1 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 16:45:06.32 pozsJo4D0 1/60


(その疑問にぶち当たって丸一日……私はようやく答えを見つけた。私にとっての軽音部とはそう――)

「――家族なのよっ!」ダンッ!

ビクッ!

「え? いきなりどうしたんだ? ムギ」

「いきなりじゃないわ……今日一日ずっと、心の中で痞えていたものが取れたんだもの」

「いや、一言の相談も言葉も無しに机叩かれたらいきなりだと思うぞ……」

「しかも普通に文化祭の曲目決めているところでしたしね」

「なんの繋がりも無いよ、ムギちゃん」

「ティータアァイム!」

ビクッ!



元スレ
紬「軽音部とはなんだろう」
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1286783106/

3 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 16:47:13.85 pozsJo4D0 2/60


「ふふ……ごめんなさい。何とか落ち着いたわ」

「……今の叫び声はなんなんだ?」

「さぁ……?」

「きっとツッコんだから負けなんだよ」

「澪先輩以外はツッコめませんね」

「何故私ならいけると思う? 梓」

「文化祭での曲を決めてるところごめんなさい……ちょっと皆に聞いて欲しい話があるの」

「えっと……今じゃないとダメか?」

「今の方がありがたいかな」

「そうか……」


4 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 16:48:37.94 pozsJo4D0 3/60


「んまぁ、お茶を飲めるのはムギちゃんのおかげだし、とりあえず曲決めるのは後回しにしようよ」

「ありがとう、唯ちゃん。そんな唯ちゃんには後でケーキをサービスしちゃいま~す♪」

「やった~!」

「あっ、ズリィ! 私もすぐに話を聞いても良いと思ってたんだぞ!」

「……意地汚いですね、律先輩」

「そういう梓だって食べたいんだろ?」

「そ、そんなこと無いです! おいしいことに違いはありませんが、今は別に大丈夫です!」

「ま、その点澪はまたダイエット中だから争いには参加しないだろうけど」

「うるさいな……その通りだけど」

「私の! 話は! 聞いて! くれないの!?」

「ひぃっ!」

「ご、ごめんごめん。聞く聞く、聞くから」


5 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 16:49:48.15 pozsJo4D0 4/60


「……こほん。まあ、こうやって皆が盛り上がるのは、私としても嬉しいんだけど。
  それだけ仲が良い証でもあるんだし」

「じゃあなんでさっきは怒ったんだよ……」

「本当には怒ってないわ。ただちょっと私らしくないことがしてみたくなっただけの」

「なんでまた……」

「テンションが上がり過ぎてるのかしら~」

「何か嬉しいことでもあったの? ムギちゃん」

「ええ。それが、今回の話題――ひいては、私がティータイムにおいて主役になる話になるの」

「ティータイムの主役、ですか」


6 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 16:51:45.60 pozsJo4D0 5/60


「ええ。今まで私ってば、基本的に皆の話を聞いたり、皆のお茶の準備をしたり、影から支えることばかりしてきたと思うの」

「あっ、いつもゴメンね、ムギちゃん」

「ううん。それに不満があるわけじゃないの。
  そういうのをするのが楽しいって一面が私の中にあるのも事実だから」

「でも確かに、いつもムギに負担ばかりかけてるのは悪いな……」

「私が勝手にしてることよ、澪ちゃん。気にしないで」

「でも、気にしてるから“ティータイムの主役”だなんて言い出したんじゃないのか?」

「違う違う、そんな大それたことじゃないの。ただ、たまには主役になってみたいだけ。
  いつもの雑談じゃなくて、私が話題を提供する側に立ってみたくなっただけなの。
  ほら、裏方にも主役のチャンスを、的なね」

「その発想自体、ムギ先輩にしては珍しいですね」


7 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 16:53:45.62 pozsJo4D0 6/60


「そうかしら?」

「そうですよ。いつもは私たちの話を聞いたり、話してるのを見てるだけで満足そうじゃないですか」

(女の子同士だからか……)

「そう言われればそうね。
  ……う~ん……でも結局、この話題提供の後もそういうのを見続けることになるから、あまり変わらないと思うわ」

「で、話題提供ってのは一体なんなんだ?」

「ムギちゃんのテンションが上がって、らしくないことをしてみたくなる、なんてのはよほどのことだと思うんだけど」

「確かに。よほどのことかもしれないわね。
  だって私自身、この答えに辿り着くのに、丸一日かかっちゃったんだもの」

「なんだ? クイズとかナゾナゾとか、そういうのか?」

「ある意味においてはそうかもしれないわね」

(ある意味……?)


8 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 16:55:45.88 pozsJo4D0 7/60


「率直に聞くわ。私が抱いた疑問を、そのまま訊ねます。
  ……皆にとっての軽音部とは、なに?」

「友達!」

「仲間、かな?」

「大切な場所だ」

「楽しい居場所、ですかね」

「どうして!?」バンッ!

ビクッ!

「……え? なにが?」


9 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 16:57:59.94 pozsJo4D0 8/60


「どうして私が悩みに悩んだことを皆はそんなあっさりと答えられるの!?」

「いや、どうしても何も……なあ?」

「うん……自然と答えが出ちゃったし」

「……そうね……そのことについて私が責めるのは違うわよね。ごめんなさい」

「いえ。と言うか何を謝ってるんですか?」

「私も、一度は皆と同じ答えに辿り付いたの。
  でもね、それだけの言葉じゃ軽い、って気がして、もっともっと良い言葉が、ピッタリな言葉があると思ったの。
  そして私はそれから、ずっとずっと、考えた」

「それで、答えを見つけたのか?」

「ええ。考えて考えて……昨日の放課後の帰り道で抱いたこの疑問の答えを考えに考えて、今ようやっと、ふっと神様が降り立ったかのように答えを導き出せたの」

「表現が危ねぇなぁ、オイ」


10 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 16:59:34.24 pozsJo4D0 9/60


「その答えというのがそう……家族」

「家族……」

「ほほぅ」

「ムギ先輩らしい、良い言葉ですね」

「ああ。確かにその答えを聞いた後だと、私の答えなんて小さなもののように感じるよ。
  なんせ、家族の中には、私たちが言ったものも含まれているからな」

「そうですね」

「ありがとう、みんな」

「でもさ、それと話題の中心になるってさっきの話と、一体何の関係があるんだ?」

「さすがりっちゃん。鋭いわね」

「いや、誰でも気付くことだと思うぞ……」


11 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 17:01:46.32 pozsJo4D0 10/60


「そう。家族、という答えに辿り付いたとき、同時に私はこうも思ったの。
  じゃあ誰が父親で誰が母親、誰が姉で誰が妹で誰が末っ子か、ってね」

「分かった! それをこれから皆で考えるんだねっ!」

「その通りよ唯ちゃん!!」

(ムギのテンションがいつもより高いな……)

(なんだか、いつものムギ先輩と違って、テンションがおかしな方向にいってる気がする……)

「皆で考えて、それぞれで書いて、皆がそれぞれのことをどう思ってるのかを知りたいの!」

「……いや、知ってどうするんだ?」

「知識の探求だよ、律お父さん」

「誰がお父さんかっ!」


12 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 17:03:24.03 pozsJo4D0 11/60


「あ~、でもりっちゃんってお父さんって感じがするよね」

「唯まで!? 大体お父さんって性別変わっちゃってるじゃんか! そんなの私はイヤだね!」

「じゃあ律は誰がお父さんだと思うんだ?」

「そりゃ、お父さんと言えば一家の大黒柱だからな。しっかりとしてる人じゃないとダメだ。
  ならやっぱり澪じゃないか」

「私!?」

「ああ。澪お・と・う・さ・ん♪」

「誰がお父さんか誰が!」


13 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 17:04:30.04 pozsJo4D0 12/60


「ほらりっちゃん。これで分かったでしょ?」

「……確かに。悔しいけどコレはすごく気になるな。
  皆が皆、それぞれのことをどう思ってるのか分かるだけにな」

「そういうこと。だから私も知りたいの」

(……妄想の肥やしにするつもりでしょうか、ムギ先輩は)

「だからほら、普通の世間話だと思って、気楽に考えて発表していきましょ」

「でも発表って言ったって、どうするつもりだ?」

「この場には都合よく、ホワイトボードがあるじゃない。コレを使わない手は無いわ」


14 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 17:06:56.66 pozsJo4D0 13/60


「まず、ホワイトボードにそれぞれの役職を書きます。
  そうね……『お父さん』『お母さん』『長女』『次女』『末っ子』でいきましょうか。
  それで後はそれぞれが名前を書いていくんだけど……書く大きさは、このA4のルーズリーフ二枚で隠れる程度にしてもらいましょう。
  書いたら、隠すように上からマグネットで押さえてね」

「どうして隠す必要があるの?」

「他の人の意見を聞いた後だと、思わず納得しちゃって自分の意見が変わっちゃうかもしれないでしょ?
  それじゃ、今の皆の気持ちが分からないじゃない」

「なるほど」

「そうして書き終えた後は、それぞれプレゼンして、それぞれの意見を聞いてみましょう」

「おもしろそうだね!」

「でしょ!?」

(無駄に凝ってるなぁ……)

「書いてる間はホワイトボードを見えないように背を向けて配置して……プレゼン形式にするときはソファの方に移動しましょ」


16 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 17:08:06.31 pozsJo4D0 14/60


「それじゃ、ルールも決まったことだし、早速私から書いてくるわね」

ガタッ

…………

「それじゃ、次は私な~」

ガタッ

…………

「んじゃ次は私~」

ガタッ

…………

「それじゃあ梓、先に行かせてもらうな」

ガタッ

…………

「最後に私ですね」

ガタッ

…………


17 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 17:09:39.45 pozsJo4D0 15/60


「……さて、皆に書いてもらって、ソファにも移動してもらった。
  という訳で、発表会よ~」

「わ~~~」

「よっ、待ってました!」

「そんなに待ってなかったくせに」

「でもこれって、皆さんがそれぞれのことをどう思っているかが分かるんですよね」

「そう! そこが今回のおもしろいところよ梓ちゃん!」

(テンション高いままだなぁ……)

「と言う訳で! 言いだしっぺのわたくし、琴吹紬が、最初にプレゼンをさせて頂きますっ! よろしくお願いします!
  という訳で、ルーズリーフオープン!!」

バッ


20 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 17:11:41.10 pozsJo4D0 16/60


お父さん:りっちゃん

お母さん:みおちゃん

長女:ゆいちゃん

次女:琴吹紬

三女:あずさちゃん

「どう!?」

「やっぱり私がお父さんかっ!」

「お母さんって……私、そんなに老けて見えるのか……?」

「おお~! ムギちゃん妹にあずにゃん妹だねっ!」

「なんですかその語尾の妹は……」


21 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 17:12:55.15 pozsJo4D0 17/60


「りっちゃんがお父さんは私的にテッパンだと思うの~」

「なんでだよ! さっきも律お父さんって呼んでたけどなんでだよっ!」

「だって~、軽音部の部長って、そのまま軽音部の大黒柱ってことでしょ?
  それってやっぱりお父さんってことじゃない?」

「うっ……! んまぁ、そう言われたら悪い気もしないかな……」

「まぁりっちゃんが男の人だったらモテモテなほどエスコート上手ってのもあるんだけど」

「ちくしょうっ!」


22 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 17:15:41.95 pozsJo4D0 18/60


「それで、そうなってくるとお嫁さんは必然的に幼馴染の澪ちゃんかなって」

「と言うことは、老けて見えるとか、そういうのじゃないんだなっ!?」

「そうね……確かに澪ちゃんは大人っぽいからそれもあるけどけど」

「がーんっ!」

(口で言った!?)

「でもそれ以上に、りっちゃんと二人合わされば皆を完璧に引っ張っていけるって印象の方が強いかな~」

「律と二人なら……?」

「そ。しっかりしてる澪ちゃんがテンパった時、りっちゃんならしっかりと筋道を戻してくれそうな気がするの~」

「……確かにそうかもなぁ」

「そうか? 私的には、律の暴走を私が止めてる気がするんだけど」

「何おう!」

「確かに、そういうのもあるかしら~」

「がーんっ!」

(コッチもっ!?)


23 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 17:17:57.52 pozsJo4D0 19/60


「それよりも私的に、唯先輩がムギ先輩よりお姉さんなのが不思議でなりません」

「あずにゃんひどいっ!」ガーン!

「でも唯ちゃんって、憂ちゃんっていう本物の妹がいるじゃない?
  つまり本物のお姉ちゃんなのよ。だからかな、妙に安心するところがあるの」

「確かにそうかもしれませんが……」

「それになんだかんだで、私唯ちゃんみたいなお姉ちゃんがいてくれたら楽しいと思うし」

「確かにそうですね、迷惑掛けてくる的な意味で毎日賑やかになるとは思います」

「やっぱりあずにゃんひどいっ!」ガーン!


24 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 17:19:57.00 pozsJo4D0 20/60


「あと梓ちゃんは、ただ単に私が梓ちゃんに甘えられたいって願望があるから一番下なの」

「……甘えませんよ?」

「そんなぁ~……」シューン

「でも確かに、梓に甘えられたいってのは分かるな」

「うんうん」

「私も私も~」

「皆さんまでっ!?」


25 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 17:21:59.89 pozsJo4D0 21/60


「という訳で、私が考えた軽音部の家族構成は――

『イザという時に頼りになるお父さんを引っ張る、
 イザという時に頼りにならないけれどいつも頼りになるお母さん。
 そんな姉さん女房な親子の後をのびのびとした長女と、
 おっとりとした次女が追いかけて、
 足取りが遅れそうになったら背中を押してくれる三女がいる』

「――ってとこかしら~♪」

(つまりこれが、ムギの中での軽音部ってことか)

(あれ? 今さり気なく酷いこと言われてた……?)

(ムギちゃんとあずにゃんが妹かぁ~……私がしっかりしないとねっ)フンス

(ムギ先輩の中で私は頼りにされてるんだな……ってアレ?
  この構図ってもしかして……ムギ先輩がとんでもなく幸せになってる構図?)


26 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 17:23:55.11 pozsJo4D0 22/60


(律先輩と澪先輩の幼馴染の絡みが見れて、
  唯先輩と私の絡みも見れて、
  時に唯先輩がムギ先輩自身に抱きついたり……
  しかもこの構図になった場合、私が相談相手に選ぶのは確実にムギ先輩だから……なんてムギ先輩にとって得するシステムッ!!
  考え尽くされてる! さすがっ!!)

「よっし! じゃあ次は私な!」

「お願いね、りっちゃん!」

「おうよっ! という訳で、私の場合はこんな感じだ!」

バッ


27 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 17:25:14.99 pozsJo4D0 23/60


お父さん:みお

お母さん:むぎ

長女:わたし

次女:ゆい

三女:あずさ

「また年上っ!?」

「私がお母さんか~」

「「異議あり!!」」


28 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 17:26:44.35 pozsJo4D0 24/60


「おおう!? どうした唯に梓」

「納得できないよりっちゃん!」

「そうです! どうして私が律先輩に、律先輩よりも年下の妹だって認識されて無いといけないんですか!」

「ひどくねっ!?」

「そうそう! 絶対私達の方がしっかりしてるよ~!」

「いや、梓はまだ分かるんだけど、唯にそう言われるのはさすがの私も納得いかんぞ」

「ひどいっ!」ガーン!


29 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 17:28:03.63 pozsJo4D0 25/60


「大体、唯の場合は憂ちゃんがしっかりしすぎてるせいで、さらに頼りなく見えるんだよ。
  むしろ私と同じレベルって……どうなの? みたいな」

「言葉がチンレツ過ぎる!」

「辛辣(シンラツ)な」

「そうそれ!」

「ほら、もうその時点で頼りないだろ!」

「ぐぅ……グゥの音も出ないよ」

「それ、寝息みたいになってるからな」


31 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 17:30:03.41 pozsJo4D0 26/60


「それで、どうして私が末っ子なんですか!
  律先輩に対してしっかりしてないと認識されてる理由を!」

「あ~……梓の場合はなぁ…………なんとなく」

「なんとなくで唯先輩より下!?」ガーン!

「またまたあずにゃんがひどいっ!」ガーン!

(さっきから二次災害が起きてないか……? これ)

「と言うより、やっぱり後輩だからかね。
  気が付いたら一番下、って印象があってそのまま下にしてた」

「むぅ……納得いきません」

「そう言うなって。ほら、頼りになる末っ子って、マンガっぽいだろ?」

「その言葉で納得できると思ってるんですか?」

「うん」

「……やっぱり律先輩は頼りになりません」

「ひでぇ!」


33 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 17:31:41.82 pozsJo4D0 27/60


「こほん……ま、澪とムギに関しては言うまでも無いことだから、私はこの辺で――」

「いやいやいや! どうして私がお父さんなのか私は納得して無いぞ!」

「え~……? いやだってお前、澪って頼りがいがあるだろ?
  それならそのまま皆を引っ張ってもらおうかな、と」

「え? そう? 頼りになる?」テレテレ

「ああ。頼りになる頼りになる。なんだかんだで澪って、やるべきところじゃちゃんとするからな」

(もっとも、ソコに至るまでが苦労するんだけど……
  でもま、ムギならソコに至るまでの方法があっさりと分かりそうだし、
  分かったらさり気なく連れて行ってくれそうだし、
  分からなくても一緒に考えてくれそうだし)チラッ

「? どうしたのりっちゃん」

「いや、やっぱムギはお母さんみたいだなって」

(ま、子供である私たちもいるしね。
  いつも引っ張るお父さんを、たまに家族皆が支える……
  そういうのってなんか良いしな)


34 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 17:33:19.47 pozsJo4D0 28/60


「とまぁ改めて、私の中での軽音部家族は――」

『頼りになるお父さんが困った時、
 お母さんが支えて長女が助けて、
 次女と三女がじゃれ合って離れそうになったら手を差し伸べてあげる長女』

「――って感じだな」

(頼りになる……頼りになる……)テレテレ

(あれ……? でもりっちゃんのだと、私が家族を支えてることにならないかな……?
  しかもりっちゃんは長女として家族の中心になって、皆を見守るみたいな立場になるし……。
  ……くすっ、なんだかんだ言って、皆のことを守ろうとしてるのがさすがりっちゃんね)

(じゃれ合ってるって……私だって頼りになる時は頼りになるんだよっ)

(私は別に唯先輩とじゃれ合いたくてじゃれ合ってる訳じゃないのに……というか律先輩、自分を過大評価しすぎじゃないですか?)

「んじゃ次は――」

「はいっ! 次は私がするよりっちゃん!
  りっちゃんの答えが間違いだって、皆に分からせてやるの!」フンス

「え? それ無理じゃね?」

「無理じゃないよ!」


35 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 17:34:36.18 pozsJo4D0 29/60


「という訳で、私の中での皆はこんな感じです!」

バッ!


お父さん:みおちゃん!

お母さん:わたし!

長女:むぎちゃん!

次女:りっちゃん!

三女:あずにゃん!


「「「異議あり!!!」」」

「あれ~?」


36 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 17:36:22.93 pozsJo4D0 30/60


「どうしてまた私がお父さんなんだ!」

「そうじゃないだろ!」

「そうです! 言いたいのは唯一つ!!」

「「唯(先輩)がお母さんは納得いかない!!!」」

「ひどいっ!」ガーン!

「酷いのは唯先輩の家族構成です!」

「そうだそうだ! こんなのすぐに家計が火の車だぞ!」

「ふえぇ~ん! ムギちゃん! 皆が私をイジメるの~!」

「おお~、よしよし」

「っつか唯、それってお前の家族構成的に、次女に抱きついて助けを求めてることになるからな」


38 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 17:38:17.44 pozsJo4D0 31/60


「まあまあ皆、ちょっと待って。よくよく見たらこの家族構成、結構楽しそうよ?」

「……ん~……確かにまぁ、唯がお母さんだと楽しそうではあるんだが……」

「でもなんでしょうね……この底知れぬ不安は」

「きっと唯を除く家族全員でお母さんを助ける構図だから不安を感じるんだよ」

「「なるほど」」

「やっぱり皆ひどいっ!」ガーン!


39 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 17:40:00.57 pozsJo4D0 32/60


「なんでしょうね……そもそも唯先輩が将来的にもお母さんしてるところが想像できません」

「この話が始まってからあずにゃんが辛辣すぎるっ! もしかして私のこと嫌い!?」

「いえ、嫌いじゃありませんよ。
  でもだからこそ、唯先輩の欠点も沢山知ってしまっていて、不安を感じると言うか……」

「確かにソレはあるよなぁ……」

「そうだよなぁ……さっき律が言ったように、面白くて明るい家族にはなるんだろうけど……」

「でもほら、唯ちゃんの底抜けな明るさよ?
  きっと今感じてる不安も、実際やってみたら吹き飛ぶと思うの」

「そうだそうだ!」

「ん~……言われてみればそんな気も……」

「と言うかアレですよね。
  このメンバーの中で、母性がムギ先輩、教育ママ属性が澪先輩なせいで、
  もう母親枠はどちらかで半ば確定しちゃってるんですよね」

「確かにその通りだな。
  そのせいで唯が入ると違和感があったり、他の二人よりも頼りなく見えるから不安を感じたりするんだよな」

「え? 私って教育ママ属性なの?」


41 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 17:42:15.81 pozsJo4D0 33/60


「えっと、それは……ほら、頼りになるって言葉の裏返しです」

「そうか……教育ママ属性か……確かに、皆に口うるさく言い過ぎてたもんな……ハハッ」

「ああ~、澪先輩が……」

「気にするな。すぐに復活するさ」

「それよりも私の話だよ!」

「いやだからさ、唯が本当はしっかりしてるのかもしれないけど、それはあくまで姉妹間で成り立つものだって」

「ええ~??」

「唯先輩には母性がありません」

「あずにゃんがキッパリ言い過ぎてやっぱりひどいっ!」ガーン


43 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 17:44:20.17 pozsJo4D0 34/60


「でもほら、それはお姉さん属性があるって事だから」

「うう~……私の味方はムギちゃんだけだよ……」

(でもそのムギ先輩も、新しいカップリングだから擁護してるだけなんでしょうけどね……)

「でも結局、唯が考えた家族構成って――

『皆仲良く楽しく。頼りの無い両親を助ける子供たち』

「――ってところなんだろ?」

「ちがっ……わないよっ!」

「なんですかそれ」

「っつーかアレだよな。
  たぶん憂ちゃんみたいなしっかりした末っ子がいるから、そういう考えになっちゃうんだろうな」

「つまり両親はいらないと?」

「ひでぇなおい……じゃなくて。
  両親は必要だけど、その両親に好きなことをさせたいから、子供たちだけでも生きていけるように頑張ってる、みたいなものだよ」

「そう! 私が言いたかったのはソレだよ!」

「本当ですか……」


44 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 17:45:46.61 pozsJo4D0 35/60


「でも確かに。
  唯ちゃんの家は憂ちゃんのおかげで、両親も気兼ねなく旅行が出来たりしてるって感じはするわね」

「私だってしっかりしてるよ!」

「部活の唯先輩からは微塵も想像できませんけどね」

「そう言うなって。きっと心で憂ちゃんを支えてるつもりなんだよ」

「でも実際は憂ちゃんが唯も含めた家族全てを支えてるように見えるけどな」

「澪ちゃんまで復活して早々酷い! みんな私のことが嫌いなんだっ!」ガーン

「お~、よしよし」

「ムギちゃ~ん……皆が酷いんだよぉ~」

「よしよし、唯ちゃんはいい子いい子」

(ムギ先輩がキラキラしてる……)

((ムギがメチャクチャ嬉しそうに唯の頭撫でてる……))


45 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 17:47:14.38 pozsJo4D0 36/60


「……まぁ、唯は置いといて、次は澪な」

「まぁ、唯の後だと普通で悪いんだけど、私のはこんな感じだ」

バッ!


お父さん:律

お母さん:ムギ

長女:澪

次女:唯

三女:梓


「……本当に普通のラインナップだなぁ……」

「と言うより唯先輩があまりにも突拍子すぎたのかと」


46 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 17:48:04.82 pozsJo4D0 37/60


「さっきの唯でのやり取りでもそうだけど、律ってなんだかんだで人の気持ちを分かる人間なんだよな。
  妙な時に鋭いっていうか」

「分かるわぁ~」

「確かにソレはあるかもしれませんね」

「な、なんか澪に言われると照れるな……」

「私もさっき律にしっかりしてるって言われた時は恥ずかしかったぞ」

(本当は嬉しかったんだけどな)

「ま、その分日頃はダラけてるけどな」

「ひどくねっ!?」

「でも逆に、そういうところがお父さんっぽいんだよ」


47 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 17:49:02.29 pozsJo4D0 38/60


「で、ムギは日頃から皆にお茶を出したり、気を遣ったり色々としてるからかな。
  そのポワポワとした雰囲気もあって、なんとなくお母さんに見えるんだよ」

「ママじゃなくて?」

「お母さん!」

「……でも確かに、お父さんがしっかりしてると、お母さんはポワポワしてる印象はあるよね」

「おっ、唯復活したのか」

「いつまでも落ち込んでいる私じゃないのさ」

「誰ですかソレ」

「ま、ムギに至っては芯の部分でしっかりしてそう、ってのが私の中にもあるし、
  そういう意味ではお母さんっぽいかなって」


48 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 17:51:14.51 pozsJo4D0 39/60


「で、長女は私で下が唯、末っ子が梓って感じだな」

「また唯先輩より下……」

「ガッカリしないでくれ。
  まぁ、部活での後輩ってのも確かにあるんだが……姉がしっかりしてると、妹ってダラけそうな印象があるんだよ。
  たぶん、唯と憂ちゃんの家を見てるせいだろうけど」

「ああ、逆ってことか」

「そういうこと。
  きっと唯が本当にしっかりしてたんなら、憂ちゃんの方が唯みたいになってたような気がするんだ」

「……なんだか今日は厄日なのかな? 皆からダメな子認定ばかりさてる気がするよ……」

「いや、唯の場合はお姉ちゃんの立場として和がいただろ?
  だからそんなにノンビリしてるんじゃないのか? ってのが私の考え。
  それに、ノンビリしてるのが悪いとは、私は言わないよ。
  きっと今の軽音部があるのは、こうやって話が出来るのは、唯のおかげなんだって思うしな」

「澪ちゃん……」

「そういう、皆に影響を与えてるって意味じゃ、唯はしっかりお姉ちゃんしてるよ」


50 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 17:54:21.04 pozsJo4D0 40/60


「で、梓の場合はもうそのまま唯と憂ちゃんの体現だな」

「頼りない姉を見てるからしっかりしてると?」

「ああ。と言うより、私を目標にしてくれないかな、って願望もあって、こんな感じだ。
  次女がしっかりしようと、しっかりとした長女を目標にしてる。そんな感じのをな。
  もしそのまま次女が長女を目標にしたら、長女を目の仇にしそうだしな」

「私はそんなことしません!」

「分かってるさ。ただ、世間一般的なことを言っただけだよ。
  ごめんごめん。という訳で私の場合は――」

『皆を見渡すだらしの無いお父さん。
 そんなお父さんを叱りながら背中を押す子供たち。
 そんな子供たちを後ろから見つめるお母さん』

「――って感じだ」

(お母さんが後ろから家族を見てるのか……確かにそれだと怖がりの澪でも安心だもんな)

(私が家族の隠れた柱、ってことかしら?
  もしかして、今してるティータイムのことを指してるのかしら?
  私がいないと放課後ティータイムのティータイムが無かった……なんてことも考えてくれてるってこと?)

(澪ちゃんも私の味方だった……!)

(今のところ私は全員から末っ子と思われてるんですか……)


51 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 17:55:18.65 pozsJo4D0 41/60


「それじゃ、次は私ですね」

「ああ、最後だ梓。頼むぞ」

「任せてください! と言うわけで、私の中ではこんな感じです!」

バッ!


お父さん:ミオ先輩

お母さん:ムギ先輩

長女:梓

次女:律先輩

三女:唯先輩


「「「「……あ~……」」」」

「なんですかその反応!」


52 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 17:57:37.94 pozsJo4D0 42/60


「いや、梓らしいなと思って」

「私らしいって何ですか!」

「いや、お姉ちゃんぶりたいのかなって……」

「ぶりたいってなんですか! 現に私は唯先輩や律先輩よりしっかりしてます!」

「……まぁ、末っ子は上の子になりたいって憧れを持つって言うし」

「澪先輩まで!?」

「梓ちゃん、私のことお母さんって呼んで良いのよ~♪」

「一人に至っては自己完結最終結論までぶっ飛んでる!?」


53 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 17:59:02.19 pozsJo4D0 43/60


「まぁ、この家族構成も梓の立場なら分かるんだけどな。
  澪はしっかりしてるし、ムギは母性的だし、そんで私と唯は頼りなくてダラダラしたりはしゃいだりばかりしてるから、
  しっかりしてる自分が長女となって引っ張っていかないと、ってところか」

「どうして分かるんですか!?」

「あずにゃんのことならなんでもわかるよ~」

「くっ……! さぁ練習! 話も終わりましたし練習しましょう!」

「顔を真っ赤にして。梓ちゃんは可愛いなぁ~」

「うるさいです! いいから無駄話はここまでです!」

「無駄っ!?」ガーン

「い、いえ! 言葉のアヤです! 本心じゃありません! 無駄じゃありませんでした!! ただそろそろ練習したいなと思いまして!!」

「ま、末っ子のお願いなら聞いてやるか」

「違うよ~、りっちゃん。あずにゃん的にはりっちゃんは妹なんだから~……」

「あっ、そっかそっか。
  ……え~っと……ごめんなさ~い、梓おねえちゃ~ん♪」

「黙っててください!」


54 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 17:59:59.15 pozsJo4D0 44/60


~~~~~

「全く……今日は散々です!」

「ごめんね梓ちゃん……私があんなこと提案したばっかりに……」

「い、いえそんな! ムギ先輩のせいじゃありません!」

「でもこうやってティーカップの片づけを手伝うことになったのだって、私のせいだし……」

「そんなことありません! それに私だって、ちゃんとお手伝いしたいと毎日思ってましたし!
  むしろコレはいい機会でした! これだけは唯先輩と律先輩に感謝しないといけません!」

「そう……? そう言ってくれると嬉しいわ、ありがとう」

「い、いえ……気にしないで下さい」

(うわぁ~……こんな近くで微笑まれると、照れちゃう……)


56 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 18:00:55.82 pozsJo4D0 45/60


――回想――

「さて、練習も終わったし、帰るか」

「今日もほとんど練習できませんでした……」

「まあまあ」

「気にしたら負けだよ、あずにゃん!」

「文化祭前なのに練習時間が短いことの方が負けです!
  と言うか結局曲順も決めてませんしっ!」

「そりゃまぁ、梓が練習したいって言うから」

「うっ……」

「ふふっ、それじゃあ私、ティーカップ洗うから、先に降りててもいいわよ?」

「そうか? いつもすまないな、ムギ」

「良いのよ。私が好きでやってることなんだから」

「…………」


57 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 18:03:47.31 pozsJo4D0 46/60


「そうだ梓。お前ムギお母さんの手伝いして行けよ」

「まだその話を引っ張りますか!」

「いやいや、でもお母さんを手伝うのは長女の仕事だぞ?
  私たち次女と三女はダラしがないし遊んでばっかだし」

「それなら私も――」

「澪はお父さんだろ? だったらまだ仕事中じゃないか」

「何の仕事なんだよ!」

「ともかく、そういう訳で私たち三人は先に降りてるから、
  梓はちゃんとムギを手伝って来るんだぞ?」

「えっ……あ、はい」

「うん、良い返事だ。それじゃあまた後で!」

「ちょっ、待てよ律!」

「いつもごめんね~、ムギちゃん。それとありがとう。それじゃ、また後で」


58 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 18:06:17.41 pozsJo4D0 47/60


ガチャ

パタン

――回想終わり――

(う~……あの時は咄嗟に返事しちゃったけど、今思ったらこうして手伝ってるのっておかしくない?
  いや、そりゃムギ先輩にいつもまかせっきりの方がおかしいんだけど……)

「……ねえ、梓ちゃん」

「はい!?」

「? どうしたの?」

「い、いえ……なんでもありません」

「そう?」

「それよりも、ムギ先輩はどうしたんですか?」

「……ありがとう」

「え?」


59 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 18:08:07.31 pozsJo4D0 48/60


「私のこと、軽音部の中でのお母さんだなんて思ってくれて」

「いえ、そんな……当たり前のことです」

「それでも嬉しい。ありがとう」

「ど、どういたしまして……。
  ……というかムギ先輩だって、私のことすぐ下の妹だって思ってくれてるんですよね?
  なら、私もありがとうございます」

「……私にとって軽音部は、放課後ティータイムは、大切なものだから……
  もちろん梓ちゃんも、唯ちゃんも、澪ちゃんも、りっちゃんも……皆大切だから……
  だから、当たり前のことなの。
  だから、お礼なんて良いのよ」

「……それなら、私だってお礼は良いですよ」

「でも、嬉しかったから」

「私だって嬉しかったから、お礼を言ったんです」

「そっか……ありがとう、梓ちゃん」

「またお礼……もう、ムギ先輩は。いらないって言ったのに」クスッ


60 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 18:09:12.02 pozsJo4D0 49/60


「それじゃ食器も洗い終えましたし、皆さんの後を追いかけましょうか」

「そうね。……あっ、そうだ梓ちゃん」

「はい?」

「良かったら、梓ちゃんの家の住所、教えてくれない?」

「え?」

「ほら、もう少しで私たち、卒業でしょ?」

「あっ……」

(もしかして……だから軽音部が何なのか、考えちゃったのかな……)

「だから、お茶の葉とかお菓子とか、卒業しても梓ちゃんの家に送ろうと思って」

「べ、別にそこまでしなくても……」

「ううん。私がしたいの。
  だって放課後ティータイムは、ティータイムがないといけないもの」


61 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 18:11:12.05 pozsJo4D0 50/60


「練習時間が短くなるのは、確かに梓ちゃんにとってはイヤなことなのかもしれない。
  でも私は、この放課後ティータイムのある種の伝統を、梓ちゃんにも続けて欲しいの」

「…………」

「だから、これは私の我侭。
  だから、これぐらいさせて欲しい。
  お茶の葉は分けてもらえるものだし、お菓子だって余らせてしまうものだから、私は全然構わな――」

「いりませんよ」

「――……え?」

「だから、いりませんよ。紅茶の葉も、お菓子も」

「梓ちゃん……」

「…………」

「……そうよね。私たちがいなくなったら、サボることなく練習できるものね。
  それだったらお茶の葉とかお菓子とか迷惑なだけで――」

「違います」


「私はただ、お母さんに、これ以上負担をかけさせるわけにはいかないから、
  いらないって言ってるだけです」


62 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 18:12:30.70 pozsJo4D0 51/60


「手を離れる子供に対して、不安になるのも分かります。
  お母さんなら当然のことだと思います。
  でも、私のことを、信じてください。
  子供を、見守ってください。
  それもまた親として必要なことです。
  私だってもう、放課後ティータイムのティータイムがなくなるのは、イヤなんです。
  だから絶対、この伝統は絶やしません。続けてみせます」

「でも、それじゃあ梓ちゃんに負担が……」

「構いません。何とかします。してみせます。
  お母さんに心配かけないように、頼れる長女がなんとかしてみせます」

「梓ちゃん……」

「だからムギ先輩……いえ、紬お母さんは、他の皆さんと、仲良く前に進み続けてください。
  その背中にまた、追いついて見せますから。
  その家族の輪の中にまた、戻って見せますから。
  だって……軽音部は、放課後ティータイムは、私にとっても、大事で、大切な、家族ですから」


63 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 18:13:59.87 pozsJo4D0 52/60


「梓ちゃん……ありがとう」

「だから、お礼はおかしいですよ、ムギ先輩」

「だって……嬉しいから……!」ポロポロ

「もう……そんな泣くほどですか?」

「だって……私の中での梓ちゃんは、まだまだ後輩だったから……!
  でも……こんなに強い子になってて……それが嬉しくて、安心して……!」グスグス

「……ありがとうございます、ムギ先輩。
  私のこと、そんなに考えてくれて」ギュッ

「っ……! ごめん……ごめんね、梓ちゃん……!」ギュッ

「今度は何を謝ってるんですか?」

「本当は、私が梓ちゃんを抱きしめるべきなのに……ごめんね……!」

「なんだそんなこと……気にしないで下さい。
  家族って言うのは、支えあうものですよ?
  だから、良いんです。
  たまにはこうして、後輩の、子供の私に支えてもらったって」

「ありがとう……ありがとう、梓ちゃん……!」


64 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 18:15:21.30 pozsJo4D0 53/60


「……落ち着いたわ。本当にありがとう、梓ちゃん」

「いえ、落ち着いてよかったです」

「みっともないとこ見せちゃったわね」///

「そんなことないですよ」

「……ねぇ、もう一度お母さんって、呼んでみてくれない?」

「イヤです。恥ずかしい」///

「そう……」シュン

「うっ……そんな目で見てもダメです!
  そもそも、一歳しか違わないのにお母さんって呼ばれたら、逆に恥ずかしくないですか!?」

「私はそうでもないけど……」

「と言うより、呼ぶ方が恥ずかしいです!」

「そんな!」

「ともかくほら、早く皆さんのところに行きましょう!
  もう結構待たせてしまってます!」

「あっ、そうね! うん! 早く行きましょうっ!」


65 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 18:16:24.79 pozsJo4D0 54/60


「……あ、そうだ梓ちゃん」

「まだ何かあるんですか? 戸締りもちゃんとしたでしょう?」

「そうじゃなくて……その、お茶の葉とかお菓子はいらないんだろうけど……
  でも、来年の合宿の場所ぐらい、提供させてくれない?」

「え?」

「もちろん、私たち四人も行くから!」

「……旧放課後ティータイムと、新放課後ティータイムが合同合宿って訳ですか」

「そう!」

「それなら……むしろこちらからお願いします」

「うん! 分かったわ!」


「……ありがとう、紬お母さん」ボソッ


66 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 18:18:16.75 pozsJo4D0 55/60


~~~~~

ガチャ

パタン

「おい、本当に先に帰ってよかったのか?」

「むしろ、先に帰らないとダメだろ」

「え?」

「今日ずっと、ムギちゃんの様子がおかしかったもんね」

「え??」

「分かってなかったのは澪だけか……」


67 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 18:19:41.55 pozsJo4D0 56/60


「なんて言うのかなぁ……ずっと何かを言いたそうだったよね」

「ああ。それが梓に対してだってのは、ついさっきになってようやく分かったんだけど」

「……なんで分かるんだよ。そういうの」

「分かるよ。唯やムギや澪や梓のことだったら、見てるだけで分かる」

「おお~! さすがお父さん!」

「いやいや~……でも私としちゃ、お姉ちゃんの唯も中々だと思うぞ?」

「え???」

「ずっと場を盛り上げてたのって、何か言い出し辛そうだったムギのことを気遣ってだろ?
  悩んでるなら悩みを忘れるぐらい、答えが出てるのなら答えを実行できるように、ってな」

「そんなぁ~……買いかぶりすぎだよ~。
  私は何も考えないで、ただあずにゃん達と盛り上がってただけだって」

「ま、そう答えるのは唯っぽいよな。
  たぶんあの場で一番最初に、ムギが何か言いたそうにしてるのを気付いたのは唯なんだろうけど」


68 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 18:20:39.61 pozsJo4D0 57/60


「と言うか、私は何も気付けなかったんだけど……?」

「ま、澪ちゃんは仕方が無いよ」

「なんだそれは!?」

「たぶん、澪も同じ事で悩んでんだろ。同じ色に染まってたら、分からないものさ」

「???」

「ま、ムギもまた卒業に対して不安なんだよ。色々とな」

「あ……」

「それでたぶん、あずにゃんに何かを伝えたかったんだと思う」

「それでたぶん、今は梓にそのことを伝えてる」

「だから私たちは、離れていないといけなかった……」

「「正解♪」」


69 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 18:21:25.90 pozsJo4D0 58/60


「ま、軽音部が何か、って言い出してたから……きっと、梓に残せるものが何か、ムギなりに見つけられたんだろ」

「家族って言葉と、その絆の再確認、ってところかな」

「おっ、さすが唯。もうその辺りまで分かってるのか~」

「え~? りっちゃんだって分かってたでしょ?」

「分かって無かったよ。
  私の場合、そういう気持ちとか言葉じゃなくて、形に残るものだって思ってたからな。
  そういう発想が出来る唯はさすがだよ」

「何も分からなかった私って……」

「まあまあ澪ちゃん」

「そうだぞ~。ムギに言わせれば私たちは家族なんだし、そんな気にするな」

「でも……」

「互いの欠点を支えあえてこそ家族、だろ?」


70 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 18:26:01.36 pozsJo4D0 59/60


「ま、それでも私たちは梓の先輩だ。
  本当の家族じゃない。
  だから目に見えない絆を信じきることは出来ない。
  だから、梓に何かを残さないといけない。
  目に見えない絆を信じさせる、何かを」

「あずにゃんが、寂しさで潰れないためにもね」

「ムギにとってはそれが、家族という言葉で……あの時の会話」

「そういうことだ」

「だから澪ちゃんは、澪ちゃんなりに軽音部について考えれば良いんだよ」

「私なりに、軽音部について……」

「ああ。梓に、何を残せるかをな」


72 : 以下、名... - 2010/10/11(月) 18:28:29.43 pozsJo4D0 60/60


「おっ、噂をしてれば! あずにゃん達が来たよ!」

「お、ホントだ。それじゃ、皆で帰るか」

「そうだね!」

「……ああ!」

(……でも、こんな時間も、残り僅か……か……)

「私にとっての軽音部とは……なんなんだ?」

(私が梓に残せるものって……なんなんだ?)



終わり


記事をツイートする 記事をはてブする