2 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 20:55:08.04 srLrk3Fa0 1/76


「何このデカくて白い布……」

「Zzz……」

「うわっ、砂漠のド真ん中にでかいヘビが寝てる」

「神様……ネズミ食べたい……んががっ」

「なにこの人間くさい寝言」

「んっがっぐ」

「……」



「なにこれキモい」



3 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 20:55:43.57 srLrk3Fa0 2/76


「Zzz………うわづうううううううううううううう!!!!!」

「目覚めたか」

「へ?なんで私こんなとこあづううううううううううう!!!!」

「絶賛調理中でござる」

「やめるで候」

「貴重な動物性タンパク質(キリッ」

「やめあづううううううううう!!!!!!」

「早く焼けるがよい」

「いいか、いいか私は神様の使いだ。だからこういう事するとバチ当たるんだぞ」



4 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 20:56:18.64 srLrk3Fa0 3/76



「何の神様?」

「医術だ!別にひれ伏す必要はあっづううううううううううう!!!!!」

「はい 気をつけて焼きます」

「はいじゃないが」

「はい」

「焼くな」



「あっっづううううううううううううううううううやめええええええええ!!!」




5 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 20:56:49.48 srLrk3Fa0 4/76


「死ぬかと思った」

「今日の晩飯が……」

「あのね、神様の使いを食べようとしちゃダメ」

「個人的に医術の神様嫌いなんです」

「……ちょっと傷ついた」

「ごめんなさい」

「ネズミある?」

「へ?」

「ネズミでその暴言を許す」

「あ、はい」


「ネズミうまいwwwwwwwうまいぞーwwwwwwwww」
「なにこれグロい」



6 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 20:57:20.64 srLrk3Fa0 5/76


「ところで、お主どこに向かっておる?」

「西です」

「お、丁度いい。是非一緒に行っていいかな?」

「すいませんペットは……」

「おいやめろ」

「神様の?」

「使い」

「伝書蛇じゃん」

「やめろ」

「神様はエサを渡すときどんな顔してる?」

「幸せそうな顔してた」

「ペットじゃん」

「やめろ、やめろください」

「ここでやめたら男が」

「廃れよ」



7 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 20:57:51.62 srLrk3Fa0 6/76



「大体なんで道端で寝てたの?」

「昼間は元気に歩いてたんだけど……」

「歩……く………っ!?」

「うるさいだまれ」

「はい」

「夜になったらな、急に眠くなって……」

「道のど真ん中で寝てたのか……」

「反省はしていない。後悔はしている」

「いやしろよ」



8 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 20:58:32.72 srLrk3Fa0 7/76


「そういやなんで西に向かってんです?」

「西にな、神託を届けに向かっている」

「なんかあるの?」

「ああ!医術の祝福を受けた子が生まれる!」

「……へぇ」




9 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 20:59:03.32 srLrk3Fa0 8/76



「私はその子に神託を与え、その子は成人したら世界を救う運命なのさ!」

「………へぇ」

「?ノリが悪い奴だな」

「別に、何でもないです。ただ……」

「うん?」

「人一人救えない神様が祝福しても、神託しても、世界は救えないと思うよ」

「なんだよ!それはどういうことだ!!」

「寝る。おやすみなさい」

「私にも分かるように教えろ!おーしーえーろーーーぉおお!!」

「Zzz……」

「………ちぇっ」


10 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 20:59:36.16 srLrk3Fa0 9/76


「起きろ」

「うむ」

「えっ」

「えっ?」

「ここは後5分シチュじゃないの?」

「砂漠は日が昇る前に歩かなきゃ」

「なるほど」

「んじゃ、僕は行くけどついてくるならどうぞ」

「ではではお言葉に甘えて……」

「あぁ、一言いい忘れた」

「うん?」

「今、僕は貴方にこう思ってます」

「うん」

「『焼き殺しちゃえばよかったな』って」

「……そうか」



11 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 21:00:08.02 srLrk3Fa0 10/76


「…ふむ、あともうちょっと歩いたら街かな」

「そういえば、どうして君はこんな砂漠を歩いてるのかな?旅人?」

「……」

「なーんか言えよー。寂しいじゃんかよー」

「………う」

「?」

「隊商」

「へ?キャラバン?」

「そうだよ」

「一人なのにキャラバンって、人間の世界じゃありえないんじゃ?」

「僕は…ひとりでも、キャラバンなんだ」

「ぼっちか?」

「あんまり詮索しないでくれる?正直、不快」

「……すまん」



12 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 21:00:41.83 srLrk3Fa0 11/76


「……」

「……」

「……」

「なんかしゃべろうよ」

「蛇相手にしゃべることなんて無いよ」

「…いい加減にしてほしいな!」

「!?」

「何が気にくわないか知らないけど、理由も話さずに嫌われるなんてまっぴらごめんさ!」

「……」

「医術の神様が嫌いなのは分かった。その使いも嫌いなのは分かった」

「だからといって、私自身を否定しないで欲しい。私は、君とも仲良くしたいんだ!」

「……ごめん」

「すまん、熱くなった。でも、友達から始めさせて欲しい」

「……そうだね」



13 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 21:01:12.59 srLrk3Fa0 12/76


「蛇、あれ見える?」

「おお、街が逆さまに空中に浮いてる!」

「あれが蜃気楼。あれが見えるってことは、街が近いってことなんだ」

「おお行こう!直ぐ行こう!」

「さっきはごめん。大人気なかった」

「うん?もう気にしてないぞ?」

「じゃあ、改めてお願いがある」

「なんだ?」

「……この籠に入って欲しい」

「…」



14 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 21:01:43.45 srLrk3Fa0 13/76


「街が近いってことは」

「うむ」

「人が通る」

「だな」

「人が通るってことは」

「うんうん」

「……危険な動物は駆逐される」

「そりゃそうだ!危ないのはよくない!」

「あなたです」

「えっ?」

「あなたが駆逐対象です」

「えっ」


15 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 21:02:14.47 srLrk3Fa0 14/76



「籠に入るのだ。さぁ……」

「い…いやっ……お願い助けて……っ!」

「ぐへへ……誰も助けなんてこねぇよ…!」

「いやぁぁぁぁ!……ふんっ」

「ぐはぁっ!」

「嫌だってば」

「知らんがな。あとしっぽをムチのように振り回すな」

「乙女の体に触ろうとは無礼」

「乙女(笑)」

「ふんっ」

「がふっ!」



16 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 21:02:45.32 srLrk3Fa0 15/76



「いい加減籠に入ってください」

「籠に入ったら負けかなって思ってる」

「たまには負けるべき……あっ」

「大体私は外に出ていないと……」

「いいから早く……っ!人が来てるんだってば!」

「だ…っ!やめ……そぉいっ!」

「うわらばっ!……ええぇい!」

「うわっ…暗いー狭い―こーわーいーぃい」

「いいから静かに……!」



17 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 21:03:17.23 srLrk3Fa0 16/76



旅人「…おや、こんにちは」

「ここここんにちは」

(やばい、蛇殺されちゃうかも…)

旅人「…?あの街に向かっているんですか?」

「そうです。そうです」

(気づかないで、そのまま気づかないで去ってくれ…!)

旅人「そうですか……しかし隣の美人さんは貴方の嫁さんか恋人さんですか?」

「えっ?」

旅人「いやー、こんな美人と二人旅とは羨ましいです」

「ふふっ……」

「???」

旅人「それじゃ、仲良く旅するんだよ」

「はい……それでは……」




18 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 21:03:48.49 srLrk3Fa0 17/76



「えっ?誰?」

「私だ私」

「蛇?」

「うむ」

「籠は?」

「壊した」

「Nooooooooooooooooo!!」

「泣くでない。ほれ、フトモモをチラっとしてあげるから」

「元ヘビのをチラっとされても……ちょっとおっきした」

「それはそれでドン引きです」

「ならやるな」



20 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 21:04:19.35 srLrk3Fa0 18/76


「しかし、白い服に白い髪、白い肌に赤い目……」

「アルビノなう」

「シリアス中はやめろ。焼くぞ」

「焼くな。悪かったから」

「じゃあ、街に入るときもその格好でお願いします」

「お断りします」

「そこをなんとか……って足が蛇に!」

「君の案と私の気持ちの折衷案を出してみた」

「ラミアじゃん」

「いいだろ?」

「討伐されるぞ」

「マジで」



21 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 21:04:50.04 srLrk3Fa0 19/76


「そういえば、さっきどうしても地面を歩きたいって感じだったね」

「うむ。自分はなるべく地面を歩かなきゃならんのだ」

「なんで?」

「私が歩くとな」

「うむ」

「その道が祝福されるんだ」

「神の使いだから?」

「そう。だから皆のためにも歩かないと」

「ちょっと感動した」

「だろう?お礼は晩ご飯でいい」

「ちょっと失望した」





23 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 21:05:26.53 srLrk3Fa0 20/76


番人「…はい、確かに承認しました。ではどうぞ」

「はい、ではまた」

「君!君!人がたくさんいるぞっ!」

「街だからね」

「あれなんだ!あれあれあれ!」

「大道芸」

「アレ美味そう!食べたい!」

「……」

「あっちになんかあるぞ!行ってみよう!」

「蛇さん、蛇さん」

「なんでしょう」

「君にぴったりのお仕事があるんだ」

「うむ、何でも言うがいい」

「荷物の番をしててくれ」

「」



24 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 21:06:34.69 srLrk3Fa0 21/76


「だが断る」

「これから商売なんだ。ほら、アメをあげるから……」

「あまうまい!」

「じゃあ……ぐぇっ」

「アメごときで留守番をする私ではない」

「わかった!わかったからはやく蛇のしっぽを足に戻して!!」

「分かればいい」

「今日ほど商売が不安な日はない……」





26 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 21:10:20.80 srLrk3Fa0 22/76


「…これいじょうは値下がりできません」

商人「そこをなんとか出来ませんかね」

「無理です」

商人「貴方も人の子でしょう?この品がないと……」

「……なぁ、君、少しはまけてやっても…」

「前に、貴方は隊商の一つを買い叩きましたね?」

商人「あ、あれは質がひどかったから……」

「噂は立っています。そして買い叩く人には値下げしないのが僕のポリシーです」

商人「……くそっ!わかったよ!持ってけよ守銭奴!」

「ありがとうございます。またご贔屓に……」

「……」




28 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 21:14:03.07 srLrk3Fa0 23/76




「儲かった」

「なぁ、一言だけ言わせてくれ」

「なに?」

「なんで君は困っている人を助けてやらないんだ?」

「……」

「君には見損なったよ。神の使いとしてキミと一緒に居るのは恥ずかしい」

「人を救うためには、お金が必要なの」

「!?」

「ごはんを食べさせるのも、薬を飲ませるのも、寝床を与えるのも、全部、全部」

「そ、それは……」

「お金の大事さを知らない人が、人助けを話さないでください」

「う…ぐ……」



29 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 21:18:46.47 srLrk3Fa0 24/76



「……」

「……」

(困ったな、言い過ぎちゃったかも)

「そこの…そこの商人様……慈悲をください……」

「どうした!?何があったんだっ!?」

「娘が…娘が死にそうなんですっ!でも薬が高すぎて……!せめて、せめて好物のリンゴだけでもっ!!」

「…」

「病気だと?ならば私がっ!」

「連れてってください」

「…え?」

「病気なんでしょう?」

「そ、そうですが……」

「君、まさか!?」

「連れてってください」




30 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 21:23:00.70 srLrk3Fa0 25/76


「……ただの過労と、栄養失調です」

「よ、よかった……」

「そ、そうか……よかった」

「滋養強壮の薬は飲ませました。1週間安静にしていれば大丈夫です」

「本当に助かりました。なんとお礼をすればいいのやら……」

「え?お金に決まってるじゃないですか?無料だと思ったんですか?」

「え?」

「え?じゃないです。これだけの金額を払ってください」

「君、何を言ってるんだっ!彼はお金が無いってさっき……」

「ならば僕の言葉を鵜呑みにして連れてこなければいい話」

「それは君が助けるって……!」

「無償で助けるなんて一言も言ってないです。おこがましい」

「……このっ!」

「ぐぉおっ!」


31 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 21:27:14.05 srLrk3Fa0 26/76


「くそっ!一瞬でも信じた私がバカだった!」

「……」

「お金は……何としてでも払います。なので娘だけは……」

「この街の工芸品は、他の街で高値で取引されている」

「……えっ?」

「工芸品を作って、行商に売るといい」

「…え?あ、はい」

「絶対に逃げるとか考えるんじゃないぞ。お金が貯まったら取りに来る」

「はい、この御恩を返すまでは逃げません!」

「……」

(蛇……はいないか。まぁ、仕方ないよね)

(……行くか)


33 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 21:30:13.50 srLrk3Fa0 27/76


「……Zzz」

「なんでまた道端で寝てるの」

「Zzz…むにゃむにゃ……」

「……」

「ここらへんで野宿するのは、もう夜だから」

「別に蛇がきになってるわけじゃない。うん」

「仕方ない…仕方ない……」


「Zzz……んごごっ……神託…神託ゥ……んっがっぐっ」




34 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 21:35:40.29 srLrk3Fa0 28/76




「……はっ!インド人が右に!!」

「寝言なのそれなんなの」

「……また君か、私は君みたいな冷血漢と話をしたくないんだ」

「……」

「商人との取引は大目に見よう。君だって商売だからね。引けない時もある」

「でも、あの貧乏な人への扱いはなんだ!」

「詐欺じゃないか!人を助けて詐欺か!?君は、君ってやつは最低さ!」

「…」

「よらないでくれ。私は君みたいな人があんまり好きじゃないんだ」

「君があんなことをする人だと知っていたら、私は君に声をかけなかったよ」

「人には、施しちゃいけない」

「……えっ?」



36 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 21:40:02.73 srLrk3Fa0 29/76


「施しは、人を堕落させる」

「えっ?」

「借りをつくれ、負い目を与えろ」

「え?え?」

「たとえ取り立てる気がなくても、相手に借りとさせろ」

「な、なん?」

「僕が、一人じゃなかった時に先輩が教えてくれた話」

「つまり、あれは……」

「僕が最低です。君の言うとおりです」

「……」

「でも、せっかくだから君の旅に付きあわせて欲しい」

「なんで?」

「その……友達………だから」

「…」



37 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 21:46:51.21 srLrk3Fa0 30/76




「……ろ」

「…ん?」

「起きろ」

「え…あ……寝ちゃったのか」

「今日も西に向かって行くぞー!」

「一緒に行ってくれるの?」

「……確かに昨日の君の行為はちょっと許せなかった」

「……」

「でも、君は君なりに考えてやってた行為だから、すぐに判断したのは私が悪かったと思う」

「…」


38 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 21:47:22.59 srLrk3Fa0 31/76




「これからも道々、君が悪い事しそうだったら文句言うさ!」

「え?」

「私たちは、友達だからなっ!」

「友達……」

「そう、友達」

「っていうわけで西に行くぞ!ごはんごはん!」

「あ、うん!」



39 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 21:49:56.37 srLrk3Fa0 32/76






「……お、川が流れているな」

「この砂漠を横断している川だね。でもこの川は…」

「水っ!水だーっ!」

「肉食性の……」

「ぐわーっ!なんだこのピラニアはーっ!!」

「魚が…」

「食われっ食われるぅうっ!!」

「すいませーん、綱かしてくださーい」




41 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 21:54:10.66 srLrk3Fa0 33/76


「壮絶な魚類と爬虫類の種族間戦争だった……」

「圧倒的に爬虫類が不利だったね」

「戦いは数だよ兄貴」

「蛇は量産されたら駆逐されるぞ」

「やっぱり質だよ兄貴」

「おk」

「ところで何を待ってるんだ?」

「そろそろこの川の名物が来るから、待ってるの」

「名物?」

「うん、川がね、登って来る」

「え?」

「見れば分かるよ……そろそろ来る」




42 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 21:59:19.87 srLrk3Fa0 34/76



「お…おおぉ!?」

「川が、川が逆流してる!!」

「おー」

「なんか船が来てるぞー!」

「逆流に合わせて船が出てるの。川上と川下をつないでるらしいよ」

「凄い!すごいすごい!ゴイスー」

「なんでいきなり業界用語」

「凄さをアピールしたかった。反省はしていない」

「……」




43 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 22:04:15.36 srLrk3Fa0 35/76


「そろそろ逆流が終わるかな……」

「おわっ…!魚だらけだ!」

「この逆流に乗って、魚が産卵しに来てるんだ」

「おー、実に壮観」

「これが引いたら、渡し舟に乗って西に行く」

「そういえば、この近くに集落があるのに行商には行かないのな」

「ここの人達は、街が近いから困ってない」

「?」

「次の村で、行商する」

「お、おう!」




45 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 22:14:28.73 srLrk3Fa0 36/76



「……ついた」

村長「おお、これはこれは行商人様。いつも本当に有難うございます」

「今日も卸にきた。交易品は?」

村長「こちらでございます」

「なら、これをこのくらいの値段として……うん、今日は金貨は無しでいいです」

村長「ありがとうございます。貴方様のおかげで私たちの村は助かっています」

「……」

「…」


46 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 22:15:00.02 srLrk3Fa0 37/76



「君君、こんな貧乏な村からもお金を取るのかい?

「それが、僕の商売だから」

「酷いんじゃないのか?向こうからの品は結構量があるぞ」

「それだけ価値がある」

「ホントに君は酷いやつだな!なら私の鱗をやるから少しは負けてあげなよ!」

「……」

「もう!君はもっと私の話を聞くべきだ!」

「明日、鱗の価値の分だけ置いてく」

「お、聞いてたのか」

「…まぁね」



47 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 22:15:36.97 srLrk3Fa0 38/76



「うむ、良い事したあとはカエルがうまい!」

村長「あの、もしもし?」

「うむ、良い事したあとは村長がうまい!」

村長「」

「し、しまったー!」




村長「死ぬかと思いました」
「…面目ない」



48 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 22:20:52.73 srLrk3Fa0 39/76


「あの、どうか喋ってる蛇を見ても駆逐しないでください」

村長「行商さんのペットにそんなことしませんよ。安心してください」

「ペット……」

村長「そんなことより、ペットがしゃべると思いませんでした」

「うむ!褒め称えるがいい!別に崇拝まではしなくてもよいぞっ!」

村長「そんなことより、行商さんが交易品を置いて行くと言われたんですが、心当たりありますか?」

「そんなこと……」

村長「こんなこと初めてなので、どうすればいいのか……」

「大丈夫!私の鱗で代金を払っただけだ!だから安心しておくがいい!」

村長「えっ?」

「えっ」

村長「ただでさえ行商さんは赤字なのに、行商さん大丈夫なんでしょうかね」

「えっ?」

村長「えっ」




50 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 22:30:18.61 srLrk3Fa0 40/76


村長「……私たちの村は、羊毛だけが取り柄でして、貧しい生活を送っております」

「う…うむ」

村長「貧しいがゆえに薬がなく、病気にかかるともはや自然治癒以外に治るすべがほぼ無いのです」

「…」

村長「しかしあの行商さんは、交易路から若干外れたこの村まで来て、薬を格安で卸してくれるのです」

「し、しかし薬といっても、どう考えても高すぎじゃ…」

村長「あの人が持ってきてくれている薬は、ひんがしの国の薬です」

「えっ」

村長「遠い、遠い異国の薬を行商さんは安く売ってくれているのです。」

「……」

村長「ペットさん、行商さんに、あの交易品も持って行ってもらうように頼めますか?」

「あ、あう」

村長「そしてまた、行商さんと蛇さんがこの村へ来てくれるようお願いします。」

「……はい」



53 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 22:37:38.71 srLrk3Fa0 41/76


「水は補充できた。食料はちょっと無理。衣類は……」

「うー」

「おかえりなさい」

「あのな…」

「うん」

「言い過ぎた。ごめんなさい」

「?」

「貴重なものを格安で売ってるって聞いた」

「ひんがしの国だとあんまり貴重じゃなかった。っていうか、僕の扱ってる交易品を知っちゃったんだ」

「薬がメインだとは……」

「僕は、一人じゃなかった時も、一人の時も薬を扱ってました」

「だから……僕だけになりました」

「えっ?」

「薬は大事だねって話」

「そ、そうだな!薬は大事だと思う!医術の神様もそう言ってる!」



55 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 22:44:13.73 srLrk3Fa0 42/76



「そうだね、もう、寝よう」

「あ……うん……」




「蛇、ねぇ蛇」

「……ん?」

「喩え話、してもいいかな」

「どうぞ」

「ありがとう」

「あるところに、けっこう大きめのキャラバンがありました」

「そのキャラバンは砂漠を横断して、あちこちにモノを流通させていました」

「お金はちょっと稼ぎが悪いけど、お客さんから信用されているキャラバンでした」

「そんなキャラバンは、とある村に交易のために寄ることになりました」



56 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 22:48:48.15 srLrk3Fa0 43/76


「なんかいいキャラバンっぽいな」

「ありがとう、そう言われると心が安らぐ」

「それで、その村に立ち寄ったキャラバンは、交易品をさばきました」

「村は咳をしている人がなぜか多いですが、そんなことは気にできません」

「でも、急にキャラバンの一人が咳き込みました」

「薬担当の人は、見習いと一緒にその人を看病しました」

「しかし、時間が経つと別の人が咳き込み始めました」

「おい、まさかそれって……」

「咳き込む人はドンドンとキャラバンに増えていきます」

「そのうち村から死者が出ました。原因は咳き込む病です」

「……疫病」




57 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 22:56:38.28 srLrk3Fa0 44/76



「さらに咳き込む人は多くなり、キャラバンの半数以上、村の全員が咳き込むことになりました」

「キャラバンのリーダーの人は決断しました」

「発症した奴はここにいろ、発症してないやつは人気のないところで1ヶ月くらい暮らせと」

「そして1ヶ月後、ここに白い旗が上がっていれば治療ができたと、上がっていなければここに近寄ってはいけないと」

「発症してない人は各々洞窟にこもり、1ヶ月を過ごしました。決して誰にも合わないように」

「やがて約束の1ヶ月後、発症していない人達は村の前に集まりました」

「集まったのは、半数。残り半数は来ませんでした」

「そして村には……」

「旗が上がってませんでした」

「……」

「そんな状態でさ、逃げた奴の一人に薬売りの見習いがいたらしいんだ」

「薬すら満足に使えないような薬売りってさ、要らないよね」

「そう、思わない?」




60 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 23:02:00.15 srLrk3Fa0 45/76




「その薬売り見習いは……がんばったんじゃ…」

「がんばっても、人が救えないんじゃ意味が無いよ」

「救おうとしていたんだろう!?なら、その事くらい認めてやっても……!」

「認めれたら…どんなにいいか……」

「許してやろうよ!頑張ったんだ!仕方ないんだ!」

「許せないよ!許せないさ!絶対に!仕方なくない!頑張ったからなんだっていうんだよ!」

「……」

「好きだった人を見殺しにした医術の神様を……助けれなかった自分を……」

「自分を許せないんだよっ!!」



61 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 23:07:35.44 srLrk3Fa0 46/76


「…君の事だったのか」

「……そうだよ。僕が腰抜けさ」

「最後まで、諦めなかったんだろう?ならそれは……」

「僕の先輩だった薬売りの人は、なんでも出来て、何でも知ってる、心の優しいステキな人だった」

「…」

「あの時も、男の僕よりも!誰よりもずっと働いてて!」

「結局!あの人まで発症してしまってっ……!」

「君…」

「僕が発症すればよかったのに、今も抜け抜けと生きてて……!」

「僕は…僕は最低だ……!」

「君は、その人のことが……」

「うっ……ぐぅっ…」

「大好きだったんだね」




62 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 23:15:22.25 srLrk3Fa0 47/76


「あの人を助けたかった……あの人の力に……」

「君は……いや、君は、最低だ」

「!?」

「君の今の姿、見てご覧よ。見窄らしいったらありゃしないさ」

「そうだよだかr」

「五月蝿いな!そんな腰抜けの話なんて聞きたくないな!」

「ぐっ……」

「君の今の姿を見て、死んだその人が喜ぶのか?」

「一人で砂漠を旅して、後悔して、過去を見てる君を喜ぶ人だったのか?」

「違う……」

「違うなら、違うなら!」

「もう泣くな!」



63 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 23:21:49.18 srLrk3Fa0 48/76



「もう、後悔するな、過去を振り返っちゃだめだ」

「……」

「辛いなら私が聞こう。悲しいなら一緒に居よう。苦しいなら一緒に立ち向かおう」

「蛇…」

「私は君と友達だ。友達なら、困ってる時は助けるさ」

「ありがとう、少し……心が楽になった」

「よしよし、ほれほれ」

「うひゃうっ!」

「ヘビテイルのハグは心が落ち着くだろう?」

「これ、捕食のポーズじゃない?」

「細かいことは気にしない」

「でも、落ち着いてきた」

「うむ、今日はこのままで居てやろう」

「それはちょっと困る」




64 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 23:26:35.11 srLrk3Fa0 49/76





「Zzz……」

「おはよう、蛇」

「おぅ……おう!?」

「?」

「まさか君に起こされるとは……」

「もう出発するから」

「よっし!西に行こう!」

「その前に、3日だけ、僕に時間をくれない?」

「うん?」

「寄りたいところがあるんだ」

「どこ?」

「皆が、いたところ」



65 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 23:31:23.61 srLrk3Fa0 50/76




「間にあうかな……間にあうかな……」

「ごめん、つきあわせちゃって」

「…問題ない!友達だしな!」

「一人だと、どうしても踏ん切りがつかなくて……」

「私と一緒ならだいじょーぶ!お前に付き合う」

「うん、ありがとう……そろそろ見えてくるはず」

「…まさか、あの廃墟か?」

「…そうだね」



66 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 23:35:07.49 srLrk3Fa0 51/76




「…リーダー、先輩、遅くなりました」

「どれ、私も変身して……」

「皆の亡骸を、ちゃんと土に埋めます。安心して寝てください」

「穴は……これくらいか」

「大丈夫?」

「そうでもない」

「つまり?」

「肉体労働は苦手ってことだよ言わせんな恥ずかしい」



67 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 23:38:10.11 srLrk3Fa0 52/76



「やっと、全部弔った……」

「いい汗かいたな!」

「途中からずっと休んでたじゃないか」

「いい汗書いたなっ!!」

「……」

「でも、これで……やっと……」

「ゲホッ……ゲホッ……」

「えっ?えっ!?」

「ん?」





69 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 23:44:53.61 srLrk3Fa0 53/76


捨て子「ゲホッ…うっ」

「おい君、ここらにはもう人は居ないんじゃなかったのか?」

「う、うん……ねぇ、どうしてここにいるの?お父さんお母さんは?」

捨て子「お父さんと……お母さんは……どっかいった…ッゲホッ!ゲホッ!」

「え、まさかこの症状は」

捨て子「ゲホゲホが止まらなくて……お母さん、置いてった……ゲホッ!うぇっ」

「おい!大丈夫かボウヤ!」

「今テント張る!早く何とかしないと!」




70 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 23:49:00.97 srLrk3Fa0 54/76



「この症状は……疫病だ」

「……」

「蛇……神様の使いは、この子を助けられないのか?」

「今の医学で出来ないことを、私はしちゃいけないんだ……」

「神様の使いは、奇跡もダメなのかよ!」

「……すまん」

「……もういい、僕が何とかする」

「え?」

「僕だって、ひんがしの国まで薬を調達しにいったんだ。あの時とは違うんだ!」

「コイツの命は、絶対に僕が救うんだ!」




72 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 23:52:03.68 srLrk3Fa0 55/76



「この薬と、この薬を調合して……緑になれば…」

「…くそっ!また調合失敗か!」

捨て子「う……ヒュー……ヒュー…」

「息が弱々しい、早く完成させないと……」


「くそっ!なにが違うっていうんだ!この調合法で間違ってないはずだろっ!」

「……」

「神様……」




73 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 23:55:26.03 srLrk3Fa0 56/76



「…」

「……」

「………」

「できた…やっと……」

捨て子「……ヒュー………」

「飲め。飲んでくれ……頼む」

捨て子「んっ……むっ…」

「これで、安静にしてれば改善されるはずだ」

「…神様、神様お願いです」

「僕に……奇跡をください……お願いです」




74 : 以下、名... - 2011/08/07(日) 23:59:29.12 srLrk3Fa0 57/76



捨て子「………」

「あれから5時間……か」

捨て子「……ッ!!」

「おい!どうした!?」

捨て子「……っがふっ!ゲホッ!ゲホッ!」

「そ、そんな……そんなまさか………」

捨て子「おにいさっ……くるしっ……ゲホッ!」

「い、いやだ、また人が死ぬなんて……いやだっ!」


「君……君、ちょっといいかな?」

「少し外に出ててほしい」



76 : 以下、名... - 2011/08/08(月) 00:03:06.11 BbsN1iET0 58/76


「…今はそんなことやってる場合じゃ」

「いいから、外に」

「な、なんだよ。僕は外に用事なんて……」

「君を見てて、君ならきっとやってくれると思った」

「へ?」

「あの子は任せてくれ。私がなんとかする」

「え?」

「だから、あとで私と話そう」

「あ……うん」

「いいか!絶対だぞ!」



捨て子「…ゲホッ……ぜひっ…ぜひっ…」

「苦しいか?今助けてやるから」

「少しだけ、待ってて欲しい」




77 : 以下、名... - 2011/08/08(月) 00:07:49.85 BbsN1iET0 59/76


―――
――


「あの子は、寝静まったか?」

「うん、蛇が部屋に入った後急に発作がなくなった」

「そうか、よかった」

「……ところで、話って何?」

「あのな、ちょっと言いづらいんだけど」

「うん」

「私の代わりに神託を届けてくれないか?」

「えっ」

「まぁ聞け」



78 : 以下、名... - 2011/08/08(月) 00:08:38.13 BbsN1iET0 60/76



「実はさっき、全部使いきっちゃった」

「何を?」

「神様のちから」

「…そう」

「だから、私はここから先にはいけない」

「……そう」



80 : 以下、名... - 2011/08/08(月) 00:13:36.77 BbsN1iET0 61/76


「もっと旅したかったなー」

「そうだね」

「こっちの世界は面白いことばっかりで、ほんと楽しかった」

「そう…だね」

「もっと、君と旅をしたかったな」

「……」

「君と一緒に西の果てまで行ってみたかった」

「君と一緒に、南の端まで歩きたかった」

「君と一緒に、北の極限まで挑みたかった」

「君と一緒に…ひんがしの国を見てみたかった」

「蛇、あのさ」

「まぁ、神様は西の神託までしか行かせてくれないから、流石に怒られるけどねー」

「…」



83 : 以下、名... - 2011/08/08(月) 00:23:31.70 BbsN1iET0 62/76



「僕も、蛇と一緒で楽しかった」

「久しぶりに、誰かと旅をする楽しさを思い出した。」

「久しぶりに、誰かと歩くうれしさを思い出した」

「久しぶりに、誰かと一緒に分かち合う苦しさを思い出した。」

「蛇のおかげで、僕は思い出した。思い出せたよ」

「…そっか、そっかそっか!その感覚大事にするんだぞ!」

「うん……僕はもう、忘れない」



84 : 以下、名... - 2011/08/08(月) 00:26:07.55 BbsN1iET0 63/76


「ところで、神託の相手って誰?」

「ここからさらに3ヶ月くらい歩いた先の、荒屋」

「分かった。絶対に届けるよ」

「あと、そいつにあったら顔を覚えておくがいいー」

「……なんで?」

「なんとその子が、疫病を治す薬を作っちゃうからさ」

「……っ!!!」

「お?」

「そっか……薬が……そっか……グスッ」

「あ、あれ?泣いちゃった?」

「泣いてなんか……いないさ。だって、僕は今こんなに…」

「こんなに…嬉しいんだから…」

「…うむ」



86 : 以下、名... - 2011/08/08(月) 00:30:13.48 BbsN1iET0 64/76



「なぁ、蛇。僕はキャラバンを作るよ」

「お、いい心がけだ!」

「僕はもう、後ろだけを見ないで、ちゃんと前を向いて行こうと思う」

「その為には、いい加減ひとりだけのキャラバンは卒業しないと、ね」

「若者は未来を見つめねばな……ってあぁ」

「うん?」

「そろそろ時間だ」

「…そっか」




87 : 以下、名... - 2011/08/08(月) 00:35:31.21 BbsN1iET0 65/76



「この杖、運命の子に渡してあげてね」

「分かった」

「あと、一人でもなくんじゃないぞ!おねーさんとの約束だ!」

「お姉さん…分かった」

「あとな」

「うん」

「……泣くな」

「……」

「また、いつかどこかで会えるから、泣くな」

「泣いてない、僕の願いがかなったんだ。疫病が消えるんだ。泣いてなんか、いない。」

「なら、笑顔で送ってくれ」

「任せろ!とびっきりの笑顔で送る!」




88 : 以下、名... - 2011/08/08(月) 00:38:05.22 BbsN1iET0 66/76




「またな、素敵な行商人さん」



「またね、綺麗な神の使いさん」




「また、またいつか……っ!……ッ!





「………」


「僕も行こう。僕の、道を……」




89 : 以下、名... - 2011/08/08(月) 00:41:13.37 BbsN1iET0 67/76


――――
―――
――


「―はい、どなた?」

「……」

「うぉわっ!不審者!」

「違います」

「どなたです?」

「神様から、これをあずかりました」

「こ、これは立派な杖……」

「お子さんに、渡してください」

「は、はぁ……」

「では、お子さんが大きくなったら…」

「……また会いましょう」




91 : 以下、名... - 2011/08/08(月) 00:49:37.53 BbsN1iET0 68/76


――

『疫病、ついに撲滅!』
『疫病の父、「運命」氏疫病について語る!』
『「運命」氏、「捨子」夫人との間に第一子がついに誕生!』

「…」

秘書「またその新聞ッスか?もう何年も前の新聞なのによく飽きずに見てるッスね」

「私の願いがかなった瞬間なんだ。何度でも見るさ」

秘書「もう疫病なんて流行んないッスよ。今の時代はシオコショーが大流行ッス!」

「そうだな、もう……流行ることはない…な」

秘書「んなことより、明日養子の捨子さんが来るんじゃないッスか?準備しなくてもいいんスか?」

「もう準備は終わってるさ。明日を静かに待つだけだ」

秘書「おっ!リョーカイッス!では提示なので愛しの酒場娘ちゃんにアタックしてきますね!」

「ふふっ……うまくいけばいいな」

秘書「へっへっへ、結婚式はちゃーんと呼びますよ!仲人として」

秘書「んじゃまた明日~!」

「………」



93 : 以下、名... - 2011/08/08(月) 00:53:37.82 BbsN1iET0 69/76


「あれからもう数十年か……」

「捨子を子供に迎えた、運命が医学を目指した、二人が、結婚した」

「……色々なことがあったな」

「捨子ももう、キャラバンを率いていけるだろう。私がいなくても」

「……明日が来る前に行くか」





「――けろ!――っい!」

「……うん?」



94 : 以下、名... - 2011/08/08(月) 00:55:53.38 BbsN1iET0 70/76



「中にいるのはわかっている!抵抗せずに出てこい!」

「な、なんだ?」

「せいっ」

「ぐへぁっ!」

「し、しまった!」



「お前……蛇…蛇じゃないか……っ!」


「君!元気だった?」




95 : 以下、名... - 2011/08/08(月) 00:59:37.57 BbsN1iET0 71/76


「元気だったも何も、あれから数十年経てば元気もなくなるさ」

「まぁまぁ、神様がお暇をくれてさ!君と旅をすることができるようになったんだ」

「おお、それはめでたい……んだけどね」

「おや?もう旅行の荷詰めは終わってるじゃないか」

「これは、私……いや、僕の一人旅用の荷物なんだ」

「つれないを言うもんじゃない。私も是非ご一緒したい」

「……あのね、言いたくないんだが」

「うん」

「僕はもう死ぬんだ」




96 : 以下、名... - 2011/08/08(月) 01:03:34.53 BbsN1iET0 72/76


「うん、で?」

「あれ?いや、僕は死ぬから、一人遠くひっそりと土に還る予定なんだけど」

「それが、私と一緒にいけない理由?」

「うむ」

「ふんっ」

「うわらばっ!」

「いい?一緒にいくといったんだ。僕は君を迎えに来たんだ。」

「お…おう…」

「なら、一緒に行くってのが筋だろう?」

「何故だ」

「君が好きだからさ」

「……ッ!」




97 : 以下、名... - 2011/08/08(月) 01:08:14.91 BbsN1iET0 73/76


「いやぁ、長い間離れてたら私の気持ちに気づいちゃってさ……」

「僕はもう、体がボロボロで遠くに行けないんだ」

「うん?」

「だからもう、僕のことは忘れて違う人のところへ行くといい」

「……まぁ、君は一旦自分の体を見て見なよ」

「へ?」

「年取ってる?ほら、これ鏡だけど」

「え……あれ?」

「あと、後ろを見て見なよ」

「あれ、安らかな僕がいる……」

「で、なにか言うことは?」

「ありません」



98 : 以下、名... - 2011/08/08(月) 01:13:09.92 BbsN1iET0 74/76




「さて、どこに行こうか!?北の流氷めぐりか?

  それとも南の大河を見に行こうか。いやいや西の大海原でもいいな。それともひんがしの黄金の国でも……」

「…うん、どこでもいい、どこかに行こう」


「私も、実はどこでもいいんだ。君と一緒なら」



「……行こうか。僕の大好きな蛇さん」

「ああ!ずっとずっと、一緒に旅をしよう。私の好きな行商人さん」






end


99 : ◆STwbwk2UaU - 2011/08/08(月) 01:13:54.14 BbsN1iET0 75/76


長かった。
読んでくれた人乙です
好きなように書けるって素晴らしい


104 : 以下、名... - 2011/08/08(月) 01:15:45.15 BbsN1iET0 76/76


あとこれ、過去にここで書いたの置いとく

竜王「お前の嫁になってやらない事も無い」
http://ayamevip.com/archives/45291844.html


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