男「頑張れ!もう少しだ!」
娘「頑張れママ!」
妻「んっ…!」
息子「おんぎゃあ」
助産師「生まれました!」
息子「おぎゃー」
男「おーよしよし」
妻「元気そうね」
娘「弟だー」
男(これからこの4人で明るい家庭を築いていくのか…)
男(ふふっ俺は幸せ者だ!)
男(よーし!気合い入れて頑張るぞ!)
息子「パパ…」
男「どうした?」
男「え!?」
息子「これ…」
犬「クーン」
男「無理無理無理!家じゃ飼えないよ!元の場所に戻してきなさい!」
息子「だって雨降ってて可哀想だったし…」
妻「まあいいんじゃない?犬の1匹や2匹…」
男「うーん…」
男「いいか、散歩に餌やりにその他いろいろ全部やることになるんだぞ?拾ってきたのはお前だ。お前が全責任を取ることになる。やれるか?」
息子「やれる!」
男「わかった。飼おう」
息子「わーい!」
娘「…」ガチャッ
息子「見て見て姉ちゃん!僕犬拾ってきた!」
娘「へー…すごいね…」
男「おーいただいまの一言は?」
娘「うるっさいわね…」
男「え」
娘「…」スタスタスタ
妻「反抗期かしら」
男「まあ…こんくらい普通じゃないか?」
娘「イヤアアアアアアアアアア!!」
妻「!?」
男「どうした!?」タタタタタッ
娘「ママ!?パパの服と一緒に洗濯機かけた!?」
妻「え、うん」
娘「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!お気に入りの服だったのに!もう着れない!」バサッ
妻「は…」
男「いやおま…」
娘「…」スタタタタタッ
息子「ただいま…」
男「おう、ただいま」
息子「姉ちゃんは?」
男「さあ…また遅くまで友達と遊んでるんじゃない?」
息子「そっか」
男「…!」
息子「さてと自分の部屋で勉強でも…」
男「待て」
男「その顔の傷はなんだ」
息子「…」
息子「階段で…転んだ」
男「あ、なんだそうだったのか」
息子「…」スタスタスタ
娘「…」ガチャッ
男「おい!無言で家を出ることないだろ!どこに行くんだ!」
娘「彼氏んとこ」
男「彼氏だと?そんなん聞いたことないぞ」
娘「別に話す必要ないでしょ」
男「なんか最近服装とか派手じゃないか?化粧も濃いし…」
娘「なんだっていいでしょ」
娘「じゃ」タッタッタ
男「…」
男「彼氏…」
息子「あの…父さん…」
息子「参考書買いたいんだけど…」
男「金か?」
息子「うん…ちょっとだけ…」
男「…」
男「ひとつ聞いていい?本当に参考書買うの…?」
息子「!」
息子「…あたりまえじゃん…ははっ…」
男「…」
男「親に黙って髪染めるって…」
娘「私がどうしようが私の勝手でしょ?」
男「なあ、彼氏について聞きたいんだけど」
娘「話すことなんて何もない」
男「どんな彼氏なんだ?危ないやつとかじゃないだろうな?」
娘「話すことなんてないって言ってるでしょ!」
男「…」
娘「…」
娘「…」スッ
男「トイレ行ったか…」
男「スマホ置いてトイレとは無防備なこった」
男「暗証番号はどうせ誕生日だろ…あってた」
男「彼氏…LINEに載ってるかな?」
男「わかりやすく彼ピって書いてある…これかな?どれどれ…」
男「競馬で儲かったから何か奢ってやるよ…」
男「薬をやらないなんて人生半分損してるぞ…」
男「昨日はありがと…またヤリたいな…」
男「…」
男「…こいつ…ヤベェ!」
男「おい、これお前の彼氏だろ」
娘「ちょ!何勝手に人のスマホ…」
男「すぐに別れろこんな男!」
娘「はあ!?まさか…見たの!?」
娘「人のスマホ勝手に触るなんて最低!返して!」
男「あっ…」パシッ
娘「信じらんない!死ね!」
息子「行ってきます…」
男「行ってらっしゃい」
息子「…」
男「…どうした?」
息子「学校…行きたくない…」
男「…え」
担任「いやー…いじめの類はなかったかと…」
妻「最近身体中にアザ作って帰ってきてるし…小遣いだって頻繁に欲しがるんですよ。これってあきらかに…」
担任「うーん…ないと思うんですけどねー…タブン」ボソッ
男「…」
妻「…」
妻「夕飯…ここに置いとくから…」
息子「ごめん…母さん」
妻「つらくなったらいつでも言ってね…」
息子「…」
警察「今のところ手がかりのようなものは…」
妻「私の娘が家出してもう1週間も行方不明になっているんです!なんでまだ見つからないんですか!」
男「いったいどうなってるんですか!」
警察「そんなこと言われましても…」
--
妻「もうダメかしら…」
男「諦めるな。きっと見つかるはずだ」
妻「あ、そろそろあの子の食器を取りに行かないと」
妻「あら…?夕飯まだ食べてないわね…」
妻「ねえ夕飯食べないの?」
妻「ねえ。ねえ聞こえてる?」
妻「入るわよ?」ガチャッ
息子「…」
妻「!?」
妻「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
男「なっなんだ!どうした!?」
妻「首吊ってる…」
息子「…」
男「!」
男「ふんっ…よいっしょ…」バタッ
男「おい!起きろ!おい!おい!!」
男「救急車!!」
男「…」
妻「…」
男「…」ガチャッ
妻「…」バタンッ
男「…」
妻「なんでひどくなる前に相談してくれなかったのかしら…」
男「…」
男「はぁ…ただいま…」
男「…誰の靴だ?」
男「…」
男「知らない男の服…まさか!」ダダダダダッ
男「おい!」ガチャッ
妻「!?」
間男「!?」
男「…!!」
男「テメェ!何してやがる!」
妻「ちっ違…」
間男「こ、これは誤解だ!」
男「どういう誤解だよ!誤魔化そうってのは無理があるぞ!あぁん!」
男「どういうことだ!説明しろ!」
妻「…ブチッ」
妻「仕方ないでしょ!?こんな見るに堪えない家庭で一生を過ごすなんて無理よ!」
妻「私は新しい男と家庭を築く!もう前に現れないでちょうだい!」
男「お前…!」
妻「何よ!誰のせいでこんなことになったのよ!」
妻「娘は家出、息子は他界…私はこんな家庭望んでないわよ!」
男「俺だって望んでこんな結果を招いたわけじゃねーよ!好きにしやがれ!」ダダダダダッ
男「…」
犬「…」
男「…」
男「そうだよな…俺が自殺したらお前を育てる人がいなくなっちまうもんな…」
男「どうせお前の寿命も後少しだろ。よく長生きした方だよお前も…」
男「お前は唯一の家族だ!お前が生きてる限り俺は死なないからな!」
犬「…」
男「よし!散歩に行こう!」
犬「ワン!」
--
男「ははは、散歩楽し…ん?」
酒帯トラック「zzz…」
男「!」
男「待っ!!!!!」
犬「?」
ブロロロロロロロロ…ゴォッ
バァンッ………
獣医「大変申し上げにくいのですが…その…もう助かりません…」
男「」
獣医「頭部の損傷が激しく、おそらく轢かれたときに即死したのかと…」
男「」
獣医「お気持ちはわかりますが…もう私としてはどうすることも…」
男「」
ヒュォォォォ………
男「…」
男「もう俺に思い残すことはない…」
男「ここからならダメにも迷惑かからないだろう」
男「親父、おふくろ、俺を産んでくれてありがとう」
男「今すぐ会いに行くから…」
スッ………………グシャッ
-終わり-