昨年の大晦日
桃の家
桃「世間はなんだかあわただしくしてるみたいだけど…、私はこれといってすることはないかな…あ、たまさくらちゃんの特番やってる」
メタ子「時は来た」
桃「メタ子。こっちおいで。一緒にたまさくらちゃんの特番をみよう」
メタ子「時は来た…、時は来た」
桃「メタ子ももう歳かな…、すっかり同じ神託しか言わなくなったし」
桃「…まあ、私が魔法少女としてやる気なくしたことも関係してるかもしれないけど」
メタ子「そば…来た」
桃「え…?」
メタ子「そば…、来てるぞ」
元スレ
千代田桃(14歳)「年末って…、なにすればいいんだろう」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1577547556/
桃「メタ子、いまなんて」
メタ子「時が来た」
桃「いや、違うでしょ、さっき傍…、来てるって…、誰かがこの町に来るってことなの?」
メタ子「時は来た」
桃「ああもう、ボケ猫めっ」
桃「………」
桃「傍に来るって…、だれのこと…?」
ミカン『あ、桃?久しぶり…、突然どうしたの? って、え?今は、実家で新年に向けた大掃除をしてるとこだけど? それが一体…』
桃「そっか、わかった、それならいいや。それじゃ」
ミカン『え!??それだけ!??久しぶりにかけてきといて何なのよ!? あ、そうだ桃っ、年賀状送るから住所を』ツーツー
桃「傍に来る…って…、ミカンのことじゃないのか…、いったい誰が…?」
桃「(ひょっとして、桜お姉ちゃん…?いや…、それとも…)」
桃「(この町の平穏を乱すような連中のことだったら…どうしよう…こんな年の瀬に)」
桃「……どうしよう、なんだか嫌な予感してきた」
大晦日の晩
ヒュウウウウウウ…
桃「わたしの思い過ごしだといいけど…」
桃「念のため、今日は外で町を歩いてパトロールしよう、年越しを狙ってヘンな連中がこの町にくるかもしれないし」
メタ子「時は来た」
桃「とはいえ寒いから…、暖房のためメタ子を抱えてもってきてよかった」
ガヤガヤ…
桃「それにしても、今夜はずいぶん人が多いような…、もう夜も遅いのに」
優子「お母さん、早く行きましょう、早くしないと年が明けてしまいます、早く行って、我が家のお財布事情の改善を神様に祈らなくては」
清子「あらあら、気が早いですね優子は。まだ年明けまで時間は十分ありますし、焦らずともちゃんと初詣できますから」
……
桃「…ああそうか、お参りのために人が多いのか」
桃「それじゃあ、人が集まりそうな大きな神社の方に行って、パトロールしてみようかな…」
神社の境内
がやがや
杏里「来年は高校生っ!絶対、バドミントンでスタメンに選ばれるようお祈りしなきゃっ」
小倉「高校生になったら、自分で部活を立ち上げて色々面白おかしい実験しよ~、あと実験にうってつけな素敵な出会いがあるようにお祈りしとかないと」
リコ「マスター、これ年明けと同時にダッシュして周り蹴散らしながら一番最初にお祈りするやつやろ?はやくスタートラインにいかな」
白澤「こ、ここはそんな野蛮なお祈りをする場所じゃないよリコ君」
……
桃「……」
桃「大晦日の神社って初めてきたけど、こんなにたくさんの人が集まってくるんだ」
桃「みんな何をお願いするんだろう…、わたしも、年が明けたら何かお祈りしてみようかな……ね、メタ子」
警察「あの、ちょっといいかな」
桃「………え?」
交番
警察「いや、神社の敷地で大きな猫を抱えて、人ごみを眺めながらずっと微動だにしない子がいる、って連絡があって…」
警察「お参りに来たって様子でもないし…、神社の関係者でもなさそうだし…、一体、何してたのかなって…、ね?念のため、聞きたくて」
桃「あ、いやあの…、別に私はあの…」
警察「ひょっとして家族の人喧嘩とかして…、家出したとか…じゃないだろうね」
桃「ち、違いますっ、…いや、だからその…メタ子が…、神託が…」
警察「家の連絡先は?お父さんとお母さんは?」
桃「いや…その家族はいなくてその…、いやだから私は」
警察2「あー、もしもし?神社で家出少女とおぼしき少女を保護しました。いま、家の連絡先を効いているところです」
警察「うんうん、私も若いころは親に反発してよく家出とかしたわ。けど、この年末の寒いタイミングではなかったかな、特に今日は大晦日だしね、ちゃんと家族と一緒に年を越さないと」
桃「はあ…」
桃「(や、やばい…、あれよあれよと家出少女扱いに…、町を守るためのパトロールのはずがどうしてこうなった…?)」
桃「(もうしょうがない、きちんと事情を話せば…!)」
桃「あ、あのっ…、わたし実は、今は魔法少女で…、あ、いや…現役からは遠ざかってますが…!実は今日、メタ子…、いやナビゲーターのこの猫が神託があってその…、あの!」
警察「ああうん、うん、わかったわかったわ。ねえ、アレ、まだかしら」
警察2「あ、いま出来ました、さあ、どうぞ」
桃「え…?」
警察「まあ、今年あった嫌なことや辛いことはさ、この年越しそばでも食べて断ち切ってさ、新しい年に向けて頑張っていきましょうよ」
警察「大丈夫、来年はきっと良いことあるわ。だから、これ食べたら、もうおうちに帰りなさいね?」
桃「え…?」
メタ子「そば、来てるぞ」
桃「ええ…?」
……
………
桃「そう、そんなこんなで去年の大晦日はメタ子の神託に振り回されて…、警察に補導されて、交番でそばを食べたんだ。人生で初めての年越しそばだったかな」
桃「結局その交番で年を越してさ。解放されてからは、一応、初日の出もみたし…初詣もしたよ。何をもう、お祈りしたのか忘れちゃったけど」
桃「まあ、なんだかんだで、今まで生きてきた中で年越しの思い出といったらそれくらいかな、…まあ、結構楽しかったけど」
桃「あれ、どうしたのかな?二人とも」
ミカン・シャミ子「………」
ミカン「うそ…でしょ?何貴方…、去年の大晦日、そんなことしてたの? そんな悲しい年越し初めてきいたわ…?」
ミカン「てか警察に補導ってなに?ヤンキーなの?え? それが年越しのベストの思い出って、今までどんな年末年始を過ごしてきたの?やだ…、わたし呪いがでてきそう…」
桃「え?いや…、それまでは年末もそれどころじゃなかったり…、家でゴロゴロしてたり、思い出は特に…、ってシャミ子?」
シャミ子「ううう…おのれ桃よっ!あまりに切ない大晦日エピソードにせっかく作った年越しそばに、涙が入るところだったじゃないですかっ!ぐす…ぐす」
桃「え…、なんで泣いてるの、シャミ子?大丈夫?」
シャミ子「ああもう、いいですからっ!とにかく今年の大晦日は、取り調べ室でカツ丼感覚でそばを食べるんじゃなくて、このあったかい家の中で、私たちとこの年越しそばをいただいちゃってください」
桃「ああ、はい、いただきます」ずるずる…
シャミ子「くっく…、どうだ魔法少女よ…、私の作った年越しそばのお味は」
ミカン「皆ですごしながら食べるとまた一段とおいしく感じるんじゃないかしら」
桃「……うん、そうかもね」
桃「……、けど、そばよりうどんの方が良かったかも」
シャミ子「年越しはそばって決まってんですよっ!!」
おしまい