1 : 以下、?... - 2019/08/17 18:18:11.689 0/auim7Q0 1/43

「本気で心臓が止まるかと思いましたよ」

貞子「そうだとしても叫びすぎでしょ。近所迷惑よ」

「いやいや。テレビから人間が出てきたらビビりますよ誰だって」

貞子「呪う前に死ぬかと思った」

「……僕、やっぱり呪いのビデオを見たってことで呪われちゃう感じですか?」

貞子「ううん。貞子、最近は呪いとかは控えてるの」

「だったら何をしにブラウン管から出て来たんですか?」

元スレ
貞子「ユーチューバーになりたいの」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1566033491/

2 : 以下、?... - 2019/08/17 18:22:22.779 0/auim7Q0 2/43

貞子「この山村貞子。井戸に突き落とされてから半世紀以上」

貞子「あまたの人間を呪ったり、時にはウイルスをばらまいたり、時には勢い余って人類を滅ぼしそうになったけど」

貞子「そういうのも飽きてきちゃった」

「飽きる? 呪うことにですか?」

貞子「CDをダビングしようとしてカセットの時間を間違えてイラッとした経験ぐらいはあるんじゃない、あなたも」

貞子「でも、一時間もすれば怒りもおさまるでしょ。それと同じ」

「ちょっと何言ってるか分かんないです」

貞子「なんで分かんないの」

3 : 以下、?... - 2019/08/17 18:27:13.595 0/auim7Q0 3/43

貞子「こんな古いテレビ使ってるから、てっきり話が通じるのかと」

「今日初めて使いましたよ、ビデオもブラウン管も」

貞子「今の子って呪いのビデオの話をしても『ビデオって何?』ってなるんでしょ?」

「まあ最近じゃテレビじゃなくてユーチューブばかり見る人も珍しくないですからね」

貞子「ユーチューバーでしょ。知ってる知ってる」

「ユーチューバーなんて分かるんですか、山村さん」

「ていうか話逸れましたけど、結局山村さんは何をするつもりなんですか?」

貞子「ユーチューバーになりたいの」

「はい?」

4 : 以下、?... - 2019/08/17 18:33:33.519 0/auim7Q0 4/43

「……あの、山村さん。ユーチューバーが何かって本当にご存知です?」

貞子「コーラにメントスを突っ込んだり、物珍しい商品を紹介したりするんでしょ」

貞子「あと本を燃やしたり宝くじを買い漁ったりとか」

「いちおう間違ってはないですね」

「でもなんでユーチューバーなんです? 何か目的でも?」

貞子「貞子も元々は人間。半世紀も経てば恨みも薄れるみたい」

「さっき飽きたって言ってましたもんね」

貞子「そっ。だから貞子がやらなさそうなことをやってみようと思って」

6 : 以下、?... - 2019/08/17 18:39:57.381 0/auim7Q0 5/43

「でも僕、動画なんて録ったことないですよ。それに山村さんって大丈夫なんですか?」

貞子「大丈夫って? 何が?」

「……その、見た目とか?」

貞子「そんなこと? 仮装ってことにすれば余裕でしょ」

「コスプレですか。確かにそれならイケるかも」

貞子「じゃあ決まり。さっそく撮りましょ」

「いや、他にも問題はありますよ。動画を撮るためのカメラもないし」

「そもそも何を撮るんですか?」

貞子「貞子、ユーチューブに詳しくないから。代わりに考えてくれる?」

「おかしいでしょ。自分が撮りたいって言ったのに」

貞子「ふーん。じゃあ『同居人を呪い殺してみたドッキリ』とかはいかが?」

「大学も夏休みで暇だしせっかくだから何か考えてみますね!」

貞子「ありがとう、すごく嬉しい」

9 : 以下、?... - 2019/08/17 18:45:08.653 0/auim7Q0 6/43

「山村さん、とりあえずいくつか考えてみました」

貞子「すごいね、もう考えたの? それでそれで?」

「料理動画なんてどうです? 今人気の『ふわとろオムレツ』を作ってみましょうよ」

貞子「料理はいいけど、撮影はどうやってするの?」

「うちには撮影機材なんてないんで、とりあえずスマホで撮ります」

貞子「すまほ? その板状の物のこと?」

「スマホは知らないんですね。カメラ機能も付いてる電話なんです、それ。ちなみに音楽も聞けますよ」

貞子「フフッ、電話にカメラが付いてて音楽が聴ける? そんなわけないじゃない」

貞子「オバサンだと思ってからかってると呪殺しちゃうかも?」

「……気をつけます」

13 : 以下、?... - 2019/08/17 18:51:17.470 0/auim7Q0 7/43

「まあとりあえず料理始めてみましょっか」

「調理法はネットから取ってきたのがあるんで。材料はご覧のとおり」

貞子「じゃあさっそくやってみるね」

「山村さん、卵とくのが上手ですね」

貞子「これぐらい朝飯前よ。……あっ、髪の毛入ちゃった。作り直すね」

「山村さん、髪長いですもんね」

貞子「あっ、また髪が入った。もう一度やり直そ」
「……」

貞子「あぁっ!また入った! 卵はもうないの?」

「……ていうか髪の毛抜けすぎでは?」

貞子「仕方ないでしょ。こっちとら還暦すぎてるんだから」

「山村さん、今何歳なん……いえ、やっぱりなんでもないです」

貞子「よかった。あなたとは仲良くやっていけそう」

15 : 以下、?... - 2019/08/17 18:56:38.772 0/auim7Q0 8/43

貞子「料理も悪くないけど、一旦中断しましょう。他にもいい案があるんでしょ?」

「じゃあ次は夏らしい企画ってことで、心霊スポットで一夜明かすっていうのは?」

「心霊系の動画ってけっこうあるんです。だけどガチの幽霊が心霊スポットで過ごすって動画は多分まだないんですよ」

「心霊系のネタって人気ですし、これなら……」

貞子「申し訳ないけど却下」

「……どうして?」

貞子「怖いから」

「……山村さん、幽霊なんですよね?」

貞子「それ以前に貞子も女よ」

貞子「幽霊がいっぱい居そうなところで一晩過ごすなんて怖いに決まってるでしょ」

「……そうですね」

18 : 以下、?... - 2019/08/17 19:02:15.584 0/auim7Q0 9/43

「じゃあ次は現代の若者、特に女の人に人気な物でいってみますか」

「『ガチの幽霊がタピオカ飲んでみた』ていうのは?」

貞子「たぴおか?」

「これです。このミルクティーに入ってる黒い粒、これがタピオカです」

貞子「これ? これなら井戸の中で見たことあるけど。本当に流行ってるの?」

「なら、山村さんが思う流行ってる物ってなんですか?」

貞子「うーん、そうね。定番と言えばはちみつレモンかな」

「……ああ、今でいうレモネードですね」

貞子「あと、やっぱりナウなヤングならサ店でレイコーでしょ?」

「……」

貞子「ふふん、貞子が流行に詳しくて驚いた?」

「ええ、知識のかたより具合に驚いてますよ」
   

20 : 以下、?... - 2019/08/17 19:08:03.752 0/auim7Q0 10/43

「じゃあ次は『貞子改造計画』なんていうのは?」

「ぶっちゃけた話、今の山村さんの見た目ってけっこう怖いじゃないですか。あくまで見た目ですよ?」

貞子「ふーん。それで?」

「だからその長い髪を切って、メイクして爪も整えて服も新調する。要はオシャレしてみませんか、ってことですよ」

貞子「それはとてもとても素敵。だけど髪を切って顔を晒すってのがちょっとね」

「顔を見せるのに抵抗ありますか?」

貞子「これでも昔は美人って評判だったの。だけど今は見てのとおり」

貞子「腕とか足を見ても分かるでしょ? 蝋燭みたいじゃない?」

「大丈夫ですよ。今のメイク技術は半端じゃないんですから」

貞子「じゃあ確かめてくれない? 特別に見せてあげるから、貞子の顔」

「いいんですか? いやまあ、見せてもらわないと話が進まないんですけど」

24 : 以下、?... - 2019/08/17 19:14:31.296 0/auim7Q0 11/43

貞子「や、やっぱり恥ずかしい/// ど、どうしようかな///?」

「まあまあそう言わずに」

貞子「えー、でもぉ。今の貞子って所謂すっぴんなんだよね///」

貞子「素顔の貞子を見られちゃうなんて/// 顔が熱くなっちゃう……///」

「なおさら見たいなあ! 山村さんの顔が見れるならなんでもするかも」

貞子「な、なんでもなんて/// なんだか卑猥///」

「……」

貞子「どうしたの? 急に黙ったりして」

「いや、還暦迎えてる人とこのやりとりをしてるって考えたらなんかしんどくなってきちゃって」

貞子「どうして? 貞子、今すごく楽しいよ?」

「うん、正直僕もけっこう楽しいんですよね。それがまた辛いんです」

27 : 以下、?... - 2019/08/17 19:21:31.230 0/auim7Q0 12/43

貞子「とは言ってもこのままじゃ話も進まないしね。顔、見てくれる?」

「はい、拝見させて頂きます。あ、髪触っても大丈夫ですか?」

貞子「うん、特別に許してあげる」

「ありがとうございます。それでは失礼して」


貞子「…………ど、どうかな?」

「すみません、この計画はまたにしましょう」

貞子「どうして!?」

「覚悟が足りなかったみたいです」

「髪を上げたら仲間由紀恵似のアバターが出て来ると思ってました。全然違いました」

貞子「その例えは全く分からないけど、もしかして貞子のことこけにしてる?」

「……今考えたんですけど、どうせやるなら山村さんには人気ユーチューバーになってほしいんです、僕としては」

28 : 以下、?... - 2019/08/17 19:28:50.066 0/auim7Q0 13/43

「だけど人気者になるのは簡単じゃない。それでも人気者になるにはどうしたらいいか?」 

「そう、何よりも重要なのは個性です」

「他には絶対に出せない不気味さやおどろおどろしさ。山村さんにしかない突き抜けた怨霊という個性」

「これを前面に押し出していく。それこそが人気者になるための秘訣だと思うんです」

「そのためにはありのままの状態が一番イイ。メイクは不要。僕はそう考えたんです」

「素のままの山村さんが最高なんです。だから今のままで行きましょう」

貞子「……まさかそこまで考えてくれてたの?」

「ええ。生き残るために必死になると、人間ってこんなにも頭が回るんですね」

貞子「生き残るため?」

「……山村さんがユーチューブで生き残るために、って意味です」

貞子「そうなの。出会ってまだ2時間も経ってないのに、ありがとう」

「お礼なんていいんです。それよりどんな動画を撮るのか、続きの話をしましょう」

貞子「うん」

29 : 以下、?... - 2019/08/17 19:36:02.491 0/auim7Q0 14/43

貞子「そうだ。『夏だし貞子が怖い話してみた』なんていうのは?」

「いいんじゃないですか。山村さんなら怖い話のネタに困らなさそうですし」

「何より本当に怖そうですもんね。ちなみに内容は?」

貞子「貞子が怨霊になるまでの話」

「ガチですね。実際、山村さんってどうして怨霊になんてなったんですか?」

貞子「ざっくり説明すると、父の担当医に襲われてね。井戸に突き落とされたの……あれ?」

「どうしたんですか?」

貞子「ちがうかも。お父さんに薬投与されて、井戸から突き落とされそうになったんだっけ?」

「えぇ、なんでそんな一番重要なところの記憶が曖昧なんですか」

貞子「まあ遥か昔のことだから。怨霊ももボケるのよ、きっと」

「……本当に怖いのは月日の流れってオチなんですね」

35 : 以下、?... - 2019/08/17 20:32:24.534 0/auim7Q0 15/43

「意外とネタ出しの時点で手こずりますね」

貞子「このままだとただひたすら時間を無為にするだけね」

「じゃあネタも決まらないし、とりあえず最初の挨拶だけでも撮っておきますか」

貞子「挨拶?」

「基本的にユーチューバーって、動画の最初に挨拶が絶対に入るでしょ」

「だからとりあえずそれだけでも撮っちゃいません?」

貞子「挨拶って急に言われても。すぐには思いつかないなあ」

「まあまあそんな深く考えずに。名前言って、簡単な自己紹介をすればいいだけですよ」

貞子「…………」

「あの、山村さん? もう撮ってますんで何か喋ってもらえます?」

貞子「無理、緊張しすぎて死にそう。ほら頭どころか顔まで真っ白」

「山村さん、それはもとからです」

36 : 以下、?... - 2019/08/17 20:44:50.784 0/auim7Q0 16/43

貞子「こんなに緊張したのは初めての舞台以来かも」

「舞台? 山村さん、生きてた時は何をやってたんですか?」

貞子「舞台女優。一年もやってなかったけど」

「本当に? 本当だとしたら今日一番の驚きなんですけど」

貞子「どうも信じられないみたいだね。これでも人を真似るのが上手なんだよ?」

「じゃあ何か見せて頂けません?」

貞子「ブンブン!ハローユーチューブ!」

「うめえ! 何気にブンブンのところまで完璧だ!」

貞子「どう? これが貞子の実力よ?」

「じゃあカメラ回すんで、今のもう一度やってくださいよ」

貞子「バーイ!」

「カメラ回した途端テレビに帰ろうとしない!」

37 : 以下、?... - 2019/08/17 20:59:34.339 0/auim7Q0 17/43

貞子「やっぱり緊張しないなんて無理」

「何がそんなに緊張するんですか」

貞子「だって何百万人って人が動画を見るのかもしれないのよ?」

「今のところ、その心配は全く必要ないですよ」

貞子「それに動画を見た人が必ずしも好意的とは限らないでしょ」

貞子「心無い感想なんか見た日には、その人のこと呪殺しちゃうかも」

「それならもう動画撮るのやめます?」

貞子「それもイヤ」

「山村さん……言わないでおこうと思いましたけど、非常にめんどくさい性格してますよよね」

貞子「こんな性格じゃなきゃ貞子なんてやってないから」

「まあでもここまで来たからには、動画は撮りたいですよね」

「緊張しない方法か……あっ、こういうのはどうです?」

貞子「何か案が浮かんだの?」

38 : 以下、?... - 2019/08/17 21:10:52.482 0/auim7Q0 18/43

「山村さんって最初、井戸から出て来たじゃないですか?」

「だからもう慣れるまではその井戸の中から喋ればいいんじゃないですか?」

「これならカメラにも映らないし緊張も薄れるますよ」

貞子「あなたって本当にとってもスマートね」

貞子「でも顔を全く出さないのってどうなんだろう?」

「それなら毎回少しだけ井戸から顔を出せばいいんですよ」

「そうすることで顔も覚えてもらえますし、かえって不気味さも増すと思うんです」

貞子「いい、すごくいいと思う。それなら貞子でもできそう」

「よし、そうと決まればさっそく撮っていきましょう!」

貞子「ええ。目指すはナンバーワンユーチューバー!」

39 : 以下、?... - 2019/08/17 21:26:29.663 0/auim7Q0 19/43

「やっとなんとか挨拶だけは撮影できましたね」

「いやあ、途中何回かスマホやパソコンがおかしくなったりして大変でしたけどね」

貞子「……」

「どうしたんですか?」

貞子「何気に井戸から這い出て来る自分を見るのが初めてだったから」

「いや、そんな遠くから動画を見るほど怖いんですか」

「まあひょっとしたらこの井戸からのシーンだけでも100万再生行っちゃうかもしれませんね」

貞子「そういう手抜きは駄目。やるからにはしっかり最後までやるんだから」

「ここまでやったんですし最後まで付き合いますよ」

40 : 以下、?... - 2019/08/17 21:46:36.815 0/auim7Q0 20/43

数日後


貞子「こんな山奥で何するの?」

「それは目的地に着いてから説明しますよ」

貞子「さっきも同じ質問したけどなんで?」

「いや、だって山村さんってば、僕が出すアイディアを悉く却下するじゃないですか」

貞子「だってぇ」

「だって、じゃない」

貞子「昨日なんて『井戸の中の水飲み干してみた』とか『色んな井戸を紹介します』とか」

貞子「井戸系のネタしか提案してくれなかったじゃない」

「そういう山村さんの考えたネタだって『紐無しバンジージャンプに挑戦』みたいなヤバイのとか」

「『出やすいブラウン管テレビはどれか』とか」

「反応に困るネタばかりじゃないですか」

貞子「紐無しバンジージャンプはありだと思うんだけど」

「それをやるのが僕じゃなくてあなたならね」

貞子「高いところはあまり得意じゃないの」

41 : 以下、?... - 2019/08/17 21:52:26.716 0/auim7Q0 21/43

貞子「それにしてもこんなに歩いたのは久々。さすがに疲れてきちゃった」

「僕もですよ」

「ここまで来るのに電車とかバスとか使えないから、レンタカーで来るしかなかったし」

貞子「私は車なんてほとんど乗ったことがなかったから楽しかったよ」

「それはよかったです。おっ、やっと着きましたね」

貞子「これは……滝?」

「そうです。今から山村さんには滝に打たれて頂きます」

貞子「全然意味が分からないんだけど」

「企画についてはこれから説明します」

43 : 以下、?... - 2019/08/17 22:06:36.178 0/auim7Q0 22/43

「自分で言うのもなんですけど、真面目にこれはなかなかイケるネタだと思うんです」

貞子「説明して」

「ズバリ、今回の企画は『メチャクチャ色白の人、どこまで色白になれるか選手権』です」

「山村さんって怖いぐらい白いじゃないですか」

貞子「ご覧の通り、死んでから半世紀経ってるからね」

「だけど頑張ればもっと色白になれるんじゃないかなっと思いまして」

貞子「……かろうじて企画の主旨は理解できたけど、それと滝に何の関係が?」

「だから色が白くなりそうなことの1つとして滝修行してもらおうかなって」

貞子「あなた、正気?」

「最初は冷凍庫に山村さんを一時間ぐらい突っ込むって案も考えたんですけど」

「さすがに叩かれそうなんでやめました」

貞子「……」

「あと呪い殺される危険性を感じたんで」

45 : 以下、?... - 2019/08/17 22:18:05.290 0/auim7Q0 23/43

「山村さんが滝に打たれてるってだけで、絵的にも面白いと思うんですよね」

貞子「……なんかイヤ、この企画」

「またそんなことを。ちなみにどうして?」

貞子「やる前から結果が見えてるじゃない、これ」

貞子「貞子はずっと暗い井戸の底にいるんだし」

「……じゃあ勝負しませんか?」

貞子「勝負?」

「山村さんにだけ滝に打たれろとは言いません。僕も一緒に打たれます」

「それでどっちが長い時間、打たれ続けられるか勝負しましょう」

貞子「……」

「これでもダメですか?」

46 : 以下、?... - 2019/08/17 22:33:17.823 0/auim7Q0 24/43

貞子「……」
「……」

貞子「……わかった。そこまで協力してくれるっていうならやってあげる」

「山村さん……!」

貞子「そもそもユーチューバーやりたいって言ったのは貞子だしね」

貞子「その代わり覚悟することね。本気でやるから」

貞子「貞子に勝負を挑むってことがどれほど恐ろしいことか教えてあげる」

「望むところです」

48 : 以下、?... - 2019/08/17 22:48:56.225 0/auim7Q0 25/43

2日後


貞子「まだなの? あとどれぐらいできるの?」

「僕も初めてなんで本当に合ってるのか不安ですけど、これでアップできると思いますよ」

貞子「早く早く」

「ソワソワしすぎですよ。落ち着いてください」

貞子「だって初めての動画だよ? もうすぐ貞子がねっとでびゅーするんだよ?」

「本当なら昨日には動画はアップできてたはずなんですけどね」

貞子「それはあなたが悪いんでしょ?」

「いやまあ、滝修行が終わった後にケーキを顔にぶつけたのは僕が悪かったですよ」

貞子「なんであんなことをしたのか。理解に苦しむわ」

「だから昨日もさんざん説明したじゃないですか」

「山村さんが滝に打たれても変わらないってことは分かってたんで」

「ケーキをぶつけられたら貞子も真っ白になっちゃいました、ってオチにしようとしたって」

50 : 以下、?... - 2019/08/17 23:05:16.346 0/auim7Q0 26/43

貞子「あなたってけっこう頭おかしいでしょ」

「山村さんがそう言うってことは本当におかしいかもしれませんね」

貞子「貞子の周りの人間も割と特殊な人が多かったから」

「そういう山村さんは?」

貞子「それ、わざわざ言わなくちゃ駄目?」

「いや、聞かなくても少しは想像がつくんで。……あっ」

貞子「もしかして動画がネットに上げられたの?」

「そうみたいですね。さっそく確認してみましょっか」


アァ……ザザザッ……ブンブンザザッハイドウモー……ヤマムラサダコデスゥザザッ……


貞子「……」

「……」

貞子「……本当に貞子が画面に映ってる」

「ええ。動画はきちんとあげられたようです」

52 : 以下、?... - 2019/08/17 23:22:36.244 0/auim7Q0 27/43

コレケーキジャナイッ……ザザザ……
        ……゙ツケヤガッタナ! サプライィィィィズ…… ザザザザァ……ヤ、ヤマムラサン……


貞子「……なんだか不思議な気分だね」

「不思議な気分?」

貞子「だってもう世界のどこでも貞子の姿が見れるんでしょ?」

「ええ。貞子って検索すれば、みんながみんなこの動画を見ることができるんですよ」

「まあ実際にはそんな簡単には見てもらえないとは思いますよ?」

ザザザザザザザ    ナンデケーキナンテザザザザ……
     ……ザサ……
                    ヤマムラサンオチツイテ ザザザサザ………

貞子「……ありがとね」

「急にどうしたんですか?」

貞子「本当はもっと早くお礼を言いたかったの。でも、なかなか言えなくて」

貞子「本当にありがとう。フフフッ……」

「山村さん?」


……ユ、ユルシテゴメン……ショウモンバカリシテルト……ザザザザザザザザザザザザサザ ザザ

56 : 以下、?... - 2019/08/17 23:42:53.613 0/auim7Q0 28/43

貞子「ねえ。あなたは何も考えなかったの?」

「おっしゃってる意味がよく分からないです」

貞子「貞子のビデオ、あれがどういうものかってあなたは知ってるでしょ」

「見たら死ぬビデオでしょ? 一週間後か、13日後か、二日後か詳しい日数は知らないですけど」

貞子「日数なんてどうでもいいの」

貞子「それよりどうしてそのビデオを見た人間は死ぬのか、分かる?」

「それが呪いのビデオだからでしょ?」

貞子「呪いはビデオにしか宿らないと思ってるの? 呪いは映像にしか宿らないの?」

貞子「不幸の手紙ならあなたでも分かるでしょ?」

貞子「あれって文字そのものに呪いが宿ってるって考えていいんじゃない?」

「……山村さん、話がまとまってなくて全然分からないですよ」

貞子「じゃあこう聞けば分かるかな? あなたが見た呪いのビデオ」

貞子「そのビデオに込められた呪いの根源は何? 誰?」

「……山村貞子」

59 : 以下、?... - 2019/08/18 00:01:18.616 QkXqqxe60 29/43

貞子「そう。呪いの根源はこの山村貞子」

貞子「じゃあこのパソコンの画面に映っているのは?」

「山村さんですね」

貞子「もう最後まで言わなくても分かるよね?」

「呪いは飽きたって言ってませんでしたっけ?」

貞子「だからこそ新しい呪い方を試してみたくなった。おかしくないでしょ?」

「……」

貞子「世界中の人間が見られる動画だったら広がり方もすごいだろうね」

「どうでしょうね。ネットにあがってる動画のほとんどは埋もれてくんですよ」

「案外、数人が見て呪われて、それで終わるって可能性のほうが高いかもしれませんよ」

貞子「どうだろうね。それはやってみなくちゃ分からない」

「いや、『ネットにリンクを張って自分以外の人間に見せたら呪いが解ける』」

「そんな噂を流せば、案外簡単に動画は広がるかもしれませんね」

貞子「え?」

62 : 以下、?... - 2019/08/18 00:14:51.118 QkXqqxe60 30/43

「山村さん。今度は僕が質問してもいいですか?」

貞子「何?」

「山村さん。どうして僕は、あの呪いのビデオを持ってたんだと思います?」

貞子「……あなた、もしかして」

「はい。死んでもいいって思ってたんですよ」

「あーべつに深い理由はないですよ」

「なんか人生が退屈で、なんで生きてんのかなあって。そんな感じのかったるいやつです」

「そしたらたまたま親戚が呪いのビデオを持ってるって聞いたんです」

貞子「じゃあこのビデオを見るためだけにあの古いテレビを?」

「そう、買ったんですよ。まあビデオが本物とは思いませんでしたが」

貞子「……死にたがってた割には、貞子が出てきたときはえらく驚いてたようだけど?」

「誰だってテレビから人が出て来たら、死ぬほど驚きますよ」

64 : 以下、?... - 2019/08/18 00:28:17.451 QkXqqxe60 31/43

貞子「じゃあ動画を撮ることの危険性にも気づいてたの?」

「確信があったわけじゃないですけどね」

「それに積極的に誰かを呪いたいわけでもありませんでした」

「でも、動画を撮って、それをネットに上げて、その結果山村さんの呪いが広がっても、まあいっかって考えてました」

貞子「呪いのことについて一切聞いてこなかったのは、どっちでもよかったからってこと?」

「ええ。僕以外のことなんてどうでもよかったんで」

貞子「酷い人。最低だね」

「……ああ、だけど山村さんに呪いのことを聞かなかったのには、もう一つだけ理由があります」

65 : 以下、?... - 2019/08/18 00:40:42.634 QkXqqxe60 32/43

貞子「へえ。興味があるから聞いてあげる」

「今言ったとおり僕は動画を撮ることの危険性には気づいてました」

「でもだからこそ、その話題には極力触れないように気を付けました」

「山村さんにそのことを聞いたら、どうなるのか予想もつきませんでしたしね」

貞子「呪い殺されるとでも思ったの?」


ザザザザザザザザザザザザザザ……


「いいえ。動画の撮影をやめるって言うかと思って」

貞子「どういうこと?」

「だってもし仮に、山村さんが呪いを広げようなんて微塵も思ってなかったら、ですよ?」

「僕が勝手に疑ったてことになるでしょ?」

「それがバレたら山村さん、拗ねて動画を撮るのをやめるって言うかもって考えたんです」

貞子「……動画の撮影、やめてほしくなかったの?」

「はい。山村さんと動画を撮るの、とっても楽しかったんで」

貞子「……」

68 : 以下、?... - 2019/08/18 00:58:08.324 QkXqqxe60 33/43

貞子「何それ?」

「そのままの意味ですよ。山村さん、面倒くさい性格してるから」

貞子「……」

「山村さんも薄々気づいてたと思いますけど、僕、友達が全然いないんです」

「山村さんといる間、特に誰とも連絡を取ってなかったでしょ?」

貞子「確かにそれは気づいてた。というか、分かってた」

「そういえば山村さんって予知なんかもできるんでしたっけ?」

貞子「そんなんじゃないよ」

貞子「貞子も友達なんていたことなかったの、ずっとね。だから分かっちゃった」

「……じゃあもしかして山村さんも楽しかったですか?」

貞子「動画撮影のこと? うん、まあまあかな」

「まあまあ? 微妙な評価ですね」

貞子「滝に打たれたり顔にケーキぶつけられるなんてことがなかったら、また違ったかも」

71 : 以下、?... - 2019/08/18 01:15:55.032 QkXqqxe60 34/43

ザザザザザザ……ザザザザザ……


「山村さんには合わなかったみたいですね。死ぬ気で提案したのになあ」

貞子「その心意気だけは認めてあげる」

「心意気だけかあ。まあ、ありがとうございます」

貞子「じゃあついでに。その心意気を買って、1つだけ教えてあげようか」

「教える?」

貞子「そう。貞子の呪いについて」

「……」


ザザザザザザザザザザ……  
               …… ザザザザザ ザザザ ……ザサザ ………

72 : 以下、?... - 2019/08/18 01:22:03.880 QkXqqxe60 35/43

貞子「今回の貞子の呪い。それは……」


















貞子「ドッキリでーす」テッテレー


「……は?」

75 : 以下、?... - 2019/08/18 01:37:03.321 QkXqqxe60 36/43

「…………え? どっきり? ドッキリ?」

貞子「そう、ドッキリ」

「あの、山村さん。山村さんは本当にドッキリが何なのか分かってます?」

貞子「あ、また人をそうやって年寄り扱いする」

「いや、だってドッキリってことはつまり……え、どういうこと?」

貞子「状況が呑み込めないみたいだね。じゃあこう言えば伝わる?」

貞子「今回上げた動画には呪いは一切込められていません」

「……嘘でしょ?」

貞子「嘘じゃありません」

「じゃあ今のくだりはなんだったんですか? 僕、騙されてたってこと!?」

貞子「あ、やっと見たかった顔が見れた」

77 : 以下、?... - 2019/08/18 01:51:19.347 QkXqqxe60 37/43

貞子「どう? 実にユーチューバーらしい企画じゃない?」

「なんか納得がいかないんですけど」

貞子「誰も呪われないし誰も死なない。そのことに不満が?」

「そうじゃないですけど。もしかしたらあの動画、山村さんのは意思とは関係なく呪われてるかもしれませんよ」

貞子「また意地悪なことを言うね。だけどその可能性はない、かな」

「どうしてそう言い切れるんです?」

貞子「実は今回、あなたに会って、貞子は生まれて初めてあることをしたの。何か分かる?」

「そんなの分かるわけありませんよ……いや、そういえば一個だけあるな」

「井戸から這い出て来る自分を見たのは初めて。そんなこと言ってませんでした?」

貞子「すごいね。大正解」

79 : 以下、?... - 2019/08/18 02:10:26.473 QkXqqxe60 38/43

「でもそれが呪いと、どういう関係があるんですか?」

貞子「あくまでこれは推測ね」

貞子「最初に撮影をした時点の動画はね、おそらく呪われていたと思うの」

「じゃあどうして今は呪いが無くなったんですか?」

貞子「さっきも言ったとおり、貞子がその映像を見たからよ」

貞子「言うまでもなく貞子は呪いそのもの。そしてその貞子が呪われた動画を見た」

貞子「その結果、呪いどうしは反発して打ち消しあってしまった」

「……だからあの動画は呪われてないってことですか?」

貞子「少なくとも、あの動画が呪われてないのは間違いないよ」

「呪いが反発して消える。そんなこともあるんですね」

貞子「本当のところは分かんないけど」

貞子「……ううん、やっぱり今の仮説は間違ってるのかも」

「えぇー、違うんですか? 今の今まですごいドヤ顔で説明したのに?」

84 : 以下、?... - 2019/08/18 02:30:07.376 QkXqqxe60 39/43

貞子「さっき貞子が動画撮影はまあまあだったって言ったこと、覚えてる?」

「さすがにまだ覚えてますよ」

貞子「山に連れてかれて急に滝修行させられたり、ケーキを顔に叩きつけられたりしたのは」

「まあまあだったんでしょ?」

貞子「うん。だけどあなたといたこの数日間は最高に楽しかったよ」

「……」

貞子「それに嬉しかった。誰かとこんな馬鹿げたことを一緒にするなんて、今まで一度たりともなかったし」

貞子「……最高に楽しかった。だから呪いが吹き飛んだ」

貞子「案外、これこそが呪いが吹き飛んだ答えなのかもね」

「よく分かりません、僕には」

「だけど1つだけ間違いないのは、僕は山村さんのドッキリにしっかり引っかかったってことです」

貞子「見事な演技だったでしょ?」

「はい。さすが舞台女優です」

86 : 以下、?... - 2019/08/18 02:46:18.321 QkXqqxe60 40/43

貞子「うん、今回は本当に楽しかったよ」

貞子「欲を言えば、もうちょっと最初の動画が呪われていたってくだりで驚いてほしかったけどね」

「べつにまた仕掛けてくれてもいいんですよ?」

貞子「うーん、今回でユーチューバーは満足しちゃったかな」

「そうなんですか? せっかく山村さんのために次の企画も考えて来たのに」

貞子「いちおう聞いておいてあげる」」

「次は『超色白な人、日サロで限界まで日焼けしてみるチャレンジ』です。ちなみに日サロっていうのは……」

貞子「却下」

「えぇー、今度こそけっこう面白い企画だと思ったのに」

貞子「今度は本当に呪うからね」

「もう少しネタを練ってみます」

87 : 以下、?... - 2019/08/18 03:10:06.164 QkXqqxe60 41/43

(まあ、そんな感じで僕と山村さんはお別れして、1ヶ月が経った)

(彼女はまるで最初から存在していなかったかのように、あっさり僕の前から姿を消した)

(それっきり彼女とは一度も会っていない)

(彼女がどこに行ったのかも知らない)

(井戸に帰ったのかもしれない。違うどこかへ行ったのかもしれない)

(それからユーチューブにアップした動画は意外と伸びて、視聴回数は5万回を突破した)

(ビデオで呪いを振りまいた山村貞子は、ユーチューブではどんなふうに見えるんだろうか)

88 : 以下、?... - 2019/08/18 03:26:43.643 QkXqqxe60 42/43

おわり

     ザザザザザザザ……
                      ザザザ……

89 : 以下、?... - 2019/08/18 03:27:01.917 QkXqqxe60 43/43

読んでくれた人ありがとうございました

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