1 : 以下、?... - 2019/10/18 01:24:22.795 IxvS5Ofs0 1/23

「すぐに堕ろせ!」

「やだっ! 絶対に産む!」ボコンボコン

「だって君のお腹すごいことになってるぞ! 内側からボコンボコンって!」

「それがどうしたのよ!」ボコンボコン

「そんなの産んだらきっと大変なことになるぞ!」

「大変なことになろうとも産んでみせる!」ボコンボコン

「ひいい、今にも腹を突き破ってきそうだ!」

「うっ!」ボコンッ

元スレ
夫「すぐに堕ろせ!」妻「やだっ!絶対に産む!」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1571329462/

6 : 以下、?... - 2019/10/18 01:28:13.256 IxvS5Ofs0 2/23

ドバァッ!!!

「あぐうっ……!」

「うわああああああっ! 腹を突き破ってきたああああっ!」

「大丈夫か!?」

「うん、私はなんとか」

赤子「……」ズルズル…

「うおお……もう自分で動けるのかよ……」

赤子「ぐふ、ぐふふふ……」ムクッ

「笑った……!」

8 : 以下、?... - 2019/10/18 01:30:34.888 IxvS5Ofs0 3/23

赤子「お前らが……父と母か」ズルル…

「ええ、そうよ」

「しゃ、しゃべった……!」

赤子「ミルク……持ってこい」

「私はまだ動けないから、あなたお願い」

「くそっ、子供が親に命令するなんて……!」

10 : 以下、?... - 2019/10/18 01:33:28.413 IxvS5Ofs0 4/23

「ほらよ」

赤子「……」

赤子「……低脂肪乳がいい」

「は?」

「あなた、買ってきたら?」

「……ふざけるな! ワガママいうんなら飲まなくていい!」

赤子「……」ギロッ

(こ、殺される……!)

12 : 以下、?... - 2019/10/18 01:36:40.296 IxvS5Ofs0 5/23

赤子「分かった……これでいい」ゴキュゴキュ

「飲んだ……」

「あら、案外素直ないい子じゃない」

「一回言う事聞いただけだろ! 君は人がよすぎるよ!」

(俺は認めないぞ……こんな化け物が自分の子供だなんて!)

14 : 以下、?... - 2019/10/18 01:40:28.346 IxvS5Ofs0 6/23

赤子「美味かった」ゲェップ

赤子「腹ごなしに走るか」タッタッタッタッタ…

「見事なストライド走法だわ。100メートル11秒台は出てるわね」

「いやおかしいだろ! 生まれたてだってのに!」

「なぁ、本当にあれは俺らの子なのか?」

「もちろんじゃない」

「君、どっかでエイリアンかなんかに襲われたんじゃないか? その時できたのが……」

「言っていいことと悪いことがあるわよ!」

「わ、悪かった」

16 : 以下、?... - 2019/10/18 01:42:36.450 IxvS5Ofs0 7/23

赤子「父よ、母よ、これからよろしく頼む」

「ええ、もちろん」

「……いいか。一言いっておく」

赤子「なんだ」

「俺を父と呼ぶのはいい。養ってもやる」

「ただし、俺はお前を自分の子供だとは認めない! 認めたくない!」

「あなた!」

赤子「かまわん、好きにしろ」

17 : 以下、?... - 2019/10/18 01:45:34.315 IxvS5Ofs0 8/23

……

「ただいまー」

「お帰りなさい」

「あいつは?」

「向こうで本を読んでるわ」

「おい、いったいなにを読んでるんだ」

赤子「クラウゼヴィッツの『戦争論』だ」ペラ…

(赤ん坊が読む本じゃねえ……)

18 : 以下、?... - 2019/10/18 01:47:20.209 IxvS5Ofs0 9/23

「“あいうえおゲーム”しましょう。私が言った文字から、思いついた言葉をいってね」

赤子「うむ」

「あ!」

赤子「暗殺」

「い!」

赤子「陰惨」

「う!」

赤子「蛆虫」

「え!」

赤子「壊死」

「お!」

赤子「怨念」

(物騒な言葉ばかりだ……)

19 : 以下、?... - 2019/10/18 01:50:19.533 IxvS5Ofs0 10/23

赤子「1000、1001、1002、1003……」グッグッ…



「もう数を数えられるのか」

「というより腕立て伏せしてるのよ」

(赤ん坊がやる回数じゃねえ……)

「やっぱりあんなのは俺の子じゃないよ。俺、昔から運動大嫌いだし……」

「あなた!」



赤子「……」

20 : 以下、?... - 2019/10/18 01:54:07.303 IxvS5Ofs0 11/23

……

「風呂上がりにはビール、ビールっと」

赤子「父よ」

「……なんだよ」

赤子「ビールを注ごう」

「いや、いいよ。自分で注ぐから」トクトク…

赤子「そうか……」

(どういう風の吹き回しだ……?)

21 : 以下、?... - 2019/10/18 01:57:34.938 IxvS5Ofs0 12/23

「ったく、なに考えてるんだかさっぱり分からん」

「きっと……あの子なりにあなたに愛してもらいたいんじゃない?」

「だからビールを注ごうと……」

「そうかなぁ」

「きっとそうよ」

「だとしても、お腹を痛めた君と違って、俺はやっぱりあいつを自分の子と見ることができない」

「あまりにも俺と違いすぎるから……どうしても突然変異の何かに見えてしまうんだ」

「あなた……」

25 : 以下、?... - 2019/10/18 02:00:31.805 IxvS5Ofs0 13/23

赤子「……」チラッ

「!」

赤子「……」プイッ

(今、こっちを見てたよな……まるで観察するように)

(もし、本当にあいつが俺に愛してもらいたいんだとしたら……)

(俺も親としてその想いに応えなきゃいけないよな……)

(だけど――)

26 : 以下、?... - 2019/10/18 02:04:32.521 IxvS5Ofs0 14/23

赤子「……」カキカキヌリヌリ…



「このところ、ずっと部屋にこもって……あいつ何やってるんだ?」

「実はね……あの子、あなたの絵を描こうとしてるみたいなの。プレゼントするつもりみたい」

「俺の絵を……!?」

(最近やたらチラチラ見てきたのは、そういうわけか)

(父親の絵なんて……なかなかにくいことしてくれるじゃないか。ちょっと感激したよ)

(よぉし!)

27 : 以下、?... - 2019/10/18 02:07:09.062 IxvS5Ofs0 15/23

「おーい」

赤子「!」ハッ

赤子「なんだ、父」サッ

「なに描いてるんだ? 俺にも見せてくれよ」

赤子「別に何も……」

「一生懸命何かを描いてるじゃないか」チラッ

「!」

(なんだあれ……? やたらとグロテスクな怪物が描いてある……)

(あれが俺なのか!? ――こいつには俺がそう見えてるってのか!?)

28 : 以下、?... - 2019/10/18 02:10:25.923 IxvS5Ofs0 16/23

赤子「父よ……これは――」

「なんだ、この絵はッ!」

赤子「!」

「よぉく分かった! やっぱりお前は俺のことをそういう風に見てたんだな!」

「だったら俺も改めて宣言してやる!」

「お前なんか俺の子じゃないッ!」

赤子「……!」クシャクシャッ

赤子「……」タタタタタッ

「ふん、どこへでも行け!」

30 : 以下、?... - 2019/10/18 02:13:49.146 IxvS5Ofs0 17/23

「……」

「あなたッ!」

「なんだよ」

「なんであんなひどいこといったの! いくらなんでもあんまりよ!」

「ひどいこと? あいつがひどい絵を描いたからだろうが!」

「今あの子が捨ててったこの絵、広げてよく見て……」

「……?」ガサ…

「!!!」

32 : 以下、?... - 2019/10/18 02:16:04.463 IxvS5Ofs0 18/23

(おぞましい怪物を退治してる――俺!?)

「そうよ、あの子にとって、あなたは怪物をやっつけるような頼もしい父親なのよ!」

「だからこれをプレゼントしたかったのよ!」

「くっ……!」

(俺は……俺は……なんてことをッ!)

「待ってくれーッ!!!」ダッ

33 : 以下、?... - 2019/10/18 02:19:41.904 IxvS5Ofs0 19/23

赤子「……」タッタッタ…

「待ってくれーッ!」

赤子「この声は……」クルッ

「ハァ、ハァ、ハァ……やっと追いついた。こんな一生懸命走ったの初めてかも……」

赤子「父……!」

「お前の絵、見たよ。さっきはすまなかった! 俺が悪かった!」

「こんな情けない親父を、あんなにかっこよく描いてくれてありがとう!」

赤子「ふん……見え透いたお世辞を……」

「お世辞じゃない!」

35 : 以下、?... - 2019/10/18 02:21:54.603 IxvS5Ofs0 20/23

「そういえば、一度も抱きしめたことなかったな」ギュッ…

赤子「父……」

「お前は……俺の子だ! 誰がなんと言おうと!」

「俺はお前を愛する!」

赤子「父……いいのか。私のような突然変異を……愛してくれるのか」

赤子「父とまるで共通点のない私を……愛してくれるのか」

「愛するッ!!!」ギュッ…

赤子「父……!」

36 : 以下、?... - 2019/10/18 02:26:12.659 IxvS5Ofs0 21/23

しばらくして――

赤子「今日はどこに行くんだ?」

「お父さんの実家よ」

「孫娘の顔を、俺の親父とお袋にも見せてやらなくちゃな!」

「今日はめいっぱいオシャレしましょうね」

赤子「うむ」

「へぇ、よく似合ってるじゃないか。可愛いぞ」

赤子「ふん、褒めても何も出んぞ父」

41 : 以下、?... - 2019/10/18 02:29:27.159 IxvS5Ofs0 22/23

祖父「ほぉ~、0歳児にしてはおっきいし賢いのう。大したもんだ!」

祖母「こりゃあ将来有望だねえ」

赤子「祖父よ、祖母よ、ありがとう……」

祖母「出産は大丈夫だったかい?」

「ええ、なんとか」

祖母「ハハハ、ならよかったよぉ。なにしろ出産といや女の大仕事だからねえ」

赤子「あ、ならばぜひ聞きたいのだが……父が産まれた時はどうだったか教えて欲しい」

「そういや、俺も聞いたことなかったな。お袋、教えてくれよ」

祖母「そうだねえ……」

42 : 以下、?... - 2019/10/18 02:31:16.481 IxvS5Ofs0 23/23

祖母「あんたが産まれる時は大変だったよ。なにしろあたしの腹を内側からすごい力でボコボコ殴って」

祖母「勝手に突き破ってくるんだもの!」

祖父「今でこそ笑い話にできるが、ありゃぶったまげた!」

祖母「運動嫌いだったから、その後は大人しい子に育ったけどねえ」

「あなたッ!!!」

赤子「父ッ!!!」

「いやー……全然覚えてないや……」






おわり

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