魔王(♀)「え?」
側近「しかしご安心ください。奴は168天皇の中でも最弱でしたから」
側近「勇者一行は、次に戦うであろう168天皇の一人、大ガラスが必ずや」
魔王(♀)「え、ちょいちょい」
側近「え?なんですか」
魔王(♀)「え、いやいやあの、あれなんか……、あれ?」
魔王(♀)「多くない?幹部?」
元スレ
魔王(♀)「くくく…、勇者一行の様子はどうだ?」 側近「最近、168天皇のひとり、一角ウサギが倒されたところです」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1562421902/
魔王(♀)「昔、地上を支配してた幹部クラスって、四つの大陸をそれぞれ支配する四天王だけだったような」
側近「はあ……」
魔王(♀)「ええ、何そのため息……」
側近「まあ、魔王様は先代から最近、魔王の座を引き継いだから知らないかもですけど」
側近「今の魔王軍は、歴代の魔王様にずっと仕えつづけてる魔物がいっぱいいまして、高齢化が進んでるんですよね」
側近「そういう方たちをいつまでも出世もさせず、フィールド勤務させるわけにいきませんから」
側近「そういう人たちを一気に幹部クラスまで地位をあげたんすよ、最近」
魔王(♀)「ええ…」
魔王(♀)「いやそれまずいでしょ、168天皇って、そんなに幹部いたって地上って大きい大陸4つしかないのに管轄するエリアどうすんのよ」
側近「いやだから、苦労しましたよ。4つの大陸にあるフィールドやダンジョンを細かく168等分してそれぞれに幹部を支配者として配置してですね、ほらこの地図にその区割りが」
魔王(♀)「細かっ!なにこれ、細かすぎてわかんないじゃん!」
魔王(♀)「あ、それに、そんなにたくさん魔物を一気に幹部級に引き上げたら元の四天皇だっていい気がしないんじゃあ」
側近「ああ、そうなんですよ。元の四天王の方、すねちゃったみたいで最近音信普通で……」
魔王(♀)「え、お前バカなん?」
魔王(♀)「下の連中の地位を四天王クラスにあげるんだったら、元の四天王の地位だって昇格させないと…、組織のピラミッド構造をちゃんと整えないと」
側近「はいはいそれも言うと思いましたよ」ハア
魔王(♀)「(え、なんなんコイツの態度…、むかつくんだけど…)」
側近「けど、考えてみてくださいよ。四天王より上のポジションなんて、魔王城勤務になるでしょうけど…、もうないですから……、トップが魔王様でしょ?その下のNo.2が私で側近のポジションも埋まってるし…」
魔王(♀)「え、じゃあ……、元の四天王をアンタの地位に昇格させて、側近の人数を増やせば」
側近「そんなん駄目に決まってんでしょうがっ!!」
魔王(♀)「!?」
側近「魔王さまの世話するのは私の役割でしょうがっ!四天王ごときにその座は譲れませんからっ!とにかく側近は1人で間に合ってますからっ!」
魔王(♀)「四天王を168天皇にしといてよくそんな口がたたけるわねっ! っていうか、そんな下っ端モンスター連中を一気に幹部クラスにして、今、普通のフィールドとかダンジョンにいる魔物はどうなってんのよっ!」
側近「いやまあ、その辺のポジションの魔物は昇格させて、ほとんどいなくなったんで…」
側近「今は勇者一行がフィールドとかダンジョン歩いててもエンカウントほとんどしない感じですかね」
魔王(♀)「お前のそういう重要なことシレっというとこ、ホントムカつくんだけど…」
魔王(♀)「そんな幹部クラスが蔓延したって、下っ端魔物がいなかったら、組織としてのピラミッド構造が成り立たないじゃない!」
側近「けど、最近魔王軍に入ってくれる若い魔物が全然いなくて……、魔王軍って3Kのイメージがありますから」
側近「(魔王様が)きつい、(魔王軍の策略が)きたない、(勇者が)危険、っていう魔王軍のイメージのせいで新人の魔物が入ってこないんですよね。……その辺のイメージを改善しないことにはなかなか……」
魔王(♀)「その3Kとかいうの初めて聞いたんだけど…、特に(魔王様が)きつい、ってどういうこと……?私の何がきついの…?」
側近「いや、結構部下とかにきつく当たることあるじゃないですか」
魔王(♀)「ええ、そんなん……」
魔王(♀)「とにかく、このままじゃまずい!魔王軍の組織改革にのりださないとっ!」
組織「組織改革って……、けどどうすれば……」
魔王(♀)「そうねえ、まずは……」
魔王軍の健全な組織体制を整えるべく、魔王は奮闘した。
まず、ピラミッドの要となる下っ端モンスターを大量に増やすため、3Kのイメージがつきまとう魔王軍の職場環境を改善し、若い新人の魔物が入りたいと思うような職場作りをめざした。
魔王(♀)「いいですか、今日から魔王軍の勤務は9:00~17:00を原則とします! 夜間にフィールドやダンジョンの徘徊をする必要はありませんっ。日中だけの勤務を原則としますっ」
魔王(♀)「勇者と戦うことで命を落とす危険性に不安を感じる人もいるかもしれませんが、大丈夫っ!いざというときは、逃げればいいんですっ」
魔王(♀)「大丈夫っ!メタル系のモンスターは昔から逃げてばっかだしっ! フィールドで勇者にエンカウントしても、ヤバいと思ったら逃げましょう」
魔王(♀)「また、ボスクラスまで昇進した魔物であったも、命の危険性を感じたら逃亡を許可しますっ!」
魔王(♀)「皆さんっ、魔王軍は決してキツイ職場ではありませんからっ! この演説に興味をもった若い魔物の方もどんどん入社してくださいねっ」
………
魔王(♀)「ふう……」
側近「お疲れ様です、魔王様。若い魔物を中心にSNSとかですっごい話題になってます!」
魔王(♀)「ほ、ほんとに!?」
側近「ええ、魔王様も可愛いいし、優しそうだし、ちょろくてすぐヤレそう、とかウェーイたちに人気です」
魔王(♀)「くっそ鼻につくけど仕方ないか……」
魔王の演説はSNSで話題となり、若いモンスターたちが大量に魔王軍に配属することになった……
魔王(♀)「3Kを払拭して、若い魔物は大量にいれたけどやっぱ幹部が多いわ」
魔王(♀)「やっぱり幹部は元も四天王にまかせて、あとの164人は全員フィールドの魔物に格下げしましょう」
側近「え……、けど降格したら連中、すねるんじゃあ」
魔王(♀)「大丈夫、その連中は、ベテランのフィールドモンスターとして新しく入った若い魔物の教育係にあたらせましょう」
魔王(♀)「若いモンスターを部下っぽい感じで割り振ることで、疑似的に下っ端感を払拭するって寸法よ、、まあ、実際の地位は同格なんだけど」
側近「はあ……」
魔王の計らいにより、魔王軍は、魔王(1人)→側近(1人)→四天王(4人)→ベテラン魔物(164人)→フィールド魔物(新人)という概ねピラミッド型の組織への再編に成功した……
魔王(♀)「魔王軍の再編も終わったし、ここから改めて勇者一行との闘いを始めるわよ……」
魔王(♀)「側近っ」
側近「はっ!」
魔王(♀)「くくく……、勇者一行の様子はどうだ…?」
側近「ええと、今、目の前に来てますけど」
魔王(♀)「え?」
戦士「とうとうここまで来たぞっ!」
魔法使い「これが最後の戦いじゃっ!」
武道家「手加減しないぞっ!」
勇者「魔王覚悟っ」
魔王(♀)「え……?ちょいちょい」
勇者「え?な、なんだっ!」
魔王(♀)「え、いやいやあの、あれなんか……、あれ?」
魔王(♀)「早くない?私のとこ来るの?」
勇者「は、何言ってるんだっ!お前の部下なんて全然手ごわくなかったぜっ」
戦士「フィールドに急に多くなった見慣れないモンスターたちは、ダメージ与えたらすぐ逃走するしっ!」
武道家「強敵ないそうなダンジョンや塔も、早朝や夕方以降は、魔物は誰もいないしっ!」
魔法使い「四天王とかも無視してきたわいっ!ふひひっ!」
勇者「正直楽勝だったぜっ!」
側近「ふっ」
魔王(♀)「」
勇者「そういうわけだから、魔王覚悟っ」
魔王(♀)「あ、ちょいちょい、ちょ、ほんとごめんっ、ちなみにお前ら、レベルはいくつなん?」
勇者「レベルだと…15だっ」
戦士「13だぜっ!」
武道家「9だっ」
魔法使い「7じゃいっ」
側近「ふふっ」
魔王(♀)「」
側近「魔王再編も整ったし…キリッ、とか言ってたのに…ふふっ」
魔王(♀)「ぐぬっ……///」
勇者「さっきからナニを話してんだっ!もういいだろ魔王覚悟っ!」
戦士・武道家・魔法使い「覚悟っ!」
勇者「あ、けど、ちなみにお前のレベルはいくつだっ、魔王っ!」
魔王(♀)「1600だよっ!!」
ぐしゃあ!!
それから
側近「勇者一行、とりあえず始まりの街の教会で蘇生されたみたいですわ」
魔王(♀)「そう……、けど失敗したわ。まさかレベル10やそこらで私の元までたどりつくなんて……」
魔王(♀)「組織のピラミッド構造を整えることに注力しすぎて、勇者の冒険にほどよい難易度を与える視点に欠けていたわ……」
側近「まあ、勤務時間9時~17時はないですわ、9時~17時は、ふふふ」
魔王(♀)「ぐぬぬ……!!」
魔王(♀)「けどまあ、今回の一件を踏まえ、魔王軍の方針を路線変更するわっ! まず、夜勤をいれたシフト制にするでしょ…?、それから、ええっと」
側近「あ、ちょいちょい。その前にちょっといいですか、魔王様?」
魔王(♀)「なに?」
側近「実は、この間魔王様が瞬殺した勇者一行なんですけど……、魔王様とのレベルの違いにやる気なくちゃったみたいで…」
魔王(♀)「え?」
側近「なんか蘇生された後も始まりの街から出ないで、ニートみたいな暮らししてるみたいで…。しかも今回の一件で魔王様の実力も、他の勇者候補の冒険者の間でうわさになってるみたいで……」
側近「今、人間の間では深刻な冒険者不足なんですって」
魔王(♀)「へ、へえ……」
側近「………」
魔王(♀)「…………」
側近「魔王様、これ魔王軍としてどういう方針で人間側のやる気をださせれば…」
魔王(♀)「いや知らんわそんなもんっ!!」
おしまい