
信代「ちょうど良い機会だ!今ここで教えてやんな!」
唯「 」
信代「あんたの秘密を!!」
梓「 」
信代「憂が誰のせいで死んだのかをっ!!!!!」
和「 」
唯「………」
和「………」
梓「………」
唯「…私のせいなの…」
ライオンたち「!!!!」
信代「ふふっ」にやり
和「唯…!今なんて…!?」
唯「ごめんなさい…憂は…私のせいで死んだの」
梓「…!」
和「嘘よ!唯!嘘と言いなさい!早く!」
唯「本当なんだよ…ヌーたちから私を守るために…憂は…」
和「そんな…!」
信代(にや~り…)
信代「聞いたっ!?みんなっ!こいつが歴代最高の王だった憂を殺したんだ!」
唯「違う!殺してない!事故だよ!」
信代「いいやお前が殺したも同然だよ!この悪党め!」ずいずい
唯「ち、違う!」アトズサリ
信代「なにが違うの?あの日あんたが峡谷にさえ行かなければ憂が死ぬことはなかった!そうだろ!?」ずいずい
唯「うっ…そ、それは…」アトズサリ
信代「王国のみんなが憂というかけがえのない光を失って悲しみに暮れた時も、あんたは1人逃げ出したんだ!」ずいずい
唯「そ、それは信y」がくんっ!
唯「!?」
梓「唯先輩っ!!」
信代に気おされ、唯が後ずさった先は岩の先端だった!
唯の下半身が宙に投げ出された!
唯は前足で岩につかまりぶら下がってる状態になった!
唯「うっ…」
信代「おや~?……はて……どこかで見た光景だね…」
唯「うっ…ううっ…」ガリガリ
(やばい…落ちる!)
信代「ああ!…思い出したよ…」
唯「うっ…くっ」ガリガリ
信代「憂が死ぬ時と全く同じ格好してるよ…あんた」にやり
唯「!」
信代「冥土の土産に良いこと教えてやるよ…唯」
唯「 」
すっ
信代は口元を唯の耳に近付け、そしてささやくように言った!
信代「 」ゴゴゴゴ
唯「 」
信代「 憂 を 殺 し た の は 私 だ よ 」
唯「 」
瞬間!唯の脳内にあの日の光景がフラッシュバックした!
憂がヌーの群れに吸い込まれて行くあの瞬間!
唯「うわああああああああああああああ」
唯「ああああああああああっ!!!」ぐいっ
信代「ぐえっ」どかっ
なんと!唯は前足のバネを使って一気に身を岩の上まで乗り出し、信代を押し倒し、信代の首を絞めたのだ!
唯「卑怯者っ!!!」
信代「ぐっ…」
唯「言え!もう一度!!」
信代「ふっ…ふふ…憂を殺したのは私さ…」
唯「違う!もっとみんなに聞こえるように言えぇーーーーーーっ!!!」
信代「私が憂を殺したぁっ!!!!!!」
和「 」ぷっつーん
梓「 」
ハイエナたち「がらあっ!」
ハイエナたちが一斉に唯に飛びかかった!
唯「!」
ライオンたち「おらぁ!」
ライオンたちもハイエナたちに飛びかかった!
ライオン対ハイエナの大乱闘となった!
憂の死の真相を知り、怒ったライオンは強かった!
ライオンたちはハイエナを次々と蹴散らしていった!
信代「くっ…今のうちに…」こそこそ
唯「信代っ!」だだっ
信代「ちっ」だだっ
唯は信代を追った!
そして!~~~~~~
~~~~~~
信代「……」ゴゴゴゴ
唯「……」すたっ
信代「……」ゴゴゴゴ
唯「……」ゴゴゴゴ
今まさに!唯と信代の王座をかけた決闘が始まろうとしていた!
~~~岩の上
唯「もう逃げられないよ…信代」ゴゴゴゴ
信代「ふ……ふふ…」
唯「……」ゴゴゴゴ
信代「……嬉しいよ…唯……」ぐぐぐ
唯「……」ぐぐぐ
二頭のライオンは後ろ足で立ち上がった!
熊が時折見せるような二足歩行の状態である!
信代「……あんたを私自らの手で殺せてさ!」ゴオオオオオオ
信代の身体から暗黒のオーラが真上に渦を巻きながらほとばしった!
信代の黒いたてがみがざわりと逆立った!
唯「ああああああっ!」だだっ
信代「らああああっ!」だだっ
2人の身体がほぼ同時に動いた!
信代「しゃあっ!」ひゅっ!ひゅっ!
信代の爪が立て続けに唯の顔面を襲う!
唯は、頭を沈めて信代の爪をかわす!
唯の茶色いたてがみをひきちぎって、すれすれに信代の爪がかすめていく!
信代「死ねオラァァアッ!!!!」
信代が吠え、強烈な右の爪を唯に向かって真っ直ぐ突き刺してきた!
唯「!」ぐっ
唯は、両掌を前に突き出し、ボールを受け取るキャッチャーのように、その右手を両掌に包み込んだ!
そのまま、信代の爪のスピードを殺さずに、横に流した!
自分の左に流れていく信代の右手を握ったまま、唯は両脚で地面を蹴り、跳躍した!
ごっごっ…!
左脚の方がわずかに速い!唯の左脚のつま先が、信代の顎にめり込んだ!
次の瞬間、わずかに遅れた右足の甲が、のけぞった信代の側頭部を強かに叩いていた!
双龍脚ーーーーーー左右の上段蹴りをほぼ同時に繰り出すという神業である!(参照・修羅の門)
唯が宙で両手を放すと、信代は地面に崩れ落ちた!
唯「フーッ!フーッ!」ゴゴゴゴ
信代「くっ…てめぇ…!!」ギロリ!
そう!唯は強かった!
なぜか?
唯は起伏の激しいジャングルを律澪と共に毎日駆け回っていたおかげで、しなやかで強靭な筋肉が発達していたのだ!
さらに一番の原因はジャングルに巣食う猛獣たちだった!
律澪を守るため黒ヒョウや虎やゴリラなどと幾度となく戦い、実践経験も充分に積んでいたのだ!
さらにさらに今!信代が憂の仇だと知った今!
唯は怒りでボルテージがあがり、力、攻撃性が普段と比較にならないほど上昇していたのである!
唯「ほら…立ちなよ…」ゴゴゴゴ
信代「ふふ…ふ…」すっく
じゃり…
信代は立ち上がる時に、左手にいくつかの小石を掴んだ!
信代「おらぁっ!」ぶんっ
その小石群を唯の顔面に向かって投げた!
唯の意識が小石に集中する!
信代「 」だだっ
信代の身体が唯に向かって疾った!
唯「ふんっ!」ばしっ
唯が右前足で小石群を弾いた!
信代「 」
唯「!」
小石は文字通りの布石!
すぐ眼の前に信代がいた!
信代「おらぁっ!」どかっ
信代のタックル!
唯が仰向けに押し倒された!
唯「ぐっ!」どしーん!
信代「死ねオラァ!」びゅっ
信代の左の爪が真下の唯の喉元に向かって疾る!
がこっ…!
信代「ぶっ…!」
しかし!唯のアッパーが信代のストレートより一瞬速く、信代の顎を貫いていた!
そう!唯は押し倒された状態にもかかわらず、下から攻撃を放ったのである!
信代「…ッ」
信代が仰け反った!
唯が立ち上がった!
唯「おおおおおおおおおお!」だだっ!
唯(憂っ!!!!!)
唯の全身全霊をかけた突進が、信代の身体にクリーンヒットした!
信代が吹っ飛んだ!
吹っ飛んだ先は…!岩の先端!足場がなかった!信代の身体が宙へ投げ出された!
信代「うおおおおおおおおおおおお!」
どしゃっ……
数十メートル先にあった地面に、信代の身体が激突した…!
唯「……信代……」
「唯先輩っ!」
唯「!」くるっ
梓「はぁっ!はぁっ!」
唯「あずにゃん…」
梓「ハイエナたちは…全員おっぱらいました!律先輩澪先輩ムギ先輩は無事です!あと純も!」
唯「そう…!よかった!」
梓「…信代は…」
唯「…勝ったよ…!あずにゃん!」ぱあああ
梓「唯先輩っ!」だだっ
唯「あずにゃん!」だきっ
~~岩の下
ゴゴゴゴ
信代「……」ピクッ…ピクッ
すた…すた…
姫子「あらあら…やられちまったか」
いちご「もう死にそうだね」
エリ「どうする…?」
姫子「一応持って帰ろう…もしかしたら一命を取り留めるかもしれない」
いちご「あ、よっこいせ」背中のせ
エリ「さあ、ライオンたちに見つからないうちに帰ろうよ」
姫子「ああ…」すたすた
姫子(待ってな……唯……いつになるかわかんねーけど…)
姫子「……」ゴゴゴゴ
姫子「いずれこの国をぶっ潰してやる…必ずね」にやり…
すたすたすた…
~~~~1年後~~~~~
王国はこの1年の間でもとの緑豊かな楽園の姿を取り戻していた!
唯「…」にこっ
王国をまとめるライオンの王、唯!
梓「…」にこっ
その妻、梓!
純「 」ばさっ、ばさっ…にこっ
唯の側近の鳥、純!
律「ふふっ」
澪「唯…!」
唯の右腕と左腕の律澪!
紬「…」にこっ
占い師でありながら唯の親友、マントヒヒの紬!
紬「…」すっ
赤ちゃんライオン「…?」
今日、唯と梓の間に待望の第一子が生まれた!
そしてその子の名はーーーーーーーーーー!!!!
『ケイオン キング』 完