熱っぽい。
寒気がする。
喉が痛い。
これは風邪だ。
間違いない。
体がいつものように動かない。
ベッドから起き上がる事すらままならない。
「梓ー、起きなさーい。」
お母さんが私を起こしに来た。
いつもの私なら「はいはいわかった」と適当にスルーしながら布団から出るだろう。
でもそれはできなかった。
「梓、どうしたの?なんか顔赤いわよ。…ってすごい熱じゃない!」
「うん…風邪みたい。」
絞り出してやっと出た声はこの上なく醜いものだった。
「大丈夫?声すごく変よ。」
「そうなの。喉もすごく痛い…」
「熱測ってみる?」
「うん。」
熱を測った。
9℃1分だった。
「こんなに出てたなんて…」
「とにかく今日は休んでなさい。夕方にお医者さん行きましょ?」
「演奏会はどうするの?」
「申し訳ないけど参加は取りやめかしらね…」
「気にしないでいいから、行ってきてよ。」
「こんな高熱を出している我が子をほっておいて遠くになんていけないわよ…」
「うん…」
お母さんは扉を閉め、部屋から出ていった。
憂にはノートを取ってほしいとメールでお願いした。
日頃から真面目な憂はノートも綺麗で見やすい。
もう一人の友人は…うん、アレだ。
今のガラガラ声を録音して、治った後に聞いたら、自分でも嫌悪感を抱くだろう。
そんな、醜い声。
今の私にバンドのボーカルなんて到底務まらない。
先輩たちの卒業後は、私が部長となり、新たな軽音部を作り上げた。
憂と純、そして新たな二人の仲間。
新入部員であり、後輩だ。
彼女たちの前では、「尊敬に値する、真面目な部長」であろうとした。
いや、今を思えばただ「演じていた」だけなのかもしれない。
ティータイムはほどほどに、練習は熱心に。
私は部員たちの絆と腕を一気に高め、先輩たちの強い絆が産みだした「放課後ティータイム」に一刻も早く追いつこうと必死になっていた。
そして、無理をし続けた結果がこれだ。
情けない。
皆が自分のペースで頑張ろうとしているということは自分でもわかっていたはずなのに、私だけが早急に「結果」を得ようとして空回りした。
入部したばかりの頃に、憂や純の前で「律先輩は部長らしくない」と言ったことがある。
私はその事を後悔している。
できるものならその発言を取り消したい。
律先輩は立派な部長である。
私なんかよりもずっとずっと部長にふさわしい。
律先輩は自然な形で皆に歩幅を合わせ、(ドラムは走り気味だったけど)皆の絆も腕もちょっとずつ、だけど確実に上達させていった。
そんな当たり前だけど、素晴らしい事を成し遂げた律先輩の代わりが私に務まるか?
答えはNOだろう。
良くも悪くもありのままでいた律先輩は尊敬に値する人だ。
本人の前では口が裂けても言えないが。
律先輩だけじゃない。
澪先輩やムギ先輩、唯先輩も同じぐらい尊敬に値する人たちだ。
澪先輩はスタイルもよく、ファンクラブの人たちから多大な人気がある。
胸もベースの腕も私が憧れを抱くに申し分ない人だった。
しかし、独特の歌詞のセンスや親をいまだに「ママ、パパ」と呼んでいたりと意外と可愛い一面を持っていたりもする。
ムギ先輩はいつも暖かい紅茶と美味しいケーキで優しい安らぎを与えてくれる、「放課後ティータイム」に無くてはならない存在だ。(本当に無くてはならない存在は私も含めた5人全員…とさわ子先生だが。)
話していると癒されるし、何よりも見ていて楽しい。
誰が一番素晴らしいかなんて私には決められない。
では、この四人の中で私が最も影響を受けた人は誰だと聞かれれば。
それは唯先輩だ。
私に「あずにゃん」という妙ちくりんなあだ名をつけたその人は、先輩であるにもかかわらず、ギター歴では私よりもはるかに「後輩」だった。
弦の換え方を知らず、音楽用語も全く覚えていない。
にもかかわらず、決して評価することのできない何かが唯先輩の演奏にはあった。
唯先輩はとても楽しそうに演奏していた。
唯先輩だけでなく、四人の先輩は皆笑顔で、心から望んで「自らの音楽」をめいっぱい表現していた。
両親の苦悩する様を見ていた私は、「仕事」「評価が全て」というイメージを演奏に対し抱いていた。
それゆえ、決してうまいとは言えないが「楽しい」演奏に出会った私は、これまでにない衝撃を受けた。
そして、入部を決意するに至ったのだった。
唯先輩と私は性格が全く異なる。
ギターの経験だって全く違う。
全く練習をしない唯先輩に呆れたことも一度や二度ではない。
「この人とは絶対にうまが合わない」とさえ思ったこともある。
でも、私はそんな彼女に知らず知らずのうちに惹かれていった。
私はいつしか「決してうまくはないけど楽しい演奏」が目標になっていた。
それは唯先輩への「憧れ」だったのだろう。
「あずにゃん」というあだ名も今では案外気にいっている。
これも本人の前では言いたくないが。
では、今の部長である私が部員に求めるのは「うまい演奏」と「楽しい演奏」のどっちだろう?
私の真面目な部分は「うまい演奏」を求め、私に「真面目な部長」を演じさせた。
そして、積極的に練習を推し進めた。
それが本来の自分だと私は思っていた。
しかし、風邪で倒れた時、初めて自分が「無理をしていた」と言う事に気がついた。
そして私が本当に望んでいるのは、「楽しい演奏」だということを確信した。
だが、今更方向転換なんてできるのだろうか?
昼食におかゆを食べ、休んだ。
夕方に近所の医者に行った。
風邪と診断された。
薬を処方される。
明日、明後日が休日なのでその二日間には絶対治したい。
私のため、部のみんなのため。
これ以上皆に迷惑はかけたくない。
「「「「お邪魔しまーす!」」」」
聞き覚えのある声がする。
「いらっしゃい。あがってあがって。」
母が皆を迎える。
「これ、どうぞ。つまらない物ですが。」
「いつもありがとうね。」
憂はやはり気配りがきいていた。
「あーずさー!見舞いに来たぞー!」
「純ちゃん、静かに!!」
純は相変わらずだ。
「こんにちは…」
「みんな…」
私のかけがえのない仲間たち。
皆心配そうな顔をしている。
「梓先輩!大丈夫っスか!?」
後輩その一。
担当はドラム。
能天気な奴で、律先輩ほどではないが、軽快なリズム感の持ち主だ。
「あの…インフルエンザなんでしょうか…?」
後輩その二。
担当はリズムギター。
内気な性格だが、演奏では結構目立っている。
「大丈夫…ただの風邪だから…」
今にも消え入りそうな声で後輩たちに返答した。
「うわぁ!!変な声っス!!」
「こら!」
純がたしなめる。
「世界の終わり、でしょうか…?」
「大丈夫だよ、きっと!」
憂は元気づける。
この二人はどことなく姉妹のように思えてくる。
今日の出来事について会話が弾む。
私は喉の痛みに耐えながらも会話に参加した。
皆と会話するだけで心がもうこんなにも和んでいた。
やっぱり笑顔が一番だ。
「あの…」
「どうしたっスか?」
「こないだはゴメンね。私、酷いこと言っちゃった。」
「そんな、別に気にしてないっスよ?それに私の方こそ未熟だったっスから…」
「う、うん…」
皆をすぐに先輩たちと比べてしまう。
私の悪い癖だ。
その所為で、後輩を傷つけてしまった。
今、やっとその事を謝れた。
しばらくして
憂が持ってきたお菓子をみんなで食べた。
まるで何時ものティータイムみたいだ。
憂や私が入れる紅茶はさすがに今は飲めないが。
「梓ちゃん、あーん。」
「ありがと。」パク
「相変わらず、妬けますなぁ。」
「ほんと、お似合いっスね。」
「いいなぁ…」
「「へっ!?」」
皆に茶化される私たち。
憂と私は顔を真っ赤にしていた。
「あ、そうだ。はい、これノートのコピー。机の上置いとくね。」
「あ、ありがと。」
憂からノートのコピーをもらう。
やっぱり丁寧で綺麗な見やすい字だった。
「それじゃ、私らはこの辺で!」
「あの、お大事に…」
「我々は空気を読んで失礼するっス。」
憂以外の皆は帰っていった。
そして、部屋には私と憂だけが残された。
「梓ちゃん…私達、二人っきりだね。」
「うん…」
私は憂、愛する人の顔を見つめた。
「私、替えの水枕持ってくるから。」
「あ、ありがと。」
私、中野梓は平沢憂が好きだ。
心から愛している。
そして彼女も私を愛している。
つまりは両思いというやつだ。
憂と「そういう仲」になったのはニ年になってすぐの頃。
以前から憂に恋をしていた私は、勇気を出して告白した。
そうしたら、憂も私に気があったらしく、付き合うことになった。
純や先輩たちもみな私たちを祝福してくれた。
唯先輩はすごく驚いていたが、結局誰よりも喜んだ。
そして、心からお祝いしてくれた。
唯先輩が大学に入ってから一人暮らしを始めた。
その理由は
「家から大学は若干遠い」
「自分一人で暮らしていけるようになりたい」
そして
「憂とあずにゃんがふたり一緒の時間をもっと作れるように」
なんだそうな。
「梓ちゃん、替えの持ってきたよ。」
「ありがと憂。」
「はいどうぞ。」
「あ…ひんやりしてて気持ちいい。」
「ふふっ、気持ちよさそう。」
「そうだ、熱測ってみよう。」
「はい、体温計。」
熱は、8℃7分。
少し下がっていた。
「月曜日までには治るかな?」
「たぶん大丈夫だよ。」
憂は私を元気づける。
「あと、してほしい事とかある?」
「ううん、何にも。でも強いて言うなら…」
「側にいて欲しい、かな。」
「わかった。」
憂が側にいる。
それだけで私はなによりも幸せだった。
これからもずっと側にいてもらいたい。
なんてね。
お菓子を食べた後だろう。
だんだん眠くなってきた。
そして私は憂に見守られながら静かに目を閉じた。
・・・・・・・・
どれだけの時間が経ったのだろうか。
私は目を覚ました。
カーテンから少しだけさしこんでいた日の光も完全に無くなっており、夜になったのだということが分かる。
「そんなに寝てたのかな…私。」
時計を見ると、夜の8時だった。
「梓ちゃーん。」
「憂?」
「あっ、起きてたんだ。これ、おかゆとお薬。」
「あ、どうも。」
食欲はあんまりない。
体力もそんなにない。
さてこれをどうしようか…
「ごめん、私…食欲ないんだ。だから…」
「めっ!」
「ふえっ!?」
憂に怒られる。
「だめだよ。ちょっとでも食べて栄養つけなきゃ。お薬も飲めないし。」
「うん…」
彼女の言う通りだ。
「そうだ。私が食べさせてあげる。」
「え、そんな…」
「冷ましてあげるから、あーんして。」
「わかった…」
憂は覚ましたおかゆを私の口に運び、私はそれを食べた。
やっぱり憂がいる時とそうでないときは雲泥の差だ。
辛いはずの風邪の時の食事も、憂のお陰でとても美味しいように感じられた。
「これ、お薬とお水。」
薬も飲んで、一息ついた。
でも、憂はそろそろ帰宅すべき時間かもしれない。
「そうだ、憂。もうそろそろ帰る時間でしょ?」
「え?」
「もう夜遅いし、私の事は心配しないでいいから…」
そうしたら憂は一瞬キョトンとした後、ニコリと笑って、
「私、梓ちゃん家に明日、あさってと泊まることにしたよ。」
「えっ?」
「だって、大好きな梓ちゃんを看病してあげたいから。」
「お父さん、お母さんにもOKもらったし。」
私の両親はこの連休中に、遠くで行われる演奏会に参加する予定だ。
私の風邪のせいで参加を取りやめるかもしれなかった。
が、憂が私を看病してくれることによって、安心して演奏会に参加できるだろう。
「でも、着替えは…?」
「それなら大丈夫。梓ちゃんが寝てたときに、いったん家に戻っていろいろ準備してきたから。」
「そうなの…わかった。」
憂にとって、ここは第二のわが家のようなものであった。
私にとっての平沢家も同様である。
私たちの両親も私たちの関係を受け入れてくれた。
「子供の幸せを親が無理やり崩すことなんてできない」
と言っていた。
私のお母さんも、「憂ちゃんは本当にいいお嫁さんになってくれそうね。」
って言ってた。
お母さんの中の私は家事が全くダメな設定なのか。
しばらく、話をして過ごした後、
「それじゃあ私もそろそろお風呂入ってくるね。おやすみなさい。」
「うん。おやすみ、憂。」
憂は部屋から出ていった。
私も布団をかぶり、眠りについた。
次の日。
熱は相変わらず。
喉の痛みも辛い。
汗びっしょり。
なんか変な夢を見た気もするが、よく覚えていない。
「喉渇いた…」
ゴクリ。
憂のくれたポカリを飲み干す。
乾いた体に水分が浸透する。
コンコン
ノックの音の後、
「おはよう、梓ちゃん。」
憂が来た。
「おはよ…」
「梓ちゃん…まだ喉痛いの?」
「うん…」
「それじゃあ、薬局で痛みを押さえるスプレーみたいなの買ってくるね。」
「助かるよ。」
「そう言えば、お父さんとお母さんは?」
「あ、二人なら安心して出かけたよ。梓の事は頼んだ、だってさ。」
「そっか、よかった。」
二人とも、ああ見えても結構親バカなんだよなぁ…
それだけ憂が信頼されてるってことかな。
「そうだ、熱測ってみる?」
「うん。」
温度計を腋に挟む。
8℃2分。
また少し下がっていた。
「下がってる…」
「よかった。」
憂も喜ぶ。
朝も昼も、憂が作ってくれたご飯を食べ、薬を飲む。
その後、憂は薬局とスーパーに行くために出かけた。
私はベッドで休養をとる。
憂のご飯は本当においしい。
風邪で弱った体に十分な栄養を与えてくれる。
今は簡単なものしか食べれないけど、治ったらもっとおいしい物が食べたい。
それにしても、
私よりももっとたくさん憂のご飯を食べていた唯先輩が正直羨ましい。
もっと早く憂に出会えていたら…
と悔やんでも仕方ないか。
私はこう思った。
それなら私は、これからもっともっと憂のご飯を食べていけばいいと。
そのためには早く風邪を治さなきゃ。
「ただいま。」
「おかえり。」
憂が帰ってきた。
「これ、喉のスプレー。薬局にあったよ。使ってみて。」
「わかった…」
さっそく口をあけて、スプレーを使用する。
「ひゃっ!?」
喉に刺激が!
「梓ちゃん!?」
「これすっごい滲みるよ…」
「あはは…仕方ないよー」
「うう、ひやっとする…」
あまり心地よいものではない。
でも…
「あれ?痛みが引いた?」
「ほんと?」
「そんな事ないか…」
「なんなら、もっと使ってみたら?」
「考えとく。」
効果は、あったのかな?
その後は夕ご飯を食べ、ベッドで安静に。
風邪を治す秘訣は…
そう。栄養と休養だ。
どんな薬よりも最良の治療法である。
これはお母さんの受け売りなんだけど。
それに加えて、憂の介抱がある。
憂は同い年の高校生なのに、まるでお母さんのように私を優しく思いやってくれる。
唯先輩が甘えたくなるのもわかる。
これなら風邪もあっという間に治りそう…かも?
去年は憂が風邪を引いた。
その時に私が介抱できなかったのが心残りだ。
また憂が風邪を引いた時には、精一杯の介抱をしてあげたい。(もちろん彼女がいつも元気でいてくれれば、それに越したことはないのだが。)
そのためには料理ももっとうまくならなきゃ!
>>56
萌えるけどスカトロは嫌いです
そして深夜。
ふと目が覚めてしまった。
今日は憂に体を拭いてもらった。
ふと、それを思い返す。
そしてドキドキする。
なぜかというと、
体を拭いた際に「いろいろ」あったのだ。
その事を思い出しただけで体が火照る。
手が自然に下腹部に伸びる。
股も熱を帯びてくる。
しかし私はぐっとこらえて、体と心を落ち着かせた。
そして、早く眠れるようにと心の中で念じた。
いつしか私の意識は夢の中へ落ちていった。
夢を見た。
大きなトンちゃんがふわふわと自分の部屋の中を漂っている夢だった。
目を覚ました際に、ふとトンちゃんの事が心配になった。
だが、餌やりは他のみんながやってくれているだろう。
そう信じることにした。
まだ朝早かったので、私は二度寝をした。
病人生活3日目。
日曜日である。
起床。
熱も喉の痛みも心なしか引いたような、そんな気がする。
熱を測ってみる。
7℃3分。
明らかに下がっている。
私の体は汗をいっぱいかいて、熱を十分に下げてくれたようだ。
ぶり返さないように注意しなければ。
「おはよ、よく眠れた?」
まるで何事もなかったかのように接してくる憂。
「何とか。」
この時ばかりは憂が恨めしく思えた。
今日の朝も、憂のひと工夫のお陰で飽きることなくご飯を食べれた。
このまま毎日憂が作ってくれればいいのに…ってそれはお母さんに失礼か。
大学生になったら憂とは同棲する予定だ。
今よりも憂のご飯を食べる機会も多くなるだろう。
もちろん、その時は私も憂にご飯を作ってあげるつもりだ。
その事も見越して、私自身の料理スキルの上達が現段階での課題である。
正午
ふと、私のムスタング、むったんが視界に入った。
そう言えばまともに自主連できてなかったな…
もしかしたら、腕も鈍ってるかも…
考えすぎか。
私はベッドから出て、むったんを手に取る。
弦を軽く弾いてみる。
無機質な、乾いた音がした。
「やっぱり、寂しかったよね…」
むったんに語りかける私。
「ごめんね、むったん。明日からはいっぱい使ってあげるから。」
また弦を弾く。
むったんが返事をした気がした。
「よしよし、むったん。いい子だよ…」
私が語りかけるのに合わせて、弦を弾く。
感情によって使い分けてみる。
この妙な遊びにすっかりはまってしまい…
「むったん、ねんねの時間だよ。」
「梓ちゃん、お昼ご飯だy…」
「へっ、憂!?」
お昼ご飯を持ってきた憂に見られてしまった。
「何してるの?」
「いや、練習だよ練習!!どうも腕が鈍っちゃったみたいでさ~!」
「そっか~でも無理はしないでね…」
「う、うん!」
必死にごまかす。
何とかごまかせたかのようで、ごまかせてないのかもしれない。
お昼ご飯を食べ終え、薬を飲んだその時、
イチニサンシゴーハン
「あれ、メールだ。」
「ほんとだ。しかも4件も…」
「差出人は…唯先輩、律先輩、澪先輩、ムギ先輩…?何で同時に?」
「あのね…昨日、お姉ちゃんが電話してきて、あずにゃんは元気かって訊いてきて、それで梓ちゃんの風邪の事をお姉ちゃんに伝えたの。」
「そうなの…?」
「そしたら、みんなで一人ずつ励ましのメールを送ろうっていう話になったみたい。」
「なるほど。」
唯先輩には何かの予知能力でも備わっているのか…?
ムギ先輩から
「新しい軽音部にはもう慣れましたか?
この先、例えどんなに辛い事があっても、あなたは一人じゃない。
大切な仲間がいつでもそばにいてくれる。
だから、みんなを信じて、これからもがんばって。
どうかお大事に。紬より。」
優しい、心がこもっている文だった。
みんなを信じる、か…
澪先輩から
「辛い事があったら、一人で抱え込まずに、遠慮なく相談するんだ。
きっと、答えが見つかるはずだから。
もちろん私たちに相談してくれてもオッケーだ。
私たちはいつでも梓の味方だから。
よく食べて、しっかり寝るんだぞ。澪より。」
とても元気づけられた。
澪先輩はやっぱり頼れる存在だと実感できた。
律先輩から
「あちゃ~梓の奴、とうとう風邪引いちまったのか…
もしかして何か無理をしてないか?
一昨日の私もそうだったから、何となくわかるんだ。
悩みはちゃんとみんなと話をして解決しないとダメだぞ。
その方がみんなに迷惑がかからないと私は思う。
早く治せよ。律より。」
一昨年の軽音部を襲った危機を思い出した。
私もこれとおんなじ状況かもしれない。
そして、唯先輩は
「あずにゃん!
こないだ、学食でとっても美味しいソフトクリームをみんなで食べたんだよ!
あずにゃんにも食べさせてあげたかったな~
そうだ、あずにゃん、今度の休みに憂と一緒に3人でお出かけしようよ!
おいしいクレープのお店、連れてってあげるね!
風邪なんかに負けるな!唯より。」
本当に、唯先輩らしいというか…
思わず二人で笑ってしまった。
「あれ、続きがある…」
「ほんとだ…これって、ソフトクリーム?」
画像付きだった。
本当においしそうなソフトクリームであった。
「みんな、梓ちゃんの事心配してるんだね。」
「うん、だから私もメールを返信しなきゃ!」
私を励ましてくれた先輩一人一人に心をこめたメールを返信した。
内容は一人一人別々にした。
とはいっても単純な文章だが。
それでも感謝の気持ちはきっと伝わるはず。
そう信じる。
先輩たちをガッカリさせないために、そして私たちの軽音部のためにも明日から頑張んなきゃ!
ファイト、私!
その夜、お母さんお父さんが帰ってきた。
私は1階に下りて食卓につけるまでに回復していた。
夕飯はお母さんのご飯を4人で食べた。
量は少なめだけど普通の食事がとれている。
そう言えば喉の痛みもほとんどない。
やっぱり、健康っていいな。
食卓は演奏会の土産話で盛り上がっていた。
楽しそうに話す親の笑顔を見て、機会があれば私もぜひ行ってみたいな…とさえ思えた。
お土産のお菓子もとってもおいしかった。
憂もすっかり家族の一員に加わっていた。
あと、お母さんのご飯も、憂のご飯とは違った意味で美味しかった。
このまま毎日憂が作ってくれればいいのに…なんて思ってゴメンナサイ。
「それじゃあ、私はこれで帰ります。」
「憂ちゃん、本当にありがとうね。」
「いえいえ。」
憂のお陰でお父さんお母さんは演奏会を心おきなく楽しめたのだろう。
「あのね、憂がこの三日間そばにいてくれて私、本当にうれしかった。ありがとう。」
「どういたしまして、梓ちゃん。」
憂には感謝してもしきれないな。
「じゃ、また明日ね。バイバイ。」
「うん、おやすみなさい。」
「おやすみ。」
こうして、私の「憂と過ごす病人生活」は終わりを告げたのである。
・・・・・・・・
私はベッドで布団をかぶり、眠ろうとしていた。
目が覚めたら、きっと風邪もすっかり治っているだろう。
体もほとんど元気になっているはず。
休息の時間はもう終わり。
明日からは受験生、そして軽音部の部長として頑張らなければならない。
みんなのために。
そして、私に「温もり」を与えてくれた憂のために。
私は心も体も憂の「温もり」に触れ、温められた。
憂との出会いをくれた神様に心から感謝したい。
明日に、そしてこれからすべきことがいくつも思い浮かんできた。
軽音部の事。
料理の事。
憂とのデートの事。
色々あるけど、私にとってはそのどれもが大切なことだ。
「とりあえず、出来ることから一つずつしっかりとこなしていけばいいよね?」
と思いつつ、瞳を閉じて眠りについた。
未確定要素であふれた明日へと一歩踏み出すために。
おしまい!
87 : 以下、名... - 2011/03/24(木) 21:42:55.63 1ftN7L0i0 63/82自分が風邪をひいたとき、ふとこんなネタが頭に浮かんで、書き始めた。
このSSは風邪+憂梓ってことで。
あと、おまけがあります。
エロ注意です。
おまけ(注意、R-18)
土曜の夜。
今日も風呂に入れる気はしない。
でも、そろそろ体を洗わないと不衛生かも。
そう思っていると、憂が…
「ねえ、梓ちゃん。体拭いてあげようか?」
と言ってきた。
以心伝心ってやつか。
「い、いいの?」
「もちろん。」
私は反対する理由もなかったので、憂の提案を受け入れることにした。
「洗面器とタオル、持ってきたよ。」
憂の手にはお湯の入った洗面器とお湯で温めたタオルが。
「うん、それじゃあお願い。」
「まかせて。」
「と、その前に。服を脱いでくれる?」
「わかった…」
パジャマを脱ぎ、下着だけの姿になる。
「下着も脱いで。」
「え…」
思わずためらう。
「アソコもちゃんと綺麗にしないと。」
「…」
憂に進められるがまま、私は産まれたままの姿になった。
「梓ちゃんの裸っていつ見ても可愛いね。」
ほぼ平らに等しい胸、毛もろくに生えてないアソコ。
「恥ずかしいよ憂…」
といっても、憂には「えっち」の際に何度も裸を見せているが。
「今拭いてあげるね。」
私はただ憂にその身を任せるのみ。
憂は暖かいタオルで私の体の至るところを拭いていく。
優しく、しっかりと。
タオルが胸に触れる。
「ひゃっ!?」
「ふふ、梓ちゃん感じてる。」
わざとなのか…?
「気持ちいい?」
「う、うん…」
その後もまるで揉みしだくかのように胸を拭く憂であった。
そして、
「次はアソコ、ふきふきするね。」
憂の視線は私の秘部に注がれた。
「あ、梓ちゃん、おけけ生えてる。」
「え?」
昨日今日、風呂に入っていなかったから気付かなかった。
よく見ると秘部の近くに黒い性毛が生えかけていた。
ほんのちょびっとだけだけど。
「ほんとだ…」
「こないだえっちした時は生えてなかったのに…」
「そうだったね…」
「おめでとう、梓ちゃん。」
「ど、どういたしまして。」
そこは「ありがとう」だろう。
「しっかり拭かなくちゃね…」
タオルが秘部を優しく撫でる。
「ひゃん!?」
僅かだけだが突起に触れた。
「ごめん、感じちゃった?」
「…もしかして、ワザと触れたの?」
「え、そんなことないよ?」
憂は澄ました顔で返す。
弄ばれてるような気が…しなくともない。
「お尻の穴も拭くよ。後ろ向いて。」
「わかった。」
憂に従い、お尻を向ける。
「ここはしっかりきれいにしないと…いけないよね♪」
「ん、ひい!」
憂は私の肛門をタオルで何度も優しくこする。
「攻める」時と同じように私の後ろの穴の入口をこねくり回していた。
「最後に足の裏も拭いて、っと。これでおしまい。」
「あ、ありがと。」
とりあえず私は感謝の言葉を伝えることにした。
だが
「どうしたの、梓ちゃん?」
「なんか…ムラムラしてきちゃった…」
憂の寸止めともいえる巧みな攻めによって、私はすっかり発情していた。
その証拠に膣からは愛液が染み出し、後ろの穴はヒクヒクと刺激を求めていた。
私の躰は既に憂による開発を受けていたのだ。
「ふふ、もしかして『えっち』したくなっちゃったの?」
その様子を見た憂には何もかもお見通しだった。
「う、うん。」
「ダメ。ちゃんと風邪治してからね。」
「はい…」
今の私はさながらお預けを食らった子犬のようだったと、後に憂は語った。
その時
「…」
突然
「今度はどうしたの?」
私を
「…おしっこ、したくなっちゃった。トイレ行っていい?」
尿意が襲った。
すると、憂はしばらく考え込んだあと、
「ここでしちゃえば?はい洗面器。」
こうおっしゃった。
「ええええええ!?」
さすがにこれには驚いた。
「本気で言ってるの…?」
「うん、そうだよ。だって見てみたいし、今の梓ちゃんなら嫌じゃないかなって思ってさ。」
「それにちょっと前に、梓ちゃんが私のおしっこ飲んだ事だってあるし、それに比べたら…」
「わわわわ!!その話はナシ!やめてお願い!!」
そんな事も確かにあった。
これは否定しようがない事実だ。
「だから、ここで見せて欲しいの。梓ちゃんがおしっこする所。」
「いや、何が『だから』なの…?」
「ダメかな?」
上目遣い。
この親友は私の放尿を間近で観察したいらしい。
「わかった、ここでするよ。でも恥ずかしいからあんまりジロジロ見ないでね?」
「ほんと?」
嬉しそうな顔をした憂であった。
私はすねとすねの間に洗面器を挟む。
そして少しだけ力んで、体を小さくふるわせ、
「んっ…」
シャアア…
おしっこをした。
そして、私の股間をまじまじと観察する憂。
「すごいね。まだ出てるよ。」
「や、やめてよ憂…///」
私は憂に視姦されながらも、放尿を続けていた。
チョロチョロと音を立てながら洗面器の水と私のおしっこが混ざり合い、黄色く染まっていく。
ショロロ…
尿の勢いが弱まり、完全に途絶えた。
「…ふう。」
「終わったの?」
「う、うん。」
私の顔は既に恥ずかしさで真っ赤だった。
「あれ梓ちゃん、顔真っ赤だよ?もしかしてまた熱出ちゃった?」
「誰のせいだと思ってるの!?」
「冗談だって。でもおしっこしてる梓ちゃん、すごく可愛かったよ?」
「ちょ…///」
「またいつか、見てみたいな。」
「」
私はただ唖然とした。
「それじゃあこれは片づけるから、梓ちゃんも服着てね。」
「わかった…」
バタン
憂は濡れタオルと私のおしっこが混ざった水の入った洗面器を持って、部屋から出ていった。
私は火照る体を鎮めながら、服を着た。
そして、股間に僅かだけ残るおしっこの温もりを感じながら、ベッドに潜り込んだのであった。
おまけおしまい!