男「肩が痛い……」
女「大丈夫?」
おじさん「そんなの湿布貼っときゃ治る!」
女「ええ……?」
男(治るわけねーだろ……)
おじさん「ほれっ」ペタッ
男「ちょっ、勝手に……」
男「!!!」ビビビッ
元スレ
男「肩が痛い……」湿布おじさん「湿布貼っときゃ治る!」男(治るわけねーだろ……)
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1588162726/
男「痛みが消えた!」
女「ウソ!?」
おじさん「ハッハッハ」
女「ケホッ、ケホッ」
男「どうしたの?」
女「実は今朝から、喉がいがらっぽくて……」
おじさん「湿布貼っときゃ治る!」
女(治るわけないでしょ……)
おじさん「ほれっ」ペタッ
女「きゃっ!」
男「どう?」
女「喉のいがらっぽさが消えた!」
おじさん「ハッハッハ」
おじさん「それじゃ!」タタタッ
男「風のように去っていった……」
女「なんだったのあの人?」
男「さぁ……」
通行人「あれはね、≪湿布おじさん≫さ」
男女「湿布おじさん!?」
通行人「色んなところを旅しながら、人々を湿布で助けてるんだよ」
男「へえ~」
女「立派な人ねえ」
少年「ボクのミニ四駆が壊れちゃった……」
おじさん「大丈夫さ!」
少年「おじさん、誰?」
おじさん「湿布貼っときゃ直る!」
少年(直るわけないだろ……)
おじさん「ほれっ」ペタッ
シャァァァァァッ!
少年「すっごーい! 直った! なぜか速くなってるし!」
おじさん「ハッハッハ」
少年「ありがとう、おじさん!」
おじさん「お安いご用さ!」タタタッ
少年「風みたいに走ってった……」
青年「うげえ……参ったな」
プスプス…
青年「車動かなくなっちゃった。エンジントラブルかな?」
おじさん「湿布貼っときゃ直る!」
青年「ハァ? 湿布で車が直るわけないだろ!」
おじさん「ほれっ」ペタッ
青年「おい、変なの貼るな! 汚れたらどうする!」
青年「……ん?」
キュルルル… ブオオオン…
青年「直った!」
おじさん「ハッハッハ」
青年「助かったよ、おじさん!」
ブロロロロロ…
ニート「はぁ……」
ニート「なにもかもめんどくさい」
ニート「この怠け癖をどうにかしないと、僕は一生ニートだろうなぁ……」
おじさん「湿布貼っときゃ直る!」
ニート「無理だよ……親やカウンセラーにどんなに説得されてもダメだったんだから」
おじさん「ほれっ」ペタッ
ニート「うっ!?」
グゴゴゴゴゴ…
ニート「なんだこれは!?」
ニート「体中に活力がみなぎってきた!」
おじさん「そういえば、あっちの会社で人を募集してたよ」
ニート「ホントかい、おじさん!」
おじさん「受かるかどうかは君次第だがね」
ニート「うおおおおおおお! 働くぞぉぉぉぉぉ! まずは面接だぁぁぁぁぁ!!!」ドドドドドッ
主婦「いっけない! 味付け間違えちゃった!」
主婦「もうすぐ主人帰ってきちゃうし、どうしましょ……」
おじさん「湿布貼っときゃ直る!」
主婦「湿布を料理に使うなんて聞いたことないわよ!」
おじさん「ほれっ」ペタッ
主婦「……」グビッ
主婦「まぁっ、おいしくなったわ!」
メキメキ… メキメキ…
家主「も、もうダメだ……!」
家主「シロアリに食われて……家が崩れる!」
おじさん「湿布貼っときゃ直る!」
家主「ええ!?」
おじさん「ほれっ」ペタッ
シャキーン
家主「なんということでしょう! 我が家が新築同然に!」
男「お前なんか知るか!」
女「こっちこそ!」
男「ふんっ!」
女「ふんっ!」
おじさん「湿布貼っときゃ直る!」
男「おいおい、おじさん……」
女「湿布で仲直りできるわけないでしょ! このままお別れよ!」
おじさん「ほれっ」ペタッ
男「……」
女「……」
男「ひどいこといってごめん……! 好きだ……!」
女「私こそ愛してる……!」
チュッ
おじさん「ハッハッハ」
そんなある日――
ゴゴゴゴゴ…
「なんだ、この音?」
「地震か?」
「いや……あれを見ろッ!」
魔王「フハハハハ……!」
魔王「ワシは一万年前に封印された大魔王だ!」
魔王「人間どもの悪意を養分とし、今こそ蘇ったのだァ!!!」
魔王「滅べ滅べ滅べぇい! 愚かな人間どもぉ! 絶滅させてくれるわッ!」
ドゴォォォォン!
ズガァァァァン!
男「ひいいいい……! なんだあいつ!?」
女「町が破壊されていくわ……!」
おじさん「……」シュタタタタッ
男「あれは!」
女「湿布おじさん!」
おじさん「ほいっ、ほいっ、ほいっ」
ペタッ ペタッ ペタッ
男「おおっ! あちこちに湿布を貼って、修復していく! さすが湿布おじさん!」
女「だけど……!」
魔王「無駄だ無駄だ無駄だァ!!!」
ドゴォォォォォン!!!
女「魔王の破壊するペースの方が早い!」
おじさん「……直接貼るしかないか」キリッ
男「え?」
女「おじさん?」
男(おじさんの雰囲気が変わった……!)
おじさん「ゆくぞ、魔王ッ!」ダッ
魔王「むっ!?」
おじさん「湿布湿布湿布湿布湿布湿布……湿布ゥ!」
ペタタタタタタタタタッ!!!
魔王「ぐ、ぬう……! なんだ、これはァ……!」ミシミシ…
男「おおっ、効いてる!」
女「湿布のなにが効いてるのか分からないけど効いてることだけは確かだわ!」
魔王「ぐ、ぬぬぬ……おのれぇ……!」
魔王「カァッ!!!」
バシュゥゥゥゥン!
おじさん「!」
男「ダメだ、湿布が弾かれた!」
女「そんなぁ!」
魔王「フハハハハ……あんな布でこのワシを倒せるものか!」
おじさん「……」
おじさん「やむをえんか……」
魔王「?」
おじさん「ならば――」
おじさん「命をかけて……あの力を使う!」
ビュオオオッ!!!
男「わぁっ!?」
女「おじさんが風をまとった!?」
魔王「な、なんだこの力は……!?」
おじさん「はあああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」
おじさん「世界を直すため……我、風の力を行使せり!」
おじさん「疾風ッ!!!」
ザンッ……!!!
魔王「ぐあああああああああっ……!!!」
魔王「ワシの体が真っ二つに……こんな、バカなぁぁぁぁぁ……!」
ボシュゥゥゥゥゥ…
男「すごいや、おじさん! ……え?」
おじさん「ぐ……」ボロ…
女「どうしたの、おじさん!」
おじさん「疾風の力は……強力すぎる、ゆえに……」ボロボロ…
おじさん「やはり……耐えられ、なかった、か……」ボロボロ…
男「そ、そんな!」
女「おじさん、しっかりィ!」
おじさん「君たち……」
男「おじさん!」
女「おじさん!」
おじさん「二人とも……どうかいつまでも……仲良く……」ボロボロボロ…
シュゥゥゥゥゥゥゥ…
男女「おじさぁぁぁぁぁん!!!!!」
ワァァァァァ…
「なんでか分からないけど、大魔王が消えたぞ!」
「世界は救われたんだ!」
「バンザーイ! バンザーイ!」
ワァァァァァァァ…
女「おじさん……」グスッ…
男「おじさんは……きっと風になったんだよ」
女「うん……」
それから――
男「今日はいい天気だな」
女「うん」
ヒュウッ…
男「あ」
女「風……」
男(風が吹くと、今でも思い出す)
男(疾風となり、世界を救った湿布おじさんのことを……)
おわり