妻「今日はカレーよ」
夫「おっ、うまそ」
夫「いただきまーす!」
パクパク モグモグ
妻「どう?」
夫「おお、うまい! このカレー、サイコーだよ!」
妻「よかった、腕によりをかけたかいがあったわー」
元スレ
夫「最近ずっと毎日カレーだなぁ」妻「カレー持ってきたわよ~」夫(今トイレから出てこなかったか?)
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次の日――
夫「今日はなんだい?」
妻「カレーよ」
夫「昨日のおいしかったもんな。いただきまーす!」
パクパク モグモグ
妻「どう?」
夫「うん、昨日のよりおいしいかも!」
妻「よかったわー」
次の次の日――
夫「ただいまー」
妻「お帰りなさい。カレーできてるわ」
夫「また?」
妻「嫌?」
夫「いや、そんなことはないけど」
夫「いただきまーす!」
夫(三日連続カレーか……やれやれ褒めるのも考えものだな)
同僚「かりんとう食う?」
夫「おお、サンキュ」
夫「……」ボリボリ
夫「辛いもんばっか食べてると、甘いもんがいつもよりおいしく感じるよ」
同僚「辛いもんばかり?」
夫「実は……」
同僚「いいじゃん、カレー! 俺大好物だぜ!」
夫「俺も好きだけど、こう毎日だとなぁ……」
同僚「ワガママいうなよ。俺みたいな自炊苦手な独身者からすると、手料理がどんなにありがたいか……」
同僚「褒めちゃったお前にも多少は責任あるんだし」
同僚「下手に口出すよりは奥さんのカレーブームが自然終息するのを待った方が賢明だと思うぜ」
夫「そうだな、そうするか……」
同僚「なんなら会社に持ってきてくれたら俺食うぜ」
夫「嫌だよ、めんどくさい」
夫「ただいまー」
妻「お帰りなさい」
夫「今日は?」
妻「カレーよ」
夫(やっぱりな……だけどここは同僚のアドバイスに従おう)
夫(別にまだ飽きたわけじゃないし、放っておけばそのうち飽きるだろ)
バタンッ
妻「……」スタスタ
妻「お待たせー!」
夫「おっ、うまそ――」
夫(ってちょっと待てよ)
妻「どうしたの?」
夫(今……トイレから出てこなかったか?)
妻「食べないの?」
夫「いや、食べる! 食べるよ!」
夫「いただきまーす!」
パクパク モグモグ
夫「いやあ、カレーおいしいなぁ! 昨日までとはまた違った味で!」
妻「うふふ、嬉しいっ!」
夫(怖くて聞けなかった……)
次の日――
夫「今日もカレー?」
妻「そうよ。持ってくるわね」
夫「あのさ……そういやカレーの鍋、見せてもらったことなかったよな」
夫「見せてくれないか?」
妻「ダメよ! 恥ずかしいし、企業秘密!」
夫「そ、そうか」
妻「……」スタスタ バタンッ
夫「……」
夫(またトイレに入っていった……)
バタンッ
夫(出てきた)
妻「お待たせ、カレーよ」
夫「……い、いただきま~す」
夫「……」
妻「食べないの?」
夫「あの……このカレーってホントにカレー?」
妻「もちろんよ! ハヤシライスなんてことはないわよ」
夫「だよね……」
妻「どうしたの? 今日のあなた少し変よ?」
夫「いや、大丈夫だよ……いただきまーす」パクッ
また次の日――
妻「今日もカレーよ」
夫「や、やったぁ~……嬉しいなぁ~……」
妻「今持ってくるわね」スタスタ
夫「あ、俺も行くよ」
妻「ダメ!」
夫「!」ビクッ
夫「な、なんで……」
妻「男子厨房に入らずっていうでしょ~?」
夫(お前が入ってるの、厨房じゃなくトイレじゃん……)
バタンッ
妻「今日のは特においしいわよ~」
夫(やっぱりトイレから出てきた……)
妻「どう?」
夫「今日のは……特にコクがあって……おいしいよ」
妻「よかったー!」
夫(よく考えたら、こうも毎日味が変わるのもおかしいんだよな。同じカレーなのに)
夫「はぁ~……」
同僚「かりんとう食う?」
夫「かりんとう……いやいやいや、やめとく! あれを連想しちまうから!」
同僚「あれって?」
夫「……」
夫「今からすげえバカげた相談するけど、引かずに聞いてくれよ」
同僚「お、おう」
同僚「奥さんのカレーが本当にカレーか?」
夫「ああ……」
夫「ここんとこずっとそれが気になって、ノイローゼになりかけてるんだよ」
夫「だけど聞いてもはぐらかされるし……」
同僚「だったら打つ手は一つしかないな」
夫「なんだよ?」
同僚「それは――」
妻「今日もカレーだから、すぐ持ってくるわね」
夫「楽しみだな~」
スタスタ バタンッ
夫(トイレに入っていった……)
夫(よーし、こっそりと音を立てないように……)コソコソ…
夫(トイレのドアの鍵は……閉まってない!)
夫(俺はリビングで大人しく待ってるはずだと油断したか!)
夫(見るの怖い……もしかしたら、とんでもない結末が待ってるかもしれないけど……)
夫(ずっと妻に疑念を持ち続けるより、ずっとマシだ!)
夫(うん、こうするしかない!)
ガチャッ!
ガチャッ!
妻「次はこのスパイスを混ぜて……」
妻「きゃっ!」
夫「あ……」
妻「な、なにするの! いきなり開けないでよ!」
グツグツ… コトコト…
夫(持ち運べるコンロと、小さな鍋で……トイレ内でカレーを……)
夫「どうしてこんなことを? トイレでカレー作るなんて……」
妻「だって……恥ずかしいじゃない」
夫「恥ずかしい?」
妻「こんなに何種類ものスパイスを、一人でブツブツ言いながら調合してるとこ、見られたくなかったから……」
夫「ああ、そういうことか……」
夫「よかったぁ~!」
妻「?」
夫「いや、俺はてっきり――」
妻「アハハハハッ! そんなことするわけないでしょ! 自分の便をカレーとして出すなんて!」
夫「だよね……」
妻「だけどトイレでカレーを調理するのも十分おかしいわよね」
妻「ごめんなさい。これからはちゃんとキッチンで調理するわ」
夫「そうしてくれると助かる。衛生面はもちろん、火事も怖いし」
妻「ああ、それと私のカレーブームもそろそろ落ち着きそうだから、安心してね」
夫(見透かされてたか……)
同僚「いやー、よかったなぁ」
夫「ああ、俺のとんだ早とちりだったよ」
同僚「んじゃ、かりんとう食え食え」
夫「いただくよ」ポリポリ
同僚「誤解を招くようなことした奥さんも悪いけど、お前もいくらなんでも考えすぎだって」
同僚「自分の便を他の食品に見せかけて食わせる奴なんて、いるわけないだろ」
夫「だよなぁ、ハハハ」
夫「このかりんとう美味いな。もう一個くれ」ポリポリ
同僚(……俺以外にはな)
完