1 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 01:52:57.85 YEuoM2zP0 1/207


「やってしまった・・・・・」

「やってしまったぞ・・・・・・」

「・・・・・」

「はぁ・・・・・・」

「・・・・・」




元スレ
男「やってしまった・・・」
http://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1240591977/

4 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 01:55:15.53 YEuoM2zP0 2/207

最近の夜更かしを後悔する俺


「はぁ・・・・・・」

「完徹でゲームなんかするんじゃなかった・・・・」


「・・・・・・」


目をこする


「・・・・・・」


「・・・消えないし」



6 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 01:59:46.53 YEuoM2zP0 3/207

人は朝起きたら何をするのか

大抵の人は

まずトイレに行って

その次にきっと洗面所で顔を洗うだろう


そして

俺も決して例外ではなく

トイレを済ませた後

洗面所に向かった


そしてそして




洗面所の鏡を見た


8 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 02:04:00.60 YEuoM2zP0 4/207

・・・・・・


「寝ぼけてんのかな俺・・・・」

「でもそんな・・・・」

「夢でもないだろうし・・・・・」



俺は

鏡越しに




頭の上にある物を見た



10 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 02:05:31.31 YEuoM2zP0 5/207

「なんだ・・・・・これ」


俺の頭の上には

















時計らしき物が乗っていた



12 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 02:09:56.87 YEuoM2zP0 6/207

朝起きてふと見れば


俺の頭の上には時計が乗っていた

何も文字の書いてない時計


「・・・時計というより」

「タイマーみたいな・・・・」


乗っているというよりは


くっ付いてるという感じ



「どういうことなんだ・・・・」



「・・・・・・」

「・・・とりあえず取ろう」


13 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 02:13:24.11 YEuoM2zP0 7/207

スルッ、スルッ


「ありゃ」


鏡に映った時計の位置に手を回した





「・・・・・・・」




時計は俺の手をすり抜けた


14 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 02:17:10.79 YEuoM2zP0 8/207

「・・・・・・」


「・・・どういうことやねん」

「やべえ口調が乱れた」


「・・・どういうことですか」


スルッ

何度やってもすり抜ける



「・・・・・・」


「気になって顔洗えない・・・・」


15 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 02:21:23.41 YEuoM2zP0 9/207

ドンドン

洗面所の扉を叩く音がした


「・・・お兄ちゃんまだー?」


「あ、ああ」

「悪い悪い」


結構考え込んでたらしい


「早くしてよー」


「ああもうすぐ終わる」



俺は顔を洗って洗面所を出た


16 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 02:25:37.72 YEuoM2zP0 10/207

「洗面所早く開けてくれないと」

「私まで遅刻しちゃうよ」


「・・・・・・・」

「・・・・なぁ」


「?」


「その頭の上の・・・・・」







妹の頭の上にも


時計が乗っていた


17 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 02:29:36.50 YEuoM2zP0 11/207

「頭の上に何か付いてる?」


妹も頭に手を回す


「何も付いてないけど・・・・」


「・・・・いや、なんていうか」

「とりあえず洗面所行って来い」


「・・・・なんていうか」

「変なの」


18 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 02:33:42.88 YEuoM2zP0 12/207

妹は洗面所に入った


水を流す音が少しした後



妹は出てきた



「・・・・・・」

「・・・・な?」


「・・・・・」







「・・・・別に」

「何も付いてなかったけど・・・・・」


19 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 02:37:02.41 YEuoM2zP0 13/207

え・・・?


「いやいや」

「もろ付いてんじゃん」


「だから何がって」

「てかそんなに言うなら取ってよ」


「いや・・・・」

「それは・・・・・」


「はあ?」


21 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 02:39:45.73 YEuoM2zP0 14/207

男は妹の頭の上に手を回した

が、


やっぱりその時計は手をすり抜けた


「・・・・・・」

「・・・・取れた?」


「・・・・・・」


ばっちり取れてない


「・・・・ああ」

「取れた」


「なんだよかった、ありがと」


「おう・・・・」


22 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 02:44:11.73 YEuoM2zP0 15/207

俺の家は両親共働き

なので2人とも朝早くでかけてしまう

よって朝は俺と妹だけ


つまりは


「・・・・・・」

「・・・・俺がおかしいのか」

「・・・・それとも」

「妹がおかしいのか・・・・」




どっちか分からない


・・・・大体予測はつくけど


24 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 02:48:21.52 YEuoM2zP0 16/207

「じゃあ私先に学校行くね」



ガチャッ

妹は学校に向かった


「・・・・・」

「・・・きっと」

「・・・きっと俺が寝ぼけていただけだろうな」


「そうだ」

「そうに違いない」


そう言いつつも

俺はリビングの鏡からは目線をそらし




家を出た


25 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 02:51:43.82 YEuoM2zP0 17/207





「そうか、分かったよ」

「なるほどね」



俺は周りを見渡した











「・・・・おかしいのは俺らしい」


道行く人みんなの頭の上に

俺が朝見た時計と似たようなのがあった

あったというか乗っていた


26 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 02:54:01.41 YEuoM2zP0 18/207

信号待ちしている人も

コンビニに寄っている人も

遅刻しそうなのか少し慌てている人も

散歩中のおじいさんも

道の掃除をするおばあさんも


みんながみんなの頭の上に




時計が乗っている



「・・・・・・」

「・・・なんという不思議光景」


27 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 02:59:47.23 YEuoM2zP0 19/207

しかもしかも

みんながみんな

明らかに不思議な


その時計を気にしている様子がない


「・・・ということは」


「やっぱり俺だけなんだろうなあ・・・・」



「俺時計に呪いでもかけられたのかなぁ」


「・・・・無機物に呪われるってなんだよっていうね」


29 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 03:04:14.84 YEuoM2zP0 20/207

俺は学校に行くのはやめて

少し周りをうろつく事にした



「・・・もしかしたら」

「俺は世界の陰謀に巻き込まれて・・・・・」


「・・・・はぁ」


とてもそうは思えない

なんともシュールな光景



「これじゃあ」

「危機感も何も感じねぇ・・・・」


30 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 03:08:08.25 YEuoM2zP0 21/207

「・・・・まぁあれだ」


俺は考えた


「とにもかくにも」

「まずはあそこに行くしかないな」


そうだ

こういう時の為にコンビニはあるのだ

こういう時の為にコンビニは24時間営業なのだ



いや多分違うと思うけど



「・・・・よし」



32 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 03:12:46.12 YEuoM2zP0 22/207

コンビニ 店内



きっかけもなく見知らぬ他人に話しかける度胸のない俺は

コンビニの店員さんに

物を買うついでに聞こうなどという考えを持っていた



「こういうときシャイって大変だな」

「・・・まぁ」


「聞くだけならさほど迷惑もかからないと思うけれども・・・・」



俺はガムを持って


レジに行った


36 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 03:18:45.19 YEuoM2zP0 23/207

店員「いらっしゃいませ」

店員「こちら一点でよろしいでしょうか?」

「は、はい」


店員「100円になりますー」

店員「このままでもよろしいでしょうか?」

「大丈夫です」


俺は100円を出した


店員「はい、丁度お預かりします」

店員「ありがとうございました」


「どうも」


38 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 03:23:56.23 YEuoM2zP0 24/207

店員「またお越しくださいませー」


「あ・・・あの・・・・」


店員「?どうしました?」


「・・・・」

「・・・俺の頭の上に何か付いてます?」


店員「?・・・・」

店員「・・・いえ」


店員「何も付いていませんが・・・・」


41 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 03:27:28.14 YEuoM2zP0 25/207

ガムを片手に店を後にした俺は



「・・・よし」

「家帰って寝よう」


「学校とか言ってる場合じゃない」

「下手したら何かの病気だ俺は」

「時計症候群的な」


「とにもかくにも俺は疲れている」


「学校は休もう」



真っ直ぐ家に向かった


42 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 03:31:31.72 YEuoM2zP0 26/207





家に帰った俺は

パジャマに着替えて

即刻布団に潜った



「学校には後で連絡しよう・・・・」

「今はそれどころじゃない・・・寝なきゃ・・・」


目をつぶった


そして



眠った


44 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 03:35:34.25 YEuoM2zP0 27/207

(ここはどこだろう)


『ここは夢の中だ』


(そうなんだ)


(夢の中で夢って自覚持ったの初めてっぽい)


『普通はそうだろう』


(ところであなたは?)


『俺か?』



45 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 03:38:33.88 YEuoM2zP0 28/207

(はい、そうです)


(夢の中で僕に話しかけるあなたは)


(一体どなたですか?)


『ふふっ』


『オレハな』


(はい)



46 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 03:41:04.86 YEuoM2zP0 29/207



『お前を』









『殺しに』









グシャッ


47 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 03:46:45.12 YEuoM2zP0 30/207

ガバッ


そこで目が覚めた


「・・はぁはぁ・・・・」


パジャマが汗で濡れていた


頬にも汗が垂れる



「・・・なんだ・・・今の・・・・」


48 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 03:50:31.92 YEuoM2zP0 31/207

額の汗を手でぬぐう


「変な奴がいて・・・・・」


「少し話して・・・・」


「そして・・・・・」



何かで斬られた感じになって・・・・・



「・・・・落ち着こう」


少し冷静になってみた


50 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 03:56:03.62 YEuoM2zP0 32/207

そうだ

たかが夢だ

少し怖い夢だったってだけ


なのに・・・・


「・・・寒気がする」


現実に戻っても怖いままなくらい


しつこい夢だった


52 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 03:59:53.61 YEuoM2zP0 33/207

「・・・そうだ」

「気晴らしでもしよう」


布団から出る


「夢を見たってことは結構寝たっぽいし」

「あの時計も消えてるだろう」


「確認ついでに外の空気でも吸おう」



俺は玄関に向かった



53 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 04:05:34.45 YEuoM2zP0 34/207





「・・・・・・・」

「・・・嘘だろうよ」



俺はパジャマ姿で外に出て


周りを何度も見回した


けれど


何度も何度も見回しても





「・・・・・・・」

「・・・消えてねえ」




54 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 04:10:33.23 YEuoM2zP0 35/207

目の前には


相も変わらない

不思議な光景が広がっていた


勿論、時計も形姿ほとんど変わっていない



「なんで・・・・・」


「もしかして俺・・・・・」


「本当に病気なのかな・・・・・」



55 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 04:16:43.13 YEuoM2zP0 36/207

家に戻った俺は

リビングの鏡で自分のも確認した


「やっぱり」

「やっぱり残ってる・・・・」

「そんでもってやっぱり触れない・・・・」


自分の頭の上にもしっかり残っていた


朝と何も変わらず・・・・




「・・・・あれ」


56 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 04:21:08.98 YEuoM2zP0 37/207

気付いた


「朝見た時より・・・・・」


俺は気付いた


「少しだけだけど・・・・・」


気付いていいことかは分からないけど





気付いてしまった


「・・・・時間が進んでる?」


58 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 04:24:54.58 YEuoM2zP0 38/207

そうだ

よーく見ると


少し針が進んでいるような気がする


「気のせい・・・・」

「・・・じゃないよな」


洗面所でガン見していただけあって


大体の針の位置まで覚えていたらしい



59 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 04:30:39.14 YEuoM2zP0 39/207

「でも・・・・・」


「進むと何があるんだ・・・・?」


そうだ


これはそもそも何の時計なんだ?

本当にただの時計なのか?


時間も家の時計とはズレてるし・・・



「・・・・全然分からん」


61 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 04:33:46.34 YEuoM2zP0 40/207

結局俺は学校をさぼった


学校に電話をしたまでは良かったのだが

その後保護者に確認を取る事になり

サボった事がばれてしまった


おかげで俺は

帰って来た両親にこっぴどく叱られ

妹には蔑まれた

そんでもって




時計は両親にも見えてないっぽくて


64 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 04:37:56.55 YEuoM2zP0 41/207

「学校勝手にサボるなってあれほど言ったでしょ」

「まったくあんたは」

「おまけに自分で電話してごまかそうなんて」


「すいません・・・」


「まったく・・・・・」


「まぁまぁ」

「もういいじゃないか」


「甘やかさないでよ」



65 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 04:42:22.86 YEuoM2zP0 42/207

父の説得の甲斐あってか

なんとか母の説教を終えることが出来た


「次やったらどうなるか分かってるんでしょうね」

「そうだぞ」

「俺が食い止めるのもこれが限界だ」

「どういう意味よそれ」



「キモに銘じときます・・・・・」


67 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 04:47:39.77 YEuoM2zP0 43/207

俺はリビングに戻った


「はぁぁ・・・・・」


「いつも以上に長かったね」


妹が笑いながらそう言ってきた

うぜえ・・・・


「まったくだよ・・・・」


「・・・・てか」

「今日どうしたのお兄ちゃん?」


68 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 04:52:28.54 YEuoM2zP0 44/207

妹が

不思議そうな顔をしていた


「何が?」


「・・・今日様子変だよ」


「朝といい今といい」

「そりゃあ、いつもちょっと変だけど」


やっぱりそう思われるだろうな・・・・


俺自身おかしいと思ってるし・・・・



「・・・・・・」


70 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 04:56:23.67 YEuoM2zP0 45/207

「・・・・・気のせいだろ」


「そうだ、気のせいだよきっと」


「そう・・・・?」


「ああ」


「気にすんな」


「ならいいけど・・・・」


「そう・・・・・」



「それでいいんだ」


71 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 05:01:01.61 YEuoM2zP0 46/207

その後

風呂も飯も終えた俺は

また布団に潜った



だが・・・・・



「・・・・寝たくねえ」



正直

あまり寝る気がしない



72 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 05:04:30.58 YEuoM2zP0 47/207

昼寝したから眠くない訳ではない

むしろまだ寝足りないくらい


かといって今ゲームをやりたい気分でもない

じゃあなんで寝たくないのかというと



「・・・・もしかしたら」


「またあの夢見たりして・・・・・・」


そう


昼間のあの夢が未だに忘れられないから


74 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 05:09:03.63 YEuoM2zP0 48/207

「・・・だからあれは夢だって」

「忘れよう忘れよう」


「まさか同じ夢を二度見ることはないだろ」


何度もそう思い込み

ひたすら呟きながら


部屋の電気を消して








眠りについた


97 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 13:05:30.28 YEuoM2zP0 49/207

(・・・・・)

(・・・あれ)

(ここは)


『よう』

『昼間ぶりだな』


(・・・)

(まじかよ・・・)


嫌な予感は

的中した


99 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 13:09:42.13 YEuoM2zP0 50/207

どうやら

また同じ夢を見てしまったらしい


『安心してくれ』

『昼間のはただの冗談』

(冗談って・・・・)

(こっちは寒気するくらいだったんですよ・・・・)


『悪い悪い』

『でもまぁ夢の中じゃあ死なないから別に大丈夫だろ』

(そういう問題でも・・・・)


103 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 13:14:29.26 YEuoM2zP0 51/207

(ていうか)

(あなたは誰なんですか?)

『ん?』

(昼間ははぐらかされちゃいましたけど)


(どなたなんですか?)

『・・・・・』

『変な事を聞くね』

(変?)




『自分の夢に出てくる奴に誰?なんて』


104 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 13:19:16.93 YEuoM2zP0 52/207

(変なのはこの夢ですよ)

(なんで)




(・・・なんで見たこともない人が夢に出てくるのか)

『あー』

『なるほどね』

(もしかして)

(昔に会ったことがあったり?)

『いや』

『ないよ』

(ないんですか・・・・)


(・・・・・・)


105 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 13:25:01.02 YEuoM2zP0 53/207

『俺は一体何なのか』


『・・・それは』

『言えないな』

(ええ・・・・・)

『自分で考えなきゃ』

(考えろったって)

(心当たりもないですし)


『・・・人から貰った答えなんて』


『答えなんかじゃない』


『それはただの知識だよ』


(そんなかっこよさげな事言われても・・・・)


107 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 13:30:11.84 YEuoM2zP0 54/207

そこで目が覚めた

何も発展しないまま



「・・・・・・」


「・・・終わるの早いし」


「・・・てか」


「・・・分からん」


「何一つ分からない・・・・・」


108 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 13:35:44.68 YEuoM2zP0 55/207

時計の事

なぜ俺だけなのか

時計が進むとどうなるのか


夢の中の人

なんで知らない人が出てくるのか

そもそも誰なのか


「頭おかしくなりそう」

「・・・・・」



「・・・とりあえず学校行く支度しよう」


110 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 13:40:31.73 YEuoM2zP0 56/207

玄関




「・・・・・」

「・・・何してんだ」


支度を終えた俺を

妹は玄関で待ち構えていた


「昨日お母さんに言われた」

「見張れって」


「・・・・いやいや」


「お前が遅刻したら意味無いだろ」


111 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 13:44:56.54 YEuoM2zP0 57/207

「大丈夫だよ」


「いつも早く学校に行ってるから」

「まだまだ全然余裕」


「・・・さいですか」

「真面目だね」


「まったくですよ」

「誰のせいだか」


「すいません」




俺達は雑談もほどほどにし

家を出た


114 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 13:49:28.37 YEuoM2zP0 58/207





「もうなんか」

「この光景は見慣れたな」


やっぱり変わらず

時計は健在だった


「?」

「いや、なんでもないよ」

「それより」


シャリンシャリン



「・・・その鈴の音なんとかならんのか」



115 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 13:55:40.88 YEuoM2zP0 59/207

「ストラップなんだからしょうがないじゃん」

「可愛いし」


「・・・・一個だったら文句は言わんが」


妹の鞄には

たくさんの鈴が付いていた


「正直」

「鈴と鈴がぶつかって騒音レベルになってる」


「気にしない気にしない」

「・・・気にしろ」


118 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 13:59:34.55 YEuoM2zP0 60/207

「じゃあね」

「ちゃんと学校行ってね」

「りょうかいー」


俺は妹と別れた


「・・・・・」


「・・・まぁ」










「またサボっちゃうんだけどな」


119 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 14:04:05.89 YEuoM2zP0 61/207

「そうだ」


あの夢の人も言っていた

誰だか知らんけど


「自分で探してこその」


「答えなんだって」


正直言うと

気になって学校行っても勉強なんかできないとか

そんな事しか思ってないんだけれども


「・・・・親に怒られるの覚悟で」


120 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 14:08:15.41 YEuoM2zP0 62/207

まず考えた


「分からないことがあって・・・」

「調べ物と言ったら・・・・・」


「図書館しかないよな・・・・」


もしかしたら

図書館で何か分かるかもしれない


「よしそうしよう」

「けど」

「まだ開いてないだろうなぁ」




121 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 14:12:19.38 YEuoM2zP0 63/207

俺の知っている図書館は

確か開くのが9時頃だった気がする


「まだ少し時間あるなぁ」

「う~ん」


「そうだ」


「それまで人の観察でもしてよう」

「人っていうか」


「時計の観察って言ったほうがいいのか」




122 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 14:16:18.42 YEuoM2zP0 64/207


近くのベンチに座った俺は

改めて回りを見てみた


「ふむふむ」



時計の乗ってない人は見てる限りだといない

しかもみんな頭の上だけにある

柄にも色にも多分だけどほとんど違いはない


「・・・なんか俺」


「不審者っぽい気がする・・・・」




125 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 14:21:59.30 YEuoM2zP0 65/207


文字がついている時計も一つも見当たらない


違うとすれば・・・・


「・・・あれだな」



「・・・時間が人によってバラバラだ」


そもそも時間を表してるのかも分からないが

人によって針の位置が違った



「なんでだろう・・・・」



126 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 14:26:04.42 YEuoM2zP0 66/207


その後もずっと見てはいたものの

新しい発見も特になく

気付けば


「ああ」

「もう9時過ぎてる」


図書館の開く時間になっていた


「・・・・・」


「・・・行くとするか」




128 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 14:29:44.45 YEuoM2zP0 67/207

図書館



やっぱまだ開館直後だけあって

ほとんど人がいなかった


「すいてると気が楽だな」

「さて」


本のコーナーに向かった


「まずは時計の本を・・・・・」



「・・・・・・」

「時計の本って・・・・」


129 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 14:34:54.37 YEuoM2zP0 68/207


俺は手当たり次第に漁った

けれど時計の本となると


「・・・やっぱり」


「メーカーの雑誌とか」

「童話とかしかねえよな・・・」


「てか」

「そもそも時計の本ってなんだよ」

「そんな本聞いたことねーよ」

「第一時計なのかも分からねーし」



130 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 14:41:15.36 YEuoM2zP0 69/207


専門書とかも見てはみたが

時計の作り方工程だとか

時間の概念だとか

さほど関係なさそうな物しか出てこなかった


「むむ・・・・」




「・・・む?」


そんな時

ふと目がいった




病気関連の著書の本棚に



131 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 14:45:33.94 YEuoM2zP0 70/207

凍りつく俺


「・・・・・・」

「・・・まぁ一応見よう」

「別に精神病なんかじゃないと思うけど」

「一応見るだけなうん」



ペラペラ



「えっと・・・・」

「精神病関連のページっと・・・・」



132 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 14:48:50.28 YEuoM2zP0 71/207


「『寿命短下・・・・・』」

「『聴覚過敏・・・・・対人恐怖症・・・・』」

「『鬱・・・・過呼吸・・・・・』」

「『麻痺・・・・・選択性寡黙・・・・・』」


なんか

どれも当てはまりそうな気がするから怖い


「勘違いするな俺・・・・」


「あくまで時計が見える病気を探すんだ・・・・」




133 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 14:52:54.07 YEuoM2zP0 72/207

パタン


「・・・・・・」


「・・・無かった」


幸運なのか不幸なのか


時計が見える病気とやらは見つからなかった


幻想が見える病気とかに俺がなってたら

もうどうしようもないけど


「・・・でもそれなら」

「時計以外の物も見えていいだろうし・・・・」


134 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 14:56:43.05 YEuoM2zP0 73/207


「・・・・・・」

「・・・あ」


俺は前のページに戻った


「・・・・・・」

「じゅみょう・・・・短下・・・・・・」

「寿命・・・・・・」








「寿命?」


136 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 15:00:32.32 YEuoM2zP0 74/207

思いついた

だが


何でこんな事を思いついたのか


「人によって進みが違う時計・・・・・」

「文字の無い時計・・・・・」

「・・・・あの時計って」











「・・・・・寿命を指しているんじゃ」



137 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 15:03:16.05 YEuoM2zP0 75/207

とある天才は言った


閃きの一つや二つは誰でも持っている

ただ


その閃きを実行した者こそが天才になると


「・・・・案外」

「ありそうな話じゃないか?」


「それなら頭の上にあるのだって」

「その人の寿命だって事なら理解できるし」


「それに進み具合の違いだって」

「人によって寿命は違うんだから当然だし」



139 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 15:08:48.42 YEuoM2zP0 76/207

「もしそうなら」

「多分普通の時計で言う12時の場所になったら」

「寿命を終えるとか・・・・・?」


どんどん閃いていく



「よし」


「・・・確かめよう」

「確かめてみよう」



本を元の場所に戻し


俺は図書館を出た


140 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 15:13:40.34 YEuoM2zP0 77/207





俺はまたしても辺りを見回す

何回目だこれ



「・・・今度は違う」

「ただ闇雲に見回してるんじゃないぞ・・・・」


「絶対いるはず・・・・」

「1人ぐらいは多分いるはず・・・・」


俺は探した




時計の針が12の位置に近い人を


141 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 15:17:57.83 YEuoM2zP0 78/207


「・・・・・いた」


見つけた


案外すぐに見つかった


だが


「あれ・・・・」


「やけに若いな・・・・・」



その人は若い女性だった


143 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 15:21:42.61 YEuoM2zP0 79/207

「あれれ・・・・」


若い

やけに若い


とてもじゃないが寿命が近そうには見えない


「てっきりおっさんとかだと思ったんだが・・・・」

「それとも」


「事故とか病気とかも時計の計算に入ってるのかな・・・・」



「もしそうなら・・・・」




144 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 15:25:53.90 YEuoM2zP0 80/207


俺が・・・・


その瞬間を見るって事か・・・?


「・・・・気が引ける」


だが

確かめるには見届けるより他にない


「・・・なんか怖いな」


少し不安を持ちながら


女性の後をつけた


145 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 15:30:48.73 YEuoM2zP0 81/207

尾行中



「・・・もうあれだな」

「最近の俺はもう立派な不審者だな」



「・・・・・」

「・・・本当は少し助けたいとも思うんだけど」


何が起こるかわからないのに

助けられるわけも無い



「あくまで」

「俺の予想が当たってればの話だが」



147 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 15:34:57.41 YEuoM2zP0 82/207

ふと


女性の足が止まった



「・・・?」


「まさか・・・・」


その女性は











急にうずくまった



148 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 15:40:05.17 YEuoM2zP0 83/207

俺は焦った


「!!やっぱり」


俺の予想は当たっていたのか


「病気かなにかか!?」


「とりあえず救急車を呼ばないと」



急いで鞄から

携帯を取り出した




149 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 15:44:55.49 YEuoM2zP0 84/207

[はい、こちら救急病院です]


「すいません、大変なんです!」


[落ち着いてください]

[とりあえず状況説明をお願いします]


「目の前にいた女性が急にうずくまっちゃって」

「多分寿命が近いんです!」


[動揺しているみたいですが]

[一旦落ち着いてください]


153 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 16:00:57.96 YEuoM2zP0 85/207


[住所は分かりますか?]


近くの電柱を見た


「はい」

「○○××です」


[分かりました、今からそちらへ向かいます]

[着くまでの間、女性の症状の確認をお願いします]


「は、はい」


155 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 16:02:47.43 YEuoM2zP0 86/207

俺は確認をするため


女性の方を見た



そして

















さらに焦った



156 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 16:06:28.68 YEuoM2zP0 87/207

[女性の様子はどうですか?]

[息が苦しそうとかありますか?]

[脈拍計れますか?]


「・・・・・・」


「・・・消えてってます」


[はい?]


「女性の体が・・・・・」








「消えてっているんです・・・・・」


159 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 16:13:33.30 YEuoM2zP0 88/207

俺は見た


女性が

苦しそうにするでもなく

倒れるわけでもなく



ただただ消えていっていくのを見た



[大丈夫ですか?]

[かなり焦っているようですが、一旦落ち着いて下さい]

[大丈夫ですから]


「あ・・・・あ・・・・・・」


「ああ・・・・・・」


[もしもし?大丈夫ですか?]


162 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 16:16:23.58 YEuoM2zP0 89/207

俺は救急隊員の言葉が耳に入らなかった



ただ呆然と見ていた



そうしているうちにも



体はどんどん消えていき



気付けば






女性はどこにもいなくなっていた


163 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 16:18:38.96 YEuoM2zP0 90/207

[もしもし?どうしました?]


「・・・・・・」


[大丈夫ですか?]


「・・・・・・」


「・・・・すいません」


[はい?]


「今の通報は無かったことに」




プツンッ


186 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 20:31:14.88 YEuoM2zP0 91/207

女性がうずくまっていた場所を見た

だが


何も残っていない


「・・・・・・」


「・・・なんだよ」


「どういうことなんだよ・・・・・」


まったく


意味が分からない


187 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 20:36:25.89 YEuoM2zP0 92/207

もし俺の予想が当たってたなら


あの女性は病気か何かしらで寿命が来るはずだった

けれど女性はそんな素振りを見せるどころか


丸々消えてしまった


そのまんまの意味で



「・・・・・・」


「・・・・じゃあ」


「じゃあこの時計は・・・・」


190 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 20:41:16.97 YEuoM2zP0 93/207

タイミング的に

俺の考えの大体は間違ってはいないはず

ただ違っていたのはきっと


12時の位置になると


寿命を迎えるのではないというとこだけ



「・・・・・・」


「寿命を迎えるんじゃなくて・・・・・」




191 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 20:45:55.21 YEuoM2zP0 94/207



「12時の位置まで行ってしまったら・・・・・」




















「消える・・・・・」


193 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 20:50:12.72 YEuoM2zP0 95/207

消えるって・・・・・


・・・・・・・


「てか消えるとどうなるんだ・・・・・」


「そもそも消えてるのか・・・・?」


「薄くなって見えなくなっているだけとか・・・・」




「そして」


「・・・・消えたら」


「どこに行くんだ?」


194 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 20:56:05.58 YEuoM2zP0 96/207

その後

俺は人通りの多い道に戻って

再び時計の針が12の位置に近い人間を探し始めた


しかし

さすがに2人目は見つからなかった



というより



さっきの出来事が衝撃的すぎて



しっかり探せてなかったのかもしれない



195 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 21:01:08.28 YEuoM2zP0 97/207

そうして

「・・・・やべえ」



「・・・もう夜じゃん」



探し続けて気付いてみれば


もう辺りは大分暗くなっていた



「・・・・・こんな事に」

「半日もかけるなんてな・・・・・」




「帰ろう・・・・・」




197 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 21:07:16.22 YEuoM2zP0 98/207

家の前



「・・・・・ああ」

「絶対殺される・・・・・」


学校さぼったどころか

こんな時間に帰って来たなんて言ったら


「俺も」

「親に消される・・・・・」


「・・・・・・」

「・・・・こんな冗談言ってる場合じゃない」




199 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 21:12:19.18 YEuoM2zP0 99/207

ガチャ




「・・・・た、ただいま」



「あ!」


「男!!!!!」



(母親の声・・・・)


(来たぞ・・・・・・)


(俺終わった・・・・・)




「・・・大変なのよ!!!」


201 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 21:16:56.06 YEuoM2zP0 100/207

リビングから母親が出てきた

きっと俺を叱るためだろうと思ったが


なぜか母親の様子は

怒っているというより

焦っているという感じだった



「え?」


大変?


「な、なにが・・・・?」


202 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 21:21:47.37 YEuoM2zP0 101/207

「・・・・妹が」


「・・・・妹がまだ帰ってないのよ!」


母は大声で言った


「ちょっと・・・・ボリューム・・・・」


「それよりなんて・・・?」


「だから!」









「妹がまだ帰ってきてないのよ!」


204 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 21:26:20.63 YEuoM2zP0 102/207

「妹が?」


この時間にまだ帰ってない?


「学校や友達の家にも電話したんだけど」


「学校の先生はもう帰ったって言うし・・・」

「友達の家には来てないって言うし・・・」


「・・・遊びにでも行ってるんじゃ」


「それにしても連絡も無いなんて・・・・」




206 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 21:31:44.36 YEuoM2zP0 103/207

俺の妹は真面目だ

俺の妹とは思えないくらい


だからこそ成績もいいし

遅刻なんて絶対しないし


遅くなる時はいつも連絡する


「・・・いつもはこんぐらいの時間になるときは」


「絶対連絡が来るもの・・・・」



「・・・・・・」


207 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 21:37:21.56 YEuoM2zP0 104/207

昼間にあんな出来事に遭遇しただけに


悪い予感しかしない


更に


追い討ちをかけるかのように


俺は思い出した




「・・・ちょっと俺」



「探してくるよ」



209 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 21:43:16.63 YEuoM2zP0 105/207





「・・・・朝」


「朝に見た時・・・・・・」



記憶違いじゃなければ



妹の時計の針は











「・・・・12時間近だった」


210 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 21:49:12.97 YEuoM2zP0 106/207

学校への道


いない


妹が好きなお菓子店


いない


妹がよく泣きにくる公園


いない



いない


どこにも



212 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 22:00:26.86 YEuoM2zP0 107/207

家に戻ると


母は警察に連絡していた


父さんも既に帰ってきていた



「あ、男」


「いなかったよ・・・・」


「一応行きそうなところは回ったけど」



「・・・・やっぱり」


「やっぱり何かあったのよ・・・・」



213 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 22:06:49.15 YEuoM2zP0 108/207

「母さん、落ち着きなさい」


「でも・・・でも・・・・・」

「お父さんみたいに・・・・」


「母さん」

「・・・その話はやめなさい」


「・・・・ごめんなさい」


214 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 22:11:24.72 YEuoM2zP0 109/207


数分後

警察の人が家に来た



警察「・・・事情は分かりました」


警察「こちらで捜索してみます」


「お願いします・・・・」


警察「あとできれば」


警察「妹さんの特徴が分かる物があると嬉しいのですが」


「写真なら・・・・・」




215 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 22:16:45.16 YEuoM2zP0 110/207

警察「それじゃあそちらを」

警察「少しの間お借りしますね」


警察「最悪、複製させてもらう場合もありますが・・・・・」


「・・・はい」


恐らく

最悪の場合

写真を貼って情報を募る、という事だろう


警察「それでは失礼します」


「お願いします・・・・」




217 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 22:21:44.72 YEuoM2zP0 111/207

警察の人たちは帰っていった


「・・・母さん」

「あとは警察の人に任せて私達も寝よう」


「・・・・」

「・・・そうね」


「男も」

「もう寝なさい」


「・・・・うん」


220 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 22:25:19.79 YEuoM2zP0 112/207

風呂場


「・・・・妹は」


「やっぱり消えてしまったのか・・・」


「時計が進んで・・・・・」


「・・・・・・」


「・・・もう一度」


「考え直してみよう」




222 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 22:31:22.41 YEuoM2zP0 113/207


部屋に入った俺は

机に向かった



「・・・机に座るの久々だな」

「ろくに勉強もしないからなぁ俺」



ノートとシャーペンを持った



「・・・よし」


「整理してみよう・・・・」



225 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 22:36:40.07 YEuoM2zP0 114/207

みんなの頭の上にある時計

針だけの文字がない時計

どの時計も針の進み具合以外は全て同じ

そして

針が普通の時計でいう12時を指すと

うずくまったあと

その人は消える

多分場所状況問わず


時計が見えるのは多分俺だけ?

消える瞬間は他の人にも見えるのか?


227 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 22:41:14.79 YEuoM2zP0 115/207

「もし妹が消えていたとしても・・・・」


「妹の事を俺たちは覚えている・・・」


「ということは消えるのは存在だけ?」


「じゃあ行方不明とかの事件って」


「これのせいだったり・・・・・」



「・・・それとも」


「そのうち忘れていくのか・・・?」


230 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 22:46:25.90 YEuoM2zP0 116/207


「そして気になることがもう一つ・・・・・」


「あの夢・・・・・」


「時計が見えたあの日に見た」


「そしてその次の日も見た」


「変な夢・・・・・」



夢の中に現れる変な男、時計に関係あり?



俺は

ノートに一つ書き加えた



232 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 23:01:15.80 YEuoM2zP0 117/207

・・・・さて


もう寝ようか


もしかしたら


寝たら全てが解決しているかもよ



「・・・とかだったらいいのにな」






俺は眠った


234 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 23:06:32.60 YEuoM2zP0 118/207

(はぁ・・・・)

(やっぱりですか・・・・)


『そろそろ違う夢が見たいか?』


(そうですね)

(男と終始話すだけの夢なんて)

(正直現実よりきついです)


『はっはっは』

『照れるな照れるな』


(はっはっは)

(殴りたいなぁもう)



235 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 23:11:01.11 YEuoM2zP0 119/207

『・・・それで』

『どうだい?』


(何がですか)


『答えは』

『見つかったのかい?』


(・・・・・・)

(・・・いや)

(全然)


『・・・そうか』



(でも)


236 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 23:15:06.22 YEuoM2zP0 120/207


(別のことは分かった気がします)


『別の事?』


(ああ)


(あなたって)


『おう』








(・・・・時計のことを知っているんじゃないですか?)


238 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 23:20:57.80 YEuoM2zP0 121/207

『・・・なぜそう思う?』


(え)

(そうなんですか)


『え?』


(いや・・・)

(すいません適当に言っただけなんですけど・・・)


『・・・・・・』

『・・・・なるほど』






『・・・それも一つの答えだね』


239 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 23:25:25.82 YEuoM2zP0 122/207

『頭の上に見える時計』

『のことでいいんだな?』


(え・・・・)

(そ、そうですけど・・・・)


『いやなに』


『初めてこういう経験をしたからな』

『やけに喋りたくなった』


(・・・・・まぁ)

(嬉しいことですけど・・・・)


『だろう?』



240 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 23:30:31.38 YEuoM2zP0 123/207

(でもなんであなたが)

(知っているんですか?)


『それはそうだろう』

『だってあれは』


『俺達の世界の物なんだから』


(・・・・・・)

(・・・そうなんですか)


『そうだよ』


(・・・・ところで)

(俺達の世界って・・・・?)


242 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 23:35:48.61 YEuoM2zP0 124/207


『決まってるだろう』

『夢の世界だよ』


ああ分かった

この人説明下手だ


(・・・じゃあ)

(その夢の世界ってなんですか・・・・?)


『夢の世界は夢の世界・・・』

『ああそうか』

『最初から説明しないとダメだったか』



(そうですね・・・)



243 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 23:40:58.22 YEuoM2zP0 125/207

世界は3種類ある


人間が生きる世界と

死んだ人間が住む世界と


夢の住人が住む夢の世界と


『夢の世界ってのは』

『人間が見る夢を整備してるとこさ』


(整備・・・・?)


『整備っていうか』

『夢を見る場所を提供してるって感じか』



245 : 以下、名... - 2009/04/25(土) 23:46:07.85 YEuoM2zP0 126/207

三種類の世界は

それぞれ似たような人口で成り立っている


そのお陰で三種類の世界は

常に均衡にバランスを取っている



『そして人間は、夢を見ている間だけ』

『一時的に夢の住人になる』

『今のお前もそうだな』


(・・・なるほど)


『そして、だ』



248 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 00:00:55.65 T8t2RT3K0 127/207

しかし最近

世界のバランスが崩れ始めた


原因は恐らく

現代社会による睡眠の欠如



『最近夢を見る人間が少なくなった』

『あまり寝ない人間が増えたんだろうな・・・』


(・・・・・・)

(・・・確かにニュースとかでもよく聞きます)



『そのせいで夢の世界に行く人間は減り』


『世界は少しずつ傾き始めた』


249 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 00:06:19.45 T8t2RT3K0 128/207

(傾く・・・・)


『そう』

『夢の世界に行く人間の数が少なくなったせいで』


『夢の世界の人口が減り』


『均衡が壊れ始めた』


(なるほど・・・・)


『危機感を感じた夢の世界は』


『苦心の末に』





『ある打開策を出した』



254 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 00:11:10.76 T8t2RT3K0 129/207

(打開策・・・・)


『そう』


『それがあの時計』


『一応“転送時計”って名前が付いてる』


(転送時計・・・・)



『あまりいい響きではないけど』



255 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 00:14:46.64 T8t2RT3K0 130/207

『ところで』

『時計の針が頂点になった瞬間を見たことがあるかい?』


(・・・・・)


今でもはっきり覚えている

あの衝撃は


(はい・・・・)



(その人は消えてしまいました・・・)



『・・・正確には』


『消えたんじゃない』



257 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 00:17:29.51 T8t2RT3K0 131/207

『その人は』


『夢の世界の永久住人にされたのさ』


(永久・・・・?)


『永久住人』


『俺みたいな奴のこと』


(え・・・・)


(じゃああなたも・・・・)



258 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 00:22:13.60 T8t2RT3K0 132/207

『夢の世界が行った計画は』

『現実に生きる人間を夢の世界に強制的に転送すること』

『そしてそれにより』

『夢の世界の住人をかさ増しすること』

『あの時計は』

『その転送までの時間を表すタイマー』


『そして転送された人間は』

『一生夢の世界で過ごす永久住人になる』


『俺みたいに』

『人の夢にお邪魔したりしながらな』



260 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 00:26:20.74 T8t2RT3K0 133/207

『まぁ』

『今に限らずこの計画はずっと前にも何回か行われたんだけどね』


『ちなみに俺が転送されたのはずっと昔」

『何十年も前からここにいるよ』


(そうだったんですか・・・・)


『そう』


『そうやって犠牲を少しずつ作りながら』


『世界のバランスを保つのさ』



262 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 00:31:16.52 T8t2RT3K0 134/207

『どうだ』

『説明下手な俺にしては頑張っただろう』


(まぁ・・・大体は分かりました・・・・)


『そうか』

『なら話した甲斐があったってもんだ』




(・・・・でも)


(・・・・悲しくないんですか?)



263 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 00:35:37.39 T8t2RT3K0 135/207

『転送されたことか・・・?』


(っていうか・・・・)

(いきなり見知らぬ場所に1人で飛ばされて・・・・)


『・・・・まぁ』

『所詮は夢の世界だからな』


(というと?)


『例えばお前が夢を見てる時に』

『夢の中で激怒とかってあまりしないだろう?』


(ああ・・・・まぁ・・・)


264 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 00:40:18.31 T8t2RT3K0 136/207

『あまりこん中では感情が沸かないんだ』

『少し悲しくは思ったけど』


(そうですか・・・・)


『ある意味』

『それが一番哀れなのかもしれんが』


(・・・かもしれませんね)

(少なくとも)


(良い事とは言いにくいです・・・・)


358 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 17:33:40.13 T8t2RT3K0 137/207

(・・・・・・あ)


『ん?』


そうだ


大事なことを忘れていた


(あの)

(聞きたい事があるんですけど)


『?なんだ?』


361 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 17:38:16.72 T8t2RT3K0 138/207


(・・・一度転送されてしまった人間は)

(もう本当に戻れないんですか?)


『まぁそうだな』


(そうですか・・・・・)


『深く言えば』


『転送されてある程度時間が経ったらって感じだな』



(?それはどういう)



365 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 17:43:53.89 T8t2RT3K0 139/207


『こっちの世界に定着するまでは』

『少し時間がかかる』

『定着するまでの間は普通に夢を見ている人間と一緒の状態』


(!!それじゃあ)


『ああ』

『定着するまでに無理矢理叩き起こせば』

『キャンセルになって、人間の世界に再構成されると思うけど』


(おお)


まだ希望がある!



367 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 17:48:13.62 T8t2RT3K0 140/207

『でも・・・・』


『そんな事を聞くなんて』

『何かあったのか』



(はい)

(・・・・実は)














(俺の妹が転送されたかもしれないんです・・・)


368 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 17:53:39.57 T8t2RT3K0 141/207

『・・・・それで』

『助けたいと?』


(はい


『・・・・・』

『・・・正直』

『それは難しい話だな』


(え)


『転送された人間は深奥の方に行くから』

『普通の人間じゃあまず行けない』


そんな・・・・・


(そうなん・・・ですか・・・・)


370 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 17:58:57.27 T8t2RT3K0 142/207

『でも』


(え?でも?)


『住人の俺が着いていけば』


『人間でも行けなくはない』


(・・・・・・)


(・・・じゃあ)

(じゃあもしかして!)


『ああ』








『手伝ってやるよ』


372 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 18:03:35.74 T8t2RT3K0 143/207

(あ、ありがとうございます!)

俺は

手伝ってもらえる事になった



『じゃあさっそく』


フインッ


『この中に入って』



彼が大きく手を回すと


その円に沿って


穴みたいなものが出来た


(え・・・・)

(いきなり・・・・?)


373 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 18:08:18.82 T8t2RT3K0 144/207

『なにがだ?』


(いや・・・)

(いきなり直通で行けるなんて思わなくて・・・・・)


『そりゃあそうさ』

『ここは現実じゃない』


『還元を考えなければ』



『ある意味なんでも出来る場所なんだから』


(確かに)

(・・・そうでした)


375 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 18:13:16.57 T8t2RT3K0 145/207

(んん?)


『今度はどうしたんだ』


(もしこの穴が夢の世界への道なら)


(・・・俺は今どこにいるんですか?)


『ここも夢の世界だよ一応』


『まぁ分かりやすく言うと』

『夢の世界の中の卵の中って感じかな』


(卵・・・・・?)

(中の中・・・・・?)


分かりやすく言えてない・・・・・



377 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 18:18:18.17 T8t2RT3K0 146/207

『夢の世界には卵みたいなのがいくつもあって』

『人は寝ると、夢の世界に入って仮住人になったあと』

『更に新しく卵が作られ、その卵の中に送られて夢を見る』

『だからここは卵の中』


『そしてこの穴は』

『卵の外に出るようの物』


(ふむふむ・・・・・)


『けれど永久住人や転送された人間は』

『卵の中には送られずに』


『夢の世界の中で留められるってこと』


(がんばれ俺の頭脳)


378 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 18:23:17.95 T8t2RT3K0 147/207


『・・・・・・』


『・・・ああくっそ!!』



『行けば分かるよ行けば!!!!』


(ああ、ちょっと)

(引っ張らないで引っ張らないで)


抵抗の言葉など聞く耳も持ってもらえず

俺は彼に引っ張られて






穴の中に入っていった



380 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 18:29:02.24 T8t2RT3K0 148/207

夢の世界






「・・・・ここが」


「・・・夢の世界」


『そうだ』


『いいところだろう?』



「いいところ・・・・?」



「・・・・住めば都、ですか」



『・・・だな』


382 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 18:34:31.26 T8t2RT3K0 149/207

描写ができない世界

そんな世界に俺は入った


空も土も木も風も音も無く

ただただ無意味に広がる空間


まるで



「・・・・なんか宇宙みたいですね」


『おお』

『やっぱりそう思うか』


「やっぱりって?」


『俺も最初に来た時』

『そう思ったんだよ』


386 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 18:45:56.03 T8t2RT3K0 150/207


「ところで」

「ところどころにある球体の物が卵って奴ですか?」


風景の無い世界に

ただ一種類の彩り


まぁ不気味さが増えてるだけな気もするが


『そうそう』

『あの中に人がいて、現在進行形で夢を見てるわけさ』



「なるほど・・・・」


「やっぱり一度見たほうが分かりやすい」



391 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 19:00:15.53 T8t2RT3K0 151/207

『そしてお前は』

『卵から出てきたわけさ』


『そうだ』


『試しに卵に触ってみな』


「・・・いいんですか?」


『なんら問題はない』


「・・・・それじゃあ」


おそるおそる

手を伸ばす




392 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 19:05:14.80 T8t2RT3K0 152/207

「・・・・うおっ」


俺が触った瞬間


卵は消えた


「あれ・・・・」


『お前が卵に衝撃を与えたから』

『人間が夢から覚めたのさ』

『そして中身の無くなった卵は消える』


『よく理由もなく夜中に起きたりするだろう?』

『あれは住人が間違って触れたりしちゃってるせいなのもある』


「ああ・・・・」

「たまにあるそういうの・・・」


397 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 19:09:24.44 T8t2RT3K0 153/207


「大体」

「分かってきました」

「夢の世界の事が」


『よかったよかった』



「大体分かってきたところで」


『おう』





「・・・・そろそろ本題に」


398 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 19:14:20.57 T8t2RT3K0 154/207

『そうだな』

『早くしないと妹さんが住人になっちまう』


「すいませんお願いします」


『任せな』


「・・・・でもどうやって捜すんですか?」



『そんなの決まってんだろ』


『自力だよ自力』



「ああなるほど」




401 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 19:18:51.11 T8t2RT3K0 155/207

「って、ええ!?」


『どうした』


「自力って・・・・・」


『自力って言ったら』

『歩いて探すに決まってんだろ』



「で、でも・・・・」


「・・・・・夢の世界って広いんじゃ」




402 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 19:22:40.64 T8t2RT3K0 156/207

『その通りだな』


「それじゃあ・・・・・」


「間に合わないんじゃ・・・・・」


『・・・そんな事言っても』


『俺は妹さんの顔は知らないからなぁ』

『俺1人でビュンビュン飛んで探しても意味が無いっていう』



「あ・・・・・・」


そういえばそうだった


403 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 19:26:28.78 T8t2RT3K0 157/207

そもそも

親しげに話してはいるが

俺はこの人とは赤の他人


俺の身内の情報なんか

知るわけもないわけで


『でもまぁ安心しろ』


『転送される人間は大体似たような位置に送られっから』


『そこまで案内するよ』


『それでも決して狭い範囲ってわけではないけど』




405 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 19:30:29.84 T8t2RT3K0 158/207

夢の世界 深奥



「ここらへん・・・・ですか?」


『大体な』

『もし例外で別の僻地に飛ばされてたら諦めろ』


「・・・・・」




「・・・・無理だ」


「広すぎる・・・・・」




406 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 19:34:40.12 T8t2RT3K0 159/207

俺は勘違いしていた

転送された人間は一箇所にでも集められるのかと思っていた


だが違かった

ある程度のランダムが入るらしい


そして

そのランダム値が




嫌に大きい



『夢の世界全土を探すよりは』

『遥かにマシではある』


409 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 19:39:16.09 T8t2RT3K0 160/207


『さて』

『探すより先に』


『まずはこれを見ろ』


俺は

彼の指が指した方向を見た



その先には


(・・・・・・・)



(・・・・なんですかこれ)



蠢いてる謎の物体がいた




414 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 19:53:38.65 T8t2RT3K0 161/207

「・・・・・いや」


「正確には、“誰ですか?”って聞いた方がいいですかね」



俺が見たのは

多分人間


もっと言えば

黒塗りされたいわゆる黒モブみたいな人間



「これは」

「この人が、定着しようとしているってことですか・・・・」


『ああ』


「・・・・気持ち悪い」


419 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 20:02:34.09 T8t2RT3K0 162/207

『送られてきた人間は』

『卵には入らず一時的に黒塗りになって夢を見始める』


『夢を見てる間はひたすら蠢き』

『夢から覚めてこの黒塗りが解けると』

『俺みたくまた元の姿になる』




『そしてそれが、定着したという合図』


『ちなみに』

『転送された瞬間の姿で世界内での容姿は一定』




「・・・・・・じゃあ」


421 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 20:10:45.42 T8t2RT3K0 163/207

「もし俺がこの人に触れれば・・・・」


『・・・・こいつは夢から覚めて』

『人間の世界に再構成される』


『もっとも』

『俺がそんな事させないけどな』



「・・・・・ですよね」



「これは・・・・・」




「世界のためなんですもんね・・・・・」



423 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 20:17:11.00 T8t2RT3K0 164/207

「でも」


「顔で判断できないとなると」

「余計に捜しにくい・・・・」


『はっきり言ってしまうと』

『見つかったら幸運だよ』


『それに、ここからは俺は手伝えない』


「はい」


「・・・・でもそれでも俺は捜します」






「たった一人の妹ですから」


426 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 20:22:19.27 T8t2RT3K0 165/207


異様な光景

いたるところで蠢く黒い人間

正直吐き気がする


世界を救うにしても

こんな方法があっていいものなのか


なによりも


俺の妹もこうなっていると思うと

むかついてきたりもする



探しながらそんな事を思った




430 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 20:28:14.88 T8t2RT3K0 166/207

違う


妹はもっと小さい


こいつも違う


妹はスカートを履いていたはず


またまた違う


妹は長髪だ


全然違う


家に鞄が無かったんだから


転送された時多分妹は鞄を背負ってたはず


432 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 20:33:20.58 T8t2RT3K0 167/207

「・・・・・なぁ」


「転送された時って荷物とかも一緒にくっついてくるのか?」


『そうだな』

『現に俺も持ってた財布とか付いてきたし』


『もっとも必要ないから適当なとこに捨てちゃったけど』



「・・・・じゃあ鞄を背負ってる奴を探せば」


「いくらか探しやすそうだ・・・・」



436 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 20:39:10.52 T8t2RT3K0 168/207


「ってか」

「特定の人間を探知できる道具とか・・・・」


『勿論そんなのはない』


「ですよね・・・・」


『卵の外にでる穴は』

『定着した時の経緯を覚えて独学してやったもんだ』


『本当のことを言えば』

『夢の世界も現実と大して変わらん』



『自分の見たい夢は中々見れないのと同じでな』



441 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 20:44:18.04 T8t2RT3K0 169/207

俺はその後も探した


他の人には触れないように気をつけながら


でも・・・・


「くっそ」


「鞄を背負ってるかどうかも判別しにくい」


どんなに目を凝らしても

ほとんど同じに見えてしまう


「・・・これじゃあ」


「間に合う気がしない・・・・」




442 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 20:49:36.52 T8t2RT3K0 170/207

何か打開策はないのか

夢から一発で醒めるような

画期的な策は


「考えろ考えろ」


「考えろ考えろ考えろ」






・・・・他に








鞄以外の特徴はないのか?


443 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 20:54:28.59 T8t2RT3K0 171/207

妹は真面目


確かに特徴だが今は関係無い


妹は長髪


さっき言った違う


背が小さい


大した特徴にならんもっと


・・・・・・






・・・・・そういえば


450 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 20:58:53.65 T8t2RT3K0 172/207

確か朝に妹は


鞄に何か付けてた


それが確か


とてもうるさいって


俺は反応した気がする


・・・・そうだ









それだ


451 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 21:01:24.22 T8t2RT3K0 173/207

「おい!!」


『おおう、びびらせんな』


「そんな事どうでもいいから」


「お前も手伝え!」


『・・・いやだから』


『俺は妹さんの外見とかはなんも知らないっての』


「大丈夫」



「耳さえあれば手伝える」


455 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 21:05:56.30 T8t2RT3K0 174/207

『どうやってだよ』



「・・・・鈴だ」


『はぁ?』


「朝妹は・・・・」



――ストラップなんだからしょうがないじゃん











「・・・やけにうるさい鈴を付けていた」


458 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 21:09:29.45 T8t2RT3K0 175/207

こっちの世界に物がそのまま運ばれるんなら

当然鈴とかも運ばれるよな?


しかも蠢いてるってことは

その衝撃で鈴も鳴るはず


ましてやこの世界は音がほとんど無い


なら


鈴の音を聞き探せば





きっと見つかるはずじゃないか?


459 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 21:13:31.45 T8t2RT3K0 176/207

『・・・・なんとも言えんが』

『なくもない可能性ではあるな』


「だろ!?」


『・・・だが』


『どんな世界にも不具合は付き物だ』

『鈴があって尚且つ鳴るという保証もなければ』


『そもそも妹さんが転送前に失くしてたりするかもしれない』




461 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 21:17:23.49 T8t2RT3K0 177/207

「失くしてることは無いと思う」

「妹は真面目だから」


「けど前者は分からない」


「それでも」


「俺は」













「自分に賭けるよ」


463 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 21:23:12.24 T8t2RT3K0 178/207

俺達は新たに探し始めた

今度は視覚だけじゃなくて

聴覚も使って


時間に押し責められながらも


俺は確かに確信を持っていて


そして・・・・・













シャリンシャリン


466 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 21:28:20.82 T8t2RT3K0 179/207

「はぁ・・・・はぁ・・・・・」


走り回って息切れ中の俺の

目の前にいる黒い人間


長髪で鞄も背負ってるっぽくて

背も短くてスカート履いていて


真面目かは分からないけど


なにより









鞄から鈴の音がしていた


468 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 21:32:11.87 T8t2RT3K0 180/207

「・・・・・やっと会えたね」







「おかえり、妹」








俺は









妹に触れた


469 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 21:34:28.06 T8t2RT3K0 181/207

シュンッ


妹は消えた


『・・・お』


遠くで探していた彼も

こちらの様子に気付いたらしい


『もしかして』


『見つけたか?』



「・・・・・・」


「・・・・ああ」


471 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 21:38:43.10 T8t2RT3K0 182/207

「見つけた」



「大事なものを見つけたよ」




「しかも」




「同時に俺は」








「世界の素晴らしさを知った」


472 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 21:41:06.14 T8t2RT3K0 183/207

『言ってる意味はよく分からんが』

『さすがだよ』


「え?」


『いや』

『なんでもない』


「・・・・・・」


「・・・まぁいいや」


『そう』


『それより今は』


477 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 21:52:44.53 T8t2RT3K0 184/207

『さっさと帰ろうじゃないか』


『こうなったら俺に構うより他にやる事があるだろう?』


「そうですね」


そうだ

帰ってくる妹を迎えないといけない

親もきっと発狂してるだろうし



『・・・・なんか』


『急に落ち着いたなお前』



481 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 21:58:48.12 T8t2RT3K0 185/207

「はは・・・・」

「さっきは必死でしたから・・・・」


『素晴らしいことだ』


『家族の為に必死になれる奴は』

『将来絶対いい親孝行が出来るぞ』



「・・・・誰の名言ですか?それ」


『俺のに決まってるだろう』


「・・・・・・」


「・・・信憑性ない」




482 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 22:00:48.16 T8t2RT3K0 186/207

俺達は

俺の卵の中に戻った


・・・なんか変な感じだなこの言い方



『さて』

『そろそろお前が起きる頃だろうから』


『その前に感想を言っておく』



(感想・・・・・?)



『ああ』


486 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 22:05:03.04 T8t2RT3K0 187/207

『・・・・楽しい旅だった』

『そして』






『美しい旅だった』






『本当にありがとう』







(そんな・・・・・)




488 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 22:08:18.11 T8t2RT3K0 188/207

なんで俺はお礼を言われているんだろう

お礼を言うべきはむしろこっちなのに


それほど夢の世界は

悲しい世界なのだろうか


そう考えると少し泣きそうになった

けれど

今は泣く場面じゃなくて







お礼を言う場面。


490 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 22:12:10.36 T8t2RT3K0 189/207

(こちらこそありがとう)




























(おじいちゃん)


496 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 22:17:20.36 T8t2RT3K0 190/207


そう一言言った俺は


その次の瞬間


卵ごと消えた



彼はきっと卵の外に非難したのだろうが



その時かすかに



『引き分けだな』



って聞こえた気がした


498 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 22:22:13.18 T8t2RT3K0 191/207

・・・・男!起きなさい!


「ううんん・・・・・・?」


「・・・あれ」



「・・・・・・」


「・・・・ああ」


「・・・・現実かここ」



・・・・何寝ぼけてるのよ!



499 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 22:26:18.86 T8t2RT3K0 192/207

ようやく分かった


「いいから起きなさいっての!」


母親に大声で

叩き起こされたことに


「なんだよ・・・・」


俺は時計を見た


「まだ夜中じゃんか・・・・」


「そんなことより大変なのよ!!」


502 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 22:28:05.47 T8t2RT3K0 193/207

「妹が・・・・・・」



















「帰って来たのよ!!!!」



504 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 22:30:05.60 T8t2RT3K0 194/207

母の後に

リビングに降りた俺は



「本当に良かった・・・・・・」


涙ぐむ父親と



「まったくあんたは・・・・・」


同じく号泣している母親を見た


そして


506 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 22:33:11.74 T8t2RT3K0 195/207

「気付いたら公園で寝てて・・・・・」










「心配かけてごめんなさい・・・・・・」










泣いている妹も見た


507 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 22:34:51.52 T8t2RT3K0 196/207

ああそっか

少し思い出した


なんか頭の上に時計があって


妹は転送とかされて


そんでもって俺は旅して


えーっと・・・・?


まぁいっか






全部夢っぽいし


508 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 22:39:57.98 T8t2RT3K0 197/207

その後警察にも連絡して

必死に平謝り


妹の説教は朝近くまで続き

当然家族全員(何故か俺まで)寝不足のまま


両親は仕事に


俺達は学校に行くことになった



512 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 22:43:44.17 T8t2RT3K0 198/207

朝 玄関



「・・・・眠い」


「おい、早く出ろ」


「鍵閉めなきゃなんないんだから」


「・・・・さぼりたい」


「いつもの真面目オーラはどうした」


「てか誰のせいだと思ってんだ」


「・・・・・ごめん」


514 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 22:46:45.58 T8t2RT3K0 199/207





「・・・・・てかよお」

「んん?」

「・・・やっぱりそれすんごいうるさいんだけど」


シャリンシャリン


「しかも」



妹の鞄の鈴は増えていた


そして当然の如く更に音がでかくなっている



「・・・・増やしただろ鈴」


「ばれたか」


518 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 22:58:38.26 T8t2RT3K0 200/207

「もう十分だったろ」


「なんで増やした」

「友達に貰ったのか?」



「ただの気まぐれ」

「昨日の帰りに自分で買ったの」


「・・・じゃあそもそも」

「なんで鈴なんか付けてんだよ」


「・・・・・」


「・・・信じないとは思うけど」


519 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 22:59:35.25 T8t2RT3K0 201/207

「私、前に変な夢を見たの」


「変な夢?」


「そう」


「変なオーラのある人がでてくる変な夢で」


「その人が」














「鈴を付けると幸運になるって言ったの」


522 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 23:03:49.01 T8t2RT3K0 202/207

「・・・・って」


「どうせ信じないよね」

「どうせそんなの迷信だよとか言うよね」



「・・・・ぷぷ」


「あっはっはっはっは!」



「やっぱり・・・」



「・・・いんや、この笑いは」



「そういう笑いじゃないよ・・・ぷぷ・・・」




523 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 23:06:23.63 T8t2RT3K0 203/207

なるほどなるほど


引き分けね


引き分けって・・・・


あっはっはっは


笑いが止まらない


「・・・・じゃあどういう笑いなのよ」



「いやぁ」




526 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 23:10:36.74 T8t2RT3K0 204/207

そうか


最初からそうだったのか


時計も

消滅も

世界も

鈴も


そして


俺の夢に出てきたタイミングも


最初から



そうだった


527 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 23:14:20.44 T8t2RT3K0 205/207


「・・・・なんていうか」



「引き分けどころか完全に負けだと思ってさ!」



「・・・・は?」


「いやぁ・・・笑えるよホント・・・・」



「・・・・・・」


「・・・・変なの」


528 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 23:17:26.61 T8t2RT3K0 206/207

夢の世界の彼は

最初からチャンスを

くれていた


現実に干渉できないが為に


ヒントと変な能力を与え続けて





そして今は何も無いのも





きっともう必要がないから


531 : 以下、名... - 2009/04/26(日) 23:21:41.75 T8t2RT3K0 207/207

俺はただただ笑う

なんてズル賢いジジイなんだと



でも一方で


素晴らしいおじいちゃんだと

少しばかり




尊敬をしていたりもする


fin



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