1 : 以下、?... - 2019/11/29 19:20:06.473 Tb/bCo/H0NIKU 1/32

「インゲルぅ!」

「はーい!」

「焼けたぞ! パンを踏めぇっ!」

「ほいさっ!」

フミッ フミッ フミッ フミッ …

「出来上がり!」

「よっしゃ、店に並べてこい!」

「うん!」

元スレ
パンを踏む娘「さあ、今日もはりきってパンを踏むわよ!」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1575022806/

4 : 以下、?... - 2019/11/29 19:23:15.550 Tb/bCo/H0NIKU 2/32

ワイワイガヤガヤ…

「はいはーい、みんな押さないでー! パンはたっぷりあるからー!」



客A「相変わらずここのパンは最高だな!」

客B「親父さんの作ったふっくらパンを、インゲルちゃんが踏むことで極上の仕上がりになってんだよな」

客C「インゲルちゃんありがとう!」

5 : 以下、?... - 2019/11/29 19:26:53.729 Tb/bCo/H0NIKU 3/32

少年「おーい、インゲルー! 遊ぼうぜー!」

「あ、だけど、店番が……」

「あとは私一人で大丈夫だから、遊びに行ってきなさい」

「お母さん、ありがとう!」タタタッ

「今日は何して遊ぶ?」

少年「缶蹴りやろうぜ!」

6 : 以下、?... - 2019/11/29 19:29:20.053 Tb/bCo/H0NIKU 4/32

「よっしゃあああああああ!」タタタタタッ

「みーっけた!」フミッ

子供A「インゲルはえー!」

子供B「あっという間に全員捕まった……」

少年「さすがインゲル……」

「ふっふっふ、何かを踏むことに関しては、あたしはプロなのよ」

8 : 以下、?... - 2019/11/29 19:32:29.474 Tb/bCo/H0NIKU 5/32

―教会―

司祭「……なに、“パンを踏む娘”だと?」

部下「ええ、このところ評判になっているようで……いかがいたしましょう」

司祭「許せん……」

司祭「神からの贈り物であるパンを踏むなど、神への冒涜以外の何物でもない」

司祭「今世間を騒がせている国王陛下を狙うテロリスト、その仲間に違いない!」

司祭「私自ら出向き、その娘を逮捕して、地獄に落としてくれようぞ!」

10 : 以下、?... - 2019/11/29 19:36:57.257 Tb/bCo/H0NIKU 6/32

―パン屋―

ワイワイガヤガヤ…

司祭「皆の者、どいてもらいたい」

ザワ…

「教会の司祭様!?」 「どうしてここへ?」 「まさかパンを……?」

司祭「この店に“パンを踏む娘”とやらがいると聞いたのだが……」

「はいはーい! あたしに何か御用?」

司祭「君は……たしかにパンを踏んでいるのか?」

「はい、踏んでます!」

司祭「ぬうう、悪びれもせず……なんという冒涜者! 許せん!」

司祭「火あぶりにしてくれようぞ!」ガシッ

「な、なにすんの!」

11 : 以下、?... - 2019/11/29 19:39:49.427 Tb/bCo/H0NIKU 7/32

「待って下さい! 娘が何をしたというんです!」

司祭「パンを踏んだ……これすなわち、神への冒涜!」

司祭「この娘だけでない……この店ごと天罰を喰らわせてくれるわ!」

「ちょ、ちょっと待ってよ! あたしは冒涜なんかしてない!」

司祭「往生際が悪いぞ」

「冒涜してるかどうか、あたしがパンを踏むところを見てよ!」

「もしそれで冒涜だと感じたら、どうしてくれてもかまわないから!」

司祭「よかろう」

司祭(ふん、どういう踏み方をしようが、火刑にすることに変わりないがな!)

12 : 以下、?... - 2019/11/29 19:42:16.895 Tb/bCo/H0NIKU 8/32

「お父さん、パンを!」

「おう!」サッ

「いくよっ!」

フミッ

司祭「……!」

司祭(こ、これは……ッ!)

15 : 以下、?... - 2019/11/29 19:45:36.177 Tb/bCo/H0NIKU 9/32

司祭(なんという優しく包み込むような踏みつけ……)

司祭(たとえるならそう、野に咲く花を潰すのではなく、保護するかのような……)

司祭(幼い頃、私を抱っこしてくれた母親を思い出す……)

司祭(見ろ、あのパンを! 踏まれたとたん、明らかに輝きが増しているではないか!)

司祭(これは冒涜などではない……愛だ!)

司祭(愛以外の何物でもないッ!)

17 : 以下、?... - 2019/11/29 19:49:46.704 Tb/bCo/H0NIKU 10/32

司祭「くううう……!」

(え、泣いてる!?)

「あの……よかったらこのパンどうぞ」

司祭「いただこう!」パクッ

司祭「う、うまいっ!」

司祭「ただでさえ美味のふんわりとしたパンが、踏みつけによって更なる高みへと引き上げられ――」

司祭「これはまさに……神の味!!!」

司祭「うおおおおおおおおっ!」バクバクムシャムシャ

「あーあー……」

「一斤丸ごと食べちゃったわ」

「もしかして飯食べてなかったから不機嫌だったのかな」

19 : 以下、?... - 2019/11/29 19:53:31.959 Tb/bCo/H0NIKU 11/32

司祭「ありがとう……ありがとう……」グスッ

「じゃあ、はい」サッ

司祭「なにこの手」

「お金払って」

司祭「え、金取んの!?」

「当たり前でしょうが!」

司祭「うむむ……ほれ」チャリン

「毎度あり~!」

20 : 以下、?... - 2019/11/29 19:56:20.090 Tb/bCo/H0NIKU 12/32

ある日――

「ルンル~ン、買い出し終了っと」

「ん、あなたは?」

ドM男「ボクはドM男さ……」ハァハァ

「ドM……!」

ドM男「君のことは知ってる。何かを踏むのが得意なんだろう? ボクを踏んでくれないか?」ハァハァ

「……分かった、いいよ」

ドM男「おおっ!」

「じゃあ、踏むよ」フミッ

ドM男「女王様ァ~~~~~~~~~~!!!」

22 : 以下、?... - 2019/11/29 19:59:06.920 Tb/bCo/H0NIKU 13/32

ドM男「――――!」

ドM男(いや、違う……)

ドM男(この優しく包み込むような踏みつけは……女王様じゃない!)

ドM男(聖母様だ!!!)

「えい、えい」フミフミ

ドM男(嗚呼……。踏まれるほど……心の歪みが矯正されてく……)

元ドM男「ありがとう」スッキリ

「え」

元ドM男「君のおかげでボクは真人間に戻れた……真っ当に生きるよ! それじゃ!」シュタタタッ

「なんだったの一体……」

23 : 以下、?... - 2019/11/29 20:02:20.112 Tb/bCo/H0NIKU 14/32

―パン屋―

ワイワイガヤガヤ…

「さあさ、いらっしゃーい!」

「パンはいかがですかー!」

ワイワイガヤガヤ…

主婦「おいしいわ~」

農民「労働で疲れた体にはこのパンが一番!」

司祭「おいひぃ~! 口の中にパン汁がひろがりゅぅぅぅぅぅ!」

25 : 以下、?... - 2019/11/29 20:05:36.188 Tb/bCo/H0NIKU 15/32

……

「うーん、今日はいつもよりお客さん少ないね」

「そうね……」

「ま、たまにはこういう日もあるさ」

少年「おーいインゲル!」タタタッ

「どしたの?」

少年「向こうに新しい店ができたんだ! 今日からオープンしてる!」

「なんの店?」

少年「おにぎりやおはぎを売ってる店だ! 大繁盛してるぜ!」

「おにぎりやおはぎ……ってことはお米か。うちのライバルじゃない!」

少年「どうする?」

「もち、敵情視察よ!」

27 : 以下、?... - 2019/11/29 20:08:19.878 Tb/bCo/H0NIKU 16/32

―ライバル店―

ワイワイガヤガヤ…

「このおはぎうめえ!」 「おにぎりおいしいわ!」 「一つください!」

少年「な?」

「むうう……」

司祭「やっぱおにぎりは梅干しだよな~」モグモグ

「あーっ、司祭さん! なんでこの店にいるの!」

司祭「あ、いや、これは……」

「うちのパンを食べずに浮気するなんてひどい……!」

司祭「ごめんよぉ……」ウルッ

「なーんてね。おいしそうじゃない。こりゃあ予想以上に強敵みたいね」

29 : 以下、?... - 2019/11/29 20:11:22.416 Tb/bCo/H0NIKU 17/32

少年「あれがこの店の看板娘だ」

「あたしと同じぐらいの女の子じゃない!」

和服娘「いらっしゃいませ」

(……可愛い)

和服娘「もしかして、貴方が“パンを踏む娘”でおなじみのインゲルさん?」

「ええ、そうよ。あなたは?」

和服娘「私は……“米を揉む娘”といわれておりますの」

和服娘「この店の商品は全て、私が揉んだり握ったものですのよ」

「!」ゾクゾクッ

(血が……騒いできたわ!)

30 : 以下、?... - 2019/11/29 20:14:41.062 Tb/bCo/H0NIKU 18/32

和服娘「どうやら私を見て、血が騒いできたようですね」

「!」

和服娘「私もです。全身の血が沸き立つような感触ですわ」

「すました顔して、結構ヤンチャなのね」

和服娘「いかがでしょう? 私とあなた、一つ勝負するというのは?」

「望むところよ!」

少年「種目はやっぱり……料理勝負かぁ!?」

31 : 以下、?... - 2019/11/29 20:17:21.353 Tb/bCo/H0NIKU 19/32

和服娘「料理勝負? ご冗談を」

和服娘「お米とパンで勝負して、一体どうするというのでしょう」

和服娘「よほど実力差がない限り、審査員がご飯派かパン派かで勝負は決まってしまいますわ」

「正論だわ……!」

少年「じゃあ、なにで勝負すんだよ!」

和服娘「女同士の戦いといったら……やはりこれでしょう」モミッ

「あっ……」

少年「な、インゲルの胸を……!?」

32 : 以下、?... - 2019/11/29 20:20:15.530 Tb/bCo/H0NIKU 20/32

和服娘「うふふふ……」モミモミ

「あっ、ちょっ……んっ……」

(き、気持ちよくて……とろけちゃいそう……)

少年「インゲルッ!」

和服娘「……」モミモミ

「んっ……ああっ……」

(悔しいけど、あたしの負――)

和服娘「……」パッ

「?」

少年「やめた?」

和服娘「負けました……!」ガクッ

「なんで!?」

33 : 以下、?... - 2019/11/29 20:22:31.038 Tb/bCo/H0NIKU 21/32

和服娘「だけど、私もまだまだ成長途中!」

和服娘「次こそ勝ってみせます! 覚えておいて下さい!」タタタタタッ

「……」

少年「やったなインゲル! お前の勝利だ!」

「う、うん……」

(なんかよく分からないけど、今揉まれたせいでまたおっきくなっちゃいそう)

34 : 以下、?... - 2019/11/29 20:25:02.930 Tb/bCo/H0NIKU 22/32

それからというもの――

少年「インゲルー、遊びに行こうぜー!」

和服娘「インゲルさん、私もいますわよ!」

「はーいっ!」

「今日は何する?」

少年「鬼ごっこでもやろうぜ!」

和服娘「私、負けませんわよ!」

タタタタタッ… タタタタタッ…

35 : 以下、?... - 2019/11/29 20:28:36.341 Tb/bCo/H0NIKU 23/32

そんなある日――

少年「大変だ大変だ!」

「どうしたの?」

少年「王様を狙ってたテロリストがついに捕まったんだってよ! しかもこの町で!」

「えっ、ホント?」

少年「見に行こうぜ!」

「行く行く!」

36 : 以下、?... - 2019/11/29 20:31:11.413 Tb/bCo/H0NIKU 24/32

ワイワイガヤガヤ…

憲兵「さあ、大人しくしろ!」

テロリスト「ククク……」

憲兵「何がおかしい!?」

テロリスト「一ついいことを教えてやろう」

憲兵「?」

テロリスト「俺はこの町のどこかに……地雷を埋めた!」

憲兵「な、なんだと!?」

37 : 以下、?... - 2019/11/29 20:34:30.006 Tb/bCo/H0NIKU 25/32

憲兵「どこだ、どこに埋めた!?」

テロリスト「言うわけねえだろ!」

テロリスト「もちろん、目で見て分かるような埋め方はしてないぜ」

テロリスト「いったい誰が踏むか楽しみだぜ! ヒャハハハハハッ!」

憲兵「こいつ……!」

ザワザワガヤガヤ…

憲兵(こいつを吐かすにしても時間がかかる……その間に誰が踏んでしまうか分からん!)

憲兵(どうする……どうすればいいんだ!?)

38 : 以下、?... - 2019/11/29 20:37:22.496 Tb/bCo/H0NIKU 26/32

「憲兵さん!」

憲兵「君はたしかパン屋の……」

「地雷はあたしが探すわ!」

憲兵「君が!?」

「あたし、足の感覚には自信あるから!」

憲兵「わ、分かった……やってみてくれたまえ」

「よーし、靴を脱いでと」ヌギッ

39 : 以下、?... - 2019/11/29 20:40:11.762 Tb/bCo/H0NIKU 27/32

「……」スタスタ

(全神経を足に集中させるの……)スタスタ

(そうすればきっと分かるはず……地雷の在り処が!)スタスタ

「……!」ピクッ

(あった……!)

「ここよ! ここだわ!」

憲兵「おおっ、本当か!」

40 : 以下、?... - 2019/11/29 20:43:21.155 Tb/bCo/H0NIKU 28/32

憲兵「さっそく処理を――」

「いえ、この地雷……ちょっと処理が難しいかもしれない。掘り返そうとしたらすぐ爆発しそう」

「それにちゃんと人が踏まなきゃ、爆発してくれそうにないわ」

憲兵「そこまで分かるのか! じゃあどうやって処理を……!」

「決まってるでしょ?」

「あたしが踏むわ」

憲兵「な、なんだとォォォォォ!?」

41 : 以下、?... - 2019/11/29 20:45:54.193 Tb/bCo/H0NIKU 29/32

憲兵「君みたいな女の子にそんなことさせられ――」

少年「インゲルなら安心だ!」

和服娘「頼みましたよ、私の好敵手」

「いつものようにな」

「頑張ってね、インゲル」

憲兵「ええええええ!? 決死の作業をしようとしてるのに軽い!」

司祭「やったれぇ、インゲルッ!」

憲兵「司祭様まで!?」

42 : 以下、?... - 2019/11/29 20:48:59.637 Tb/bCo/H0NIKU 30/32

「じゃあ、えいっ!」

憲兵(まるで朝の散歩に出かけるような軽やかなステップで地雷を……)





ドォォォォォォンッ!!!





憲兵(地雷の爆発が……女の子を避けているッ!)

憲兵(まるで海を割ったモーセのように……ッ!)

44 : 以下、?... - 2019/11/29 20:54:55.973 Tb/bCo/H0NIKU 31/32

「いい子ね」

少年「やったぁ!」

和服娘「私と互角ならば、このぐらいできなくてはね」

「よくやった!」

「よかった……ちょっと心配だったわ」

司祭「いよっしゃあああ! さっすがインゲルだぜェェェェェ!!!」

憲兵「いや、もう……なんかすげェわ」

ワアァァァァァ……!



こうしてインゲルは一躍ヒーローとなった。

しかし、やることは変わらない。

45 : 以下、?... - 2019/11/29 20:58:05.116 Tb/bCo/H0NIKU 32/32

「インゲルぅ!」

「はーいっ!」

「焼けたぞっ! パンを踏めぇっ!」

「ほいさっ!」

「さあ、今日もはりきってパンを踏むわよ!」








―おわり―

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