先生「野比君、また宿題を忘れて!」ガミガミガミ
ジャイアン「またエラーしやがって! お前のせいで負けたんだ!」ガミガミガミ
玉子「のび太! なんですか、この点数は!」ガミガミガミ
のび太「うう……今日もみんなから叱られた……」
元スレ
ドラえもん「この勲章をつけると悪いことをしても叱られなくなるんだ」のび太「へぇ~」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1567598410/
のび太「ドラえも~ん!」
ドラえもん「なんだい」
のび太「みんなひどいんだよ! みんなして、ぼくを叱るんだ!」
ドラえもん「そりゃあ、君が叱られるようなことするからだよ」
ドラえもん「これに懲りたらみんなに叱られないよう、ちゃんと勉強して、野球を練習して……」
のび太「そんなまどろっこしいことしてられないよ!」
のび太「お願い! 今すぐ叱られなくなるようになる道具出してぇ~」
ドラえもん「ったく、言い出したら聞かないんだから」ゴソゴソ…
ドラえもん「えらい人勲章~!」
のび太「えらい人勲章?」
ドラえもん「この勲章をつけると悪いことをしても叱られなくなるんだ」
のび太「へぇ~」
のび太「宿題を忘れても?」
ドラえもん「うん」
のび太「エラーしても? テストで0点取っても?」
ドラえもん「うん」
のび太「すごい!」
のび太「ぼくが欲しかったのはまさにこういう道具だったんだよ!」
ドラえもん「ただし――」
のび太「さっそく胸につけて、と」ペタッ
のび太「行ってきま~す!」タタタッ
ドラえもん「あっ、行っちゃった……」
ドラえもん「いっつもこうなんだから!」
のび太「さっそく試してみよう」スタスタ
のび太「あ、しずちゃんだ」
のび太「お~い!」
しずか「あら、のび太さん」
のび太(しずちゃんの……スカートを……)
のび太「えいっ!」ピラッ
しずか「!」
しずか「キャーッ! のび太さんのエ……」
のび太「……」
しずか「あっ、その勲章は!」
しずか「のび太さんなら、しょうがないわね」スタスタ
のび太「怒られなかった!」
のび太「すごい、すごいぞ!」
のび太「次はいよいよジャイアンだ!」
のび太(石を拾って……)
スネ夫「? あいつなにやってんだ?」
のび太「ジャイアンめがけて……それっ!」ポイッ
ゴチンッ
ジャイアン「いでっ!」
スネ夫「バ、バカ! 殺されるぞ!」
のび太「いいからいいから」
ジャイアン「石を投げたのはのび太か!?」
のび太「そうだけど?」
ジャイアン「……」
ジャイアン「まあ、のび太ならいいか」
のび太「フフフ……」
スネ夫「な、なんで!?」
スネ夫(ひょっとして、今日はジャイアンの機嫌がものすごくいい日なのかも……)
スネ夫「だったらぼくも! えいっ!」ポイッ
ゴチンッ
ジャイアン「この野郎!」ドドドドドッ
スネ夫「キャッ!」
ドカッ! バキッ! ボカッ! ガンッ! ドゴッ!
ギャァァァァァ…
のび太「次は誰にしようかなぁ」キョロキョロ
のび太「あ、先生だ!」
のび太「こんにちは、先生!」
先生「野比君か、こんにちは」
のび太「先生、ぼく、これからはもう宿題なんかやりませんからね!」
先生「な、なんだと!? けしから――」
先生「……まあ、しょうがない。やらなくて結構」
のび太「やった!」
のび太(待てよ?)
のび太(この勲章をつけてれば、相手に謝らせることもできるんじゃ……)
のび太「先生!」
先生「な、なんだね?」
のび太「先生はいつも宿題を出しすぎです! おかげでぼくの昼寝の時間がなくなっちゃう!」
のび太「だから二度と宿題なんか出さないで下さい!」
先生「む、むう……」
先生「すまなかった、野比君……」
先生「どうか許して欲しい……もう宿題は出さないよ……」
のび太「分かればいいんです」
のび太「……」
のび太「この勲章すごいや!」
のび太「えらい人勲章をつけていれば、なにをやったって許される!」
のび太「勉強しなくたって!」
のび太「昼寝ばかりしてたって!」
のび太「なにかを盗んだって!」
のび太「誰かを殴ったって!」
のび太「ぼくが叱られたり、罰を受けることはないんだ!」
のび太「勲章ってなんて素晴らしいんだ!」
のび太「よーし、次はなにを……」
中年「……」スタスタ
のび太「あのおじさんにイタズラしよう!」
のび太(ちょうどいいところにあるバケツの水を……)
のび太「それっ!」バシャッ
中年「うわっ!?」
のび太(この勲章を見せれば……)チラッ
中年「コラーッ!」
のび太「えっ!?」
中年「なんてことするんだ! びしょ濡れじゃないか!」
のび太「ちょ、ちょっと待ってよおじさん! ぼくにはこの勲章が……」
中年「なんだね、その勲章は?」
のび太「ほら、よく見てよ!」
中年「? それがどうしたんだね?」
のび太「おかしい……勲章が効かない!?」
ドラえもん「あっ、遅かったか」
のび太「ドラえもん!」
のび太「どういうことなの!? この人にはえらい人勲章が効かないじゃないか!」
ドラえもん「君が説明する前に飛び出しちゃったんだろ!」
中年「?」
のび太「で、どういうことなのさ!?」
ドラえもん「実はね……」
ドラえもん「えらい人勲章は、勲章を持っている人には通じないんだよ」
のび太「えっ、そうなの? ってことはこのおじさんは……」
中年「ああ、私かね」
中年「たしかに私は勲章を持っているよ」
中年「環境保護の分野での功績を認められて、勲章を授与されたんだ」
のび太「そうだったのか……」
中年「どうやら君も勲章を授与されたようだが……」
中年「いいかい? 勲章というのは人にひけらかすためのものじゃないんだ」
中年「まして、勲章の力で悪さを許してもらおうなど絶対あってはならないんだ」
のび太「うっ……」
中年「そしてもし、勲章を持つ身でありながら万が一過ちを犯してしまったら」
中年「それを勲章の力でどうにかしようとするのではなく」
中年「きちんと自分の罪を認め、償おうとするのが人としての正しい有り方だと思うよ」
のび太「その通りです……」
中年「分かってくれたようだね。じゃあもういいから、今日は帰りなさい」
のび太「でも服を濡らしちゃって……」
ドラえもん「ぼくが未来のドライヤーですぐ乾かしてあげるよ!」
のび太「ありがとう、ドラえもん!」
―のび太の家―
ドラえもん「どうだい、のび太君」
のび太「……」
ドラえもん「これでよく分かっただろう?」
ドラえもん「いきなり勲章だけもらってもなんの意味もないってことが」
ドラえもん「勲章を授与された人というのは、ああいう立派な人ばかりなんだってことが」
のび太「うん、とてもよく分かったよ」
のび太「だからさ、ドラえもん」
のび太「今すぐ勲章をもらえるような立派な人になれる道具出してぇ~!」
ドラえもん「ちっとも分かってない!」
おわり