あやめ速報-SSまとめ-

男「・・・とりあえず中身を見てみないとな」

男「なんか生臭い・・・開けるのが怖いなあ・・・」

男「玄関に置いておくわけにもいかないし・・・く、南無三！」ﾊﾟｶ


人魚「やっと開いたー！」


男「・・・」

人魚「ちょ・・・閉めないでよ！」


男「人魚の幻覚とか・・・とうとう俺も童貞をこじらせてしまったのか・・・」

人魚「幻覚じゃないやい」

人魚「とりあえず水変えてよ。いくら涼しい季節だからって何日もじゃ衛生的に良くないわ」

男「勝手に風呂場にでも行ってておくれ、水あるから・・・俺は親父に電話しなくてはいかん」

人魚「一人で歩けたら苦労しないわ！ビッタンビッタンしながら行けっての？」

男「ああ、そうか、足がないんだもんな・・・典型的な人魚の形だし」

人魚「ほら！わかったらさっさと連れていく！」

男「はいはい、よっと」

人魚「よろしい！そのまま風呂場へゴー」

男「(生臭いな・・・)」

人魚「ふう・・・あまり良い水じゃないけど、贅沢は言えないわね」

男「海水じゃなくて良いのか？」

人魚「海水のが良いのかも知れないけどね、まあ、私自身水道水で育ったし構わないわ」

男「そ、そう・・・じゃあ、俺はちょっと電話してくるから・・・」

人魚「ほいほーい！行ってらっしゃーい！」

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男「おい！親父！どういう事だ！」

親父「おっ！届いたか！」

親父「いやあ、ちょっとな、仕方ないんだよ」

男「何がだよ！」

親父「いやあ、ね、水槽でこっそり育ててたんだけどね、大きくなってきてね」

男「それでこっちに送ったてか！」

親父「だって母さんに見つかったら大変じゃないかあ」

男「だからって送るなよ！」

男「というか、一体どこで拾ってきたんだよ！」

親父「いやあなー、海辺を歩いてたらさ」

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人稚魚「おとーさんおとーさん！」

親父「んんー？・・・これは人魚！？」

人稚魚「探しましたよ！おとーさん！」

親父「いや、人魚に知り合いなんていないが、」

親父「(いや、待てよ？父親と名乗っておけば色々と都合が良いかも・・・！)」

親父「おおー！久しぶりだ！我が娘よ！」

人稚魚「やっぱりおとーさんなんだね！オカーサンに聞いてた通りの人だ！」

親父「？？あ、ああ、そうだね！うちに来るかい？」

人稚魚「はい！おとーさん！」

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親父「と言うわけだ」
男「やってる事は犯罪者とかわらないぞ・・・」

親父「いやあ、『人魚発見！』って新聞社に送ってお金貰おうと思ったんだけどね」

親父「『しょうもない話に付き合ってられない』って門前払い」

男「そりゃそうだ」

親父「仕方ないから下の世話して貰おうと思ったんだが、ついてないわけよ」

男「最低な人間だな」

親父「悩みに悩んだ末に、仕方ないから口で、と思ったらなんかすくすく育っちゃっててさ」

親父「正直、見た目が小学生以上とかないじゃん？だから送ったわけよ」

男「後で書類送っておくので名前と印鑑を忘れずに、市役所に提出しておいて下さい。さよなら」

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人魚「やあ！おかえりー！どうだった？」

男「とりあえず縁を切っておいた」

人魚「へー、良くわかんないや！」

男「で、君は一体何なの？」

人魚「そういうのは自分が名乗ってからだって知らない？」

男「あー、失礼。君を拾った男の元・子供の男だ」

人魚「なるほどーよろしくねー！」

男「あ、ああ・・・で、君は？」

人魚「人魚どぅえ～す！男がおとーさんの子供って事は、私は男の腹違いの妹になるわけだね」

男「え？」
人魚「え？」

男「いやいやいや、それはおかしいでしょ」

人魚「なんでさ？」

男「人間と魚じゃ子供なんて出来ないじゃない？」

人魚「出来たから私がいるわけで」

男「そもそも、あのロリペド野郎が魚なんかに欲情するとは思えん！」

人魚「おかーさんからちゃんと聞いたもん」

人魚「ちょうど卵子を出した所におとーさんが精子をかけてきたって、さ」

男「何をやってんだあの野郎は・・・」

人魚「まあ、そんな事はどうでも良いからさ！」

男「あまり良いとは言えんのだが・・・」

人魚「良いったら良いの！」

男「あっそう・・・了解・・・」

人魚「元気ないなあ・・・もう！」

男「仕方ないだろ・・・」

人魚「これから子作りしようってのにさ！」

男「はぁ？！」

人魚「赤ちゃん欲しいのよ、私」

男「突然過ぎて困るのだが・・・」

人魚「だってさ、そこらへんにいるただの魚なんて興味ないしさ」

人魚「私とはまた違った男の人魚もいるけど、『ハンサム～』とか言われてるヌンサだかラハニムだかも気持ち悪くって仕方ないし」

人魚「やっぱり子供残すならおかーさんと同じく人間とかな～ってさ」

男「いやいやいや・・・だって、その、ついてない・・・んだろ？」

人魚「なにがさ」

男「その・・・生殖器」

人魚「ないよ！だから私が卵子出すから、それにかけてね！」

男「過ちは繰り返しされるのか・・・・・・」

>>469

男「いやしかしだな・・・」

人魚「はっきりしない人だなあ、困るよ本当に」

男「『精子かければ良い』と簡単に言うがな、その、倫理的に、あのその・・・」

人魚「・・・私はね、人間と魚のハーフなわけよ」

男「まあ、字の如くな」

人魚「だからね、普通の人間よりも子孫を残す事、つまり本能ね？これが強く頭にあるのよ」

男「だがなあ・・・」

人魚「言ってしまえば、子孫を残さなければ生きていた意味がないのよ」

人魚「子孫を残す事が私の人生の全てと言っても過言ではないわ」

男「おいおい・・・」

男「それは考え過ぎだろ」

男「人生ってそれだけじゃないだろ？美味しい物食べたりとかさ、好きな事したりとか」

人魚「軽く考えないでよ・・・！」

男「べ、別にそんなわけじゃ・・・」

人魚「軽く考えているじゃない・・・さっきも言った通り、これは私にとって至上命題なのよ」

人魚「美味しい物を食べる？好きな事する？馬鹿じゃないの！？」

人魚「それに何の意味があるって言うの？私は生きる為に生きているんじゃないのよ！！」

男「す、すまん・・・」

人魚「今日はもう良い・・・一晩じっくり考えておいて・・・」

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男「・・・あんなに怒る事なのか？」

男「そりゃ、本能が強いってのはわかるがさ」

男「今まで水槽にいたんだ、これからは思いっきり遊んで人生を堪能すれば良いのに・・・」

男「よし！明日はどこかに連れていこう！これに決めた！」

男「明日のためにも・・・休もう」

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男「おはよう」

人魚「おはよーさん！ちゃんと考えてくれた？」

男「ああ、ちゃんと考えたよ」

人魚「良かったあ・・・ありがとね！それじゃあ早速・・・」

男「ちょっと待った！」

人魚「え？どしたの？」

男「気づいたんだ、君はまだ世界を知らないだけなんだって、さ」

人魚「・・・」

男「だから今日はどっかに遊びに行こう！」

人魚「・・・いい」

人魚「もういい！出てって！」

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男「とりつく島もないな・・・」

男「はあ・・・」

男「風呂場は占拠されているし、銭湯にいくか・・・」

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男「おーい！機嫌直ったか？」

人魚「ああ・・・男、おはよう」

男「どうした？元気がないな」

男「そうだ！そういう時は美味しい物でも食べて元気になろう！それが良いよ」

人魚「・・・もう時間がないのよ」

男「時間って・・・」

人魚「私には時間がないのよ・・・疲れたから出てって・・・」

男「え？・・・あ、うん・・・」

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男「時間がないって何だ？」

男「生理とかそんな話なのかな」

男「まあ良いか・・・明日も頑張ろう・・・お休み」

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親父『悩みに悩んだ末に』


親父『すくすく育っちゃった』

人魚『私には時間がないのよ』
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男「まさか！」

男「おい！人魚！ってなんだこの臭い・・・」

人魚「」

男「おい！起きろよ！」

人魚「」

男「協力するから！一緒に子孫を残そう！だから起きてくれよ！」

人魚「」

男「そんな・・・」

男「俺は間違えていた・・・」

男「人魚は人間じゃないんだ・・・」

男「人間と同じだけ生きるわけじゃないんだ・・・」

男「美味しい物を食べて好きな事をして、人生を堪能する時間なんてなかったんだ・・・」

男「それなのに俺は・・・」

男「人魚の人生を否定し続けてしまっていた・・・」

男「く・・・」

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男「このままじゃ可哀想だな・・・」

男「取り敢えず風呂場から出してあげないと・・・よっと」

男「・・・これは・・・？」

男「そうか・・・わかった、手伝うよ」

男「人魚の人生を意味のある人生にするよ」

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人魚というものはたった数週間の寿命しかない
そのうちで次の世代にバトンを渡さなければならない運命
自らの種を残す為にも、自らの人生を意味のあるものにする為にも
逃れる事が出来ない運命を背負い続ける
それが禁忌を犯した魚と人との子であるが為に背負った十字架


だが、わかった事がある
それは、人間の血が混じる事による延命
最初の人魚との子、彼女は一週間しか生きられなかった
だが、その彼女との子は彼女よりも１日多く生きた
最初は誤差のようなものだと思っていた
だが、交配を続けているうちにその寿命は１日１日伸びていった

そうだ、寿命が伸びていった事と同時に体にも変化が出てきたんだ

人魚は足がなく尾ひれ、それが典型的でいて、最初の人魚はまさにそうだった
だが、代が続くごとに足が形成されていき、それに伴い女性器も出来てきた

勿論、機能はしていないがな
主に射精を促す事に使っている点では人間と変わりはないだろう

もう少し代を重ねて行けばもしかしたら、人間と同じになれるかもしれない
まあ、こればっかりは続けていかなければわからないな

おっと、風呂場から俺を呼ぶ声が聞こえるな
何代目かわからなくなってしまった人魚の声が
もう彼女もそういう体になったんだな
成長を嬉しく思う反面、別れの時期が迫ってきている事への悲しみが今でも拭えない
だが、それと同時に新しい出会いに気持ちが高揚する

次はどんな娘が出来るのだろうか、ってさ


友人も知り合いも、その子も孫も皆死んでしまった今では、これだけが出会いの場だからな

さて、そろそろ風呂場に行かなくてはな
ちょうど食事も終わった所だ、ちょっと運動してくる

じゃあな



おはり