シャミ子「その別の人格ってどんな人格なんですか?」
ミカン「桃が言うには私とはまるで真逆の人格みたいよ」
シャミ子「真逆……」
ミカン「そうね……
・漢らしい性格、漢らしい口調
・やたらコーヒーをがぶ飲みする
……といったところかしら」
シャミ子「なるほど……あぁ…そういえばミカンさんと初めて会ったときって……」
ミカン「?」
元スレ
シャミ子「動揺すると別の人格が出る呪い?」 ミカン「ええ」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1580735793/
回想
たまさくらちゃん(シャミ子)「あの……コスプレぶらり旅ですか?」
ミカン?「クッ……そいつぁハズレだ」
たまさくらちゃん(シャミ子)「へ?」
ミカン?「俺はただの……ゴクッ……しがない魔法少女さ」
たまさくらちゃん(シャミ子)「……はぁ(なんでコーヒー飲んでるの、この人)」
たまさくらちゃん(シャミ子)「って…え?……魔法…少女?」
ミカン?「……聞こえてなかったのかい?」
たまさくらちゃん(シャミ子)「いえ……聞こえて…ました…けど」
たまさくらちゃん(シャミ子)「……なぜそのような格好でこちらに?……観光…ですよね?」
ミカン?「違うな、今は警戒中だ」ゴクッ
ミカン?「……なんでも、この町の魔法少女が魔族と抗争を起こしたとのことだ」
たまさくらちゃん(シャミ子)「……はい」
ミカン?「血で血を洗う大規模な争いの結果、魔法少女は心身ともにズタボロにされ」
ミカン?「魔力と生活力を奪われ、その魔族の軍門に下り、今では魔族と活動を共にしていると聞いたんだが」
たまさくらちゃん(シャミ子)「なにそれ!?そんな話知らない!!」
ミカン?「……そんな話知らない?」
たまさくらちゃん(シャミ子)「……ハッ」
ミカン?「まるでそれ以外の話を知ってるみたいな口ぶりだなぁ……コネコちゃん?」
たまさくらちゃん(シャミ子)「………」ダラダラダラダラ
ミカン?「なぁ…俺に教えてくれないか?……あんたが知ってることを」
たまさくらちゃん(シャミ子)「いや……でも……あの」ワタワタワタワタ
ミカン?「頼む……この町の魔法少女のためにも…俺はそいつをしばかなきゃならないんだ」
たまさくらちゃん(シャミ子)「ひいぃっ!!」カタカタカタカタ
ミカン?「喋りにくいんならそいつを脱いでもいいんだぜ。ここなら人通りは少ないはずだからな」
たまさくらちゃん(シャミ子)「いや……だから……その……(しばかれる!!これ脱いだらしばかれる!!)」ガタガタガタガタ
ミカン?「少ない人通りなんざ気にするな。脱いじまえ」ガバッ
たまさくらちゃん(シャミ子)「ぎゃあああぁぁ!!!!」
ミカン?「……つの?」
シャミ子「しっ…しばかれる……きっ…きっ…」ブルブルブルブル
シャミ子「危機管理――!!!!」
ミカン?「!?」
シャミ子「はっ…(とっさに変身できてしまった!?)」
ミカン「はっ……ってここはいったいどこかしら?」
シャミ子「……は?」
ミカン「ていうか貴方のその恰好……いやそれよりもつの?…えっ?…魔族…えっ…?」
ミカン「……貴方は一体?」
シャミ子「……あの…しばかないんですか?」
ミカン「は?しばく?……貴方は一体何を言ってるのかしら?」
シャミ子「え?」
ミカン「え?」
ミカン「……とりあえずこれでもはおったら?」
シャミ子「……ありがとうございます(はおるものを施された)」
―――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――
シャミ子「……あのときのミカンさんは別の人格のミカンさんだったけど、私が危機管理フォームになったらこっちのミカンさんに戻った」
シャミ子「…ってことでいいんですよね?」
ミカン「えぇそうよ……優子の説明にしては珍しくまとまっていたわね」
シャミ子「きさまばかにしているのか!?」
ミカン「別人格の方は優子が突然変身したことに驚いたんだと思うわ」
シャミ子「……つまり表に出る人格がどちらであろうとも、動揺することで人格が切り替わるということでしょうか?」
ミカン「そういうことね」
ミカン「あと別人格の方が睡眠をとると、目が覚めた時は私の方になってるわ」
シャミ子「なるほど」
シャミ子「ところで別人格が出ているとき、ミカンさんの方の人格はどうなっているのでしょうか?」
ミカン「よくわからないけど……たぶん意識を失うのと似たような状態なんじゃない?」
シャミ子「なるほど」
シャミ子「それとミカンさんの別人格を話題にするとき、別人格だとちょっとわかりにくいからほかの呼び方にしません?」
ミカン「そうね…私たちはコーヒーって呼んでるけど」
シャミ子「コーヒー…んな安直な」
ミカン「だってあいつコーヒーバカスカ飲むのよ!?」
ミカン「カフェイン摂りすぎのせいでなかなか眠ってくれないし、
運よく戻れたとしても口の中が苦いわ胃がおかしくなるわでもうさんっっざんだわ!!」
シャミ子「……苦労してるんですね」
ミカン「まっったく少しは乙女の身体をいたわりなさいよ!!…あーもーだんだん腹が立ってきたわ!!」
シャミ子「ミカンさん…落ち着いて」
ミカン「……そうね…今ここで心拍数を上げてあいつと入れ替わったら元も子もないからね」
シャミ子「?」
さくらシネマ
ミカン「着いたわよ」
シャミ子「ここは?」
リリス「映画館だぞシャミ子!!」
シャミ子「ごせんぞ……いたのですか」
リリス「………」クスンクスン
ミカン「優子、貴方には私の呪いの改善に付き合って欲しいの」
シャミ子「呪いの改善?それでなぜ映画館に?」
ミカン「………」クイクイ
シャミ子「ん?」
『死霊のコサックダンス』
『同時上映:ゾンビの夏休み』
シャミ子「普段からびっくりに慣れておけばあいつと替わることも」
シャミ子「……今日のダンベルノルマが終わってない」
ミカン「貴方のしっぽって便利ね」ガシッ
シャミ子「不便です!!」
シャミ子「……私たち以外誰もいません」
ミカン「この映画館空いてるから平日朝は貸し切り状態なのよ」
ミカン「だからここならどんなにリアクションしても大丈夫!!」
シャミ子「……リアクションしたら入れ替わっちゃうのでは?」
ミカン「武道で『明鏡止水』って言うでしょ?」
ミカン「表面的にはキャッキャしてても心の底は常に集中して凪の状態を保つの」
ミカン「最近コツが掴めてき」
ブ――――――
只今より上映を
ミカン「ぴょい!!」ビクゥ
シャミ子「ほげえ」ビクゥ
シャミ子「ミカンさん!!しっぽは強く握りしめないでください!!もげそうです!!」
ミカン(コーヒー)「ん?あぁ、すまねえな……角の嬢ちゃん」
シャミ子「いえ…いいんです(…もう替わってる)」
ミカン(コーヒー)「クッ…俺としたことがコーヒーを用意してなかったぜ」ガタッ
シャミ子「あの、もうすぐ始まりますよ?」
ミカン(コーヒー)「すぐそこの売店に行くだけだ。時間はかからない。角の嬢ちゃんは先に一人で見ててくれ」
シャミ子「いや……でも……一人で見るのは……」
ミカン(コーヒー)「嬢ちゃん……その恐怖心を乗り越えられれば強くて冷静な心が手に入るんだぜ」
シャミ子「い…いりません……そんなもの」
ミカン(コーヒー)「いらない?……何をほざいているんだ。強くて冷静な心には安定した魔力が宿るんだぜ」
シャミ子「………」
ミカン(コーヒー)「だからこれも精神修行の一環と割り切って映画を見るんだ……いいな?」
シャミ子「……分かりました」
シャミ子「……どうしてあのヒーローは弾が当たらないんですか?ずるい」
リリス「諦めろシャミ子。世界はそういう風にできているのだ」
ミカン(コーヒー)「クッ…たいして美味くねえコーヒーだぜ」
シャミ子「…の割には飲み干してるじゃないですか」
ミカン(コーヒー)「映画も退屈になってきたしな……寝るか」
シャミ子「いや退屈って……寝れるんですか?コーヒー飲んだのに?」
ミカン(コーヒー)「………」スースー
シャミ子(……寝てる)
シャミ子「……頑張れゾンビたち…!主人公は戦車の下に隠れてます」
リリス「シャミ子、しっぽの影が邪魔だぞ!!」
シャミ子(あ、あれ…楽しい!!)
ミカン「はっ……あ…あれ?……映画が…終わってる?」
シャミ子「ミカンさん……お目覚めですか」ウッウッ
ミカン「泣いてる!?」
ミカン「どうしたの!?どこか痛いの!?あいつに何か悪いことされたの!?」
シャミ子「違うんです…私感動して…」
シャミ子「ゾンビさんも幽霊さんも…たとえモツがはみ出ても圧倒的なヒーローを前にすごく頑張っていて…」ウッウッ
ミカン「そっちサイドに感情移入してたの!?」
ミカン「それにしても……はぁ…上映前のブザーの音にびっくりするなんて…」
シャミ子「結局映画は見れなかったのですか?」
ミカン「えぇ…全然ダメだったわね……私の方は…」
シャミ子「ミカンさん……」
ミカン「空のカップといい口の中の違和感といい…さてはあいつまたコーヒーを飲みやがったわね」ブツブツブツブツ
シャミ子「……ミカンさん?」
ミカン「あぁ、いいの。ただの独り言だから。気にしないで」
シャミ子「ミカンさん……その……今日はありがとうございます」
ミカン「え?」
シャミ子「今日は…ミカンさんに映画に誘ってもらえて…良かったです」
シャミ子「最初は怖かったけど…飛び込んでみたら得るものばかりでした」
ミカン「そう……優子に喜んでもらえて何よりだわ」
ミカン「私の目的は達成できなかったけど……でも…そんなことを言ってくれるんだから…優子を連れてきたかいがあったわ」
シャミ子「あの……」
ミカン「?」
シャミ子「……今後、私のことはシャミ子と呼ぶがいい///」
シャミ子「一応まぞくとしての活動名だからな!!……あだ名ですけど///」
ミカン「ええ…分かったわ……シャミ子」
シャミ子「///」
リリス「………」クスンクスン
桃(たまさくらちゃんサンバイザーON)「………」モ゙ーーーーーン
別の日
ミカン「多魔市さくらが丘…」
シャミ子「あれ、ミカンさんどうしたんですか?」
ミカン「シャミ子、ちょうどよかったわ。この近くにあるアパートを探してるの」
ミカン「『ばんだ荘』っていう建物なんだけど……でも住所の場所には廃墟しかなくて…」
シャミ子「いえ、ここで合ってますよ。私たちはここに住んでいるので」
ミカン「は?……すんでる…って住んでる!?貴方たちが!?……こんな廃墟に!?」
シャミ子「……廃墟に見えましたか?」
ミカン(コーヒー)「クッ…なかなか風情溢れるボロ屋敷じゃねえか……気に入ったぜ」
シャミ子「……気に入ってもらえてなによりです(ミカンさん……動揺させてごめんなさい)」
シャミ子「ミカンさんはなぜわざわざこちらに引っ越してきたのでしょうか?」
ミカン(コーヒー)「あぁ…柑橘の嬢ちゃんは桃色の嬢ちゃんと一緒に暮らすのはもううんざりだとか言ってたな」
シャミ子「二人の間になにかあったんですか!?」
ミカン(コーヒー)「さぁな……そいつは本人に直接訊いてくれ」
シャミ子「でも…そのことに関してコーヒーさんはどのように考えているんですか?」
ミカン(コーヒー)「……俺の個人的な見解を言っても誤解が生じるだけだ」
シャミ子「……そうですか…ん?…だとしたら……」
シャミ子「……ミカンさんは桃と一緒に暮らすのはうんざりと言ってたそうですが…それもコーヒーさんの個人的な見解なのでは?」
ミカン(コーヒー)「ゴクッ……なかなかやるじゃねえか……角の嬢ちゃん?」
シャミ子「きさまさては私のことを騙すつもりでいたんだな!!」
ミカン(コーヒー)「クッ……俺は嬢ちゃんを騙そうとしたわけじゃねえよ……ただ…ゴクッ……からかっただけさ」
シャミ子「ケンカのバーゲンセールか!?あとそのコーヒーはどっから取り出した!?」ポガー
リリス「そんなことよりコーヒーとやら、おぬしのことに関して疑問に思うことがあるのだが」
ミカン(コーヒー)「ん?…なんだい?」
リリス「おぬしとミカンは互いに記憶を共有することができるのか?」
シャミ子「ごせんぞ、なぜそのようなことを?」
リリス「いや…ちょっと気になっただけだ」
ミカン(コーヒー)「クッ……あんたらは知ってるはずだぜ…ゴクッ……答えを出すための手掛かりをな」
シャミ子「へ?…知ってる?…私たちが?……ん?私…たち…?」
リリス「……なるほど」
シャミ子「わかったのですか!?ごせんぞ!?」
リリス「あぁ…だがシャミ子よ、自分で考えてみるんだ。これはおぬしの頭のしわを増やすいい訓練になるはずだ」
シャミ子「わかりました!!自分で考えてみます!!」
シャミ子「う~~~……ん………」
シャミ子(コーヒーさんは私たちは答えに関する手掛かりを知ってると言ってた)
シャミ子(ここでの私たちとはおそらく私とごせんぞのことだろう)
シャミ子(……私とごせんぞがミカンさんとコーヒーさんの記憶の共有に関する手掛かりをつかむ機会は……映画を見に行ったとき…?)
シャミ子(ミカンさんは上映前のブザーに驚いたせいでコーヒーさんと替わってしまった……)
シャミ子(でもコーヒーさんは途中から眠ってしまったとはいえ一応映画は見ていた……)
シャミ子(ミカンさんの意識が戻ってきたのは映画が終わった後……)
シャミ子(そしてミカンさんは映画を全然見れなかったといってた……)
シャミ子(つまり…ミカンさんとコーヒーさんは互いに記憶を共有できない……?)
シャミ子(いや……でも……)
シャミ子(ミカンさんとコーヒーさんの意識が入れ替わったのは上映前のブザーが鳴ったとき……)
シャミ子(互いに記憶を共有できないならコーヒーさんは入れ替わった直後ではどのような映画を見るのか分からなかったはず……)
シャミ子(でもコーヒーさんは映画を見て恐怖心を乗り越えろとか言ってたから……)
シャミ子(私たちがどのような映画を見るのか分かっていた……?)
シャミ子「……わかりました」
リリス「ほう?」
シャミ子「ミカンさんはコーヒーさんが記憶したことは覚えてないけど、コーヒーさんはミカンさんが記憶したことも覚えている!!」
リリス「……それが答えか?」
シャミ子「はい!!」
ミカン(コーヒー)「……理由も聞かせてもらおうじゃねえか」
シャミ子「はい、えぇと……」
シャミ子「……以上です…どうでしょうか?」
ミカン(コーヒー)「………」
シャミ子「………」ドキドキ
リリス「………」
ミカン(コーヒー)「クッ……」
シャミ子「………」ドキドキ
リリス「………」
ミカン(コーヒー)「……やるじゃねえか」
シャミ子「……はぁ……よかった」
リリス「……よくやったな…シャミ子……」
シャミ子「……いやそもそもなんでこんな緊迫した雰囲気になっているのですか!?」
ミカン(コーヒー)「クッ……」ゴクッ
シャミ子「そこ!!コーヒー飲まない!!」
リリス「それにしても不思議なものだな」
シャミ子「そうですね…」
別人格の記憶へのアクセス
×
→
ミカン ミカン(コーヒー)
←
○
シャミ子「上図のような感じになっているなんて……」
リリス「そうだな、お互いに記憶の共有ができる、あるいは全く以てできないのが普通だからな」
シャミ子「ごせんぞ……前例を知ってるのですか?」
リリス「あぁ……メソポタでは一つの身体に二つ以上の魂を宿すという事例がいくつかあったからな」
シャミ子「へぇ~、そうだったんですか」
リリス「さっきの図でいうと両方とも○あるいは×であるのが一般的だったのだ」
シャミ子「なるほど」
リリス「余とおぬしだってそれと似たような関係だろう?像のスイッチを入れれば余とおぬしの魂が入れ替わるし」
シャミ子「確かに…言われてみればその通りです」
ミカン(コーヒー)「なぁ…邪神像さんよ……」
リリス「む…余のことか?」
ミカン(コーヒー)「……コーヒー……飲むかい?」コトッ
シャミ子(……飲みかけのコーヒーをお供えしてる)
リリス「うむ……頂こうか」
シャミ子「飲みかけですよ…いいんですか?」
リリス「ふむ……実にいい香りだな」
リリス「どれ…」ズズ
リリス「……美味い」
ミカン(コーヒー)「……分かってんじゃねえか……角の嬢ちゃんも飲むかい?」
シャミ子「いや…でも…それって(あなたの飲みかけですよね!?)」
ミカン(コーヒー)「……飲むかい?」グイッ
シャミ子「……飲みます」ゴクッ
ミカン(コーヒー)「どうだ……俺のオリジナルブレンドの味は?」
シャミ子「……お湯の方がおいしいと思います」
ミカン(コーヒー)「……嬢ちゃんにはまだ早かったみたいだな」
リリス「まだまだお子様だな」
シャミ子「………」ムー
シャミ子「……って話が脱線しすぎじゃないですか!!」
ミカン(コーヒー)「いいじゃねえか」
シャミ子「良くありません!!次は理由を教えてもらいます!!」
ミカン(コーヒー)「理由……なんのことかな?」
シャミ子「とぼけても無駄です!!えぇーと……」
リリス「………」ズズ
ミカン(コーヒー)「………」
シャミ子「………」
リリス「……ミカンの記憶」ボソッ
シャミ子「ハッ…そうです!!…ミカンさんはコーヒーさんが記憶したことは覚えてないけど、コーヒーさんはミカンさんが記憶したことも覚えている」
シャミ子「ことの理由です!!教えてもらいます!!」
ミカン(コーヒー)「クッ……」
ミカン(コーヒー)「……ひとつだけ言えることがある」
シャミ子「……なんでしょうか?」
ミカン(コーヒー)「……俺がこの身体を使っているとき…本来の持ち主がどこで何をしているのか……俺は知らねぇ」
シャミ子「……なるほど…って理由になってないじゃないですか!!」
ミカン(コーヒー)「いやだから俺は柑橘の嬢ちゃんが俺の記憶にアクセスできない理由を知らないんだよ」
シャミ子「ならあなたがミカンさんの記憶にアクセスできる理由は知ってるんですね!?」
ミカン(コーヒー)「さぁな…思い当たることが多すぎて一口に説明できねぇぜ」
シャミ子「やっぱり知ってるんじゃないですか!!」
ミカン(コーヒー)「さてと、部屋を素敵な感じに整えてやんねーとなぁ」
シャミ子「きさま話をそらすな!!」
ミカン(コーヒー)「ならもう一杯飲むかい?」
シャミ子「飲みません!!」
別の日
シャミ子「ミカンさん。コーヒーさんが表に出ているとき、ミカンさんの方はどういう状態になっているのでしょうか?」
ミカン「たぶん意識を失うような状態だと思うんだけど……ってそれ前にも訊かなかった?」
シャミ子「そういえばそうでしたね。忘れてました。面目ありません」テヘヘ
ミカン「まったく、なんで同じことを二度も訊くのよ?」
シャミ子「コーヒーさんが表に出ているとき、ミカンさんがどこで何をしているのかコーヒーさんは知らないって言ってたんです」
ミカン「私だってどうなってるのか知らないわよ」
シャミ子「あれ、そうなんですか?」
廃工場前
ミカン「意識を失うってのは目が覚めたときにタイムスリップするようなものだから」
シャミ子「ふむふむ」
ミカン「だから私はあいつの性格や人となりを知らないのよ」
シャミ子「なるほど」
ミカン「……あいつがコーヒーバカスカ飲むのは体が分かってるけど」
シャミ子「ははは…」
ミカン「……着いたわよ」
シャミ子「こ…ここは…」
ミカン「……?」
シャミ子「……まぞくのトラウマ製造工場っ!!」
ミカン「そんなもん作ってなかったわよ!!素敵なお菓子をいっぱい作ってました!!」
シャミ子「そもそもミカンさんはなぜそのような呪いを受けたのでしょうか?」
ミカン「んー…簡単に言うとうちのパパが儀式をして」
シャミ子「儀式!!儀式とはいったいなんですか!?どんな儀式なんですか!?」ベチベチベチベチ
ミカン「…儀式は悪魔召喚系で」
シャミ子「悪魔召喚!!悪魔を召喚するミカンさんのパパとはどのような人物なのでしょうか!?」ベチベチベチベチ
ミカン「シャミ子……そんなに激しく問い詰めないで」
シャミ子「すみません、ワクワクする単語がいっぱい出てきたもので」
ミカン「……なるべくそのコーフンは抑えて……呪いが出ちゃうから」
シャミ子「……善処します」
ミカン「……で、その召喚した悪魔がいろいろと悪さをした挙句、私の心の中に住み着いて」
シャミ子「それがコーヒーさんなのですか?」
ミカン「……分からない」
シャミ子「へ……違うんですか?」
ミカン「……それで桜さんに相談がいったのよ」
シャミ子「なるほど」
ミカン「桜さんのおかげで呪いはだいぶましになったの」
シャミ子「でも動揺すると人格が入れ替わっちゃうんですよね?」
ミカン「桜さんに取り成してもらうまではもっとひどかったんだから」
シャミ子「というと?」
ミカン「私を困らせたものを無制限に破壊する呪いだったのよ、もともとは」
シャミ子「な…なんてえげつない」
桃「……お待たせ」
ミカン「あら桃、ようやく来たのね」
シャミ子「?…なんで桃がここにいるのですか?」
桃「え?」
ミカン「え?」
シャミ子「え?」
桃「シャミ子……ここまでおばかになっちゃうなんて……」
ミカン「……やっぱり私の知らない間にあいつがシャミ子に悪さをしていたのね」
シャミ子「え゙っ!?……あー思い出しました!!ここの工場跡のカギを取りに行ってたんですよね!!」
桃「うん」
ミカン「ごめんなさいシャミ子……ごめんなさい」ウッウッ
シャミ子「落ち着いてくださいミカンさん!!悪いのはど忘れしていた私なんですから!!」
ミカン(コーヒー)「悪ぃな……もう手遅れだ」
シャミ子「……ミカンさん……こちらこそごめんなさい」
シャミ子「まぁでもせっかくなので…コーヒーさん、あなたに訊きたいことがあるのですが」
ミカン(コーヒー)「ん?…なんだい?」
シャミ子「あなたは……悪魔なのですか?」
ミカン(コーヒー)「悪魔?……なるほど」
シャミ子「いや、頷いてないで答えていただけませんか?」
ミカン(コーヒー)「そうだな……答えはNoだ」
シャミ子「え!?…あなたは…ミカンさんのパパが召喚した悪魔ではないのですか?」
ミカン(コーヒー)「あぁ、だから俺は悪魔ではないと言っている」
シャミ子「では…あなたはいったい……何者なのですか?」
ミカン(コーヒー)「クッ…柑橘の嬢ちゃん……コーヒー持ってくるの忘れてやがるぜ」
シャミ子「どうでもいいじゃないですかそんなこと!!」
ミカン(コーヒー)「そうだな…俺は人間だっ……たな」
シャミ子「人間……だった…?」
ミカン(コーヒー)「あぁ…もっとも……今はこの嬢ちゃんの身体を借りているようなもんだがな」
シャミ子「ミカンさんの身体を借りている…っていうと?」
ミカン(コーヒー)「俺の肉体はすでに無くなっているということだ」
シャミ子「ん?…肉体がない…元人間……まさか…」
桃「コーヒーさんはすでに絶命している…ってことでいいんですよね?」
ミカン(コーヒー)「あぁ、それでいい」
桃「シャミ子、この人は幽霊みたいな存在なんだって…怯えたりしないの?」
シャミ子「いえ、幽霊はごせんぞと同じカテゴリーにはいるのであんまり恐怖感は沸きません」
桃「ふーん(リリスさん……可愛い子孫に幽霊みたいなもんだと思われてますよ)」
シャミ子「それとあともう一つ」
ミカン(コーヒー)「ん?…なんだい?」
シャミ子「ミカンさんの呪いはもともとミカンさんを困らせたものを無制限に破壊するものだったそうなのですが」
シャミ子「桜さんのおかげで今のような状態になったと聞きました……桜さんは一体何をしたのでしょうか?」
ミカン(コーヒー)「……さぁな……そいつは本人に訊いてくれ」
シャミ子「……桜さんの現在の居所をご存じなのですか?」
ミカン(コーヒー)「いや、そいつは知らねぇ……だからその痕跡を探しに来たのだろう?」
シャミ子「……そうですね」
桃「それじゃあ手掛かりを探そうか」
シャミ子「はい」
ミカン(コーヒー)「クッ」
桃「私はこの岩どかすから、シャミ子は壁が変な形にえぐれているところを調べて」
シャミ子「わかりました……あれ、コーヒーさんは?」
ミカン(コーヒー)「……缶コーヒーを買ってくるぜ」
シャミ子「きさま少しは協力する姿勢を見せろ!!」
???『あっちを見て』
シャミ子「ん?…コーヒーさん、何か言いました?」
ミカン(コーヒー)「いや、何も言ってないが」
シャミ子「え?」
ミカン(コーヒー)「え?」
???『~~~』
シャミ子「えっ…と場所はこのあたりで……ここを掘ればいいのでしょうか?」
ミカン(コーヒー)「おい、嬢ちゃん……嬢ちゃん?」
シャミ子「………」ザッザッザッ
ミカン(コーヒー)「おい角の嬢ちゃん……何をしているんだ?」
シャミ子「……!!!!」
ミカン(コーヒー)「……缶コーヒーでも買ってくるか」
シャミ子(み……見つけちゃいました!!)
ぶきを てにいれた
シャミ子「もっ…ももももももも~~!!」
桃「何?」
シャミ子「てがっ…テガカリッ!!…てがかりらしきものっ!!」
シャミ子「ほら!!なんかのステッキです!!」
桃「……フォークだよね?」
シャミ子「……え?…あれ!?…えっとさっきまではステッキで…あれ!?」
桃「シャミ子……お腹すいてるの?」
シャミ子「なんだその顔は!!」
ミカン(コーヒー)「……フォークとステッキを間違えたのかい?」
シャミ子「あ、コーヒーさん……って違います!!」
シャミ子「どこからともなくここを掘れっていう声が聞こえて」
桃「…声?」
シャミ子「掘り出したときはステッキの形をしていて!!でも気づけばフォーク化していたんです!!」
桃「幻覚……」
ミカン(コーヒー)「および幻聴」
シャミ子「なんだその顔は!!ほんとにほんとだぞ!!」
桃「ごめんね…今日は暑かったね…」ナデナデ
ミカン(コーヒー)「水分が不足してるならこのコーヒーを飲むといいぜ」
シャミ子「水分不足ではありません!!私はいたって健康です!!」
桃「ごめんね…シャミ子に無茶させちゃって…」ナデナデ
ミカン(コーヒー)「ほら、開けてやったぞ…飲め」
シャミ子「きさまら~!!憐れむな~!!」
夜 吉田家
清子「……でっかい発見です優子、それはおそらくおとーさんの持ち物。由緒正しきメイドインメソポタの…」
シャミ子「……メイドインメソポタの?」
清子「……えーっと、なんとかの杖」
シャミ子「……おかーさんど忘れですか!?」
清子「おとーさん曰く…これは一族の魔力を掛け算的に増幅し、棒状のものなら自由に変形できるとても便利な杖とのことです!!」
シャミ子「……ごせんぞ、名前を思い出すことはできませんか?」
リリス「……すまん…アから始まること以外思い出せない」
シャミ子「ごせんぞがんばって!!」
別の日
シャミ子「ん…あれ?……ここは一体?」
???「やぁ……また会えね」
シャミ子「ん…あなたは?」
???「……魔法少女千代田桜。魔力のヘソクリが貯まったから会いに来ちゃった」
シャミ子「桜さん!?なぜここにいるんですか!?」
桜「それはここが君の夢の中だからだよ」
シャミ子「あっ…そうか……」
桜「でもせっかく会えたんだし、何か私に訊きたいこととかないの?」
シャミ子「訊きたいことですか…えっと……」
シャミ子「ミカンさんの呪いについてです」
桜「ふーん、ミカンちゃんの……」
シャミ子「桜さんのおかげでミカンさんの呪いは今の状態に落ち着いたと言ってました。桜さんは一体何をしたのでしょうか?」
桜「私がしたこと?……あえて言うならあの子に憑いていたもう一つの魂に悪魔の見張りをするようにした……といったところかな」
シャミ子「もう一つの魂?……それはコーヒーさんのことですか」
桜「うん」
シャミ子「悪魔の見張りって言ってましたけど、ミカンさんの中にはコーヒーさんのほかにも悪魔が住み着いていたんですか?」
桜「うん……その悪魔はミカンちゃんが動揺したと分かったら見境なく攻撃していたの」
シャミ子「……だからコーヒーさんに見張りをさせて、もしも悪魔が暴れたらコーヒーさんが悪魔を抑える…ようにしたかったのでしょうか?」
桜「うん…でも」
桜「悪魔の力が思いのほか強くて、悪魔が暴れるともう一つの魂が外に押し出されて表の魂と入れ替わっちゃうの」
シャミ子「……それが今のミカンさんの呪いの正体……」
桜「そう」
シャミ子「……でもコーヒーさんの魂が押し出されたとき、ミカンさんの魂はどうなっちゃうのでしょうか?」
桜「……ごめんね…それは私にもわからない」
シャミ子「……そうですか……あれ?…でもさっき」
桜「?」
シャミ子「ミカンさんに憑いていたもう一つの魂に悪魔の見張りをさせた…って言ってましたけど……」
桜「うん」
シャミ子「…もう一つの魂はミカンさんの呪いを抑えるために桜さんが呼んだものではないのですか?」
桜「いや…ミカンちゃんに初めて会った時にはもう憑いていたかな」
シャミ子「そ…そうだったんですか!!」
桜「たぶん儀式で召喚した悪魔の力を抑えるために、また別の儀式をして呼んだんじゃないかな?」
シャミ子「……なるほど」
桜「他に何か訊きたいことはない?」
シャミ子「えーっとですね……」
桜「……っといいたいところだけどそろそろ魔力のヘソクリが尽きそうだから私はメレンゲに戻りまーす」
シャミ子「あぁっ!!待ってください!!もう少し…もう少しだけ時間をください!!」
桜「大丈夫、魔力のヘソクリがまた貯まったらまたこうしてお話しできると思うから…それまでに考えておけばいいと思うよ!!」
シャミ子「うぅ…仕方ありませんね」
桜「それじゃあ桃ちゃんやみんなのことをよろしく頼むよ!!……またね!!」
シャミ子「……はい!!」
―――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――
良子「お姉!!起きて!!ごはんだよ!!」ペチペチペチ
シャミ子「……むにゃ?……ひょう?」
良子「今朝は納豆とチーズオムレツのたんぱくスペシャルだよ!!」
シャミ子「…う~…ん……今日は…淡泊な……じゃなくて!!」
良子「お姉!?」
シャミ子「良!!今すぐペンとメモ帳を持ってきてください!!桜さんからのお告げがありました!!」
良子「うん!!」タッタッタッ
シャミ子「忘れないように忘れないように……」ブツブツブツ
良子「はい!!お姉!!」
シャミ子「ありがとうございます!!さぁ~死ぬ気でメモりますよ!!」
良子「頑張って!!お姉!!」
シャミ子「え~と…確かミカンさんの」
良子「ミカンさんの!!」
シャミ子「良!!」
良子「うん!!…先に食べてるね!!」
シャミ子「はい!!」
タッタッタッ
シャミ子「……あれ?」
シャミ子「…ミカンさんの……なんでしたっけ?」
シャミ子「……え~と…確かミカンさんの…あれ、コーヒーさんでしたっけ?」
シャミ子「コーヒーさんの呪いが…いえ、呪いはミカンさんです!!」
シャミ子「え~と…ミカンさんの呪いが……じゃなくて呪いを…桜さんがコーヒーさんに……ん?」
シャミ子「え~と…コーヒーさんが悪魔を…あぁそうだ悪魔さんです!!」
シャミ子「悪魔さんが桜を……じゃなくて」
シャミ子「桜さんが悪魔を召喚してコーヒーさんの見張りをさせた……んでしたっけか!?」
シャミ子「……えぇい次です!!」
シャミ子「悪魔が…暴れると……どうなるんでしたっけ?」
シャミ子「いや…悪魔はコーヒーさんの見張りをしてたから…暴れるのはコーヒーさんで……」
シャミ子「あぁそうだ!!コーヒーさんが暴れるからそれでミカンさんと入れ替わっちゃうんです!!」
シャミ子「確かそれが呪いの正体だったはずです!!」
シャミ子「……他にも何かあったような気がするのですが…重要なのは
・桜さんが悪魔を召喚してコーヒーさんの見張りをさせた
・ミカンさんの呪いはコーヒーさんが暴れることで起きる
ということですね!!」
シャミ子「ん?…な~んか腑に落ちないような……いやでもカギとなる単語は全部拾ったはず……」
清子「優子~、冷めてしまいますよ~」
シャミ子「はーい、今行きまーす」
ばんだ荘 ミカンの住処前
シャミ子「ミカンさーん、起きてますかー」ドンドンドン
ガチャッ
ミカン「あらシャミ子…何か用?」
シャミ子「ミカンさん、聞いてください!!夢の中で桜さんとお話したのです!!」
ミカン「あらそう……よかったわね」
シャミ子「他人事みたいに言わないでください!!桜さんからミカンさんの呪いについていろいろと話を聞いたのです!!」
シャミ子「そのことについてミカンさんとお話ししようと思ったんです!!」
ミカン「そう…じゃあ中に入る?」
シャミ子「はい…お邪魔します」
ミカンの部屋
ミカン「それで、桜さんからどんな話を聞いたの?」
シャミ子「えぇっと…ちょっと待ってください…桜さんが話したことのメモは……これですね」
・桜さんが悪魔を召喚してコーヒーさんの見張りをさせた
・ミカンさんの呪いはコーヒーさんが暴れることで起きる
ミカン「……シャミ子、ちょっといいかしら?」
シャミ子「はい、なんでしょうか?」
ミカン「……悪魔を召喚したのはうちのパパよ」
シャミ子「あ……」
ミカン「……でも悪魔にあいつの見張りをさせた…ってことは」
シャミ子「はい、コーヒーさんは召喚された悪魔じゃなかった…ってことです」
ミカン「なるほど」
シャミ子「では書き直すと…」
・ミカンさんのパパが召喚した悪魔にコーヒーさんの見張りをさせるように桜さんがした
シャミ子「…ですね!!」
ミカン「……ごめんなさい、何を言ってるのかさっぱりだわ」
シャミ子「……そうですね……自分で書いたはずなのに読み返してみたら意味不明です」
ミカン「そういうときはね…」
・ミカンさんのパパが悪魔を召喚した
・桜さんが悪魔にコーヒーさんの見張りをさせた
ミカン「…こんな感じで文の要素を二つに分ければいいのよ」
シャミ子「あぁそうだ!!私はこんな感じのことが言いたかったのです!!」
シャミ子「ありがとうございますミカンさん!!また一つ勉強になりました!!」
ミカン「うふふ…よくってよ」
シャミ子「私の言いたかったことをくみ取って整形してくれるだなんて……ミカンさんは天才です!!」
ミカン「いや…それはさすがに言いすぎなんじゃ…?」
シャミ子「いえいえいえ、謙遜しないでください!!こーゆーのは多分桃にはできないことでしょうから!!」
ミカン「…まぁ…確かに…桃には…」
シャミ子「誇りに思っていいと思いますよ!!自分は国語の天才だ!!…って」
ミカン「え?…ちょっとシャミ子!?…そんなに///…褒められたら……///」
シャミ子「お話しできる相手がミカンさんで本っっっっ当に良かったです!!ありがとうございます!!」
ミカン(コーヒー)「クッ…よせやい……照れちまうぜ」
シャミ子「あれ…ミカンさん?」
ミカン(コーヒー)「違うぜ…俺はコーヒーさんだぜ」
シャミ子「……そうですか(ミカンさん……ごめんなさい)」
ミカン(コーヒー)「嬢ちゃん…さっきのメモについてなんだが」
シャミ子「はい?…何か問題でもありましたか?」
ミカン(コーヒー)「俺は悪魔に見張られる側じゃねえ……むしろ悪魔を見張る側だぜ」
シャミ子「あー……あ゙あ゙あ゙あ゙――――!!!!!!!!」
ミカン(コーヒー)「……急に大声出すなよ……入れ替わっちまうじゃねえか」
シャミ子「……いえ、違和感の正体がはっきりして…その違和感が解消されてすっきりした…ってだけで」
シャミ子「あっ…そうか!!」
ミカン(コーヒー)「ん?」
シャミ子「コーヒーさんがミカンさんの記憶にアクセスできる理由が解りました」
ミカン(コーヒー)「……ほう?」
シャミ子「……ミカンさんが表に出ているとき、コーヒーさんは悪魔を見張っていて意識があったから…」
ミカン(コーヒー)「………」
シャミ子「ミカンさんの記憶にもアクセスできたのですね!?」
ミカン(コーヒー)「……その通り…だぜ……」
シャミ子「……な……」
ミカン(コーヒー)「ん?」
シャミ子「……何が『思い当たることが多すぎて一口に説明できない』ですか!!一言で説明できちゃったじゃないですか!!」
ミカン(コーヒー)「さて、コーヒー豆でも買いに行くか」
シャミ子「待てきさま、逃げるなー!!」
外
シャミ子「ハァ……ハァ……待ってください…まだ…あなたに…訊きたいことが…」タッタッタッ
ガシッ
シャミ子「誰だ!?急に私のしっぽを掴む不届き物は!?」
桃「私」
シャミ子「桃!?」
桃「さぁ、ランニングに行こうか」
シャミ子「待ってください、私はさっきご飯を食べたばっかりで」
桃「ダウト、それは一時間ほど前の話」
シャミ子「は!?」
桃「たんぱくスペシャルをたいらげたあとはミカンのところに直行して今日見た夢の話をしたんでしょ?」
シャミ子「きさま…なぜそこまで……」
桃「壁が薄いから……さぁ、行こうか」
シャミ子「……くっ」
シャミ子「ゼハー……ゼハー……」タッタッタッ
桃「………」タッタッタッ
シャミ子「ゼハー……ゼハー……」タッタッタッ
桃「……ちょっと休憩しようか」
シャミ子「……はい……ハー……ハー……」
桃「……はい、飲み物」
シャミ子「……ありがとう……ございます……ハー……ハー……」
シャミ子「………」ンッンッンッ
桃「……ねぇ、シャミ子」
シャミ子「……はい」
桃「……なんで姉と会ったときに真っ先にミカンの呪いについて訊いたの?」
シャミ子「……はい?」
桃「いや、ふつうは自分や家族のこと、あるいは私や姉自身のことについて訊くものなんじゃないかな?」
シャミ子「……そうですね……ミカンさんには…初めて会った時から…見ず知らずの私にもよくしていただいているので」
桃「うん」
シャミ子「そのお礼……といえることかどうかはわかりませんが」
桃「ん?」
シャミ子「……私…ミカンさんの呪いを……解いてあげたいんです」
桃「……でも姉ですら力を抑えるだけで手いっぱいだった呪いを解くだなんて」
シャミ子「……私は夢魔ですから……私でなければできないことが…何かあると思うんです」
桃「……そっか」
ばんだ荘前
シャミ子「……ハー……ハー……桃…私は…もう…だめです……ハー……ハー……」
桃「よくがんばったね、おいしいプロテインが待ってるよ」ナデナデ
シャミ子「……ハー……ハー……」
桃「あ、ミカン…じゃなくてコーヒーさんかな?」
シャミ子「え?」
ミカン(コーヒー)「……コーヒーさんだぜ」
桃「ほら、シャミ子…」
シャミ子「……はい……ハー……ハー……」
ミカン(コーヒー)「………」
桃「……ちょっと休んでからにする?」
シャミ子「……はい……ハー……ハー……」
ミカンの部屋
ミカン(コーヒー)「……俺に何か用かな?」
桃「ほら、シャミ子…」
シャミ子「……はい……」
ミカン(コーヒー)「………」
シャミ子「……コーヒーさん……」
ミカン(コーヒー)「……なんだい?」
シャミ子「……あの……」
ミカン(コーヒー)「………」
桃「………」
シャミ子「……私と一緒に寝てください」
ミカン(コーヒー)「ブッ!!!!」
桃「ブッ!!!!」
シャミ子「?」
桃「おばか!!!!シャミ子!!!!…もうちょっと言い方を考えて!!!!」
シャミ子「?…なにか間違ってましたか?」
ミカン(コーヒー)「別に……角の嬢ちゃんも布団を敷くのを手伝ってくれ」
シャミ子「わかりました」
桃「ちょっと待って!!二人とも何か誤解してる!!」
シャミ子「?…誤解って?」
ミカン(コーヒー)「……何のことだい?」
桃「いや…それは///…その……///」
ミカン(コーヒー)「……角の嬢ちゃんは俺…じゃなくて柑橘の嬢ちゃんの夢の中に入りたいんだろう……違うか?」
シャミ子「ええ、それであってます」
桃「あれ?」
ミカン(コーヒー)「……桃色の嬢ちゃん…俺たちの間にどんな誤解が生じたっていうのかな?」
シャミ子「別に誤解なんてありませんでしたよ」
桃「……リリスさん持ってくるね」
シャミ子「あっ桃、ありがとうございます。助かります」
桃「……いいよ…じゃ……」
バタン
シャミ子「……桃は一体何を勘違いしてたんでしょうか?」
ミカン(コーヒー)「ほっとけ……年頃の嬢ちゃんたちにはよくあることだ」
シャミ子「そうなんですか?……あぁ、そんなことより」
ミカン(コーヒー)「ん?」
シャミ子「私の頼みにやけに素直に応じてくれたみたいですけど…」
ミカン(コーヒー)「いや、機を見てこっちの方から嬢ちゃんに頼もうと思っていたんだ」
シャミ子「あれ、そうだったんですか?」
ミカン(コーヒー)「……意外そうな顔をしているな」
シャミ子「それで…コーヒーさんが私にお願いしたかったこととはいったい?」
ミカン(コーヒー)「……俺を成仏させてほしい」
シャミ子「は!?!?……いや私はあくまでそんじょそこらの闇の一族であって除霊の術が使えるのはむしろ」アワワワ
ミカン(コーヒー)「言い間違えた。この嬢ちゃんの呪いを解いてやってほしい」
シャミ子「は!?!?……はぁ…そうですか」
ミカン(コーヒー)「……あぁ」
シャミ子「……でもなぜ私に頼むのでしょうか?」
ミカン(コーヒー)「……この嬢ちゃんの本来の呪いは知っているか?」
シャミ子「……はい」
ミカン(コーヒー)「なら話は早い。嬢ちゃんの心をねぐらにしている悪魔を追っ払っちまえば」
シャミ子「ミカンさんの呪いは解ける…と」
ミカン(コーヒー)「あぁ…だがそれを実行するには第三者がこの嬢ちゃんの心に潜り込まなければならない」
シャミ子「……それでコーヒーさんは人の心に潜り込めるような人を求めていたと」
ミカン(コーヒー)「……そうだ」
吉田家
リリス「ん?…桃一人だけか?…シャミ子はどうした?」
桃「……リリスさん」
リリス「なんだ?…桃よ」
桃「……来てください」ガシッ
リリス「は!?!?」
桃「……では参りましょう」
リリス「いやせめて事情は説明してくれ!!!!」
リリス「なるほど……シャミ子がこれからミカンの心の中へ…」
桃「ええ、リリスさんにはシャミ子のサポートをお願いしたいのです」
リリス「あぁ、それは別に構わんが…おぬしはどうする?」
桃「……私?」
リリス「……闇に堕ちるのか?」
桃「……どうしよっかな?」
ミカンの部屋
桃「シャミ子…お待たせ」
シャミ子「……でしたらなぜ自分を成仏させてほしいなどと…」
桃「あれ、お話し中?」
リリス「……邪魔するぞ」
シャミ子「あぁ桃!!それにごせんぞ!!…おかえりなさい!!」
桃「……ただいま」
ミカン(コーヒー)「ほう?…おかえりなさいとは……やるなぁ…嬢ちゃん」
シャミ子「あ゙っ…そういえばここはミカンさんの部屋でした…///」
リリス「………」ニヤニヤ
桃「………」クス
ミカン(コーヒー)「……クッ」
桃「……で、何の話をしてたの?」
シャミ子「はい、えーと…コーヒーさんが自分を成仏させてほしいと私に頼んだからでして……」
桃「……でも姉がコーヒーさんに悪魔の見張りをさせたから成仏できなんですよね?」
ミカン(コーヒー)「あぁ、そうだ。その悪魔をどうにか外へ追い払えれば俺も成仏できると踏んだわけさ」
桃「なるほど……ですが、コーヒーさんはそもそも成仏したいって本当に思ってるんですか?」
シャミ子「え?…違うんですか?」
桃「ミカンにとっては気の毒かもしれないけど……コーヒーさんは今の生活が気に入ってるんじゃないんですか?」
シャミ子「え!?そうなんですか!?」
リリス「シャミ子よ、無理して話に混ざらなくてもいいんだぞ」
シャミ子「……はい」
桃「……どうなんですか?」
ミカン(コーヒー)「………」
桃「………」
ミカン(コーヒー)「……確かに…今の生活が気に入らない…って言ったら……嘘になるな」
シャミ子「………」
リリス「………」
ミカン(コーヒー)「だが……こうして俺が表に出ることで……今を生きる嬢ちゃんの時間を奪うと思うと………心苦しくなるのさ……」
桃「……でも…ミカンはそんなこと……気にしないと思う」
ミカン(コーヒー)「だが事実だ」
桃「………」
シャミ子「………」
リリス「………」
ミカン(コーヒー)「こんな煩わしい呪いを持っていなければ…柑橘の嬢ちゃんはあんたたちと楽しくお喋りしているはずだったんだがなぁ」
桃「………」
シャミ子「………」
リリス「………」
ミカン(コーヒー)「要は今を生きる嬢ちゃんの時間を、死人の俺が奪うわけにはいかない…ということさ」
リリス「……それがおぬしの本音か?」
ミカン(コーヒー)「……そうだ」
桃「……分かりました」
ミカン(コーヒー)「……分かってくれたかい?」
シャミ子「……はい……それでは……」
シャミ子「寝ましょう」
桃「寝よう」
ミカン(コーヒー)「寝るか」
リリス「……寝るというのはずいぶんと締りの悪いセリフだな」
桃「あ、しまった」
シャミ子「どうかしましたか?」
桃「薬飲むの忘れてた」
シャミ子「思い出せてよかったですね。ちゃちゃっと飲んじゃってください」
桃「うん……」ゴクッ
シャミ子「……どうですか、お味の方は?」
桃「……一言でいうとまずい」
シャミ子「桃…がんばってください」
ミカン(コーヒー)「そういう時はコーヒーを混ぜて飲むと」
シャミ子「カフェインのせいで眠れなくなるので本末転倒です」
ミカン(コーヒー)「クッ…やるじゃねえか」
シャミ子「きさま」
桃「うぅ……」
ミカンの心の中
桃「……起きて、シャミ子」
シャミ子「うにゃ?」
リリス『どうやら問題なくミカンの心に入れたようだな』
シャミ子「ごせんぞ」
桃「視界があまりよくないね。シャミ子、私から離れないで」
シャミ子「桃、薬を飲んでからは気持ち悪そうな顔してましたけど…大丈夫でしょうか?」
桃「うん、大丈夫」
シャミ子「こんなにお腹だしちゃって……冷えませんか?」ペタペタ
桃「触るなえろまぞく」ギュ
シャミ子「だからしっぽは掴むな闇堕ち魔法少女」
リリス『コラ、今はイチャイチャしてる場合じゃないだろう!!』
シャミ子・桃「ごめんなさいでした」
リリス『視界の悪さはミカンのエーテル体に溶け込んだ呪いの成分によるものだろう』
リリス『まずは目視で問題がありそうな箇所を探すのだ』
シャミ子「といっても……見た感じ問題がありそうな箇所は見られないし…ちょっと移動しましょう」
桃「でも闇雲に歩き回るのは危険だと思う」
シャミ子「……ですがここにとどまっていても手掛かりは掴めないかと」
???「クッ……ここもずいぶんと賑やかになったじゃねーか」
シャミ子「誰!?!?」
桃「シャミ子!!私の後ろに!!」
???「まぁ、そうカッカするな……嬢ちゃんたちを取って食うような真似はしないからよ」
シャミ子「だからあなたは誰なんですか!?!?」
桃「……怪しい」
???「……あんたらの言う……コーヒーさんだよ」
シャミ子・桃「ええええぇぇぇぇ!?!?!?!?」
シャミ子「いや!!でも!!私の知ってるコーヒーさんは!!」
コーヒー「あんたが俺の何を知ってるっていうんだ!!!!」
シャミ子「ひいぃっ!!」ブルブルブルブル
桃「……あぁ!!」ポン
シャミ子「……もんも?」ブルブルブルブル
桃「……そういえば私たちはコーヒーさんの本来の姿を知らないんだった」
シャミ子「……あぁ」ポン
コーヒー「……分かってくれたかい?」
シャミ子「……あと」
コーヒー「……なんだい?」
シャミ子「……なんでコーヒーさんはここにいるのですか?」
桃「おばか」ヒソヒソ
シャミ子「……え?…あー……」
コーヒー「……俺はここに10年近く住んでるからな」
シャミ子「………」ダラダラダラダラ
桃「………」
コーヒー「……どこでどのような異常が発生したのかが…手に取るように分かるのさ」
シャミ子「……あー……そうなんですか……」
桃(なぜ私たちの居場所を把握できたのか?……という形でシャミ子の質問を解釈したみたい)
コーヒー「案内してやる……ついてきてくれ」
シャミ子・桃「はい」
コーヒー「……もうすぐ目的地だぜ」
シャミ子「……ちょっと光が見えてきました」
桃「ん?…あれは?」
ミカン「………」
シャミ子「……ミカンさん!!」
コーヒー「落ち着け、角の嬢ちゃん」
シャミ子「落ち着いている場合ですか!?…待っててくださいミカンさん…今救出します!!」
コーヒー「……なかなか便利なしっぽじゃねえか」ガシッ
シャミ子「きさまもか!?」
シャミ子「この町にはまぞくのしっぽを大事に扱うやつはいないのか!?」
桃「そんなことよりシャミ子……あれを見てどう思う?」
ミカン「………」
シャミ子「ミカンさんがかわいい」
桃「不正解。まぞくは生命活動を停止……死んだのだ」
コーヒー「……柑橘の嬢ちゃんに黒い霧がまとわりついてるのが見えるだろう?」
シャミ子「はい、見えます」
コーヒー「……あれが悪魔だ」
シャミ子「え!?」
コーヒー「今はこんな見てくれになっているが……昔は直接口を交わすこともできた」
シャミ子「そうだったんですか!?」
桃「……ならなぜ今はあんな姿に?」
コーヒー「……悪魔を召喚するための儀式が雑だったからだろう」
コーヒー「それに加えて嬢ちゃんの質のいい魔力を糧にして成長していった」
コーヒー「嬢ちゃんを守るために最適な形を突き詰めた結果が今の姿というわけさ」
シャミ子「……ではその悪魔さんを言葉で説得してここから出て行ってもらうのは?」
コーヒー「無理だな。あいつは俺の話を聞こうともしない」
リリス『というよりはよりしろをなくして存在が溶けちゃったから視覚や聴覚を働かせることができないのだろう』
コーヒー「……補足説明ご苦労さん」
桃「……言葉がだめなら力で!!」
リリス『寄生されているのだぞ?宿主の魔力が削れてしまうかもしれないぞ?』
桃「……くっ!!」
コーヒー「なぁ…角の嬢ちゃん……何かねえのかい?」
シャミ子「……はい?」
コーヒー「柑橘の嬢ちゃんと黒い霧を切り離すための上手い方法は?」
シャミ子「……黒い霧を……切り離す……」
コーヒー「黒い霧に俺たちのメッセージを感知させるための上手い方法は?」
シャミ子「……メッセージを……感知させる……」
コーヒー「あるいはいっそ黒い霧を一か所に集めて固めるための上手い方法は?」
シャミ子「……集めて……固める……」
シャミ子「!!!!」
シャミ子(そういえば前に良が見せてくれた本に混沌をかき混ぜるようなものがあったはずです!!)
コーヒー「……閃いたみたいだな」
シャミ子「……はい」
シャミ子「……溶けたものを固める武器を作ります」
桃「……えっ!?」
コーヒー「……ほう?」
シャミ子「ずるい武器!!天…沼矛~~~~っ!!」
桃「………」
コーヒー「………」
シャミ子「………」ドヤァ
桃「……泡だて器だよね!?」
コーヒー「……いいメレンゲが作れそうじゃねえか」
シャミ子「混ぜものはこれが最適解です!!」
シャミ子「これでこの霧を固めてミカンさんと分離します!!」
桃「大丈夫!?泡だて器で本当に大丈夫なの!?」
シャミ子「混ぜちゃうぞ~!!固めちゃうぞ~!!」グールグール
桃「はーいもうどうにでもなーれ」
リリス『……お、霧がまとまってきたぞ?』
???「………」
シャミ子「ハァ……ハァ……なんとか……できました」
コーヒー「クッ…久しぶりじゃねーか……その姿を見せるのは」
シャミ子「あとは…よろしく……頼みます」ドサッ
桃「シャミ子!!」
???「んがっ オレ形 アル ナンデダ?」
桃「しゃべった!?」
???「ん?…アイツ」
コーヒー「………」ニヤァ
桃「?」
???「アイツ…オレノ……敵!!」
桃「!?」
コーヒー「……来るか!!」
???「んがああああぁぁぁぁ!!!!!!!!」
桃「コーヒーさん!?その女の子は一体!?……あとなぜコーヒーさんに敵意むき出しなのですか!?」
コーヒー「こいつは『ウガルル』……同じ名前のメソポタの怪物を基にして作られた……不完全な使い魔さ」
コーヒー「あとは俺に敵意むき出しな理由だが……」
桃「あ…そっか……ミカンの本来の呪いをコーヒーさんが抑えてたから」
コーヒー「それに視覚や聴覚が働くからウガルルは俺を排除すべき敵と認識しているわけさ!!」
ウガルル「んがああああぁぁぁぁ!!!!!!!!」
桃「コーヒーさん!!」
コーヒー「手を出すな!!」
桃「!!!!」
ウガルル「んがっ!!んがっ!!んがっ!!」ドスドスドス
コーヒー「今ウガルルに攻撃したらまた元の霧に戻っちまうぞ!!角の嬢ちゃんの頑張りを無駄にする気か!!」
桃「!!!!!!!!」
コーヒー「俺のことなら気にするな!!それよりもウガルルの気を静めてくれ!!」
桃「え…でも……」
ウガルル「んがっ!!んがっ!!んがっ!!」ドスドスドス
コーヒー「うぐっ!!…がはっ!!」
桃(……力で取り押さえるしか)
???「あ~~~~も~~~~うるっっっっさいわね~~~~!!!!!!!!」
ウガルル「!?」
コーヒー「!?!?」
桃「!?!?!?!?」
???「人の心の中でドタバタ騒がないでくれる!?目が覚めちゃったじゃない!!」
桃「ミカン!!」
コーヒー「なにっ!?」
ウガルル「ミカン!?」
シャミ子「んにゃ……ミカンさん?」
ミカン「二人とも!!殴り合いのケンカはやめなさい!!」
コーヒー「おい、なんで柑橘の嬢ちゃんが目を覚ましているんだ?」
リリス『……ミカンは今、半覚醒の状態だ』
リリス『シャミ子と桃という異物があるなかで、コーヒーとウガルルがケンカしたことで、ミカンの意識が刺激されたのだろう』
シャミ子「……なるほど」
ミカン「てゆうか貴方はいったい誰なのよ?…さっきから違和感なく溶け込んでるみたいだけど」
コーヒー「……もう一人のあんただぜ」
ミカン「貴方が…いやあんたが…」
シャミ子「……ミカンさん?」
ウガルル「ミカン!! アイツ オレノ 敵!!」
ミカン「こうして顔を合わせるのは久しぶりね…ウガルル」
ウガルル「オウ!!」
ミカン「ウガルル……少し静かにしてくれないかしら?私はあれと少し話がしたいの…いい?」
ウガルル「ワカッタ!!」
ミカン「……あんたがコーヒーで間違いないのよね?」
コーヒー「ああそうだ……こうして嬢ちゃんと顔を合わせるのは初めてだな」
コーヒー「……そしてこれが最期になるが」
ミカン「最期!?いきなり何わけわかんないこと言ってんのよ!?」
ミカン「あんたには言いたいことが山ほどあるのよ!!だからこれが最初で最期だなんて言わないでちょうだい!!」
ウガルル「ミカン怒らせタ!!やっぱりアイツ!!」
シャミ子「落ち着いてくださいウガルルさん!!ミカンさんが言ったことを忘れたのですか!!」
ウガルル「んがっ!!そうだっタ!!」
ミカン「まず、あんたはコーヒーバカスカ飲むのをやめなさい!!」
コーヒー「……嫌だ…と言ったら?」
ミカン「この身体はあんたの身体じゃないのよ!?私の身体なのよ!?あんたは私に好き勝手言っていい立場じゃないってことを理解してるの!?」
コーヒー「クッ…考えたこともなかったぜ」
ミカン「はぁ!?」
シャミ子(コーヒーさん…またしてもケンカのバーゲンセールです)
ミカン「あぁっっったまきたわ!!!!本っっっ当に!!!!…ウガルル!!」
ウガルル「なんダ?」
ミカン「あのクソ生意気なコーヒーヤローを八つ裂きにしてちょうだい!!」
ウガルル「任せロ!!!!」
シャミ子「ミカンさん!?ウガルルさんにさっき言ったことを忘れたのですか!?」
ミカン「はっ!!そうだった!!」
コーヒー「それじゃあ俺の方からも一つ言わせてもらうぜ」
ミカン「……生意気なことは言わないでちょうだい」
コーヒー「……嬢ちゃん」
ミカン「……なによ」
コーヒー「……済まなかった」
ミカン「……え?」
ミカン「あら…意外と聞き分けがよかったのね…あんた」
コーヒー「不可抗力といえど」
ミカン「……え?」
コーヒー「……呪いが発動するたびに…嬢ちゃんの時間を奪っちまった」
ミカン「……ちょっと?何を言ってるのかしら?」
コーヒー「……本当に済まなかった…この通りだ」
ミカン「は!?…頭を下げるほど!?」
ミカン「いいじゃないの別に。そんなこと気にしなくても」
コーヒー「良くねぇよ。掛け替えのない嬢ちゃんの時間を奪っちまったことには変わりねぇんだから」
ミカン「それよりもコーヒー飲みすぎなことを気にしてほしいのだけど」
コーヒー「それこそ気にしなくていいことじゃねえか」
ミカン「あんたは気にしなくても私は気にするのよ!!」
コーヒー「……そんなことよりウガルルの様子はどうだ?」
ミカン「え?」
ウガルル「……あっち向いテほイ!!」
桃「…はいシャミ子の負け~」
ウガルル「やっタ!!オレ勝っタ!!」
シャミ子「うぅ…なぜかとても悔しいです…」
コーヒー「……仲良く遊んでやがるぜ」
ミカン「……いつの間に」
ミカン「どう?ウガルル……落ち着いた?」
ウガルル「オウ!!」
ミカン「そうね……じゃあウガルルを説得するのは……」
シャミ子「………」
桃「………」
コーヒー「………」
ミカン「……私がやろうかしら」
ウガルル「ん?」
ミカン「ウガルル、単刀直入に言うわ」
ウガルル「なんダ?」
ミカン「……私の心の中から出て行ってくれないかしら?」
ウガルル「ミカン!?!?なんでそんなことを言うんダ!?!?」
ミカン「えぇっと……」
ウガルル「……そんな!?…オレは…ミカンに…迷惑をかけていたのカ…!?」
ミカン「……ごめんね…貴方が善意でやってくれてたのは分かってはいたんだけど」
ウガルル「オレは…用済みだト…いうのカ…?」
コーヒー「いいや、あんたにはまだやってもらうことが残ってるぜ」
シャミ子「コーヒーさん!!」
ウガルル「オレの…敵!!」
コーヒー「そうだ……俺はあんたの敵だ」
ミカン「ちょっと!?何言ってるのよ!?あんた!!」
コーヒー「……だからあんたは……」
コーヒー「俺を八つ裂きにしてくれ」
ウガルル「んがああああぁぁぁぁ!!!!!!!!」
ミカン「ウガルル!!」
ザシュッ
コーヒー「……ごふっ」ドサッ
シャミ子「!!!!」
桃「!!!!」
ミカン「!!!!」
コーヒー「……いい……一撃……だったぜ」
シャミ子「コーヒーさん!?大丈夫ですか!?」
コーヒー「クッ……大丈夫とは……いえねえなぁ……」
ウガルル「オレの…仕事……無くなっタ」ズズ
リリス『まずいぞ!!ウガルルが溶け始めた!!』
ウガルル「違う……オレ……消えル……」
シャミ子・モモ・ミカン「消える!?!?」
シャミ子「まずいです、非常にまずいです!!」
シャミ子「コーヒーさんはウガルルさんの攻撃を受けて瀕死の状態ですし、ウガルルさんは自分の目的を達成したからか消えかかってるし」
シャミ子「……私は一体どうすればいいのでしょう!?」
コーヒー「……いいじゃねえか……俺のことはほっとけ」
シャミ子「良くありません!!ウガルルさんを外に出せばコーヒーさんも成仏するはずではなかったのですか!?」
コーヒー「……いいじゃねえか……予定しといたやつより一本早い地獄行きの列車に乗っても」
シャミ子「だから良くありません!!」
コーヒー「……遅かれ早かれ俺はもうじき消える…だがウガルルの方はどうだ…?」
シャミ子「!!」
コーヒー「……助かる可能性があるのにそのまま消えていくのを見守っているのか?…嬢ちゃんたちはそれでいいのか?」
ミカン「良くないわよそんなの!!」
シャミ子「ミカンさん!?」
ミカン「ウガルル、貴方に雇い主として命じます」
ウガルル「……?」
ミカン「新しい仕事を見つけなさい!!」
ウガルル「……新しい…仕事?」
ミカン「ええそうよ。でもここに引き籠っても新しい仕事は見つからないと思うわ」
ウガルル「じゃあ…オレはどうすれバ!?」
ミカン「……外に出るのよ」
ウガルル「……外?」
ミカン「ええ!!」
ウガルル「……分かっタ!!オレ、外に出ル!!…それでオレの新しイ仕事見つけル!!」
コーヒー「……決まったみたいだな」
桃「……ええ」
シャミ子「……はい」
ミカン「よし、そうと決まったら!!」
桃「……まずはウガルルを正しい方法で召喚しなおそう」
シャミ子「……それで召喚の儀式に必要なものは?」
ミカン「うーん…ごめんなさい、分からないわ」
桃「ここにいても用意できないと思う」
シャミ子「では起きましょう!!」
コーヒー「……なぁ…ウガルル……」
ウガルル「なんダ?」
コーヒー「……俺はまだくたばってねえぜ?」
ウガルル「!!!!」
コーヒー「……じゃあな」
―――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――
ミカンの部屋
桃「それじゃあ改めてウガルルの召喚に必要なものを考えよう」
シャミ子「はい!!」
ミカン「うーん…ごめんなさい、分からないわ」
シャミ子「うーん…ごめんなさい、私も分かりません」
桃「うーん…こういうのに詳しそうなのは……」
ミカン「……私たちだけではどうにもならなさそうだからみんなに協力を求めましょう」
シャミ子「そうですね、そうしましょう」
良子「あれ…良になにか用?」
杏里「ん?なに…うちに手伝ってほしいこと…?」
小倉「嬉しいな……私を頼ってくれるなんて……」
白澤「……分かった。それで僕は何をすればいいのかね?」
リコ「ほんほん、それをうちに作ってほしいと?…ええよ~」
―――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――
――――――――
シャミ子「ウガルルさん!!かも――――――――ん!!」
ウガルル「んが…オレ…外…体アル…」
シャミ子「やった……成功です!!」
ウガルル「新しイ体すごく馴染ム!!オレ新しい仕事何すればいイ?」
ミカン「そのことなんだけど……」
ウガルル「んが?」
ミカン「貴方はもう使い魔とは呼べないくらい複雑な存在になってるの」
ミカン「だからこの町でウガルル自身のやりたい仕事を見つけるの。それが貴方の新しい仕事よ」
ウガルル「仕事を見つけルのがオレの仕事?ミカン…オレまたバグりそウ」
ミカン「大丈夫よ。みんなが手伝ってくれるはずだから……きっと見つかるわ」
ミカン「だから……これから頑張るのよ……ウガルル!!」
ウガルル「んがっ!!」
後日
ミカン「シャミ子…こないだはありがとう」
シャミ子「いえ、いいんです。ミカンさんの呪いが解けたのも…ウガルルさんを外に出すことができたのも…」
シャミ子「みんながいてくれたからこそできたことなんです」
ミカン「そんな謙遜しなくてもいいのよ?」
シャミ子「いえ、事実ですから……あとそれと」
ミカン「?」
シャミ子「……あの後、機会を見て何度かミカンさんの心の中に潜ってみましたが…コーヒーさんの姿を見つけることはできませんでした」
ミカン「そう……ならきっとあいつは行くべきところに行ったのでしょうね」
シャミ子「そうですね……そう信じましょう」
ミカン「シャミ子……はいこれ」
シャミ子「……なんですか…これは?」
ミカン「私からの感謝とお礼の気持ちよ……受け取ってちょうだい」
シャミ子「……そういうことでしたらありがたく頂戴します」
シャミ子「ミカンさん、今ここで開けちゃってもいいでしょうか?」
ミカン「ええ」
ガサガサ
シャミ子「ん?……これは……?」
シャミ子「袋の…コーヒー豆?」
ミカン「……大事に使ってやってちょうだい」
シャミ子「……ミカンさん」
ミカン「……何かしら?」
シャミ子「……お礼は不用品の処分という意味ではありませんよ?」
ミカン「……まだ足りないの?」
シャミ子「違います!!そういうことではありません!!」
ミカン「あいつが無駄に購入したものがまだまだ大量にあるから欲しくなったらいつでも言ってちょうだい」
シャミ子「やっぱり不用品じゃないですか!!」
ミカン「だって私はコーヒー飲まないもの……そんなものはいらないわ」
シャミ子「はっきり言いましたね!!コーヒー豆はいらないって!!」
ミカン「クッ…嬢ちゃん……俺が厳選した豆の良さがわからないのかい?」
シャミ子「……なんですか?コーヒーさんの真似ですか?」
ミカン「どう……似てた?」
シャミ子「いえ全然。コーヒーさんにしては雰囲気が軽すぎます」
ミカン「そう……まだまだ修行が足りないわね」
桃「……二人とも、何をやってるの?」
シャミ子「桃!!」
ミカン「ちょうどいいところに来たわね」
桃「え、なに?……ちょうどいいって?」
シャミ子「桃!!これを差し上げます!!」
桃「え?…なにこれ?」
ミカン「それじゃあ私もあげるわ!!」
桃「え?…いやだからこれは何?」
ミカン「それじゃあ私は用があるからもう行くわね」
桃「え?…いやだからちょっと」
シャミ子「……あぁそうだ。私も用事を思い出したのでおいとましますね~」
桃「え!?ちょっと!!…シャミ子まで」
桃「……中身はいったい?」ガサガサ
桃「……コーヒー豆……それじゃあこっちは?」ガサガサ
桃「……コーヒー豆……もしかして……二人は私にコーヒー豆を押し付けたかったの…?」
桃「……これで勝ったと思うなよ」モ゙ーン
頑張れまぞくたち!!今、そしてこれからを生きて出会いと別れの経験を積んでいくんだ!!