唯「……」
憂「……」スヤスヤ
唯「……」ナデナデ
憂「お姉ちゃん、お姉ちゃん……」
唯「だいじょうぶだよ、ここにいるよ」
憂「お姉ちゃん……」スヤスヤ
唯「……」
唯「ふふ」
──
────
ガチャ
唯「……憂ー?」
唯「あ」
憂「お姉ちゃん、おかえりなさいっ」
唯「えへへ、ひさしぶりだね」
ギュッ
唯「わっ」
憂「……おかえり!」
唯「……うん、よしよし」ナデナデ
憂「……」
唯「……うい」
憂「なあに?」
唯「とりあえず、リビングいこ?」
憂「あ、ごめんね」パッ
・・・
憂「あつくない?」
唯「んー、平気だよー」
唯「だから抱きついてていいよ」
憂「えへ……」
唯「……」ナデナデ
憂「?どうかした?」
唯「憂ったら、こんなに甘えん坊さんになっちゃって」
唯「しっかりものの憂ちゃんはどこ行ったのかなーって」
憂「……だって……」
唯「んー?」
憂「久しぶりのお姉ちゃんだもん」
唯「あ、開き直ったな~」
憂「ふふー」ニコ
唯「ふふ、もっともっと甘えなさい!」
憂「うん!」ギュー
唯「うぷっ……」
憂「あっ、ごめんね!苦しかった?」
唯「へへ、大丈夫だよ」
憂「……」
唯「……」
唯「……憂、あんまり帰ってこれなくてごめんね?」
憂「……むー」プクー
唯「怒ってる……?」
憂「えへへ、冗談だよ。お姉ちゃん、毎日連絡してくれるもん」
憂「それに、帰ってくるのたいへんだもんね」
唯「……ありがとね」
憂「でもその代わり」
唯「?」
憂「2ヶ月ぶりだから、2ヶ月ぶんのお姉ちゃんを補給します!」ギュウ
唯「なにぃー?じゃあ私も憂補給する!」ギュギュウ
憂「お姉ちゃーん!」
唯「憂ー!」
憂「えへへ」
唯「……それにしても」
憂「?」
唯「憂、ほんとに甘えん坊さんになったね」
憂「……ごめんなさい」
唯「あ、嫌なわけじゃないよ」
唯「憂に抱きついてもらうの、うれしいしねー」
憂「よかったぁ」
唯「……それで、憂」ジー
憂「は、はい?」
唯「なにかあったの?」
憂「へっ?べ、別に何も……」
唯「ほんと?」
憂「ほ、ほんとだよ?」
唯「憂~?」ジリジリ
憂「うぅ……」
唯「ほーら、何でもいいから言いなさい」
憂「……あの、ね」
唯「うん」
憂「その、久しぶりに会ったら」
憂「お姉ちゃん、前よりずっと大人っぽくなってたから」
唯「……」
憂「ちょっぴり、不安で……」
唯「なにが?」
憂「えっと、その……」
憂「か、彼氏さんでもできたんじゃないかって」
唯「へ?」
憂「だ、大学生だから、別におかしくないよね!」
憂「お姉ちゃんはかわいいしかっこいいもんね!」
唯「えっと……?」
憂「べ、別に、嫌なわけじゃなくて……」
唯「……」
憂「その……」
憂「……」
唯「……」
憂「変なこといってごめん、なさい」
憂「でも……」
ギュッ
憂「わっ」
唯「うーい」
憂「は、はい」
唯「彼氏さんなんていないよ?」
憂「えっ?」
唯「彼氏なんてつくるわけないでしょ」
憂「で、でも……」
唯「でもじゃないの」
憂「……」
唯「……憂、大人っぽくなったって言ってくれたね、嬉しかったよ」
憂「?」
唯「私ね、頑張って、おしゃれとか気をつかってみたんだ」
憂「……どうして?」
唯「決まってるでしょ?」
唯「憂にかっこいいって、言ってほしいからだよ」
憂「へっ?」
唯「憂がいるんだもん、彼氏なんていらないよ」
憂「……へ……」
唯「憂は、ほんとに私に彼氏いてもいいの?」
憂「えと……」
唯「ん?」
憂「……やだ」
唯「あはは、うりうりー!」グイグイ
憂「お、お姉ちゃんくすぐったいよぉ」
唯「ありがとーういー」ギュウ
憂「……えへへ」
唯「ほら、私も憂と同じ気持ちだよ」
憂「……」
唯「だからそんなに心配しなくていいの」
憂「……うん」
唯「憂、ちょっといい?」
憂「え?うん」パッ
唯「よいしょ……」パッパッ
ストン
唯「よし」
憂「?」
唯「憂、ひざまくらしてあげる。おいで」
憂「!う、うん!」
唯「素直でよろしい!」
憂「えへへ……」
憂「じゃあ、失礼します……」
唯「いいよー」
コテン
唯「なでなで」
憂「は、恥ずかしいよ……」
唯「こーら!文句言わないの!」
憂「うぅ……」
唯「いーこいーこ」ナデナデ
憂「……」
唯「……」ナデナデ
憂「ん……」
唯「うい、寝ちゃってもいいよ」
憂「うん……」
……
…………
憂「ん……」ムク
憂「あっ、ごめんねお姉ちゃ……」
憂「あれ?」
憂「……」キョロキョロ
憂「どこいったのかな」
憂「……」
憂「お姉ちゃん……」
・・・
ガチャ
唯「ただいまー」
唯「憂ー?」
「お姉ちゃーん……」
唯「待ってー!いまいくよー!」
「お姉ちゃん、お姉ちゃん……」
唯「まって……よいしょ」ヌギヌギ
ドタドタ
憂「お姉ちゃん……どこぉ」
唯「憂?平気?」
憂「あ……お姉ちゃんっ!」
ギュッ
唯「わわ、どうしたのー?」
憂「……」ギュウ
唯「うーいー?」
憂「お姉ちゃん……」
唯「私はここにいるよ」ナデナデ
憂「うん、うん……」
唯「……ごめんね、勝手にお出かけ行っちゃって」
唯「寂しかった?」
憂「うん……」
唯「ごめんね、憂が起きてから一緒に行けばよかったね」
憂「……ううん、わたしもごめんなさい」
憂「お姉ちゃんがいてくれるの、久しぶりだから……」
憂「ちょっぴりわがままになっちゃった」
唯「憂は謝らなくていいの」
唯「お昼にお弁当買ってきたから、一緒に食べよう」
憂「うん……」
・・・
唯「いただきまーす」
憂「……」
唯「憂?」
憂「これ、お姉ちゃんがアルバイトしたお金で買ったんだよね?」
唯「そうだよ?」
憂「ほんとに、食べていいのかな……」
唯「憂のために買ってきたんだぞー」
憂「えへへ……じゃあ、いただきます」
唯「召し上がれ~」
憂「んっ」パク
憂「……おいしいよ、お姉ちゃんありがとう」ニコ
唯「ふふー」
唯「ういー?あーん」
憂「えっ?」
唯「まだー?」
憂「え、えっと」
唯「あーん」
憂「じゃ、じゃあ……えいっ」
唯「んむ」パク
唯「憂に食べさせてもらったほうがおいしい!」
憂「変わらないよー」
唯「はい、憂も」
憂「へ?」
唯「あーん」
憂「……」
憂「あ、あーんっ」パク
唯「おいしい?」
憂「うん、おいしいよ」
唯「よかったぁ」
憂「ふふ……」ニコニコ
唯「あ、ちょっとトイレ行ってくるね」ガタ
憂「うん」
テクテク
ガチャ
唯「よいしょ」
バタン
唯「……」
「お、お姉ちゃーん!」
唯「ん?なあにー?」
「わたし、リビングだよー!」
唯「?しってるよー!」
憂「お姉ちゃん、まだー?」
唯「憂もおトイレ?」
憂「えっと、そうじゃなくて……」
唯「ちょっと待ってね」
ジャー
ガチャ
憂「!お姉ちゃんっ」
唯「んー?どうしたの?」
憂「な、なんか不安になっちゃって……」
唯「もー、おトイレくらい平気だよー」
憂「そうじゃなくて……」
唯「?」
憂「お姉ちゃんがどっかに行っちゃったらやだなって……」
唯「どこにも行かないよ?」
憂「そうだよね、そうだよね……」
憂「ごめんね、迷惑かけて」
唯「そんなこと言わないの」
唯「もっと甘えていいんだからね?」
憂「ふふ……うん、わかった」
・・・
憂「お姉ちゃーん!」
唯「いるってばー」
憂「あっ、よかった……」
唯「憂、ちょっとこっち来て」
憂「?うん」
唯「私の上に座って」
憂「え、えっと、こう?」ポス
唯「よし」ギュ
憂「?」
唯「ちょっとお話しよう」
憂「うん……?」
唯「憂、私はすぐ近くにいるよ?」
憂「……」
唯「そんなに心配しなくても大丈夫」
憂「……あのね」
唯「ん」
憂「その、お姉ちゃんが見えないと、落ち着かなくて」
憂「怖くて、泣きたくなってきちゃって……」
憂「それで、お姉ちゃんがいるか確認しちゃうんだ」
唯「我慢できないかな?」
憂「できない……と思う」
唯「むぅ」
憂「ごめんなさい。別に気にしなくて平気だよ」
唯「だーめ」
唯「ね、憂。ちょっと実験してみよう」
憂「え?」
唯「憂、ここにいてね」
憂「えっ、お姉ちゃ……」
ガチャ バタン
憂「お、お姉ちゃん!」ガタ
ガチャ
憂「お姉ちゃぁん!」ヒシッ
唯「……早すぎるよー」
憂「あ……ごめんなさい……」
憂「も、もう一回やろう!我慢できるから!」
唯「わかった」
憂「わたしが部屋を出るから、お姉ちゃんはここにいてね」
唯「いいよー」
憂「よ、よし」
ガチャ
憂「……ま、待ってね。いま閉めるから……」
唯「うん」
憂「くく、閉まれ~……」
ギギギ バタン
ガチャ
憂「お姉ちゃんっ!」
唯「……」
唯「……ダメみたいだね」
憂「うぅ……」
唯「平気だよ、憂。ずっと一緒にいればいいんでしょ?」
憂「でも」
唯「私は平気だよ」
憂「うん……」
唯「じゃあ、憂」
憂「?」
唯「お風呂、入ろっか」
憂「へっ?」
・・・
憂「……」
唯「ういー、髪拭き終わったよー?」
憂「えっ、あ、うん、ありがと!」
唯「大丈夫?」
憂「う、うん」
唯「じゃあお部屋行こ?」
憂「は、はい!」
唯「?変な憂」
憂「へ、平気だよ」
唯「そっか」
・・・
モゾ
憂「……やっぱり、このままじゃいけないよ」
唯「どうして?」
憂「だって、明後日にはお姉ちゃん行っちゃうし」
憂「我慢できるようにならないと……」
唯「……」
憂「わ、わたしやっぱり自分の部屋で寝るね!」
モゾモゾ
唯「憂、大丈夫だったら」
憂「ううん、ダメだよ」
憂「……よし」
憂「お姉ちゃん、おやすみなさい!」
バタン
唯「……」
バタン
「お、お姉ちゃ……もがもが」
唯「もう」
「おね、お姉ちゃーん!」
スタスタ
ガチャ
憂「わっ、来ちゃダメだよ!」
唯「いいの」
憂「だって……んむっ」
ギュー
唯「じゃないと眠れないよ?」
憂「……ごめんなさい……」
唯「いいから、もう寝ようね」
憂「うん、おやすみ……」
・・・
「お姉ちゃーん!」
唯「わわ、待ってー!」
ガチャ
憂「!お姉ちゃん!」タタタ
唯「いま朝食作ってたんだ、ごめんね」
憂「お姉ちゃん……」フルフル
唯「もうできたから、一緒に食べよう」
憂「お姉ちゃん!」
唯「大丈夫だよー」ナデナデ
憂「お姉ちゃん!」ギュッ
唯「……憂?」
憂「お姉ちゃん……」ウルウル
唯「……憂、おはよう」
憂「お……姉ちゃん」
唯「……」
唯「私の名前は?」
憂「お姉ちゃん」
唯「……」
唯「『お姉ちゃん』以外の言葉喋ってくれる?」
憂「お、お姉ちゃん……」
唯「……言えないの?」
憂「お姉ちゃん!」コクコク
唯「ほんとに?」
憂「お、お姉ちゃん!」
唯「……悪化しちゃったね」
憂「お姉ちゃん……」
唯「あ、憂は謝らなくていいんだよ」
憂「お姉ちゃん……」
憂「……!お姉ちゃん!」
唯「ん?なあに?」
タタタ
憂「お姉ちゃん!お姉ちゃん!」
唯「ノート?」
憂「お、姉ちゃん……」カキカキ
憂『これ使えば話せるよ!』
唯「おお!」
憂「……」カキカキ
憂『お姉ちゃんしか喋れなくなっちゃった』
唯「どうしてなったか分かる?」
憂「……」フルフル
唯「そっか……」
憂『ごめんなさい』
唯「ううん」
唯「でもこれは治す方法見つけないとだね」
憂「お姉ちゃん……」
唯「……とりあえず、ごはん食べよっか?」
憂「……お姉、ちゃん」コクリ
・・・
憂『お姉ちゃん、料理とっても上手だね』
唯「えへへ、まだ憂にはかなわないよー」
憂『そんなことないよ』
唯「ありがと」
憂「……」カキカキ
憂『また試してみるね』
唯「だいじょうぶ?」
憂『わからないけど、やらなくちゃ』
唯「……そうだね、がんばろ」
唯「憂、ちょっとおいで」
憂「お姉ちゃん?」
ギュー
唯「これでよし!」
憂「お姉ちゃん……」
・・・
憂「お姉ちゃん……」グス
唯「……ごめんね、憂。無理させちゃったね」
憂「お姉ちゃん……」フルフル
ギュウ
唯「憂、そんなに心配しないで」
唯「私はいつだって憂の……」
憂「……」
唯「憂の……」
憂「……お姉、ちゃん?」
唯「……」
憂「?」
唯「……ねぇ、憂」
憂「お姉ちゃん?」
唯「憂は私のこと、好き?」
憂「……お姉ちゃん」コク
唯「そっか……」
憂「……」
唯「私、憂のこと好き」
憂「……」カキカキ
憂『わたしもだよ?』
唯「ううん、そういう意味じゃない」
唯「憂のこと、愛してる」
憂「へっ?」
憂「お、おね……!」
唯「ちょっと喋れたね」
憂「お、おねえちゃ……」
唯「憂……」ギュー
憂「ひゃ……」
唯「憂、ごめんね。わかっちゃった」
憂「!」
唯「たぶんね、全部わかったよ」
憂「お姉ちゃん?」
唯「……憂は、私を迎えてくれたとき、何て言ったか覚えてる?」
憂「……お姉ちゃん」フルフル
唯「憂はね、『おかえり』って言ったんだよ」
憂「……」
唯「私の家はもうここじゃないのにね」
憂「おね……えちゃん」ギュ
唯「憂、私のこと、好き?」
憂「……」
唯「……」
憂「……す、き」
唯「……よかった」
憂「……」
唯「ごめんね、憂だって、不安になっちゃうよね」
唯「ずっと近くにいるなんて、口だけじゃどうとでも言えるもんね」
憂「……」
唯「憂、好きだよ」
唯「遠くにいても、憂のことがずっと好き」
憂「お、おね……」
唯「2ヶ月向こうにいたって、憂のことばっかり考えてた」
憂「お姉ちゃん……」
唯「不安にさせてごめんね」
唯「はっきり言わないと、わかんないよね」
唯「私は憂から離れていったりしないよ」
唯「私も、憂と一緒にいたい」
憂「おっ、お姉ちゃんっ!」ギュ-
唯「……喋れる?」
憂「……ん、んむ」
唯「……」
憂『ごめんね!わたし……』ポチポチ
唯「憂、いいよ」
唯「まだ不安にさせちゃってるのかな?」
憂「う、うぅ」
唯「うい」
憂「?」
唯「キスすれば、伝わるかな」
憂「へっ?」
唯「嫌?」
憂「……ううん」
唯「じゃあ、こっち見て」
憂「ん……」
唯「でも、これは憂が好きだからするキス、だからね?」
憂「お、お姉ちゃん、わたし……んむっ」
おわり。