1 : 以下、名... - 2011/09/12(月) 22:13:12.35 NxtWKN3W0 1/48


「十五夜だからね」

狐娘「月を見ながら饅頭、風流じゃのう」ムシャムシャ

「本当、綺麗な満月だよね」トクトク

狐娘「ぬ?それは酒か?」

「うん、日本酒。ちょっと贅沢していいもの買っちゃった」

狐娘「今日はいい日じゃ」グィッ

「もう、遠慮がないんだから」

狐娘「よいではないか。ほれ、男も遠慮のう飲め」

「もともと僕のだよ」



元スレ
狐娘「ふむ、今宵は饅頭かの」
http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1315833192/
狐娘「今宵は饅頭」
http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1315916902/

5 : 以下、名... - 2011/09/12(月) 22:17:25.02 NxtWKN3W0 2/48


「狐娘はお酒弱いんだからあまり飲んじゃダメだよ」モグモグ

狐娘「ふふん、今日に限ってはそんな事ないわ」トクトク

「もう、強がっちゃって……」グビ

狐娘「くっくっく、酔った娘を前にして獣になっても良いのだぞ?」

「狐娘は魅力的だけどそんな事はしないよ」モグモグ

狐娘「ふふん、その強がりもいつまで持つかな?」グビッ

「お酒、もう回ってきたんじゃないの?」


8 : 以下、名... - 2011/09/12(月) 22:26:02.61 NxtWKN3W0 3/48


狐娘「回っておらぬわ。余を誰だと思っておる」グビグビ

「もう、気持ち悪くなる前にやめるんだよ」

狐娘「ん~?今はとっても気分が良いのじゃ」モグモグ

「もう顔真っ赤だよ」

狐娘「ふふっ、男ぉ、もっと近う寄れ」グイグイ

「わわ」ステン

狐娘「んふふ、膝枕してやろう」ナデナデ

「すっかり出来上がっちゃってる」ハフゥ

狐娘「~♪」ナデナデ


9 : 以下、名... - 2011/09/12(月) 22:33:43.70 NxtWKN3W0 4/48


狐娘「ほれ、男、あーんじゃ」

「あーん」パク

狐娘「にゅふふ、可愛い奴じゃのう」

「狐娘もね」

狐娘「なんじゃ。余を落とす気になったのかの?」

「そうだと言ったら?」

狐娘「くく、余を落とすには修行不足じゃ!」

「そりゃ残念」

狐娘「もっと残念がらぬか」グビ

「狐娘ー、僕も飲みたいんだけどー」

狐娘「ダメじゃー」


11 : 以下、名... - 2011/09/12(月) 22:37:18.03 NxtWKN3W0 5/48


「もう、僕が買ってきたのに」

狐娘「んふふ、そんなに飲みたいかの?」

「そりゃもちろん」

狐娘「お願いできたら呑ませてやるぞ?」ニヤ

「そんなー」

狐娘「さー、早くせぬと余が飲み干してしまうぞ」グビ

「ぐぬぬ」


16 : 以下、名... - 2011/09/12(月) 22:51:21.13 NxtWKN3W0 6/48


狐娘「さあ早くせぬか、余は我慢弱いのじゃ」グビ

「……」

狐娘「ん~?」グビグビ

「狐娘、お願いします、飲ませてくださいな」

狐娘「ん、んんんんん」グィ

「狐娘……?」

狐娘「ん~」ガバ

「ちょ……んん……」

狐娘「ン、ふ……ちゅ、ん……」

「ん、んぅ……」ゴクゴク

狐娘「ぷは……」ハァハァ

「き、狐娘、いきなり……」ハァハァ

狐娘「至高の味だったじゃろ?」

「お酒の味だよ、もう」

狐娘「にゅふふ、可愛い奴じゃのう」ナデナデ


19 : 以下、名... - 2011/09/12(月) 22:56:52.06 NxtWKN3W0 7/48


狐娘「……zzz」

「もう、やっぱ潰れちゃったじゃないか」

狐娘「……zzz」

「よっ、と……」ダキ

狐娘「……zzz」

「ん、布団かけないと風邪ひくよ」パサ

「……おやすみなさい」チュ


パチ


23 : 以下、名... - 2011/09/12(月) 23:02:10.99 NxtWKN3W0 8/48


狐娘「薄情者め」

「警告したのに飲むほうが悪いでしょ」

狐娘「二日酔いの可愛らしい女を放っておくのじゃな?」

「自業自得って言葉があってね。お昼ごはんはお粥作っといたから食べてね」

狐娘「……ふん」

「もう、寂しがり屋なのは何にも変わってないんだから」ナデナデ

狐娘「……早く帰ってくるのじゃぞ」

「了解しました。行ってきます」

狐娘「ん、行ってらっしゃい」



24 : >>22その手があったか - 2011/09/12(月) 23:06:39.59 NxtWKN3W0 9/48


「お!と!こァッァァァァァァァ!!」

「やかましいよ」

「聞いてくれよぉぉぉぉ」グスグス

「何、なんなの」

「昨日嫁とだな、十五夜だから呑んでたんだよ。なのになぁぁぁぁぁぁ」

「うるさいなぁ……」

「今日も元気ですね……」

「あ、女ちゃんおはよう」

「お早う御座います」ニコ

「いや聞けよお前ら」


29 : 以下、名... - 2011/09/12(月) 23:15:30.16 NxtWKN3W0 10/48


狐娘「うーむ、男の粥は絶品じゃのぅ」ズズ

狐娘「梅干しまで用意するとは分かっておる」

狐娘「……」ズズズ

狐娘「できれば、一日中いっしょに居たいものじゃ」

狐娘「ワガママじゃな、ふふふ」

狐娘「さて、お茶も入れるかのぅ」コポコポ


47 : 以下、名... - 2011/09/12(月) 23:51:27.19 NxtWKN3W0 11/48


「~♪」モグモグ

「ん?なんだお前その饅頭」

「ん?昨日十五夜だったから作ったんだ」

「ほうほう、俺にもくれよ」

「ほい」

「サンキュ。お、いけるなコレ」モグモグ

「女ちゃんも食べる?」

「はい、頂きます!」モグモグ


51 : >>48前から見て頂いてありがとうございます - 2011/09/13(火) 00:00:30.89 wXzlOzEK0 12/48


「男さん、料理お得意なんですね」

「まぁ、それなりにね」

「こんなにおいしいの、女の子でも作れる子そんなにいませんよ」

「ふふ、お世辞が得意だね」

「お、お世辞じゃないですって」



「この疎外感である」


53 : 以下、名... - 2011/09/13(火) 00:03:37.59 wXzlOzEK0 13/48


狐娘「む!」

狐娘「むむむ・……この不快感はなんなのじゃ」

狐娘「・……」

狐娘「男め、まさか浮気かの・……」

狐娘「むぅ」


60 : 以下、名... - 2011/09/13(火) 00:27:08.64 wXzlOzEK0 14/48


「ただいま」

狐娘「……」ムス

「……?狐娘?」

狐娘「おかえり」プイ

「?何か怒ってる?」

狐娘「怒ってはおらぬ」

「怒ってるじゃん。何かあったの?」

狐娘「……」

「もう」ギュ

狐娘「い、いつもそうやれば許すと思うな」

「うん、そう思ってるよ。こんな事するの狐娘だけだし」モフモフ

狐娘「はう……」


64 : 以下、名... - 2011/09/13(火) 00:35:14.25 wXzlOzEK0 15/48


狐娘「……感じたのじゃ」ギュウ

「何を?」ナデナデ

狐娘「……余じゃない女と話すお主を」ギュ

「会社に行ってるんだからしょうがないでしょ」モフモフ

狐娘「それでも、余には感じてしまうのじゃ」プイ

「解ってる。狐娘はヤキモチやきだもんね」クスクス

狐娘「ぬぅ」


68 : 以下、名... - 2011/09/13(火) 00:43:52.09 wXzlOzEK0 16/48


狐娘「これはなんという食べ物なのじゃ?」

「シチューだよ」

狐娘「しちゅー?」

「うん、美味しそうでしょ」

狐娘「うむ」

「いただきます」

狐娘「い、いただきます……」


71 : 続編というわけではないのです! - 2011/09/13(火) 00:50:20.48 wXzlOzEK0 17/48


狐娘「今宵も月が綺麗じゃ」

「ちょっと欠けてるけどね」

狐娘「ふふ、月には魔力があるという話を聞いたことはあるかの?」

「よくそう言う話があるね。満月になると妖怪は活発化するとか」

狐娘「そうじゃな。まぁ実際にはそんなものは無いのじゃが」

「へぇ」

狐娘「ただ月明かりが眩しいと、妖怪は夜が見やすいと楽しんでいたのじゃ」

「へぇ~。妖怪もやんちゃなんだね」

狐娘「妖怪はいたずらがすきなだけじゃ。それを過大に恐れて表現したのは人間じゃよ」

「ふぅん」


73 : 以下、名... - 2011/09/13(火) 00:55:53.16 wXzlOzEK0 18/48


「そうだね、僕の知ってる妖怪も月が眩しいとお酒飲み過ぎちゃうだけだったしね」クスクス

狐娘「ぐ」グサ

「あげく二日酔いしてねー」ニヤニヤ

狐娘「ぬ」ドス

「でも、そんな妖怪さんが大好きだよ」ニコ

狐娘「……」

「あれ?狐娘?」

狐娘「……えへへ」ポワポワ

「……なんかおかしくなっちゃった」


79 : 以下、名... - 2011/09/13(火) 01:04:41.20 wXzlOzEK0 19/48


狐娘「んー男ー」スリスリ

「何がどうしてこうなったんだ」

狐娘「好きと言ったのはお主じゃぞ?」パタパタ

「い、言ったけどさ……」(めっちゃ尻尾振ってる)

狐娘「余も好きじゃぞ、男ー」スリスリ

「うん、ありがと」ナデナデ

(どうしよう……)


81 : 以下、名... - 2011/09/13(火) 01:15:18.40 wXzlOzEK0 20/48


狐娘「……zzz」

「ふう、なんとか眠らせれた。お酒の力はすごいなぁ」

狐娘「zzz」

「でも、狐娘があんなに甘えん坊になるなんて」クスクス

狐娘「……zzz」

「……」

「おやすみなさい」チュ



パチ


17 : 以下、名... - 2011/09/13(火) 22:12:30.41 wXzlOzEK0 21/48


狐娘「秋に入ったとて残暑が厳しいのう」シャクシャク

「暑くなったり涼しくなったりだね」

狐娘「男は食べないのかえ?」シャクシャク

「誰かさんが家のアイス全部食べちゃったからね」

狐娘「ぐ……」

「あはは、まぁいいよそのくらい」

狐娘「……」グイ

「きつnあがあ!?」モガモガ

狐娘「ふん、残り半分くらいくれてやるわ」グイグイ

「も、もっひょひゃはひふ……」モゴモゴ


19 : 以下、名... - 2011/09/13(火) 22:19:34.27 wXzlOzEK0 22/48


「そんなこんなで狐娘が風邪をひきました」

狐娘「ふ、不覚じゃ……」グズ

「妖怪も風邪引くんだね」

狐娘「当たり前じゃ」

「アイスを1日で1箱空けちゃうからだよ」

狐娘「むむ……あんなに美味なのが悪いのじゃ」

「じゃあ、僕は薬買ってく……ん?」

狐娘「……」ギュウ

「すぐ帰るよ。今日は会社休むからさ」ナデナデ

狐娘「……」コクン


22 : 以下、名... - 2011/09/13(火) 22:26:33.36 wXzlOzEK0 23/48


狐娘「……」

狐娘「……」ボー

狐娘(もう、何年生きてきたじゃろうか)

狐娘(ふふ、昔のことなど覚えておらぬな)

狐娘(じゃが、こんなにも余に優しくしてくれる者が居なかったのはわかる)

狐娘(……)

狐娘(こんな感情が芽生えるとは思ってもおらなんだわ)

狐娘(ふふ、この歳になってようやくこの感情が芽生えるなんて)

狐娘(……)

狐娘(母様……)zzz


24 : 以下、名... - 2011/09/13(火) 22:29:40.11 wXzlOzEK0 24/48


「ただいまー……って、狐娘は寝ちゃったか」

狐娘「……zzz」

「妖怪の薬って人間用でいいのかわかんないけど」

「まぁダメだった時用に栄養剤も買ってきたしいいよね」

「今日はおじやだよ」ナデナデ

狐娘「……」ポケー

「ごめん、起こしちゃった?」

狐娘「おと……こ……」

「なに?」

狐娘「……ありがと」zzz

「……どういたしまして」ニコ


28 : 以下、名... - 2011/09/13(火) 22:37:59.51 wXzlOzEK0 25/48


狐娘「うー」パチ

「狐娘、起きた?」

狐娘「うむ……」グシグシ

「汗かいたから体拭いてきな。それが終わったらゴハンにしようか」

狐娘「……」グゥー

「ふふ、その調子ならすぐ元気になるね」

狐娘「うぅー」カァァァ


31 : 以下、名... - 2011/09/13(火) 22:44:18.53 wXzlOzEK0 26/48


「じゃあ、ゴハンにしようか」

狐娘「ううむ……おじやか」

「うん、暖かくしなきゃね」

狐娘「そうじゃな……」パカ

「……なんでこっち見て口開けてるの」

狐娘「あーんで食べたいと暗に示したつもりじゃ」

「もう、甘えん坊なんだから」

狐娘「病人じゃぞ」

「人じゃないよ」

狐娘「……病妖怪じゃぞ」

「言い難いよ」


33 : 以下、名... - 2011/09/13(火) 22:52:36.95 wXzlOzEK0 27/48


「はい、あーん」

狐娘「あむ、あふっ、はふはふ」

「ちょっと熱かったかな?」

狐娘「もっと冷めてからにしてくれ」

「はいはい」フーフー

「はい、あーん」

狐娘「あむ、んぐんぐ。コレくらいがちょうどいいの」

「仰せのままに、お姫様」

狐娘「うむ、良きにはからえ」


36 : 以下、名... - 2011/09/13(火) 23:02:50.52 wXzlOzEK0 28/48


狐娘「……」ギュ

「そんなに手を握らなくてもどっこも行かないよ」

狐娘「そんなの知っておる」ニギニギ

「……」ナデナデ

狐娘「……」ギュ

「怖い夢でも見た?」

狐娘「……」

「……」

狐娘「……母様が、死ぬ日の夢を見た」

「……」ギュ

狐娘「……もう何百年も前の話じゃがな」

「うん」

狐娘「余は……何も出来なかった」

「うん」


38 : 以下、名... - 2011/09/13(火) 23:07:39.42 wXzlOzEK0 29/48


狐娘「……」

「……狐娘?」

狐娘「……男よ」モゾ

「何?」

狐娘「……」

「……?」

狐娘「……なんでもない。おやすみ」

「ん、おやすみなさい」ニコ

狐娘「……」

「……」

狐娘「……」

「……」

狐娘「……今日はキスなしなのかの?」

「え!?」


39 : 以下、名... - 2011/09/13(火) 23:11:36.81 wXzlOzEK0 30/48


狐娘「気づいておらぬと思っておったのか?卑怯者め」

「ひ、卑怯者って……」

狐娘「ふん、本人が気づかない時にだけやるなんて卑怯者のすることじゃ」

「ぐぬ」

狐娘「……」ジト

「……」

狐娘「……」

「……」

狐娘「……」

「……」チュ

狐娘「ん……にゅふふ」


42 : 以下、名... - 2011/09/13(火) 23:18:58.06 wXzlOzEK0 31/48


「……」

狐娘「……zzz」

「ねちゃったか」

「……」

「大丈夫、狐娘」

「すぐよくなるよ」ナデナデ


44 : 以下、名... - 2011/09/13(火) 23:25:16.34 wXzlOzEK0 32/48


会社

「よ、大丈夫か?」

「心配掛けてごめんね」

「秋は体調崩しがちですからねー」

「うん、高熱がでちゃってびっくりしたよ」

「今日も休んだら見舞いに行こうぜって話もあったんだぜ」

「え?本当!?」

「おう、女ちゃんがどうしてもってなー」

「ちょ、と、友さん!!」

「あはは、ありがとうね」

「あ、はい……」テレテレ

「……」ニヤニヤ

「こっち見んな」


47 : 以下、名... - 2011/09/13(火) 23:31:32.73 wXzlOzEK0 33/48


お昼

「今日は社内食堂なんだ」

「いつもお弁当の男さんが珍しいですね」

「ほんっと、珍しい」

「朝ドタバタしちゃってねー」

「あ、あの!」

「え?」

「その、勝手ですけど、その、男さんにお弁当作ってきたので、食べてくれませんか!?」

「あ、え、僕に?」

「はい!是非!!」

「……」ニヤニヤ

「こっち見んな」


48 : 以下、名... - 2011/09/13(火) 23:34:57.29 wXzlOzEK0 34/48


「あ、おいしい」モグ

「ほ、本当ですか!?やった」グッ

「毎日作ってきては渡すの断念してきてたからねぇ」モグモグ

「と、友さん!!」アセアセ

「え、本当に?」

「あぅ……」

「お前の料理が上手すぎて渡すのが億劫になってたんだとさー」

「ちぇい!!」ゴス

「がふっ!!?」バタン

「あ、あの、今の……」

「あはは、でも、嬉しいよ」ニコ

「あ、え……は、はいぃ」


50 : 以下、名... - 2011/09/13(火) 23:36:54.07 wXzlOzEK0 35/48


狐娘「……」

狐娘「……そう」

狐娘「父様も人間じゃったな……」

狐娘「……母様」

狐娘「……」

狐娘「……男……」


51 : 以下、名... - 2011/09/13(火) 23:41:38.50 wXzlOzEK0 36/48


「よし、帰るかな」

「あ、男さん!こ、このあと食事でも……」

「女ちゃん」

「?」

「お弁当、ごちそうさま」ニコ

「あ、はい……」

「」スタスタスタ

「あちゃー」

「ぐぬ……」


53 : 以下、名... - 2011/09/13(火) 23:43:37.97 wXzlOzEK0 37/48


「ただいまー」

「あれ?」

シーン

「狐娘ー?」

「……」ガサ

「……手紙?」


54 : 以下、名... - 2011/09/13(火) 23:46:45.45 wXzlOzEK0 38/48


「……」

「……」

「……」パラ

「……」パラ

「……解ってたよ、そんな事」

「でもね、狐娘。僕は諦めが悪いんだ」

「迷子を探しに行かなきゃね」


58 : 以下、名... - 2011/09/13(火) 23:54:55.24 wXzlOzEK0 39/48


狐娘と最初に会った時、狐娘はただの狐だった

薄暗い道で、小さく震えていたのをよく覚えている

なぜか放っておけなくて、僕はペット禁止なのも忘れて自分のアパートに持ち帰った

お風呂で洗い、何をあげればいいのかわからなかったから、あっためた油揚げをあげた

狐はお礼を言うように小さく鳴くと、丸くなって眠り始めた

僕はその日、ずっと狐のそばにいた

次の日になって、あの姿になったのにはびっくりしたが、すぐに慣れた

「うむ……お主、余のことをもっと疑わぬのか?」

そんな事を言ってたのをよく覚えてる

それからの日々は、本当に楽しくて、楽しくて

狐娘が妖怪だなんてどうでもよかった

僕は、狐娘が好きになっていた


59 : 以下、名... - 2011/09/14(水) 00:01:14.14 GuAng4Gc0 40/48


狐娘「母様……」

狐娘「余は、わかりませぬ」

狐娘「どうすればよいのか、わかりませぬ」

狐娘「人間と妖怪じゃ、違いが大きすぎる」

狐娘「……」ポタ

狐娘「余は……男が好きじゃ」ポロポロ

狐娘「じゃが、辛すぎるのじゃ」

狐娘「余はあと何年生きなければならぬのじゃ」ポロポロ

狐娘「男は、あと何年しか生きられぬのじゃ」ポロポロ


60 : 以下、名... - 2011/09/14(水) 00:07:51.99 GuAng4Gc0 41/48


狐娘『かあさま!』

狐母『狐娘ちゃん……』

狐娘『かあさま、いやです、ひとりにしないでください!』

狐母『狐娘ちゃん、聞いて』

狐娘『かあさま……』グスグス

狐母『私はね、そろそろお父様の所に行かなきゃいけないの』

狐娘『いやです!』

狐母『狐娘ちゃん、あなたもきっと、あなたが好きになってくれる人が来るわ』

狐娘『う、う……』

狐母『それが私たち妖怪なのか、人間なのかはわからないけれども』

狐娘『とおさまは、人間でした……』

狐母『ええ、そうだったわね』

狐母『狐娘ちゃん、あなたの事が本当に好きで、あなたが本当に好きな人が来た時ね』

狐母『もし相手が誰であっても、その気持ちをねじ曲げちゃダメよ?』

狐娘『かあさまみたいに……?』


61 : 以下、名... - 2011/09/14(水) 00:11:04.86 GuAng4Gc0 42/48


狐母『ええ。私のように、一途でいなさいね』ニコ

狐娘『でも、とおさまはそのために……』

狐母『大丈夫よ、狐娘ちゃん』

狐母『そんな事、あとで考えればいいの』

狐娘『でも……』

狐母『いい?狐娘ちゃん』

狐母『もし貴女が好きな人と生きる時間とかで迷うときがあったら……』


63 : 以下、名... - 2011/09/14(水) 00:19:15.14 GuAng4Gc0 43/48


「みーつけた」ギュ

狐娘「きゃあ!」

「一人にするなんて、寂しいじゃん」

狐娘「お、お主、余の手紙は……」

「ん?見たけど?」

狐娘「なら……なぜ……」ボロボロ

「……僕は諦めが悪いんだ」

狐娘「……え?」

「狐娘があと何百年、何千年生きるかわかんないけど」

「僕はきっと、あと数十年で死んじゃう」

「その差の大きさはよく分かるよ」

狐娘「ならなぜ……苦しいだけなのじゃぞ!」

「僕は、狐娘といっしょで居られないほうが辛いし、苦しい」

狐娘「……!」


65 : 以下、名... - 2011/09/14(水) 00:24:01.03 GuAng4Gc0 44/48


「僕は」

狐娘「……」

「死ぬまで、死んだあとも、狐娘を愛し続ける自信くらい、あるよ」ニコ

狐娘「……う、くぅ……」ギュゥ

狐娘「男、余も、男が好きじゃ、愛したい」ボロボロ

「うん」

狐娘「余は……怖かったのじゃ、一人になった後、余は、余は……」

「大丈夫」ポン

狐娘「……うぅ」

狐娘「うわぁぁぁん」ポロポロ


66 : 以下、名... - 2011/09/14(水) 00:26:58.34 GuAng4Gc0 45/48


狐母『いい?狐娘ちゃん』


「狐娘」

狐娘「男……」


狐母『もし貴女が好きな人と生きる時間とかで迷うときがあったら……』


「愛してる」チュ

狐娘「ん……」


狐母『そんな事、考えさせてもらえないくらい愛してもらえばいいのよ!』


68 : 以下、名... - 2011/09/14(水) 00:31:55.32 GuAng4Gc0 46/48


「かあさまーー」パタパタ

狐娘「ふふ、今日も元気じゃな」ナデナデ

「えへへー」

狐娘「さて、ゴハンの用意もできたぞ」

「わあーい」

狐娘「こりゃ!勝手に食べようとするでない!」

「ごめんなさい~」

狐娘「あのねぼすけも起こさねばならぬし……いつまでも手の焼けるやつじゃ」

「かあさまうれしそうだよー?」

狐娘「そうかの?そうかもしれぬな、ふふ」


70 : 以下、名... - 2011/09/14(水) 00:35:19.38 GuAng4Gc0 47/48


「ふぁぁ、何朝から楽しそうにしてるの?」

「とおさまーー!!」パタパタ

「はい、おはよう」ダッコ

「おはようー」

狐娘「ふふ、ゴハンできてるぞ」

「ん、いつもありがとう」

狐娘「ふふん」

「あー、またいちゃいちゃしてるー」

「もう、どこからそんな言葉覚えたの」

狐娘「さあ?何処からじゃろうな。さあ、食べようかの!」ニコ

「ん、そうしようか!」

「いただきまーす!」


72 : 以下、名... - 2011/09/14(水) 00:38:47.61 GuAng4Gc0 48/48


狐娘(母様、今余は幸せじゃ)

狐娘(この幸せを、今はただただ享受しようと思っておるのじゃ)

狐娘(……母様)

狐娘(母様があんなに強くなれた理由、今ならわかる気がする)

「狐娘、どうした?」

狐娘「ん~?いや、今夜は満月だったことを思い出しての」

「じゃあ、今夜はお月見しよっか!」

「わーい!お月見ー!!」

狐娘「ふむ、今宵は饅頭かの……」






おわり


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