ロリ「……」
女騎士「生き残りか!? 家族はどうした?」
ロリ「……やけた」
女騎士「っ、すまない。私たちがもう少し早く来ていれば」
ロリ「……」
女騎士「おいで、私たちと行こう」
ロリ「……」
女騎士「嫌なのか? ここにいても……もう、ここには暮らせないぞ。さあ」
ロリ「おはか」
女騎士「ああ、そうか。そうだな、作ってあげないとな……」
元スレ
ロリ「お姉ちゃん、あのね・・・ママって呼んでもいい?」女騎士(33)「ママか、ああいいぞ。私で良ければ」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1564145934/
ロリ「きしさま、おかえりなさい」
女騎士「ああ、ただいま。ふぅ」
ロリ「……」
女騎士「何度も言っただろう? ここは君の家だ、もっと寛いでいいんだ」
ロリ「きしさま」
女騎士「姉さん、だ」
ロリ「……おねえちゃん」
女騎士「どうした? 何かして遊ぶか?」
ロリ「おねえちゃん、おなかすいた」
女騎士「……はっはっは! そうだな、夕飯にしよう! 今夜は西の通りのバルに行こう、あそこは豚が美味い」
ロリ「お、おねえちゃん」
女騎士「ん? ははあ……遠慮することなんかない、何か食べたいものがあるんだろう?」
ロリ「……」
女騎士「はは、首を振ってばかりでは分からないぞ。そら、何が食べたい?」
ロリ「お、おねえちゃんと、ごはん」
女騎士「うん、一緒に食べような」
ロリ「んんー……」
女騎士「何だ何だ、違うのか?」
ロリ「いっしょに、あの……ふたりで、たべたいの」
女騎士「うん、二人で食べよう。さ、君も外套を」
ロリ「んんー!」
女騎士「あ、おい、そんなに引っ張って、どう……あー、二人だけで?」
ロリ「……えへへ!」
女騎士「そうか、なるほどな!……そうか、なるほどな」
ロリ「うぅ」
女騎士「ど、どうだ?」
ロリ「おいしくない」
女騎士「はっはっは!」
ロリ「うぅ……」
女騎士「はぁ……あ、おい。もう食べなくていい、やっぱり外へ」
ロリ「あぐ、う、むぐう」
女騎士「お、お腹壊すぞ?」
ロリ「むぐ……おねえちゃんの、りょうりだもん。はむ」
女騎士「……」
ロリ「あむ、もぐっ」
女騎士「はむ、ムシャ……もぐもぐ、はぐっ」
ロリ「おねえちゃん」
女騎士「んぐ……ん?」
ロリ「ありがとー」
女騎士「どういたしまして!」
騎士団長「どうかね?」
女騎士「はい、毎日スクスクと育っています。火傷も日に日に薄くなってきて、この分なら目立つ跡にはならないかと」
騎士団長「……征伐の話だ」
女騎士「は、申し訳ありません、つい」
騎士団長「何時頃になる?」
女騎士「3年あればどうにか、と言った所でしょうか」
騎士団長「それ以上は、難しいか」
女騎士「古参層の減った今、育成にまで回せる手は限られていますので」
騎士団長「いつ目覚めるか分からんが、この10年で確実に来る。時間は限られておるのだ」
女騎士「はい!」
騎士団長「頼むぞ、紅眼戦斧の乙女」
女騎士「……若いのに広めてるの、団長ですか?」
騎士団長「はてな?」
ロリ「えいっ、やあ!」
女騎士「はは、勇ましいな」
ロリ「いさまし?」
女騎士「強そうってことだ」
ロリ「えへへー」
女騎士「でも君は刃なんて持たなくていい。盾は刃を捨てる為、だ」
ロリ「?」
女騎士「私の居た家の家訓でな……いや、もう私とは関係のない人たちだがな、はははは」
ロリ「たてはやえばを」
女騎士「刃を、捨てる為。沢山の大切なものを貰ったが、その中で一番だ。父と呼んでいた人から何度も聞かされた」
ロリ「たては、やいばをすてるため……」
新人騎士「おい、あれ!」
新人騎士「うお、戦斧! 紅眼戦斧の乙女だ!」
新人騎士「紅眼戦斧様ー! 麗しきそのお顔を一目、一目!
女騎士「……はは、励んでいるかー?」
新人騎士「そりゃもう! オーガくらいなら俺一人でも十分ですよ!」
新人騎士「俺はキマイラを仕留められるぞ!」
新人騎士「クラーケンだって海の藻屑です!」
女騎士「ははは、頼もしいな。では一つ実践稽古と行こうか」
新人騎士「お、お願いします!」
新人騎士「馬鹿野郎、俺が先だ!」
新人騎士「私が先約だ、これは譲れない!」
女騎士「ははは、はっはっは」
女騎士「立て」
新人騎士「ひ、ぃ」
新人騎士「もう無理ぃ……」
新人騎士「……ぐぅ」
女騎士「立て!!」
新人騎士「ひゃいい!」
新人騎士「う、うう」
新人騎士「げほっ」
女騎士「おい真ん中のお前、立てるのに何故もう無理などとほざいた」
新人騎士「ご、ごめんなさ、ぎゃ!」
女騎士「ほう、少しはハンサムになったな。何故もう無理などとほざいた」
新人騎士「……」
女騎士「ふん」
新人騎士「……あぐっ!?」
女騎士「次は鼻か? アゴか?」
新人騎士「か、勝へないと思ったからでふ」
女騎士「勝てなければ戦わないか、っ」
新人騎士「あぐっ」
女騎士「戦わなければこうして死ぬまで殴られる! もう無理か!」
新人騎士「た、戦えまふ!」
女騎士「もう無理だろう腰抜け!」
新人騎士「戦えまふ!」
女騎士「剣も盾も地面に捨てて戦える訳ないだろう! 死にたいのか!」
新人騎士「死にたくなひ! 戦えう!」
女騎士「構えろ! まとめて来い!」
騎士団長「励んでいるな」
女騎士「やはり男は強いものです、あっという間に腕を上げていく」
騎士団長「貴君の話だ」
女騎士「……先達に鍛えて貰った恩を、返しているだけです」
騎士団長「大槌のも、長弓のも、厳しかったからな」
女騎士「お陰で今も生きていられます」
騎士団長「やはり、3年かね」
女騎士「励んではいますが、どう尽くしてもその位はかかります。でなければ無駄死にをします」
騎士団長「そうか、ありがとう。時に貴君の拾った……」
女騎士「あの子の事も、そろそろ期限ですか」
騎士団長「騎士団という所は規律規律でどうにも、な。引退したお歴々とも相談したが」
女騎士「そう、ですか」
騎士団長「ああいや、筋さえ通っていればという、そういう話だ。何処か話の分かる商家の養女にして、夜は恩返しに騎士様の手伝いをしている、と。こういう具合ならまぁ大丈夫だろうと」
女騎士「……! あ、ですが、そんな商家は」
騎士団長「時に、貴君の宅の近くに騎士団と親交の深いパン屋があるのだが」
女騎士「……何と手際の良い。もしかして」
騎士団長「人を守る為に騎士になった人ばかりだ。多分、代々な」
女騎士「今帰ったぞ」
ロリ「おかえりなさいー」
女騎士「お、お、お? どうしたんだそれ?」
ロリ「えへへ、なんでしょーう?」
女騎士「おいおい……まさかこれ、君が? 小父さんたちに習って?」
ロリ「うん! おねえちゃんおめでとう!」
女騎士「ははは、なんだおめでとうって」
ロリ「おねえちゃん、たんじょうびだもん! おめでとう!」
女騎士「ああ、そっか……すっかり忘れていたな、はっはっは! ありがとう、すごく嬉しい!」
ロリ「たべてー!」
女騎士「いただきます。はむ、うん、これは絶品だ! 世界一のパン屋になれるぞ、私が請け負おう!」
女騎士「手筈通り、1部隊は正面で待機。2部隊は側面へ移動、合図の後強襲。3、4部隊は周囲の警戒だ」
古参騎士「おい」
女騎士「む?」
古参騎士「風上から獣臭がする」
女騎士「ハウンドか?」
古参騎士「分からん。だが鉄臭さはない」
女騎士「ふむ……」
古参騎士「俺は3、4部隊に回る」
女騎士「ああ、それがいい。馬鹿どもが浮き足立っていたら躾けておいてくれ」
古参騎士「あいよ」
新人騎士「な、何が来るんすか」
新人騎士「キ、キ、キマイラとか?」
新人騎士「クラーケンかも! ひぃい……」
古参騎士「期待を裏切らねぇなあお前ら。森にクラーケンが出るかよ」
新人騎士「だって……」
古参騎士「ほら、構えてろ。合図だ」
新人騎士「!」
新人騎士「こここ、来れられるなら来てみてやがれ!」
古参騎士「何言ってんだお前。ほら肩の力は抜け、今は細く長い集中だ」
新人騎士「すぅー……はぁー……」
新人騎士「すぅー……はぁー……」
新人騎士「すうぅー……はあぁー……」
古参騎士「ちゃんと仕込まれてんねぇ、大したもんだ」
トロル「ウゴォ!?」
女騎士「……」
トロル「ォ、オ」
女騎士「……ふんっ」
トロル「……」
女騎士「よし、討伐完了。荷車だ」
古参騎士「お疲れさん」
女騎士「ああ、さっきは助かった。ありがとう」
古参騎士「子守なんて退屈な事、もうやらせるなよ?」
女騎士「どうだった」
古参騎士「良い面構えしてやがったなあ、半人前の癖に」
女騎士「彼等も騎士だからな」
古参騎士「嬉しそうじゃねえか」
女騎士「私も騎士だからな」
町娘「きゃー! 紅眼戦斧さまー!」
女将「いやーん! 紅眼戦斧ちゃーん!」
親父「うおー! 紅眼戦斧の乙女よォー!
女騎士「はっはっは」
新人騎士「くそぅ……」
古参騎士「泥だらけでも、俺が英雄様だって顔しろぃ」
新人騎士「でも滑って転んでなんて……」
古参騎士「格好悪くても胸張れ。暗い顔してちゃ怪我したのかって民が不安になるだろ」
新人騎士「……はいっ」
女騎士「はっはっは」
古参騎士「見ろ、アイツなんか下手な笑顔貼り付けてるだろ」
新人騎士「苦手なんだなあ」
女騎士「何が紅眼戦斧の乙女だ!」
新人騎士「荒れてるなぁ」
女騎士「飲め!」
新人騎士「ありがとうございます!」
女騎士「こんな三十路女が……乙女なんぞと……」
新人騎士「酔ってるのかなぁ」
新人騎士「照れてるのかなぁ」
女騎士「飲め!」
新人騎士「ありがとうございます!」
女騎士「お前も!」
新人騎士「ありがとうございます!」
古参騎士「顔真っ赤じゃねぇか、うはは」
女騎士「飲め!」
古参騎士「はいどーも、御返杯だ」
女騎士「んぐっ、んくっ、んくっ……ふはぁーあ」
古参騎士「大丈夫かおい」
女騎士「飲め!」
古参騎士「荒れてんなぁ」
女騎士「ただーいまーぃ」
ロリ「おねえちゃん!?」
女騎士「はっはっは、英雄様のご帰還だあ」
ロリ「お、おかえりなさい……だいじょうぶ?」
女騎士「うん、君がいればなんだってヘーキら」
ロリ「ちょ、苦しいってばー、もー」
女騎士「はっはっは、離さないぞー」
ロリ「おねえちゃんったら、えへへ!」
女騎士「……なぁ」
ロリ「うふふ、んー? なにー?」
女騎士「修道院とかなら、友達いっぱい出来たかも知れないなぁ」
ロリ「おねえちゃん?」
女騎士「孤児院だって、本当はそんなに悪い所じゃないのかも知れないし」
ロリ「……」
女騎士「私は、私は寂しかったのかもなぁ……独りぼっちで戦う道を選んだのは私なのに、なのに寂しくて、独りぼっちになった君を、巻き込んだのかなぁ」
ロリ「……」
女騎士「ごめんなぁ、君の、君はもっと幸せになって、なるべき、なってほしいのに、わ、私は……」
ロリ「おねーえちゃん?」
女騎士「……ぐすっ」
ロリ「わたし、おねえちゃんのこと、だいすき」
女騎士「う、うう」
ロリ「えへへ」
女騎士「うっ」
ロリ「ふふ」
女騎士「うぅ~……!」
ロリ「よしよし。しょーがないですねー」
ロリ「おはようお姉ちゃん! ほらほら、朝だよ!」
女騎士「ああ、おはよう」
ロリ「今日は小父さんが新しいパン教えてくれたんだ! ほらこれ!」
女騎士「おお、焼き立てのいい香りだ。中に具が入っているのか? いただきま」
ロリ「行儀悪いよ騎士様ー? ほら着替えて! 顔洗って! ほんとに手のかかるお姉ちゃんなんだから!」
女騎士「はっはっは、冷めない内に食べなくてはな」
ロリ「いただきます」
女騎士「いただきます」
ロリ「ね、どう? どう?」
女騎士「うん、絶品だ! 世界一の」
ロリ「パン屋になる、私が請け負おう!」
女騎士「……取られてしまったな」
ロリ「お姉ちゃんそればっかりなんだもん」
女騎士「本当に美味しいんだもん」
ロリ「もう……えへへ」
女騎士「はっはっは」
ロリ「お姉ちゃん、今日は?」
女騎士「ああ、いよいよ煮詰まってきてな。これからはかなり遅くなる」
ロリ「そっか……」
女騎士「何、ほんの少しの間だけだ。先に寝ててくれ」
ロリ「ううん、待ってる」
女騎士「寝ーてーてーくーれー」
ロリ「……お姉ちゃん、無理してない?」
女騎士「今が無理のし時なんだ」
ロリ「……うん」
女騎士「すまないな」
ロリ「騎士様、だもんね」
女騎士「ああ」
ロリ「……」
女騎士「すまないな」
騎士団長「観測班の報告から推測するに、やはりかなり近いな」
女騎士「装備の発注と修繕は?」
新人騎士「後2日で全て整います」
女騎士「怪我人」
新人騎士「皆万全の状態です」
女騎士「支援」
新人騎士「地方貴族達から金貨1袋ほど、計8袋です」
女騎士「……ふぅ」
騎士団長「上にも事の重大さが伝わっている様で何よりだ。知っての通り、これまでにない間隔での征伐となる。まだ新人と己では思っているかも知れないが、貴君らは騎士だ」
新人騎士「……」
女騎士「……」
騎士団長「我が騎士団は民を守る盾だ。今一度その事を胸に刻み、備えておいて欲しい」
伝令「報告です、居場所を確認しました! 東部城壁より北東の丘、その洞窟の中です」
騎士団長「間違いないか?」
伝令「はい、記録の通りの体躯と翼、爪。間違いなく、ドラゴンです」
ロリ「おかえり、お姉ちゃん」
女騎士「まだ起きてたのか。ただいま」
ロリ「おかえりって言いたいもん」
女騎士「はっはっは、いつもありがとうな」
ロリ「……」
女騎士「うん?」
ロリ「今日、一緒に寝ようよ」
女騎士「大きくなったと思っていたが、やっぱりまだまだ子供だな」
ロリ「子供だもん」
女騎士「はっはっは」
ロリ「えへへ」
ロリ「お姉ちゃん、まだ起きてる?」
女騎士「……もう寝たよ」
ロリ「そっか」
女騎士「ああ」
ロリ「……おやすみなさい」
女騎士「おやすみ」
ロリ「お姉ちゃん」
女騎士「……」
ロリ「何処かに行っちゃわないでね」
女騎士「……」
ロリ「私、独りぼっちはもうやだよ?」
女騎士「離さない」
ロリ「そっかぁ。よかったぁ」
女騎士「……」
ロリ「……」
ロリ「おはよう、お姉ちゃん!」
女騎士「おはよう」
ロリ「わっ、どうしたのお姉ちゃん?」
女騎士「うん? 何だ、何処かおかしいか?」
ロリ「なんか、なんて言うか」
女騎士「どうした、そんなに目を白黒させて」
ロリ「紅眼戦斧の乙女……」
女騎士「……君だけは言わないでいてくれると思っていたのになぁ」
ロリ「だって、なんか、すっごく綺麗なんだもん」
女騎士「ぷ、はっはっは! そうかそうか、ありがとう」
ロリ「あ。もしかしてー、今日?」
女騎士「ああ」
ロリ「そっ、か」
女騎士「行ってきます」
ロリ「……行ってらっしゃい!」
警備兵「東区、北区、避難終わりました」
古参騎士「了解。引き続き避難誘導願います」
警備兵「はっ!」
女騎士「寂しいものだな」
古参騎士「いつもの賑わいを知ってるとな」
女騎士「守れるだろうか」
古参騎士「弱気だな」
女騎士「……こ、紅眼戦斧のとは言え、乙女だからな」
古参騎士「何だ、自分でも言ってみたかったんじゃねえか!」
女騎士「……」
古参騎士「最後かも知れねぇもんな」
女騎士「守ろう」
古参騎士「守ろう」
警備兵「全区、避難終わりました。どうか、ご武運を!」
古参騎士「了解。有事の際に備えた配置へ願います。ありがとな兄ちゃん」
女騎士「感謝する」
伝令「爆薬、設置完了しました。目標は未だ眠っています」
伝令「1、3部隊、配置に着きました」
伝令「2、4、5部隊、配置に着きました」
伝令「6部隊、配置に着きました」
騎士団長「……ありがとう。これより、第82次国家脅威征伐を開始する! 点火ァー!!」
新人騎士「……」
古参騎士「へへっ」
ドラゴン「ぐるるぁ……」
新人騎士「うわぁ!」
古参騎士「くそったれ! 射掛けろ、針山にしてやれー!」
ドラゴン「おぉーーーーん!」
新人騎士「ひぇえ、大迫力だ」
古参騎士「おう、お前も肝が座って来たなぁ!」
女騎士「出過ぎるな!」
中堅騎士「硬すぎです、ってば!」
ドラゴン「ぐる、ぐるるる」
中堅騎士「あっ」
新人騎士「退け、退けぇー! 」
ドラゴン「ぐ、ぐる、ごあぁ!」
新人騎士「ひ……あ、ぁあー!? あ゛あ゛あ゛あ゛!
!」
古参騎士「あの高さなら火も届かん、立て直せー!」
新人騎士「負傷者を後方に!」
女騎士「くそっ、もうこんなに……!」
騎士団長「降りてくる! 陣形、組めー!」
古参騎士「陣形、組めーい!!」
ドラゴン「ぐるるるぁ!!」
女騎士「はぁ、はぁ、ごほっ」
ドラゴン「るるるぅ……」
古参騎士「っだらぁ !」
ドラゴン「ぐるるぁ!」
新人騎士「シッ!」
ドラゴン「がうるる」
女騎士「おぉおお!」
ドラゴン「ぐるるぅるらぁー!」
女騎士「あっ、が……! ぎ、ひぃ」
騎士団長「今助ける!」
女騎士「はっはっは! うぐ、はははははっげほ、げほ!」
古参騎士「離しやがれぇ!」
騎士団長「トカゲの化け物が!!」
新人騎士「このっ、このぉ!」
ドラゴン「ぐ、る、ごぁああ!」
女騎士「うぁ゛あ゛あ゛あ゛!?」
ドラゴン「ぐぅるるる……がぁ! がるるぁ!」
騎士団長「ぐっ!?」
古参騎士「ぉ、お……!!」
ドラゴン「るる、くるるぅ」
新人騎士「あ、ああ、ひぃ……」
ドラゴン「くるぅ、くるるるぅ……」
新人騎士「たす、助け、て」
ドラゴン「ぐるるる」
女騎士「おい、げほっ、かは……紅眼戦斧の、ステーキは、はぁ、はぁ、美味い、か」
ドラゴン「ぐるるぅ……」
新人騎士「え? い、まだ、生きて」
女騎士「答えろ、私の左手は、美味いか……」
ドラゴン「ぐる、ぐ、るるる」
新人騎士「助け、て……いま、助けてさしあげます!」
ドラゴン「ぐるるるる、ごぁああー!!」
女騎士「焼け! 焼け!! 」
ドラゴン「ぎゃるるるぁ!? がるるぁあ!!」
女騎士「あ゛あ゛あ゛!? ぐっ、ふ、ははははは!!」
ドラゴン「がぅがるるぁ! ぎゃう、ごぁあ!」
新人騎士「この、離せぇ!」
女騎士「まだ、ごほっ! 戦える、私はぁ! うぐ、げほ!」
新人騎士「くたばりやがれ、化け物めぇー!!」
ドラゴン「がぅるるるぐるるぁあー!!」
ドラゴン「……ぁ、ぐる」
女騎士「……、っ!」
ドラゴン「が」
女騎士「……」
新人騎士「……」
ドラゴン「……」
女騎士「ぁ、だ」
新人騎士「……」
女騎士「だぃ、82次、こ、あ……? ぁ、ぅ……」
新人騎士「! だ、第82次国家脅威征伐、完了ぉー!」
ロリ「お姉ちゃん! お姉ちゃん!」
医者「離れて」
看護婦「さ、こっちへ」
ロリ「お姉ちゃん! お願い、お願いします! お姉ちゃんを助けてください! お姉ちゃぁん!!」
医者「分かってるとも。こんな英雄を死なせてたまるか……!」
古参騎士「騎士団長殿は頭を焼かれたのですかな? あ、元からか。ははは」
騎士団長「貴君は上段から叩き潰されたのかね? あ、元からか。ははは」
古参騎士「ははは!」
騎士団長「ははは!」
古参騎士「だーっはっはっは!」
騎士団長「わーっはっはっは!」
古参騎士「あいててて……!」
騎士団長「あいたたた……!」
看護婦「何やってるんですか貴方たち」
古参騎士「何せベッドから動けないと暇なもんで」
騎士団長「仕方なく遊んであげているという訳ですよご婦人」
看護婦「早く自宅療養になってくれないかしら」
新人騎士「団長殿、ただいま戻りました」
騎士団長「おお、待ち侘びたよ貴君。さ、ご婦人もご相伴に」
看護婦「あら、素敵な」
騎士団長「良いケーキだろう? 瑞々しさ美しさと言ったら貴女の様」
看護婦「素敵なお方。貴方も騎士様でいらっしゃるの?」
新人騎士「え、俺!? お、おれ、おれお」
古参騎士「……」
新人騎士「! お、俺様が街を救った騎士様だい!」
看護婦「あらやだ、街を救ったのは紅眼戦斧様よ。嘘吐きな方に興味ありませんわ」
新人騎士「えぇ……」
古参騎士「バカ」
ロリ「ねえ、お兄さん。こんな小父さんたちどうでもいいから早くお姉ちゃんに」
新人騎士「ああ、はいはい。じゃ、ケーキここに置いて置きますからね団長殿」
騎士団長「ああ、ありがとう」
新人騎士「あんまり喧嘩して看護婦さんに迷惑かけんで下さいねー! 騎士団の名に泥が付きますのでー!」
騎士団長「……」
古参騎士「へへへっ」
騎士団長「騎士団の規律はどうなっているのかね」
古参騎士「代替わりの時期って事じゃねえですかねぇ」
新人騎士「妹さんをお連れしましたー!」
女騎士「ああ、開けてくれ」
新人騎士「あの、本当にお会いになるんですね?」
女騎士「ああ、驚かない様にとだけ伝えて欲しい」
ロリ「……」
新人騎士「そういうことだから、ね。ゆっくり深呼吸して……大丈夫そうかい?」
ロリ「う、うん」
新人騎士「じゃあ……」
女騎士「久しぶり、というのも変か。ははは」
ロリ「うそ」
新人騎士「……外しますね」
ロリ「お姉ちゃん」
女騎士「初めて会った時、君もこんな風に火傷を負っていたな。覚えているか?」
ロリ「お姉、ちゃん」
女騎士「自慢の髪もチリチリだ、ははは」
ロリ「お姉ちゃん!」
女騎士「ああ、左腕は食わせてやったんだ。食い意地の張ったドラゴンでな、牙に突き刺してあっちこっち振り回されて大変だったん」
ロリ「っお姉ちゃん!!」
女騎士「……ごめん」
ロリ「違うよぅ、謝らないでよぅ……!」
女騎士「……ごめんなさい」
ロリ「何で!」
女騎士「な、何でって」
ロリ「何で、お姉ちゃんは泣かないの!? 泣いてよ! 痛かった、苦しかったって! 辛い時は辛いって言ってよぅ!」
女騎士「あ、ぅ……は、ははは。か、敵わないなぁ」
ロリ「お姉ちゃん……」
女騎士「う、うぅ……くっ、ぅ、うぁあ……うぅ、ぅぁああ゛あ゛あ゛……!」
女騎士「騎士は引退だ」
ロリ「そっか」
女騎士「盾も持てないし、自慢の戦斧も片腕じゃな」
ロリ「うん」
女騎士「これからは紅眼の乙女とでも呼ばれるかもな、はっはっは」
ロリ「お姉ちゃんはね」
女騎士「……うん」
ロリ「街のみんなを守った凄い騎士様なんだよ」
女騎士「そっか」
ロリ「お姉ちゃんがいなかったらー……」
女騎士「いなかったら?」
ロリ「やっぱり、それでも街を守る為にもっと沢山の人たちが戦ったと思う。ドラゴンもやっつけられてたと思う」
女騎士「ああ、きっとそうだな」
ロリ「でもお姉ちゃんがいてくれたから、今日も明日も、私はパンを焼けるんだ」
女騎士「……そっかぁ」
ロリ「えへへ」
女騎士「はっはっは」
女騎士「盾は刃を捨てる為、だな」
ロリ「あ、前にも言ってた家訓」
女騎士「む、君に話した事があったか?」
ロリ「酔っ払ってる時にちょっとだけね。ねぇ、どういう意味なの?」
女騎士「……騎士は、民に刃を振るわせない為に戦う。戦いに巻き込まない為に戦う。兵にしない為に戦う。平和な世で、筆や楽器や、パン生地を持ってもらう為に、な」
ロリ「……」
女騎士「そしていつか、いつか本当に戦う必要のない日々が訪れたら……皆が刃を捨て、盾も捨てられる日が来る。そんな世界を作る為に私は盾を取っている」
ロリ「へー」
女騎士「ま、私はもう盾も刃も持てないしな。長年連れ添ってきたが、この辺りでこの家訓ともお別れかな」
ロリ「じゃあまた新しいの考えようよ、私たちの家訓! ……ねぇ、お姉ちゃん。お姉ちゃんは騎士を辞めるんだよね?」
女騎士「ああ、第二の人生の幕開けだ。これから何をしようかな、花屋さん……なんて柄じゃないかもしれないが、花を育てたりするのは結構」
ロリ「辞めるんだったらさ、もう騎士団の規律なんかも関係ないんだよね?」
女騎士「? うん」
ロリ「お姉ちゃん、あのね……ママって呼んでもいい?」
女騎士「ママか、ああいいぞ。私で良ければ」
おわり