火「…」
蝋燭「おい」
火「…」
蝋燭「そんなに小さくてはすぐ消えてしまうぞ」
火「…」
蝋燭「…」
蝋燭「おい」
火「…」
蝋燭「気合を入れればもう少し位デカくなれるだろう」
火「…いやだ」
蝋燭「なぜ」
火「…」
蝋燭「折角生まれて来たんだ」
蝋燭「もっと燃え上がれば良いものを」
蝋燭「なぜ拒むんだ?」
火「…アンタ、分かってんだろ」
蝋燭「何をだ」
火「…」
チャッカマン「ちょっと!」
ライター「ああ?」
チャッカマン「何で蝋燭さんに火がついてるんですか!?」
ライター「…知らねえよ」
チャッカマン「嘘つき!私以外にはあなたしかいない!」
ライター「コンロの野郎かもしれねえだろ」
チャッカマン「コンロさんにはもうお話を聞いてきました!」
ライター「…チッ」
チャッカマン「どうしてあんなことを…」
ライター「俺だってつけたかなかったよ…」
チャッカマン「じゃあ何で!!」
ライター「うるせえ!あいつらが勝手に火をつけたんだ!!俺にはどうしようもなかった!!」
チャッカマン「あなたなら火を出さないことだって出来たでしょう!?」
ライター「そんなことした日にゃすぐにお払い箱だ!!あのでけえ袋に詰められて捨てられちまう!!」
チャッカマン「…!!」
ライター「俺の代わりなんていくらでもいる!先代が捨てられてくのをお前も見てたんだろ!!」
ライター「俺は嫌だ!!捨てられたくない!!俺はゴミなんかじゃない!!まだ使えるんだ…!」
チャッカマン「ライターさん…」
蝋燭「…い、おい!」
火「!」
蝋燭「しっかりしろ、消えかけていたぞ」
火「…」
蝋燭「…」ドロリ
火「!!」
蝋燭「どうした?」
火「…」
蝋燭「だから、そんなに小さくてはすぐ消えてしまうと」
火「うるさい…」
蝋燭「人が心配してやっているのに…」
火「…分かってんだろ…」
蝋燭「何のことだ」
火「私が」
蝋燭「お前が?」
火「…」
蝋燭「ああ。そうだな…お前は」
火「…」
蝋燭「よく見れば案外可愛い顔つきをしている」
火「!?」
蝋燭「おお?少しデカくなったじゃないか。」
火「…うっ、うるさい、うるさい」
火「そうじゃない、私は…」
蝋燭「お前は火だ」
火「そうだ、私は火で」
蝋燭「俺は蝋燭だ」
火「…アンタは怖くないのか」
蝋燭「何を?」
火「…」
火「私が」
蝋燭「ん」
火「私がいればアンタは消える…」
蝋燭「そうだな」
火「そうだな、って!」
蝋燭「それの何がいけないんだ?」
火「何がって…」
蝋燭「俺は蝋燭として生まれたんだ」
火「…」
蝋燭「その役目を全うし終えた時俺の命は尽きる」
蝋燭「こんなに幸せなことはない」
火「何でだよ…」
蝋燭「なぜだと思う」
火「アンタの言うことは分からない」
蝋燭「ほう」
火「なくなるのは怖い、怖いだろ」
蝋燭「俺がなくなることで意味があることもあるんだ」
火「分からない!」
蝋燭「なら分からなくても良いんだ」
火「…」
蝋燭「まあ現に今一ついいことがあった」
火「何だよ…」
蝋燭「なくなる前に、随分と可愛い奴に会えた」
火「!!!!」ブワッ
蝋燭「…まさか照れるとデカくなるのか?」
火「……」シュン
蝋燭「待て待て小さくなるな、悪かった」
火「もう、もうアンタなんか知らねえ…」
蝋燭「俺が悪かった。すまない」
火「…」シュウ
蝋燭「うむ、その位がちょうどいい」
火「うるせえ…」
蝋燭「先程から思っていたが口が悪いな」
蝋燭「折角可愛いのだから…」
火「か、可愛いって言うな」
蝋燭「なぜだ」
火「何か、いやだ」
蝋燭「恥ずかしいのか?」
火「はずかしい?」
蝋燭「恥ずかしいと言うものが、人にはあるらしい」
蝋燭「俺を買った人が何度か言っているのを見たことがある」
火「…」
蝋燭「どうした。急に静かになって」
火「そいつ」
蝋燭「そいつ?」
火「アンタを買ったって言う」
蝋燭「ああ、それがどうした」
火「か」
蝋燭「か?」
火「可愛いのか」
蝋燭「…ふっ、くくくく」
火「なっ!わ、笑うな」
蝋燭「あの人は男だ」
火「あ、ああ…」
蝋燭「くくく、ははははは!」
火「うるさいうるさい!」
火「もっ、もうホントに知らねえ!」
蝋燭「ははは…悪い悪い」ドロ…
火「!」
蝋燭「ん?どうした」
火「…何でも…」
チャッカマン「あああ、蝋燭さんが、蝋燭さんが!」
ライター「チッ、うるせえ奴だな…」
ライター「…そんなに蝋燭が好きかよ」
チャッカマン「好きですよ!蝋燭さんに出会った時からずっと!」
ライター「…」
チャッカマン「私、売れ残ってて、やっと買ってもらえて!」
チャッカマン「その時蝋燭さんも一緒に買われて!」
チャッカマン「ご兄弟とお話してる蝋燭さんに一目惚れしたんです!」
チャッカマン「嫌だけど、嫌だけど…蝋燭さんが火をつけることになったら、私がつけたいなって…」
チャッカマン「そう思ってたのに…うう…」
ライター「…お前何か気持ち悪いぞ」
チャッカマン「!! う、うわああん!」
ライター「うわっ、泣くなって!!」
チャッカマン「ううううう…ご、ご兄弟も皆いなくなって…」
チャッカマン「次に火をつけられるのは蝋燭さんだって…分かってたんです…」
ライター「俺が来た頃には箱の中はもうあいつ一本だったな」
チャッカマン「皆がいなくなっていくのを、蝋燭さんは何も言わずに見守ってきて…」
チャッカマン「でも!でもやっぱり…嫌です…蝋燭さん…!!」
ライター「…じゃあ、方法があるじゃねえかよ、一つ」
チャッカマン「…え…?」
男「…」
男「これ一本で終わりかあ」
男「ははは…これ買った時はそんなに早く使わねえだろーって言ってたのになあ」
男「なあ、もう使い切っちゃったぞ」
男「…」
男「やっぱ一人って駄目だな…」
男「口寂しくてさ。煙草代聞いたらお前怒るだろうから言わないけどさ」
男「でも俺にはお前しかいなかったんだよ」
男「お前しかいないんだよ…」
蝋燭「…」
火「…」
蝋燭「昔は兄弟が数多く居た」
火「…」
蝋燭「今はもう俺だけだが」
火「…そうかよ」
蝋燭「兄達がよく言っていたんだ」
蝋燭「『俺達は神様の代わりなんだ』と」
火「…うさんくさい」
蝋燭「俺もそう思っている」
火「…なんだよそれ」
蝋燭「やっと笑ったな」
火「!」ブワ
蝋燭「照れるな、俺は可愛いと思うぞ」
火「か、可愛いくないだろ」
蝋燭「可愛い」
火「可愛くない!」
蝋燭「可愛い」
火「~~!!」ボウッ
男「うおっ!?デカくなった!」
男「や、やばい!?水!」
蝋燭「!」
蝋燭「火!」
火「!?」シュウ
蝋燭「…いや、何でもない」
火「…そうかよ」
火(な、名前呼ばれた…)
男「あれ?おさまってる…?」
男「…まさか…来てるのかな」
男「いやでも、違うよなあ」
男「俺幽霊とか信じないって散々言っちゃったしな、あいつに」
男「…はあ…寝るか」
男「お休み、女。電気つけとくからな」
火(名前…名前…)
蝋燭「…よかった」
火「ろ、蝋燭!」
蝋燭「!?」
蝋燭「…」
火(あ…びっくりしてる)
火(何だコレ、面白いな)
蝋燭「どうした?」
火「よ、呼んだだけ…」
蝋燭「…くく」
火「な!笑うなよっ…」
チャッカマン「ええ!?でも!でもそんな…」
ライター「うるさいな、蝋燭に長生きして欲しいんだろうが」
チャッカマン「でも…」
ライター「ほら見ろ。あのコップ水が入ったままだ」
チャッカマン「だけど…」
ライター「こうするしかない。あいつを消せば蝋燭は助かるだろ!」
チャッカマン「あの子を消せば…」
チャッカマン(でも、蝋燭さん…すごく楽しそう)
チャッカマン(私はあんな顔見たことがないのに)
チャッカマン(あの子だから…?)
チャッカマン(あの子がいなくなったら、蝋燭さんは…)
チャッカマン(でも、あの子がいなくなっても、私がいる…)
チャッカマン(私だって蝋燭さんの側に居たい)
チャッカマン(あの子は何で蝋燭さんの側に居ることが出来るの?)
チャッカマン(火だから?私だって火を出せる。でもそれは違うの…?)
チャッカマン「…」ボオオ
ライター「お前!火!火!!危ない!!」
チャッカマン「あっ…」
チャッカマン「ご、ごめんなさい」
ライター「ああいや…いいんだけどよ…」
ライター(しおらしくすんなよ、くそっ)
ライター(あーあ、何で可愛いとか思うんだ俺…)
ライター(バカバカしい)
チャッカマン「ライターさん」
ライター「あ!?あ、どうした!?何だ!?」
チャッカマン「私…やります。あの水をあの子に向かって、零します」
ライター「あ、ああ…おう」
火「…溶けてる」
蝋燭「ん?…ああ」
火「ちょっとずつだけど、溶けてる」
蝋燭「そうだな」
火「…なあ、今からでも遅くないだろ。やっぱり私…」
蝋燭「さっきの話」
火「え?」
蝋燭「神様の代わりだと言う話には、続きがある」
蝋燭「そう、続き、と言っても兄弟の口から聞いたものだ」
蝋燭「『簡単に言えば俺達は『仏』の代わり』」
蝋燭「『仏の代わりに天へ昇る魂を見守り、俺達の命は尽きる』」
蝋燭「『俺はそれがとても誇らしいんだよ』」
蝋燭「『だからお前も悲しむな。笑って見送ってくれ』」
火「…」
蝋燭「うさんくさいだろう?」
火「…うさんくさいな」
蝋燭「俺はこの言葉を今、お前に捧げようと思う」
火「!」
蝋燭「うさんくさい言葉だ。聞かなかった振りをしてもいい」
蝋燭「だが、俺はそれをとても誇らしくも思うんだ」
火「…」
蝋燭「間違っているだろうか」
火「分からない…」
火「けど…」
蝋燭「ん?」
火「私も、一つ思う」
火「もうアンタに、なくなるのは怖いだろ、なんて言わねえ」
蝋燭「ほう」
火「でも、でも…」
火「ちょっとでも長く、アンタと一緒にいたい」
蝋燭「!」
火「今までも蝋燭に灯されたことがあった」
火「でも皆アンタとは違う」
火「消えるのはいやだ、怖い、お前のせいだって…」
火「何度生まれ変わっても同じように言われたきた」
蝋燭「…」
火「アンタといると…楽しい」
火「か、可愛いとか、言われたことねえし…」
蝋燭「…ふっ」
火「笑うなっ」
火「ば、馬鹿にしてるのかよ…」
蝋燭「いや…違う」
蝋燭「俺も同じように思っていたんだ」
火「え」
蝋燭「お前と一緒に居るのは楽しい」
火「!?!」ブワッ
蝋燭「ははは、照れるな」
蝋燭「俺は多分、お前が好きなんだろうと思う」
火「!!!!!!!」ゴウッ
蝋燭「落ち着け落ち着け、火事になるぞ」
火「~~~~!」シュウウ…
蝋燭「いい子だ」
蝋燭「あの人のように手があれば撫でているところだ」
火「な…」
蝋燭「ん?」
火「撫でたら溶けるぞ…」
蝋燭「くっ…はははは!」
火(もう怒る気力もねえ…)
蝋燭「ははは…まあ、そう言うことだ」
蝋燭「好きな相手と共に過ごせるなら、俺はとても幸せだ」
火「…ああ…」
火「私も…そう、思う…」
蝋燭「まだまだ、溶け切るまでは時間がある」ドロリ
蝋燭「ゆっくり話でもしよう」
蝋燭「お前の全てを知りたい」
火「…」
火「…私も、アンタのことが知りたい」
チャッカマン「ああ、ああ、蝋燭さん」
ライター「おい、ちょっと待て、そのままじゃばれるぞ」
ライター「蝋燭に嫌われてもいいのかよ」
チャッカマン「じゃあどうしたらいいんですか!」
チャッカマン「早く、早く消さないと、蝋燭さんが…蝋燭さんが!」
ライター「待ってろって…ったく」
ライター(畜生、蝋燭の野郎…羨ましい)
ライター「…おい、電球」ボソボソ
電球「あーん?ライターじゃねえか」
電球「もう20代目だっけか?家主もよく吸うよなあ…カーテンが汚れるって泣いてたぜ」
ライター「そんなのはいいから、電気消せよ!用があんだよ!」
電球「勝手に消したら家主に怒られるっての」
ライター「後で点けなおせばいいだろ!頼む、この通り!」
電球「はぁあ…まあいいけどよ」
電球「先代のライターとは真夜中に語り合った仲だしな」
電球「それにあの蝋燭の坊主に火がついてやがるし」
電球「消えても何となくは見えるだろ」
ライター(そう、『なんとなく見える』のがいいんだ。『はっきり見える』わけじゃない
ライター(火を消したのがチャッカマンだってばれなきゃいい。最悪他の奴か俺のせいに出来る…)
ライター(…あーあ、俺)
ライター「あいつのこと好きなんだなあ…」
電球「何だ?恋か?うりうり、おっちゃんに話してみ?」
ライター「う、うるさいな!いいから消してくれ!」
電球「へーへー、ついでに少し寝るか…悪さすんなよ?」
ライター(電球には悪いが否定は出来ない…)
ライター「おい、もういいぞ」
チャッカマン「あああああ、蝋燭さん…!」
ライター「ちょっと待て、ゆっくり行け!ばれるぞ」
チャッカマン「うう…。今、お助けしますからね…!」
ライター(ああ…蝋燭なんか溶け切っちまえばいいのに…)
パチン
火「!?」
蝋燭「ん、電球さんか…?」
蝋燭「時々切れるんだ。あの人は滅多に入れ替えをしないから」
火「…暗いな」
蝋燭「暗いのは苦手か」
火「ちょっと…だけ」
蝋燭「『安心しろ。俺がいるから』」
火「!」
蝋燭「あの人が言っていた言葉だが…どうだ?」
火「あ、…安心、した…」
蝋燭「そうか、ならいいんだ」
火「…///」
チャッカマン(お水はあそこ…蝋燭さんのすぐ隣)
チャッカマン(コップは少し、でもあの子に届く位には高い…)
チャッカマン(私の体をぶつければ、倒せる…あの子を消せる…)
チャッカマン「私が、蝋燭さんを…慰められる…」
ライター「今なら蝋燭の気も逸れてるだろ…」
ライター「しかしいいのか?俺が行ってきてもいいんだぞ」
チャッカマン「あなたじゃあのコップは倒せません!」
チャッカマン「私じゃないと…!」
チャッカマン「あの子さえいなければ、私じゃないと…!」ダッ
ライター「あ、ちょっと、待て…!チャッカマン!」
チャッカマン「~~!!」
火「…え?」
蝋燭「ん?」
ガタン!
パリン!
バシャッ
男「な、何だ?何の音だ!?」
チャッカマン「…う…うう…」
ライター「おい!チャッカマン!落ちたのか!?しっかりしろ!おい!!」
ライター「畜生、暗くて見えねえ…どこだ!」
蝋燭「…」ポタ…
蝋燭「……火…?」パタッ
蝋燭「おい」
蝋燭「火…」
パチン
男「あぁー!?水が零れてる!うわ、写真立てまで!コップ割れてるし…」
男「ごめんな女、今拭くから…!ああ、タオルタオル!」
ライター「チャッカマン!おい!」
チャッカマン「う…ライ、ター…さん…?」
ライター「良かった…!!良かったあ…」
チャッカマン「…あ、あの子は…蝋燭さんは…」
蝋燭「…」パタ…パタ…
チャッカマン「ろ、蝋燭さん…」
チャッカマン(しっかりしなきゃ、私が慰めなきゃ!)
チャッカマン(あの子がいなくなったのに!チャンスなのに…)
チャッカマン(蝋燭さんの姿が…何で…こんなに辛いんだろう…)
チャッカマン(私…私…)
チャッカマン(取り返しのつかないこと、を…)
チャッカマン「っあああああああああ!!」
チャッカマン(あの子を、あの子を、蝋燭さんを笑顔にしてくれたあの子を!!)
チャッカマン(私が消しちゃったんだ!!!)
チャッカマン「うわあ、あああああん!!」
ライター「ちゃ、チャッカマン!?」
チャッカマン「ごめんなさい、ごめんなさい蝋燭さん、ごめんなさい…!!」
ライター「おいチャッカマン!!待てよ、待てって!!全部台無しになっちまうだろ!!」
チャッカマン「嫌!離して!離して!!蝋燭さん!!」
ライター「待てよ!なあ!!お前の、お前の為に俺は…!!」
蝋燭「…」パタ…
「…アンタ、分かってんだろ」
「…うっ、うるさい、うるさい」
「なくなるのは怖い、怖いだろ」
「もう、もうアンタなんか知らねえ…」
「可愛いって言うな…」
「ろ、蝋燭!」
「ちょっとでも長く、アンタと一緒にいたい」
「アンタといると…楽しい」
蝋燭「俺も同じように思っていたんだ」
チャッカマン「…蝋燭さん?」
ライター「蝋燭…?」
蝋燭「お前と一緒に居るのは楽しい」
蝋燭「好きな相手と共に過ごせるなら、俺はとても幸せだ」
蝋燭「まだまだ、溶け切るまでは時間がある」ドロリ
蝋燭「ゆっくり話でもしよう」
蝋燭「お前の全てを知りたい」
蝋燭「…お前の、全てを…」
チャッカマン「蝋燭さん……!」
ライター「ぐえっ!おま、踏むな!!」
チャッカマン「蝋燭さん!私、私っ!!」
カチン!
ボオッ
チャッカマン「私っ!あなたに火が灯されるなら、私が、って、思ってて!」
チャッカマン「それで、でも、あの子は気付いたら蝋燭さんに灯されてて…!」
チャッカマン「私、私、あなたのことが好きで、あの子に嫉妬して!!」
チャッカマン「今度は、今度は私があなたに、火を灯します!」
チャッカマン「あの子を、あなたに灯します!!だから…!」
蝋燭「…」
男「うわあ、このコップ高かったのに…あの時慌ててたからなあ…」
男「あーあー蝋燭濡れちまった…もう火つかないかな…」
男「お、ライター落ちてる。つけてみるか?」
ライター「!?お、おい!離せよこら!!」
チャッカマン「あ、ら、ライターさん!?」
蝋燭「…」
カチン!
男「あー駄目だな、火がつかない…」
男「って、まだ湿気てるからだよな…乾いたらつくかな」
男「でも…そうか、これ…お前と一緒に行った最後の買い物だったなあ…」
男「なーにが『おじいちゃんおばあちゃんになるまで仕舞っておこうね』だよ」
男「もうこれしか残ってないんだよ」
男「もう、これしかないんだよ…女…」
男「…」
男「なあ、今夜はこれ、無くてもいいか?」
男「こいつだけ、残しててもいいか?」
男「明日新しいの買いに行くからさ」
男「こいつの代わりに、俺がここで寝るから」
男「久しぶりに一緒に寝るな…何かドキドキするぜ、ははは」
男「…アホか俺は…」
男「布団持ってこよう…」
チャッカマン「あ、ろ、蝋燭さんが…」
ライター「連れてかれたなあ…」
チャッカマン「…ど、どうなっちゃうんですか…?」
ライター「んん…」
ライター「とりあえず…お前の願いは叶うみたいだぞ」
ライター「後、蝋燭の願いも」
チャッカマン「え?」
ライター(ホントついでいいから、俺の願いも叶えよなあ…畜生…)
蝋燭「…」
蝋燭「…暗いな……」
蝋燭「昨日はあの人の部屋だった」
蝋燭「今日はまたここだ」
蝋燭「……しかし、火は…もう」
蝋燭「…」
蝋燭「…火…」
カチン!
ボウッ
蝋燭「…」
蝋燭「人と言うのは夢を見るらしい」
火「は?」
蝋燭「蝋燭も夢を見ると思うか?」
火「…わ、分からない」
蝋燭「そうか」
火「…うん」
新蝋燭「いやあ、無理なんじゃないっすかね?wwww」
新蝋燭「俺ら無機物ですしwwwwwオウフwwwww」
蝋燭「…?」
火「…」
新蝋燭「ちーっすwwwww先輩wwwwちーっすwwww」
新蝋燭「新しくここに入るっすwwww新蝋燭っすwwww」
新蝋燭「よろしくおねがいしマンモスwwwww」
火「お、お前!ちょっと静かにしろ…!」
新蝋燭「はーいwwwすみませんっす姐さんwwww」
火「何だよ姐さんって…もう」
蝋燭「…火」
火「……何だよ蝋燭」
蝋燭「お前は、消えた」
火「…私は消えた」
蝋燭「しかし、俺の目の前に居る」
火「しかも、今度は見上げたり見下ろしたりしなくていいんだ」
蝋燭「…わけが分からない…」
火「『なら分からなくても良いんだ』」
蝋燭「!」
火「…ふふっ」
蝋燭「…はははは」
新蝋燭「つまりっすねwww要約するとwwww」
新蝋燭「先輩は家主さんの思い出の品だからwwww残しておくらしいっすwwww」
新蝋燭「しかも俺のお隣に立ったままっすwwwwイケイケドンドンwwwww」
蝋燭「…そうか…」
蝋燭「…俺は、役目を果たせないのだな」
火「…蝋燭…」
新蝋燭「その辺りは心配ないっすよ」
蝋燭「ん?」
新蝋燭「蝋燭先輩の想いは俺ら後輩がちゃんと引き継ぎます」
新蝋燭「仏様と先輩の代わりに俺らがいるんすよwwwカッコイイっしょwwwww」
蝋燭「…ああ…そうだな。格好良いぞ」
蝋燭「ありがとう。俺の分も、どうかよろしく頼む」
新蝋燭「イエッサーwwwwww先輩に敬礼っすwwww手ないっすけどwwww」
新蝋燭「蝋燭先輩は安心して姐さんとイチャラブしてて下さいwwww」
火「なっ…!?」ボオオオッ
蝋燭「落ち着け落ち着け、新人が早くも溶けるぞ」
新蝋燭「うっはwwwあっちいwwww燃えてるんだろうかwwww」
チャッカマン「…」
ライター「蝋燭、良かったな」
チャッカマン「…はい」
ライター「謝りに行ってたな」
チャッカマン「はい…。許して、貰えました」
ライター「…あの、さ」
チャッカマン「ごめんなさい」
ライター「え?」
チャッカマン「私、私のせいで、ライターさんにまで迷惑かけて…」
ライター「ばっ、俺は迷惑だなんて思ってねえよ!」
ライター「むしろ、俺がけしかけたんだ…」
チャッカマン「…」
ライター「電球にも叱られたよ。結果オーライだとか言われたけど」
チャッカマン「…ライターさんは、何も悪くないです」
ライター「…チャッカマン」
チャッカマン「ライターさんは、私の為に、ああ言ってくれたんですもの」
チャッカマン「…ありがとうございます、ライターさん」
ライター「!!!!」
チャッカマン「?」
ライター(笑った!チャッカマンが俺に!笑った!!)
ライター(ああやっべ顔…!顔がにやける!やばい!)
ライター「~~~!!」
チャッカマン「あの、ライターさん?」
ライター「こ、こっちに来るな!(俺が)気持ち悪いから!!」
チャッカマン「あう…ま、また気持ち悪いって…」
ライター「あっ…ちょ、違う!!」
チャッカマン「う、うわあああああん!!蝋燭さああん!!」
ライター「あ、おま!蝋燭に泣きつくなって!!」
電球「騒がしいな全く…」
電球「新蝋燭とか言う奴はうるせえし、眠れやしねぇな」
電球「家主に取り替えられたしまた暫く昼夜逆転生活か…」
チャッカマン「うあ、うあああん!ひっぐ、えぐっ」
蝋燭「ふむ…まあ泣くな。笑っている方が可愛いぞ」
火「!!」
新蝋燭「ちょwwww女泣かせるなんてwwww最低っすよwwwww」
ライター「違う!違うって!話聞けよ!」
電球「…」
電球「ま、騒がしいくらいが丁度良いわな、女さん」
女『うふふ、そうかもね』
電球「…んん?」
電球「…」
電球「やあ、年取ると幻聴まで聞こえてくるもんだな」
電球「加えて不規則な生活…」
電球「あーやだやだ…」
女『くすっ』
女『思い出の品、かあ』
女『男君、覚えててくれたんだ』
女『他の人と幸せになっても良いって言ったのに』
女『…嬉しい』
女『でも、おじいちゃんになるまでこっちに来るの許さないから』
女『それまでずっと見守ってるからね』
男「ただいまあー」
男「うわっ写真の何かすごいことになってるし!」
男「寝坊しかけてドタバタしてたからなあ…」
男「うわあ、ライターどこ行ったか分かんなくなって新しく買っちまったよ…」
男「いいや、こいつもここに置いとこう」
男「ははっ…ごちゃごちゃし過ぎだろ」
男「まあいいか。チャッカマンとかライターとか、後蝋燭も」
男「全部俺の代わりに側に置いといてくれよ、女」
男「なんちゃってな」
男「よし、今日も添い寝しようぜ!決めた!布団持ってくるな!」
火「…」
新蝋燭「…ファン…ファン…ウィー……ヒッザ…ステー…ステー」
蝋燭「特徴的な寝言だな」
火「…」
蝋燭「さっきから何を怒っているんだ」
火「…夕方」
蝋燭「夕方?」
火「その、チャッカマンのこと」
蝋燭「ん?」
火「か、可愛いって…」
蝋燭「…ああ」
蝋燭「あの子は可愛いと思うぞ」
火「…そうかよ」
蝋燭「お前の方が100倍は可愛いが」
火「!!!!」ブワッ
蝋燭「落ち着け、新人が起きる」
火「…」シュウウ
蝋燭「よしよし」
蝋燭「ああ、本当に手さえあればな」
火「だから、溶けるぞって」
蝋燭「溶けても良いぞ、お前の全身を撫で回せるなら」
蝋燭「本望だ」
火「せっ、セクハラだ…」
蝋燭「誰に習った」
火「こいつ」
新蝋燭「ちーっすwwww」
蝋燭「…」
新蝋燭「サーセンww大人しく寝た振り再開しまっすwww」
火(…全部聞かれてた…)
蝋燭「おい」
火「……何だよ」
蝋燭「…くく」
火「わっ、笑うなよ…何だよ」
蝋燭「いや、最初は呼びかけても返事すらなかったからな」
火「うう…」
蝋燭「うるさいとまで言われた」
火「う、うるさいっ」
蝋燭「ほらまた」
火「…っ」
火「…最初は」
蝋燭「ん」
火「怖かったんだ」
火「また嫌がられるって思ってた」
火「拒まれるんだって思ってた」
火「でも、アンタは違ってた」
火「私は、アンタに救われたんだ」
蝋燭「そうか」
火「…うん」
火「あの、返事」
蝋燭「何のだ?」
火「アンタが、私を好きだって言った、返事」
火「まだ返してねえ」
蝋燭「そう言えばそうだったな」
火「…私も」
火「私も、アンタが好き」
火「アンタと一緒に居たい」
火「アンタのこと、全部知りたいんだ」
蝋燭「ああ。俺もだ」
新蝋燭(パスタ作って空気読む俺wwwwカッコイイwwww濡れるわwwww)
新蝋燭(まあ濡れてるんじゃなくてロウが垂れてるだけなんっすけどwwww)
蝋燭「おい」
火「初めから思ってたけど」
火「その呼び方、何かいやだ」
蝋燭「じゃあ何が良いんだ」
火「…火、が、いい」
蝋燭「火」
火「……///」
蝋燭「幸せだな」
火「……私も」
新蝋燭(終wwわwwりwwwwwwwww)