弟「さっき休んだばっかりですけどー?」
幼女姉「歩けないー」
弟「じゃあ、どうすんだよ・・・」
幼女姉「ん!」
弟「??」
幼女姉「んーっ!!」
弟「おんぶは禁止」
幼女姉「えぇ~、けち」
俺と姉は地元の森林公園を歩き回っている。
初夏の日差しが木漏れ日になって、森の中を照らしていた。
俺たちは今、宝物を探していた。
元スレ
幼女姉「つーかーれーたぁ」
http://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1234600347/
弟「突然思い出して行こうって言い出したのはねぇちゃんだろ」
姉「でも、疲れた」
弟「じゃあ帰るぞ」
姉「えぇー、帰るのー?」
姉は地べたに座り込んで自力でおきるつもりはないらしい。
まったく、困ったやつだ。
なんで、俺と姉が宝物を探しにこの公園に来たのかと言うと
先祖の古文書が見つかったわけでも、変な噂話を信じたからでもない。
それは昨日のことだ。
姉「ねぇ、そういえばさぁ」
金曜の夜、居間で横になってテレビを見ているとプリン片手に姉が近寄ってきた。
姉「小さいころにさぁ、みんなであそこの森林公園にハイキング行ったよねぇー」
言われてみて、自分の記憶を掘り返す。
いつごろだったかは、憶えていないがそんな記憶はある。
何回か写生大会で行ったときにはずいぶん狭く感じたっけ。
弟「それが、どうしたんだよ」
姉「憶えてないのぉ?そのときのほら、埋めたじゃん」
何を埋めた、なにを。
さらに記憶を掘り返す。
脳内の思い出をしぼりこんで絞りこんで、はっと俺は思い出した。
弟「ああ、そういえば・・・」
たしか、その公園に家族で行った日の前日だ。
姉が俺の部屋に来て、宝物を埋めよう、と持ちかけてきたんだった。
姉はお菓子の空き箱の中になにやらいろいろ詰め込んで、ついでに手紙なんかも入れてあった。
姉「なんかいれよー」
弟「何入れんの?」
姉「宝物!あと、しょーらいの自分にお手紙書こ!」
弟「手紙?」
そんなやり取りがあったような、なかったような。
手紙を書いたことは憶えてるから、間違いないだろう。
何を書いたまでは憶えてないけど。
そして、次の日森林公園の山の上にある展望台の木の根元に埋めたんだ。
姉「思い出したぁ?」
弟「うん、埋めた」
姉「明日掘り起こそう」
弟「はぁ?」
姉はプリンを食べながら、そんなことを言い始めた。
何かの拍子に何かを思い出し、即行動に移そうと言い出し、
脊髄反射のように用事を生み出すのは姉の得意分野である。
弟「やだよ、めんどくさい」
姉「えぇ~、いこいこいこー」
弟「一人で行けよ」
姉「襲われるよぅ」
弟「何に?」
姉「熊、とか・・・?」
熊が出るような森でも山でもない公園である。
でなけりゃ、学校の写生大会の会場になったりしないだろ。
姉はこういう状態になったら一歩も引かない性質なので、毎回俺が折れるのだが
少し甘やかしすぎだろうか。
弟「熊はでねぇよ」
姉「ぶぅ~」
弟「あれ埋めたのっていつだっけ?」
姉「えっと、5年前」
俺が小学校4年で、姉が中学校1年のときか。
何を入れたのかも手紙に何を書いたのかも憶えてないし、気にならないと言えばうそだ。
明日は特に用事もないし、このままうるさいのも困る。
俺は体を起こして、姉のほうに向きかえる。
弟「わぁった。行くよ」
姉「わーい♪」
弟「ただし・・・・・・・・・。これが条件だ」
姉「余裕余裕♪私の体力をなめないでよねっ!」
と、これが昨日までのやりとりである。
そして、姉は今俺の出した条件を破綻させようとしている。
弟「条件、守れよ」
姉「じゃあ、もうちょっと休憩」
弟「はいはい」
姉と昨日の夜のはなしで、俺が出した条件は「俺におんぶさせないこと」だ。
さすがに、山の上の展望台までは徒歩で上ると、一人でもきつい。
姉がすぐ俺を当てにしてくることは目に見えていたので、俺は先手を打っておいたのだが。
展望台までの山道に差し掛かると、歩いては止まり、歩いては止まりの繰り返しだ。
弟「体力には自身あったんじゃないの?」
姉「あったけどぉ、この山は予想外・・・」
弟「ほら、グリコ」
そんなこんなで、頂上の展望台に着いたときには日が傾きかけていた。
姉はここに来るまでに相当疲れたらしく、山頂につくや否や大の字に寝込んだ。
弟「さて、木、探してくる」
姉「うん、いってらっしゃーい・・・」
土曜日の昼、と言うことで俺たちの先客が一人くらいはいるかと思っていたが誰もいなかった。
山頂は風が心地よく吹いていて、一面芝生に覆われた地面だ。
5年前と変わったところと言えば、展望台のペンキが塗り替えられて
いささか派手になっているところくらいだ。
弟「確か、この展望台の裏だったかな・・・」
わずかな記憶を頼りに、展望台の周りを見てみる。
散歩ついでと思って山頂を半周ほどしていると、展望台の真裏にそれらしい木を見つけた。
5年くらいでは、そんに背丈も伸びていないように感じた。
リュックサックから、シャベルを取り出し根元を掘る。
ザックザック
弟「はぁ・・・はぁ・・・。ねぇちゃん、遅いな」
地面に穴を掘るなんてことは、小学校以来だ。懐かしいけど、こんなにきつかったっけ。
地道に地面を掘ること、数分。
カツン
手応えがあった。
シャベルを置き、手で掘り返していく。
指先はあっという間に泥だらけになり、その度合いが増していくのと比例して
あのお菓子の空き箱が、姿をはっきりさせてくる。
ふたの部分がほとんど見える状態まで来たので、両手で一気に地面から引き抜いた。
弟「うおぉぉおおおぉお!!」
誰もいないことをいいことに、掛け声なんて出してみたが
案外すんなりと『宝箱』は地面の束縛から解放された。
ズボッ
拍子抜けすると同時に勢い余って後ろに倒れこみ、しりもちをついてしまった。
弟「痛てててて」
姿を現した『宝箱』を抱えて、大の字に寝転んだままの姉の下に向かう。
日はもう赤く染まりかけている。
弟「ねぇちゃん、あったよ、埋めたの。帰るぞ」
姉「すぅー・・・すぅー・・・」
姉は気持ちよさそうに寝ていた。
弟「まぁ、予想はしてたけどさ・・・」
一人でここに寝かしておくべきじゃなかったと少し後悔しながらも
『宝箱』をリュックに収め、リュックを体の前に掛け、姉をおんぶするという荒業に挑戦を試みる。
弟「ほら、ねぇちゃん。帰るよ」
姉「ん~・・・何ぃ?」
弟「おんぶしてやるから、ほら」
姉「ん~、おんぶぅ?」
姉は寝ぼけながらも、俺の背中を這うように登っていく。
本能的に背負われようとしている感じだ。
しっかりとつかまれる位置になり、俺は行きの2倍以上の荷物を背負って山を降りることになった。
歩き出してすぐ、姉は寝ぼけているのか自分で行ったのかわからなかったが
「ありがと・・・」
寝息とともに俺の耳にささやかな感謝を届けてきた。
家の近所につくころには、空は暗幕をまとって星がわずかに瞬いているような時間になっていた。
行きも姉を背負っていったほうが早かったのかもしれない。
姉「ん~、おうちぃ?」
弟「ねぇちゃん、起きてただろ、実は」
そんなことを言いたくなるようなタイミングである。
家まであと数十メートルというところで、姉は俺の背中で目を覚ました。
姉「宝箱はー?」
弟「リュックの中」
姉「あったのー!?」
弟「俺たち以外に誰が掘り起こすんだよ、こんなもん」
姉を降ろして、ため息ひとつ。疲れがどっと押し寄せてきた。
姉は元気を取り戻したのか、家に走って向かっていく。
姉「ほらー、ごはんだよぉ」
弟「へぇーい」
晩飯よりも、風呂のほうが俺はいいんだけどさ。
姉は家にあがるなり、リビングに一直線だったようで
俺が着いたころには、晩飯に手をつけ始めていた。
母「お帰り」
弟「ただいま」
母「あったの?埋めたもの」
弟「あったよ」
姉「もとうとくんが、もりはひたの」
弟「しゃべりながら食べるな」
その後、俺は風呂に入って飯を食い。姉は俺と入れ違いで、風呂に行った。
今日一日の苦労を思い浮かべながら、食べる晩飯はいつもよりうまく感じた。
そして、姉が風呂から上がり、いよいよ箱をあけるときが来た。
姉「早く早くぅー」
弟「わかったわかった」
せかす姉をたしなめながら、俺も少しわくわくして箱の上蓋に手を掛ける。
緊張の一瞬というわけでもないが、こういうのはやはり気持ちが昂ぶる。
ゆっくりと、ふたを持ち上げる。
ガチャ
姉「おぉー・・・」
弟「ん~?」
箱を開けると、中にはいくつかのおもちゃとキーホルダー、そして手紙が2通入っていた。
姉は目を輝かせながら箱の中のものを手にとっては、「なつかしぃー!」とか「あー、これこの中にあったんだ」
なんて一人で盛り上がっている。
俺はそんなに物は入れてなかったし、そもそも何でこんなものを入れたんだろう、
と思うようなものを入れていたので何の感慨も浮かんでは来なかった。
それよりも、問題は手紙である。
姉がはしゃいでいるのを横目に、俺は手紙を手に取る。
手紙を開いてみて、一読してみる。
しばらくして、俺はあまりの恥ずかしさにすぐに手紙をたたんだ。
姉「あー、弟くんの手紙せてぇ」
弟「はぁ?いやだよ!絶対やだ!」
姉「私のも見せるからぁー」
この日、手紙を死守することに夜中まで終始したのは言うまでもない。
『みらいの僕へ
いま、何歳ですか?これを読んでいる僕は大人ですか?
ねぇちゃんと一緒で、たのしいですか?
今の僕は楽しいです、ねぇちゃんが大好きです。
だから、ねえちゃんと結婚できるような、いいおとなになってください。
みらいのねぇちゃんに、よろしく!』
おわり
46 : 以下、名... - 2009/02/14(土) 20:10:13.55 2Od+JC7wP 15/32書き溜めたのもあるんですけど、たぶん5レスくらいで予備がなくなりそうなんで
なにかこんなの書けよ的なのあれば>>50
なければ落としてください
50 : 以下、名... - 2009/02/14(土) 20:17:55.04 uc/mzhfT0 16/32姉のへたれっぷりが全開
51 : 以下、名... - 2009/02/14(土) 20:24:32.50 2Od+JC7wP 17/32>>50
どんな感じにへたれ?
まったくイメージがでてこない
52 : 以下、名... - 2009/02/14(土) 20:29:58.65 uc/mzhfT0 18/32>>51
じゃあ体力なくて低身長な姉の一日でもいいよ
>>52 了
ピピピピピピピピピ
甲高い電子音であたしの一日は始まる。
「ん~、んん~っ!」
毎日起きたら少しくらい背が伸びていて、
机の上にわざといてある目覚まし時計に手が届くんじゃないかって
ささやかに期待しながら手を伸ばしてみるけど、
その夢は現実に飲み込まれて、あたしは仕方なくベッドから出て、目覚まし時計を止めた。
【幼女姉のとある一日】
まだ眠気から解放されない頭と一緒に部屋から出て、おぼつかない足取りで階段を下りる。
毎日決められた儀式みたいに洗面台に向かって顔を洗い、
お母さんの用意している朝食に手をつける。
そのころに、弟が起きて一緒に朝ごはんというのが我が家のいつもの朝。
弟「おはよ・・・」
姉「あおおー」モグモグ
弟「食いながらしゃべんなよ。みっともない、ふぁ~・・・」
あたしの弟は、あたしが言うのもなんだけどできた弟で
私が面倒見られっぱなしなわけだ。
姉「人前じゃやんないよー」
弟「そう言ってるやつほど、気づいてないんだよ」
牛乳を飲み干して、朝食を終えて部屋に戻る。
今日の準備をして、制服に着替える。
制服のサイズは、小学校からずっとSだ。ちょっとした、コンプレックス。
周りの友達はどんどん大きくなる、弟もあっという間にあたしを追い越していった。
「おっきくなんないかなぁ・・・」
あれやこれや思い出している間に、そろそろやばい時間になる。
学校へ向かう。
高校までは徒歩で15分、自転車で5分くらい。
もちろん普通の人の足で、だけど。
あたしの場合、歩くともうちょっとかかる、ほんのちょっと。
「いってきまーす」
自転車にまたがり、学校へと向かう。
つい最近まで花が咲いていたと思っていた桜並木は
いつの間にか葉っぱが生い茂っていて、夏の足音が聞こえてきそうな感じ。
「んん~、気持ちいー」
暑くもなくて寒くもない、このくらいの季節は一番好きだ。
すがすがしい気分でサイクリングしていると、パトカーが横を通り過ぎて少し前で止まった。
中から、警官が出てきた。
何事かと思って回りを見渡しても、これといって何も変わったことはおきてないみたいだった。
「ちょっと、君」
警官は私に声を掛けてきた。
「えっ、あたし?」
「ヘルメットは?」
警官はあごの辺りで紐をとめるようなしぐさをしながら、私に質問してくる。
あたしは、一瞬何のことか理解できない。
「ヘルメット?」
「だめでしょ、ヘルメットしないと」
「あのぉ、あたし、高校生・・・」
「ん?」
警官は上から下まであたしを見て、制服を見て、ようやく理解したらしい。
「ごめんなさいね。でも、気をつけて自転車乗ってね」
そういうと、颯爽とその場から去っていった。
こういうことは日常茶飯事で、何かというと小学生くらいに間違われる。
中学生に間違われることはほとんどないし、高校生なんて初対面の人に言われたことないし。
バスには子供料金で乗れるし、ほかの諸公共施設もだいたい子供料金。
都合がいいときにはいいけど、悪いときにはひどくめんどくさい。
学校は少し高い場所にあって、その坂はあたしにとってはちょっとだけ難所である。
徒歩登校やバスで着ている生徒を尻目に私は、加速をつけて坂に突っ込む。
途中まではいい感じ、だんだんペダルにかかる負荷が重くなってくる。
スピードはぐんぐん落ちて、そして、坂の途中で止まった。
「はぁ・・・はぁ・・・今日も、だめだったなぁ・・・」
「おはよ。あんた今日もがんばってたね」
同じクラスの知り合いが、何人かあたしのもとに集まってくる。
毎日登る坂道なのに、いつも同じようなところで止まってしまう。
そんなあたしの横を男子生徒が立ちこぎですいすい登っていった。
世の中って、不公平。
「明日は、私たちで応援してあげようか?」
「い、いい!大丈夫!恥ずかしいし・・・」
「赤くなっちゃってー。かわいいなぁ、ホント」
自転車はいつの間にか一人の友達が押していて、あたしはもうひとりの友達にぐるぐる回されながら坂道を登り終えていた
教室に入って、席に着くといつもと変わらない友達との雑談を朝礼まで。
あたしは、なんだかクラスのマスコットかペット感覚で接している子が多い。
頬ずりされたり、頭をものすごいなでまわされたり、毎日大変。
そういえば、今日はすごくいい天気で、暑くないし
朝のニュースの占いは1位で、さっき友達からお菓子もらったりして
いい一日のスタートだったと思う。でも、不幸な出来事は昨日から規定されていたりする。
確定事項は動かない。
2時間目は、体育だ。
「しかもバレー・・・」
一時間目の世界史は、中国史だったけど中国うん千年の歴史より
私にとっては、目の前のバレーボールのほうが重大な問題。
ごめん、中国の人。
一時間目はあっという間に終わり、みんな体育館に移動し始める。
うちの高校は体育館に更衣室が男女ひとつずつ、2クラス合同だから
時間を間違えるとめちゃくちゃ混む。
「ほら、行くよ!」
「えぇー、体育の前からそんなに動きたくないぃー」
友達は我先にと、廊下を猛ダッシュで体育館に向かう。
あたしもそれについていくけど、階段を下りるあたりであきらめた。
「体育の前から、疲れちゃうよぉ・・・」
とぼとぼと歩いている間に、どんどんほかの人に抜かされて更衣室に着くころには
通勤電車のピークみたいに更衣室はごった返していた。
「ごめんなさーい」
人ごみを掻き分け、なんとか自分の場所を確保して着替えようとしたけど
人と人の間に挟まれて、うまく動けない。
「うぅー、暑い・・・」
結局、ピークが過ぎるまでその場から動けなくて、着替えて上にあがったころには
みんなボールを出して遊んでいた。
「おそいよー。なにしてたの?」
「着替えてたよぉ、一生懸命」
「体育前の更衣室までは戦いなのよっ!次は、おんぶして連れてったげようか?」
「いいよー、恥ずかしい・・・」
陸上部の子がそんなことをいってくれたけど、弟くん以外の人におんぶされるのはちょっと嫌。
なんでだろう、弟くんなら、大丈夫なのに。
チャイムが鳴って、先生が登場。
授業が始まる。
準備体操でとストレッチ。
私の体は硬い。友達に押してもらっても、つま先まで手が届かない。
「あんた、体硬すぎ」
「あたしのせいじゃないよー」
体をぎしぎしいわせて、ストレッチ終了。なんかボール触る前から、体が痛い。
ボールを持って二人組みでのアップが始まると、あたしの運動音痴が際立つ。
「ほら、こっちだよー」
「えいっ!」
「えー!どこ投げてんの!?」
ボール投げは得意じゃない、というより運動自体あんまり得意じゃない、けど球技はてんでだめだった。
パスの練習も同上。
友達が頑張って受けてくれる球をさらにあたしが追いかけとんでもないところにやる、の繰り返し。
終わるころには、二人とも息が上がって汗をだらだらかいていた。
今日はスパイクの練習やって終わりらしい。
一番の難敵である。
ネットの高さは2メートル10センチ。あたしが手を伸ばしても、ネットの一番上には遠く及ばないし
ジャンプしても、ネットの一番上の白いところを触れない。
だから、スパイクなんてできっこないのだ。
「ほら、上げるよ」
「う、うん・・・」
友達にボールを出して、トスアップしてもらう。
助走をつけて、ジャンプ。
「えいっ!」
手は空を切り、次の瞬間。
「痛っ!」
ボールがあたまの頭の上に狙いすましたように落ちてきた。
周囲で笑いが起きる。恥ずかしい。
結局、今日はスパイクで一回もボールに触ることができず、アドバイスしてくれた先生すら
頭を抱える有様だった。
助走とジャンプをひたすら繰り返すだけで、もう、くたくた。
そんなあたしに追い討ちを掛けるように、またも女子更衣室はごった返している。
しかも、体育のあとなので暑い。窓も開けられないし。
「すーみーまーせーん」
「あ、いた。ほら、早く着替えないと、次、遅れるよ」
「えぇー、もぉ~?」
急いで着替えようとするけど、やっぱりほかの人の間に挟まれてだめで、
結局また一番最後のほうになった。
教室に戻るのも、一苦労。というより、体育でへとへとなあたしには過酷だった。
教室について、自分の机に着くとどっと疲れが押し寄せてきて、次の授業の準備する気力も出てこない。
「大丈夫?暑い?」
友達が下敷きで扇いでくれるので、少しだけやる気が回復したあたしは
次の現国の授業の準備をして、授業の始まった5分後には夢の世界へと旅立っていた。
結局、午前中の授業のほとんどを寝て過ごしてしまったあたしは
お昼休みになって重大なミスに気がついた。
「お弁当・・・忘れたぁ・・・」
「あちゃー、やっちゃったね。購買いく?」
「うん、そうする」
仕方なく購買に行くことにしたけど、うちの購買は何かと混む。
なんでこう、うちの学校は混む場所が多いのか。
案の定、購買の前には人だかりができていた。
パンやサンドイッチが飛ぶように売れていく。あたしも、列になっていない人だかりに並んでみる。
「あのー!すみませーん、サンドイッチー!」
人だかりにさえぎられて前は見えないし、前にも進まない。
体育で疲れ果てた足に鞭を打って、ジャンプしたりする。
それでも、どうしようもなかった。
「つかれたぁ・・・。ジュースで、いいや」
「えー、じゃあ結局何も買わなかったの!?」
「うん、大丈夫。ジュース飲んだし・・・」
「だめだよー。あんたがちゃんと食べないと生きてけないの知ってんだから」
友達が、お弁当のおかずを何個かくれて今日のお昼はそれでおしまい。
おなかは少しすいたけど、うれしくてそんなことはあっという間に忘れてしまった。
午後の授業も授業が始まっては、寝て、終わるころに起きて、寝てと何をしに学校に来ているのか
わからないくらい怠惰なまま一日を過ごしてしまったあたしは、終礼が終わると帰途に着く。
友達は部活とか委員会とか、いろいろあるらしくいつも帰りは私一人だ。
朝は強敵の坂道も帰りは楽勝。
下り坂を途中までは安全運転で、人がいないのを確認してから一気に駆け下りる。
そのスピードを維持したまま、家まで一直線。
家に着いたのは17時過ぎ。
「ただいまー」
玄関で靴を脱いで、リビングに向かう。
お母さんは、買い物みたいでテーブルの上のお菓子をつまんで、部屋に戻る。
今日はいつもより一段と疲れた気がした。
頑張ろうと思うことはいっぱい歩けど、ありすぎてどれから手をつければいいのかわからない。
部屋着に着替えて、下に下りるとお母さんが帰ってきていた。
今日は、エビチリみたい。お風呂を沸かし、お母さんの手伝いをしたり、主にテレビを見る仕事をしていたり。
弟も部活が終わって帰ってくる、お父さんももうすぐ帰ってくるころ。
家族で食卓を囲んで、他愛もない話をして、笑って、怒って。
そんな風にしてあたしの一日はもうすぐ終わる。
部屋に戻り、課題を少し済まして、ベッドにもぐる。
時刻は、23時を少し回ったところ。静か過ぎるのはさみしいから、ラジオをつける。
「明日は、目覚ましに届きますようにっ!」
きっと明日も、いい一日になると祈って、私の一日は終わった。
おわり