関連
女「機械の体ですけど触ります?」
女「機械の体ですけど、一緒に過ごします?」
女「機械の体ですけど、一緒に過ごします?」-002-
女「機械の体ですけど、一緒に過ごします?」-003-
女「機械の体ですけど、一緒に過ごします?」-003-【後編】
元スレ
女「機械の体ですけど、一緒に過ごします?」-004-
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1316876650/
2 : 久方 ◆p79mT8Wu64Nk - 2011/09/25 00:16:44.65 V5hcuOL2o 1471/1986キャラ紹介
男
主人公。アンドロイドと奇妙で愉快な同居を開始する。全力純情少年。軽いと言われたことを最近気にしている。
・一緒に住んでます。
女
DDL-003、『無表情人間機械』。男とのふれあいで少しずつ人間を学ぶ。料理に凝っている。
狐子
DDL-002、『狐耳人間機械』。いじられ役と最近話題。感情が高ぶると狐耳が立つ。
撫子
SDF-004、『和風人間機械』。着物をいつも着用。男にゾッコン。嫁修行中(!?)
牧
DAH-005、何人間機械かは言及されていない。ボクっ子。胸は女の子、とっても早起き。
・アンドロイド関連です。
助手
男と機械との生活を観察・報告する係。神出鬼没。恋する乙女。妄想ハピラキ娘。
博士
アンドロイド研究者。見た目は幼女、頭脳は大人以上。子ども扱い&空気なのには最近慣れた。
3 : 久方 ◆p79mT8Wu64Nk - 2011/09/25 00:19:30.36 V5hcuOL2o 1472/1986・家族です。
妹
男の妹。男に兄以上の愛情を向けている節がある。一緒に住んでいるアンドロイド達に嫉妬中。
姉
男の姉。姉御肌、巨乳でブラコン。妹も大好き、つまりシスコン。どちらも兼ね備えた最強の姉。
・生徒会&高校時代です。
会長 ♀
高校時代の男の生徒会長。学生時代に男に告白するも失恋。それでも負けない純情一直線娘。しかし、わりと鈍感。
会計 ♂
高校時代の男の会計係。身長190cmの長身。からかうのが好き。いつもヘラヘラとしているので本性がわかりづらい。
書記 ♀
高校時代の男の書記係。しずかでかつツンツンしている。会計に一途な愛情が見受けられる。
池面
高校時代の男の先輩。絶世のイケメン。不幸。会長のことが好き。
・大学です。
桃 ♀
男の大学の友人。男もよくわからない性格の持ち主。犬を飼っている。体重を気にしている。
学 ♂
悪だくみ担当。楽しいことを考えるのが好きで、実行に移すタイプ。伊達メガネをかけている。短髪黒髪、身長はあまり高くない。
大 ♂
悪だくみ担当その2。大きい体をしているが、裁縫などが得意。物作りにかけては天賦の才を持つ。
鏡 ♀
高校生の頃に委員長をしていたせいか、それが抜けないままになっている。巨乳メガネ。
黒 ♀
物静かで毒舌。大学の中でもかなりの人気があり、アイドル的人気を持つ。ゴスロリとかもたまに着る。黒い服を好んで着る。
・???
蛇 ♀
待たせたな。俺には名前はない。コードネームは、スネークだ。(壮絶な過去持ち)
・後輩さんです。
要 ♀
庶務が会長の頃の副会長で現会長。ヘアバンド着けておでこを出している。身長低めのちょいタレ目。会長のくせにスカートは短め。恋する百合乙女。
牧「優しくしてね?」
男「あーもー3連続で誤解させるつもりか!?」
牧「もう4スレ目なんだね、ビックリ」
男「俺もビックリだよ。しかも003はアンドロイド全然出てないし……」
牧「ほぼ蛇さんがやってくれたよね」
男「そうだなー。でも、あれなかなか好評だったみたいだぞ?」
牧「そうなんだ。じゃあボク達はいらない?」
男「そんなことはないだろうけど……」
牧「じゃあ、男はボクのこといらない?」
男「い、いらないわけないだろうが」
牧「ふふ、嬉しい」
男「……え、えーっと! 男です! 今回で4スレ目ですが、のんびりやっていきたいと思います!」
牧「ボクは牧です。こう見えてもアンドロイドですよ」
男「牧……見た目はわかんないから」
牧「え、前スレの999さんが」
男「そういう話はするなって!」
※前スレ-003-の>>999を参照ください。
牧「そういえば最近悩みがあって」
男「いきなりそんな話するつもりか……どうした?」
牧「なんか、壁の音がうるさくない?」
男「壁の音?」
牧「なんか、誰かが壊れんばかりに壁を叩いてるような音……」
男「ああ、するする。あれちょっと寝苦しいよな」
牧「うん……困っちゃう」
男(アンドロイドだから俺よりも敏感に音に反応するんだな)
牧「それじゃあそろそろまとめてください」
男「お、おう! そんなこんなで今回ものんびりほのぼのやっていきたいと思います!」
牧「ギャグあり、恋愛あり、意味不明あり、百合ありでやっていきます!」
男「ゆ、百合!?」
牧「お楽しみにー!」
男「お、お楽しみに!」
牧「でも、次回は男の過去編だよね?」
男「こっからはメタ発言禁止!」
18 : 久方 ◆p79mT8Wu64Nk - 2011/09/26 00:13:55.34 YiKIiQKZo 1477/1986To be continued!!!
と、いうわけで004に到達しました。
いやー、早いですね。ビックリです。
次回は男過去編。時間は男がまだ家族と暮らしていた頃で、中学3年生。
まあ、高校卒業まで一緒に暮らしてたんですけどね。
それでは、お楽しみにー。
男「んー、よし!」
姉「男、私先に出ちゃうよ?」
男「ああ、行ってらっしゃい!」
姉「一緒に行きたいとか思わないわけー?」
男「だって姉ちゃん高校生じゃん。無理は言わないよ」
姉「男のために家から近い高校にしたのに」
男「そうなの?」
姉「冗談だけどさ」
男「なんだー残念」
姉「ふふ、じゃあ行くわね、行ってきます」
男「うん、行ってらっしゃーい」
男「姉ちゃん行っちゃった。さて、俺はっと」
ゆっくりと用意をしよう。
来年、俺も姉のように高校に入ると思うと、すこし緊張する。
まだ先の話、ってほど先ではない。
俺は今中学三年生。今年は受験なのだ。
と、行っても試験は来年なんだけどね。
ピンポーンと、家のチャイムがなる。
男「あ」
俺は走って玄関に行く。『走って』というか、『焦って』
?『準備できた?』
男「ああ、ちょっと待って」
?『うん』
ゆっくりと用意するのは無理みたいだ。
彼女を待たせてしまうことは、俺にはできないから。
男「ちょっと、妹みてくるね」
?『妹ちゃんまだ用意できてないの?』
男「うん。でも中学入ってからまだ間もないから、仕方ないよ」
?『優しいよね、男は』
男「そうでもないよ。俺は普通さ」
普通。
そう、普通だ。
小学校の頃、ヒーローに憧れていた。
目立ちたがり屋で、誰かに必要とされることが大好きだった。
でも、いつからだろう。
こうやって、自分を『普通』と評するようになったのは。
……朝からなんだか面倒なことを考えてしまった。
一年遅い中二病だろうか。
?『じゃあ、待ってるね』
男「うん、ごめんね」
?『ううん、気にしないで』
・ ・ ・
男「妹ー」
二階に繋がっている階段に呼び掛ける。
ここから声を出せば妹の部屋(俺の部屋だったけど、今は妹のものに)に届く。
妹「なに?」
ニッコリとした顔が見える。
男「準備できた?」
妹「うん、できたよ」
階段を上機嫌に降りてきた妹は、まだまだ小学生が抜けていない印象があった。
自分も入りたての頃はこんな感じだったのだろうかと思うと、すこし恥ずかしい。
妹「お兄ちゃん」
男「なに?」
妹「似合う?」
真新しい中学の制服を着ている妹がクルリと回転する。
無邪気な彼女の動きが可愛らしい。
男「うん、可愛いよ。ささ、もう行かなきゃ。忘れ物は無い?」
妹「あ、おべんとまだ入れてない」
男「これだろ? ほら、持ってきといたから早く入れときな」
妹「うん。ありがとう、お兄ちゃん」
妹はお弁当を両手で受け取り、スクールバッグの中にいそいそと入れた。
男「よし、じゃあ行ってきます」
妹「行ってきます」
と、行っても共働きの両親はとっくに家を出ている。
弁当だって姉ちゃんが作ってくれたもので、母が作ったというわけではない。
姉ちゃん、感謝!
ガチャ
?「おはよー」
妹「……おはようございます」
急に妹の声のテンションが下がった。
男「ちょっと遅れた、ごめんな。友」
友「いいよ、気にしないでー」
彼女はすこしバッグを持った手を後ろに回してハニかんだ。
友「男の子の家の前で待つのって、ちょっと恥ずかしいね」
男「ごめん、嫌だった?」
友「ううん」
彼女は大げさに頭を振った。
友「男くんくらいしか一緒に行く人いないから」
妹「一人で行けばいいのに」
友「へ?」
男「! 妹っ」
友「あはは、そうかもね。ごめんね、妹ちゃん」
男「そういうつもりじゃないんだ、友」
妹は謝らずに友から顔を逸らした。
朝からなんだか、嫌な感じだ。
・ ・ ・
友は俺の幼馴染、というか、なんというか。
あっちはどう思ってるかわからないから、とりあえずご近所さんである。
だから幼稚園、小学校が同じ。なんと小学生のクラスはずっと同じというビックリするほどの奇跡。
中学でも三年間同じだということも特筆すべきところだと自分で思っていたり。
友「今年は受験だよーいやだなー」
男「そうだなぁ。無難なところにいければいいけど」
友「ダメだよ! 希望は大きく持たなきゃ!」
グッと拳を握りしめて友は小さく吠えた。子犬のような声だった。
男「……友はどこ目指してるんだ?」
友「私はね」
友はちょいちょいと俺に手招きをする。
多分『耳を貸せ』という合図だろう。
友「……」
男「! マジか!? あそこ相当賢いとこだろ?」
友「うわわ、内緒だよ内緒! 行けなかったら恥ずかしいじゃん!」
俺にはバレていいのか。
妹「仲良いよね、二人」
頬袋をハムスターのように膨らませた妹が、顔を真っ赤にしている。
男「だってこいつ――」
友「わー! だからダメだってば!」
友は本当に恥ずかしいのか、俺と妹の間に割り込んだ。
妹「……ふんっ」
妹はツンとした表情で歩くスピードを変更した。
男「お、おい。早いぞ」
妹「今日日直だった。先に行く」
男「そうか、じゃあな」
妹「……」
こちらをキッと睨んで、妹は足早に学校へ。
男「なに怒ってるんだか」
友「私、悪かったかな?」
男「恥ずかしかったんじゃないかな、兄と一緒に行くってのがさ」
友「そうかなー」
男「まあ、一緒に行こうっていったのは俺だしさ」
友「あ、そうなんだ」
男「こっちの方面で、通学してるやつ少ないだろ? だから行くなら一緒にと思って」
友「優しいねー」
男「そんなことないよ、普通さ」
友「普通か~」
男「そ、普通」
友「……最近思うんだけどさ」
男「ん?」
友「普通ってなんなんだろうね」
男「どうしたの、急に」
友「なんかね、最近になって普通ってどういうことなのかわかんなくなってさ」
男「んー普通かー」
俺の普通は、今である。
友にとっての普通がどうかは、俺にはわからない。
友「難しいよね」
男「そうだな、うーむ」
友「あはは、話変えよ。難しい話してると授業中眠くなっちゃうよ?」
男「寝るのはお前だけだろ」
友「あう、なんでそんなこと言うかな!」
俺は授業中寝たことがない。
眠くなることはもちろんあるけど、絶対に寝ることはなかった。
男「今日の一時間目ってなんだったけ?」
友「今日って普通の時間割だったっけ?」
男「ああ、普通じゃないのか」
友「普通……」
男「……普通、か」
謎は深まるばかりだった。
・ ・ ・
今日は授業はなく、一年生とのふれあいで一日終わるらしい。
まあ、大きな歓迎会みたいな感じで。
そういえば他のクラスで合唱やらなにやらやってたのは、それだったのか。
男「俺達のクラスってなんだったっけ?」
友「私達のクラスは意見がまとまらなくて結局やめたんじゃなかったかな」
男「俺確か演劇とか言った気がするけど、ダメだったのか」
友「『恥ずかしいからやりたくない』ってみんな言ってたしね」
男「恥ずかしいか?」
友「恥ずかしいんじゃないかな、普通は」
普通は、か。
男「そうか、普通はか」
友「あ、また普通っていっちゃったね」
今日のキーワードかもしれないな。
男「まあいいや。俺達が辞退してもその歓迎会はちゃんと続くわけね」
友「うん。あと、一年二年三年交えて座るんだって」
男「へえ、そうなんだ」
友「一緒に座ろー」
男「おう」
友とは良くカップルだと誤解されてしまう。
無理もない。いつも一緒にいれば俺が見たってそう思う。
でも、そういう雰囲気じゃない。
普通の友達だ。
『普通』の。
付き合うってことは一体どういうことなのだろう。
なにをどういう過程を踏めば、彼氏彼女の関係になるのだろう。
明確な境界線がわからない。
だからこそ、彼女とは付き合っていることにはならないのだ。
『付き合っている』と言えばそうかもしれない。でも、そうではない。
俺は彼女のことが好きだ。だけど、愛してはいない。
中学三年生にもなって、『好き』という気持ちと「愛している」の気持ちがどう違うのかは、わかる。
わかる気がする。
友「じゃあ、妹ちゃんと一緒に座ろうよ」
男「ああ、それがいいな」
友はニッコリと俺に笑いかける。
彼女の笑顔は本当に、ひまわりのような明るさだ。
・ ・ ・
男「妹ー」
妹「あ、お兄ちゃん」
男「歓迎会一緒に座ろうぜ」
妹「うんっ」
今年から歓迎会が導入されたので、俺はどのようなものなのかわからない。
まあ、俺は歓迎する側であって、される方ではないから。
体育館は既にガヤガヤとしている。一年生が恥ずかしそうに二年生や三年生と同席している。
珍しい瞬間だな。
妹「どこに座るの?」
腕を組んで放さない妹が俺にワクワクしながら話かける。
正直、痛い。
男「どこかで友が席取ってくれてるはずなんだけど……」
妹「……」
男「どうした?」
妹「友さんいるの?」
男「? ああ、そうだけど」
妹はアヒル口になって、急に顔をイラつかせた。
妹「やっぱり、別の席に座る」
男「お前なぁ。友がなんか悪いことしたか?」
妹「してない。でも、酷いもん」
男「なにが?」
妹「なんでも!」
妹はあっかんべーして、足早に群衆の中に入っていった。
なんなんだよ、本当に。
俺はすこしストレスを抱えつつ、友のもとに戻った。
友「おかえりー。あれ、妹ちゃんは?」
男「なんか、いやだって」
友「あらら……私、やっぱり嫌われてるのかな?」
男「そうだったらあいつは自分勝手な奴だよ」
理由があるならハッキリ言わないとわからないからな。
友「うーん、もしかしてさ。私と男くんが一緒にいると、会話に入りづらいってことなのかな?」
男「え?」
友「ほら、私と男くんが話してたら、妹ちゃんは一人になっちゃうじゃない?」
男「三人で話せばいいじゃないか」
友「そんなことできないのよ、妹ちゃんは」
男「どうして?」
友「それは……優しいから?」
男「あいつが? わがままだろ」
友「妹なんだもん、仕方ないじゃない」
妹だから、わがままか。
それが『普通』なのか。
友「男くんはお兄ちゃんなんだから、妹ちゃんのわがままを聞かなきゃだよ」
男「俺だって弟だ」
友「甘えてる男くんなんて気持ち悪いよ」
男「素直に言うなよ」
あはは、と友は声をあげて笑った。
友「私のことはいいからさ、妹ちゃんのところ、あとで言ってあげなよ」
男「大丈夫じゃないか? あいつにも友達はいるだろうし」
俺が行って、逆に迷惑になっちまうかもしれないし。
友「うーん、そうかもね。お兄ちゃん来たら他の子はびっくりかも」
男「でもまあ、友が言うならいくよ」
友「素直だね」
男「そうかな」
友「うん、とっても」
男「そうなのかな」
友「あはは、同じようなこと言ってるよ、男くん」
男「お前なー」
友「ねえ、男くん」
男「なに?」
友「男くんは、どこに行くの?」
高校の話だろうか。
そうだよな、それしかない。
男「うーん、俺は友みたいに頭良くないしな」
友「私だってよくないよ!」
男「嘘つけー」
友「この前のテストだってさ、国語はそこそこ取れたけど」
男「数学は?」
友「ボロボロ……私文系だから!」
男「でも受験では数学もあるぜ?」
友「し、知ってるよー。だから焦ってるんだよー」
男「焦る?」
友「この調子で行けるのかなって」
男「この調子って」
友「家で勉強はちょっとしてるけど、がっつりはしてないんだ」
俺は家で勉強なんて、テスト期間くらいだぞ。
男「家で自習してるだけ偉いよ」
友「偉くないよ! あの高校入るにはこれくらいじゃ足りないって……」
男「それがどうかしたのか?」
友「……どうもしないけど」
友は何か言いたげに、口を閉ざした。
友「男くんは、決めてないの?」
男「そうだな。入れる所に入ろうと思ってるよ」
友「上を目指さないの?」
男「高校で何か変わると思ってないからね」
勉強する気なんて、起きないから。
友「そういえば、姉さんの学校は?」
男「あそこは、近いんだよなー。近すぎる!」
友「中学とあんまり変わらないもんね」
男「友の目指してる高校は結構遠いよな?」
友「うん、自転車通学になっちゃうね」
男「自転車かー起きる時間とかも大分変わってくるかもな」
友「そりゃ変わるだろうね、あーやだなぁ……」
まだ入るかどうかもわかっていないのに、友はため息をついた。
友「男くんもこの気持ちを!」
男「味わいたくなーい」
友「そうだよねー」
友は体育館に用意された大きなモニターに目をやるとハッとした顔で俺にもう一度顔を向けた。
友「これだよ!」
男「え?」
友「私達受験の話ばっかりしてるから妹ちゃん嫌なんだ!」
男「……」
受験。
俺と友にしかできない話。
姉ちゃんには経験があるから、話せる。
でも。
実感もわかない妹には言ってもよくわからない。
中学受験でもしてなけりゃ、あの時期は始まってばかりなのだから。
男「そうかも!」
友「私達、できるだけ勉強の話をするのやめよう!」
男「ふっかけるのはお前だけどな」
友「え!?」
男「今日もお前から受験の話題を振ったぞ」
友「そうだったっけ……」
男「今年は受験だよーとか、なんとか」
友「うぅ……」
友「ごめん! もう二度と言いません!」
男「そんなに頑なな気持ちじゃなくていいよ」
友「……でも」
男「友がそんなに深刻に考えてくれるだけでも、妹は幸せ者だよ」
友「友達だもん、それが普通だよ」
男「普通」
友「あっ、また言っちゃったね」
男「普通、だよな」
妹のことを心配に思うこと。
それが、普通。
男「まあ、深く考えることじゃないよ。心の病ってわけでもないんだから」
友「そうだけどー」
男「あいつ、友達は俺よりいるからさ」
友「男くんだって友達たくさんいるじゃない!」
男「友以上のやつはいないってこと」
友「……そ、そーかなー?」
友は顔を赤くした。
友「いきなり変なこと言わないでよ~」
どこかのおばさんのように、俺の肩をすこし強めに何度か叩いた。
歓迎会とは言っても、ただの出し物大会であって、結局これで違う学年の子と仲良くなれるのかは甚だ疑問が残るものだった。
あるクラスは合唱。
あるクラスは演劇。
あるクラスは見ることに徹する(俺のクラスである)。
そんなこんなで、一日は終わってしまった。
帰りのHRも大きな連絡はなく、俺は友と下校の道を歩いていた。
男「片づけさせられなくて良かったぜ」
友「そうだねー、妹ちゃんは?」
男「顔あわせた途端逃げられた」
友「あらら」
男「家で覚えてろよー」
友「なにするの!?」
男「いや、なにもしないけどさ」
友「もー、ビックリしたー」
男「俺ってなにかしそうに見えるのか?」
友「……あはは、そんなことないよー」
男「嘘だ!」
友「ごめんなさい!」
友との帰りはいつも笑いが絶えない。
それは幸せだと思う。
楽しいのが幸せなのは、普通だろう。
・ ・ ・
俺の家に着くと、友は数歩俺より先に進んで。
友「それじゃあ」
男「おう」
友「妹ちゃんのこと、あんまりきつく言っちゃダメだよ?」
男「ああ、わかってるよ」
俺も友も、笑顔で別れた。
男「ただいまー」
姉「おかえり」
姉はひょこっと居間の入り口から顔を出した。
その顔は困り顔で、苦笑しているのがよくわかる。
男「どうしたの?」
姉「あはは、ちょっと、こっち来て」
笑い声には、まったく喜びの成分が入っていない、乾いた声だ。
男「?」
妹「……」
ムスッとしている妹が、食卓で項垂れていた。
男「妹がどうかしたの?」
姉「帰ってからずーっとあの状態。ご飯食べる? ってきいても『いらない』って」
男「やれやれ」
姉「学校でなにかあったのかな?」
男「さあね。話はしたの?」
姉「なにも言ってくれないの」
男「そっか。じゃあ俺が話してみるよ。姉ちゃんはご飯の用意まだなんだろ?」
姉「ごめんね。ありがと」
男「おい」
妹「……」
男「姉ちゃん心配してるぞ」
妹「……」
男「なんかあったのか?」
妹「……関係無いじゃん」
男「ある。決めつけて悪いけど、俺が関係してるんだろ?」
妹「なにそれ、自意識過剰」
男「ああ、そうかもしれない。でも、それ以外のことは俺にはわからないからな」
妹「……」
男「友も心配してたんだぞ」
妹「?」
男「お前が元気ないって」
妹「知らないよそんなこと」
男「心配してもらってるのに、なんだその態度は」
妹「説教?」
男「友の気持ちも考えろよ。悪いことなんて一切してないだろ」
妹「知らないよ、私」
男「おいおい子どもじゃないんだから」
妹「子どもだもん」
男「っ……」
妹「まだ、子どもだもん」
俺はこの時。
手が出そうになった。
男「そうかよ」
俺は聞き取れないくらいに小さな声を吐きだして、椅子から立ち上がり居間を後にした。
姉「どうしたの? ご飯食べないの?」
男「いらない。なんか、食いたくない」
姉「ええ、男のためにたくさん作ったのに」
男「……」
そう言われると、弱い。
男「ごめん、姉ちゃん。食べるよ」
俺はまた、沈黙の居間の食卓に座った。
男「妹」
妹「……」
男「明日は一緒に行こうな」
妹「無理しなくていいよ」
俺の精一杯の言葉だった。
『無理』なんてしてない。
妹「別に、お兄ちゃんと行きたいわけじゃないから」
わかってるさ。
でも。
それなら。
お前の不機嫌はどこから出て来たんだよ。
友に対する不機嫌がどこから来たのか。
イライラが止まらない。
姉「ま、まあ、ご飯食べよ? 今日は色々あるからさ~」
姉は少し陰りのある笑みで精一杯繕っていた。
妹「……いただきます」
男「いただきます」
こんな気分の悪い食事は生まれて初めてかもしれない。
俺が覚えてないだけかもしれないけど。
・ ・ ・
それからというもの、俺と妹は登校時間が大きく変わった。
変わったといっても、すこし間ができたくらいだけど。
友「結局、ダメだったかー」
友は大きくため息をついた。
男「ごめん、なんか気分悪いよな?」
友「そんなことないよ。妹ちゃんももう中学生だもん。色々あるんだよー」
男「お前も中学生だろ」
友「ふふ、よくわかったね」
友はいつもと変わらなかった。
というか。
変わるわけがないと思った――。
夏休み。
夏休みというのは、まあその名のとおりで、夏の休みなわけで。
しかし、今年は受験の夏。周りの奴らはみんな塾の夏期講習に出かけてしまった。
俺も、その流れで一緒に行くことにしたけれど。
まったく乗り気じゃない。
むしろ、行きたくなかった。
でも、そういえば去年姉も夏期講習に出ていて、希望の高校に行けているという現実があるので、
結局は行かなくてはならない、と自分の使命として行くことにした。
男「それでも」
気が進まないなぁ。
友も夏休みに入ってからめっきり顔をあわさなくなった。
彼女は自分で勉強するのだといい、夏期講習には参加していなかった。
まあ、でも。
自分で勉強できるやつは、自分で勉強した方がいいのかもしれない。
巻かれるものは巻かれていけばいい。
それが『普通』だ。
俺は自分で勉強ができないから、夏期講習に参加しているんだ。
とっても、単純な話。
男「……」
クーラーのおかげで素敵な環境で黙々と勉強。
なんて、俺にはできるわけもなく。
軽く聞きながら気持ちは遊びのことでいっぱいだった。
まあ、なるようになるだろう。
そんな気持ちでやっている自分に、勉強なんてできるわけがなかった。
男「いつ、終わるかな」
ボソリと俺が口にすると、周りの奴らも「確かに」と口をそろえて言った。
みんな、同じ気持ちなのだろう。
一刻一刻と迫るタイムリミットに焦りを感じつつも、気持ちはうわついているものだ。
それが『普通』だ。
・ ・ ・
夏休みというのはやはり、宿題をどう切り抜けるかがカギになる。
例えば、毎日毎日コツコツとやって、終わらせるか。
最終日に必死こいて全部やるか。
まあ、俺は後者だ。
酷い時は友達に見せてもらう。最終手段だけど。
……友の力は必須だ。やつは即戦力、キーパーソンだ。
見せてくれるよう電話しよう。きっと快く承諾してくれるだろう。
男「神様、仏様、友様」
都合の良い時にだけ、崇める俺だった。
友『いいよ』
友は愛嬌の良い声で、やはり俺の言うとおり快く承諾してくれた。
男「助かる、それじゃあ、今日行っていいか?」
友『あ、私さ……』
男「?」
友『遠い方の塾に行ってて』
男「……へー」
そうだったのか。
遠い塾というと、本格的な所だな。
友はこの受験、本気で向き合っているようだ。
男「そうか、それじゃあまた今度だな」
友『うん』
まあいい。夏休みが終わる前に写させてくれればどうということはない。
友『……あのさ』
男「ん?」
友『最近、会ってないね』
男「そうだな、俺も近場の塾の夏期講習に行ってるからな」
友『あはは、男くんも塾行ってるんだ』
男「といってもやる気は全然ないんだよ。もらった教材とかはバッグの中にしまったまんまだし」
友『男くんらしいね』
クスクスと笑い声が受話器から聞こえる。
友『あ、そろそろ塾だ。もう切るね。じゃあ』
男「おう、バイバイ」
友は元気そうだった。
なにも変わったようなところはなかったから、俺は安心した。
夏休みに受験のストレスとかに苛まれてなかった、ホッとした。
男「さて、と」
そういえば、妹は調子をすこしずつ戻していて、今では居間でテレビを観て大声を出して笑っている。
妹「お兄ちゃん、一緒に観ようよ」
こんなことを言うくらいに、いつもの妹に戻っていた。
男「おう、観よう観よう」
・ ・ ・
晩飯を食い終え、俺はまた居間で姉ちゃんと妹と一緒にテレビを観ていた。
10時を過ぎたころに、突然電話が鳴った。
誰も出る気配がないので、とりあえず俺が出る。
観たことのない電話番号。これは、携帯か。
男「はーい」
友『……男くん?』
男「あ、友か」
友『あはは、遠いとこ行ってるから、携帯持たされてるんだ』
男「そうなのか。まだ家に着いてないのか?」
友『うん』
男「電話なんてしてる場合か? さっさと帰ってこいよ」
友『えーっと、ちょっとだけ、いいかな?』
男「え?」
友『あの、空き地わかる?』
男「? わかるけど」
友『来てくれないかな?』
男「こんな時間に?」
もう10時はとっくに過ぎてる。俺は夜遊びなんてしたことのないタチだぞ。
友『ちょっと、会いたくって』
男「……そっか」
空き地は近くだし、家からそんなに遠くない。
それに、夏休みに全然会えなかった友に会えるのも嬉しかったし。
男「もう空き地には着いてるのか?」
友『うん、ベンチに座ってるよ』
男「了解。とりあえず、今から行くよ」
友『わかったよー。待ってるね』
俺は子機を置いて、玄関の方へ行った。
姉「どこ行くの?」
男「ちょっと、空き地の方に」
姉「もう夜遅いよ?」
姉は心配そうな顔をした。俺が非行に走ってしまうんではないかと言わんばかりの深刻な顔で。
男「ちょっと友と会うだけだから」
姉「! ほぉ~友ちゃんとねー」
妹「……」
男「別にそんなんじゃないって、とりあえず、行ってきます!」
姉「はいはい、あんまり遅くならないでね!」
男「わかってる!」
・ ・ ・
走って2,3分程度の場所に、友のいる空き地はある。
夏の夜はジメリとしつつもすこしヒンヤリとしていて、心地良かった。
友「……あ」
男「おまたせ」
夏休み前に見たのが最後だったので、もう半月くらい顔をあわせていなかった。
友「ふふ、変わってないね」
男「そっちこそな」
男「で、どうしたんだよ?」
友「うん……夜空が綺麗だな~と思って」
友は肩にかけていたショルダーバッグを手に持って、両手を後ろにまわした。
男「確かに、今日は雲もなくて綺麗だな」
友「……本当に綺麗」
男「そうだな」
友はこっちを向いて笑いかけた。
友「こんな時間に呼んでごめんね」
男「いいんだよ、別に。俺も友に会いたかったからさ」
友「私に?」
男「うん」
友「そっか、そっか」
友は顔を軽く掻きながらハニかんだ。
友「私も、同じ気持ち」
男「そうか」
それは良かった。
友「この前さ、私の言ったこと覚えてる?」
男「……なんのこと?」
友「『普通』ってなんなんだろうって」
男「ああ、それか」
友「ちゃんと覚えてる?」
男「俺も結構な頻度でそのことについて考えてたりするぞ」
友「そうなの? 私と一緒だね」
友はこちらに体ごと向いて、こちらにゆっくりと歩いてきた。
男「?」
友「私もずーっと考えてたんだ」
男「ど、どうしたんだ?」
友はいつもの可愛らしい笑顔でこちらに向かってくる。
しかし、歩の進み方が怖い。
なんだか、いつもの。
いつもの友じゃない――。
友「私の気持ちは、『普通』なのかな?」
友は俺に最大限まで近づいて。体のスレスレまで近づいて――。
俺に、キスをした。
男「! ちょ、友!?」
友「私、わからないんだ」
距離をとろうとする俺を友は抱きしめて放さない
男「!」
友「この気持ちは、なんなのかな?」
友「男くんのことを思うと、切なくなって、体が熱くなるの」
友はもう一度俺にキスをする。
軽いものではなく、長いキス。
男「ま、待てって! 友!」
友の急な行動に俺は驚きを隠せない。
隠せるわけがない。
こんな夜、誰もこんなところを通るわけがない。
ある意味安心。ある意味不安だ。
友「男くんのことをもっと感じたい」
男「止まれ、友!」
俺は友の肩を持って制する。
男「こんなのおかしいって、俺達、まだ中学生だぞ!?」
友「……」
男「こんなこと、中学生が普通――」
友「わからないよ」
男「え?」
友「なにが『普通』か、わからないよ」
友の眼から、大粒の涙がこぼれる。
それと同時に、友は力なく膝から崩れ落ちた。
友「わからないんだよ……なにが『普通』なんだか」
男「……友」
友「教えてよ、男くん」
友の泣き声は本当に、小さな声で。
俺にしか聞こえないように、すすり泣いていた。
普通。
『普通』って、なんだ。
俺にとってこれは『普通』じゃないと思った。
でも、友は『普通』だと思った。いや、わかっていなかった。
だから、行動に移した。
でもそれは否定された。それは、『普通』じゃない――と。
結局、『普通』とはなんなのか、わからない。
わからない、わからない。
・ ・ ・
友は泣き疲れてしまったのか、起き上がるとぐったりとしていた。
俺は友の教材がぎっしりと入ったショルダーバッグを肩にかけ、友をおぶって帰ることにした。
蝉の声がちらちらと聞こえ、こおろぎの声も聞こえていた。
男「……友」
友の目の辺りは赤く腫れていて、涙のあとがクッキリとしていた。
男「『普通』、か」
俺は一人、友の小さな重みを感じながら空き地を後にした。
・ ・ ・
あの日のことなんかなかったかのように、俺と友は友の家で宿題を(主に俺が)写しあいをしていた。
友はシッカリとしていて、本当に助かった。
友「ちゃんとやらないとダメだからね」
男「ああ、ちゃんと写す!」
友「あはは、そうなっちゃうね」
甘えさせないようにしないと、友は拳を固めて宣言した。
男「夏期講習終わったけど、そっちはどうなんだ?」
友「うん、こっちもそろそろおしまい。これで遊べるねー」
男「そうだな。今度俺んちに行かないか?」
友「でも、妹ちゃんがさ」
男「大丈夫だよ、多分」
多分、な。
友「そうかなー」
男「妹も思春期だったのさ、大目に見てくれ」
友「私達もそうでしょ」
男「あはは、そうだな」
中学ってのは複雑な時期だって、姉ちゃんも言っていた。
姉ちゃんも悩みがあって、それを解決するすべがなかった。
だから自分と向き合う時間を大切にした、と。
たった一年長く生きてるだけだけど、姉ちゃんの言葉は凄く胸に響いた。
流石姉ちゃんだ。
ただ、それがぶつかって。
なんでかそれが友に向かってしまっただけなのだ。
それなら、俺とか、姉でもいいのに。
友「わかった、じゃあ、いつにしよっか?」
男「うん、明日でいいんじゃないか? プリンとか買ったぞ」
友「プリン! 私好き!」
男「だから買ったんだよ」
友「えへへ、ありがとー」
純粋な彼女にも、裏がある。
『普通じゃない』所が。
俺はあの時、気づけなかったのだろう。
本当の彼女に。
本当の彼女の気持ちに。
・ ・ ・
姉「へえ、久しぶりね、友ちゃんが家に来るの」
よーし、お昼ご飯ご馳走しよう! と姉は張りきった。
男「心配かけさせないでね、あいつは俺と違って気をつかうから」
姉「いや、あんたも気をつかいなさいよ」
芸人のようにツッコんで、姉は笑った。
妹「誰が来るの?」
男「友だ」
妹「……そっか」
男「謝るチャンスだぞ?」
妹「私が?」
男「そうだよ」
妹「……」
妹は一瞬具合が悪い顔をしたが、すんなりと戻って。
妹「うん、わかった」
男「!」
意外とあっけなく、妹はそう言った。
妹「いつまでも、こんなじゃ、ダメだもんね」
男「ああ、そうだな」
妹「なんで驚いてるの?」
男「そりゃ驚くさ、俺はまた『やだ』とか言うのかと」
妹「なんかそのお兄ちゃんの決めつけがむかつく」
男「わ、悪い悪い」
妹「……いつまでもお兄ちゃんが笑ってくれないからさ」
妹が口ごもってなにかを言っていたが、俺は聞き直そうとはしなかった。
・ ・ ・
午後12時半に、インターホンが鳴った。
もちろん友である。約束の時間ちょうどに来るところに、律義さを感じた。
男「おーっす、入っていいぞ」
と、応答ボタンを押して友に声をかけた。
友「えー、勝手に入るのはなんかなぁ。久しぶりだから男くん来てよ」
男「人使いのあらい奴だ」
友「こんなんで人使いがあらいの!」
いつも通りの冗談を交えて、応答ボタンを切った。
・ ・ ・
ドアを開けると、ラフな私服を着た友がいた。
男「いらっしゃい」
友「なんか、お店の人みたい」
くすくすと笑って、俺を指差す。
姉「あー、友ちゃんお久しぶり! ささ、上がって上がって」
友「姉さん、久しぶりです」
俺の背中にべっとりと乗っかったテンション高めの姉は友に手招きして、中に入らせた。
友「良かった、変わってない!」
男「数年で変わるものでもないけどな」
友「模様替えとかしてると、結構変わるものだよー」
友の家は見事模様替えに成功し、とてもすっきりとしていて、印象が全く変わっていた。
男「そうだな、お前が言うと納得だ」
姉「お昼は食べていくよね?」
友「はい、お母さんにも言っておきました」
姉「オッケー! じゃあ今から用意するから、男の部屋で待ってて!」
男「姉ちゃん、持ってきてくれるの?」
姉「もち! 久しぶりに友ちゃんに料理をするんだもん、燃える!」
そういえば、姉ちゃんは俺たちが中一の時に、一度友に料理をふるまってたっけ。
あの時は友がすっごく美味しい! と大絶賛して、それから姉は家事を率先してやるようになったんだ。
男「それじゃあ、友、行くか」
友「うん」
友と俺は階段を上って、部屋に行くことにした。
友「……」
男「ん?」
ふいに友は俺の部屋の前で止まった。
友「あの、ね」
男「どうしたんだ?」
友「男の子の部屋に、女の子が入るってことはさ」
男「……?」
友「いいのかな?」
どういう意味だ。
男「なんだよ、急に」
友「うーん、なんというか」
友は俺から視線を外して、宙を見始めた。
男「やめろよ、照れられるとこっちもなんか恥ずかしいぞ」
部屋になにか変なものがあるわけでもないのに、だ。
別に恥ずかしくないよ。
友達なんだから、それが『普通』だろ。
友「私もすっごくドキドキしちゃっててさ」
男「……」
この時に、思う。
そうか、友も――。
友も、『女』なんだ。
男「とりあえず、中に入ろう」
俺は友の手を握って、中に入ろうとした。
友「っ!」
友は俺の手をすかさず振りほどき、顔を背けた。
友「いきなり触るの……ダメだよ」
男「……え?」
友からいつもの笑顔が消えていた。
とても冷たい目をして、まるで俺を見ようとしない。
友「……ご、ごめん。中、入ろ」
顔を緩ませて、友は笑って見せた。でも俺には。
俺には、笑っているようには見えなかった。
しばしの沈黙の中、俺が最初に声を出した。
男「……あはは、変わってないだろ?」
友「そうだねー、変わってるとすれば、ちょっとだけ綺麗になった?」
男「以前は散らかってたって言いたいのか?」
友はまた、元に戻っていた。一安心だ。
友「そうじゃないけど、なんか息苦しかったと言うかなんというか」
男「ひでえ!」
友「今は――」
男「今は?」
友「――ドキドキする」
男「……」
友は、顔をリンゴのような赤色に染めた。
男「……そうか」
リアクションが取りづらかった。
今日まで、友といて。
友のことを異性とか、そういう観念で見ていなかった俺にとって。
今の友は、俺の知ってる友じゃなかった。
『変わっている』。
つまり。
『普通』じゃない。
俺は、この時。
早く、時間が過ぎればいいと思った。
最低なのは、わかっている。
でも、それでも。
今のこの状況は、俺にとって最高で、最悪だった。
友といることに苦を覚えたのは、初めてだった。
こんな気分になることを、誰も、そして俺すら思わなかった。
そんな空気の中、コンコン、と小気味よいノックの音が聞こえた。
これはきっと、姉だろう。食事を持って来たのだ。
男「開けていいよー」
ドアが開くと、そこには妹がいた。
妹「お姉ちゃんに持って行って言われた」
男「おお、妹か」
妹「……」
友「お邪魔してます」
そういえば、妹だけ友に会っていなかった。
男「おい、妹」
妹「! み、耳元で話しかけないでよ!」
男「うるさい、今がチャンスだ」
妹「……わかってるわよ」
妹は持ってきた食事を小さなテーブルに置いた。
友「ありがとー」
妹「友さん」
友「ん? なぁに?」
妹「この前はごめんなさい」
ペコリと頭を下げる。
男「ほら、なんか機嫌悪かったってこと」
友「私も悪かったんだよ、ごめんね、妹ちゃん」
妹「……」
ホッと息をついた妹は「これでいい?」と言わんばかりの顔で俺に視線を送ってきた。
男「これでよし」
妹「あ、あと一つ」
妹は友の近くに寄って、耳元で話した。
男「?」
友「……な、なんで?」
妹「言いたいこと、いいましたから」
男「?」
妹「……それじゃあ、食事は置いたから」
妹はニコッと俺に笑いかけた。
何を言ったんだ。
友「……ごめんね、男くん」
男「な、なにが?」
友「私って、そんなに……」
男「妹に何言われたんだ!?」
友「……『あなたがお兄ちゃんの笑顔を奪ってる』」
男「!」
何を言っている?
友「『だから、あまり一緒にいすぎないでください』」
どういうことだ。
なんで、そんなことを。
妹は。
妹 は な ん で そ ん な こ と を 言 っ た ?
友「ごめん、ごめん……」
男「いや、大丈夫だよ友」
友「でも、妹ちゃんが……」
そもそも、なんで妹がそんなことを言うんだ。
俺はあいつに、何も言ってないし、友のことを悪く言ったことは無い。
それなのに、妹はなんで……?
男「と、とりあえず飯、食おうぜ? な?」
友「なんだか、食欲無くなっちゃった……悪いんだけど、帰るね」
男「え、お、おい!」
友は絶望した表情で、俺の部屋を出た。
すかさず俺も追いかける。
友の背中はとても悲しく、嘆いているようだった。
男「待てって!」
肩を掴むと、グラリと揺れて、友の顔はこちらを向いた。
男「!」
友は、泣いていた。
涙で顔を濡らしていた。
まるで、あの日と同じように。
男「な、泣くなよ……お前はなにもしてないじゃないか!」
友「今、男くん――」
友は涙を流しながら微笑んで見せて。
友「――全然笑ってない」
男「それは――!」
笑ってる場合じゃ、ないだろう。
お前が悲しい顔をしてるのに。
俺には――。
――笑えって言うのか。
友「気づけなくて、ごめんなさい」
男「なにがだよ! お前は悪くない!」
俺は力強く友の肩を掴んだ。
友「じゃあどうして笑ってくれないの!?」
わからないよ、私――。
友はそういうと掴んでいた肩を揺らし、俺の手を解いた。
男「待っ――」
俺は声は途中で途切れた。
いや。
妹「……」
後ろから妹に体を抱きしめられ、とっさに声が出なくなった。
男「……妹!」
妹「もう、いいよ」
男「な、なにがだよ!」
妹「お兄ちゃんはもうつらい気持ちにならなくてもいいの!」
男「どういうことだよ」
俺がいつ。
男「どうしてつらいんだよ!?」
そんなこと言った。
俺は友といて――。
つらいと思ったことなんてない。
妹「お兄ちゃん!」
男「放せ、妹! 俺は友を追わないと……」
妹「友さんといるとお兄ちゃんは無茶して――」
妹「いつも怪我ばっかりしてたじゃない!」
男「!」
昔。
友が学校のベランダから落ちそうになったのを助けて骨を折ったことがある。
昔。
友が上級生の男子にぶつかって殴られそうになった時、俺がかばったことがある。
昔。
友が海で溺れているのを助けて、逆に溺れたことがある。
だから、なんだ。
友が危険になったら助けるのは、当たり前のことだろう。
普通だろう。
それに、そんなことは昔の話だ。
男「友は俺の、大事な友達なんだ!」
妹「お兄ちゃんが辛くなくても――」
妹はさらに強く俺を抱きしめた。
妹「私はとっても辛いの!」
男「!」
妹「友さんはニッコリと笑ってお兄ちゃんの横に平然と立ってる」
妹「私にはそれが、とっても嫌なの!」
妹「お兄ちゃんが気にしてなくて私は、たくさんたくさん心配してる」
妹「お姉ちゃんだって、すっごく心配してる」
男「……」
男「でも……」
妹「別にお兄ちゃんが代わりになることないじゃない!」
俺は。
友を助けて。
妹「友さんだって、心配する」
妹「『私のせい』って、思ってるはず」
男「!」
友は、悪くない。
男「は、放せ、妹!」
妹「いや!」
友が責任を感じているなら。
それを否定しないと、ダメだ。
男「このっ!」
俺は妹の制止を振り切り、階段を猛スピードで下りた。
姉「お、男……」
男「! どいてくれ、姉ちゃん」
姉「……うん」
男「ごめん」
姉「男」
男「なに?」
姉「……私は、いいから」
男「え?」
姉「あんたが思うままに行動しても良いと思う。でも」
姉「無茶はしないで」
男「……はは」
今、言わなくてもいいのに。
・ ・ ・
友と俺の家は遠いといえば遠いし近いといえば近い。
友はきっと家に帰ったはずだ。
それ以外に行く場所なんてないだろうし。
男「はっはっはっ……」
なんでだろう。
俺は、とても焦っていた。
このままだと俺と友は。
いつもの状態でいられない気がした。
『普通』でなくなる気が、した。
男「……!」
俺はふと、思い直した。
俺が追いかけてくるのをわかっていて。
家に戻るか?
友は足が早い方じゃない。
着く前に俺が追いつく可能性だって、ないわけじゃない。
男「……」
俺は昔のことを思い出す。
俺と友がいつも一緒にいた場所。
空き地?
いや、違う。
男「……?」
そういえば、俺はあいつと。
どこで、一緒にいたんだ?
男「……」
悲しいもんだ。
いつも一緒にいたけれど。
いつも一緒にいた場所はわからなかった。
男「……よし」
しらみつぶしで探すしかない。
男「まずは――あそこからだ!」
・ ・ ・
友は本当に、子どものころから。
笑顔が素敵で、とっても眩しかった。
性格は優しくて、ちょっとお人好しで。
可愛くて、元気いっぱいで。
そんな友を俺は――。
俺は――。
・ ・ ・
男「!」
友「……」
男「友!」
友「!」
見つけた。
男「お、おい!」
友は俺を見るなり、逃げ出した。
友「こ、来ないで!」
男「なんでだよ、まだちゃんと話を……」
友「話をしたって、もうダメなの!」
男「!」
友「私は男くんのことが好き、でも、あなたが辛いと思うなら、一緒にいたくない」
男「俺は辛いと思ったことなんてない! 本当だ!」
友「……」
友は、走るのをやめない。
男「友!」
俺だって、好きだ。
友のことが。
男「俺だってお前のことが!」
男「!」
友はこちらを向いて、前を見ていなかった。
突如として曲がり角から、鉄の塊のような物が見えた。
男「危な――」
友「っ!!!」
男「……あ……」
事件でよく聞く、事故。
トラックにはねられて、死ぬ。
そんな事件が、絶えない。
そして俺が見たものは。
それは――。
友だった。
男「友!!!」
友は路上に投げ出されていた。
ピクリともしない。
男「友、友!」
駆け寄って、声をかける。
友「お……男、くん?」
男「友!」
友「あはは……やっちゃった」
男「バカ野郎、前向いて歩けっていつも言ってるだろ……!?」
違う。
今はそんなことどうでもいい。
男「救急車、早く!」
トラックの運転手に怒鳴るように言い、運転手もすぐに電話をかける。
このままじゃ、友は――。
・ ・ ・
病院は、静かで、どことなく不安になる場所で。
そして、俺にとっては。
絶望の場所であった。
男「……」
姉「……男」
姉がやってきた。
姉「……友ちゃんは?」
男「……」
姉「……」
姉の顔がグッと強張り、涙が溢れた。
男「……姉ちゃん」
姉「男……」
男「……俺は、大丈夫だよ」
妹「はぁはぁ……!」
妹も遅れてやってきた。
男「妹」
妹「ごめんなさい、お兄ちゃん」
男「……」
妹「私のせいで、私のせいで……」
男「お前のせいじゃない。悪いのはあいつのせいさ」
前を向いていなかったあいつのせい。
そして。
俺のせいだ。
・ ・ ・
男「……」
友は、眠っていた。
息をせず。
静かに、静かに。
永眠(ねむ)っていた。
男「……」
妹「うぅ……」
妹が泣き崩れる。
友の母さんはすでに泣き疲れているようだった。
男「おばさん……俺……」
おばさんはこちらに振り絞った、見え見えの笑顔をした。
おばさんは俺を責めてはいない。
でも。
それがとても、つらかった。
……………………
友は、笑っていた。
最後まで、笑っていた。
友『あはは……男くん、凄い顔してる』
男『いいから喋るな! 一緒にいるから』
友『そっか……一緒にいてくれるんだね』
男『そうだ、俺はお前と一緒にいても辛くない、見ろ!』
俺は精一杯笑った。
つもりだ。
友『……無理しちゃってさ』
滝のような汗を流している友は、またニコッとして。
友『嫌だなぁ……』
男『……?』
友『死にたくないなぁ』
ポツリと、そうつぶやいた。
……………………
死にたくない。
それが、最後の言葉だった。
それが、『普通』だ。
死を怖がること。
それは、『普通』じゃないか。
男「……」
俺は病室から出ようとした。
姉「男!」
男「……なに?」
姉「いいの? もう、いいの?」
男「……ああ」
・ ・ ・
男「……」
俺はベッドに仰向けになっていた。
正直、疲れた。
あのあと警察に色々と聞かれて。
病院に行けたのはその後1、2時間くらいあとだった。
男「……なんなんだろうな」
こんなことを言っていても。
涙は止まらない。
男「……うっ」
鮮明に思い出す。
友の、姿を。
最後に見た、痛々しい姿。
男「……ううっ……」
男「うわああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
俺は、叫んだ。
なにも考えずに、叫んだ。
そうすれば、全て忘れられて。
全てが元に戻って。
『普通』の日常になっていると思って。
・ ・ ・
男「……」
叫び疲れて、寝てしまったみたいだ。
男「……」
姉「おはよう、男」
部屋のドアから声がした。
姉「……あの、えっと」
男「ご飯はもう出来てるよね?」
姉「あ、うん」
男「……そっか」
姉「大丈夫?」
男「なにが?」
姉「……わかるでしょ」
男「……」
男「ああ、もう、大丈夫だよ」
姉「……まだ、だね」
男「え? なんで?」
姉「……」
姉ちゃんは俺の顔を指差して、瞳を滲ませた。
男「……」
俺の顔には。
まだ、涙があふれていた。
指に濡れた感触がして、それを涙だと認識するのに、時間はかからない。
男「あれ……おかしいな」
姉「無理しないでいいんだよ」
男「……いや、無理なんか」
姉「男っ」
柔らかく、姉ちゃんは俺を抱きしめた。
姉「……辛いのは私だって一緒。だけど、あんたが一番辛いだろうから」
男「姉ちゃん……」
姉「だから、泣いていいんだよ?」
男「う……うわぁああああああああああああああああ!!!」
俺は、姉の胸に顔を埋めて泣いた。
一生分の涙を流すように。
子どもが親に反応して欲しいがために出すような声を出して。
俺は再び叫んだ。
・ ・ ・
男「……あのさ、姉ちゃん」
姉「……ん?」
泣き止んで、俺は姉ちゃんに声をかけた。
姉ちゃんは優しく微笑みかけて、俺をゆっくりと撫でた。
男「俺に勉強教えてくれないかな?」
姉「ど、どうしたの急に?」
男「いや……ちょっとさ」
姉「……うん、いいよ」
男「ありがとう。姉ちゃん……いや」
男「姉さん」
・ ・ ・
友の葬式は、静かに行われた。
俺も家族と一緒に参列した。
『最後だから』と、親は会社を休んだらしい。
俺のことを見てくれていたような子だから。
母はそう言っていた。
妹は涙を流し、グスグスと鼻を鳴らしていた。
姉さんは溢れ出る涙を拭って、それでも毅然とした表情をしつづけていた。
そして俺は――。
泣かなかった。
泣かなかったというか。
もう、泣き尽したんだ。
だからだと思う。そうであってほしいと思う。
そうじゃなきゃ――。
俺は、友のなんだったんだと思ってしまう。
なにも感じないのかと思われる。
男「……さよなら」
友の冷たい綺麗な顔を見て。
俺は小さくそう言ったのを覚えている。
それから俺は、勉強をするようになった。
なにかあったのかと言われても、「なにも」と答えて。
ただひたすら、勉強した。
姉さんの助けもあってか、勉強は想像以上にはかどった。
そりゃそうだ。姉さんが近くの高校を選んだのは家族のためであって、もっと上を目指そうとすれば行けたんだから。
つくづく、俺と本当に違って、なんでもできる人だと思う。
妹「お兄ちゃん」
男「ん?」
妹「これ、夜食」
男「ああ、ありがとう。助かるよ」
妹「べ、別にお兄ちゃんのために作ったわけじゃないから」
男「え、これお前が作ったの? 不安だ」
妹「な、なんですって!?」
男「冗談だよ。ありがと」
妹「あっ……う、うん」
男「?」
妹「な、なんでもないよ、なんでも」
男「……そうか」
妹「……それじゃあ、頑張ってね」
男「おう、ありがとう」
ガチャ バタン
妹(……なんだろ)
妹(あれからすっごく素っ気なくなったけど……)
妹(なんで、ドキドキするんだろう)
・ ・ ・
男「……あ、受かった」
冬。
俺は見事高校に合格した。
男「……」
なんだか、あっけなくて。
俺はスッキリとした気分にはなれなかった。
・ ・ ・
姉「おめでとう、男」
男「姉さん」
姉「これであんたもついに高校生かぁ~……びっくりだね」
男「あはは、そうかな」
姉「そうだよ。だって、まだまだ小さいと思ってたんだけどなあー」
姉「気づいたらもう私より身長も高い! 筋肉もついてるし!」
男「オトコだからね」
姉「たくましくなったねえ~本当!」
男「ありがとう、姉さん」
姉「ん?」
男「姉さんの力がなかったら、受からなかったよ」
あそこはとてつもなく実力の高い学校だから。
俺一人じゃ無理だったと思う。
男「ありがとう、姉さん」
姉「……は、ははは! それは良かった良かった! 私に感謝しなさーい」
男「うん、するよ」
姉「……男、おめでとう」
男「ありがとう」
姉「……本当に、ね」
男「うん」
・ ・ ・
友が入りたいと言っていた高校に合格した。
でも、友との別れ俺は、クラスの中でもとても地味な部類に入っていた。
なにもする気になれなくて。
ただひたすら勉強していた。
きっと高校でもそうだろう。
そう思っていた。
だけど。
高校一年生の時に。
?「君、名はなんという?」
男「え?」
?「名前だ。教えてくれ」
男「……男ですけど」
?「ふむ、そうか」
?「私と一緒に、生徒会にならないか?」
男「あ、あなた誰ですか?」
?「私か……私は――」
会長「――次期会長になる者だ」
思いもよらない出来事が起こったんだ。
The past of MAN Ⅰ END
女「大変なことが起きました」
撫子「はい……」ゴクリ
牧「非常事態だね」
狐子「……」
女「このままでは、私達の存在意義が無くなってしまいます。なにか作戦を練らないと」
牧「うん、ついつい普段の生活に慣れていたら、こんなことになっちゃったね」
撫子「そうですね……なにか、新しいことをしないと」
狐子「……なあ」
女「なんですか?」
狐子「大変なことって、なんだ?」
牧「はぁ……」
撫子「狐子、あなたはもう重症です!」
女「このままではあなたは……」
狐子「いや、意味がわからん。お前ら、なにを焦っているんだ?」
女「あなたは、アンドロイドです」
狐子「……ああ、そういえばそうだったな」
撫子「な、なんということでしょう!」
牧「まさか、忘れてたの!?」
狐子「いや、最近出番もなかったし……」
女「このままでは狐子が危ないです。あなたは知らぬ間に影の存在になり得ます」
狐子「……いや、私は――」
狐子「人気あるから大丈夫だと思う」
女・牧・撫子「!」
狐子「この中で唯一の妹的存在。私以外には務められない役どころだ」
牧「す、すんなりと言ったね……」
狐子「そして、この耳!」ピョコンッ
撫子「! 眩しい! 萌え要素てんこもり!」
牧「これには勝てない……」
狐子「私に勝てるやつはいるのか?」ピョコピョコ
女「ですが、狐子」
狐子「なんだ?」
女「あなたはこの中で一番メインの話が少ないですよ」
狐子「!」ギクッ
女「作者は『うどんの話をしようしようと思ってるけどなかなか実現しない。後回しにしよう』といつも言っています」
狐子「さ、作者って誰だ!?」
牧「確かに、それに、メインの回より、サブであるはずの回で人気を上げている節がありますね」
狐子「なんてことを言うんだ!」
撫子「男さまとの接触が一番多いのも、話に出やすいという点では長所になりえますからね」
狐子「うぐっ……」
女「このままでは、あなたは作者に見離されてしまうかもしれません」
狐子「い、いやだぁ! 私はもっともっと出たい……!」プルプル
女「その意気です。大丈夫です。アンドロイドであるあなたは、むしろメインに近い存在なのですから」
牧「うん、きっと次の回は狐子メインだよ」
狐子「そうか……そうだな! よし、期待しておこう!」
※次回のメインは庶務です。狐子の話は未定です。
・ ・ ・
女「それでは、これから自己紹介、そしてそのアンドロイドの良いところを言っていきましょう。」
狐子・撫子・牧「賛成だ・です・だね」
女「それでは、誰から行きましょうか」
狐子「それはもちろんお前だろう、言いだしっぺなんだから」
女「……わかりました。それでは、自己紹介させていただきます。こほん」
女「DL-003。『無表情人間機械』表情形成システムを根本から抜き出され、どんなことがあっても無表情です」
女「ですが、最近では様々な現象により、表情が生まれた、とも言われています。原因は不明です」
女「今は、男さん、狐子、撫子さん、牧と一緒に住んでいます。毎日がとても楽しくて、つまらない日なんて、ありません」
女「家では主に家事を行っています。料理は昔下手でしたが、今はとても上手だと褒めてもらえるようになりました」
女「近くの喫茶店でアルバイトをしています。そこには男さんの先輩にあたる会長さんもいて、毎日大忙しです」
女「……と、言ったところでしょうか?」
狐子「すごいな……」
牧「ボク、こんなに喋れるかな?」
撫子「素敵でした! とてもわかりやすいです!」
―――――女の評価―――――
狐子……料理がうまい。うどんが美味い。コシがあって美味い。毎日うどんにして欲しい。
牧……優しい。ボクよりなんでもできて、凄い人。憧れるなぁ。
撫子……料理の先生。物静かで、一番女性らしい方。尊敬してます♪
――――――――――
女「……」
牧「お、女……?」
女「とっても、嬉しいです」
撫子「うふふ、それは良かったです♪」
狐子「普段聞けないからな、こんなこと」
女「でも、狐子の評価は一体なんなのでしょう。うどんうどん……」
狐子「はわわ、と、とりあえず次いこ次ー!」
狐子「私はDDL-002、『狐耳人間機械』、感情伝導型狐耳を持っている」
狐子「感情が高ぶると耳が現れる。すこし困ったもので、自分ではコントロールできない……うむ」
狐子「狐耳だけでなく、行動力も狐と同等以上。鼻も人間とは比べ物にならないくらいいいぞ」
狐子「女と同じで、私含めていちにさんよん……五人で暮らしてる!」
狐子「好きなモノはテレビと男の……おっほん!」
牧「座るの好きだよねー」
狐子「う、うるさい!」ピョコピョコ
狐子「あとは、うどんが好きだ! うどんならなんでも食べるぞ! 嫌いなのは臭いのきついものと不味いうどんだ!」
女「うどんならなんでも食べるんじゃ」
狐子「う、うるさーい!」ピョコピョコッ
―――――狐子の評価―――――
女……活発な行動力 身のこなしの良さ 直感的行動
牧……感情豊かで面白いね。子どもっぽいところがまたいいかも。
撫子……可愛くて、ギュッとしたくなる愛らしさ
――――――――――
狐子「……うお……ハズカシイ」
牧「きっとそうだろうね、ちょっと緊張して来ちゃったかも」
撫子「私だけ酷評とかありませんように……」
女「さて、それでは次ですね」
撫子「私ですね!」エッヘン
撫子「SDF-004、『和風人間機械』です。いたって特別な機能はついていませんが、常時和服を着ています。和服じゃないと落ちつかなくて……」
撫子「あ……えーっと……日本料理は得意です! あと……えっと……」
撫子「ど、どうしましょう、全然私なにもないですよぉ~」アセアセ
牧「一番擬音多いよね」
撫子「そ、そういえば!」ピカーン
狐子「あと、テンションが高い」
撫子「そ、そうですか?」
女「あと、妄想が……」
撫子「あーやめてくださいぃ!」
―――――撫子の評価―――――
女……大和撫子 大人っぽい印象 優しい微笑み
狐子……羊羹が美味い。おはぎが美味い。わらび餅も美味い。うどんも美味い。
牧……大人っぽいのに笑顔はとっても無邪気で子どもっぽいところが可愛い。お姉さんみたいで優しいよね。
――――――――――
撫子「はう……」カァァ
狐子「真っ赤っかだぞー」
撫子「だ、だって……うう、恥ずかしいですね!」
牧「はー……ドキドキしてきた」
女「それでは、次、牧」
牧「うん」
牧「えっと、DAH‐005、牧です」
狐子「ん? 何人間機械だ?」
牧「ボクの型版のアンドロイドにはそういうのないんだ」
牧「えっと……紹介するっていっても、なにをすればいいのかな?」
牧「趣味はランニング。スポーツ大好きです。今度一緒に遊びましょう。……って、誰に言ってるんだろう」
牧「あと、仮面ラ○ダーが好きです。あはは、ちょっと子どもっぽいかな……」
牧「……あ、あと、料理はそこそこできます。人に振舞うほどのものじゃないけど……ね」
牧「うーん、これくらいかな?」
狐子「胸は大きい」
牧「い、言わなくていいよ……!」
―――――牧の評価―――――
女……運動神経が良い 知的 協調性がある
狐子……オムライス美味かった!
撫子……撫でた時にちょっと照れるのが可愛い♪ とってもシャイ。
――――――――――
牧「うわ、恥ずかしい! 可愛いなんて言わないでよ……」テレテレ
撫子「うふふ~」ナデナデ
牧「わわっ!」
撫子「やっぱり、可愛い♪」ニコッ
牧「も、もお!」
女「これで、全員やりましたね」
狐子「ああ、そうだな」
女「それでは決めてください、男さん」
男「え!? 俺!? つか俺いたのか!?」
狐子「喋ってなかっただけだろ」
男「ちょ、ちょっと待て、何を決めるの?」
撫子「もちろん、私達の中の誰かを……です♪」
男「いや、なにを基準に!?」
牧「ほら……早く決めてよ」
男「いやいや、意味がわからんって!」
撫子「ほらほら……早くしてください」
狐子「さあ、早く」
牧「焦らさないでよ」
女「早急に」
男「き、き、き……」
男「決められるかーーーーーーーーーー!!!!」
男「再開早々、寝オチかよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」
To be continued!!!
要「~♪」
庶務「……あの、要?」
要「はい、なんですか!」
庶務「なんで私とあんたで遊園地行かないと行けないの?」
要「特別招待券があったからです!」
庶務「いや、そうだけどさ」
庶務「私じゃなくてもいいじゃない?」
要「そ、そんな……ショックです!」
要「今日は私と庶務先輩の記念日なのに……」
庶務「え、そうなの? まさか、一緒に遊園地に行った記念日とか言わないでよね?」
要「さ、さらにショックです!」
庶務「え、ええ?」
要「今日は……庶務先輩が私に初めて会った日なのです……」
庶務「あ、そうなの?」
要「悲しい……トリプルショックが起きるなんて……」
庶務「……そ、そういえばそうだったわね! 思い出した思い出した!」
要「じゃあ、どんな感じでしたか?」
庶務「うぐ……」
要「……やっぱり、覚えて……」
庶務「ああ、ああ~! ハンカチを拾ってるあんたに『パンツ見えてるわよ』って忠告――」
庶務「はむっ!」
要「そ、そんな大きな声で言わないでください!」カァァ
庶務「はむうむ、うぐっ!」(いいから離して! 息できない!)
要「そうです、そうなんです。私はその時先輩に大事なモノを見られてしまったから……」
庶務「大事なモノって……別に」
要「あんなシマシマを大胆に見せたことなんてありません!」
庶務「……」(パンツの柄とか覚えてなかったのに……)
要「だから、責任を取ってください!」
庶務「今更過ぎでしょ!」
要「取ってくれるんですか!?」
庶務「取らない!」
要「うう……弄ばれました」
庶務「あんた、図々しいわね!」
要「罵倒!」
庶務「変なのに目覚めないで!」
要「ところで先輩」
庶務「いきなり戻らないでよ……びっくりするから」
要「今日の私は何柄だと思います?」
庶務「聞きたくないし聞かないでよ、そんなこと!」
・ ・ ・
要「さすらいの乙女、ついに遊園地に立つ!」
庶務「はーい、撮るわよー」
要「はいっ☆」
パシャ
庶務「あんた写真写りいいわねー」
要「ほ、誉められた……! 目移りしちゃいますか?」
庶務「いや、しないけどね」
要「残念です……」
要「この遊園地といえば、やっぱりあのタワーです!」
庶務「あー、あの上がったり下がったりするやつね。今日は乗れないわね」
要「な、なななな、なんでですか!? 怖いなら二人で手をつないで……」
庶務「いや、あんたスカートじゃない」
要「!」
庶務「しかも短い」
要「じ、自分で自分の首を絞めてしまいました……!!」
庶務「まあまあ、とりあえずなにに乗る? 沢山あるんだから大丈夫よ」
要「そ……そうですね! 私もそう思ってました!」
庶務「あ、ジェットコースターなんていいじゃない。ほら」
要「あ、私ジェットコースター苦手です」
庶務「……え?」
要「だから、違うのに乗りましょう」
庶務「……」
要「……?」
庶務「帰る! ジェットコースターに乗れない遊園地なんて最悪よ!」
要「ま、待って下さい! そんな酷いです!」
庶務「遊園地と言ったらジェットコースターよ! 悪いけどこれだけは譲れないわ!」
要「で、でも……せっかく来たんですから」
庶務「無駄よ無駄! 温いアトラクションばっかに乗っててもつまんないのよ!」
庶務「むしろ、ジェットコースターのない遊園地なんて遊園地にあらずよ!」
要「うう……乗れない人が可哀相です……」
庶務「というか乗れる人と乗れない人二人で来ること自体がミスだったのよ……」
要「わ、わかりました……! 乗りましょう!」
庶務「いいわよ、無理はしなくても」
要「いいえ! 大丈夫です! あとでゴミ箱かトイレに直行できれば!」
庶務「吐く気満々じゃない……」
要「えへへ♪」
庶務「なんでそんな顔してんのよっ」
要「それじゃあ、早速並びましょう! 早く並べばすぐに乗れます!」
庶務「当たり前のこと言わないでよ……まったく」
庶務「……ん?」
要「? どうしました?」
庶務「あれって……」
男「遊園地久しぶりですよ」
会長「私は初体験だ。良い経験になるだろう」
男「かしこまりすぎですよ……」
庶務「男と……会長?」
To be concluded!!!
要「ほえ?」
庶務「あ、いや……なんでもないわ、早く並びましょう」
要「は、はいっ!」
庶務(いやいや、考え過ぎよ。見間違いだわ!)←視力2.0
要「?」
庶務「なにボサッとしてんの、前進んだわよ!」ギュッ
要「あっ……は、はいっ!」ニコッ
要(手、握ってくれた……!)
・ ・ ・
要「あう……はう……」
庶務「どうしたの?」
要「いや、あはは……ちょーっと緊張して来ましたね」
庶務「そうよね、やっぱり怖いモノは怖いからね」
要「はい……」
庶務「でも、今日はとことん付き合ってもらうからね!」
要(付き合う……付き合う……付き合う……!!)
要「おまかせくださいー!!」ビシィ
庶務「な、なんで鼻血垂らしてんのよ!」
要「緊張と興奮が入り混じっています!」
庶務「は、はぁ!? 確かに、私もちょっと興奮気味だけど……」
要「こ、興奮!?」ダラリ
庶務「あんたはしちゃだめ!」
要「今日に限って凄い出ます……」
庶務「そうね、新しい症状だわ」
要「新しい? 他にも症状がありますか?」
庶務「べ、別にないけど。言葉のあやよ」
要「言葉野綾って誰ですか……新たなライバルの予感」
庶務「人の名前じゃないわよ!」
要「そ、そうですか……」
庶務「……あ、そろそろよ!」
要「先輩、機嫌良いですね」
庶務「当たり前じゃない! すっごく楽しみ――」
庶務(……男と、会長……)
庶務 ズーン
要(いきなりテンションが!?)
庶務(二人で、来てるのかな?)
庶務(って、なに私悲観的になってんのよ! 男なんて私には関係ないじゃない!)
要「あ、あのあの、先輩?」
庶務「なに?」
要「急に……どうしました?」
庶務「……」(要、震えてる……)
庶務(先輩がこんな感じじゃダメよね。ちゃんとしなきゃ!)
庶務「なによ、怖気ついちゃったの?」
要「え?」
庶務「私は全然大丈夫! あ、でも無理はしないでね」
要「……はい」
庶務「……ちょっと固いわね」
要「?」
庶務「もーっと、ゆるくしなさい!」
要「ふにゃっ!」
庶務「ほらほらー」
要「ふにゃにょにゃーい!」(私のほっぺで遊ばないでくださーい!)
庶務「よし、これで大丈夫!」
要「ほっぺ痛いですよ……もうっ」ドキドキ
庶務「ごめん、ちょっと手荒だったかもね」
要「やっぱり、先輩には責任を取って――」
庶務「あ、乗れる!」
要「タイミング……悪すぎます!」
庶務「このシートベルトとか締める時がワクワクするのよねー。要もそうでしょ?」
要 ガクガクガクガク
庶務「きゃあああ! あんた誰よ!」
要「あがががが……要です」
庶務「顔変わりすぎ怖い怖い!」
要「緊張してきましたぁぁぁ……」
庶務「ほんとうに大丈夫!? 顔ゾンビみたいに……」
「それでは、出発進行ー!」
庶務「って、始まっちゃった!」
要「あははー私は気にしないでくださいー……死ぬ」
庶務「今さりげなくなんか言わなかった!?」
要「何も言ってませんよ~……死ぬ」
カンカンカンカン
庶務「要、悪いけど私……今とっても楽しみになってる! あんたがそんな感じだけど、私はとっても楽しみになってる!」
庶務「落ちるのを今か今かと待ち望んでいる」
カンカンカンカン
要「これが私の……死のカウントダウン!」
庶務「えげつないこと言わないの!」
要「それでは、先輩……地獄で逢いましょう♪」ニコッ
庶務「無理矢理に笑顔作らないの! ひきつってるわよ!」
カンカンカンカン……
庶務「へ?」
シュゴーーーー!!
庶務「き、来た! いやっほーー!」
要「うにゃああああああああああああ!!!!」
庶務「やっほー! 庶務崎サイコー!」
要「うにょおおおおおおおお!!」
庶務「抱きしめたいな、ジェットコースター!」
要「うなああああああああああ!!!!」
庶務「風が気持ちよくてうひゃあ~!」
要「死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!!」
・ ・ ・
要 ゲッソリ
庶務「大丈夫、要?」サスサス
要「は、はい……ハイテンションな庶務先輩見れたので……」
庶務「は、恥ずかしい……私、そんなにテンション高かった?」
要「凄かったです……庶務崎とか言ってました」
庶務「えー、言ってた? 私、本当にジェットコースター大好きだからさ」
要「そ、そうなんですか……うぷっ!」
庶務「わわ、要!?」
要「ちょ、ちょっとトイレに……行ってきます!」
庶務「わ、私も一緒に……」
要「ダメです……恥ずかしいので、一人で行かせてください……」
庶務「わ、わかったわ」
庶務「……行っちゃったけど、大丈夫かしら?」
庶務(……なんか食べ物でも買っておこうかな)
庶務「……!」
男「いや、本当にいいですから」
会長「大丈夫だ、毒は入ってない。毒味はした」
男「売り物に毒が入ってるわけないでしょ!」
会長「……」←無言の圧力
男「あ、あーん……」
庶務「……要、まだかな」
要「お、お待たせしましたー」
庶務「あら、顔も大分治ったのね」
要「はい! 出せるもの全部出してきました!」キリッ
庶務「う、うーん……それが上か下かは聞かないでおくわ」
要「それじゃあ、次、行きましょう!」
・ ・ ・
庶務「それにしたって、あんた脚綺麗ね」
要「そ、そうですか?」
庶務「私あんまり自信ないなー。いっつもこういうジーンズ履いてるから」
要「もったいないです! 庶務先輩脚とっても綺麗じゃないですか!」
庶務「そうかな……って、なんでそういうこと知ってるのよ!」
要「もちろん、水泳の授業でガン見です!」
庶務「学年違うのになんで知ってるのよ!?」
要「合同だったじゃないですか……ショックです」
庶務「え、そ、そうだったっけ?」
要「もういいですっ、庶務先輩の中で私は影薄子ちゃんのようですから」
庶務「ちょ、そんなこと言ってないわよ!」
要「じゃあどうして覚えてないんですか?」
庶務「そ、それは……一生懸命だから?」
要「……」ジーッ
庶務「……な、なに?」
要「庶務先輩らしいです」ニコッ
庶務「なによそれ」
要「変な言い訳じゃなくて嬉しいです。それじゃあ、どんどん回りましょう!」
庶務「うん、そうね!」
・ ・ ・
庶務「ジェットコースターのあとのメリーゴーランド……! 温いわ!」
要「私とっても大好きなんです♪」
庶務「いいけど今日風強いからスカートちゃんと抑えときなさいよ!」
要「私のスカートをちゃんと気にしてくれるなんて……」ポッ
庶務「な、なんで顔赤くするのよ!」カァァ
・ ・ ・
庶務「ゴーカート勝負! 負けないわよー!」
要「勝ったらキスさせてください!」
庶務「な、なにそれ!?」
要「負けたら私にキスしていいですよ!」
庶務「それってどっちにしろあんたが得するじゃない!」
要「そうですか? わかりませーん!」
庶務「ちょ、ドリフト!?」
・ ・ ・
庶務「ま、負けた……!? この私が」
要「勝ちました! マ○オカートで鍛え上げた実力を発揮できました!」
庶務「ええ!? それって現実に反映されるの!?」
要「というわけで……!」
庶務「ちょ、無理よ!? キスなんて無理無理だからね!」
要「目、閉じてください♪」
庶務「いや、いやだからーーー!」
・ ・ ・
要「遊園地の最後は、やっぱり観覧車ですね~」
庶務「オンナ二人で入ってもなぁ……」
要「なにを言ってるのですか! 私達の愛の箱です!」
庶務「観覧『車』だから!」
要「ほら、見てください、山が見えます!」
庶務「これ、高いわね」
要「はい、ちょっとビクビクしてます」
庶務「……」(今頃、男と会長はどうしてるんだろ……)
要「今日は、ありがとうございました」
庶務「ん?」
要「なんだか、ついつい引っ張っちゃって……張りきっちゃいました」
庶務「いいわよ、私もあんたに無理矢理ジェットコースター乗らせちゃったし」
要「でも、そのあとは私のために過激なアトラクションは控えてくださって」
庶務「そ、それは……一回乗れたら十分だからよ」
要「それでも、嬉しいです。写真もたくさん撮れましたし……」
庶務(い、いつ撮ってたの!?)
要「こうやって、先輩と一緒にいれるの、幸せです」
庶務「そっか」
要「軽いですね」
庶務「そ、そうかしら?」
要「どうして顔を背けるんですか?」
庶務「は、恥ずかしいこと言われると照れるから……」
要「……えへへ、庶務先輩、可愛いです」
庶務「もう、そういうのはもういいって――」
チュッ
庶務「!」
要「ゴーカートのです」
庶務「な、な……なななななにしてんのよーー!!」ドキドキ
要「あはは、先輩顔真っ赤です」
庶務「い、いきにゃりき、キスとか……! ああもう、噛んじゃったじゃない!」
要「それ私関係ないですよ!」
庶務「関係ある! バカバカ!」
要「安心してください、ほっぺたですから!」
庶務「そういう問題じゃないの!」
要「……うふふふふ」
庶務「な、なによ!」
要「やっと、いつもの庶務先輩の顔に戻ってきた」
庶務「ど、どういうこと?」
要「なんだか今日、ずーっと悩み事あったみたいだったから……」
庶務「そ、そんなこと……」
要「誰にでもあることですから、気にしないでください」
庶務「……ごめんなさい」
要「どうして謝るんですか?」
庶務「要と一緒に遊園地に来てるのに、なんだか私、心ここにあらずって感じで……」
要「そんなこと、気にしませんよ」
要「いつも、そんな感じですから」
庶務「え?」
要「……あ、そろそろみたいです」
庶務「あ、うん」
・ ・ ・
要「いやあ、今日は最高でした!」
庶務「なにが一番良かった?」
要「もちろん、キスです!」
庶務「あ、アトラクションのこと!」カァァ
要「そっちでしたか!」
庶務「もう、恥ずかしい……」
要「顔が上気している庶務先輩可愛い!」
庶務「いきなり叫ぶなっ!」
・ ・ ・
要「それじゃあ、ここで」
庶務「うん、じゃあね」
要「また、今度お買い物にでも誘ってくださいねー」
庶務「はーい、わかったわー」
庶務「……ふう」
庶務「本当にあの子は……」
庶務・男「面白い子ね」「面白い人だ」
庶務「!?」
男「ん?」
庶務「お、男!?」
男「なんだ庶務、お前も帰りか?」
庶務「ま、まあそんなとこ。っていうか、なんでここにいるのよ? あんた家全然違うでしょ!」
男「まあそうなんだが、今日は久しぶりに家に顔を出そうと思って。出かけたところが家の近くだったからさ」
庶務(確かに、遊園地近いところね)「へえ、そうなんだ。何年振り?」
男「そんなでもない。1年ちょいくらい」
庶務「そんなでもあるじゃない」
男「あるのか」
庶務「あるわよ、バカ」
男「はあ、とりあえずまあ、最近の近況でも」
庶務「ええ、そうね」
男「……なんか、この雰囲気久しぶりだな」
庶務「うん、そうかも」
男「昔を思い出すな」
庶務「だね」
To be continued!!!
ピンポーン
妹「……」
ピンポーン
姉「ちょっとー妹、インターホン鳴ってるじゃない」
妹「こんなに夜遅くに押してくる人なんて怪しいもん、出ない!」
姉「もー……はいはい」ガチャ
「~」
姉「あら、男じゃない」
妹「!」ガタッ
姉「はいはい、私お風呂上がりだからちょっと待ってね」
ガチャ
姉「妹……あら、いない」
妹「……」ドキドキ
妹(へ、平常心、平常心)
ガチャ
男「ん、おっす。妹」
妹「……」
男「ど、どうした?」
妹「お、お兄ちゃっ……!」
男「お、おう」
妹「ど、どうして?」
男「どうしてって、酷い言い草だな」
妹「いきなり帰ってくるから……」
男「ん? ああ、そういうことか」
妹「……」グスッ
男「なんで泣くんだよ」
妹「……良かったよぉ」
男「ははは、なにがだよっ」
妹「自殺、考え直したんだね……」
男「へ?」
姉「あー、男~」
男「おっす……て、姉さんタオル一丁!?」
姉「さっき風呂上がったんだよー」
男「相変わらずだな、姉さん」
姉「巨乳でしょ?」
男「台無しだぜ……」
・ ・ ・
妹「お茶飲む?」
男「ああ、よろしく」
妹「うんっ」タタタッ
男「妹、機嫌良いね」
姉「そりゃそうでしょ……」
男「え?」
姉「久しぶりに兄に会えたんだもの、あの子だって嬉しいのよ」
男「ていっても、七夕の時に……」
姉「ああいうのは会ったって言わないの」
男「そ、そうかな」
姉「あんたがそう思っててもこっちはそうはいかないのよ?」
男「なるほどね、つか、姉さん……」
妹「お姉ちゃん、近すぎ」
姉「うふふ、ごめんなさい♪」
妹「はい、お茶だよ」
男「おう、って、妹も近いけどな」
妹「そ、そうかな?」
男「……」ジーッ
妹「な、なに?」
男「なんか、今日は噛みついて来ないな」
妹「……私ってそんなイメージ?」
男「んー……勘違いだったのかな?」
姉(妹も素直だけど、気づかない男も流石だわ……)
姉「それで、本当に顔を出しに来ただけ?」
男「いや、そうじゃないんだ」
妹「?」
男「ちょっとだけ、お願いがあってさ」
妹「……お願い?」
男「ちょっとでいいんだ。泊めてくれない?」
姉「え、なんで?」
男「なんか、ちょっとさ」
男「家に帰るのがつらくって」
姉「え? なにかあったの?」
男「まあ、色々と」
妹「だったら、泊まればいいの! 泊まって、ずーっと泊まって!」
男「いや、それは大学があるから無理だよ」
妹「……ケチ」
姉「まあまあ、妹。でも、どうしたのよ?」
男「だから、色々だって」
姉「ダーメ、ちゃんと言わなきゃ泊めてあげないわよ」
男「……わかったよ」
・ ・ ・
カポーン
男「ふんふふーん」
男(いやあ、やっぱり風呂ってのは最高だなぁ)
コンコン
男「ん? 誰だー。俺まだ入ってるぞ」
ガチャ
男「ちょ!?」
女「男さん」
男「うおおおお!? お、女!?」
女「はい、私です」
男「いやいやいや、なんで入ってくるんだ!?」
女「お風呂に入りたいからです」
男「いや、俺まだ入ってるし!」
女「私と入るのは嫌でしょうか?」
男「嫌……じゃないけど!」
女「では、何故ダメなのでしょうか。理由をお願いします」
男「狐子とか、撫子とか牧もいるんだから、そういうのはなしだって」
女「なし? 確かに甘いですけど」
男「それは梨! なんでいきなりボケて……って湯船に入ってくるなって!」
女「大丈夫です、ちゃんと入れます」
男「そういうことじゃなくてぇ……」
男(最近女はいつも俺と入るようになった。)
・ ・ ・
チュンチュン
男「んー……?」
男「朝かー……ふわぁぁ……」
牧「……」スゥスゥ
男「あれ? 牧……?」
男「!?」
牧「あ、おはよ、男……」
男「なんで裸なんだよ!?」
牧「ふえ……? あっ」カァァ
牧「きゃあああ!」
男「ちょ、牧!」
狐子「どうした!?」
男「来るのがお早いようでええええええ!!」
狐子「な、な……牧に何しようとしてんだぁぁ!」
男「違う、これにはだな!」
狐子「うるさーい」
牧(なんで、ボク裸で……?)
男(最近なぜか牧は俺の横に裸で寝ている)
・ ・ ・
男「ただいまー」
撫子「おかえりなさいませ♪」
男「撫子、別に玄関まで迎えに来なくてもいいんだよ?」
撫子「……男さんっ」
男「な、なんだ? それ」
撫子「おかえりのキスです♪」
男「いや、いやいやいやいや!」
男(最近、撫子は俺におかえりのキスを強要して来る。もちろんしてないけど)
狐子「……牧だけでなく撫子まで!」
男「ちょ、ちょっと待てって!」
男(そしていつも通り、狐子には変な疑いをかけられてる)
・ ・ ・
男(って、言えるわけねえええええ!!)
妹「お兄ちゃん、どうしたの?」
男「……これは、家族にも言えないほどのことなんだ!」
姉「ほんとに?」
男「ほんとに!」
姉「ほんとにほんとに?」
男「ほんとにほんとに!」
姉「まあ、わかったわ。そんな顔されちゃあ泊めざるを得ないし」
妹(やった!)
姉「妹、アホ毛がピョンピョンしてるわよ。そんなに嬉しいの?」
妹「う、嬉しくないっ!」
男「酷い……」
妹「う、嬉しくない……わけでもないよ!」
・ ・ ・
男「ふわぁぁ……気持ちいい」
妹「お兄ちゃん、お風呂どう?」
男「ああ、久しぶりに家の風呂に入れて満足」
妹「そ、そっか、良かったね」
男「一緒に入るか?」
妹「え、えええ!? ええええええ!?」
男「あはは、冗談だよ、冗談」
妹「じょ、冗談でも言わないでそんなこと!」(ドキドキしちゃうじゃん……)
男「ご、ごめん」(めっちゃ嫌われてる……)
妹「お兄ちゃん」
男「ん?」
妹「辛かったら、ずっと家にいてもいいんだよ?」
男「……妹」
妹「中学の頃のお兄ちゃんと今では、違うと思うけど」
妹「それでも私は、お兄ちゃんが心配」
妹「なにも失って欲しくないの」
男「……大丈夫だよ、妹」
男「俺は、辛いと思ったことなんてないから。妹のことも、姉さんのことも」
男「それに――」
男「――友のことも」
妹「お兄ちゃん……」
男「まあ、今回はちょっと辛いなーって感じかな?」
妹「辛いの……?」
男「辛くて死んじゃうかもな」
妹「嫌だよ、そんなの」
男「うん、俺もやだ」
妹「あはは……」
男「ははは」
妹「それじゃ、パジャマ置いとくね」
男「え? なんで俺のパジャマがあるんだ? 家出るときに全部持ってったはずだけど」
妹「そ、そんなことどうでもいいじゃない!」←誕生日プレゼントに買ったのがあった
妹「もう!」
男「なにもそんなに怒んなくていいじゃねえか」
妹「うるさい、いちいち口うるさいんだから!」
男「……あ、でもさ」
妹「今度は何?」
男「妹や姉さんに会えないのは、辛いかも」
妹「……」
男(俺まずいこと言ったかな?)
妹「バカ! バカバカ!」
妹「そんなの私だってそうだもん!」
・ ・ ・
男「俺の部屋、さっぱりしてるけどちゃんと残してくれてんだ」
男(ベッドも残ってるし……悪いなぁ)
男(ん? こんなとこにタンスあったっけ?)
コンコン
姉「男ー入っていいかな?」
男「あ、いいよ」
ガチャ
男「……」
姉「あう、なんかそれはそれでちょっとショック……」
男「え?」
姉「裸にも無反応かー。やっぱり姉の体じゃ嬉しくないかなぁ?」
男「いや、俺はできるだけ見ないようにしてるんだよ? 流石に直視はどうかと思うから」
姉「あ、そうなの? 確かに全くこっちに視線を送ってこないもんね」
男「視界に入った瞬間にまずいと思った」
姉「そっか」
ズイ
男「ちょ、無理矢理視界に入ろうとしないでよ」
姉「いいじゃん、すこしくらいさ」
男「姉さん胸大きいんだから」
姉「えー、おっぱい見るの? えっちー」
男「ひでえ!」
姉「でもまあ、大きいよね、私のって」
男「そうだよ、怖いくらいにね」
姉「嫌い?」
男「……嫌いではない」
姉「じゃあ好き?」
男「ま、まあ」
姉「巨乳好きかー。じゃあ妹はダメかー」
男「可哀相なこと言ってあげんなよ!」
姉「……って、今あんたが言った言葉が一番酷いと思うわよ」
男「……そ、そうだね。それより、なんで裸なの?」(下はちゃんと穿いてるし、胸はタオルで隠れてるから見えなくてホッとした)
姉「パジャマここに置いてあるからさ、取りに来たの」
男「あ、そうなんだ」
姉「あと、一緒に寝ようかと思って」
男「えー、ベッド狭いじゃん」
姉「だったら床でもいいよ?」
男「姉さん、なんで俺と寝たいの?」
姉「好きだからー」
男「俺も姉さん好きだよー」
姉「え……そ、そうなの?」カァァ
男(なんで顔赤くしてるんだ?)
姉「まあ、久しぶりだから一緒に寝たいなーと思って」
男「俺たちもう大学生だよ? 流石にきつくない?」
姉「酷いなー、それとマジマジと私の着替えを見るのやめてよねー」
男「ごめん、デリカシーないことしたね」
姉「なんてね、男なら別に見られても平気だよ?」
男「まあ、そうじゃなかったら困るよ」(でもすっごく顔赤いよね、姉さん)
姉「よし、準備OK! 明日はどうするの?」
男「どうするって?」
姉「だから、お家には帰るのってこと」
男「うーん……まだ考え中」
姉「ダメだよ、早く決めなきゃさ」
男「って言っても、決めづらいというか」
姉「……まあ、十分考えた方が良いかもね」
男「……」
姉「私だって、あの頃に比べたらすっごくこんなことは些細だなって思えるよ」
姉「あの頃の男、見るに堪えなかったし」
男「そんなに酷かった?」
姉「うん、まるで違う人と一緒に暮らしてるみたいだったよ」
男「そっかぁ」
姉「でも、不思議だったな」
男「え?」
姉「同じにおいで、同じ顔で、私の家族なんだけど、全然違うの」
姉「すっごく可愛い弟はどこに行っちゃったのーって感じ」
男「可愛い……」
姉「でもさ」
姉「今はまた、可愛い弟に戻ったね」
男「姉さんにとっては、まだまだカッコいいにはならないのかな」
姉「うーん、カッコいい時はカッコいいよ?」
姉「まあ、高校二年くらいで本当に性格戻ったよね」
男「……まあ、色々と転機だったからね」
姉「生徒会長さん?」
男「……当たり」
姉「そうだろうねー。あの子がいなきゃ今の男はいないよね」
男「全くその通りだよ」
男「姉さんと妹のおかげでもあるよ」
姉「え? なんで」
男「そんな俺でも、普通に接してくれたじゃないか」
姉「そりゃあ、家族だしね」
男「それが俺はとっても嬉しいよ」
男「だから、辛い時にこうやって戻ってこれるし」
姉「……そっか」
姉「それじゃあ、寝よっか」
男「うん」
姉「ほんとに私と寝てもいいの?」
男「なんで聞くのさ。全然構わないよ」
姉「……はぁ、これだもんなぁ~」
男「え?」
姉「なんでもないわよ、全く鈍いわね」
男「鈍い?」
姉「なんでもない、ほら、寝るわよ」
男「うん、わかった」
コンコン
男「ん?」
ガチャ
妹「あの、お兄ちゃん……一緒に……」
妹「あ、あれ?」
姉「やっほー、マイシスター」
男「なんだ、妹?」
妹「な、な、な……なんでお姉ちゃんが!?」
姉「男と一緒に寝ようと思ったからよ~」
妹「! ぬ、抜け駆け!」
男「抜け駆け? なにが?」
姉「まあまあ、家族三人仲良く寝ましょう?」
妹「……」コクリ
男「あ、妹も一緒に寝るのか?」
妹「だ、ダメ?」
男「なんでそんな怖い顔するんだ……。俺は全然構わないって」
妹「……良かった」ボソッ
男「?」
姉「ほら、男は真ん中入って、私達を温めなさい」
男「俺真ん中? は、恥ずかしいな……」
姉「なーに今更照れてんのよ! らしくないわね」
男「らしくなくないよ。恥ずかしいもんは恥ずかしい」
妹「さ、さっさと中入りなよ、バカ」
男「寝る直前までバカって言われるとは……」
妹「……」ドキドキドキ
姉「あっらー? どうして妹はそんなに顔が赤いのかしら」
妹「え!?」
男「熱か?」ピトッ
妹「!」カァァ
妹「い、いきなりおでこつけないでよ! ばかぁ!!」
・ ・ ・
チュンチュチュチュチュチュチュンッ
男「ごきげんだな、小鳥」
姉「おはよー、男」
男「早いね、姉さん。もう朝食の準備できてるんだ?」
姉「まあね♪ 何年もやってたら勝手に体が動いちゃうわよ」
男「姉さんを嫁にもらったら困らないね」
パリーン
男「!」
姉「あわわ、お皿落としちゃった……もう、男が変なこと言うからだよっ」プンプン
男「え、変なこと言ったかな?」
姉「わかんないならいいわよ……痛っ」
男「大丈夫、姉さん」
姉「大丈夫よ。……言われてすぐこれだもんなぁ、私」
男「その方が姉さんらしいよ。俺は好きだな」
姉「……」カァァ
男「姉さん?」
姉「あ、あんたはさっさと食卓に座ってご飯待ってなさい! お皿は私がするから、あんたの仕事は朝食を食べること!」
男「ありがと、姉さん」
姉「……ふんっ」
・ ・ ・
男「ごちそうさま。それじゃあ帰るよ」
姉「早いのね。妹になにか言わなくていいの?」
男「うん。着替えも持ってきてないし、ほぼ手ぶらで来ちゃったし」
姉「今日買いに行けばまだまだ大丈夫よ?」
男「そういうわけにもいかないよ。なにも言わずに出てきちゃったんだし」
姉「あー……それはまずいんじゃない?」
男「携帯も電源切ってたから」
姉「あんた、以外とえげつないわね」
男「いやいや、充電が切れてたんだ。昨日充電できてよかったよ」
姉「なんだ、それなら安心ね」
男「ありがとう」
姉「うん、またなにかあったら来なさい」
男「なにかあったら?」
姉「ふふっ、なくてもいいわよ?」
男「そっか、わかった。じゃあね」
姉「いってらっしゃい」
男「……」
姉「……」ニコッ
男「いってきます」
・ ・ ・
妹「……」ボケー
姉「あらあら、女の子らしくないお顔をしてらっしゃるわね」
妹「あのねー、お姉ちゃん」
姉「ん?」
妹「昨日夢の中にお兄ちゃんが出て来たんだけどさ」
姉「うん」
妹「私に手を振って、どこかに行っちゃったんだ」
妹「それでさ、起きたらもういないの」
姉「……さ、さて、洗濯物でも干そうかな」
妹「なんで正夢になってるの!? 起こしてくれればよかったのに!」
姉「ちょ、泣くことないじゃないっ」
妹「泣いてない! ただ起こしてくれればよかったの! 別にお兄ちゃんは関係ないけど!」
姉「『妹気持ちよさそうに寝てたから起こすの悪い』って言ってたわよ?」
妹「えっ……そうなの?」
姉「うん、ほんと」
妹「……ちょっとメールする」
姉「誰に?」
妹「だ、誰でもいいでしょ!」
・ ・ ・
ガタンゴトン
男「……『また来てね』……はは、妹め」
男(あんなにぐっすり寝てるやつを起こせるわけないっての)
男(でも、最近ちょっと狐子起きるの遅いから、我慢して起こすかな)
?「せやせや、ちゃんとしつけせえへんとつけあがるで」
男「え?」
?「兄弟姉妹ゆうんはええなぁ。まるで自分みたいなもんや。血ぃ繋がっとるからかな」
男(俺に言ってるのか?)
?「あんたやあんた。あんたしかおらんやろ。こんな過っ疎過疎な電車やで」
男「は、はぁ……俺、何か言いましたか?」
?「ゆうてたやん、心の中ゆうん? 思ってたことボロボロ漏らしてたで」
男「え、俺気づかないうちに言ってました!?」
?「ゆうてへん! 私が読んだんや」
男「え、俺の心を?」
?「まあ、そうゆーことやな」
?「……」ジィ
男「な、なんですか?」
?「ええ姉にええ妹持ってるんやな。羨ましいわぁ」
男「凄いですね、わかるんですか」
?「わかるんやない、調べたんや」
男「え、どうやって?」
?「人なんて見てればなんでもわかるわ」
男「すごい!」
?「凄ないわ! でもまあ、家族ゆうんは唯一無二や。大切にしぃよ」
男「はい、ありがとうございます」
?「……名前なんていうん?」
男「当てて見てください」
?「わかるもんとわからんもんあるわ! そないな面白いことゆわんといてぇな!」
男「男って言います。関西の人ですか?」
?「そんなん関係ないやろ?」
男「……まあ、そうですね」
?「ふーん、男ゆうんか。オッケ。覚えた」
男「あなたは?」
?「ええ、私も言わんとあかん?」
男「教えてほしいですよ」
?「……私は西。気軽に『さいちゃん』とでもゆうてくれ」
男「あ、はい」
西「なぁに、ここであったが運の尽き……ちゃうわ、なんてゆうんかな」
男「ここであったが百年目……あ、違いますね」
西「……ははは! なんやあんた、面白いやん!」
男「えーっと……ここであったのも何かの縁ってところですかね」
西「そうやそうや、それそれ! それやー!」
西「というわけで、電話番号教えてくれ」
男「え?」
西「わかってる。得体の知れへん可愛い女の子に電話番号なんて流石に無理やんな」
男(自分で可愛いって……)
西「寒かった? ごめんごめん」
男「あ、バレました?」
西「バレるとか思ってんやったら思うなや!」
男「す、すいません」
西「まあええわ。私が教えてあげる。やからなんかあったら電話くれ」
男「え?」
西「ほい。ノートの切れ端で悪いけど、これ電話番号やから」
男「あ、ありがとうございます」
西「にしても良かったわー、話す人いて。この電車過疎すぎるやろ!」
男「まあ、こっちの方は田舎ですからね」
西「なんや! こっちの方にも田舎はあるんか!」
男「こんな聞き方悪いですけど、田舎から出て来たんですか?」
西「んー、そうなるんかなぁ? ま、そういうところや」
男「そうですか。じゃあこっちの暮らしとかにはまだ慣れてないんですかね?」
西「慣れてるも何も! 今日初めて来てん!」
男「あ、そうだったんですか!」
西「右も左もわからん可愛い女の子なんよ~」
男「じゃあ、何かあったら教えてあげますよ。電話も近々します」
西「ここで電話番号教えへんところにまだ警戒心あると私は見たで」
男「……」
西「まあ、ええわ。ありがとうな」ニコッ
プシュー
男「あ、俺ここなんで」
西「あ、私は次の駅や。ここでサヨナラかぁ~」
男「必ず電話します、それじゃあ!」
西「はいはーい!」
西「まあ――」
西「――すぐ会うことになるけどな」
・ ・ ・
ガチャ
男「……た、ただいまー」
シーン
男「……まあ、そうだろうな」
撫子「……男さま?」
男「! な、撫子」
撫子「お、男さまぁ!」ギュッ
男「ちょ、ど、どうした!?」
撫子「ごめんなさい、ごめんなさい……きっと私がいたらぬ点がたくさんあったかですよね……」
男「そんなことないって、とりあえず離れよう、な?」
牧「あ、男!」
男「おう、牧」
牧「もう、どこ行ってたの? 遊園地行ったきり戻ってこないなんて。遊園地に閉じ込められたのかと思ったよ」
男「怖いこと言うな、お前」
狐子「……!」
男「おう、狐子。起きてたのか」
狐子「ふん……」
牧「狐子ね、寝ないで男のこと待ってたんだよ。まあ日を越す前に寝ちゃったけど」
狐子「ま、牧!」
男「狐子……」
狐子「み、観たかった番組があっただけなんだからな! それ以外に理由は無い!」
男「わかったわかった、ありがとな」ニコッ
狐子「なんでありがとうなんだ! そしてその笑顔はなんだ!」
女「男さん」
男「女」
女「……おかえりなさい」
撫子「あ、そうでした。おかえりなさいませ」
牧「おかえり、男」
狐子「……おかえり」
牧「あ、珍しい」
狐子「う、うるさい!」
男「……」
牧「男?」
男(辛いとか、最低だよ、俺)
男「うん、ただいま!」
撫子「さてさて、それじゃあ居間に行きましょう♪」スタスタ
牧「ランニングしてて外の寒さは知ってたけど、玄関も冷えるね。早くいこっと」トタトタ
狐子「……ふんっ」テコテコテコ
男「はは……」
女「……男さん」
男「ん? 女も行こ――」
ギュッ
男「……え?」
女「寂しかったです、とっても」
男「……そうか」
女「何も言わずにいかないでください。悲しいですから」
男「……ああ」
牧「何してるの早く……って」
牧(水差しちゃいけないよね)
男「……じゃあ、行こうぜ」
女「はい」
To be continued!!!
続き
女「機械の体ですけど、一緒に過ごします?」-004-【後編】