1 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 00:45:05.33 4jWHhRIC0 1/69

「あぁ、ついに明日からロンドンかぁ」

「楽しみだなぁ」

「でもそんな旅行を最大限に楽しむためにも、ちゃんと準備をしないと」

「備えあれば憂いなしって言うし、何かあってからじゃ遅い」

「とりあえず、お腹痛くなっても大丈夫なように正露丸はいるだろうな」

「あと、湿布に包帯、バンドエイド」

「律や唯がはしゃいで転んだりするかもしれないし」

「それに虫除けスプレーもあれば何かと役に立つかもだし、携帯用トイレもあった方がいいよな」

「で、なんといっても自分の枕。部屋が変わるとナイーブな私は寝れなくなっちゃうから、せめて枕は自分のものじゃないと」

「あと、それから……」



4 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 00:46:11.83 4jWHhRIC0 2/69

 翌朝

律 ピンポーン

「あ、おばさんおはようございます。澪の準備できてますか?」

「長野原の方のみおちゃんじゃなくて」

「ええ、長野原の方のみおちゃんじゃなくて、あ、ですから、長野原の方のみおちゃんじゃなくてですね」

「あの~だからですねー、日常の長野原の方のみおちゃんじゃなくて」

「ですから、長野原の方の……。あ、いいですいいです。なんでもないです。はい、すみません」

「……」


6 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 00:47:01.54 4jWHhRIC0 3/69

 ガチャ

「じゃあ、行ってくるねママ」

「おはよう、律」

「はよーん! 長野原じゃない方の澪ちゃん」

「んん?」

「あ、だから、日常の長野原じゃない方の……いや、もういいや」

「なんか律のテンションおかしくないか?」

「当たり前だろ。なんたって初海外だぞ! テンション上がらないほうがおかしいだろ!」

「まったく……。その調子で皆に迷惑かけるなよ」

「わーってるって。じゃあ、駅に向かってしゅっぱ……」

澪 ガラガラガラ

「って!? スーツケース3つ!?」


8 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 00:48:06.45 4jWHhRIC0 4/69

「この旅行を楽しむために必要な物を選んでたらこれだけの量になったんだ」

「いや……持ってきすぎだって」

「何かあってからじゃ遅いからな。それにこれでも吟味して必要最低限のものに絞ったんだ」

「そんなに心配しなくても大丈夫だって」

「旅行を、海外をナメるな! その気の緩みが大切な一生の思い出になるはずだったものに傷を付けるんだ!」

「ああすればよかったのに……。って後悔したって初海外は戻ってこないんだぞ!」

「まぁ、澪がそこまで言うんだったら……」

「じゃあ、律はこっちお願い」

「は? なんで澪の荷物を私が?」

「さすがにひとりで3つは無理だし」

「でも、自分の荷物だろ」


10 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 00:49:16.15 4jWHhRIC0 5/69

「はぁ……。お前は何もわかっちゃいないな」

「な、何がだよ」

「自分だけのためならこれひとつでも余るくらいだよ。私は皆が旅行中に不便な思いをしないようにと考えてこれだけの量の荷物になったんだ」

「まぁ、それはありがたいけど」

「だから、むしろ私がひとつで律が3つコロコロと持っていくのが普通なんだけど、3つはさすがに可哀相だから、私が妥協して2つずつコロコロと持って行こうって話じゃないか」

「なんかおかしい気がする」

「ほら、早く行かないと待ち合わせ時間に遅れるぞ」

「あ、待てよ。って、一番重そうなの残していくなよ!」


11 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 00:50:00.37 4jWHhRIC0 6/69

 … … …

「はぁ……、着いた……」

「まだ唯と梓は来てないみたいだな」

「あのさぁ~」

「なに?」

「いくら用意周到にしといた方が良いっても、いったいこれだけの量何持ってきたんだよ」

「まずはお腹痛くなっても大丈夫なように正露丸だろ」

「うんうん」

「あと、怪我した時のための湿布に包帯、バンドエイド」

「うんうん」

「なんかは現地でその都度調達すればいいかなって思ったから持っていくものリストから全部外して」

「うんう……。うん?」


12 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 00:50:46.01 4jWHhRIC0 7/69

「とくに、薬とかはあっちの税関やらで面倒臭そうだし」

「じゃあ、何を持ってきてこれだけの量に……」

「全部ぬいぐるみだよ」

「……は?」

「せっかく海外に行くんだから、私の可愛いぬいぐるみたちにもその楽しさを分けてあげないと可哀相だろ?」

「これ、全部ぬいぐるみなの?」

「まず、お気に入りのウサちゃんは当然として」

「最近人気に陰りが見えてきたコアラさん。そのコアラさんと入れ替わるように頭角を現してきたペンギンさん」

「それから、人間の脳髄を好んで啜ってそうな、なんだかわからないさんとスパイスが効きすぎたトラさんに絶好調な星さん」

「で、あとは……」


14 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 00:52:23.86 4jWHhRIC0 8/69

「いや、別に何持ってきたかとか聞いてないから」

「あと、途中で言ってた乳酸菌塗れっぽいのはペンギンじゃなくてツバメだから」

「いや、ペンギンだろ」

「う~ん……。まぁ、そうなんだけどさぁ……」

「もしあれをツバメと言い張るんなら今度からお前のことを巨乳ちゃんって呼ぶからな」

「訳わかんないし。しかもなんかちょっと屈辱的だし」

「ってか、あれだけ皆のためとか言っといて結局全部自分のためじゃねーかよ!」


15 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 00:53:38.00 4jWHhRIC0 9/69

「私、夜はぬいぐるみに囲まれてないと安心して眠れないんだよぉ」

「だから、あっちのホテルで眠れない日々が続くと寝不足になって体調を崩して結果皆に迷惑かけちゃうかもしれないだろ」

「そういう意味でも、これは旅行中皆が楽しく過ごすためにとても大事なものなんだ」

「まぁ、わかるようなわからないような……」

「もしかしたら私はぬいぐる症かもしれない……」

「なんだそれ……」

「こんな歳になってまでひとりじゃ寂しくて寝れないなんて、なんだか自分が情けないよ……」

「澪……」

「笑いたければ笑えばいいよ……」

「あのさ、澪。こんな事言うのはちょっと恥ずかしいんだけど……」

(あ、なんかいっぱい喋ったから喉渇いたな。あっちの自販機で何か買ってこよ)

「ロンドンのホテルでは私たち同じ部屋なんだから、そのさ……」

「ぬいぐるみなんか無くったって私が一緒に寝てやるって!」

「って、あれ? 居ない……」


17 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 00:54:49.01 4jWHhRIC0 10/69

「おーい、りっちゃーん、おはよー」

「ああ、おはよ……」

「あれ? なんか元気ないね」

「ん? ああ、ちょっとな」

「てか、なんか荷物多くない?」

「あ! もしかして、りっちゃんスーツケースに弟くん詰めて持ってきたとか!?」

「あ~も~。だったら私も憂持ってくればよかったよ~」

「怖いこと言うなよ! んなわけねーだろ!」

「私のはこれ1個。あとは全部澪のだよ」

「ってことは、あと3つあるからひとつは澪ちゃんの着替えとかとして……あと2つは澪ちゃんのお父さんとお母さん!?」

「だから違うって! ちょっした事件になっちゃうだろ、それじゃ」

「えへへ、なんか変にテンション上がっちゃって、もうボケずにはいられない! みたいな」

「まぁ、その気持はわからないでもないけどな」


18 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 00:55:26.28 4jWHhRIC0 11/69

「おはようございます先輩」

「あ、あずにゃんおはよー」

「よっ、梓」

「なんか荷物多くないですか?」

「澪ちゃんのらしいよ全部」

「いったい何を持ってきたらこれだけの量に……」

「ぬいぐるみらしい」

「これ全部ですか!?」

「なんでもぬいぐるみに囲まれてないと安心して眠れないんだと」

「意外でした……」

「可愛いよね」

「それにしてもこれだけの量だと移動も大変そうですね」

「そうなんだよ。実際澪んちからここまで苦労したしな」

「ところでその澪ちゃんは?」

「いや、なんか気づいたら居なくなってて……」


19 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 00:56:26.26 4jWHhRIC0 12/69

「お、みんな揃ったな」

「澪ちゃんおはよー」

「おはようございます、澪先輩」

「お前急に居なくなって、どこ行ってたんだよ」

「いや、喉渇いたからあっちの自販機で何か買ってこようと思ってさ」

「それならそう声かけてくれればいいのにさ……」

「なんか律が急にモジモジしてボソボソ喋りだしたもんだから、うわぁ……こいつ気持ち悪いなぁ……、って思ってとりあえず放置しとこうかなって」

「酷い扱いだ……」


20 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 00:57:54.24 4jWHhRIC0 13/69

「そんなことよりちょっと聞いて聞いて」

「どうしたんです?」

「あっちの自販機にさ、お金入れても相性が悪いのか何度も何度も戻ってきてね」

「なんでかなぁ~って小銭確認したら、それが薄めの石でさ~」

「なんで財布に石入ってんだよ……」

「私それに気づくまで薄めの石を何度も何度も投入してたんだと思うと、なんだか可笑しくなってきちゃって」

「自販機にしてみれば、お前何時代の人間やねん! って話だよな」

「はじめ人間ギャートルズでも、もうちょっとましな石のお金持ってるだろうし」

「いつになく澪先輩が饒舌だ」

「なんか澪ちゃんも荒ぶってるねぇ」

「今日は初っ端からこんななんだよ……」


21 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 00:58:43.43 4jWHhRIC0 14/69

「ところで、澪先輩。この荷物全部ぬいぐるみって聞いたんですけど」

「ああ、そうなんだ。よかったら梓も寝る時に貸してやろうか?」

「いえ、私は大丈夫です」

「遠慮するなよ。あれだったらこのバッグごと貸してあげるから」

「け、結構です……」

(こいつ、梓にも自分の荷物運ばせるの手伝わす気だ)


22 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 00:59:36.19 4jWHhRIC0 15/69

「そ、それよりもそろそろ電車来るんじゃないですか?」

「だな、ぼちぼちとホームに上っとくか」

「よ……っと!」

「スーツケースだとホームに上るだけでも一苦労だね」

「ですね」

「こんなに持ってこなきゃよかった……」

「今更かよ……」

「ところで澪ちゃん」

「なんだ? ぬいぐるみだったらいくらでもこのバッグごと貸すぞ」

「じゃなくて、これ全部ぬいぐるみってことは澪ちゃんの着替えとかは持ってきてないってことなのかなって思って」

「さすがにそんな訳ないだろ」

「あ」

「え?」

「お、おい。まさか……」


23 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 01:01:03.60 4jWHhRIC0 16/69

「どどど、どうしよう律。準備はしてたんだけど、持ってくるの忘れちゃったよぉ~」

「どうしようたって……。そろそろ電車来るし……」

 プップ~

「あれ? あの車なんでしょう?」

「うちの車だっ!」

「澪ちゃんの着替え届けてくれたのかな?」

「ちょっと行ってくる!」

「はぁ~、よかったですね」

「けど更に荷物が増えるわけだが……」


24 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 01:02:28.89 4jWHhRIC0 17/69

「みんな~。私のその荷物こっちまで持ってきてくれないか」

「どうしたんです?」

「いや、せっかくだから、家に持って帰ってもらおうと思ってさ」

「いやいや、必要だから持ってきたんじゃないのかよ。夜寝れないんだろ」

「って言っといて、持って行かない~」

「……」

「その辺はあくまで私の自由だからな」

「あ~、自由って素晴らしいよね~」

「ああ、私は自由が好きなんだ」

「ただの我儘を自由なんて表現でぬるくするなよ」


25 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 01:03:23.30 4jWHhRIC0 18/69

「なっ! 我儘じゃないぞ! むしろぬいぐるみを持って行かないことは逆に大人になるために必要なことなんだ!」

「なんとかひとりでも寝れるようにこの旅行中に挑戦するんだ!」

「澪ちゃん偉い!」

「都合のいいこと言いやがって。持ってくのが面倒になっただけだろ」

「まぁまぁ、律先輩。これで荷物も減るわけですし」

「それもそうか」

「この私の英雄的な決断に救われたな」

「お前が言うなって」

「あ、電車来たよ」

「よ~し! じゃあムギの駅に向かってしゅっぱ~つ!」


26 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 01:04:58.49 4jWHhRIC0 19/69

 … … …

『終点~ムギの駅~ムギの駅~』

「いやぁ~。ムギの駅に着いたなぁ~。まぁ、ムギの駅って駅名はどうかと思うけど……」

「電車通学がしたい娘の希望を叶えるために家の近くに駅を建造させて、そこまで線路を延長させちゃうんだもんな」

「お金持ちはスケールが違うねぇ」

「きっとこの鉄道会社の大株主だったりするんでしょうね」

「みんな~」

「よっ、おはようムギ」

「ごめんね、うちのプライベードジェットが使えないばっかりに狭くて小さいエコノミークラスに乗ることになっちゃって」

「本当なら大丈夫だったはずなんだけど、急にアラブの石油王の接待が入っちゃってどうしても駄目だったの……」

「気にしないで下さい。ムギ先輩」

「でも、こう言うのもなんだけど、私、一度でいいからエコノミークラスに乗ってみるのが夢だったのぉ~」


28 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 01:06:00.74 4jWHhRIC0 20/69

「親友にこんな並外れた金持ちが居るっていうのに、ちゃんと自分たちで旅費を出すんだから、私たちはとんでもない良識派だよな」

「まぁ、ムギからしたらこれくらいは端金だろうし、普通だったら、なんとなく出してもらえそうだもんな」

「もう! りっちゃんも澪ちゃんもそんなこと言っちゃダメだよ!」

「私たちは常に対等な間柄だからこそ強い絆で結ばれているんだよ!」

「唯先輩がまともなことを……」

「ところで唯。ギターの代金ムギに返したのか?」

「ムギちゃん! その荷物持つよ!」

「ありがとう。でもすごく重いわよ?」

「うをっ!? いったい何が入ってるの? これ」

「いいかげん返せよ」


29 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 01:07:17.61 4jWHhRIC0 21/69

「まぁ、私たちもムギ先輩のおかげで部室ではタダで飲み食い出来てる訳ですけどね」

「よし! 皆でムギの荷物を運ぼう!」

「なんてったって私たちは親友だからな!」

「別に気にしなくていいのに」

「じゃあ、もし不況の煽りをくって会社が倒産しちゃっても返せとか言うなよ?」

「澪先輩、ちょっと一言多いです」


31 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 01:08:16.12 4jWHhRIC0 22/69

 空港

「りっちゃん、りっちゃん! 見て見て!」

「マジか! 本当にあんな鉄の塊が飛んでるよ!」

「さすがにここまで来たらテンション上がりますね!」

「な、なぁムギ」

「何? 澪ちゃん」

「トイレどこかな?」

「お手洗いだったら、この先を左よ」

「本当に?」

「え? うん」

「なにそんなに疑ってるんだよ」

「いや、私この空港初めてだし、ちょっと不安になるじゃないか」

「ムギはここに何回も来てるだろうから大丈夫だろ」


32 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 01:08:54.58 4jWHhRIC0 23/69

「トイレこの先左なんだな?」

「間違いないはずだけど」

「本当にこの先左なの?」

「え、ええ……」

「ほら、早く行って来いって」

「ってかさ、右の可能性はないの?」

「えっと、もしかしたら右にもあるかもしれないけど……」

「ほらぁ~! やっぱりぃ~! 危うく騙されちゃうところだったよ~」

「あっぶね! あっぶね!」


33 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 01:10:44.89 4jWHhRIC0 24/69

「澪ちゃんどうしちゃったの?」

「ちょっと朝からテンションおかしいんだって」

「ロンドンに一番行きたがってたのは澪先輩ですからね」

「まぁまぁ、たかが海外でそこまでテンションがおかしくなるほど変になっちゃうなんて逆に羨ましいわ」

「あ、ブン殴りたい」

「ぶって!!!!!!」

「あずにゃん、ムギちゃんにとってはご褒美になっちゃうからやめといた方がいいよ」

「ですね」


34 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 01:11:52.49 4jWHhRIC0 25/69

「おいぃ~、緊急事態の私を放ったらかしにしてそっちでなんか楽しい感じになるなよぉ~」

「この私のおしっこ我慢してる最中のクネクネした動きにもちょっとは触れてくれよぉ~」

「もうそんなんになってるんだったら早く行ってこいって」

「だ~か~ら~、左に行けばいいのか右に行けばいいのかって話だろ」

「左に行けばあるんだって」

「そりゃいずれはあるだろうけどさぁ。重要なのは実際左と右とではどっちの方が近いかってところだろ」

「もう限界きちゃってるんだから、遠い方に行っちゃったら大変なことになるんだぞ!」

「だったらそんなん言ってる間にもう左に行ってこいって!」

「私から選択肢を奪うなよ! お前は何様だ!」

「ああ! もう! なんなんだよ!」

「あ……」

「あ?」

「えっと……うん。なんかトイレはもういいや……」


35 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 01:13:44.96 4jWHhRIC0 26/69

「いやいやいや! 待て待て!」

「安心しろ。こんなこともあろうかと大人用紙オムツを穿いてきてるんだ。準備は万全にしとかないとな」

「女子高生が想定するような事態じゃねーし」

「でも、なんか凄く気持ち悪いから速攻脱いで捨ててきたい」

「さっさと行ってこい」

「おかげでなんでオシメが濡れると赤ちゃんが大泣きするのかわかったよ」

「またひとつ大人の階段を上っちゃったな」

「私には滑り落ちているようにしか見えないがな」

「りつぅ~。ついて来て」

「やだよ、ひとりで行ってこいって」

「お漏らししたんだぞ!? そんな人間をひとりで行かせるのか!?」

「なんだか澪の将来が心配になってきた」


36 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 01:14:35.24 4jWHhRIC0 27/69

「うぅ~……」

「ったく、仕方ないな」

「やった! 律大好き!」

「よ、よせやい!///」

「あ、律! この空港限定のスイーツだって!」

「じゃあ、オムツの処理のあとに買ってやるよ」

「わーい! やっぱり律が一番だよ!」

「3つ買ってやろうな、3つ」

「私は将来律先輩が悪い大人に騙されたりしないかの方が心配になります」


38 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 01:21:31.43 4jWHhRIC0 28/69

 ロンドン ヒースロー空港

「やっと着いたね~」

「あ~、間違いなくロンドンだな。この空気感は」

「とりあえず、荷物もあることだし、先にホテルにチェックインして荷物預けてから観光しましょ」

「そうですね」

「じゃあとりあえず外に出てタクシー拾うか」

 ウィ~ン ビュォォォォォォォォッ

「寒っ!」

「ロンドンの寒さだ」

「あ、あっちにあんのタクシーじゃね?」

「そうみたいですね」

「なんか可愛い~」

「おい、ちょっと待て」


39 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 01:22:26.73 4jWHhRIC0 29/69

「え? なに?」

「私が渾身のボケを放ったっていうのに見事にスルーか」

「え? な、なんか言ったっけ……」

「『ロンドンの寒さだ』って言ったんだぞ」

「私、ロンドン初めてなのに」

「あ~、うん……」

「初めてのくせになにロンドン上級者気取ってんの? ってツッコミ入れるとこだろ!」

「いや、私もロンドン初めてだから、へ~、これがロンドンの寒さなのかって」

「なに逆に感心しちゃってるんだよ」


40 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 01:23:31.45 4jWHhRIC0 30/69

「しかもその前にロンドンの空気感とかおかしなこと言ってネタ振りしていたにも関わらず」

「こっちも初ロンドンでテンション上がってるからそこまで気づかないっていうか」

「ロンドン行きの希望が叶った私がテンション上がりすぎてついつい出たボケをしっかりツッコんでくれないとこれ以降テンションだだ下がりになっちゃうだろ!」

「今までどれだけ律のボケを私が拾ってきたと思ってるんだよ! たまには私のボケにも付き合ってくれてもいいだろ!」

「わ、悪かったって」

「じゃあもう一回」

「やり直すの!?」


41 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 01:24:21.97 4jWHhRIC0 31/69

 ウィ~ン ビュォォォォォォォォッ

「ロンドンの寒さだ」

「お前ロンドン初め……」

「ロンドンの空!」

澪 カシャ

「ロンドンのタクシー!」

澪 カシャ

「ロンドンの英語!」

澪 カシャ

「ロンドンに居る~、私たち!」

澪 カシャ

「……おい」

「これが本物のトリオ漫才」ゴクリ…

「これから大丈夫かな……」


42 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 01:26:13.55 4jWHhRIC0 32/69

 … … …

「なんかお腹空いたな」

「結構色々と歩いたしね」

「ホテルの場所間違えるわ、梓が調子乗って新しい靴なんて履いて来るから靴擦れおこすわ」

「すみません……」

「いや、私も調子に乗ってロックっぽい服とか言っちゃったからおあいこだな」

「ロックっぽい服なんて一切興味もないのに、ちょっとロンドンっぽさを出すためについつい言っちゃった」

「そ、そうですか……」

「ところで今夜のディナーは何にする?」

「そろそろそんな時間だもんな」

「私は何でもいいよ、お寿司でも」

「ロンドンに来てまで寿司かよ」

「いや、とりあえず言ってみただけだから。基本何でもいいよ」


43 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 01:28:01.91 4jWHhRIC0 33/69

「ロンドンって言ったらあれだよね。えっと、チャゲアンドアスカだっけ?」

「もしかしてフィッシュアンドチップスの事ですか?」

「そうそう、それ」

「間違え方が大雑把すぎだろ」

「でも、いくらイギリスだからってちょっと安易じゃありませんか?」

「まぁ、私は皆に合わせるから好きに決めてくれてもいいよ。別に寿司でもいいけどな」

「ここは海外の経験が多いムギの意見を聞いてみよう」

「そうね~。別に地元ってことにこだわらなくてもいいんじゃない?」

「正直、イギリスは食事には期待できないし」

「そっか~。そういうもんか」

「だからいっそのこと中華とかタイ料理にしてみるとか」

「それがアレだったら寿司でもいいしな」

「あえて焼肉とかな」

「焼肉でもいいし、寿司でもいいし」

「お前本当は寿司しか食いたくないんじゃないの?」


44 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 01:29:02.77 4jWHhRIC0 34/69

「あ! 見て見て! SUSHIって看板があるよ!」

「回転寿司ですね」

「回るの!?」

「あ~もう、他探すの面倒だし、なんかムギが興味津々だし、私はとくにこだわりはないけど、もうここでいいんじゃないかな」

「どうしてもお前は自分の提案で寿司が食いたいってことにしたくないんだな」

「だって、もし不味かったら提案した人間の責任問題になっちゃうだろ」

「どこまでネガティブ思考なんだよ」

「でも、もう私お腹空いちゃったよ~」

「私もです」

「そうだな。逆にロンドンで寿司ってのも有りっちゃ~有りかもな」

「お手並み拝見させてもらおうか。ロンドン!」


45 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 01:30:19.28 4jWHhRIC0 35/69

 … … …

「ロンドン怖い……」

「酷い目にあいましたね……」

「結局何も食べさせてもらえなかったしな」

「そこだよ、そこ」

「どうしたの? 澪ちゃん」

「普通はライブのお礼に何か食べさせてくれてもいいだろうに。終わった瞬間に追い出された」

「でも、私たちはラブクライシスじゃなかったから」

「いや、演奏が終わって追い出される瞬間まであっちは私たちのことをラブクライシスだと思ってたはずだ」

「だから先に本家ラブクライシスが入っていって演奏したとしても同じように終わった瞬間サンキューゴーホームって展開だろう」

「それっておかしくないか?」

「た、確かに……」


46 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 01:31:41.56 4jWHhRIC0 36/69

「イギリス人は紳士だって話だけど、とんだ嘘っぱちだな」

「開店祝いに演奏した人間に対して寿司折りのひとつも持たせずほっぽり出すなんて」

「ケチなんて表現じゃ、もはや生温い」

「でも、あの支配人さんっぽい人、なんかジェントルマンを捨てた感じだったわよ」

「それは私も思いました」

「そっか。やっぱりどこの国でもオカマは厚かましいんだな」

「あ、あんまりそういうこと言うなよ」

「もうなんかロンドンに来てからいいことひとつもないよな」

「まだ、これからだって」

「明日だって、観光部分はテーマソングの間に適当にやっちゃう感じだろ?」

「そういうことも言うなって……」


47 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 01:33:49.91 4jWHhRIC0 37/69

 翌日

「いや~、ロンドン堪能したな~」

「具体的に言うとワンコーラスの長さくらい堪能したな」

「だから、そういうこと言うなって」

「結局アビィロードも渡ったのかどうか全然わかんなかったし」

「印象に残ったのは唯が犬の糞を捨てる奴に手を突っ込んでたってくらいだし」

「今の段階ではロンドン=糞のイメージしかないわけだけど」

「でもそこの公園のリス可愛かったよね~」

「確かにあのリスは可愛かったけど、ちょっとリスには乗れないしな」

「あと、唯はそれ以上近づくなよ」


48 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 01:34:26.95 4jWHhRIC0 38/69

「ふぇぇ~。りっちゃん、澪ちゃんが冷たいよ~」

「いや、わかったから、それ以上近づくなって」

「ムギちゃん、あずにゃ~ん」

「ちょっと、それ以上は……」

「とりあえず、今日お風呂入るまでは離れていてください」

「お風呂入ってからもう一度親友としてやり直そう」

「うん、わかった……」


49 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 01:36:02.03 4jWHhRIC0 39/69

「ところで唯」

「なぁに?」

「さっきリス可愛いって言ったけど」

「うん」

「それちょっと重複してるぞ」

「重複って、なに?」

「表現が2重になっちゃってるってこと」

「いや、なってないだろ」

「リスって言えば可愛いし、可愛いと言えばリスだろ」

「リスは可愛いけど、他にも可愛いものなんていっぱいあるだろ」

「あと、この際だから言っとくけど、唯の作詞したごはんはおかず。あれも、色々と炭水化物と炭水化物で重複しちゃってるからな」

「それはそういう歌だろ!」


51 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 01:37:20.56 4jWHhRIC0 40/69

「だったらあれか!? 私も夜の夜霧とかそういうような詞を作ってもいいのか!?」

「それは完全に重複してっから!」

「金持ちのムギ」

「あ、重複してる!」

「してないしてない」

「焼き鳥にしたら美味しそうな鳥」

「もうなんなんだ、それは」

「なんかそこに鳥がいっぱい居るから」

「可愛いですね」

「まぁ、乗れないけどな」

「その点馬はいい。乗れるから」

「さっきから言ってるけど、お前の動物の基準は乗れるか乗れないかだけなの?」

「でも、怖いから馬にも乗らないけどな。怪我とかしたら嫌だし」

「結局乗らないんだ……」


52 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 01:38:36.28 4jWHhRIC0 41/69

「いや、だって過去にあんなことがあったんだぞ。だから乗れるような動物にも乗れなくなって当たり前じゃないか」

「何があったの?」

「いや、ちょっと恥ずかしいことだから……」

「聞きたいです!」

「なんなの? 恥ずかしいエピソードに極端に喰い付いてくる梓はいったいなんなの?」

「なんか前に私が着崩したときもひとり頬を染めて『おおっ!』とか言ってたし、空港でのノーパン疑惑のやりとりの中でもほんのり良い感じに赤くなってたし」

「梓はあれか? そういうのなのか?」

「そ、そういうのじゃないです……」

「嘘つけ! あずキャットなんて可愛い愛称付けられて調子に乗ってるけど、私に言わせれば梓はあずファックだよ!」

「あずファック! あずファック!」

「や、やめて下さい!」

「あずファック! あずファック!」

「お、おい、澪。もうやめてやれって」


54 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 01:39:34.25 4jWHhRIC0 42/69

「いや、なんかちょっと声に出して言うと気持ちいいぞ」

「あずファック! あずファック!」

「本当だ! 声に出して言いたい日本語だよ!」

「日本語か?」

「あずファック! あずファック!」

「ムギまで……」

「本当……。すごくキレがいいわ! ぜひりっちゃんも言うべきよ!」

「そ、そうか? じゃあ……」

「あずファック! あずファック!」

「マジだ、超気持ちいい」

「だろ?」


55 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 01:41:32.45 4jWHhRIC0 43/69

「あずファック! あずファック!」

「あずファック! あずファック!」

「あずファック! あずファック!」

「あずファック! あずファック!」

「あずファック! あずファック!」

「あずファック! あずファック!」

「あずファック! あずファック!」

「あずファック! あずファック!」

「あずファック! あずシット!!」

「あれ? 澪ちゃんはもう言わないの?」

「ああ、私はもういいよ。それより」

「オー ジャパニーズ ゲイシャガール ソークレイジー」

「お前たちが日本女性の権威を相当貶めてしまったぞ」

「……」


57 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 01:42:18.12 4jWHhRIC0 44/69

「そんな事より澪先輩の恥ずかしい話はまだですか!?」

「梓ちゃん逞しくなったわねぇ」

「澪先輩の恥ずかしい話の前では些細なことです」

「やっぱり、梓はそういう奴だったんだ」

「決してそういうんじゃありません!」

「そうか……」

「まぁ、いいや。そこまで聞きたいなら話してあげるよ」

「そう、あれは確か……」

「……」

「……」

「……」

「ま、昔の話だよ」

「言えよ! 口パクパクしてただけじゃん!」


58 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 01:43:03.07 4jWHhRIC0 45/69

「お、鋭いツッコミだな」

「恐縮です」

「律も見習えよ」

「嫌だよ」

「で、結局話してくれないの?」

「ムギも喰いつくねぇ」

「私も聞きた~い」

「でも、本当に恥ずかしいんだって」

「そんなこと言わずに聞かせてくれよ」

「まぁ、律がそこまで言うなら」

「さすが幼馴染!」

「澪ちゃんの心の故郷!」

「いや~、どもども」


59 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 01:44:31.38 4jWHhRIC0 46/69

「あれは小学校の修学旅行で奈良公園へ行ったときのこと」

「当時からやんちゃな律が無理矢理鹿に乗ろうとして振り落とされた挙句、後ろ足で蹴られたっていう」

「それを見てから、乗れそうな動物でも乗るのって怖いというものを刷り込まれたんだ」

「私の恥ずかしい話かよ!」

「りっちゃん恥ずかし~」

「うっせうっせ!」

「チッ」

「澪の恥ずかしい話じゃなかったからってあからさまに舌打ちするなよな!」

「その後しこたま先生に叱られたよな」

「鹿に乗って叱られる律」

「面白くねーから!」

「まぁ、その叱った先生は生徒の母親との不倫がバレて2年前にクビになったらしいけど」

「別にその情報はいらないだろ!」


61 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 01:45:42.28 4jWHhRIC0 47/69

「そんな律は今度馬にも乗って同じような事になっちゃえばいいよ」

「馬と鹿で馬鹿ってか! 上手くねぇよ!」

「バカな律」

「あ! 重複してる!」

「してねーし!」

「って、話してる間にロンドン・アイに着いたわ」

「見事な場面転換です、ムギ先輩」

「うふふ、ありがと」

「結構無理矢理じゃん……」

「じゃあ、私はここでみんなの荷物番やってるから」


62 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 01:47:09.96 4jWHhRIC0 48/69

「え~、なんで~」

「せっかく来たんだし、澪も一緒に乗ろうぜ」

「いや、いいよ私は、いいよ私は」

「観覧車なんか危ないって。絶対怪我するから」

「な、なんで?」

「絶対ゴンドラ外れて下に落ちるから!」

「外れないって! ってかそんなことになったら怪我じゃ済まないだろ!?」

「国内で温泉旅行の方が良かったんじゃね~のかな~」

「そんなことね~んじゃね~のかな~」

「もう私は寝てたいよ、ホテルに帰って寝てたい」

「いや、そんなこと言わずにさ」

「どうせ私たちの番になって乗り込もうとしたら定員になっちゃってなぜか私だけが違うゴンドラに乗せられるんだろ」

「そんなことないだろ」


63 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 01:48:23.75 4jWHhRIC0 49/69

「そして、違うゴンドラにひとり乗せられた私は屈強なジョンブルたちに好奇の目で見られる」

「そのあとはお察しの通り、回る観覧車の中で輪姦されるんだ」

「ベッカムみたいな素敵な男どもに『へっへっへ、俺のビックベンはどうだ』とか言われながら」

「そして私は『私のクイーンエリザベス号の処女航海はまだ先よ!』と訴えかけるも、もはや男たちは聞く耳を持たない」

「そんなロンドン・アイ内で行われる行為に愛なんてものは存在しないんだ」

「ロンドン怖い……」

「お前が怖いわ」


65 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 01:52:08.36 4jWHhRIC0 50/69

 … … …

「って感じでロンドンの卒業旅行を楽しんできたわけなんだけど」

「あのさ」

「え? なに?」

「もう教室ライブが始まって20分くらい経つのに卒業旅行の話ばっかりでまだ1曲もやってないんだけど」

「しかもその話の内容も散々だし」

「いや、みんなも私たちの卒業旅行の話聞きたいかなって思ってさ」

「だとしても、もっと話すべきことがあるだろ」

「野外ライブの話とか」

「いや、ライブは話なんかで聞くよりも実際の演奏の方がいいだろ?」

「なにちょっとカッコイイこと言ってんだよ。だったら、さっさと始めろよ」

「わかってるって」


66 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 01:54:58.45 4jWHhRIC0 51/69

「じゃあ1曲目は五月雨20ラブです」

「この曲は本当だったら学園祭で演奏するはずだったんだけど、どういう訳か唯が作詞した曲を2曲ともやることになって」

「なんか見えざる力で抹殺されかかった私の五月雨20ラブなんだけど、今回晴れて日の目を見る運びとなりまして」

「この詞の意味としては恋に臆病な女の子の揺れ動く気持ちを私なりに表現してみました」

「曲のテーマは『SEXは二十歳を過ぎてから』です。それでは聞いてくだ……」

「いやいや! 待て待て!」

「なんだよ」

「え? マジでそんな歌なの?」

「そうだけど」

「え~……。なんかさ、なんていうか、ちょっとショックだわ……」


67 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 01:56:55.73 4jWHhRIC0 52/69

「うっそだよ」

「な、なんだよ~、冗談かよ~。ビックリさせんなよ~」

「本当のところはせめて二十歳までは処女でいようという奥ゆかしい女性の決意を……」

「一緒だよ! ちょっと言い方変えただけじゃん!」

「まぁ、あっちのホテルでは律が私のベッドに入ってきて、危うく貞操を奪われかけたわけですけど」

「お、お前がひとりじゃ寂しくて寝れないとか言ったからだろ!」

「でも、まさかマッサージと称してあんなことするなんて思わなかったし……」

「ばっ! バカ! こんなところでそんなこと言うなよ!」

「私そういうのじゃないですからぁ!」

梓 ピクッ

「んん~? どうしたんだ梓」

「もしかしたら唯先輩は私の事を……とかいうような変な勘違いをしてしまったって顔してるぞ」

「いえ……別に……」


68 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 01:58:31.85 4jWHhRIC0 53/69

「それじゃあ、ここでブリティッシュジョークをひとつ」

「歌始まれよ!」

「ちゃんとこのあとで歌うから」

「絶対だぞ」

「ある日、後輩の梓がこう言ったのさ」

「も~! たまにはお茶の前に練習しましょうよ! って」

「だから私はこう言ってやったのさ」

「ん~。まぁそうだな。たまにはな」

「ってね」

「普通の話!?」


69 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 01:59:29.00 4jWHhRIC0 54/69

「そしたら唯がこう言ったのさ」

「あ、まだ続いてたのね」

「あずにゃんの方が先輩みたいだね」

「ってね」

「さっ、それでは聞いてください。五月雨20ラブ」

「ジョークどこ行った!?」



アカネ「な、なんか音楽性変わったのかな……」

エリ「音楽性って言うよりも芸風かな……」

アキヨ(これや! ウチが求めてたもんは全部このバンドにあるで!)


70 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 02:00:56.71 4jWHhRIC0 55/69

 … … …

「じゃあ、次で最後の曲です」

「聴いてください。U&I!」

「キミがいないと何もできないよ~♪」

(ふふっ。唯ったらあんなにはしゃいじゃって)

(ほらほら、そんなに飛び跳ねてたらスカート捲れ……)

「!?」パシャパシャパシャパシャ!!

(ふぅ……。机を舞台にしてちょっと高くしたのが功を奏したわね)

姫子「あとで一枚ちょうだい」
   (訳・真鍋氏~真鍋氏~www拙者にもユイタンのパンチラ写真恵んじくり~www)

「オッケー」
  (訳・フヒヒwww立花氏~お主も好きよのぉ~wwwww)

慶子「なんか意外と真鍋さんと立花さんって仲良いよね」

信代「どっちも唯の保護者って感じ」

「大人だよね」


71 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 02:02:17.13 4jWHhRIC0 56/69

「思いよ~ 届け~♪」

 ガチャ!!

堀込「ここで俺登場!」

さわ子「私も居るわよ!」

「せ、先生!?」

「やばっ!?」

「ちょっと演奏ストップストップ!」

堀込「続けてもいいぞ。こいつのバンドに比べたら可愛いもんだ」

さわ子「恐縮です」

「先生のお許しも出たことだし、続けるか」

「そういう問題じゃない」

「いったいどういうことなの?」


73 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 02:03:22.24 4jWHhRIC0 57/69

「この空間には今まで女性しかいなかったんだ」

「だからこんな短いスカートでどれだけ飛び跳ねてパンチラしようが、まぁ、同性だしいっかってなってた」

「でも、あとで和のカメラは没収します」

姫子「!?」

「しかしその均衡も男である堀込先生が来たことで破られてしまった」

「とくに曲のフィニッシュは激しくなりがちだしパンチラどころじゃ済まない」

「律なんてそんなこととは関係なしにもうずっと見えっぱなしだ」

「うっ……。そう言われれば……」

「確かに。男の人に見られるのはちょっと……」

さわ子「安心なさい。堀込先生は男にしか興味がないから」

堀込「恐縮です」

「そっちのが問題だ」


74 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 02:04:47.18 4jWHhRIC0 58/69

 … … …

「さぁ、あとはあずにゃんの歌を完成させるだけだよ」

「だけって、それが一番大事なことだろ」

「そうだ、メロディが出来たの」

「聞かせて~」

「うん」

「……」

「!?」

「ど、どうした!?」

「ちょっと聴いてみてよ」

「よし」

「どれどれ」

「……」

「こ、これはすごいぞ!」

「ああ、すっごい演歌だな」


75 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 02:05:39.89 4jWHhRIC0 59/69

「さすがムギちゃん!」

「私たちが求めていたものはこれだよ!」

「すごく頑張ったの。そう言ってもらえると嬉しいわ」

「え? いいの? 本当にこれでいくの?」

「逆に律はどういうのだったらいいんだよ」

「いや、もっと真面目ってか、梓への贈り物なんだから真剣にした方がいいっていうか」

「別に演歌がふざけてるとかそういう事じゃなくて、だけど、ちょっと私たちがやるのは違うかなって」

「りっちゃんは梓ちゃんに感動して欲しいとか?」

「そうそう! 今まであんまり真剣に練習しなかったからさ。最後くらい超真面目にして泣かせちゃうくらいのものにしたいよな~って」

「はぁ……。相変わらず律はバカだな」

「重複してる!」

「だからしてないって」


76 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 02:06:20.68 4jWHhRIC0 60/69

「感動させていったいどうしたいんだよ」

「いや、やっぱ最後くらいはいいとこ見せたいじゃん」

「普段はおちゃらけてて、いざ最後ってときだけ真剣にやって、結果やっぱり先輩たちは凄い! って思わせたいってことか?」

「そんなのはヤクザの手口だぞ」

「そう言われると返す言葉もございません……」

「人の道を踏み外しちゃいけないわ!」

「親が泣いてるよ!」

「そこまでじゃないだろ!」

「私たちは私たちらしくいくのがいいんだよ」

「演歌はどう考えても私たちらしくないけどな」

「その心意気がだよ」

「よくわかんないけど、もう面倒臭いからそれで納得するよ」


77 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 02:07:15.29 4jWHhRIC0 61/69

 卒業式当日

「あずにゃん、こっちにおいで」

「いったい今から何が始まるんですか?」

「実は梓のために曲を作ったんだ」

「え。本当ですか!?」

「梓ちゃんのことを想って一生懸命作ったの」

「それでは聞いてくれ」

「ファイナル紅茶」


78 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 02:07:50.74 4jWHhRIC0 62/69

「お前のことは 今日で忘れよぉ~」

「部室でひとり 黄昏てよぉ~」

「まな板見てると 思い出す~」

「おんまぁ~えのぉ~ ペッタリしたパイオツをぉ~」

「これを飲んだら卒業」

「アッサムのミルクで終わるよ」

「ファイナル~ 紅茶ぁぁぁぁ~♪」

「……」

(梓……なんかごめん……)


79 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 02:08:25.46 4jWHhRIC0 63/69

「20万円のことは 今日で忘れよぉ~」

「楽器屋でまけた 20万円忘れよぉ~」

「20万円あれば 何でも買えた~」

「20万円の~ ペッタリした色んなお菓子をぉ~」

「これを淹れたら卒業」

「アッサムのミルクで終わりよ」

「ファイナル~ 紅茶ぁぁぁぁ~♪」

「……」

「……」

(唯も黙っちゃったよ……)

(でも、まぁ、あとはアウトロでこの曲も終わりだし)


82 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 02:09:51.96 4jWHhRIC0 64/69

「あれ? これダージリンだな」

「?」

「なぁ、ムギ。これダージリンなんだけど。私アッサム頼んだよね?」

「あ、ごめんなさい。すぐアッサムに替えるわ」

(おいおい……寸劇が入るとか聞いてないし……)

「いや、もう飲んじゃったからいいよ」

「ううん。すぐ替えるわ」

「あ、じゃあ替えて」

「ちょっと時間かかっちゃうけど」

「なんで? すぐ替えるって言ったよね? なんで急に時間かかるって言ったの」

「ごめんなさい。ぼーっとしちゃって」

「今朝、眉毛の手入れしてたものだから……」

「知らないよ、関係ないじゃないか眉毛の手入れしてたとか」

「あと全然太いままだし」


83 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 02:10:59.44 4jWHhRIC0 65/69

「ごめんなさい。お詫びと言ってはなんだけど、これ」

「なにこれ?」

「私の力でも開けるのに苦労したバームクーヘン」

「無理だよ。ムギであれだけ苦労したんなら、私だったら絶対に開けらんないよ」

「やっほ~! お茶しにきたよ~」

(唯も参加してるってことは、知らなかったのは私だけかよ……)

「あ、唯ちゃん。今日で卒業だしそろそろ楽器代返してもらいたいんだけど」

「あ、なんか急用思い出しちゃった。じゃ~ね~」

「なんか随分慌ててたな」

「そうね~」

「貯金ゼロだな」

「貯金ゼロ、でしょうね」

「返す気もゼロだな」

「返す気もゼロ、でしょうね」


84 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 02:11:46.42 4jWHhRIC0 66/69

「あのさ」

「なに?」

「はやくアッサム作ってくんないかな。返す気ゼロでしょうね、とか繰り返さなくていいから」

「すぐ作るわ。本当にごめんなさい」

「ファァァァイナルゥゥゥゥ紅茶ぁぁぁぁぁぁぁ~」



「……」

(や、やっと終わった……)

「あの、梓。なんかさ、後半あんまり梓関係なくってごめんな」

「てか、前半もちょっとどうかと思うんだけど……」

「うぅっ……」グスン

「おいおい! お前らがこんな変な歌作っちゃったから泣いちゃったぞ!」


91 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 03:27:19.31 +U+xZzjp0 67/69

「ありがとうございます!」

「なんか最近先輩たちがコソコソと私に隠れて何かしてるって思ってたんですけど」

「まさかこんな素晴らしい歌を作っていただなんて思わなくて」

「私ったらもしかしたら本当に留年しちゃったのかもとか疑っちゃって」

「本当に嬉しいです!」

「え? こんなんでよかったの?」

「はい! すごく感動しちゃいました!」

「まぁ、梓がそう言うなら別にいいんだけどさ」

「いつもはダラダラしていた先輩たちが私のために最後の最後でいいところを見せてくれる」

「やっぱり先輩方は凄いです!」

「まぁ、最後くらいはいいとこ見せないとな」

「まんまとヤクザの手口にはまっちゃったよ……」


92 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 03:28:35.85 +U+xZzjp0 68/69

「必ず新学期からは沢山部員を集めて、皆さんの意志を継ぎます」

「がんばってね、梓ちゃん」

「あずにゃんならできるよ!」

「そして、律先輩のような立派な部長になります!」

「そ、そう? 立派だなんて、梓も見る目があるな!」

「そして律先輩よりも、もっと立派な部長になってもっと軽音部を大きくしてやるです!」

「言ったな~、こいつぅ~」

「えへへ」

「梓がその意気なら安心だな」

「はい! 任せて下さい!」

「ああ! 軽音部は任せたぞ!」


93 : 以下、名... - 2013/01/04(金) 03:29:54.93 +U+xZzjp0 69/69

「って言っといて~」

「ん?」

「新学年からは私がジャズ研に」

「転部する~♪」

「……」

「まぁ、今後どうするかはあくまで梓の自由だからな」

「自由って素晴らしいよね」

「私も、自由に憧れちゃうわ」

「廃部かよっ!」


 おしまい


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