唯「…」
澪「…」
唯「ねぇ澪ちゃん」
澪「何?」
唯「何で地面に埋まってるの?」
澪「分からない。けど何故か埋まらないといけない気がする」
唯「そっかー」
澪「うん」
元スレ
唯「澪ちゃんが土に埋まりました」
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1261919641/
澪「…」
唯「はい澪ちゃん。今日のお水だよ」
澪「ありがとう唯、助かるよ」
唯「えへへ、誉められちゃった」
澪「ゴクゴク」
唯「でも凄いね。水だけで生活できるなんて」
澪「まぁ、土に埋まってるからな」
唯「埋まると水だけで生きていけるの?」
澪「うん、何か身体に自然と栄養が流れてくる」
唯「いいなー」
澪「えっへん」
澪「…」サンサン
唯「澪ちゃん何してるの?」
澪「ん?光合成だけど」
唯「こうごうせい?澪ちゃん植物なの?」
澪「バカ言え。私は人間だよ」
唯「でも光合成って葉っぱがないとできないんでしょ?」
澪「いや、人間は土に埋まったらできるようになるんだって」
唯「そうなんだー、いいなぁ」
澪「ふふん」
唯「あれ?澪ちゃんどうしたの?」
澪「ん…なんか最近身体の調子がおかしいんだ」
唯「んんー…あっ澪ちゃん、頭に青虫が付いてるよ!」
澪「あーやっぱりか。道理で調子が悪くなるはずだ」
唯「大丈夫。すぐに取ってあげるね」
澪「いや、そのままでいいよ」
唯「えっ?何で?」
澪「この青虫だって生き物だ。私を食べて成長し、いずれ綺麗な蝶になると思うんだよ」
澪「生物の進化を邪魔してまで私は土に埋まろうとは思わないよ」
唯「そっかー。澪ちゃんは優しいんだね」
澪「えっへん」
唯「ねぇねぇ澪ちゃん」
澪「何だ?」
唯「そろそろ梅雨の季節だけど、澪ちゃん埋まったままでいいの?」
澪「あぁ。埋まってる事が私の存在意義だからな」
唯「そうなの?」
澪「うん」
唯「じゃあ私が雨が降ったときにはちゃんと傘持ってきてあげるね」
澪「ありがとう、助かるよ」
唯「えへへー」
澪「…」
唯「はい澪ちゃん、今日水は液体肥料入りだよ」
澪「おお、太っ腹だな唯」
唯「そろそろ7月だからちゃんと栄養取らないと元気なくなっちゃうもんね」
澪「そっか…もうそんな時期になるのか」
唯「時間が経つのって早いよねー」
澪「そうだなー」
唯「あっ。じゃあ澪ちゃん口開けて」
澪「あーん」
澪「ゴクゴク…」
唯「おいしい?」
澪「あぁ、ちょっと水で薄めすぎかな?」
唯「そっか。じゃあ今度はもうちょっと少なめに混ぜるね」
澪「うん。ありがとう」
澪「…」
唯「澪ちゃん大丈夫?何だかとても暑そうだけど…」
澪「あー…やっぱ夏は土の中と外の温度差が激しいからな…」
唯「日傘持ってきてあげようか?」
澪「いや、そうしたら光合成できないじゃん」
唯「そっか…大変だね」
澪「これでも土に埋まってるからな。生半可な気持で自分の義務を放棄しようなんて許されることじゃないよ」
唯「土に埋まるって大変な事なんだねー」
澪「唯も埋まってみれば分かるさ」
唯「そっかぁ」
澪「うん」
澪「…」サンサン
唯「あっ澪ちゃん、頭にキノコが生えてるよ」
澪「えっ?キノコが?」
唯「取ってあげるね」
澪「あっ…」
唯「…すっごく毒々しい色してる」
澪「私の頭にそんなものが生えるなんて…」
唯「でもそれだけ澪ちゃんの身体に栄養がいっぱいあるって事だよね」
澪「そうだな。私も土に埋まる者として日々成長しているのかもしれない」
唯「さすが澪ちゃんだね」
澪「ふふん」
唯「~♪」
澪「やけに機嫌がいいな、いい事でもあったの?」
唯「ううん。澪ちゃんのお世話するのが楽しいだけだよ」
澪「…そっか」
唯「そろそろ秋の季節だねー。私秋はおいしいものがいっぱい食べれるから好きだなー」
澪「秋か…私も過ごし易い季節は好きだな」
唯「あっ、澪ちゃんも植物みたいに秋になると実がなったりするの?」
澪「気になるか?」
唯「うんっ」
澪「ふふ、秋になってからのお楽しみだ」
唯「えぇー教えてよー」
澪「だーめ」
唯「ぶーぶー」
唯「はい澪ちゃん。今日は固形肥料持ってきたよ」
澪「ありがとう。そこにばら撒いてくれ」
唯「はいはーい」
澪「~♪」
唯「あっ澪ちゃん、また頭に何かあるよ」
澪「お、もう生えてきたか。ちょっと取ってみてくれ」
唯「えいっ」ブチッ
唯「…何これ?」
澪「くるみだよ。実るのはもうちょっと先になると思ってたんだけどな」
唯「そっか~澪ちゃんからはくるみが実るんだー」
澪「別に胡桃だけじゃないぞ」
澪「その気になれば秋にデキる物は何だって実らせる事ができるんだ」
唯「すごーい!でも何で?」
澪「私が土に埋まってるからさ」
唯「なるほどー」
唯「あっ澪ちゃん」
澪「どうした?」
唯「頭のてっぺんに大きなキノコが生えてるよ」
澪「あぁ。コレは私が生やしたんだ」
唯「えっ?何で?」
澪「唯、このキノコが何か分かるか?」
唯「うーん…あっ!これってもしかして…」
澪「うん、松茸だよ」
唯「すごい!私本物が生えてるの初めて見たよ!」
澪「コレを生やすのに結構苦労したんだよ?私の体内の栄養素の半分も使ったんだ」
唯「そうなんだー。でもどうして?」
澪「唯にはいつも世話になってるからな。この松茸はほんのお礼の気持だ」
唯「澪ちゃん…」
澪「私はこうやって土に埋まることしかできない。でも、それが続けれるのは私をサポートしてくれる唯のおかげだ」
澪「その感謝の気持を込めて、私はこの松茸を唯に贈りたい」
唯「澪ちゃん…ありがとう」
唯「これからも私、澪ちゃんのお世話頑張るね!」
澪「あぁ、頼りにしてるぞ」
唯「澪ちゃん、落ち葉全部かき集めたよ」
澪「そうか、じゃあ私の周りに撒いてくれ」
唯「ほいほーい」
澪「ふぅ…」
唯「でも何でこんな事するの?」
澪「もうすぐ冬だからな、寒さで凍えてしまわない様にするためさ」
唯「そうなんだー」
唯「でもこんなにいっぱい落ち葉いるの?」
澪「いや、残りは全部山にしてくれ」
唯「?」
澪「唯、私の頭だ」
唯「…あっ!さつま芋だ!」
澪「コレを落ち葉で焼いて焼き芋にしよう。きっと美味しいと思うよ」
唯「わーい♪」
澪「…」
唯「へぷちっ」
澪「風邪か?」
唯「ううん…ちょっと寒くなってきたから」
澪「…もう秋も終わりか」
唯「こうやって澪ちゃんが土に埋まって随分時間が経ったねぇ」
澪「そうだな…時の流れは本当に早いよ」
唯「でももうちょっとの辛抱だよ。残す季節はあと冬だけだもん」
澪「そうか、あとちょっとだな…」
唯「うん」
澪「…」
唯「っちゅん!」
澪「ほら、そろそろ帰らないと風邪引くぞ」
唯「うん…でも」
澪「私は大丈夫だ、唯が集めてくれた落ち葉が毛布になって暖かいよ」
唯「ほんと?」
澪「私には私の環境があるんだ。唯も自分の家で暖かくして欲しい」
唯「うん…分かった」
唯「じゃあまた明日ね!風邪引いちゃだめだよ!」
澪「ああ、また明日」
唯「あっ…」
澪「どうした?」
唯「雪が降ってきたよ」
澪「えっ」
澪「…ホントだ、今年は早かったな」
唯「うん、まだクリスマス前なのに凄いね」
澪「地球温暖化って言っても、四季の流れは正常なんだな」
唯「うん、私日本に生まれてきてよかったって思う」
澪「そうなると、地球に生まれてきてよかったとも言えるな」
唯「そうだねぇ」
澪「…」
唯「あっ…今日の水すっかり忘れてた」
澪「今日はしなくていいと思うよ」
唯「?どうして?」
澪「春や夏じゃないからさ、何度も水を飲んでも土に流れていくだけなんだよ」
唯「そっか、あまり飲みすぎも良くないんだね」
澪「ああ、何事も程々が一番さ」
唯「そうなんだねぇ」
澪「あっ、肥料だけは撒いといてくれないかな?冬になると栄養が吸収しにくくなるんだよ」
唯「りょーかーい」
唯「うんしょ、うんしょ」
澪「唯、何してんだ?」
唯「あっ澪ちゃん」
唯「これからどんどん風が冷たくなるでしょ?」
唯「だからこうして風除けに砂袋を積み重ねたら大丈夫かなぁって思ったの」
澪「唯…何もそこまでやらなくても」
唯「ううん、これは私がやるべき事なの」
唯「澪ちゃんが病気になったら、世話してる私の責任だから…」
澪「…」
澪「だから澪ちゃん、もう少しだけ我慢しててね」
澪「…あぁ、ありがとう」
唯「澪ちゃん、気分はどう?」
澪「ん、唯のおかげで暖かいよ」
唯「そっか、よかった~」
澪「でもこれだけの砂袋を私の周りの置くのはキツかっただろう?」
唯「あはは…普段ゴロゴロばっかりしてるからちょっと疲れたかな」
澪「まったく…お前って奴は」
唯「でもね、別にいいんだ」
澪「唯?」
唯「こうやって澪ちゃんの幸せそうな笑顔が見れたら…」
唯「私、何だか疲れなんてどっか行っちゃったみたいだもん」
澪「…ぷっ、何だよそれ」
唯「あっバカにした!」
澪「いやいや、別に馬鹿にはしてないよ」
唯「むー」
澪「でもさ」
唯「ん?」
澪「…何かいいよね、こういうの」
唯「…うん、そうだね」
澪「…」
唯「…」
唯「ぐぅ…」
澪「寝るなっ」 ゴチンッ
唯「あうっ」
唯「…雪、積もってきたね」
澪「そうだな」
唯「澪ちゃんは大丈夫?寒くない?」
澪「ん…ちょっと寒いけど、まぁ我慢できるよ」
唯「ちょっとでも寒かっただめだよ」
澪「大丈夫、私は土に埋まってるから」
唯「でも…」
澪「唯、私はあくまで土に埋まってるんだ」
澪「時にはつらい事を我慢しないと、本当の意味で成長する事はできない」
唯「…」
澪「そんな顔をするな、これは私が自ら望んだ試練だ」
澪「必ず乗り越えて、唯と一緒に軽音部に戻るよ」
唯「…約束だよ」
澪「うん、約束」
ザッ、ザッ、ザッ…
唯「ハァ…ハァ…」
唯「っ…!」
唯「うっ…グスッ」
唯「ハァ…ハァ…!」
ザッ、ザッ、ザッ…
唯「あと少し…あと少しの我慢だよ、澪ちゃん…!」
唯「澪ちゃん!」
澪「…」
唯「澪ちゃん…澪ちゃん!」
澪「…ぁ、唯」
唯「澪ちゃん…よかった…よかったよぉ」
唯「ヒック…私、もう…ダメかと思って…」
澪「…馬鹿だな、ちゃんと約束したじゃないか」
唯「だって…だってぇ…」
澪「うん…心配かけてごめんね」
唯「グスッ…もう、雪なんかに埋もれちゃダメだからね…」
澪「あぁ、私が埋まるのは土だけだ」
唯「澪ちゃん…」
唯「ねぇ澪ちゃん」
澪「どうした?」
唯「私ね、二人で暖かくなる環境を考えたの」
澪「二人で?」
唯「うん」
澪「これ…マフラー」
唯「えへへ…温かいでしょ?」
澪「…うん、温かい」
唯「あったかあったか…」
澪「…あったか、あったか」
――――――――――――
澪「ただいま、みんな」
律「澪!お前…戻って来れたんだなっ!」
梓「おめでとうございます!澪先輩は桜ヶ丘高の英雄です!」
紬「唯ちゃんもお疲れ様。一年間よく一人で頑張ったね」
唯「えへへ…それ程でも」
澪「いや、唯はよくやってくれた」
澪「私は唯のおかげでここに戻ってくる事ができたんだ」
澪「お前はもっと自分の事を誇っていい。唯にはその価値は十分にあるんだ」
梓「そうですよ、いつもも怠けていた唯先輩が毎日一人で澪先輩の世話をしたのですよ?びっくりです」
律「そうだぞ唯。お前は凄いよ、一年間埋まり続けた澪と同じくらいにな!」
唯「み、みんな誉めすぎだよ~」
紬「あらあら、唯ちゃん照れてる?」
唯「はわっ!そ、そんな事ないよ!」
澪「クスッ…お前達は相変わらずだったみたいだな」
律「なんだよーそれじゃ私達が全然成長してないみたいじゃないかー」
梓「律先輩は私から見て去年と全く変わってないと思います」
律「唯、梓ペロペロしていいぞ」
唯「わーい」ガバッ
梓「きゃあ!?唯先輩そこはダメェ!」
紬「あらあらまぁまぁ」
澪「こらっ!せっかく揃ったんだから遊んでないで練習するぞ!」
律「そうだな。へへっ…このメンバーで練習するのも久しぶりだな」
唯「うんっ!私頑張っちゃうよ!」
律「よし!じゃあみんな位置につけぇ!」
律「みんな、準備はいいな?」
澪紬梓唯「…」コクッ
律「じゃあ行くぞ!ワンツースリーフォーワンツー!」
唯「ねぇ澪ちゃん」
澪「何だ?」
唯「結局澪ちゃんって、何で土に埋まってたの?」
澪「あぁ、それはね…」
「そこに、土があったからさ」
._
\ヽ, ,、
`''|/ノ
.|
_ |
\`ヽ、|
\, V
`L,,_
|ヽ、) ,、
/ ヽYノ
/ r''ヽ、.|
| `ー-ヽ|ヮ
| `|
|. | ┼ヽ -|r‐、. レ |
ヽ、 | d⌒) ./| _ノ __ノ
ヽ____ノ