唯「そんなぁ、りっちゃんAVだなんてエッチだよぅ…」クネクネ
律「だーっ!!AVじゃなくてAVP!! 『エイリアンvsプレデター』!!」
梓「ああ、聞いたことあります。エイリアンとプレデターが戦う映画ですよね」
唯「おおー。エイリアンとプレデターはテレビでもやってたねー。ちょっと怖かったけど」
澪「こ、こわい…?」ビク
唯「なんか、宇宙船でエイリアンが宇宙飛行士をグシャーって」
澪「ひいい…」ガクブル
唯「そんでー、プレデターの方はシュワちゃんが宇宙人と戦うんだけど、それも結構グロくて…」
澪「や、やめろーっ!!」
律「まー、澪ちゃん怖がりですねー。確かにグロいのあるけど」
紬「で、その映画がどうかしたの?」コポコポ
律「いや、映画もあるけど、私が言ってるのはゲームの話」
紬「ゲーム?」
澪「ゲ、ゲームか…」
律「そ。聡が友達の兄ちゃんがもっているの借りたんだ。海外のゲームで日本で売ってないから貴重なんだって」
梓「へー」
律「でー、人間かプレデターかエイリアンのどれかになってゲーム出来るんだけどさ」
唯「うんうん」
律「結構面白いんだけど、海外のゲームだからグロい表現そのままでさ。やっぱりグシャーとか血がドバーッって」
澪「や、やっぱり怖い話じゃないか、やめろーっ!!」ガクブル
紬「まあまあ」ナデナデ
律「まー、でも面白いのは本当。聡なんか一日中やってて、調子にのってYouTubeにプレイ動画アップしてやんの」
梓「そうですか。それだけ面白いってことですね(あとで検索してみよう)」
唯「なんかちょっと興味あるけど、あんまりゲームやってると憂に怒られちゃうんだよね。『ゲームは一日1時間だよ、お姉ちゃん』って」
律「○橋名人かよ…」
澪「(というか、妹に注意される姉って)」
紬「あら、もうこんな時間ね」
律「あー、だいぶ陰ってきたと思ったら」
梓「うー、今日もあんまり練習できませんでした…」
澪「そのかわり、明日からの『強化合宿・第2弾』ではみっちりやらないとな!!」
梓「信用できませーん。先週の合宿だってほとんど遊んでばっかりじゃないですか」
律「ぷぷ、まっくろになるまで遊んでたのはだれだっけー」
梓「にゃっ!?」
唯「こげにゃんもかわいかったよー」
梓「うー、今度こそまじめに練習するです!!」
澪「(遊んでたこと認めた…)」
紬「うふふ」
通学路
紬「それじゃあ、また明日」
梓「失礼します」
唯「じゃーねー」
澪「ああ、また明日な」
律「明日の合宿、遅刻するなよー」
…
律「しかし、あっちいなー」パタパタ
澪「お、女の子が外でスカートぱたぱたすんなっ。はしたない」
律「誰もいないって。しかし、こんだけ暑いと…」
澪「な、なんだよ…」
律「知ってるか。プレデターって、熱に引き寄せられてやってくるんだってさ」
澪「ひっ」
律「『悪魔は暑い年だけにやってくる』って」
澪「ひいっ」
律「だからー、映画のセリフだってば」
澪「この、バカ律!!」ゴチン
律「あいてーっ!!」プクウ
梓の部屋
梓「(AVP、っと)」カチッ
梓「これかなー?」カチッ
ヒュイン…ヒュイン…
”Rookie,get out there!! Somebody…”
ヒュインヒュイン…
梓「(英語でよくわからないけど、雰囲気でてるなあ)」
キシャアアアアアアー!!
梓「ひっ!?」
…
梓「(こんなの、澪先輩だったら即効で気絶するね…)」
梓「あ、もうこんな時間。合宿の支度しなくちゃ」
澪の部屋
澪「(バカ律…すぐ私を怖がらせようとして…)」カチカチ
澪「こ、こわくなんかないからな。どうせ映画やゲームだ」
澪「AVP、と…うわいっぱい出た。これかな…」カチ
キシャアアアアアー!!
数分後
澪母「澪ちゃーん、お風呂沸いたわよー。澪ちゃーん?」
澪「……」ブクブク
平沢家・リビング
憂「お姉ちゃん、明日の準備は大丈夫?」
唯「えへへー今からやるよー」ゴロゴロー
憂「(心配だなー)」
TV「先日、合併を発表しましたウェイランド・ユタニ社が、コトブキ・インダストリーズと業務提携を結びました」
憂「あれ、コトブキ・インダストリーズって紬先輩の会社?」
TV「これにより、ロボット産業界のトップシェアは両社が…」
田井中家・リビング
聡「ねーちゃん、俺にもやらせろよー」
律「聡はさんざんやっただろー。わたしにもやらせろい」カチカチ
聡「今からプレイ動画アップするんだからさー」
律「じゃあ、私の華麗なプレイを録画しろ」
聡「(てか、明日の準備しなくていいのかよ、ねーちゃん…)」
紬の部屋
紬「ふふ、今回はちょうど空いた無人島の別荘を借りれたし」
紬「島全体がプライベートビーチ状態!!」
紬「みんな喜んでくれるといいな」シャランラシャランラ
合宿1日目
澪「いいのか、ムギ。こんなすごいところ…」
梓「前回の合宿もすごかったですけど、まさか無人島貸切だなんて」アゼン
紬「たまたまキャンセルになったから、気にしなくていいのよ」
律「うおーすげー!! 冷蔵庫に霜降り肉が!!」
唯「りっちゃん隊長!! 冷凍庫にはハーゲンダッツがぎっしりであります!!」
澪「ムギ、こんなにしてもらわなくても」
紬「その食材も仕入れたあとにキャンセルになったものだから、遠慮しなくていいのよ。逆に、余らせるのも悪いし」
梓「ムギ先輩、ありがとうございます」
紬「うふふ」
澪「じゃーさっそく」
唯・律「泳ぐぞー!!」
梓「やっぱりこうなるんですね…」
合宿1日目・夕方
律「ふいー食った食った」ポンポン
唯「アイスおいしいよおぉ~」ゴロゴロ
梓「結局、食事前の数時間しか練習が…」
澪「まあ、1日目だからな。あと2日間がんばろう」
梓「はあ…」
紬「うふふ」
律「じゃー、食後に…」
梓「練習ですね!?」
律「ゲームするか!!」バーン
梓「なんでそうなるんですかー!?」ムキー
澪「律、その紙袋何かとおもったら」
唯「うおー、すごいよりっちゃん。PS3本体だよ」
梓「そのやる気を演奏に活かしてください…」
律「いやさー、AVPにはまっちゃって、ちょっとでもやりたいなーって。聡から借りてきた」
澪「(絶対無理やりうばっただろ)」
律「今、海兵隊の最後の方なんだよ。もう少しでクリアのはず…」カチカチ
ヒュインヒュイン…
唯「おおー、りっちゃん隊長、エイリアンがいっぱいでレーダーが見えません!」
律「このスマートガンとって、おりゃ」ドドドドド…
キシャア、ピギィ
澪「わ、わたしは見ないからな」
梓「というか、ここだと一人プレイしかできないですよね、これ」
律「オンライン対戦もあるけど、今はサーバ過疎ってるみたいだ、よっと!!」カチカチ
梓「それ終わったら、練習するです!!」
律「わーったよ。あと少しでクリアだから…、アンドロイド硬いな」カチカチ
フッ
律「おわっ、なんだ?」
紬「停電?」
澪「ひぃ!?」
律「わー、セーブしてないのにっ」
梓「それどころじゃないです!!」
唯「あ、あれなに…窓の外…」
律「光が空まで伸びている…」
紬「そんな遠くはないわね…この島の中?」
唯「あ、消えた」
律「(あの青白い光、どこかで…)」
30分後
律「ちっ、だめだ携帯がつながんない」
澪「う、うそだろお、さっきまで使えてたじゃないか」
紬「ダメね…固定電話も使えない…」
梓「ムギ先輩、懐中電灯とってきました」パッ
唯「非常用ろうそくもだよー」シュッ
澪「やっとみんなの顔が見えるな…」
梓「それにしても困りましたね。ムギ先輩、なにか連絡する方法はないんですか?」
紬「確か離れに自家発電があったから、それを動かしましょう。たぶん、そこに非常用品もあったはず」
律「じゃあ、見に行くか。ムギ、案内して。梓、懐中電灯貸して」
梓「は、はい」
律「澪と梓、唯はリビングで待ってろ」
唯「がってんです、りっちゃん隊長!!」ビシッ
紬「(頼りがいのあるりっちゃん、いいわあ)」ホワンホワン
…
パッ
梓「あ、灯りがつきましたね」
澪「でもあんまり明るくないな」
梓「非常用ですからね。テレビは…あれ?」
唯「どうしたの、あずにゃん?」
梓「電源は入るんですけど、砂嵐ですね。アナログもデジタルも」
澪「…なんか、電波の状態悪いのか?」
律・紬「ただいまー」
唯「おかえりであります、りっちゃん隊長」
澪「律、どうだった?」
律「電源は見てのとおり入った。それに、無線とか非常用品セットもあった」ドサッ
紬「でも…」
律「壊れてないのに、つながんない」
紬「非常用品に入っていたラジオもダメなの…」
梓「…やっぱり。TVもだめです」
澪「なんか、電波が全部だめになったみたいだな…」
唯「…ねえ、あの光のせいかな?」
律「私もちょっと考えてた。あれで急にダメになった感じだ(それに…どこかで見た覚えが)」
律「…行ってみるか」
澪「ええ?」
律「原因を突き止めないとな。それに、ここにいても何もすすまないし」
澪「…わかった(怖いけど)」
梓「ムギ先輩、地図とかあります?」
紬「ガイドに簡単な地図なら」
律「それだとさっきの光は?」
紬「えっと…この辺りかな」
唯「ねえねえ、近くに電波塔ってあるよ」
澪「なるほど、つながんないのはこれが影響うけたのか」
紬「近くに行けば、そこからどこかに通信できるかも」
律「行くしかないな」
道中
律「もうすぐだな」
梓「唯先輩、くっつきすぎです!!」
唯「あ~ん、あずにゃんのいけずぅ」
律「澪も腰にしがみつくのやめてくれ」
澪「だってぇ、りつぅ」
紬「うふふふふ」
律「ここかな…
唯「え、何これ…」
梓「焦げているみたいですけど…ゆ、UFO?」
紬「…」
澪「ミエナイキコエナイミエナイキコエナイ…」
律「(おい、これって…ゲームにでてきたのとそっくりじゃねえか)」
唯「りっちゃん、あぶないよ!!」
紬「そうよ、そんな近くに」
律「…」ツカツカ
梓「澪先輩、大丈夫ですか?」
澪「う、うん、なんとか…」
律「(映画やゲームのと同じだ…これだと”アイツら”が数人乗るタイプか…)」
紬「り、りっちゃん…」オソルオソル
律「!? ムギ、くるなっ!!」
紬「ひっ!?」
律「…やっべ、吐きそう…(落ち着け、私…)」
紬「ど、どうしたの?」
律「ちょっと刺激のきついのあるから…携帯で…」カシャ
唯「りっちゃんどうしたの?真っ青」
梓「…」
律「刺激強すぎるから、写メにした。これならちっさいからそんなにきつくないだろ」
澪「ど、どういう」
紬「私も、見せてもらえるまで信じられませんでした…」
律「覚悟してみろよ…」ピッ
唯「え」
梓「これって」
澪「…う、うそ…」
律「”プレデター”の死体だ」
十数分後
律「落ち着いた?」
梓「…なんだか、信じられません」
律「わたしもだよ。でも、みちまったしね。それにあの光。ゲームの冒頭のシーンとそっくりだ」
澪「…吐きそう」
唯「映画のセットかな?」
紬「それなら私が知らないなんてことはないわ」
唯「そだね…」
律「それに、死んでるみたいだから危害はないだろ」
澪「あれが電波塔?」
梓「あまり大きくないですね」
紬「無人島の中継局みたいなものだから」
唯「でも、小屋みたいのあるね」
紬「管理用の事務所みたいなものね」
律「よっし、じゃあいこ…ぶっ!?」ゴチン
澪「律…なに一人芝居してるんだ」
律「っ…ちがうって、ここに何か…あれ?」
紬「どうしたの?」
律「見えない壁…うわっ?」
唯「えっ、なんか出てきたよ?」
澪「ひいいっ!?」
梓「…これって…なんでしょう?」
唯「なんかおっきなザリガニの甲羅みたい」
紬「さっきのUFOに雰囲気が似てるわね」
律「よく見ろ…後の扉みたいのが空いている」
澪「り、りつぅ、危ないぞ」
律「(…なんか、マヒしちゃったかな感覚が)どれ…」
梓「律先輩?」
律「みんな、大丈夫っぽいよ。なんか、がらくたみたいなのがいっぱい入ってた」
澪「本当に?」
律「ああ。つっても得体のしれないものが多いけど…ん?」ゴソゴソ
唯「りっちゃん危ないよう…」
紬「それは?」
律「ゲームと同じだとすれば…これって”モーショントラッカー”だな」
唯「ほえ? あのヒュインヒュインって音のするやつ?」
律「そ。梓、こっちに歩いてみて」
梓「は、はいです」ソロリソロリ
ヒュイン…ヒュイン…
律「やっぱりな。動くものがレーダーにうつる。でも」
梓「どうですか?」ピタッ
律「止まると反応しない」
唯「便利だねー。鬼ごっこに使えるかも!!」
澪「その発想はなかったわ…」
紬「(あら? このマークどこかで…)」
律「とりあえず、2つあるから、もう一個は梓もって」
梓「あ、はい…」
澪「なんでわざわざもって行くんだよ」
律「迷子になった際に使えそうだろ。それに証拠にもなるし」
梓「まあ、そうですけ」
ヒュイン…
律「唯、あんまうろちょろすんなよ」
唯「ええ、私ここだよ」
律「え…」
ヒュイン…ヒュイン…
梓「何か向こうの林から…距離、10m…」
澪「ちょ、何?」
紬「動物かしら?」
ヒュインヒュイン…
梓「7m…」
律「(やな予感しかしない)」
梓「6m…」
律「!? 逃げろ!!」
全員「えっ!?」
キシャアアアアアアアアアア!!
全員「いやあああああああああああ!!」
律「後見んな!!(やっぱり、あのシルエット…”エイリアン”!!)」
澪「あっ…」
律「澪!?」
澪「あ、足が…」ガクッ
シィィィ…
澪「ひいいい!?」
律「澪、今行く!!」
唯「りっちゃん!?」
梓「先輩!!」
紬「危ない!!」
?「クロロロロロ…」
エイリアン「?」
?「△○※$…」シャキン
律「へ、へへ…もう何きても驚かないぞ…」
澪「律…」
律「AVP…エイリアンVSプレデターだ」
月光の下で影が踊る。
逃げる私と律の影に重なって。
背後でエイリアンの奇声とプレデターの咆哮が響く。
どちらも、聞く人のはらわたをもぎ取るような振動で。
月光に爪が光る。
どちらの爪かはわからないけど…それは映画よりも非現実的なくせにリアルだった。
前を走る唯たちが何かを叫んでいるようだが、何も聞こえない。
夢…だよね。
夢なら、覚めたら言ってやるんだ。律の奴に。
もう怖い話するなって。
そう、夢が覚めたら…
?「ぉ、、みお!!」
澪「うん…」
律「澪、目が覚めたか?」
澪「律…」
律「へへ、よかった…」
澪「律…AVP…」
律「へ、へへ…もしかして夢オチ期待? 私だってそれ期待したけど」
澪「じゃあ」
律「現実だな」
澪「ここは?」
梓「通信塔の管理室です」
唯「澪ちゃん、無事でよかったよお」
紬「…」
律「それでさ、澪」
澪「?」
律「もういいかな、足がしびれちゃった」
澪「えっ? 膝枕?」カアアッ
唯「らぶらぶー」クネクネ
澪「ちょ、唯、変なこと言うな!!」
律「そ、そうだぞ!! ムギもそんなにキラキラした目で…あれ?」
紬「…っ、ぐすっ…」
梓「ムギ先輩?」
紬「…ご、ごめんなさい…私が…私が無人島なんかに連れてこなければ…こんな…」
唯「ムギちゃんは悪くないよ!!」フンス
律「そうだ、こんなこと起こるなんてだれも予想しないって。それに私も悪かった。プレデター死んだみたいな言い方して。二人もいるとは思わなかったし」
梓「そうですね。それに、逆に生きていたから助かった感が…」
澪「誰も悪くないよ。ムギも律も」
梓「そうです!! 練習しないからバチがあたっただけです!!」
律「梓…お前意外とキツイな…」
紬「みんな…ありがとう」
律「で、これからどうするかな」
紬「とりあえず非常用のボタンを押したわ。多分、電波塔の緊急用の有線回線だから、電波の影響はないみたいだし、ここにきていることは家には伝えてるから、何かあったことはわかるはず」
梓「相変わらず携帯はつながらないですけど…多分、あのUFOがいる時点で電波はしばらくだめなんじゃないかと」
律「モーショントラッカーは反応なし。扉は鍵かけてるし。救助が来るまでまつしかないか」
澪「ムギ、どうした?考え込んでるみたいだけど」
紬「え、ああ、ちょっと何かひっかかる感じがあったんだけど…気のせいかな…」
澪「うん…ならいいけど」
唯「あのあとどうなったのかな?」
律「どっちが生きててもいやだな。エイリアンだったら問答無用だし、プレデターも話をして通じる感じもないし」
澪「映画だとどうなんだ?」
律「互角、かな。プレデターは体力もあって武器もあるけど、エイリアンはすばしっこいし。1対1なら武器があるプレデターの方が強いかも」
梓「動画とかでちょっとみましたけど、私も律先輩と同じ意見です」
律「唯、どうした?」
唯「おなかすいた…」テヘ
澪「ま、マイペースすぎてうらやましい」
紬「お茶にしましょう?」
律「ど、どこから!?」
梓「唯先輩以上ですね…」
ティータイム中
梓「非常用品の紅茶に、非常食ですか…でも意外といけるかも」
唯「この非常食クッキーみたいでおいひい」モグモグ
紬「非常時ほどこういう甘いものがいいらしいのよ」
澪「でも本当に安らぐな」
律「非常食うめー!」
ヒュイン…
全員「えっ…」
ヒュイン…ヒュイン…
律「みんな静かに…距離、30m…まだ遠い」
ヒュイン…ヒュイン…ヒュイン
梓「…ちょっとまってください…あの、数が」
澪「う、うそ…」
唯「どっちかが勝ったの?」
紬「こ、これ…10個以上…」
律「みんな、声立てるな!! 灯り消して!!」
梓「は、はい」
ヒュイン…ヒュイン…ヒュイン…
律「やべ…エイリアンとプレデターが一体ずつならと思ったけど…これどう見てもエイリアンだな」
紬「じゃあ…」
律「多分プレデターはやられたかな。さすがに一人じゃ無理だったのかも」
唯「ど、どうしよう」
律「まだ気付かれてないみたいだし、このままやり過ごそう」
澪「う、うん」
紬「一応、逃げる用意しておくわね」
梓「でも、どこに逃げるんですか?」
紬「奥の部屋に地下に続く扉があったの。多分、地下に埋め込んだ送電ケーブルの点検用みたい」
律「…ちょっとまて。むしろそっちもやばくないか?」
梓「あ…」
澪「なんで?」
律「エイリアンって、映画だと地下とか天井裏とかにも忍び込むんだよ」
唯「うう…」
律「梓、モーショントラッカーでそっちから来ないか見て」
梓「わかりました」
紬「私も見てくる」
律「頼んだ」
唯「私もいくよー」
澪「り、りつ…」
律「澪は私と一緒。それならいいだろ」
澪「うん」ギュッ
律「手ならともかく、腰にしがみつくなよ…」
ヒュイン…
澪「こっちのほうは遠ざかっていく…もう反応無くなった」
律「向こうは…っと、ムギの方から来てくれた」
紬「向こうは何の反応もないわよ」
律「ふー。なんとかなったようだな」
紬「救援はそろそろくるかしら…」
澪「時間は…わ、もう夜中の3時…」
律「そのうち夜が明けるな…」
ヒュイン…
律「!?」
澪「ちょ、何?」
紬「これ…3m…?」
律「お、おいこれじゃもう建物の中…あっ?」
澪「律?」
律「ムギ、この建物って屋上あるか?」
紬「た、多分…電波塔に上がるために部屋の中からもいけるはず…あの天井の扉…」スッ
バンッ
キシャアアアアアア…
澪「ひ、ひ…」
律「(くそ、電波塔に1体登ってたんだ)、ムギ、二人と逃げろ!!」
紬「あ…あ」
律「早く!!」
紬「…」コクッ
エイリアン「キシャアアアッ」
律「く、こっちだこの昆虫野郎!!」
エイリアン「シュー…」
律「(よし、ムギとこっちを見比べてるな…時間稼げた)澪、外に逃げるぞ!!」
澪「えっ、えっ?」
律「副部長、しっかりしろ!! またみんなでライブしたくないのか?」
澪「わ、わかった」
律「行くぞ!!」
バンッ
律「(とりあえず、あの群れが行った方とは反対に…)
唯・紬・梓
紬「唯ちゃん、梓ちゃん、逃げて!!」
唯・梓「えっ」
紬「え、エイリアンが」
唯「二人は?」
紬「外に逃げたわ」
ガンッ
梓「もう扉の向こうに?」
紬「唯ちゃん、地下へ!! 梓ちゃんも」
梓「ムギ先輩も早く!!」
バタン
紬「(この扉はまだ頑丈そうだから…あとこの非常用の斧をつっかえ棒に…)」ガシャン
梓「ムギ先輩、はやく!! その扉のすぐ向こうにいます!!」
ヒュイン…ヒュイン…
紬「うんっ!!」
…
唯「まっくらだねー」
紬「この非常用の蛍光スティックじゃあまり遠くまで見えないわね」
梓「今のところ、後も前も反応なしです」
紬「でも、あの扉が破られるかもしれないから、早めに外に出た方がいいわね」
唯「これどこまでいくんだろう?」
紬「えっと、地図からすると…多分途中でこの点検用のマンホールに着くわね」
唯「…」ピタ
梓「わっ…唯先輩急に止まらないでください」
唯「…点検用のマンホールって、このハシゴで上に行くのかな?」
紬「ええ…」
唯「でも…」スッ
梓「…!?」
紬「え…」
クロロロロロ…
唯「先に開けられたみたい…」
澪・律
律「追って…来ないみたいだな」
澪「ああ…」
律「なんとか別荘まで来たな…灯りは消したままがいいかな」
澪「そうだな…」
律「…バカだな、私」
澪「律?」
律「こっちを追ってこなかったってことは、あのエイリアンは唯達を追ってるんだ。へへ…部長なのに…みんなを危険な目に」
澪「そ、そんなことない!!」
律「澪…」
澪「律はすごいよ…律がいたから、みんなこうやって生きてるんだぞ!! そんな…そんな言い方するなよ…」
律「…澪…へへ、澪って、怒りながら泣くんだな」
澪「う、うるさい!!」
唯・紬・梓
唯「…」
梓「唯先輩!! 危ないです」
紬「唯ちゃん!!」
唯「大丈夫…プー太はおそってくる気ないみたい」
梓「プー太って…」
紬「あ…怪我…」
ォォォォ…
唯「立たなくていいよー座って」
紬「唯ちゃん…」
唯「さっきは守ってくれてありがとうねー」
梓「(別に守ったわけじゃないような)」
プシュ
唯「ひゃっ、なんか足の裏から出た」
梓「あ…動画で見たんですけど、それって確か治療する道具なんじゃ…」
紬「でも、ほとんど体動かせないみたいね…」
唯「よし、じゃあ私がやってあげる!!」
紬「ゆ、唯ちゃん!!」
梓「き、危険です!! 治ったら私たちを襲うかもしれないです!!」
唯「でも放っておけないよー」
ォォォォ…
唯「いたかったー? すぐにお薬を塗ってあげるね」
梓「…私も手伝います」
紬「梓ちゃん?」
梓「本当に唯先輩は甘いんだから…でも、それが唯先輩らしいところです」
唯「あずにゃんありがとー」
梓「はいはい…あ、ムギ先輩はモーショントラッカーでまわりをみてください」
紬「うん…」スチャ
紬「(WにYのロゴ…どこかで…あ!)」
唯「いたいのいたいのとんでけー」
梓「唯先輩、多分それは言葉通じてないです」
紬「(どういうこと? これはどう見てもかなり使いこまれた感じ…でもあの会社は先日できたばかり…)」
唯「じゃ、塗るよー」ピト
グォオオオオオオオオオオオオアアー!!
澪・律
澪「い、今の声は?」
律「プレデター? 生きていたのか」
ヒュイン…ヒュイン…
律「うお、結構近くで反応がある…動かないで潜んでたんだな」
澪「でも、全部離れていくな…声のする方向かな…」
律「多分な…唯達大丈夫かな…」
澪「…後を追うか…」
律「み、澪?」
澪「ここにいてもしょうがないし、3人とも合流しないといけない。少なくとも声のした方向はみんながいる方向でもあるし、後を追えば逆に気付かれないかも」
律「澪…結構考えてんだな」
澪「あ、あたりまえだ!! 部長一人じゃ頼りないからな!! すぐつっぱしるし、ドラムみたいに」
律「へへ…そういうセリフは震えながらいんじゃないわよん」ププ
澪「!? せっかく格好よく決めたのに茶化すな!!」
唯・紬・梓
唯「び、びっくりしたー」
梓「映画と同じですね…」
紬「(ちょっと、漏れちゃったかも)」///
梓「あ、でもこの声でエイリアンが来るかもです」
唯「あうー、じゃあ、とにかく上にあがろうよ。プー太もうごけるようになったらでちゃってね」ノボリノボリ
梓「…唯先輩に合わせて治療したけど、本当は怖かったんだからね。宇宙人ならもっと友好的に地球にきてよね!!」ノボリノボリ
紬「プレデターさん…あなた本当は…この世界の…いや、この時代の…」
プレデター「…」
紬「ううん…なんでもないわ。とにかく、もとに戻れるといいですね」ノボリノボリ
澪・律
律「なんか、エイリアン達の動きが早くなってきたな、おいつけない」
澪「まさか、唯達が見つかったのか?」
律「何にせよ急がないと…!!」
唯・紬・梓
唯「ふうふう…」
梓「唯先輩、大丈夫ですか?」
紬「頑張りましょう、この山を登り切った先の展望台なら周りが見渡せるから…」
ヒュイン…ヒュイン…
全員「!?」
梓「あ、やばいですよ、これってこっちに向かってきてます!!」
唯「えええ」
紬「と、とにかく急ぎましょう!!」
澪・律
律「あの山の上のは…展望台?」
澪「もしかしたら、三人もそこに?」
律「見晴らしのいいところに行く可能性はあるな…」
澪「急ごう」
律「ああ…(しかし、やばいかな…エイリアンもまっすぐそっちだ)」
展望台
唯「つ、ついた…」ハアハア
梓「ちょっと休憩しませんか…反応も今のところ止まってます…」ゼイゼイ
紬「そ、そうね…」フウフウ
澪・律
律「あれ…動きが止まった」
澪「え」
律「澪、ストップ!! このまま進むと追いついちゃう」
澪「わかった…」
律「しかしなんで急に…そうだ非常用品に入っていた双眼鏡で…」
澪「どうだ?」
律「エイリアンは…木がいっぱいでわかんねぇな。展望台は…あ」
澪「どう?」
律「良かった、3人とも無事みたいだ。展望台にいる」
澪「よかった…」ホッ
律「でも、なんで急に動きを…」
展望台
唯「あうー、おなかすいた」
梓「もうすぐ夜明けですね…」
紬「少しおなかに入れておく?」
唯「ほーい」
梓「緊張感なさすぎです…」
紬「まあまあ」
…
唯「でもなんで急にとまったんだろう?」ポリポリ
梓「確かに…あ、このカンパン意外とおいしい」サクサク
紬「本当、こっちは動きがないわね…斜面の反対側は…」
ヒュインヒュインヒュイン…
紬「う…そ…」
梓「あ…」
唯「ひ…いきなりこんなに…」
紬「反対側も急に…」
ヒュインヒュインヒュイン…
澪・律
ヒュインヒュインヒュイン…
澪「きゅ、急に動き出したぞ!!」
律「ちょ、なんでまた…気付かずに寝てるかと…唯達も気がついたみたいだ!!」
澪「ど、どうする?」
律「お…なんで3人とも逃げようとしないんだ…反対側に」
澪「まさか?」
律「しまった、他の斜面の木が揺れている!! 囲まれたんだ!!」
澪「逃げ道なくすために他の仲間が来るまでまっていたのか? そんな知能…」
律「うかつだった…あいつら意外に知能あるんだ…行くぞ!!」
澪「り、律!!」
律「怖いけど、このままじゃ3人ともやられる!!」ダッ
展望台
唯「ど、どうしよう…」
紬「…ごめんね、やっぱり私が無人島なんかに…」
唯「ムギちゃんは悪くないよ!!」
梓「と、とにかく高い所に登りましょう!!」
ヒュインヒュイン…
紬「ダメだわ…もう周り囲まれている…」
梓「ゆ、唯先輩…」
唯「あずにゃん…ずっと一緒だから…怖くないから…」ギュッ
キシャアアアアアア
3人「っ!!」
ピギイイィ!!
3人「えっ…」
クロロロロ…
唯「あ、プー太?」
梓「え…」
紬「あそこ…あっちの斜面の開けたところ!!」
プレデター「グオオオオオオ!!」
梓「跳んだ!?」
ドスッ
唯「うおおおおっと」
梓「ひ、いきなり」
紬「(ここまで20メートルはあるのに…すごい)」
澪・律
律「動きがまた止まった?」
澪「律!! あれみて」
律「プレデター? 生きていたんだ」
展望台
プレデター「□○$&@…」ウィイン
エイリアン「キシャアアアアア!!」
そこから先はすごかった。
私達がいる位置からも、容易に確認できた。
律は双眼鏡越しに食い入るように眺めていた。
プレデターから光線が放たれたかと思うと、その着弾点にいたエイリアンは木端微塵になるか、かすっただけでも燃え上がってのたうちまわった。
ときどき撃ち漏らして近づいたエイリアンも、手にした槍のようなもので真っ二つになぎ倒し、返す先端で背後に迫った別のエイリアンを振り向きもせずに刺し貫く。
遠目でなかったら失神していたかもしれない…
でも、あの戦い方はまるで3人を…
律「ちょっと、やばいかも」
澪「?」
律「あのプレデター、押され始めた」
澪「えっ」
律「背中のレーザー…プラズマキャスターだっけか、あれもエネルギーないんだろうな、全然撃ってない…」
澪「じゃあ」
律「くそっ…これじゃ時間の問題だ…こうなったら私がおとりに」
澪「ば、ばか、それじゃ律が…」
律「んじゃどうしろって…」
?「フセロ」
律・澪「!?」
展望台
梓「…やばいです」
唯「え?」
紬「明らかに…押されてきたわ」
梓「エイリアンが徐々に迫ってるです…」
キシャアアア!!
唯「あ、あぶない!!」
プレデター「!?」
ピギイイイ!?
梓「え…」
紬「プレデターが…もう一人?」
そこから先はぼうっと眺めているしかなかった。
突然背後から現れたもう一体のプレデター…しかも日本語で「フセロ」と言った瞬間、あのプラズマキャスターの閃光が展望台に向けて発射され…視力が回復した際にはもう展望台まで跳躍していた。
律「まさか…そうか!?」
律が携帯を取り出して操作する。
律「やっぱり…怖くてあんましみてなかったけど、座席は3人乗りなのに死体は一人だけだ」
そうか…でも、今となってはそれもどうでもいい。
あの3人が助かるなら。
加勢に駆け付けたプレデターは、最初のよりも明らかに強かった。
展望台の包囲網が次第に薄くなり、エイリアンがまばらになると加勢にきた方が追い打ちをかけてせん滅した。
その間、最初のプレデターは展望台にいた…まるで3人を守るかのように。
律「唯ー!!ムギー!!梓ー!!」
唯「りっちゃーん!! 澪ちゃーん!!」ダッ
澪「みんな、大丈夫かー!!」
唯「あうーこわかったよお…」
梓「ううっ…ぐす…」ムギュ
紬「よしよし…」ナデナデ
律「へへ…みんな無事なんて…奇跡かも」
唯「プー太のおかげだよー」
澪「プー太って…」
紬「実はね…」
…
律「へー、唯が手当てをねー」
澪「よく触れたな…」
梓「唯先輩すごかったです」
律「ってかさ、これって夢なんじゃないよな? プレデターもいつのまにかいないし」
紬「多分、夢じゃないわ」
澪「ムギ?」
紬「このモーショントラッカー…この前コトブキ・インダストリーズと提携を結んだ、ウェイランド・ユタニ社の製品なの」
律「え?」
唯「そういえば憂がTVでみてたね。でも…あれってついこの前でしょ?」
紬「唯ちゃんさすがね…この製品の製造年月日を見て」クルリ
梓「20XX年…み、未来の日付じゃないですか!?」
澪「も、もしかして…」
紬「自分でも、SFじみた発言になるけど…プレデターもエイリアンも、何かが原因で未来から来たのかもしれないわ」
律「おいおい…それこそ夢じゃ…」
紬「そうでしょ、プレデターさん?」
ピッピッピッ…
プレデター「…」
律「で、でたクローキングデバイス!?」
澪「ひいいい」ガクブル
エリートプレデター「ソノトウリダ」
梓「にゃっ!?」
唯「あ、助けてくれた人」
紬「…帰るあてはあるのですか?」
エリートプレデター「…」
紬「…これはお返しします。この時代にはあってはいけないでしょうから」
律「あ、モーショントラッカー」
律「(そうか、プレデターの戦利品か)
エリートプレデター「ナカマガマッテイル…ソコニハカエルコトガデキル」
紬「そうですね…」
エリートプレデター「ムカエダ」
律「うわっ、なんだこの風」
唯「あ、上見て!!」
澪「また、UFO?」
梓「ここでみたのよりずっと大きいです…」
唯「プー太いっちゃうの?」
プレデター「…イタイノイタイノトンデイケー」ナデナデ
唯「えへへ…覚えたんだ、日本語」
エリートプレデター「…ウケトレ」ヒュッ
律「わっ、な、なんだ?」
澪「ま、まぶしっ!?」
紬「ごきげんよう…」
それから1時間後。
私たちは、ムギの父親がよこした救助部隊に助けられた。
でも、どうみても特殊部隊だよな、あれ。
私たちは、正直に話すのをやめにした。
証拠がないからだ。
エイリアンは死滅したと同時に自分の体内の酸で跡形もなく溶け、墜落していたはずのプレデターのUFOも、あの大きなUFOで証拠を隠滅したんだろう。
梓は、真実を話さないことを素直に承諾してくれた。
ムギは、うまく話しを合わせてくれた。停電の上に電波も使えないので緊急ボタンを押した、という点では嘘ではないので、ぼろはでなかった。
唯は承諾というより、しばらくぼんやりとしていた。結果的に私たちを助けてくれたプレデターのことを考えているのか。それとも、本当に彼らは私たちを…
律は最後までごねていた。「世紀の大発見だー」とか「やっぱモーショントラッカーを渡さなければよかった」とか
そして…
律「澪、またパソコンいじってるのか?」
澪「律、いつのまに」サッ
律「まーたあまーいポエムとか書いてんじゃないのか?」
澪「ち、ちがうって…(この前のことを書いてたんだよ…まあ、墓場までもっていくしかないと思うけど)」
律「しっかしさー、あいつも未来からきたならもっと未来っぽいものお土産においていけばいいのに」
澪「まだ、言ってるのか…誰も信じてくれないぞ」
律「だーかーらー、未来のものがあれば信じてくれるだろ」ポイッ
澪「きゅ、急に投げるなよ」アセッ
律「そんな今よりも古いものじゃ証拠になんねーよ。あーあ、ここまで映画どおりでなくてもいいのにさー」
律から放り投げられた古い銃には、こんな刻印がされていた。
Raphael Adolini 1715(ラファエル・アドリーニ 1715年)
Fin