ガラッ
店員「いらっしゃい!」
牛「ンモォ~」
店員「お、牛さん!」
牛「あれ今日一人? 店長は?」
店員「店長風邪引いちゃいましてね、熱出しちゃったみたい」
牛「あー、今流行ってるからね。じゃ忙しくて大変だ」
店員「ご注文は?」
牛「牛丼大盛りつゆだくで!」
元スレ
店員「いらっしゃい!ご注文は?」牛「牛丼大盛りつゆだくで!」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1571934397/
店員「牛業界は景気どうですか?」
牛「ンモォ~、そうだねえ」
牛「闘牛とかでなんとか食いつないでるけど、なかなか厳しいねえ」
牛「ミルク売ってる女房の方がよっぽど稼いでて……夫として立場ないよ」
店員「奥さん、ミルクいっぱい出しそうですもんねえ」
牛「しかも、女房がそのことを一切いわないことがまた辛くてね。気を使わせちゃって」
店員「調子悪い時はよりかかっていいんですよ。そういうもんです、家族って」
牛「ありがとう」
店員「へい、牛丼大盛りつゆだくお待ち!」
牛「ンモォ~、うまそう」
牛「いただきます!」モグモグ
牛「うん、この牛肉柔らかくておいしいねえ!」
牛「こうやってご飯と肉をまとめて口に放り込むのもいいし」ハムッ
牛「肉だけをじっくり味わうのもまたよし」モグモグ
牛「肉汁とつゆがたっぷりかかったご飯を一気に流し込むのは最高だ!」ムッシャムッシャ
店員「相変わらずいい食いっぷりですねえ!」
牛「ごちそうさま、おいしかったよ!」
店員「毎度ー!」
ガラッ
店員「いらっしゃい!」
豚「ブヒィ~」
店員「豚さん、お久しぶり!」
店員「ご注文は?」
豚「もちろん豚丼!」
店員「あいよー!」
店員「豚さん、ちょっと痩せたんじゃない?」
豚「あ、分かるかい? このところ、仕事でトラブル続きで……」
豚「悩んでばっかいるから、だいぶ痩せちゃったんだよねえ~。豚だってのにさ」
店員「そりゃ大変ですねえ」
豚「君も悩みってあるかい?」
店員「もちろん! もう現在進行形で悩んでますって!」
豚「ハハハ、こんな味にうるさい客が来ちゃったもんねえ」
豚「久しぶりの豚丼だ、楽しみにしてるよ」
店員「へい、豚丼お待ち!」
豚「ブヒィ~、うまそう」
豚「いただきまぁす!」グァツグァツ
店員「いかがです?」
豚「ブヒィ~! 美味い! この豚、よく脂が乗ってるねえ!」
店員「そりゃもう仕入れ先からして違いますから」
豚「それだけじゃない、君の味付けも素晴らしいよ」
店員「ありがとうございます」
豚「ごちそうさん。店長さんにもよろしくねえ~」
店員「毎度ー!」
ガラッ
店員「いらっしゃい!」
ニワトリ「コケーッ!」
店員「こりゃ奥さん! いつもお美しい」
ニワトリ「まあ、お上手になって」
ニワトリ「さ、入って」
ヒヨコ「ぴぃ、ぴぃ」
店員「今日はお子さんもご一緒ですか」
ニワトリ「ええ、二人で買い物に出かけてたの」
店員「ご注文は?」
ニワトリ「親子丼を二つ。この子にはお子様サイズでお願いね」
店員「旦那さんはお元気で?」
ニワトリ「それが主人とは今朝も喧嘩しちゃって。朝からコケコケ大喧嘩」
店員「あちゃー」
ニワトリ「一度喧嘩しちゃうと、なかなか修復できないのよね~、お互い意地っ張りだから」
店員「喧嘩した時はとっとと仲直りした方がいいですよ」
店員「仕方ない折れてやるかくらいのつもりでいかないと絶対後悔します」
店員「小さなお子さんもいるんですから。案外敏感ですよ、このぐらいの子って」
ニワトリ「そうよねえ、本当にその通りだわ」
ヒヨコ「ぴぃ、ぴぃ」
店員「親子丼二つお待ちー!」
ニワトリ「わぁ、おいしそう」
ニワトリ「いただきまーす!」モグッ
ヒヨコ「ぴぃ、ぴぃ」モグモグ
ニワトリ「この子も喜んでるわ」
店員「お子さんの舌にかなってホッとしてます」
ニワトリ「私たち夫婦もこのお肉と卵が仲良く調和する親子丼のようにいきたいものだわ」
店員「上手くいきますよ、きっと!」
ガラッ
店員「いらっしゃい!」
海老「やあ、どうもどうも」プリッ
店員「海老さん!」
海老「最近、景気はどうや?」
店員「いやー、ぼちぼちってとこですよ」
海老「ぼちぼちが一番ええ。稼ぎすぎるのは、稼げんのと同じぐらいあかんからな」
店員「ごもっともです。さて、ご注文は?」
海老「天丼や! でっかい海老乗せてくれや!」
店員「海老さんはたしか製菓会社に勤めてらっしゃいましたよね」
海老「せやで」
店員「お仕事はいかがですか?」
海老「いやー、あかんな。こないだも新製品提案したら、あっさり蹴られてもうた」
店員「どのような?」
海老「サクサク食べれる“てんぐえびせん”っちゅうのを提案したんやけど」
海老「パクリやないかーいって怒られたわ」
店員「アハハ」
海老「せやけど、これからも新製品開発にはどんどん挑戦したいと思ってるで」
店員「おっしゃる通り! 新しいことに挑戦するのは全然悪いことじゃない! 応援してますよ!」
海老「おおきに!」
店員「天丼お待ち!」
海老「お、こら美味そやな。いただきまーす」モグッ
海老「ん~! この海老プリプリやんけ! たまらん!」
海老「他の天ぷらもどれもイケるわ! いやー、もう店長なしでもイケるんちゃう?」
店員「俺なんてまだまだですよ。さっきも……」
海老「さっきも?」
店員「いや、こっちの話で」
海老「ふぅ~、食った食った。美味かったわ、ごっそさん」
店員「ありがとうございましたー!」
ガラッ
店員「いらっしゃい!」
ウナギ「やぁ……」ヌメッ
店員「ウナギさん、相変わらずヌメってますね!」
ウナギ「まぁね……」
店員「ご注文は?」
ウナギ「うな丼で……」
店員「あいよー!」
ウナギ「おいしい……」ムシャムシャ
店員「なにせうちは天然モノを仕入れてますから!」
店員「ところで、ウナギさんは景気はどうです?」
ウナギ「辛いことが多くて死にたくなるけど……なんとか頑張ってるよ」
店員「そうですよ、その意気です! 間違っても死んだらいけませんよ!」
店員「死んだらオシマイなんですから! 絶対絶滅しないで下さい!」
ウナギ「ありがとう……今日は来てよかったよ」
ガラッ
店員「いらっしゃい!」
マグロ「ちーっす!」ビチビチッ
店員「マグロさん、今日もお元気で!」
マグロ「なにせマグロは新鮮さが命だからねえ!」
店員「ご注文は?」
マグロ「オレ大好物の鉄火丼で!」
店員「あいよー!」
マグロ「くぅ~、うめえ!」ビチビチッ
店員「そういえば、マグロさん決断早かったですねえ」
マグロ「ん?」
店員「魚介類水泳協会の体質に嫌気がさして、脱退を決めたじゃないですか」
マグロ「ああ、あれね! そりゃあ何事も決断は早くしないとね!」
マグロ「どんなもんでも遅くなると腐っちまうから!」
店員「そうですよね、腐っちゃいますもんね」
マグロ「にしても、この鉄火丼はうまい!」モグモグ
店員「ありがとうございます!」
店員「さて……そろそろ店じまいするか」
店員(俺は現在進行形で悩みを抱えている)
店員(開店の準備してる時、店長に新メニューを提案したら、ボロクソにこき下ろされて喧嘩になって)
店員(気づいたら、ついカッとなって――)
店員(死んだらオシマイだ。もはや生き返ることはない)
店員(決断は早くしなきゃならない。早く処分しなきゃ腐ってしまう)
店員(そして俺は、お客さん達の注文のおかげでようやく一つの解決法を導き出した)
ホカホカ…
店員「熱々のご飯と上に乗ったお肉のコラボがたまりませんなぁ!」
店員「いただきまーす!」モグモグ
店員「うんっ、このヒト丼うまいっ!」
―END―