1 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 18:37:05.23 k2l8/v+40 1/70

「来月かぁ」

幼馴染「もうすぐだね」

「まだ実感沸かねーよ」

幼馴染「うん、だって20年以上一緒だったんだしね」

「そうだよなぁ、生まれたときから家族みたいなもんだったしなぁ・・・」


幼とはお隣さんで、生まれてこの方家族ぐるみの付き合いだ
いつも一緒にいるのが当たり前・・・・・・
そんな俺と幼は、来月結婚式を控えていた



元スレ
男「君の名前は?」少女「・・・・・・」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1327225025/

2 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 18:38:43.61 k2l8/v+40 2/70

幼馴染「そういえば、画商さんも結婚式に呼ぶ?」

「うん、俺の絵を初めて買ってくれた人だし、贔屓にしてもらってるし」

幼馴染「男君にとってはすごい恩人なんだよね」

「おうっ!呼ばないわけにはイカンってww」


俺は美術高校を出て美術大学へ進学、小さな公募展で賞を取った
その公募展で目をつけ、俺の絵を買いたいと来てくれたのが画商さんだった
まだ画家として名も無い俺の絵を買い付けに来てくれる、俺の取引相手であり恩人だ


4 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 18:40:00.89 k2l8/v+40 3/70

今夜は美術高校の同窓会、俺たちも当然呼ばれていた
正月らしい熱気に包まれた夜の繁華街には、
すでに顔を赤らめながら千鳥足になってる老若男女であふれていた


幼馴染「みんな、元気にしてるかなぁ」

「今から楽しみだな」

幼馴染「うん!委員長とかメガネ君たちに早く会いたいなー」

「そういえば、あの二人も結婚するらしいぞ?」

幼馴染「私たちだけじゃないんだね!///」


6 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 18:41:14.53 k2l8/v+40 4/70

ブオオオオン!

「ぎゃああ!」
「うわああ!」
「きゃああ!」

「なんだ!?」

幼馴染「えっ」


叫び声がする方を振り向くと、歩道に乗り上げながら猛スピードで突っ込んでくる自動車が見えた

いや、正確には一瞬視界を覆っただけ

強烈な衝撃を右半身に受け、俺は宙を舞った
激しい痛みが体中を駆け巡り、直後地面に叩きつけられる

・・・・・・そこで俺の意識は途切れる


7 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 18:42:20.57 k2l8/v+40 5/70

ピッ・・・ピッ・・・ピッ・・・ピッ・・・

「・・・・・・う」

男母「男?男!」

「・・・おふ・・・くろ?」

幼母「男君!?」

幼父「おお・・・」

「お、おばさん、おじさんも・・・?」

男母「よかった・・・よかった・・・!」

「俺・・・いったい・・・・・・・・・?」


俺と幼は、交通事故に遭っていた
正月の熱に浮かされたがゆえの、飲酒運転による大惨事


9 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 18:43:29.33 k2l8/v+40 6/70

「幼・・・幼は!?」

幼母「・・・・・・っ」チラ

「・・・・・・!?」

ピッ・・・ピッ・・・ピッ・・・ピッ・・・

幼馴染「・・・・・・」


俺の横のベッドには、全身包帯に巻かれた女性がいた
顔にも包帯が巻かれてはいるが、その隙間から見える顔は幼のものだとわかった
呼吸器がつけられ、腕には点滴、傍らの心電図計が彼女の脈動を画面に示す


10 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 18:44:24.26 k2l8/v+40 7/70

「幼・・・・・・?」

幼母「・・・・・・う、ううっ!」

男母「気をしっかり・・・・・・」

「・・・・・・幼・・・・・・幼ぁっ!?あだだだだ!」

男母「ほら、男も重症なんだから動かない・・・」

ピッ・・・ピッ・・・ピッ・・・ピッ・・・

「・・・・・・」

「くそぉ・・・・・・っ」


幼は、いわゆる植物状態になっていた
交通事故で幼の脳は深刻なダメージを受けていたのだ

まったく動かなくなった幼に対し、俺のほうはというと右半身に違和があった
その後のリハビリで下半身への後遺症は残らなかったものの、結局右腕は麻痺したままだった


11 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 18:45:25.78 k2l8/v+40 8/70

右利きだった俺は、筆を持つことが出来なくなっていた
画家にとって腕とは画具そのものだ
無限のイメージを紡ぐ絵の具であり、筆なのだ
それを、俺は失った


「描けねぇ・・・描けねえよぉ・・・・・・っ!」


腕に筆を括りつけたり、
左手で握ってみたり、
口に筆を咥えてみたり・・・
さまざまな方法を試すが、以前のように絵を描くことが出来なくなっていた

それでも俺はキャンバスに向かい続け、昼は幼の見舞いに通った


12 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 18:46:22.26 k2l8/v+40 9/70

ピッ・・・ピッ・・・ピッ・・・ピッ・・・ピ―――――――――・・・・・・

「」


事故からしばらく経ち、幼は脳死判定を受けて息を引き取った
最愛の人、20年以上寄り添いあい、これからもずっと一緒だったはずの幼馴染

彼女を失ったその悲しみに押しつぶされながらも、
俺は何度も何度もキャンバスに向かった
描けども描けども出来上がるのは、塗りたくられた絵の具の塊


やがて俺は絵を描くことすらやめた


13 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 18:47:49.83 k2l8/v+40 10/70

「・・・・・・5年たつのか」


俺は実家に帰っていた
都会には、収入の無い俺に居場所は無い
今はたまに畑の手入れをしながら実質ニートをしている

実家は田畑が残る田舎で、
少し足を伸ばせば山に川にと、アウトドアに困らない場所だ

幼馴染の死は辛いものではあったが、最終的には受け入れた
しかし、絵が描けなくなってしまったという現実を前に、
俺は今も立ちすくんでいる


14 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 18:48:37.82 k2l8/v+40 11/70

「もうすぐ27かー」

男母「男~?ちょっと降りてきてくれる?」

「ん?ああ」

・・・・・・

男母「ほら、こっちよ」

「?」

少女「・・・・・・」


16 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 18:49:54.52 k2l8/v+40 12/70

目の前に、見知らぬ少女がいた
緊張しているのか、怯えているのか・・・
俺の前に立ち尽くし、少女はうつむき続ける


「・・・・・・だれ?」

男母「ほら、この前山形のオバサンが交通事故で亡くなられたでしょう?」

「ああ、じゃあオバサンとこの」

男母「あの人母子家庭だったでしょう、それに親からも縁切りされてて身寄りが無いっていうから」

「引き取ったの?」

男母「そうなのよ、今日からよろしくしてあげてね!荷物はあさって届くから」

「うちも余裕無いのになぁ・・・主に俺のせいだけど」

少女「・・・・・・」


17 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 18:50:44.21 k2l8/v+40 13/70

少女は顔を上げない
俺より明らかに小柄なこの少女の顔はまったく見えない
腰を落とし、見上げるようにしてようやく見えたその表情は、
なにか思いつめているような感じがした


「俺男っていうんだ、君の名前は?」

少女「・・・・・・」

男母「名前は少女ちゃん・・・ついこの間のことだし、まだショックが抜けてないみたいなのよ」

「そうか・・・少女、これからよろしくな」ナデナデ

少女「・・・・・・」


今日は結局、少女は一言も発することなく、またその表情を変えることもなかった


18 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 18:51:48.01 k2l8/v+40 14/70

翌日
窓からのぞく曇天は、今にも冷たい雨を大地に降らそうかという雰囲気だ


「さみぃー・・・」

男母「男!男っ!」ガラガラ

「ん、どうしたの?」

男母「少女ちゃんがいないの!」

「えっ」


20 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 18:52:49.05 k2l8/v+40 15/70

ブロロロロ・・・

俺は車を出し、あちこち調べて回った
この村に来たばかりの彼女のことなので、行く当てがまったく想像できない
とにかくしらみつぶしに調べる

そうこうしているとフロントガラスに水滴が付き始める
雨が降り出していた

「雨降ってきたな、この時期の雨は冷えるだろうに」


・・・・・・


ブロロロロ・・・

「あれは?」


22 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 18:54:11.79 k2l8/v+40 16/70


車を走らせていると、バス停が見えてきた
この村の数少ないの公共交通手段だが、その便数は1日2本
屋根がついた粗末な小屋の中で、少女は震えていた


「やっと見つけた、心配したんだぞ?」

少女「・・・・・・」ブルブル

「もしかして、帰ろうとしてたのか?」

少女「・・・・・・」ブルブル

「あと3時間ぐらい待たないと来ないぞ?」

少女「・・・・・・」ブルブル

「・・・・・・あーもう埒があかん」グイ

少女「・・・・・・っ」

「まったく、こんなに震えて」


23 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 18:55:10.68 k2l8/v+40 17/70

少女の腕を引っ張りながら、車のドアを開ける
少女を後部座席に乗せると、俺はびしょ濡れのコートを脱がした
そして自分のジャケットを脱ぎ少女に手渡そうとする


「ほら、これ着て」

少女「・・・・・・」

「・・・・・・だーもう!」バフ

少女「・・・・・・っ」

「ん、幾分マシだろう」

少女「・・・・・・」


24 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 18:58:36.81 k2l8/v+40 18/70


ブロロロロ・・・

「お母さん交通事故で亡くなしたんだってな」

少女「・・・・・・」

「・・・・・・」

少女「・・・・・・」

「俺も、大事な人を交通事故で亡くしたんだ」

少女「・・・・・・ぇ」


初めて発された少女の声
バックミラーに写る少女の顔に、わずかな変化が見て取れた


25 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 18:59:20.76 k2l8/v+40 19/70

「幼馴染でね、20年以上一緒にいて、結婚するはずだった」

少女「・・・・・・」

「大事な人の死は辛い」

少女「・・・・・・っ」

「・・・・・・気持ちはわかる」

少女「・・・っ・・・っ」

ブロロロロ・・・


26 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:00:50.50 k2l8/v+40 20/70

少女の服はぐしょぐしょに濡れてしまっているが、着替えがまだうちに届いてない
幼馴染の昔の服を借りようと考え、まずはお隣に向かった


「ほら、降りて」

少女「・・・・・・」

「ウチには女の子の服なんて無いからなぁ・・・着替え、幼の服借りれるかな」

少女「・・・・・・」ギュッ

「ん?どうした、裾つかんで」

少女「・・・・・・」

「ふーむ」ポリポリ


27 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:02:08.90 k2l8/v+40 21/70

幼父「おお、男君じゃないか」

「こんばんわー」

幼母「あら男君!あらやだ、この子が噂の少女ちゃん?ずぶ濡れじゃない」

「着替えまだ届いてなくて、幼の昔の服なんかあれば借りれたらなって」

幼母「ええいいわよ、幼の部屋の押入れに多分まだしまってあると思うから、好きなの持っていって」

「ありがとうございます」

少女「・・・・・・」ギュッ


幼の家とは、いまだに家族ぐるみの付き合いを続けている
今日みたいに突然たずねても嫌な顔ひとつせず、
家族のように接してくれている


28 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:03:32.32 k2l8/v+40 22/70

「このダンボールか?」ゴソゴソ

「あったあった、これとかサイズが合えばいいけど」ポフ

少女「・・・・・・っ」

「ん、デカイがいいか・・・上はこれで、こっちの箱は・・・・・・下着まだあったのか」

少女「・・・・・・」

「俺は廊下に出てるから、濡れた服着替えちゃいな」


29 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:05:33.66 k2l8/v+40 23/70

着替え終わったらしく、少女は引き戸のふすまを開け廊下に出てきた
俺があてがった、すこし色あせた黄色いワンピースをまとう少女
その少女の姿に、遠い日の幼馴染の姿が重なる


少女「・・・・・・」

「どうした、気に入らない?」

少女「・・・・・・っ」フルフル

「ん、ならよかった、それ幼馴染のお気に入りだったんだ」

幼母「あらあら!まるで昔の幼を見てるみたいね!」

「これちょっと借りていきますね」

幼母「ううん、どうせ誰も着ないんだし、少女ちゃんにあげるわ」

「おばさん・・・・・・ありがとうございます」

少女「・・・・・・」ギュッ


32 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:07:36.66 k2l8/v+40 24/70

「ただいまー」

男母「ああ、よかった!電話ぐらいしなさいよ!」

「悪い、電池切れててさ」

男母「少女ちゃん、心配したんだから・・・あら?」

少女「・・・・・・」ギュッ

男母「まあ!そのワンピース幼ちゃんのでしょっ?10歳ぐらいの時のだっけ、懐かしいわねぇ」

「ずぶ濡れになってたからもらってきた」

男母「ふふ、かわいらしいわねえ」

少女「・・・・・・」


33 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:08:12.49 k2l8/v+40 25/70

以来、少女はなにかと俺について回るようになった
口数は少ないが、最近は多少の意思表示をするようになったし、
初日に見たあの思いつめたような顔もしなくなった


スススー・・・

少女「・・・・・・」ジィ・・・

「ん、少女か?いいぞ入って」

スススー・・・
パタン

「お前、そのワンピースよっぽど気に入ったんだな」

少女「・・・・・・」キョロキョロ

「・・・・・・そういや俺の部屋入ったの初めてか」

少女「・・・・・・」コクリ


34 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:09:07.62 k2l8/v+40 26/70

俺の部屋はそこそこ広い
部屋の隅には仕事で使ってた古ぼけたイーゼル、
その脇には画材やキャンバスが入ったダンボール箱が何個か、無造作に置かれていた

壁には昔描いた俺の絵が飾られている
黄金に輝く稲田、草原が広がる丘、流れ清らかな渓流、陽光に抱かれたワンピースの少女・・・
それらはすべて、俺の腕がまだ動いていたころに描いたプライベートの作品たちだ


少女「わぁ・・・・・・」

「俺が描いたんだよ、ずいぶん前にね」

少女「・・・・・・この女の子の服」

「ああ、お前が着てるそのワンピースだ」

少女「・・・・・・」ジィ・・・

「・・・・・・」


35 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:10:04.72 k2l8/v+40 27/70

少女は壁にかかった絵をひとしきり眺め終わると、
汚いキャンバスが入ったダンボール箱に興味を示した


少女「・・・・・・見てもいい?」

「・・・・・・いいけど、見ても面白くないぞ」

少女「・・・・・・」ゴソ

「・・・・・・」

少女「・・・・・・」ジィ・・・

「きたねーだろ?俺、見ての通り右手が麻痺してっから、あっちの絵みたいなのはもう描けないんだ」

少女「・・・・・・」ジィ・・・

「・・・・・・もう、いいだろ?そんなの見てたって・・・」

少女「・・・・・・悲しい絵」

「!?」


36 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:11:33.01 k2l8/v+40 28/70

俺は驚愕した

少女が見ている絵に描かれているのは、幼の形見(のように見える何か)だ
確かにその絵は、描けなくなって、幼馴染も失った末に、
ただただ悲しみのままに筆を走らせたものだ

いや、俺の中では絵ですらない
それは木枠に張られた麻布に絵の具が塗りたくられた、ただのゴミ

それをこの幼い少女は「悲しい」と言ってのけたのだ


「・・・・・・わかるのか?」

少女「・・・・・・」フルフル

「・・・・・・」

少女「感じたの」

「・・・・・・そうか」


止まっていた時計の針が、ゆっくりとの動き出したのを感じた
停滞していた俺の人生は、少女と出会いまた流れ始めた


・・・・・・


37 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:12:05.60 k2l8/v+40 29/70

ジーワジワジワジワジワジワジワ・・・・・・

月日は経ち、夏
降り注ぐ陽光を浴びて青々と茂った木立の中で、
短い恋を成就させんと、セミ達の大合唱が一層の熱を帯びる


「ずいぶん暑くなってきたなぁ」グッタリ

男母「少女が帰ったらアイスでも出しましょうか」

ガラガラガラ

少女「ただいまー」

「お、噂をすれば」

男母「おかえり少女ちゃん」

「おかえりー」


38 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:12:50.04 k2l8/v+40 30/70

長い間休学していた少女だったが、
春休みが明けてからは地元の小学校に通っていた
俺の心配をよそに、少女は新しい学校にそこそこ順応してくれているようだった


少女「おじさん」

「おじさんはやめてってwwもう、いらんこと吹き込んで」ジロ

男母「ぷぷぷwwあなたもう27でしょ?おじさんおじさんww」

「ぐぬぬ・・・・・・で、なんだい?」

少女「これ」

チリーン

「おお、風鈴じゃないか」

少女「学校で作ったの」

男母「へぇ~かわいいわねぇ、この模様少女ちゃんが描いたの?」

「お~、かわいく描けてるわ」

少女「・・・っ」モジモジ


39 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:13:38.31 k2l8/v+40 31/70

チリーン

「ん、やっぱ夏は風鈴だな」

男母「少女ちゃんもアイス食べるわよね?」

少女「うん」コクリ

「もう7月かぁ・・・そういえば、今頃はいい時期だな」

「・・・・・・なあ少女、今週末ちょっと出かけないか?」

少女「?・・・うん」コクリ

男母「あら、珍しいわねお出かけなんて はい、お待ちどーさん」

「少女もこっち来てからどこにも行ってないし、ちょうどいいかなって」

男母「よかったわね、おじさんが遊びにつれてってくれるってー」ニコニコ

「おじさん言うなww」


42 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:15:04.30 k2l8/v+40 32/70

週末、俺と少女はドライブに出かけた

裏山の丘陵地帯に広がるこの草原は背の低い雑草が生い茂っていて、
夏になると緑色の絨毯が一面に広がる

そよ風に吹かれ、エメラルドの海はさらされと波うち、
青草の爽やかな香りが鼻腔をくすぐる


少女「・・・・・・すごい」

「だろ?」

少女「ここ、おじさんの絵に似てる」

「お、よく覚えてるな!そうそう、あの絵の丘だよ」



43 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:15:55.96 k2l8/v+40 33/70

ここはずいぶん昔に幼と一緒に見つけた場所だ
眼下に広がる草原を前に、思わず息を飲んでしまったのを思い出す
ワンピース姿の少女もまた、目の前の光景に息を呑んでいた


(そういえば、あの時も幼はこのワンピースを着てたんだっけ)

少女「・・・・・・」ボー・・・

(まるで、昔の思い出を追体験してるみたいな気分だな・・・・・・)

少女「・・・・・・おじさん」

「ん?」

少女「また、ここに来てもいい?」

「もちろん」ニコ


44 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:17:12.95 k2l8/v+40 34/70

夏休みのある日、もう一度車を出した
少女が、夏休みの工作であの緑の丘の絵を描くことにしたからだ

鉛筆で下書きをし、バケツの水に筆を浸し、
絵の具を溶き、そして塗る

画板を抱え、一心不乱に絵を描く少女

やがて青々とした草原が画用紙に浮かび上がる
稚拙ながらも、少女の受けた感動を寸分もらさず描き出されたその絵は、
俺の中にある遠い日の思い出すらも映りこんでいるようだった


「少女はいい絵を描くな、悪くない」

少女「・・・・・・っ」モジモジ


・・・・・・


45 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:18:21.43 k2l8/v+40 35/70

それからと言うもの、少女はとにかく絵を描くようになった
子どもらしい稚拙な絵だが、
彼女は絵を描くことを心から楽しんでいるようだった

鉛筆で描き起こされた白い野山は、
やがて少女の手によって赤や黄色に彩られていく


少女「おじさん、できた」

「おーこりゃなかなかっ」

少女「・・・・・・っ」モジモジ

(照れるともじもじするんだよなぁ、この子は)

「そういえば来月10歳の誕生日だな」

少女「うん」

「プレゼント何がいい?」

少女「・・・・・・いいの?」

「おう、今は一応仕事してるしな」


46 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:19:00.08 k2l8/v+40 36/70

そう、俺は少し前から仕事を始めていた
おじさん―――幼父さんのコネで仕事をもらった
片腕麻痺というハンデはあっても、この村では若者の労働力は貴重なのだ

新しい家族が出来てお金に余裕がなくなったせいもあるが、
こんな少女ですら親の死から立ち直ったのだ
27のいい年したオッサンが、いつまでもニートしてるわけにはいかない

とはいえ、正直プレゼントできるほど余裕があるかと言うと微妙である


少女「じゃあ・・・・・・あれ」

「お?イーゼルか?」

少女「うん」コクリ

「んー・・・と言ってもなぁ、俺のぼろいし、アレ意外と高い・・・・・・あ!」


47 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:20:26.53 k2l8/v+40 37/70

「こんにちわー」

幼父「おお男君か、どうした?」

「幼が使ってたイーゼルってまだあります?」

幼父「ん、ああ多分どっかにしまってたはずだ」

「少女がイーゼルほしいと言うので、今度もらって行きたいのですけど、いいですか?」

幼父「ほう、あの子も絵を描くのか・・・・・・ま、いいだろう、持ち腐れててもしょうがない」

「ありがとうございますおじさん!」


50 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:21:49.99 k2l8/v+40 38/70

「誕生日おめで・・・とっこいせ!」ドン

少女「!」

「おし、じゃあこれを少女に使わせてあげよう」

少女「これおじさんのと一緒?」

「ああ、高校で幼と一緒に買ったやつだよ」

少女「でもすごいきれい」

「短大じゃ使わなかったろうしな・・・・・・幼の形見だから、大事に使ってあげてくれよ」

少女「うん!」ニコ


・・・・・・


51 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:23:03.17 k2l8/v+40 39/70

コタツ・・・・・・それは老若男女を引き寄せる、みかんが乗った魔法の道具
現に今、俺と少女と幼父という老若男女三人をそのミステリーゾーンに引きずり込んでいる

今日は寒い
ふと外を見ると、雪が深々と降り注いでいた


ガラッ

少女「わぁ・・・・・・雪!」

「お?降ってきたなぁ」

幼父「寒い寒い、少女ちゃん閉めて」

少女「あ、ごめんなさい」ガラピシャ


52 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:23:50.96 k2l8/v+40 40/70

「少女は雪見たこと無いのか?」

少女「ううん」フルフル

少女「でもあんなに降ってるの見たことない」

「そっかそっか」

男母「出来たわよー」

幼母「今日は、男君の大好物のカレーよ」

少女「甘口?」

「残念、うちは辛口だ!」

少女「むーっ!」プクー

「「あははははww」」


・・・・・・


53 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:25:20.94 k2l8/v+40 41/70

少女「うわぁ・・・!」

「おーっ、こりゃ見事に咲いたなぁ」


おそらくもう満開なのだだろう
池のまわりに並ぶ桜並木には、薄ピンク色の花が所狭しと咲き乱れていた

ビニールシートを地面に敷いて、飲めや食えやの大宴会
・・・・・・っというほどでもないが、結構な数の人がお花見に来ていた


「ここも名所として有名になったなぁ」

少女「いっぱいいるね」

「ま、俺たちの目的地は川の向こう側なんだけどね」


54 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:26:06.44 k2l8/v+40 42/70


橋を渡って反対側から法面された対岸のほうを見ると、
穏やかな水面が、もうひとつの桜並木をその鏡の中に描き出す


少女「すごい!」

「昔お隣と一緒に花見に来たときに見つけたんだ、きれいだろ」

少女「うん!」

「よし、写真撮るぞ!こっち向けー」

少女「えへへ・・・・・・」モジモジ

「ハイ、まんとひーひぃっと」パシャ


・・・・・・


56 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:27:09.64 k2l8/v+40 43/70

外墓というのは、その継承者が納骨できる人を選ぶことが出来る
縁切りされていた少女の母は、その継承者たる親に墓に入ることを認められず、
今は共同墓地にお骨を納めている


「ウチとお隣の墓参りも終わったし、少女のお母さんのとこに行こうか」

少女「うん」

「もう少女はウチの養子だし、お母さんもうちの墓に入れていいと思うんだけど、決まりがあるらしくてね」

少女「ううん、いいの」

「・・・・・・少女は、今寂しくないか?」

少女「おじさんがいるから、寂しくないよ」ニコ

「そうか」


・・・・・・


57 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:28:11.38 k2l8/v+40 44/70

落ち葉を集めて小山にし、
マッチで火をつけ焚き火にする
都会だったら通報されてるが、生憎ここはド田舎だ


パチパチ・・・・・・

少女「い~しや~きいも~♪」ワクワク

「石で焼いてないから石焼じゃないぞ?」

少女「じゃあ、落ち葉焼き芋?」

「なんだそれww」

少女「あははっ」


・・・・・・


58 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:29:05.95 k2l8/v+40 45/70

ストーブ「ショボボ・・・・・・」

(あ、灯油が)ユラ

少女「動いちゃだめ!」

「へいっ」ビシッ

少女「・・・・・・」カキカキ

「・・・・・・」

少女「・・・・・・」カキカキ

(プレゼントの鉛筆がうれしくてデッサンはじめたのはいいけど)

少女「・・・・・・」カキカキ

(ストーブ止まってさすがに寒いって・・・)

少女「ヘックシッ!」


・・・・・・


59 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:29:46.29 k2l8/v+40 46/70

男母「春眠暁を覚えずとはよく言ったものねぇ」

少女「zzz・・・」

「zzz・・・」

男母「クス・・・まるで親子か兄妹ねぇ」

少女「・・・・・・おじさぁん・・・・・・むにゃむにゃ」

「・・・・・・幼ぁ・・・・・・」

男母「・・・・・・少女にあの子の影を見てるのかしら・・・・・・この子は」


・・・・・・


60 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:30:31.88 k2l8/v+40 47/70

リンリーン・・・・・・

金魚模様の風鈴が、風に吹かれて鳴いている
リンとなる度涼しくなるのは日本人の気のせいだ


少女「おじさん、これ使っていい?」

「キャンバスか、何に使うんだ?」

少女「夏の工作これに描きたいの!」

「んー・・・いいけど、学校の絵の具じゃうまく描けないぞ?」

少女「そうなの?」

「ちょっと待ってな・・・」ゴソゴソ


62 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:31:13.90 k2l8/v+40 48/70

俺は画材の詰まったダンボールから、
新品状態のアクリル絵の具とジェッソ(キャンバスなどに塗布して使用する下地剤)を取り出した


「ほれ、これやるよ」

少女「アクリル絵の具?」

「そのままでも油絵の具みたいに使えて、水で溶かせば水彩絵の具みたいに使える万能絵の具だよ」

少女「へ~・・・すごい!いいの?」

「昔のだから、もし使えないチューブがあれば換えもあるから言ってくれよ」

少女「ありがとう!へへ・・・」モジモジ


63 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:32:08.46 k2l8/v+40 49/70

少女「・・・・・・」

「どうした?」

少女「おじさんは、もう絵は描かないの?」

「この腕だし、どうだろうなぁ」

少女「でも左手で何でもやってるよ?」

「なんつーか、慣れっつーか癖っつーか・・・利き手じゃないと出来ないものってあるんだよ」

少女「・・・・・・そっか」ションボリ

(とはいえ・・・・・・・・・確かに昔と違って今は左手もそこそこ自由に動くし・・・・・・)

「・・・・・・試してみるか」

少女「!」

「よし、そうと決まれば絵の具絵の具・・・」ガサガサ

少女「おじさん!一緒に描こう!」

「おっけーおっけ・・・・・・うわぁ6年も放置してたからすげーことになってるな、新品新品・・・」ガサガサ


64 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:33:06.54 k2l8/v+40 50/70

「で、なに描くの?」

少女「おじさん!」

「はい?」

少女「おじさんを描くの!」

「ほうほう、じゃあ俺は鏡でも見ればいいのか?」

少女「ううん、私を描いてほしいの」

「ほほう」

少女「きれいに描いてね!」

「善処します」


65 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:33:51.82 k2l8/v+40 51/70

二つのイーゼルを向かい合わせに置き、お互いをキャンバスの中に描き始める
キャンバスに向かったのは実に6年ぶり


少女「・・・・・・」カキカキ

(んー・・・・・・勢いで描き始めてしまったが)サッサッ

少女「・・・・・・」カキカキ

(むぐぐ・・・だめだ全然線がまとまらん・・・!)ケシケシ



67 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:34:28.58 k2l8/v+40 52/70

(くそ・・・・・・下書きすら満足に描けんのか!)イライラ

少女「・・・・・・」カキカキ

(~~~~~!!)イライライライラ

「くっそおおお!!」ガタンッ

少女「!?」ビクゥ

「無理だ、だめだだめだだめだ!・・・・・・くっそ・・・・・・くっそぉ・・・・・・」

少女「・・・・・・おじさん」

「はぁ・・・はぁ・・・」


68 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:35:47.30 k2l8/v+40 53/70

「・・・・・・わるい、やっぱり無理だ」

少女「ごめんなさい、私おじさんのおかげで絵が好きになったから、またおじさんにも描いてほしくて・・・・・・」

「・・・・・・」

少女「おじさんは、絵描くの嫌い?」

「・・・・・・そんなことない」

少女「じゃあどうして・・・・・・」

「・・・・・・俺は、仮にも画家だったんだ・・・・・・下手なもんなんて描けない・・・・・・」

少女「・・・・・・」

「・・・・・・」


69 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:36:35.93 k2l8/v+40 54/70

少女「・・・・・・ねえ、おじさん聞いて」

「・・・・・・」

少女「おじさん、私の絵、下手だよね」

「そんなことは・・・・・・」

少女「この部屋にあるおじさんの絵より絶対下手」

「・・・・・・」

少女「ねえ、好きなのに描いちゃいけないの?下手だと絵描いちゃいけないの?」

「・・・・・・そういうことじゃ」

少女「そういうこと言ってるんだよおじさんは!」


70 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:37:23.71 k2l8/v+40 55/70

「・・・・・・っ」イライラ

少女「好きなら描いてよ、おじさん・・・・・・下手でも良いの、描い」

ガッチャン!

少女「っ!」ビクゥ

「お前に何がわかる!」

少女「・・・・・・」

「・・・・・・」

少女「・・・・・・おじさんのばかぁっ!!」ダッ


ああ、まただ

時計の針がまた止まろうとしてるのを俺は感じた
再び動きだしたはずだった時の流れは、
また、どろどろと淀みはじめる


・・・・・・


71 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:38:24.39 k2l8/v+40 56/70

「なあ・・・・・・」

少女「・・・・・・」

「・・・・・・はぁ」

少女「・・・・・・」


あれ以来、少女は一切口を利かなくなってしまった

何を言っても言葉は返さず、あっても否定の一言、
たまに目が合えばそらされて、
何かしてあげようとすると先を越される

あんなに大好きだった絵すらも描かなってしまった


73 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:40:06.16 k2l8/v+40 57/70

「・・・・・・どうすりゃいいんだよ」

(・・・・・・そういえば、幼とも一度大喧嘩したことがあったな)

(あの時はどうやって仲直りしたんだっけ)

『好きなら描いてよ、おじさん・・・・・・』

「・・・・・・あっ・・・・・・」

『好きなら描けばいいじゃない!何がスランプよ!そういう台詞は描ききってから言いなさい!』

(・・・・・・好きなら描け・・・・・・)

(まさにその通りだ・・・・・・ああその通りだよ・・・・・・)


75 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:40:49.56 k2l8/v+40 58/70


「おばさん、こんばんは」

幼母「あら男君、今日も仕事お疲れ様ねー」

「ありがとうございます」

幼母「聞いたわよ?描かなければならない絵があるから、2ヶ月仕事休むんだってね」

「はい、おじさんには申し訳ないことを・・・」

幼母「いいのよ、主人だって納得の上で休職させるんだから」

「本当に感謝してます・・・・・・ところで、幼の部屋に用があるんですけど、あがっても?」

幼母「ええ、いいわよ、どうぞ」


76 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:41:39.30 k2l8/v+40 59/70

ガサガサ・・・

「よかった、まだあった・・・・・・」


幼の押入れから出したダンボールから出てきた、
額縁に入れられ大事に包装された一枚の絵
そこには凛とした立ち姿の若い女性が描かれていた

『絵好きなんでしょ!?なら好きなもの描けばいいじゃない!』

描きたい物が思い浮かばず、
キャンバスに向かうことすら億劫になってしまった自称スランプに、幼はそう言い放った

その言葉に動かされ、俺はキャンバスに幼の絵を描ききったことを思い出す


「まさかこの絵を持っていって『好きだ!』とか言うことになるとは・・・・・・恥ずかしくて死にてぇ・・・・・・」

「・・・・・・もう一度、好きになれるだろうか」


77 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:42:47.00 k2l8/v+40 60/70

「・・・・・・」

ガリガリガリガリガリガリガリガリ・・・・・・

「・・・・・・」

グリグリグリグリグリグリグリグリ・・・・・・

「・・・・・・」

ベタベタベタベタベタベタベタベタ・・・・・・


俺は一心不乱にキャンバスに向かった
途中何度も投げ出しそうになることはあったが、
少女の笑顔が脳裏によぎるたび、俺は何度でも筆を持ち直した

それが描き終わるころには、俺の歩みを止めていたちっぽけなプライドは微塵も残さず消えていた


・・・・・・


78 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:43:33.16 k2l8/v+40 61/70

「少女、今日誕生日だろ」

少女「・・・・・・」

「渡したいものがある、受け取ってほしい」

少女「・・・・・・!」

「自分でもびっくりするぐらい下手で、全然きれいに描けなかったけどさ」

少女「これ、私・・・・・・!」

「俺はもう一度絵を描き上げることが出来た、お前のおかげで」

少女「・・・あ・・・ああっ!」


79 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:44:18.68 k2l8/v+40 62/70

「もし、まだ俺のことを許してくれるなら、受け取ってもらえるか?」

少女「おじ・・・・・・おじさ・・・おじさあああんっ!」ブワッ

「ごめんな少女、ごめんな・・・・・・!」


 淀みかけた二つの流れは合流し、ひとつの新しい流れとなる


少女「私、おじさんの気持ち考えてなかった・・・!」ポロポロ

「それは違う、少女が俺の事を想ってくれたから、俺はまた絵が描けたんだ」


 長針と短針、二本の針が今そろい、再び時を刻みだす
 まるで思い出したかのように、グルグルとその速度を上げて回りだす
 時計はもう、止まらない・・・・・・そう確信する


「少女、ありがとう」


・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・


80 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:45:16.17 k2l8/v+40 63/70

幼馴染の死から10年、俺は画家としての活動を再開していた
交流を再開した画商さんの勧めで、来月から欧州に渡ることも決まった

少女もまた、俺や幼馴染が通った美術高校へ推薦入学することになっている
遠くからの学生のために寮を持っており、少女も明日からお世話になる


少女「もうすぐだね」

「ああ・・・・・・」

少女「寂しくなるね」

「ああ・・・・・・」

男母「少女?あなたが最後だから、はやくお風呂入っちゃいなさい」

少女「はーい」

「また後でな」

少女「うん」


81 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:46:39.27 k2l8/v+40 64/70

いつもは1時間ぐらいで少女も風呂から上がってくるのだが、
今日はまたずいぶんと長風呂のようだった
時刻は12時を回り、俺はいつの間にか眠りに落ちていた


「zzz・・・・・・」

スススー・・・
パタン

少女「・・・・・・」

「zzz・・・・・・」

少女「・・・・・・」ソー・・・

「・・・・・・んぁ?」

少女「!」ビク

「・・・・・・なにしてんの」


目を覚ますと、眼前には少女の顔があった
風呂上りで上気しているのか、頬が赤く染まっている


88 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:50:31.14 k2l8/v+40 65/70

少女「えーっと、おじさんと話の続きを・・・・・・」

「・・・・・・ずいぶんと顔が近かったな」

少女「えとえと、ちょっと道具を借りに・・・・・・」

「・・・・・・バスタオル一枚でか」

少女「~~~~っ///」


少女は顔だけでなく耳まで真っ赤になってしまった
頭から湯気が出ているものだから、それはそれは漫画っぽい


90 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:51:19.54 k2l8/v+40 66/70

少女「もうー!正直に言います!」

「お、おう・・・」

少女「私、おじさんのこと好きです!」

「俺もお前のこと妹や娘のように愛しているぞ?」

少女「違うの!男の人として好きなの!」

「・・・・・・」

少女「おじさんが、しばらくヨーロッパから帰ってこなくなると思うと、切なくて・・・・・・」

「はぁ~・・・・・・」ポリポリ

少女「ちょっと!?私本気!」

「あ~はいはい」ゴロリ


91 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:52:26.94 k2l8/v+40 67/70

少女「おじさん!」

「だあああもう!お前は家族なんだぞ、男とおんなのかんけいにわ・・・・・・」


少女の身体を隠していたバスタオルは、俺の目の前で左右に開かれていた

透き通るような肌
年相応に膨らみだした乳房
無駄な脂肪の無いくびれ
毛の生えそろわない秘部
小ぶりなお尻
優美な線を描く華奢な手足・・・・・・

女性として完成されていない、少女然とした未熟な肢体
幼さの中に女が垣間見えるそのアンバランスな身体は、
今まで見たことのあるどんな絵画の少女より美しく思えた


92 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:53:02.57 k2l8/v+40 68/70

少女「私・・・本気だから・・・・・・」

「・・・・・・」


だがそれはそれ、これはこれである


「・・・・・・お前、今何歳だ」

少女「・・・・・・15です」

「俺32!わかる!?普通に親子に見られるレベル!」

少女「でも好きなの・・・・・・あの日以来ずっと好きだったのっ・・・・・・」ウルウル

「ああもう・・・・・・泣くな泣くな、わかったからバスタオル巻いてこっち座れ」

少女「!!・・・・・・・・・うん///」モジモジ


93 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:53:47.50 k2l8/v+40 69/70

「・・・・・・目瞑れ」

少女「うん・・・・・・///」ギュッ

「ん」

チュッ

少女「えっ」

「お前みたいなガキんちょはおでこで十分だ」

少女「えっ?えっ?ええええ!?」

「未成年との性的行為は犯罪です」

少女「据え膳食わぬはって言うよ!?」

「うるせえ!まだ熟してもない青ミカンなんか食えるか!」

少女「ひどい!ひどいよ!」


95 : 以下、名... - 2012/01/22(日) 19:54:49.97 k2l8/v+40 70/70

「・・・・・・3年だ」

少女「え?」


 大切な人を亡くした男と女の子がいた


「俺が帰って来るまで3年あるから、それまでに何でも良いから賞を取れ」

少女「それって・・・!」


 二人は出会い、互いに失ったものを分かり合い、互いの喜びを分かち合い、そして惹かれあった


「でもって、帰ってきてもまだ誰の女にもなってなかったなら、そしたら考えてやる!」

少女「!!ありがとうおじさん!」ギュッ


 やがて二人は結ばれるだろう、しかしそれはまた未来のお話
 愛する人の抱擁に身を任せ、今はただ、その温もりを感じていよう


少女「おじさん、大好き・・・・・・」


Fin


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