1 : VIPに... - 2012/03/23 00:12:04.96 MOKeotDIo 1/444

「そんな気持ちで買ったこの猫缶、『ねこのきもち』」

「なんでもこれを食べさせると、猫の気持ちがわかるようになるとか」

「猫ちゃーん、ディナーだよー」

「ニャーン」

「よしよし、たーんとお食べ」

「」モクモク

「それにしてもこの猫缶高かったなぁ。『ねこのきもち』って名前に惹かれたんだけど」

「あれ、でもそんな雑誌あったよな。まぁいっか」

「どう、猫ちゃん。おいしい?」

『結構イケるわ』

「えっ?」

元スレ
男「猫ちゃんと意思疎通をとりたい」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1332429124/

2 : VIPに... - 2012/03/23 00:13:48.01 MOKeotDIo 2/444

「今ちょっと舌っ足らずで可愛い女の子の声が頭に響いたんだけど」

「……テレビかな! 愛菜ちゃんの声かな!」

『私の声よ! あなたの眼の前にいる! 猫の! それにあの子と声全然似てない!』

「また脳内に……って猫ちゃん!? 今の猫ちゃんなの!?」

『そうよ!』

「でもまさか本当にこんなことが……」

『さっきの猫缶食べたら男と意思疎通できるようになったの』

「えぇぇ……じゃあこれ幻聴じゃないんだね……? じゃあ今から何か命令するから、そのとおりに行動してみて」

『いいわ。なんでも言ってみなさいよ』

「お手」

『犬じゃないわ』ポン

「でもやってくれるんだ……じゃあ膝に乗って」

『いつも乗ってるじゃない……』ストン

「乗ってくれるんだ……可愛いな」

「まぁ会話が成立してる時点で意思疎通できてるよね」

『だから言ったじゃない』

3 : VIPに... - 2012/03/23 00:14:24.97 MOKeotDIo 3/444

「普通に声出して喋れないの?」

「ニャーン」

「あれ? 人の言葉は?」

『無理みたいね。あなたの頭の中にしか伝えられないみたい』

「そうかぁ。まぁでも喋る猫がいたらびっくりされるからいいか」

『そうね』

「あ、もしかしたら俺もテレパシー使えるのかな?」

『どうかしらね……ちょっとやってみて』

「うん」

『猫ちゃん可愛いよぉ撫で回したいよぉ』

「伝わった?」

『……伝わったわ。ちょっと気持ち悪かったけど』

「俺の素直な気持ちなのに……」

『だったらほら、撫でなさいよ』スリスリ

「背中擦りつけてくる猫ちゃん可愛い! 撫でるよーもうめっちゃ撫でるよぉ」

(ちょっとキモいけど、撫でられるの好きなのよね)

4 : VIPに... - 2012/03/23 00:15:08.13 MOKeotDIo 4/444

ガチャ

「お兄ちゃーん、さっきから何一人で喋ってんのー?」

「おおう妹か。いやぁ猫ちゃんが可愛くてさー、つい話しかけちゃってた」

「きもー」

『きもー』

「きもーとか言うなって。ほら、猫ちゃんとじゃれてるお兄ちゃん可愛いだろ?」

「……ご飯だから。下りてきてね」

バタン

「ちょっとスルーはやめてよー」

『そりゃスルーもされるわ』

「そんなにキモかったか。覚えておこ」

「んじゃ下いくか。猫ちゃんもおいで」

『はいはい』

5 : VIPに... - 2012/03/23 00:15:38.06 MOKeotDIo 5/444

「おーう今日はオムライスか!」

「お母さんが、料理番組見てたらオムライス食べたくなったんだって」

「母さんはすぐテレビの影響受けるからなぁ。で、母さんは?」

「トイレ」

「あ、そ」

『ねぇ男。それ、おいしいの?』

『おいしいよ。このチキンライスがいいんだ』

『ふぅん』

『食べてみる?』

『ううん。猫が食べるものじゃないわ』

「あ、そ」

「何で二回言ったの?」

「あ、いやなんでもない」

『バカねぇ』

『言わないで』

6 : VIPに... - 2012/03/23 00:16:21.09 MOKeotDIo 6/444

「ふぃー食った食った」

「コーヒーでもつくろうかな」

「あ、じゃあわたしココア」

「面倒だけどやってやろう」

「さっすがお兄ちゃん!」

『猫ちゃんも何か飲む? 熱々のミルクとか熱々のお湯とか』

「フシャー!」

「おおう!?」

「なにしてんのー?」

「いやぁ、猫ちゃんが私の分の飲み物も持って来いって」

「……学校に友達がいないからって、ペットと会話するなんて……不憫なお兄ちゃん」

「い、いるわい! 少しはいるわい!」

「そっ、ならいいんだけど」

『友達いないのね……』

「だからいるって!」

「だからわかったって……」

「あ、いや、その」

「ま、なんでもいいけどココアね」

『私はお水ね』

「……はいはい」

7 : VIPに... - 2012/03/23 00:16:57.13 MOKeotDIo 7/444

「ほーら、ココアと水だよー」

「ありがとうお兄ちゃん」

『ありがと男』ニャーン

「猫ちゃんはお礼が言えるんだよねー。可愛いねー」ナデナデ

「そうだな。猫ちゃんは最高に可愛いな」

『それほどでもあるわね』ニャンニャン

「それほどでもないって言ってる」ナデナデ

「はっは、それはどうかな?」

「猫ちゃんは謙虚なんだよー」

『そうなんだ、猫ちゃん?」

『ええ、私は淑女だから。いつもしとやかで慎ましいわ』ニャーンニャン

(そんなところも可愛い!)

8 : VIPに... - 2012/03/23 00:17:20.08 MOKeotDIo 8/444

「さぁってと。そろそろ寝ようかな」

『今日は随分早いのね。いつもパソコンの前で、きもーな顔でニヤニヤしてるのに』

「ちょっ!? 今までそんな目で見られてたの!?」

『ルイズたん』

「っ!」

『ベルたそ~』

「ッ!?』

『ひなだお!』

「うっ!?」

『きもーって感じだったわ』

「ノオオオオオオオ!」

『あら、どうしたの? そんな発狂しちゃって」

「自分のプライベートな部分がまさかこうして他者から指摘されようとは……」

『良かったわね。自分のきもさに気付くことができて』

「別にキモくたっていいの! そんなところ見てるのは猫ちゃんだけなんだから!」

『……それもそうね、こんなきもーなところを知ってるのは私だけでいいわね』

「で、でも言うほどキモくないよね? ね?」

「ニャーン」

「猫ちゃん!?」

9 : VIPに... - 2012/03/23 00:17:54.37 MOKeotDIo 9/444

「歯も磨いたし、寝るとしますか」

『……』モゾモゾ

「えっ? 猫ちゃんもここで寝るの?」

『何よ。ダメなの?』

「いえいえそんな滅相も無い。むしろ暖かくてありがたいくらいだよ」

『そう。私も男と一緒だとあたたかいわ』

「そっか……でも寝返りとか大丈夫かなぁ」

『それは大丈夫よ。あなた寝相悪くないから』

「え、そうなの?」

『……そうなの』

『……もしかして俺が眠ってる時に布団にもぐりこんでた?」

「ニャーン」

「それ可愛くてずるいなぁ」

『おやすみ、男』

「……おやすみ、猫ちゃん」

10 : VIPに... - 2012/03/23 00:18:39.29 MOKeotDIo 10/444

翌朝 土曜日

「ふぁぁ、よく寝た」

『おはよう、男』

「おはよう猫ちゃん。土曜なのに早いね」

『男の生活リズムに合わせてるからね』

「あー猫って夜行性だもんね。猫ちゃんは優しいなぁ」

『だって夜はあなた寝てるから……鳴いても起きないし』

「俺は寝付きだけはいいからね。そっかー、じゃあ結構暇してたんだね」

『でもそれは過去の話よ。今は夜に眠れるから』

「それは良かった」

コンコン

ガチャ

「お兄ちゃん起きてるー?」

「今起きたよ」

「朝ごはんもうできてるから下りてきてだって。あ、猫ちゃんの分もあるからね」

「ニャーン」

「うーい、じゃあ下いくか」

11 : VIPに... - 2012/03/23 00:19:19.47 MOKeotDIo 11/444

食卓

「おはよう」

「おはよう。そういえば昨日の夜はどうしたの?」

「飲み会だ」

「あ、そ」

「もうお酒臭くて目が覚めちゃったわよ」

「はは、すまんな」

『まだ臭うわね』

『猫は鼻がいいもんね』

『そうよ。だからあなたが一人で部屋に閉じこもって何かやった後も、変な匂いがわかるもの』

「ええっ!?」

「どうした男」

「なな、なんでもないよ父さん。今のニュースがね。ちょっとびっくりしてね」

「最高気温9度がそんなにびっくりすることだったのか」

「そう! そうなんだよ! いやーまだ寒いねぇ」

「もう、それだけで大袈裟よ」

「は、はは」

『ねぇ。あなた部屋で何してたの?』

『猫ちゃんは知らなくて良いことです!』

12 : VIPに... - 2012/03/23 00:20:14.50 MOKeotDIo 12/444

「」ハグハグ

「あれ、妹は?」パクパク

「部活行ったわよ」

「ふぅん。そうかー」モクモク

「何か用でもあったの?」

「いや。ただ、そろそろあいつ誕生日じゃん? 何かプレゼントでも買ってこようかなーって」

「おお。いいお兄ちゃんだな」

「まー俺の誕生日の時にプレゼント貰ったからね。こっちもやらないと」

「いい心掛けね」

「うん。近々リサーチしてから買いに行くわ。ごちそうさま」

「じゃあ俺たちも何か買いに行くか母さん。ごちそうさま」

『ごちそうさま』ニャーン

「そうね、そうしましょうか。はい、お粗末さま」

13 : VIPに... - 2012/03/23 00:21:06.07 MOKeotDIo 13/444

男の部屋

「とは言ったけど、妹に何をプレゼントしようかなあ」

『猫缶でいいんじゃない」

「それは猫ちゃんが欲しいのでしょ。うーんどうしよう」

『私が探りを入れてあげるわ』

「お、助かるなぁ。じゃあ妹が帰ってきたらそれとなく様子を見てくれる?」

『任せて』

「自信満々な猫ちゃん可愛い!」

14 : VIPに... - 2012/03/23 00:21:32.41 MOKeotDIo 14/444

夕方

「ただいまー!」

「おかえりー遅かったね」

「うん。顧問の話が長くてねー。もう何のタメにもならない話でさ、凄くイライラしちゃった」

「おおそうか」

「ってわけだから、夕飯できるまで部屋で休んでるね。できたら呼んで」スタスタ

「うーい」

『……よし。猫ちゃん、ゴーだ!』

『任せときなさい』スタタタタ

15 : VIPに... - 2012/03/23 00:22:16.20 MOKeotDIo 15/444

妹の部屋

「ふあー疲れた」ボフ

「あーシャワー浴びてからにすれば良かったな……でもベッドから動けない……」

カリカリカリカリカリカリカリ

「ん? 猫ちゃんかな?」スタスタ

ガチャ

「ニャーン」

「珍しいね、こっちくるの。いっつもお兄ちゃんのところなのに」

『だって男は話しかけてくれるから……』ニャーン

「そっかそっか、ようやくお兄ちゃんのダメダメさに気付いたか」

『それは知ってるわ』ニャオン゙

「なんてねー。お兄ちゃんはなんだかんだいって優しいよね」

『……そうね。この家族はみんな優しいわ』ニャン

「いけない。お兄ちゃんの癖がうつっちゃった」

「ふぁーあ……ちょっと眠いなぁ」

『寝る前に聞きたいのだけど、あなた、いま何か欲しい物とかあるかしら?』ニャンニャンニャーン

「じゃあ猫ちゃん。わたしちょっと寝るから」

『ちょっと!』ニャン!

「あとで遊んで、あげるから……ねー……」

「」zzz

『……』

16 : VIPに... - 2012/03/23 00:22:44.93 MOKeotDIo 16/444

(……何も聞き出せなかったわ)

(まあ、当たり前ではあるのだけど)

(それじゃ、部屋に探りを入れようかしらね)


(可愛らしい部屋だわ)

(ぬいぐるみがいっぱい……ぬいぐるみが好きなのかしら)

(枕元にあるクマのぬいぐるみ……かなりくたびれてるわね)

(あとは……特になさそうね)

(戻ろう)

17 : VIPに... - 2012/03/23 00:23:17.97 MOKeotDIo 17/444

男の部屋

「ぷらいべーらあいず ぜいうぉっちにゅー♪」

「……猫ちゃん、ちゃんとリサーチできるかなあ」

カリカリカリカリカリカリカリカリ

「お! 猫ちゃん帰ってきた!」スタスタ

ガチャ

『戻ったわ。というか、私が入れる隙間開けときなさいよ』

「おかえり猫ちゃん! ごめんね猫ちゃん! 首尾は?」

『上々よ。あの子の好きなものが分かったわ』

「おおう! さすが猫ちゃん、その好きなものとは!?」

『ぬいぐるみよ』

「あ、ぬいぐるみね。あいつの部屋いっぱいあるもんね」

『知ってたの!?』

「そりゃあね……でもありがとう。参考にするよ」

『……』ショボン

「あぁっ! 猫ちゃん落ち込まないで!」

「プレゼントはぬいぐるみにするから!」

『でも、部屋にあれだけあるのに……」

「あいつはあれだけ持っててもさらに集めたがるから大丈夫だよ」

『そうなの……?』

「そうだよ。そうと決まれば、来週見に行こうね」

『……うん。ありがとう、男』

18 : VIPに... - 2012/03/23 00:23:57.61 MOKeotDIo 18/444

翌々日 月曜日

『男、そろそろ起きないと遅刻するわよ』

「うーん、声が直接響くからよく聞こえるなあ……」

『おはよう、男』

「おはよう猫ちゃん。ありがとね」

『もうごはんできてるって妹が言ってたわ』

「おぉそうかあ。じゃあ下いこっか」

『ええ、私もうおなかペコペコよ』

「待っててくれたの? 優しいね猫ちゃんは」

『もう、そんなこといいから。先に行くわよ』スタタタタ

「あ、待ってよー」

19 : VIPに... - 2012/03/23 00:25:12.47 MOKeotDIo 19/444

食卓

「もう妹はとっくに家でたわよ。時間あるの?」

「うん、でもまだ余裕あるから大丈夫」

「『いただきます』」

TV『――きょうはカラッと晴れて過ごしやすい一日になりそうです』

「今日はいい天気だなあ」モシャモシャ

『そうね。ひなたぼっこしたらとても眠くなりそうなお天気だわ』ハグハグ

「最高だろうなー。でもまだちょっと寒いかな」

「何が最高なのよ」

「え、あ、ひなたぼっことかさ」

「脳天気ねぇ。でもあんた授業はちゃんと受けるのよ」

「わかってるって。ごちそうさま」

『ごちそうさま』

「はいお粗末さま」

20 : VIPに... - 2012/03/23 00:25:38.54 MOKeotDIo 20/444

「じゃ、いってきまーす」

「いってらっしゃい。あら、猫ちゃんも行くの?」

『ちょっと食後にお散歩を』ニャーン

「散歩したいんだって。母さん家にいるよね?」

「家にいるから大丈夫よ」

「じゃあ行くか猫ちゃん」

「ニャーン」

「気をつけて行くのよ」

「うーい」

21 : VIPに... - 2012/03/23 00:26:09.84 MOKeotDIo 21/444

『陽射しが気持ちいいわね』

「そうだねぇ。こんな日に学校なんて嫌になるねぇ」

『じゃあ私と一緒にお散歩しましょうよ』

「そういうわけにもいかないんだよねぇ。休みの日なら付き合えるんだけどねぇ」

『そう。なら仕方ないわね』

「うん。ごめんね……じゃあ、そろそろ学校着くから」

『わかったわ。帰ってきたらちゃんと私の相手するのよ』

「それはこっちからお願いしたいくらいだよ。じゃあまたね」

『うん。またね』


(男がいないと暇だわ)

(男の学校の近くで、ひなたぼっこでもしてようかしら)

(でもあんまりいい場所がないのよね)

(家に帰って、母に相手してもらおう)

22 : VIPに... - 2012/03/23 00:26:53.41 MOKeotDIo 22/444

(いつもどおり裏口から)

カリカリカリカリカリカリカリカリ

「あら、猫ちゃんかしら」

(裏口のドアはこのカリカリがよく響くのよね)

ガチャ

「おかえり猫ちゃん」

『ただいま』ニャーン

「はい、じゃあ足拭きましょうねー」

『くすぐったいわ』ニャンニャン

「はいOKよ」

『ありがと』ニャーン


(やっぱり男以外には通じないみたいね)

(でも会話をしている気分だけでもいいのよね)

(意思を汲み取ろうとしてくれるだけで、私はあたたかい気持ちになる)

(この家に来て良かった)

23 : VIPに... - 2012/03/23 00:27:40.40 MOKeotDIo 23/444

「ただいまー」

『おかえり、男』

「お、猫ちゃんがお出迎えなんて嬉しいね」

「おかえり、お母さんもいるわよ」

「うぉ! ただいま母さん。どうしたのふたりして」

「なんかね、猫ちゃんが玄関から離れなくてねぇ」

「あんたの帰りを待ってたみたいね」

「ええ!? それは可愛すぎるでしょ!」

『違うのよ。ここは日当たりがいいのよ。ほんとうそれだけだから』ニャンニャンニャーン

「ほら、すごく嬉しそうじゃない」

『違うからね。ここ日当たりスポットだから』ニャンニャン

「おぉ! ほんとに嬉しそうだね! そんなに寂しかったのかぁ猫ちゃん!」

『ちょっと!? あなたは聴こえてるでしょ!?』

「照れちゃってもう! ほらっ」ダキアゲ

『ふぁっ。 おとこ!』ニャ!ニャン!

「うーんもう可愛いなぁ。もふもふで可愛いなぁ!」ホオズリ

『ぁん、ちょっとっおとこっ! いきなり、すぎっ!』

(やばい、今ちょっと興奮した)

24 : VIPに... - 2012/03/23 00:28:14.83 MOKeotDIo 24/444

『もう。ちょっとは加減してほしいわ』

「いやーごめんね。つい」

『ま、いいわ。男が私にメロメロなのわかってるし』

「もう! この小悪魔さんめ!」

『ふふん。だから私に高級猫缶を貢ぐといいわ』

「さってと、宿題でも済ませるか」

『ちょっと!』

25 : VIPに... - 2012/03/23 00:28:47.57 MOKeotDIo 25/444

リビング

「猫ちゃんを膝にのせて見るテレビは最高だなぁ」ナデナデ

「けど、この時間はニュースばっかりだ……」

『男はアニメしか興味ないものね』

『そんなことないわい! すぽるととかGoing!とか好きじゃわい!』

『ふぅん』

『あ、これ信じてないね』

『そうね』

『そっかー。まあその時間は猫ちゃんはおねむだもんねぇ』ナデナデ

『バカにしないでくれるかしら?』

『ほう? じゃあ次の土曜日一緒に見ようねー。亀梨君見ようねー』

『亀を見るくらいなら星を見るわ』

『星もいるから大丈夫だよー』ナデナデ

26 : VIPに... - 2012/03/23 00:30:03.97 MOKeotDIo 26/444

「ただいまー」

「おかえり」

「おかえりなさい」

『おかえり、妹』ニャーゴ

「友達とお話してたら帰り遅くなっちゃった」

「おつかれ。そういえば、春休みは結構部活あるの?」

「もういっぱい入ってるよぉ。遊びたいよぉ」

「そいつはご愁傷さまだね」

「お兄ちゃん春休みいつから?」

「あさってから。妹は?」

「いつだったかなぁ。来週はまだ授業あったはず。ずるいよお兄ちゃん」

「はっはっは。そこは高校生だからな。中学生はもっと頑張りなさいってこった」

「ちぇー。はぁ、着替えてこよ」

27 : VIPに... - 2012/03/23 00:30:55.74 MOKeotDIo 27/444

『妹の部活って?』

『バスケ部だよ。常に走りまわってるスポーツだね』

『ふぅん。私には合わなそうね』

『猫ちゃんはのんびり屋さんだもんねぇ』

『時には機敏に動けるわ』

『ほう?』

『……ま、お見せする機会がないだけのことよ』

『そっかそっか。なら仕方ないよねー』

『あなた、信じてないわね』

『うん』

『ネコじゃらしを前にすれば、私も韋駄天さながらの敏捷さを見せるわよ』

『もー猫ちゃんったらネコじゃらしで遊んで欲しいならそういえばいいのに、可愛いねぇ』

『バカにしないでくれるかしら?』

『あ、じゃあネコじゃらしで遊ばなくていいよねー。このままテレビ見ようねー』

『誰もそうは言ってないじゃない。だから、私が閃光さながらの動きができるってことをね、あなたが信じていないようだから、ネコじゃらしでそれを証明しようってだけなのであってね』

『うんうん分かったよ。じゃあちょっとネコじゃらし持ってくるから待っててねー』

『最初から素直にそうしてればいいのよ。まったくもう』

(可愛すぎ!)

28 : VIPに... - 2012/03/23 00:31:46.62 MOKeotDIo 28/444

「ほーれほれほれほれほれ」フリフリフリ

「」ササササササササ

「ネコじゃらしに無我夢中になる猫ちゃん可愛い!」

「可愛いねー」

「」シュタタタタタタタタ

『ふぅ、堪能したわ』

「かなり俊敏だったね猫ちゃん」

「いっつものんびりしてるのにね」

『これが私の本気よ。見直したかしら?」ニャンニャーン?

『うんうん。お見逸れしました』

「もっとやってほしいって言ってるよ?」

『えっ?』

「お、そうなのか猫ちゃん? よーしもっと振っちゃうぞー」

『いや、あの、もう、ちょっと体力が、ね?』

『このままじゃ妹が幻滅しちゃうかもなぁ』フリフリフリ

「」サササササササササ

「ほらね?」

「そうみたいだね。ほーれほれほれほれ」フリフリフリ

『あとで覚えておきなさいよ……!』サササササササササ

29 : VIPに... - 2012/03/23 00:32:13.82 MOKeotDIo 29/444

「ご飯だよ。運んでー」

「はーい」

『私のディナーもね』ニャーゴ

『わかってますよお嬢様』

『一番高級なものよ、奴隷』

『執事とかじゃないの!? 奴隷!?』

「どうしたのお兄ちゃん? なんか凹んでるみたいだけど」

「いや、なんでも、ないよ……ちょっと世界観が違くてね」

「?」

30 : VIPに... - 2012/03/23 00:32:44.32 MOKeotDIo 30/444

「父さんは?」

「今日も残業みたいだから。先に頂きましょ」

「いただきます」

「いただきまーす」ニャーン

「ねぇ、母さん」

「なに?」

「このコロッケってコーン入ってる?」

「入ってるよ」

「Oh……妹、このコロッケを進呈しよう」

「お兄ちゃん、好き嫌いはダメだよ」

『高校生にもなって恥ずかしいわね』

「うぐっ!? はは、いやなに。好き嫌いとかじゃなくて、ほら、妹コロッケ好きだろ? 単純に妹に喜んでもらいたくてさー」

「好きだけど、お兄ちゃんのコロッケを取っちゃうのは心苦しいからいいよ」

『見苦しいわね』

「ふぐっ!? そ、そうか。妹は優しいなぁ……」コロッケパクー

「ま、言うほど苦手じゃないけどね。ただ、アリかナシかで言えばナシってだけで」モグモグ

「そうなの」

『なーんだ。面白く無いわね。食べたくなくて泣き叫ぶところを見たかったのに』

『それこそ見苦しすぎるよっ!』

31 : VIPに... - 2012/03/23 00:34:06.26 MOKeotDIo 31/444

「おーう、帰ったぞー」

「あら、おかえりなさい」

「おかえりー」ニャーン

「あ、もう先に食べてるな。ちゃんとお父さんの分のコロッケあるんだろうなー?」

「ごめんね。わたしが食べちゃった」

「えっ? 妹、食べちゃったの……?」

「うん、だってお父さん帰り遅いから」


『……食べてないわよね?」

『うん。妹は父さんをからかうのが好きだから』


「そ、そうか、ごめんなあ帰るの遅くて……妹寂しかったのかあ」

「ううん、別に」

「!?」

「ごめんなさいね、あなた。……今日はふりかけとサラダで」

「!?」

「あ、ごめん父さん。もうお米はないから」

「!?」

『私ので良ければこのディナーわけてあげるわ』ススッ

「」

「……ありがとね猫ちゃん。じゃあちょっと貰うね」パク

「食べちゃってる……」

『どう? なかなかイケるでしょ?』ニャーン?

「……うぇ」

『!?』

32 : VIPに... - 2012/03/23 00:35:10.28 MOKeotDIo 32/444

「いやー面白かった! あの父さんの反応!」

「いっつもあんな反応してくれるからいいよね。からかいがいあるよね」

「うんうん。猫ちゃんのご飯食べた時とかもうね。やばい思い出して笑っちゃう」

「ほんとにね。あははは!」

『……私のディナーを食べといて、うぇって何よ。うぇって」

『まー味覚が違うからね。それにしてもあの時の猫ちゃんの反応!』プークスクス

「フシャー!」

「おおう!?」

「しっぽでも踏んだの? お兄ちゃん」

「地雷を踏んだみたい」

「?」

33 : VIPに... - 2012/03/23 00:35:47.01 MOKeotDIo 33/444

数日経って、土曜日

『男っ! 起きなさい!』

「うーん……? どうしたの猫ちゃん……今日は土曜だよー……?」

『ぬいぐるみ! お出かけ!』

「あー思い出した。よし! 起きよう!」バサッ

『今日もいいお天気よ』

「お、本当だ。カーテンの隙間から日が差し込んでるね」シャー

「おー眩しい。絶好のお出かけ日和だ」

『はやくっ! 朝ごはん食べて出掛けましょう!』

「オーケー! となれば下へ行こう!」

『先に行ってるわ!』スタタタタ

(テンション高い猫ちゃん可愛い!)

34 : VIPに... - 2012/03/23 00:36:14.49 MOKeotDIo 34/444

バタバタバタバタ

「あら、今日は早いのね。おはよう」

「おはよう! 今日例のものを買いに行こうと思ってね」

「そう。いいものを選んでくるのよ。ちなみにお母さんたちはもう買ってあるから」

「かぶらなきゃいいね?」

「大人の財力をなめちゃだめよ?」

「というかお父さんのね」

「あら起きたの。おはよう」

「おはよう。母さん、朝飯」

「はいはい。男も食べるわよね?」

「うん。頼むわ」

35 : VIPに... - 2012/03/23 00:36:40.39 MOKeotDIo 35/444

『遅いわよ男! ご飯くらい5秒で食べなさいよ!」

『そりゃ無理ってもんでしょう』

『それもそうね』

『切り替えが早いよね……』

『私は淑女だからね』

『へー』

「ん、食べ終わった。ごちそうさま」

「はいお粗末さま」


「よーし準備万端。行くか猫ちゃん!」

『ええ、行きましょう!』

36 : VIPに... - 2012/03/23 00:38:12.22 MOKeotDIo 36/444

「いってきまーす」

「いってらっしゃーい」

「さてと、とりあえずデパートに行こうか」スタスタ

『あの大きな建物?』テクテク

「そうだよ。あそこにならあるでしょ」

『楽しみね』

「そうだね」

37 : VIPに... - 2012/03/23 00:38:40.16 MOKeotDIo 37/444

デパート近く

「よし、猫ちゃん。そろそろリュックに入ろうか」

『……えっ?』

「いやほら、ペットって普通入れないからね」

『……そうよね。普通入れないのよね』ショボン

「でもバレなきゃ大丈夫。この世界では」

『そうなの?(この世界?)』

「うん。本当はキャリーケースとかに入れないとダメなんだけど、それってロマンがないじゃない。やっぱりリュックとか身近にあるもののほうがロマンがあるじゃない。あわよくばフードとかお腹とかに潜ませたいよ俺は」

『そ、そう、なの?」

「そうだよ。よし、じゃあ思い切って入ってみよう」

『う、うん。大丈夫かしら』

「けっこう大きめのものにしてきたし、タオルとか敷いてるから大丈夫……多分」

『多分!?……ま、いいわ』ストン

『これでいいかしら?』

「うん、バッチリだね。チャックは……これくらいでいい? 暗くない?」

『大丈夫よ、男』

(リュックからこっちを見上げる猫ちゃん可愛い!)

38 : VIPに... - 2012/03/23 00:39:15.46 MOKeotDIo 38/444

デパート内

『ねぇ……』

『うん?』

『このリュックの右側、穴が空いてるんだけど』

『うん。猫ちゃんが外を見られるようにね』

『穴あけちゃったの!?』

『ああうん。でも元からちょっとソコは穴が空いてたんだよね。それをちょっと拡張しただけ』

『……そう。(嘘が下手ね)』

『どう? よく見える?』

『人がたくさんいるわね』

『今日は休日だからねー。あ、顔は出しちゃだめだからね』

『わかってるわよ。あなたに迷惑はかけられないもの』

(可愛すぎ!)

39 : VIPに... - 2012/03/23 00:39:41.53 MOKeotDIo 39/444

ぬいぐるみコーナー

『よーし選ぶよー!』

『おとこっ! 私あっちの方のぬいぐるみが見たいわ!』

『おっどれどれー?』

『そっちじゃないわ! こっち!』

『おっとごめんよ。こっちねー』

『そっちでもない! あっち! あのクマのぬいぐるみのあるところよ!』

『あーあれね! よし、今いくよー!』

『それはウサギのぬいぐるみでしょ!? ちょっと!?』

(無邪気な猫ちゃん可愛い)

40 : VIPに... - 2012/03/23 00:40:09.22 MOKeotDIo 40/444

『よくも、この私を弄んだわね……」

『ごめんね。猫ちゃんが可愛いからつい』

『それで誤魔化される私じゃないわ』ツン

『うーん。あ、そうだ。後でおいしい猫缶買いに行こうか』

『モノで釣ろうってわけ? それでもいいけど私は安くないわよ?』

『じゃあ家帰ったらずっとなでなでしちゃう!』

『……それで手を打つわ』

『えっ?(絶対高い猫缶買わされると思ってた)』

『なによ?』

『いえいえ、慈悲深いお嬢様に感謝していたんですよ』

『わかればいいのよ、奴隷』

『奴隷!? やっぱり奴隷なの!?』

41 : VIPに... - 2012/03/23 00:40:38.75 MOKeotDIo 41/444

『妹の好みから考えて、こっちかこっちね』

『ほう。以前の素行調査が役に立ってるね』

『当然よ。私は賢猫ネコ』

『……それは』

『男の見てたアニメからの知識よ』

「……」

『「はぁ、わっちわっちにされてぇ」』

「!?」

42 : VIPに... - 2012/03/23 00:41:08.58 MOKeotDIo 42/444

『それで、男はどっちのぬいぐるみが良いと思うのかしら』

『そういう猫ちゃんは?』

『じゃあ一斉に言いましょう。白色のクマか、茶色のクマか。私たちの相性が試されるわね……!』

『ふっふっふ。俺たちは最高のコンビ、だろ?』

『キメ顔で言わないでくれるかしら』

『あれー? 完全にキマったと思ったのになー』

『じゃあ行くわよ、せーのっ』

『白色!』
『茶色!』

『……』

『……ぬしとわっちは相容れないようじゃの』

『それはもうやめてよ!!』

『大体、白って私とかぶってるじゃない』

『あ、そういう理由だったのね。じゃあ茶色のクマにしようか』

『……あっさり折れたわね』

『うん。元々猫ちゃんに選んでもらうつもりだったからね。じゃなかったらこんなリュックに入れてまで連れてきた意味無いでしょ』

『そういうことね』

『そういうこと』

43 : VIPに... - 2012/03/23 00:41:35.53 MOKeotDIo 43/444

『よし。ぬいぐるみも買ったし、帰ろうか』

『そうね。ここもちょっと窮屈だわ』

『そうだよね。じゃあ早く外に出ようね』

『そうしてくれると助かるわ』

デパートの外

「はい猫ちゃんお疲れ様」ダキアゲ

『ふぅ。狭かったわ』

「じゃ猫ちゃんを下ろして、代わりにぬいぐるみをリュックに入れてっと」

『男、私疲れたわ』ペタン

「え? ああそうだよね。疲れたよね」

『もう色々なところに疲れが溜まってるわ』

「そうだよねぇ。普通リュックの中なんて入らないもんね」スタスタスタ

『……だっこ』

「……もう! 可愛いな猫ちゃんは!」タタタ ダキッ

『ふぁ、も、もっと優しく抱きあげなさいよ!』

「ごめんね。可愛くてつい」ナデナデ


(……なんでこんなにおちつくのかしら)

44 : VIPに... - 2012/03/23 00:44:06.16 MOKeotDIo 44/444

数日後 妹の誕生日

「よーし母さん電気消してくれ」

「はいはい」パチッ

「よーしお父さん、マジックでロウソクに火つけちゃうぞー」
「はい男、マッチ」
「OK。つけるよ」
「あれ? お父さんの声届いてないのかな? チャフ?」
『男どこ…どこにいるの?』
『ここだよ猫ちゃん、はい膝の上……って猫ちゃんって暗いところでも見えるよね?』
「ニャーン」
『可愛いけどずるい!』
「男、早く火つけなさい」
「あ、うん。……火つけたよ」
「おーう、それじゃあみんなで歌うぞー。せーのっ」

ハッピバースデイトゥーユー ハッピバースデイトゥーユー
ハッピバースデイ ディア いもうとー!
ハッピバースデイトゥーユー!!

「おめでとー!!」パチパチパチパチパチ

「ニャーン!」

「いえーい!ありがとー!」

「ほら、バスケで鍛えた肺活量で! 一息で消せよ!」

「うん!」フゥー!

「おぉ! 流石は俺の子だな!」

「私の血がいいのねぇ」

「ありがとお母さん!」

「あれ? お父さんへの言葉が届いてないよ? ジャミング?」

「父さん、電気つけてきてよ」

「あれ? 風当たりが強い……ここだけ天候がどうかしちゃってるのかな?」パチッ

45 : VIPに... - 2012/03/23 00:44:41.92 MOKeotDIo 45/444

――

――――

「いやー食った食った。ケーキもおいしかったし大満足だなぁ」

「わたしもおなかいっぱいだよー」

『そうね。今日の猫缶は一味違ったわね』

『猫缶ばっかりだと太りそうだね』

『乙女に対して言っていいことと悪いことがあるのは知ってるわよね?』

『大丈夫、猫ちゃんがデブ猫ちゃんになっても愛せるよ』

『……』ガリッ

「いたっ!」

「どうしたのお兄ちゃん」

「いや、ちょっと舌を噛んじゃってね」

「いま何も食べてなかったのにね。 早口言葉でも言おうとしたの?」

『デリカシーのないことを言ったのよ』ニャン

(怒ってる猫ちゃんも可愛いなぁ)

46 : VIPに... - 2012/03/23 00:45:08.67 MOKeotDIo 46/444

「今日は妹にプレゼントがあるんだぞー!」

「え、なになに?」ワクワク

「はい、妹」

「うわーなんだろう。開けていい?」

「どんどん開けなさい」


「あー! これわたしが欲しかったバッシュ!」

「ありがとう! お母さんお父さん!」

「これからもバスケット頑張るんだぞ」

「ずっとスタメンね」

「うん! 頑張るよ!」

47 : VIPに... - 2012/03/23 00:45:42.93 MOKeotDIo 47/444

「あー、ごほん。妹、俺からもプレゼントがあるんだけど」

「お兄ちゃんも!? どういう風の吹き回しなの?」

「俺の時にプレゼントくれたでしょ。お返しだよ」

「ヒュー!」

「うるさいぞ父さん」

「冷たすぎるぞ……ここがツンドラ地帯なの?」


「はい、妹。誕生日おめでとう」

「これは猫ちゃんが妹の好きそうなものを選んでくれたんだよ。ねー?」

『そうよ。間違いなく気に入るわ」ニャニャン

「猫ちゃんが? ほぇーそうなんだ……あけていい?」

「もちろん」

ばさり モコモコ

「すっごく可愛いぬいぐるみだっ! ありがとう猫ちゃん! お兄ちゃん! 大事にするね!」

「気に入ってくれてよかった。ね? 猫ちゃん」

「ニャーン!」

「あはは、猫ちゃんも喜んでる。わたしも嬉しいよー!」ホオズリ

「ニャニャン!」

48 : VIPに... - 2012/03/23 00:47:57.32 MOKeotDIo 48/444

――

―――――

男の部屋

「ふぃー。楽しかったね、猫ちゃん」

『そうね。楽しすぎてちょっと疲れちゃったわ』


「……おいで、猫ちゃん」

『うん』トテトテ ポフ

「やっぱり猫ちゃんと居るとあたたかいね」ナデナデ

『私も……あたたかいし……おちつくわ』

「うん」

『ねぇ、おとこ』

「うん?」

『家族ってあたたかいわね』

「そうだね」ナデナデ

『これからもずっとこんな日常が続くといいわね』

「続くよ」ナデナデ

『おとこは私にメロメロだから離れられないものね』

「そうだね」ナデナデ

『でもね。私もあなたから離れられないから気にする事はないわ』

「あれ? 今日はいつも以上に可愛いね」ナデナデ

『いつもかわいいわよ。おとこ……私、もうねむいわ』

「よし、じゃあ寝よっか」

『わたしがねむるまで……ずっとなでなでしてて』

「うん、いいよ」ナデナデ

『ずっとそばにいてね』

「うん。もちろん」ナデナデ




『おとこ……わたしね、あなたのこと――』


『――俺もだよ、猫ちゃん』

49 : VIPに... - 2012/03/23 00:48:23.67 MOKeotDIo 49/444

――

――――


『男、起きなさい。遅刻するわよ』

「うーん……頭に直接響く可愛い声だあ……」

『もう妹と父は出かけたわよ。ほらっ男も! 今日から3年生なんでしょ!』ペシペシ

「うーんもふもふだぁ。よし、起きよう!」バサッ

『おはよう、男』

「おはよう、猫ちゃん。いつもありがとね」

『もう、そんなの当然のことよ。はやく朝ごはん食べましょ。私おなかペコペコよ』

「待っててくれる猫ちゃん可愛すぎ!」

50 : VIPに... - 2012/03/23 00:49:40.57 MOKeotDIo 50/444

「それじゃいってきまーす」

「いってらっしゃい。あら、猫ちゃんは今日も行くのね?」

『私がいないと男は学校まで行けないからね』ニャンニャン

「太ってきたから散歩したいんだって痛っ!」

「何やってるのよ。猫ちゃんは賢いんだから悪口いったらわかるわよ」

「そうでした」テヘ

『冗談だよ猫ちゃん。猫ちゃんはいつもスレンダーで可愛いよ』

『当たり前でしょ。まったく私にメロメロだからって意地悪言わないでくれる? こどもなの?』

『……そのこどもに夜はあかちゃんみたいに甘えてくるのにね』

「フシャー!」

「おおう!? じゃあ行ってくる!」タタタタ

『待ちなさい! 男!』スタタタタ

「車に気をつけるのよー!」



「……今日も平和ねぇ」


おわり。

52 : VIPに... - 2012/03/23 00:53:19.84 MOKeotDIo 51/444

ここまでお読み頂いてありがとうございました

初SSでした。予想以上に難しくてワロタ
いろいろ見苦しいなと自分でも思います

ここまで全部自分のレスというラストサムライっぷりに震えが止まらない

63 : ◆GHUWFQMrBU - 2012/03/23 20:31:27.75 MOKeotDIo 52/444

万が一のためのトリ

レスありがとうございます。楽しんで頂けたなら幸いです
おわりと書いてしまった手前、微妙に続きは書きにくいのですが、
自分の気持ち的には、まだこの設定で何か書きたいと思っています

何も思い浮かばなかったらHTML化依頼を出しますので

68 : VIPに... - 2012/03/24 14:19:57.23 6pssRfWJo 53/444

「ただいまー」

『おかえり、男』

「おー猫ちゃんがお出迎えなんて嬉しいね」

『あのね、男。前にも言ったと思うけど、ここは日当たりがいいのよ。それだけだから』

「そっかそっか。確かにここは暖かいよねぇ。じゃ俺はリビングにいるから」スタスタ

『……』スタタタ

「あれ? 猫ちゃん、ひなたぼっこはいいの?」

『そろそろテレビが見たいと思ったのよ』

「ふぅん」

『あなた、信じてないわね』

「ううん。そんなことないよ。もう日も沈むもんね』

『わかればいいのよ』トテトテ

(可愛すぎ!)

69 : VIPに... - 2012/03/24 14:20:33.79 6pssRfWJo 54/444

「ふぅー今日は疲れたなぁ」

『いつにもましてくたびれてるわね』

「うん。3年になってクラスが変わったからね。知らない人がそこそこいるんだよ』

『ふぅん。男は友達がいないものね』

「おるわい!……少ないけど」

『でも安心しなさい。私はずっと男の味方よ』

「心強いなあ。それなら安心だね」

『だから上等な猫缶を月に10個貢ぐといいわ』

「友達料!?』

70 : VIPに... - 2012/03/24 14:21:05.62 6pssRfWJo 55/444

「やっぱりこの時間はニュースばっかりだ……」

『私が膝にいるからいいじゃない』

「そうだね」

『これがお店だったら数万は取られるわね』

「妙にリアルな金額だね……」

『でも男は特別にタダよ』

「ありがたいなぁ」

『でもそのかわり、ここは私専用だから』

(独占欲な猫ちゃん可愛すぎ!)

71 : VIPに... - 2012/03/24 14:21:33.68 6pssRfWJo 56/444

TV「東京では7日に桜が満開になる予想です――」

「へぇ、7日かー。じゃあここはもうちょっと先かな」

『この辺に桜はあるのかしら?』

「あるよー。学校には絶対といっていいほどにあるよ」

『そうなの?』

「そうだよ。妹の中学にも、俺の高校にもあるよ」

「明日休みだから一緒に見に行こうか」

『ええ、是非とも見たいわ! 忘れて寝坊しないでね』

「その時は猫ちゃんが起こしてくれるでしょ?」

『甘えないでくれる?』

「そっかー。じゃあもしかしたら一緒に見に行けないかもしれないね』

『誰も起こさないとは言ってないじゃない。私はね、あなたが将来ひとりで起きられなくなったら困るっていうことをね、ただわかってほしいってだけであってね』

「心配してくれちゃう猫ちゃん可愛い!」ダキッ

『ふぁ。ちょ、ちょっと男!』

72 : VIPに... - 2012/03/24 14:22:22.90 6pssRfWJo 57/444

「ご飯よー。あら、相変わらず男と猫ちゃんは仲良しね」

『男が私にメロメロなのよ』ニャンニャン

「そうなんだよねぇ。猫ちゃん可愛くてさー」ダキアゲ

『んっ、いきなり抱きあげないでっ』ニャン

「はいはい熱々ね。ご飯は冷めちゃうから早く来なさい」

「おーう。よし、猫ちゃんいこっか」

『そのままエスコートしなさい』

「わかってますよ。お嬢様」

『ならいいのよ、奴隷』

「いつになったらランクアップするの!?」

73 : VIPに... - 2012/03/24 14:23:00.16 6pssRfWJo 58/444

食卓

「いただきます」

「いただきまーす」

『いただきます』ニャーン

「あれ、妹いつ帰ってきたの?」モクモク

「ついさっき。また友達と話し込んじゃってさー」パクパク

「あぁ。みーちゃん?」

「ううん。ゲーちゃん」

「ゲーちゃん!? どうしたらそんな呼び方になるの!?」

「そんなのゲロに決まってるじゃない」

「母さん、いま食事中……」

「お母さん大当たり!!」

「いじめじゃないの!?」

『私はゲームのゲーだと思ったわ……』

『猫ちゃんの意見を支持するよ……ほんとに……いやそれでも普通ゲーちゃんとはならないよね……』

『そうね。そしたら男なんてキーモくんとかになってるわね』

『いじめられてるね!』

74 : VIPに... - 2012/03/24 14:23:29.60 6pssRfWJo 59/444

「ごちそうさまー」

『ごちそうさまでした』ニャーン

「はい、お粗末さまでした」


「おーう帰ったぞー! 愛しの家族よー!!」

『お酒臭いわね』ニャーゴ

「酒臭いぞ」

「あら、ほんとね」

「お父さん、悪いんだけど物置で過ごしてくれる?」

「妹!? いつになく辛辣だよ!?」

「ゲロってるところを窓から見られてゲーパパとか言われたくないからね」

「言われたくないならゲーちゃんって呼ぶのもやめてあげて!」

75 : VIPに... - 2012/03/24 14:24:02.29 6pssRfWJo 60/444

「さてと。そろそろ寝ようかな」

『最近早いのね』

「その代わり早起きでしょ? 6時は余裕だよ」

『それはどうかしらね。私が起こさなかったらずっと寝てると思うわ』

「そんなことないって」

『なら賭ける?』

「ほう?」

『明日の6時までにあなたが自然に目覚めるか否か……私は起きられない方に賭けるわ』

「もちろん俺は起きる方ね」

『じゃあ賭けの内容は、勝った方の言うことをひとつ聞くってのはどう?』

「うぉー! 猫ちゃんになんでもお願いしていいなんて夢のようだああああああ!!」

『ちょっと! まだ勝負が決まったわけじゃないわ!』

「そんなこと言われて起きない奴がいるのかああああ!? いいや、いないね! 絶対6時までに起きるぜえええええ!!」

『……ま、明日になれば分かることよ」

76 : VIPに... - 2012/03/24 14:24:55.31 6pssRfWJo 61/444

翌日 土曜日

(んぅ、あったかい……これは……男の腕ね)ムクリ

(さて、今は何時かしら……5時40分ね)

(全然起きる気配がないわね……いつもならギリギリの時間まで男のそばで寝ちゃうけど)

(今日は見届けないとね。6時を過ぎる瞬間を……!)

(なんてね。……それにしても、暇ねぇ)

(男……前髪のびたわね)ススッ

(ほっぺ柔らかい……それとも私のにくきゅうが柔らかいのかしら)プニプニ

(こんなにしても起きないなんて……男って鈍感)プニプニ

(本当なら賭けなんてしなくても男の言うことなら何でも聞ける……ううん、聞きたいのだけど……こういう機会でもないと、ね)プニプニ

(ほんとうに……鈍感)プニプニ

77 : VIPに... - 2012/03/24 14:25:35.77 6pssRfWJo 62/444

(起きてるけどもー!)

(猫ちゃんがぷにぷにしてくれるのが嬉しくて起きられないよ!)

(参ったなぁ。いま何時なんだろう。自然に目を覚ますのが目的だからアラームは禁止されてるんだよね。だから6時を過ぎてるのかもわからない……!)

(ならいっそのこと、この至福の時間を目一杯過ごすのが最善なのでは?)

(いやしかし勝者の特権も捨てがたい……!)

(でもお願いしたいことって特にないんだよね……今で十分だから)

(どうしよう……あ、なんかまた眠くなって――)

78 : VIPに... - 2012/03/24 14:26:23.44 6pssRfWJo 63/444



(結局、男は6時を過ぎても起きなかった)

(ずっとほっぺをつついてたのにね)

(私が勝っても……あんまり意味ないのに)

(私は、いつもよくしてくれる男に何かお返しをしたかった)

(……次は甘噛みでもしてあげようかしらね。それでも起きなかったら……猫パンね)

(私も寝よう)モゾモゾ


79 : VIPに... - 2012/03/24 14:26:50.18 6pssRfWJo 64/444


――

――――


「男ー! 入るわよ」

ガチャ

「男、起きてる?」

「うーん……どうしたの母さん……今日は土曜でしょ……」

「男、あんた猫ちゃんと桜見に行くって言ってなかった?」

「はっ! いま何時!?」

「そうねだいたいねーって8時過ぎだけど……あら、猫ちゃんはまだおねむなのね」

「」zzz

「ん? 本当だ、珍しい。こんな近くで丸まって寝てたらちょっと危ないよね」ナデナデ

「でもあんたは寝相良いからね。小さい頃から」

「あーやっぱりそうなんだ。……猫ちゃんが起きたら行くよ」

「そう。朝ごはんあるからね」

「うーい」

80 : VIPに... - 2012/03/24 14:28:30.03 6pssRfWJo 65/444

「今日も眩しいなー」シャー

「絶好のお散歩日和だ」

『んぅ…むにゃ……男……あれ、男は……?』ムクリ

「こっちだよ猫ちゃん」

『そこにいたの。……私も寝ちゃったみたいね』

「うん。でも今回の賭けは俺の負けだね。見事に寝ちゃってた」

『そう。やっぱり私の言った通りね』トテトテ

「そうだね。でも猫ちゃんさ、朝一度も起きなかったの? 起きてたなら起こしてくれれば良かったのに」

『私も寝てたわ』

「あ、そうなの」

「じゃああれは夢だったのかなあ。なんか顔を肉球でぷにぷにされる感触があってさー」

『……』

「あ、それで猫ちゃんどうする? 何でもいうこと聞くよ? 猫缶?」

『……考えとくわ』

81 : VIPに... - 2012/03/24 14:29:43.55 6pssRfWJo 66/444

バタバタバタバタ


「おっはよう!」

『おはよう』ニャーン

「おはようお兄ちゃん猫ちゃん」

「お兄ちゃん。昨日、『6時までに起きるぜ!』とか言ってなかった?」

「寝坊したのさ……理由は幾万もあるけど、長くなるからやめとくね」

「あ、お母さん。今日みーちゃんと遊ぶから」

「スルーね。お得意のスルーね」

「わかったわ。遅くならないようにね」

「うん」

「父さんは?」

「新聞持ってトイレよ」

「なんて迷惑な……! トイレ行こうと思ってたのに……!」スタスタ

「おい父さん! 早く出ろよ! 妹が漏らしそうって泣いてるぞ!」

『ええっ!? トイレ入る前に妹に聞いたけど、大丈夫って言ってたぞ!?』

「妹が気を遣ったんだよ! 早く出ろや!」

『Oh……まだ何も出してないのに。あ、早く出ろってそういう意味?』

「どっちでもいいわ!」

82 : VIPに... - 2012/03/24 14:30:10.55 6pssRfWJo 67/444

「よし、準備万端。いこっか猫ちゃん」

『ええ、しっかりエスコートしてね』

「ま、いつもの道だけどね。猫ちゃんは通学路の途中までだから桜は見えなかったんだね」

『そうね。あんまり家から離れたくないから』

「うん。それがいいよ。危ないからね」

『男はそのうち家から出なくなりそうね』

「ヒキコモリにはならないよ!」

『はいはい。じゃ、行ってくるわね、母、妹』ニャーンニャン

「いってきまーす」

「いってらっしゃーい」

83 : VIPに... - 2012/03/24 14:30:46.83 6pssRfWJo 68/444

「もう春だねー。ちょっと寒いかな?」スタスタ

『私であたたかくなってもいいわよ』スタタタ

「えっ!? そんなサービスがあるの!?」

『ええ。私を抱えて全力でダッシュすると、途端にあったまるわ』

「それ猫ちゃん抱えなくてもいいよね……」

『あら、このもふもふをなめてもらっちゃ困るわね』

「確かにもふもふで暖かいけどさー」

『ま、私が疲れた時にはそうしてもらう予定だから今はいいわ』スタタタ

「それはお安い御用だよ。ダッシュは遠慮するけど」スタスタ

84 : VIPに... - 2012/03/24 14:32:12.79 6pssRfWJo 69/444

「あ、見えてきた。あれだよ猫ちゃん!」

『えっ、どれ!? ここからじゃ見えないわ!』

「あっとごめん。よく見たらパチンコ屋の看板だった」

『そんな見間違えするわけないでしょ! ふざけな――」

「あーっと! 猫ちゃん今度こそ見えた! あそこあそこ!!」

『どこなの!? 私の高さでも見えるの!?』

「おっとごめんよ。よく見たら開店オープンの花輪だったよ」

『……私もね、大概のことは許せるけどね、あんまりばかにされると――』

「猫ちゃん猫ちゃん! 今度こそ! 今度こそ桜だよ!! あれ見て!!」

『どこどこ!? 私の視力でも確認できるの!? 桜どこ!?』

(無邪気すぎて可愛い!)

85 : VIPに... - 2012/03/24 14:33:02.76 6pssRfWJo 70/444

『よくも。よくもこの私をもてあそんだわね。これ二回目よ』

「ごめんね猫ちゃん。ほら、俺って猫ちゃんにメロメロだからさ。つい、ね」

『そんなので誤魔化される私じゃないって前も言ったわよね?』

「そ、そうだっけ?」

『明日もずっと私と一緒に過ごしてくれるなら許すわ』

「えっ? うんそれは大歓迎だよ」

『なら許すわ。私の寛大な心に感謝しなさい』

「ありがとうございます。お姫様」

『きびきび働くのよ、下人』

「そんな言葉どこで覚えてきたの!? しかもランクアップしてないね!?」

86 : VIPに... - 2012/03/24 14:33:41.90 6pssRfWJo 71/444

高校外周

「ほら、猫ちゃん。あれが桜だよ」

『……きれいね』

「綺麗だよね。春といえばコレ!って感じだよね」

『……男』

「うん?」

『あの桜の花びら10枚とってきて。舞ってる花びらね』

「えぇ!? なんでそんな急に無茶振り!?」

『冗談よ。男、もっと高いところで見たいわ』

「いいよ。ほらっ」ダキアゲ

『んっ。下から眺める分には低い方がいいわね』

「あ、そうなんだ。じゃあ俺は座ろうかな」

『あなたね、そしたら私も低くなるじゃない』

「そうでした」テヘ

87 : VIPに... - 2012/03/24 14:35:03.49 6pssRfWJo 72/444

『あ、男。あれ見て』

「えーどれー?」

『あそこの桜の木の幹、父の顔に似てないかしら?』

「え、どの桜の木? ちょっとだっこするから猫ちゃん指さしてみて」ダキッ

『あそこよ』ビシ

「うーん。大まかな方向しかわからないなあ」プスクス

『あなた……私が必死に前足伸ばしてるの見て面白がってるわね』

「そ、そんなことないよ! だからもう一回だけお願い!」

『仕方ないわね……あそこよ!』ビシィ!

「っ! くっ、まだ笑うな……! いやダメだ! あはははははは!! 全然さっきと変わってないよ猫ちゃん! 大まかにしかわからないよ! あ、ダメだ笑い止まんない、あっはははは!! ひぃー!」

『……』ペシペシペシペシ

「うぉこんなに叩かれるのは初めてかも!? おぶっ」

『新技 猫パンチよ。略して猫パン』

「猫ちゃんのパンツ?」

『……』ペシペシペシペシ

「あいたたたたた! ごめんね猫ちゃん!」

88 : VIPに... - 2012/03/24 14:35:51.02 6pssRfWJo 73/444

高校外周 グラウンド前

カーン! サードォ! ズササァ!

『男、あれは何をやっているの?』

「あれは野球だよ。今はノックをしているみたいだね」

『ドア叩いてないじゃない』

「そのノックじゃないんだよー可愛いねぇ猫ちゃんは」

『トランプがないじゃない』

「ジン・ラミーのノックでもないんだよーってどこで覚えたの!?」

「知ってるならあとで一緒にやろうねー」

『いいわよ。猫界ではセブンスランの異名で恐れられてたわ』

「なにそのかっこいい名前……7枚のランをいっつも作るの? それすごいねぇ」

『違うわ。3枚のランにだいたい7が入ってるだけよ』

「普通だね!」

89 : VIPに... - 2012/03/24 14:36:32.10 6pssRfWJo 74/444


「あれ? 男じゃん。何してんのこんなところで」

「おー。猫と散歩に来てるんだよ」

『誰?』

『クラスメイトだよ』

「へぇ、猫って散歩するんか。どれ、チッチッチ」

「」ササッ

「あれま、男の陰に隠れちゃった」

『別に怖くないよ』

『わかってるけど……本能よ』

(可愛い!)

90 : VIPに... - 2012/03/24 14:37:48.32 6pssRfWJo 75/444


「あ、今からクラスの連中とカラオケ行くんだけど、来る? 猫はおいてかなきゃだけど」

「え? うーんそうだなぁ(友達の少ない俺としてはノリの悪い奴とは思われたくないんだけど、かといって猫ちゃんを置いていくのは絶対嫌だし、そもそもカラオケなんてめったにいかないからよくわからないし、でもここの返答しだいではクラスメイトに対する印象が変わってきそうだから、でも自分の気持ち的には断りたくて……あぁどうしたらいいの、どうしたらいいんだー!)」

『男、朝の賭けでなんでも言うこと聞くって言ったわよね。今その権利を使うわ。断りなさい』

「ごめんな。ちょっとこれから用事があるんだ」

「そうか。んじゃまー仕方ないな。また今度な!」タッタッタ

「おーう!」フリフリ

『元々断るつもりだったよ』

『そうかしら? 結構悩んでるように見えたけど』

『まぁちょっとはね。でも猫ちゃんがああ言ってくれたおかげで助かったよ』

『そう。ならいいわ』

『ノーカンでもいいよ?』

『いえ、いいわ。お願いを聞いてくれたのは確かだから』

(男のことを考えるなら……行かせた方が良かったのかもしれない。でもこういう時くらい、男を独占したっていいじゃない)

91 : VIPに... - 2012/03/24 14:38:40.39 6pssRfWJo 76/444

「そろそろ帰ろうか」

『そうね。ねぇ、男』

「うん?」

『この道、結構荒れてると思わない?』

「あーそうだねぇ。砂利はあるし、デコボコしてるよねぇ。ここで自転車をパンクさせちゃう人がいっぱいいるんだよ」

『ふぅん。そうなのね』

「うん。それに、雨が降ったりすると滑り易くもなるから、ここを走るときは慎重になるんだよねぇ」

『ふーん。そうなの』

「あと道が狭いよね。車2台すれ違うのギリギリだもんね」

『へー。そう』

「……もう! 猫ちゃんは可愛いなぁ!」ダキアゲ

『あっ。足が痛くなるのが嫌なのよ。それだけなのよ』ニャーンニャン

「わかってるよ。猫ちゃんの可愛い足が傷ついちゃうもんね」ナデナデ

『……もう。ほんとうにわかってるのかしら』

92 : VIPに... - 2012/03/24 14:40:33.48 6pssRfWJo 77/444

「ただいまー!」

『ただいま』ニャーン

「あら、おかえりなさい。桜はどうだったの?」

「ほとんど満開だった。綺麗だったよ」

『綺麗だったわね』ニャーオ

「そう。良かったわね、猫ちゃん」ナデナデ

『母も見た方がいいわ』ニャンニャン

「猫ちゃんは花より団子かしらね。ふふ」

『そんなに食いしんぼうなイメージがあるのかしら……淑女としてそれはどうなの……?』

『大丈夫だよ猫ちゃん! 全然太ってないから! 食欲旺盛で痩せてるなんて最高だよ』

『そ、そうかしら? まぁ男がそう言うなら――』

『でも年とってから太りそうだよねぇ』

『……』ペシペシ

「あら。猫ちゃんご機嫌ななめね。抱き方が下手なんじゃない?」

「そうかもね。なら下ろしてあげなくちゃね。はい」

『……』ショボン

「なーんてね! 母さん、俺、猫ちゃんを抱っこする技術は世界一だから!」ダキッ

「はいはい」


(……そうね。こんなにあたたかい気持ちになるのは、きっと男の腕のなかが世界一ね)

93 : VIPに... - 2012/03/24 14:40:56.40 6pssRfWJo 78/444



『男、賭けをしましょう』

「お! イカす女って感じだねぇ」

『当然でしょ。なにせ私は淑女だから』

「淑女は賭けないと思うけどね」

『いいから。内容は前回と同じでいいわね』

「望むところだよ猫ちゃん! 今度こそ起きるからね!」

『果たして起きられるかしら? この寝坊助さんは』

「食いしん坊さんには負けないよ!」

『あなたね。私も今までツメを立てることはなかったけど、そろそろ解禁しようかしら』

「あぁごめんね猫ちゃん! イタリアンジョークだよ!」

『私を笑わせたいならメキシカンジョークにしなさい』

「ええっ!? べ、勉強しとくよ」

『冗談よ。カザフスタンジョーク』

「そんなのあるの!?」

94 : VIPに... - 2012/03/24 14:41:44.75 6pssRfWJo 79/444

『そろそろ寝ましょう、男』

「そうだね。そろそろ寝ないと6時までに起きられなくなっちゃうからね」

「よいしょっと」バサ

『……』モゾモゾ

「最近はこうやって寝るのが自然になってきたね」

『なに? 私の添い寝が不満かしら?』

「まっさかー。こうなったら添い寝なしに戻れないよ」

『そう……それは、わたしもよ』

「おろ? あ、もう眠いんだね」ナデナデ

『なめないでくれる? 元はやこうせいなのよ』

「それも今は昔なんでしょ。ほら、おやすみ、猫ちゃん」ナデナデ

『おやすみ、おとこ……なでなでやめちゃだめだからね』

『わかってるよ猫ちゃん』ナデナデ

(これはまた寝坊かな?)

95 : VIPに... - 2012/03/24 14:42:54.56 6pssRfWJo 80/444

日曜日

(ふぁ……あったかいわね)

(時間は……5時50分ね)

(男はまだ寝てるのね)

(もう。何のためにもう一度賭けをしてるのかわかってるのかしら)

(わかってないわよね)

(……よし)

96 : VIPに... - 2012/03/24 14:43:54.22 6pssRfWJo 81/444

(寝てるわね……)

「……」

『……』カプ

『……』ペロペロ カプ

『……』カプ カプ

「……」プル

『……』

(猫パン決めるしかないわね)

『……』ゲシッ! ゲシッ!

「っ……」

『……』

(これでも起きないの……? これはもうダイブ決めてやるしかないわね)ノソ

(とう!)ビターン!

「…むごっ。もがっ!(息ができない! なになに!? 何されてるの!?)」

「っぷはぁ! ちょっと猫ちゃん! なんで顔に覆いかぶさってるの!?」

『あら、ごめんなさいね。ちょっと寝ぼけてたみたい』

「そんな寝ぼけ方ある!? 今まで一度もなかったよね!?」

「ニャーン」

「ずるい! でも可愛い!」

97 : VIPに... - 2012/03/24 14:44:44.22 6pssRfWJo 82/444

『それより。いま何時なの?』

「あ、そうだね。今は……5時58分」

『あら。私の負けみたいね』

「えー。でも猫ちゃんに起こされたようなもんだし」

『負けは負けよ。福本の世界ではそんなの通用しないわ』

「ここは平和な世界だから……ま、いっか」

『なんでもおねだりするといいわ。猫にできる範囲でね』

「うーん、そうだなぁ……よし、決めた」

『何かしら?』

「今日も俺と一緒に遊ぶこと! いいよね?」

『!』

『……そんなの。そんなの、良いに決まってるじゃない! というか昨日私が先にその約束したわよね!?』ペシペシ

「あれ? そうだったっけ? まぁいいじゃない!」ナデナデ

『もう! ……ま、いいわ。今日は私が男をたくさん楽しませてあげる』

「となれば! まずは朝ごはんだね!」ガチャ バタバタバタ

『母はまだ寝てるんじゃないかしら』スタタタタ

『大丈夫! 俺、こう見えて朝ごはんづくりの名手って言われてるから!』

『初めて聞いたわね……ま、いいけど。なら早く作ってくれる? 私も猫缶早く食べたいんだから』

『待っててくれる猫ちゃん可愛すぎ!』




「あらあら、台所に先客が……ふふっ。なんだかふたりとも楽しそうね」




106 : VIPに... - 2012/03/25 21:52:14.38 catOxtR9o 84/444

とある夕方

TV「皆さんご覧下さい。このぷりっぷりのエビ! とても鮮やかな色合いで――」

「この時間はグルメ特集も多いよね」ナデナデ

『猫缶特集とかやらないかしら』

「ニッチすぎるね……動物番組でならやってるかもね」

『そういえば、男はあんまりそういうの見ないわね』

「ん? だって猫ちゃんがいるんだから見なくていいでしょ」ナデナデ

『そ、そうかしら?』

「そうだよ。もう我が家のアイドルだね」ナデナデ

『もう。メロメロにも程があるんじゃない?』

「そうだねぇ。猫ちゃん以外は目に入らないね」

『ダウト』

「えっ?」

107 : VIPに... - 2012/03/25 21:53:06.79 catOxtR9o 85/444

『あなたね、知ってるのよ私は! ソフトバンクの犬っころを見て、「かわいいな……」って男が言ったことを!』ペシッ!

「犬っころって……。えーっと、そんなこと言ったかな……?」

『言ったわよ! このホモ!』

「ええっ!? それは違うよ猫ちゃん!」

『だいたいあの犬っころ、私と色がかぶってるのよ……!』

「そ、そうだね」

『白けりゃ何だっていいわけ!? ならホワイトハウスにでも求愛してればいいわっ!』

「あ、あれー? なんか今日はヒートアップしてるなぁ。犬が苦手なのかな?」

『男は私だけ見てればいいのっ!』

「いつもそうしてるつもりなんだけどなー」

『……そう。ならいいわ』

「切り替えが早いんだよね、猫ちゃんは……」

『ちょっと、手が止まってるわよ』

「ごめんね」ナデナデ

108 : VIPに... - 2012/03/25 21:54:47.25 catOxtR9o 86/444

TV「――短すぎるぞおまえ」

『あ、お父さんだ……かわいい』

『ちょっと男!?』

「え、なに?」

『今ね、私の頭の中に、お父さん可愛い、とかいうのが聞こえてきたんだけど!?』

「あれ? テレパシー送っちゃってた? 気のせいじゃない?」

『ふぅん、そう。しらばっくれようってわけね』

「ち、違うよ猫ちゃん。多分、上戸彩可愛い、って言ったのを猫ちゃんが聞き間違えたんだよ!」

『テレパシーを聞き間違えるわけないでしょ? ばかなの?』

「あーあれだ。うちの父さんを可愛いって……あ、これは無理だ」

『観念することね』

「すみませんでした!」

『もう……私が眠るまでなでなでしてくれたら許してあげるわ』

(毎日やってることなのに、それで許してくれちゃう猫ちゃん可愛すぎ!)




118 : VIPに... - 2012/03/26 20:58:07.57 IhhUt3l+o 88/444

ゴールデンウィーク 5月3日 午前

「暇だ……GWなのに暇ってまずいよね……」

『そうね。とても健全な男子高校生とは思えないわね』

「あのね、猫ちゃん。一応4月の連休中に友達と遊びに行ったからね」

『でもその一日だけじゃない』

「そうなんだよねぇ。そいつ、家族で旅行に行っちゃったからさー。もう遊べないんだよねぇ」

『あら、ここと似てるわね』

「うちは夫婦で旅行だからなぁ。なーにが、夫婦水入らずで、だよ」

『でも妹は遊びに行きまくってるわね。部活に遊びに大変ね』

「何が違うの……? こんなにフレンドリーな男もいないよ……?」

『単にあなたが出不精なだけでしょ。自分から誘ったりしているのかしら?』

「だって断られたらへこむし……俺の誘いって自分でも魅力に感じないし……」

『あなたね、そんなだからダメなのよ』

「いいもん! 猫ちゃんがいるからいいもん!」

『……嬉しいような悲しいようなって感じだわ』

119 : VIPに... - 2012/03/26 20:58:35.99 IhhUt3l+o 89/444

バタバタバタバタ

「あ、お兄ちゃん。今から出掛けてくるから」

『あら、妹は今日も遊びに行くみたいね?』

『そ、そうみたいだね。べ、別に羨ましくなんか!』

『はいはい。男がやってもきもいから』

「……おーそうか。お昼はいらない感じ?」

「うん。外で食べてくる」

「誰と遊ぶの? みーちゃん?」

「ううん。ガリガリ君」

「ガリガリ君?」

「うん。同じクラスの」

「ふぅん。わかったよ。いってらっしゃい」

「いってきまーす!」タタタ

120 : VIPに... - 2012/03/26 20:59:06.83 IhhUt3l+o 90/444

『行っちゃったわね。ま、今日は天気もいいし、ましてGWだものね。普通遊ぶわよね』

「そんなことより猫ちゃん! どうやら妹にボーイフレンドができたみたいだぞ!」

『そうみたいね。でも、ガリガリ君って名前はどうなのよ』

「妹のことだから多分あだ名でしょ」

『ガリガリなのかしらね……』

「何にしても気になるね。妹が変な奴とお付き合いしてたら心配だ! 後をつけよう!」

『……あんまり心配そうじゃないわね』

「そんなことは断じて無いよ! 別に私立探偵とか刑事とかに憧れてて尾行をしてみたいとかじゃないよ!」キラキラ

『尾行したいのね。……でも賛成よ! 私も気になるわ……!』

「意外とノリノリな猫ちゃん可愛い!」

121 : VIPに... - 2012/03/26 21:00:09.20 IhhUt3l+o 91/444

「」スタスタスタ


『こちら男。ターゲットは徒歩で移動中。特に異常は見えない。どうぞ』

『こちら猫。ターゲットは浮かれ気分の模様。顔がほころんでるわ。オーバー』


『なんてね! 無線とかよく知らないけど、こういうやり取りやってみたかったんだよね!』

『もう、子供ね。でも楽しいわね』

『猫ちゃんもノリノリじゃない』

『あなたに合わせてあげてるのよ……あ! 妹が止まったわ!』

(ちょっと興奮気味な猫ちゃん可愛すぎ!)

122 : VIPに... - 2012/03/26 21:00:40.57 IhhUt3l+o 92/444

「」チラチラ


『時間を気にしてるね。どうやらここで待ち合わせみたいだ』

『そのようね。でも女の子を待たせるなんてダメな男ね』

『まったくだ。俺なら2時間前に待機してるね』

『それはただのばかね……』

『あれ?』

123 : VIPに... - 2012/03/26 21:01:27.21 IhhUt3l+o 93/444

『なかなか現れないなー』

『そうね。結構暇だわ』

『まぁ、ひなたぼっこしていると思えばそんなに苦じゃないよ。ベンチがあってよかったよね』ナデナデ

『ほんとうにそうね……あ、妹が何か取り出したわ!』

『携帯に電話が掛かってきたみたいだね』


「……! ……どこで……わかっ……うん……ゃあね」ピッ


『ちょっとしか聞き取れなかったけど、多分、相手が待ち合わせ場所に来れないから違う場所を指定したみたい』

『ダメな男ねぇ』

『まったくだ。普通テントを用意してでも待ち合わせ場所に張ってるべきだよね』

『それはきもいわね……』

『あれ?』

124 : VIPに... - 2012/03/26 21:02:27.50 IhhUt3l+o 94/444

「」スタスタ


『駅方面に向かってるみたいだ』

『電車に乗られたら追えないわね。私がいるし……私のこと、おいてく?』

『そんなことしないよ猫ちゃん!(上目遣いは反則だよ! いつも上目遣いだけど!)』

『大丈夫だよ。その時は一緒に帰るから。一応、奥の手のリュックもあるよ』

『そう……』

『それに、電車に乗るかはまだわからないよ。駅の周りは結構栄えてるからね』

『何にしてもリュックの可能性はあるわけね……』

『そうだねぇ。やっぱりやめとく?』

『なに言ってるの? ここでやめるわけにはいかないわ。それに、男に迷惑はかけられないもの』

『気にしなくていいんだよ。ただのお遊びなんだからさ』

(健気なんだよね……可愛い)

125 : VIPに... - 2012/03/26 21:02:55.17 IhhUt3l+o 95/444

「」スタスタスタ カランカラン


『駅近くファストフード店に入ったね』

『そうね。リュックに入る?』

『……いや、妹が座った位置は外からでも確認できるから外にいよう』

『そう』

『うん。ほら、あそこに座れるところがあるから、いこ猫ちゃん』

『わかったわ』

126 : VIPに... - 2012/03/26 21:03:22.75 IhhUt3l+o 96/444

「」ピッピッ


『携帯で何かやってるね。メールかな?』

『何をやってるのかしらね相手は』

『そうだねぇ。あー、ちょっとお腹空いてきたなぁ』

『そこのコンビニで何か買ってきたら?』

『そうしようかな。じゃあちょっと行ってくるね。変な人が来たらすぐ逃げるんだよ?』

『大丈夫よ。イダテン系の猫とは私のことよ?』

『最後はダイレップウになりそうな二つ名だね……。じゃあ急いで行ってくるね』タッタッタッタ


(……心細いわ)

127 : VIPに... - 2012/03/26 21:03:55.02 IhhUt3l+o 97/444

(妹に動きは……ないわね)

「あ! お母さん見て! 可愛い猫!」

「あらほんとね。首輪がついてるから野良じゃないわね」

『』ビクッ

「ほら、もう行くわよ」

「えー! ちょっと触りたい!」

『』スタタタタタタタ

「あー逃げちゃった」

「あんたがうるさいからよ。ほら、行くよ!」


128 : VIPに... - 2012/03/26 21:04:29.98 IhhUt3l+o 98/444

「」タッタッタッタ

『猫ちゃーん! 戻ったよーってあれ?』

「……いない! 猫ちゃん!?」

「」スタタタタタタタ ピョン!

「おわっ! 猫ちゃん! 良かったぁ」

『もう! 遅いわよ!』

『ごめんね。レジが混んでてねー』ナデナデ

『ちょっと怖かったわ……』

『ごめんね。今度は食べ物とかも準備しとかないとね』ナデナデ

『……ごめんなさい。ちょっと取り乱したわ』

『いいんだよ。もう一人にしないからね』ナデナデ

(やっぱり、男になでられると安心する……)

129 : VIPに... - 2012/03/26 21:05:09.39 IhhUt3l+o 99/444

『さってと。妹はどうしてるかなーってガリガリ君来てるじゃん!』

『ほんとうだわ。帽子を被ってるからどんな顔かわからないわね』

『うーむ。遠くから見ると身長はあるけど細い感じだなあ。ガリガリだ』

『最近はそういう男が流行ってるじゃない』

『そうだねぇ。あとジャニーズみたいに髪が長いねぇ』

『でも男は見た目じゃないわ。中身よ』

『まったくそのとおりだね』

『そうじゃなかったらあなたなんて何の価値もないものね』

『見た目を全否定された!?』

130 : VIPに... - 2012/03/26 21:05:31.10 IhhUt3l+o 100/444

『あそこでお昼をとるみたいね』

『そうみたいだね。ま、中学生だしね。あんまり高いところは無理でしょ』

『そう。私はジャズピアノの生演奏が流れるようなお店がいいわ』

『そんなところ一生入れる気がしない……』

『そうね』

『否定して!』

『そんなことより、男も買ってきたもの食べたら?』

『そうだね。……はい! ここで猫ちゃんに問題です!』

『あんぱん』

『ええっ!? まだ何も言ってないよ!? ……正解だけど』

『……まさか何の捻りもないなんてね……』

『呆れられた!?』

131 : VIPに... - 2012/03/26 21:05:59.78 IhhUt3l+o 101/444

『昼食に限らずだけど……ごはんが甘いものってのはどうかと思うんだよね』

『なら焼きそばパンにでもすれば良かったじゃない』

『ほんとそうだよね……。猫ちゃん、水飲む?』

『そうね。ちょっと飲みたいわ。……牛乳は買わなかったのね』

『うん。猫ちゃんも飲めるようにね』

『じゃあ男の手にお水いれて』

『えっと……ま、いいか。はい』チャプ

「」ペロペロ ピチャ

(くすぐったい! 可愛い!)

132 : VIPに... - 2012/03/26 21:07:11.96 IhhUt3l+o 102/444

『妹たちが店から出てきたわ』

『お、じゃあ行こうか』


ガリガリ君「」キャッキャ


『なかなか楽しそうじゃない、妹』

『そうだなぁ。俺も可愛い女の子を連れて歩きたいなぁ……』

『超絶可愛い私と一緒に歩いてるじゃない』

『そうだねぇ。激烈プリティな猫ちゃんと一緒に歩けて幸せだなぁ』

『光栄に思いなさい。こうやって歩けるのはあなただけなんだから』

『もうとっても幸せです。お嬢さ……猫ちゃん』

『当たり前でしょ。どれ……奴隷』

『おかしいよね!?』

133 : VIPに... - 2012/03/26 21:07:54.11 IhhUt3l+o 103/444

『ゲーセンに入ったね。中学生なのに大丈夫かな』

『男、例のリュックの用意を』

『オーケー。……はい猫ちゃん』

『……やっぱり、ちょっと窮屈に感じるわね』モゾモゾ

『あんまり長いようだったら、一旦外に出るから大丈夫だよ』

『わかったわ。それと、私もちゃんと二人を確認できるように立ってね』

『任せといて』

134 : VIPに... - 2012/03/26 21:08:29.60 IhhUt3l+o 104/444

ゲームセンター内

ガリガリ君「」キャッキャ


『……楽しそうだなあ。俺も同級生の女の子とプリクラとか撮りたかったなあ』

『まだ5月だから先があるじゃない。頑張れば撮れるんじゃない?』

『俺にそんなコミュ力はないんだ……』

『頑張りなさいよ……』

『いいもん! 今日は猫ちゃんと一緒にプリクラ撮るもん!』

『私はいいけど、あなたひとりでプリクラの筐体に入るのよ?』

『なんてことだ……周りの視線に耐えられそうにない!』

『私は普通の写真の方がいいわね。綺麗で大きいし』

『そうだよね! 父さんがいいカメラ持ってるみたいだからいつか撮ってもらおうね』

『それは楽しみね。男、忘れちゃだめだからね』

『もちろん。ちゃんと覚えておくよ』

135 : VIPに... - 2012/03/26 21:09:01.61 IhhUt3l+o 105/444

『今度はクレーンゲームか』

『男もやったことあるの?』

『うーんまあ一応。初めてやったときに2000円飲まれてからは一度もやってないけどね』

『あら。それはご愁傷様』

『あれほど無駄に使ってしまったお金もないよ……』

『でも彼は得意みたいね』

『なんですと? ……本当だ。一回で取ってる』

『妹も大喜びね』

『なら俺も! って対抗心燃やしちゃうのは素人。こういう時はただ感心しとけばいいのさ』

『そうね。どうせ男がやっても無駄金になっちゃうものね』

『そんなことはない! って対抗心燃やしちゃうのも素人。ここは悔しさをぐっと堪えるのが正解』

『はいはい』

136 : VIPに... - 2012/03/26 21:09:33.66 IhhUt3l+o 106/444

『ゲーセンを出たね』

『私もリュックから出してくれる?』

『おっとそうだね。……はい、お疲れ様、猫ちゃん』ダキアゲ

『……そのまま抱いて歩いてくれる?』

『いいよー。疲れちゃった?』ナデナデ

『そんなことはないわ』

『あれ? そうなの?』

『……間違えたわ。ちょっと疲れてるのよ』

『あ、やっぱり。気を使わなくていいからね』ナデナデ

『……ええ。ありがと、男』


137 : VIPに... - 2012/03/26 21:10:13.52 IhhUt3l+o 107/444

公園

『公園か……いいなぁ』

『私達もいつも公園デートしてるじゃない』

『そうだねぇ。ここは散歩するにはいいからねぇ』

『水は苦手だけど、噴水は見てて飽きないわ』

『水が動いてるところってのはずっと見てたくなるよねぇ。川とか滝とか』

『川は見たことあるけど、滝はないわね』

『俺も数回しか見たことない。あれはすごいよー』

『いつか見たいわ』

『そうだね。いつか一緒に見に行こうね』

『そういえば。父がトイレに行きたくて、滝のような汗をかいてるのは見たことあるわ』

『そんなこともあったね。結局漏らしたやつ。あれはひどかった』

138 : VIPに... - 2012/03/26 21:10:40.92 IhhUt3l+o 108/444

『お、そろそろ帰るみたいだ』

『結構早いのね』

『ま、そこは中学生だしね。健全でいいじゃない』

『そうね。じゃあ私達も帰る?』

『そうしようか』

『結構楽しかったわね』

『そうだねぇ。見つからないように後をついてくのはちょっと興奮したね』

『ストーカーみたいね』

『ええっ!?』

139 : VIPに... - 2012/03/26 21:11:18.02 IhhUt3l+o 109/444

家 玄関

「ただいまー」

『ただいま』ニャーン

「おかえり、猫ちゃん」

『おかえり、男。ふふ、なんだかおかしいわね』

「あはは、確かに」

『男。悪いんだけど、足、拭いてくれる?』

「いいよー。ちょっと待っててねー」スタスタ


140 : VIPに... - 2012/03/26 21:11:40.12 IhhUt3l+o 110/444


ガチャ

「ただいまー!」

『おかえり、妹』ニャーン

「あれ? 猫ちゃんどうしたの? 玄関で」

『男に足を拭いてもらうのを待ってるのよ』ニャーンニャン

「そっかそっか。お母さん達が帰ってくるの待ってるんだね。でも帰ってくるのは明日だよー」

『違うわ』ニャン

「あ、おかえり、妹。はい、じゃあ足拭こうねー猫ちゃん」フキフキ

『おねがいね……あっ、くすぐったいわ、おとこっ』ジタバタ

「お兄ちゃん達も出掛けてたの?」

「うん。さっきまでデートしてた」

「……猫ちゃんと遊ぶのはデートとは言わないと思う」

「哀れまれてる!?」

『ま、仕方ないわね』

『あれ!? 猫ちゃんは味方だと思ったのに!』

141 : VIPに... - 2012/03/26 21:12:47.14 IhhUt3l+o 111/444

リビング

「まーたニュースの時間だ」

『私が男の膝にのる時間ね』

『そうだねぇ』ナデナデ

「テレ東はなんかやってるんじゃない?」

「うーん、この時間のテレ東はなー」

「ま、どうでもいいんだけど」

「そんなことより。今日は楽しかったか?」

「うん。でも今日は遊びっていうかね、相談に乗った感じ」

「うん?」

「ガリガリ君ねー。好きな男の子がいるんだけどね」

「ええっ!? ガリガリ君ってホモなの!?」

「お兄ちゃん、ガリガリ君は女の子だよ?」

「はにゃ?」

「きもー」

『吐きたくなるきもさね』

「ひどい!」

142 : VIPに... - 2012/03/26 21:13:19.86 IhhUt3l+o 112/444

「つまり、恋愛相談を受けていたと」

「そうだよー。ガリガリ君のアタックが弱いのかなあ」

「名前はインパクトあるけどね……。ていうかガリガリってだけで女の子にガリガリ君ってあだ名つけるか……?」

「それだけじゃないよ。格好とか喋り方が男の子っぽいっていうのもあるんだよ。
あと他人に甘く自分に厳しいところとか」

(うまいんだかこじつけてるんだか……)

「って自分で言ってたよ」

「自称なの!?」

143 : VIPに... - 2012/03/26 21:14:43.31 IhhUt3l+o 113/444

『それにしても衝撃の事実だったわね。確かに中性的に見えたけど、女の子だったなんてね』

『まったくだ。俺たちは私立探偵には向いてないね。観察力がないんだ……』

『そうね。ふふっ、なに? 男は本気で探偵になりたかったの?』

『ん? うーん、そこまででもないよ。あれはフィクションを楽しむほうがいいね』ナデナデ

『でも私達ならいいコンビになれると思うわ。キモオタ&キャット、語呂もそこそこいいわね』

『キモオタ!?』

『男のためなら潜入や調査、スパイも辞さないわ』

『まー猫ちゃんならできそうだよねぇ』

『だから今日は男の布団に潜入する仕事をするわね。いいかしら?』

『ははっ、わかったよ猫ちゃん。なら俺は仕事仲間をケアする仕事をしなくちゃね』ナデナデ



(お兄ちゃん、いっつも猫ちゃん見ながらにこにこしてるよね……へんなのー)





152 : VIPに... - 2012/03/27 21:55:05.65 0B5ksHDoo 115/444

とある夜 男の部屋

(……一回見てみたいんだよねぇ、ねこ鍋。……いや、猫ちゃん鍋)

(実際に試さない手はないよね)

(猫ちゃんは、今リビングにいるから……その間に土鍋をセットして……よし、準備万端だ)

(おっと危ない。ドアを開けておかないと猫ちゃんが入れない)ガチャ

(よし、一応携帯のカメラも起動しておくか……ククッ! これでからかうこともできるし、鑑賞もできる……!)スチャ

「念のため布団に潜っておくか……ガン見してたら警戒されてしまうかもしれない……!)モゾモゾ

(クックック! さぁおいで猫ちゃん! その愛くるしい姿を見せておくれ……!)

153 : VIPに... - 2012/03/27 21:55:49.38 0B5ksHDoo 116/444

リビング

TV『お前にはまだ早い――』

「あはは、お父さんかわいい」

「ありがとね、妹」

「お父さんのことじゃないけどね。でもお父さんもフジツボみたいで可愛いよ」

「それは可愛いのかな……?」

(やっぱりこの犬っころは気にくわないわね)

(……そろそろ男と寝よう)スタタタ

154 : VIPに... - 2012/03/27 21:56:24.82 0B5ksHDoo 117/444

男の部屋

「……」

『男? 寝ちゃったの……?』

(もう、先に寝ちゃうなんて……ん?)

(何かしら、これ……)トテトテ

(何も入ってないわね)

(ま、いいわ。そんなことより、男の布団に――)トテトテ

「ちょっと猫ちゃん!」

「ニャン!?」

155 : VIPに... - 2012/03/27 21:56:54.63 0B5ksHDoo 118/444

「鍋があったら入らなくちゃダメじゃない!」

『いきなり何言ってるのよ! っていうか起きてたのね』

「くーッ! 猫ちゃんが鍋に入るところ見たかったのになぁ!」

『あなたね、私がそう簡単に鍋に入ると思う?』

「ちょっと思ってた……」

『そんな簡単な女じゃないわ』

「そっか……まぁ、正直布団の方に来てくれたの嬉しかったけどね。
猫ちゃんもう寝るんだよね? こっちおいで」

『うん』トテトテ モゾモゾ

『……ふぁ、あったかい』

「もう眼がトロンってしてるね。おやすみ、猫ちゃん」ナデナデ

『おやすみ、おとこ』

156 : VIPに... - 2012/03/27 21:58:00.54 0B5ksHDoo 119/444

翌日 男の部屋

『かわええ、鍋で丸まってる猫かわええ……』カチッ カチッ

『!?』

『なんでこんなに可愛いんだろう……すごいなあ』

『』スタタタタタタタ モゾモゾ

『男っ! こっち見なさい!』

「んー? ……おおう!? 猫ちゃんが鍋に入ってる!」

『どう? そっちの猫より私の方が可愛いでしょ?』モフモフ

「うん、そうだね! 断然猫ちゃんの方が可愛いよ!」

『そうでしょ? ……だからその動画見るのやめなさい』

「オーケー! ……そのかわり、ちょっと撮らせてくれない?」スチャ

『もう、仕方ないわね! ……可愛くとってね?』

「まかせて!」


(計画通り)ニヤリ




168 : VIPに... - 2012/03/28 21:29:14.51 CHE5xl/ao 121/444

休日の昼下がり

「お兄ちゃーん、数学教えてー」

「数学? 国語なら歓迎するけど」

「だから数学だって」

「えー。数学あんまり好きじゃないんだよなぁ」

『あなたって勉強できるの?』

『……そこそこ』

『ふぅん。なら教えてあげなさいよ』

「お願いお兄ちゃん! あとでコーヒーつくってあげるから!」

「しょうがないなあ。……その問題はね、ここにこれを代入してだな」

「……まだ問題見せてないのによくわかるね?」

「あれ? だいたいこう言っとけば解決するものだと……」

「お兄ちゃん!」

「すまんすまん。どれどれ――」

169 : VIPに... - 2012/03/28 21:29:53.86 CHE5xl/ao 122/444

『暇だわ』

『男、まだ終わらないの?』スリスリ

『ごめんね猫ちゃん。妹の宿題の量が多くてね』

「お兄ちゃん、次は英語教えて」

「そろそろ自分でやるのはどうだろう」

「どこから手をつけていいのかもわからないの!」

「それはまずいだろ……とりあえずこの問題は――」


『……もう!』

170 : VIPに... - 2012/03/28 21:30:37.52 CHE5xl/ao 123/444

『……』カプ カプ

「ちょ、ちょっと猫ちゃん。くすぐったいよ」

『終わったかしら?』

『俺はもう何もしてないんだけどね……』

『?』

「……じゃあ俺、そろそろ部屋戻るから」スック

「だめ! まだ何か聞きたいことできるかもしれないから!」ガシッ

『という具合なのよね』

『……じゃあここで私と遊びましょう』

『そうしよっか』

「妹、猫ちゃんが遊びたいみたいだから。ちょっとひとりで頑張ってくれ」

「だめ!」

「ニャンニャン!」

「猫ちゃん、ちょーっと待っててねー。宿題終わるまで待っててねー」

「ニャーン! ニャーン!」

171 : VIPに... - 2012/03/28 21:31:31.40 CHE5xl/ao 124/444

夕方

「もう宿題終わったか?」

「……終わったよ。ありがとね、お兄ちゃん」

「おう。終わったなら良かったよ。でもちゃんと理解しないと意味ないからな?」

「うん」

『終わったのね? ほら、男っ! ねこじゃらし!』ニャンニャン!

「おーよしよし。すぐ持ってくるからねー猫ちゃん」

「お兄ちゃん。最近猫ちゃんといっつも一緒に遊んでるよね」

「ん? まぁそうだなぁ。猫ちゃん可愛いからなぁ」スタスタスタ

「可愛いのはわかるけど……」

「けど?」クル

『なによ?』ニャン?

「……なんでもない! ばか!」スタタタ

「なんで!?」

『まぁ、ばかよね』

「猫ちゃんまで!?」




177 : VIPに... - 2012/03/30 20:57:46.97 Aiyl9Cxxo 126/444

6月 梅雨

「ねぇ、猫ちゃん。カタツムリって見たことある?」

『カタパルト? 見たことないわね』

「そんな聞き間違えある……? カタツムリだよ、カタツムリ」

『ヒキコモリ? 目の前にいるわね』

「ヒキコモリになった覚えはないよ! しかもリしかあってないよ!」

『一文字あってれば十分でしょ!?』

「!?」

『冗談よ。……見たことないわね、シモツカレ』

「カタツムリ!!』

178 : VIPに... - 2012/03/30 20:58:15.36 Aiyl9Cxxo 127/444

『で、それがどうしたのよ』

「いやね、いま梅雨の時期だからカタツムリがいるんじゃないかなって。見たいなーって」

『なぁに? 殻にこもってる姿に共感でもしたのかしら?』

「今日はご機嫌ななめなのかなー? なんか当たりが強いなー?」

『そんなことはないわ。私はこの家族、特に男に対してはいつも優しいつもりよ』

「え、そ、そう?」

『当たり前じゃない。だからね、……なでて』

「あ……もう! 可愛いな猫ちゃんは! ごめんね本なんか読んでて!」ポイ ナデナデナデ

『そういうつもりで言ったわけじゃないけどね。あなたが私を疑うようなことを言うからであってね』

「そうだねぇ。ごめんね猫ちゃん。可愛いっ!」ギュー

『あん、ちょっとおとこっ! くーるーしーい!』

179 : VIPに... - 2012/03/30 20:58:40.90 Aiyl9Cxxo 128/444

『見に行くのはいいとして……雨が降ってるけど』

「そうだね。でもね、雨の中の散歩もいいもんだよ」

『えー……』

「大丈夫! 猫ちゃんのことはずっと抱っこして濡れないようにするから!』

『それならいいわ』

「ありがとう! さすがは猫ちゃん!」

『ま、男のお願いだものね。付き合うわよ』

180 : VIPに... - 2012/03/30 20:59:12.50 Aiyl9Cxxo 129/444

バタバタバタバタ

「あ、母さん。ちょっと散歩してくるね」

「こんな天気で? 物好きねぇ」

『ほんとよね』ニャン

「ほら、いま猫ちゃんも同意してくれたわ」

「そうかもね……だって暇なんだもん!」

「はいはい。車に水かけられないようにね」

「うーい」

『じゃ、猫ちゃん抱っこしようか』

『ええ』

『これで大丈夫? 不安定じゃない?』ダキ

『ええ。大丈夫よ』

「よし。じゃ、いってきまーす」

『行ってくるわ』ニャーン

「はい、気をつけていってらっしゃい」

181 : VIPに... - 2012/03/30 20:59:38.42 Aiyl9Cxxo 130/444

「よし、傘を差してっと」バサッ

『だっこしながらでも大丈夫?』

「大丈夫だよー……よし、こうすれば両手でだっこできる」


『しとしと降ってるねぇ。だがそれがいい』テクテク

『よくないわよ。まぁ、ザーザー降ってるよりはいいけど』

『でしょ? この静かな感じがいいんだ』


『で、どこに向かってるの? 猫缶屋さん?』

「そんな専門店あるかな……? 違うよ、いつもの公園だよ」

『いつもと道が違うじゃない』

「うん。車の通りが少ないところを選んでるからね。雨の音が聞きたいんだ」

『なーにロマンチストぶってるのかしらね』

「ほんとにそう思ってるもん!」

『はいはい、きもいわねまったく』

「」ズーン

182 : VIPに... - 2012/03/30 21:00:09.22 Aiyl9Cxxo 131/444

「誰も外にいないね」テクテク

『それは雨が降ってるからでしょ』

「それはそうなんだけど」テクテク

『……まるで私達ふたりだけの世界みたいね』

「……」ピタ

『……ロマンチストぶってるんじゃないって突っ込みなさいよ』

「えっ!? 放心するくらい嬉しかったのに!」

『ばかねぇ』

183 : VIPに... - 2012/03/30 21:00:36.79 Aiyl9Cxxo 132/444

「おっと水たまりだ……踏まないようにしないと」ヒョイ

『ねぇ、男』

「うん?」

『私、重くない……?』

「全然そんなことないよ猫ちゃん。普段いっぱいご飯食べてごろごろしているとは思えないほど軽いよ」

『……そう。あなたね、私の地雷も踏まないように気をつけてね』カプ

「おふ、わかったよ猫ちゃん!」

(本気では噛まない猫ちゃん可愛すぎ!)

184 : VIPに... - 2012/03/30 21:01:14.82 Aiyl9Cxxo 133/444

公園

「ふぅ、着いた着いた」

『なんで公園に来たの?』

「ここにね、アジサイが植わってるからだよ」

『ふぅん? アジサイにカタツムリがいるのね』

「まぁそういうイメージはあるよね……ほら、あそこに紫色の花が咲いてるでしょ?」

『ほんとうね。結構きれいな色じゃない』

「だよねぇ。さらにいうと、あの濃い緑色の葉っぱも好きなんだ」

『そうなの。なら白い花は?』

「ん? 好きだよ」

『じゃあ、白い、ね……ご飯は?』

「……大好きだよ。それ無しじゃ困っちゃうね」

『ふふっ、あなたも大概くいしんぼうね』

「そうかもねぇ」

185 : VIPに... - 2012/03/30 21:01:46.60 Aiyl9Cxxo 134/444

「さってと。カタツムリは居るかなー?」

『私も探してあげるわ』

「お願いねー」

『あ、男。そこの葉っぱの陰にいるわ』

「え、ほんと? どれどれーっていないじゃん!」

『あら、ごめんなさいね。見間違えたみたい』

「……」

『……』

186 : VIPに... - 2012/03/30 21:02:14.80 Aiyl9Cxxo 135/444

『あのね、男。いちおう言っておくけど、わざとじゃないからね?』

「だよね! ごめんね、ちょっと疑っちゃって」

『いいのよ、男。誰にでも間違いはあるわ』

「間違えたのは猫ちゃんだけどね……」

『ほら、男。そこの花の奥に見えたわ』

「お! どれどれーっていないよ!?」

『あら、残像だったのかしらね。最近のカタツムリは早いのね』

「……」

『……何かしら?』

「ううん! なんでもないよ! また見つけたら教えてね」

『ええ、まかせて……あ、そこの秘密の花園にカタツムリが!』

「どこ!?」

187 : VIPに... - 2012/03/30 21:03:07.53 Aiyl9Cxxo 136/444

『ごめんなさいね。いつもからかわれてるからやり返したくなったのよ』

「あ、そこはメロメロだからとは言わないんだ」

『メロメロなのはあなたでしょ、まったく』

「そうでした」

『カタツムリなら、そっちの方の葉っぱの上にいたわよ』

「……本当に?」

『ほんとうよ』

「えーでもなぁ。さっき散々からかわれたからなー」

『あのね、男。今回は、ほんとうよ』

「とか言ってさー。俺がそれを確認したところ見て笑うんでしょー?」

『何度も言わせないでくれる? ほんとうにいるわ』

「ほう? なら見てみるね」ガサ

「……いないよ?」

『うそっ!? ……いない。さっきは確かにいたのよ! ……ほんとうよ?』

「……」

『ねぇ、ねぇってば。おとこっ! ほんとうにっ、ほんとうにいたのよ?』

「……」

『信じてくれないの……? ……ごめんなさい。謝るからっ、無視しないで!』

「なーんてね! 冗談だよ猫ちゃん! 可愛いんだからもう!」ナデナデ

『……ばかぁ!』

(泣きそうな猫ちゃん可愛すぎ! でもやりすぎちゃったな……)

188 : VIPに... - 2012/03/30 21:03:40.29 Aiyl9Cxxo 137/444

「ごめんね、猫ちゃん。メロメロにメロメロが重ねがけみたいな状態だったからさ。つい、ね」

『これは、つい、で許されるものではないわ』メラメラ

「ごめんね。どうしたら許してくれる?」

『どうしても許してあげない』ツン

「それは悲しいなぁ」

『……からかわれるのはいいわ。でも……無視はしないで』カプ

「わかったよ猫ちゃん。ごめんね」ナデナデ

『あと猫缶も買って』

「まかせて! 良いもの選ぶからね!」

189 : VIPに... - 2012/03/30 21:04:08.02 Aiyl9Cxxo 138/444

「あ、猫ちゃんがさっき言ってた場所のすぐ近くにカタツムリいた」

『ほらぁ! ね? 嘘じゃなかったでしょ?』

「うん。そうだね。でも別に嘘だとも思ってなかったよ」

『……ほんとう?』

「うん。最後のは本当にいたんだろうなって思ってたよ」

『……なら、いいわ』

「可愛いなぁ猫ちゃんは」ナデナデ

『もう、ばか』

190 : VIPに... - 2012/03/30 21:04:34.46 Aiyl9Cxxo 139/444

『で、どうなの? カタツムリを見た感想は』

「こんなに小さかったかな? って感じだよ。それにしても実際に見るのは久しぶりだ」

『そう。これ動いているのかしら?』

「すっごくゆっくりだけど動いてるよ。のんびりしてる時の猫ちゃんみたいだね」

『さすがの私もここまでスローではないわ』

「そうかな? ご飯食べたあとはこんな感じじゃない?」

『なめてもらっちゃ困るわね。何ならまたねこじゃらしで証明してもいいわよ?』

「じゃあ帰ったらねこじゃらしで遊ぼうね」

『あのね、男。遊ぶのではなく、証明ね? そこ間違えちゃだめよ?』

「そうだったそうだった。証明ね。証明」

『わかればいいのよ』

(ねこじゃらしって聞いてウズウズし始める猫ちゃん可愛すぎ!)

191 : VIPに... - 2012/03/30 21:05:03.93 Aiyl9Cxxo 140/444

「それじゃ、そろそろ帰ろうか」

『あら、もういいの?』

「うん。正直なところ、カタツムリも見たかったけど、それ以上に
雨の日に猫ちゃんと散歩したかったっていうのが本音なんだよね」

『ほんとう、物好きね』

「そうかもね」

『でもね、あなたが言うならいつでも付き合うわよ』

「そう? なんだ、じゃあ最初からそういえば良かった。雨の日に散歩しようって」

『でも濡れるのは嫌よ。絶対だっこだからね』

「それはもちろん」

192 : VIPに... - 2012/03/30 21:05:54.78 Aiyl9Cxxo 141/444

『男は雨が好きなの?』

「うん。結構好き。でも一番好きなのは晴れてる日だよ」

『そこは私と一緒ね』

「やっぱり気が合うね?」

『そうね。だてにキモオタ&キャットってコンビを名乗ってないわ』

「名乗ってないよ!?」

『いいじゃない。コンビ名における◯◯&◯◯の安定感はすごいのよ?』

「それはそうだろうけどさー」

『ホール&オーツとか』

「いいデュオだよね」

『ハリー&ポッター』

「それは二人組だったかなー?」

『トム&ヤム君』

「スープだね! それっぽく言ってるけど!」

『ビーフ&フィッシュ』

「食べ過ぎ!」

193 : VIPに... - 2012/03/30 21:06:39.95 Aiyl9Cxxo 142/444

「そんなことを話してたら家に着いたね」

『そうね』

「じゃあ猫ちゃんを玄関先に下ろして、と。今日は足汚れてないよね?」

『ええ。大丈夫よ』スタタタ

「よし一旦出て……この傘に付いた水滴を飛ばすのが、また好きなんだよねぇ」バサッ バサッ

「これくらいでいいか」ガチャ

「ただいまー」

『おかえりなさい、男』

『さっきまで一緒だったのにね。あはは』

『ふふ、そうね。ほら、早くねこじゃらしであそ……証明してあげるから。持ってきてくれる?』

「わかったよ猫ちゃん。ちょっと待っててねー」スタスタ



(……雨の日とは思えないほど、今日は楽しかったなぁ)




202 : VIPに... - 2012/03/31 20:12:37.77 /lcJaoYMo 144/444

7月下旬

「今日も暑いなぁ」

『ほんとうね……これはだめだわ』

「猫ちゃんは暑いのだめなの?」

『あんまり得意ではないわね。この湿度がね……』

「あーそうなんだ。それじゃ文明の利器に頼りますかね」

『エアコン?』

「そ。下いこ、猫ちゃん」ガチャ

『わかったわ』スタタタ

203 : VIPに... - 2012/03/31 20:13:15.45 /lcJaoYMo 145/444

「スイッチオン!」ピッ

『暑苦しいわね。静かにしてくれる?』

「ご、ごめんね、猫ちゃん」

『みんな出掛けてるのね』

「うん。妹は部活。母さんは買い物だよ』

『そう。それにしても暑いわ……冷えるまで涼しいスポットに退避ね』

「そんな場所があるの?」

『ええ、……ここよ』スタタタ ペタン

「へぇ、そうなんだ。日が当たらない場所だね」

『そうよ。窓が開いてれば風通しもいいわ。はあ……床が冷たい』

「ふぅん。どれどれ、俺も」スタスタ ゴロン

『男と目線の高さが一緒ね』ジー

「そうだね。……可愛い顔してる」

『あなたはそうでもないわね』ペシペシ

「わかってる! 言われなくてもわかってる!」

204 : VIPに... - 2012/03/31 20:14:21.93 /lcJaoYMo 146/444

『あなた、最近学校に行ってないわね。とうとうヒキコモリになったの?』

「違うよ。夏休みになったんだよ」

『その休みは長いの?』

「うん、40日くらいあるよ」

『そうなの。それは良かったわね』

「でも、そろそろ7月も終わるからねぇ。あと1ヶ月だねぇ」

『ふぅん。それでも長いじゃない。でもあなた、休みが始まってからどこにも出掛けてないわね』

「くっくっく! 侮るなかれ! 明日は出掛けるんだ……!」

『あら、それは良かったわね。で、どこにひとりで行くのかしら?』

「ひとり前提!? 友達と行くよ!」

『珍しいわね。2年ぶり7回目くらいかしら?』

「そんなに期間空いてないし、もっと多いよ!」

205 : VIPに... - 2012/03/31 20:14:55.82 /lcJaoYMo 147/444

「ふぃー。だいぶ冷えてきた」

『そうね。男、ソファーに座ってくれる?』

「うん? いいよ」スタスタ ボフ

『これでいいわ』スタタタ ポフ

「定位置だね」ナデナデ

『エアコンで涼しいから。男の膝にのるとちょうどいいのよ』

「寒いのも苦手だもんね、猫ちゃんは」ナデナデ

『猫はそういう動物なのよ』

「それもそうだね」

『でも、冬はこのもふもふであなたをあたためてあげるわ』スリスリ

「そっか。ありがとね」ナデナテ

206 : VIPに... - 2012/03/31 20:15:23.07 /lcJaoYMo 148/444

翌日

「じゃあ出掛けてくる」

「何時頃帰る?」

「6時頃かな。多分」

「わかったわ。いってらっしゃい」

「いってきまーす。じゃあね、猫ちゃん」ヒラヒラ

『……いってらっしゃい』ニャーン

バタン

(行っちゃった……私も連れていきなさいよ、まったく)

(暇だわ)

(はぁ……はやく帰ってきてね、男)

207 : VIPに... - 2012/03/31 20:16:08.34 /lcJaoYMo 149/444

「おーう待ったか?」

男友「いや、今来たところ」

「……巨漢にそれ言われても全然嬉しくないのな」

男友「事実だからしゃーない」

「そうか。じゃあ行くか」

男友「いや、どこに?」

「あれ? 言ってなかったっけ?」

男友「特には聞いてない」

「雑貨屋だよ」

男友「……男二人でか?」

「……ああ」

男友「入りづらいなー男だけだと」

「しょうがないじゃん! 女友達いないからしょうがないじゃん!」

男友「そうだよな。しゃーないよなそこは」

「だろ? よし、行こう!」スタスタ

男友「……でもやだなぁ」スタスタ

208 : VIPに... - 2012/03/31 20:17:01.76 /lcJaoYMo 150/444

雑貨屋

「見事に女ばっかりだ。マダムやら女子高生やら」

男友「何しに来たんだよこんなところに……」

「写真立てが欲しくてさー」

男友「なんだぁ? 彼女とのツーショットの写真を飾ろうってかぁ? でも男は彼女いないよな?」

「彼女じゃないけど、女ではある」

男友「あぁ。家族ってオチか?」

「そんなところだ」

「あれ? こんなところで何してるの?」

「……おい男友。なんか可愛い女の子が話しかけてきてるぞ」ヒソヒソ

男友「え? 男に話しかけたんじゃないのか? っていうか同じクラスの女さんだぞ」ヒソヒソ

「ちょっと、無視しないでよー」

「ごめんごめん。えーっと何用で?」

「えっと、特に用があるってわけじゃないけど……なんか浮いた二人がいるなーって思ったら、男くんと男友くんだったから」

男友「「浮いた二人……」」ズーン

「出るか」スタスタ

男友「おう」スタスタ

「何が敗因だったのかなー? 挙動不審だったのかね?」スタスタ

男友「単純に男二人だったからってのもあるだろうが、それも今後の課題だな。
いずれにしても女性のサポートが必須だった」スタスタ

「おいおい次に来るのは何年後になるんだ」スタスタ

男友「身内の助っ人を忘れちゃいけないぞ。これが一番手っ取り早く確実だ。
そもそもカメラ屋とかの方が良かったかもな」スタスタ

「ちょ、ちょっと! ごめんね! そういうつもりで言ったんじゃないよ!」

209 : VIPに... - 2012/03/31 20:17:43.88 /lcJaoYMo 151/444

「なるほど。写真立てを買いに来たと。男二人で」

「……そうだね」

男友「……女さんという味方がついた今、何も恐れるものはないな」

「違いない」

「なに言ってるの、もう。写真立てならあっちにあるよ」スタスタ

男友「おう、遅れずについていけ」

「了解」

「そのノリやめない?」

210 : VIPに... - 2012/03/31 20:18:05.96 /lcJaoYMo 152/444

「すごいなこれ。なんだこの装飾」

男友「なかなかすごいな。キラキラしてやがる」

「そういうのが好きな人もいるんだよ」

「そうですよね。女さんがおっしゃるなら間違いないです」

男友「出すぎた真似をお許し下さい」

「……男くんはどういうのが欲しいの?」

「どっちかって言うとシンプルで落ち着いている物がいいんだよね」

男友「安定志向な男らしいな」

「それなら……これとかどう?」

「それはちょっとなぁ……」

男友「男よ。ここは嫌でも、嘘でも、社交辞令でも、女さんの意見を支持しておくべきだったぞ」

「男友くん。あとで一緒にお話しようね」

男友「えっ、女さんからお誘いして頂けるなんて……ごめんな男、抜け駆けするみたいで」

「いいよ。男友ならむしろ祝福する。うまくやれよ」

男友「ああ。……俺はいい友達を持った」

「馬鹿野郎。そういうのは成功してから言えって」

「そろそろ殴っていいよね?」

男友「「すみませんでした」」

(猫ちゃんなら……きっと甘噛みか猫パンしてるところだろうな。はは、思い浮かべたら楽しくなってきちゃったな)

211 : VIPに... - 2012/03/31 20:18:43.39 /lcJaoYMo 153/444

「よーし、これに決めた」

男友「シンプルだな」

「シンプルだね」

「シンプル・イズ・ベストという言葉もあるくらいだから、シンプルが一番いいんだよ」

男友「そうかもな」

「そうかもね」

「でしょ? じゃあ買ってくる!」タタタ

男友「……選ぶのに時間かけ過ぎだろ」

「そうだよね。すごく真剣だったから何も言えなかったけど」

男友「そんなにいい写真を入れるのかね」

「案外彼女なんじゃない? 男友くんには内緒にしてるだけで」

男友「それはショックだな。別に責めはしないが」

「ふぅん?」

男友「まぁ、そこそこ付き合いも長いから」

「そうなんだ」

「おーい買ってきたよ」タタタ

男友「よし。じゃあ出るか」

「ねぇ。暇だからあたしもついてっていい?」

男友「!?」

212 : VIPに... - 2012/03/31 20:19:31.48 /lcJaoYMo 154/444

「我々についてくるその理由とは?」

「え? だって二人共楽しいから」

男友「恐れながら。我々はそれほど楽しい存在ではないです」

「そんなことないよ。ほら、いこ」

「おい男友。俺はこんなシチュエーションはシミュレーションすらしたことナッシンだぞ」ヒソヒソ

男友「横文字が多すぎる……しかし俺もだ。どうする」ヒソヒソ

「ここは女さんの後をついていくのが最善か」ヒソヒソ

男友「リードできない男の烙印が押されそうだが」ヒソヒソ

「だが、俺たちのこの後の予定は……」ヒソヒソ

男友「あぁ。俺が行きたいアニメイトだったな」ヒソヒソ

「そこに女さんを連れて行けと? それは無茶な話だ」ヒソヒソ

男友「違いない。やはりここは女さんに指示を仰ぐか」ヒソヒソ

男友「「女さん、どこか行きたいところあります?」」

「長いのよっ!!」

213 : VIPに... - 2012/03/31 20:19:59.45 /lcJaoYMo 155/444

「男くん達さー、ああいうひそひそ話は見えない所でやってくれないと」

「ごめんごめん」

男友「なにぶん、こういう事態は不慣れなもので」

「えー? あんまりそんな風には見えないけどなー」

「見かけにはよらないものです」

男友「まったくです」

「そうなんだ。じゃあどこか話せるところ行こうよ。マックとか」

「……良かったな男友、俺たちでも入れるところだ」

男友「ああ。洒落た店だとヘリウムみたいに浮くからな」

「そんなことないよ……」

男友「先ほどの発言をお忘れか」

「軽いトラウマだな」

「ごめんって! ほら、行こ!」タタタタ

「楽しそうに走ってるねぇ」

男友「絵になるわ」

214 : VIPに... - 2012/03/31 20:21:01.39 /lcJaoYMo 156/444

マクドナルド

男友「男はコーヒーだけでいいのか」

「ああ」

「そういう男友くんもポテトだけじゃない」

男友「150円だからな」

「絶対飲み物欲しくなるよ、それ」

男友「あ」


「ねぇ、男くん。その写真立てにどんな写真入れるの?」

「どんな写真がいいだろうね。まだ撮ってないから」

男友「なんだそれ」

「とりあえず場所は確保。みたいな」

「へぇ。彼女との写真?」

「違うよ。猫」

「あ、なんだ。ペットね」

男友「あーなるほど。男ん家の猫は可愛いもんな」

「へぇー! そうなんだ! 見たいなぁ」

「携帯の写真で良ければあるよ」

「見せて見せて!」

「はい、これ」

「……可愛いね! これ、ねこ鍋?」

「そうそう。一回やってみたくてさー」

男友「見事なもふもふだな」

「だろー? だからちゃんとしたカメラで写真を撮りたいんだよね」

「いいねー。これは飾りたくなる気持ちもわかる! 可愛いもん」

男友「でも女様も可愛いよな」

「違いない」

「そういうのいいからね」

215 : VIPに... - 2012/03/31 20:21:59.64 /lcJaoYMo 157/444


――

――――


「あー楽しかった! 今日はありがとね、男くん、男友くん」

「いやいや、こちらこそ」

男友「久々に潤いのある一日だったな」

「今まであんまり学校で話さなかったけど、これからは話せるね!」

「そうだね」

男友「身に余る光栄です」

「うん、これからよろしくね! じゃ、バイバイ!」フリフリ タタタタ


「……夕日をバックに笑顔で手を振りながら走り去ってるよ」ヒラヒラ

男友「絵になりすぎだな。……多分そんなに話すこともないだろ」ヒラヒラ

「だな。女さんは人気者で常に周りに人がいるもんな。そして可愛い」

男友「だがまぁ、何にしても今日は楽しかった。それだけで十分だな」

「違いない。……俺らもそろそろ解散するか。メイトはまた今度な」

男友「ああ、そうだな。んじゃ」

「おーう」

216 : VIPに... - 2012/03/31 20:23:26.80 /lcJaoYMo 158/444

ガチャ

「ただいまー」

『おかえり、男』

『あれ? どうしたの猫ちゃん』

『何がかしら? 私はこの日陰が涼しいからここにいるのよ』

『そっかそっか。帰ってくるの待っててくれたんだ。可愛すぎっ!』ダキッ

『違うわよ! ここが涼しいからであって……男、何か女の香りがするわね』

『ん? あー、男友と遊んでたら女さんってクラスメイトと会ってね』

『ふぅん? 良かったじゃない。とうとう春が来たの?』

『いやいや。依然シベリアだよ』

『なーんだ、そうなの。じゃあまだ私が男を独り占めしていいのね』

『当分は大丈夫だよ。こんな不良物件売れないよ』

『掘っ立て小屋ね』

『そこまでひどいかな!?』

『ふふ、冗談よ』

217 : VIPに... - 2012/03/31 20:24:09.09 /lcJaoYMo 159/444

リビング

TV『――明日も強い日差しに見舞われそうです』

『さっきの袋は何? 猫缶?』

『ひ・み・つ!』

『きもいわね』

『おふ。まぁいつか教えてあげるよ』

『そう。ならいいわ』

『猫ちゃんはそういうところがさっぱりしてて良いよね』ナデナデ

『しつこい詮索は淑女に反するわ。それに、いつか教えてくれるんでしょう?』

『うん。もちろん』ナデナデ

『それを待てないほど、私は落ち着きのない猫じゃないわ』

『まさに淑女だね』

『とうぜん』

『でも甘えたがりなところもあるのが猫ちゃんなんだよねぇ』ナデナデ

『……嫌かしら?』

『まっさかー。そのままの猫ちゃんでいてね』ナデナデ

『そのつもりよ』カプ

218 : VIPに... - 2012/03/31 20:24:51.21 /lcJaoYMo 160/444

『でもさ、最近は一緒に寝てないよね?』

『それは……』

『あ、暑いから? それなら仕方ないよね』

『……私は大丈夫なんだけどね。寄り添ってるとあなたが暑そうだから』

「あっ」

『ま、夏だもの。仕方ないわ』

『そうかあ。ちょっと寂しいけどね』

『……私もよ』スリスリ

『猫ちゃん、これ以上俺をメロメロにしてどうするの?』ナデナデ

『どうしようかしらね。私のペットにでもしようかしら』

『あはは、逆に?』

『ふふ、そう。逆に』



「なーににこにこしてんの。そろそろご飯よ」

「うーい」

「ニャーン」




231 : VIPに... - 2012/04/03 21:58:55.93 UbbawmJho 162/444

7月下旬 夏休み

Prrrr! Prrrr!

『男、珍しく携帯が鳴ってるわよ』

「確かに珍しいけども! えーっと男友か」

「もしもし、どうした」

男友『おう。明日遊びにいこうぜ』

「急だなおい」

男友『まぁそう言うなって。夏休みは遊ばないと損だぜ?』

「それはそうだけど……男二人でか?」

男友『例によって男二人でだ』

「友よ、それでいいのか」

男友『それを言ったら俺たちはどこにも行けなくなるぞ』

「聖地アニメイトなら俺たちを優しく包んでくれる」

男友『男よ、それでいいのか』

「……よくないな。よし、遊ぶか」

232 : VIPに... - 2012/04/03 21:59:52.71 UbbawmJho 163/444

男友『よーし。場所とか俺が決めていいか?』

「ああ。いいよ」

『男、遊びに行くの? 今回は私も連れていってくれない?』

「あ、男友。猫も連れていけるかな?」

男友『ああ、いいぞ。男二人だとむさ苦しすぎるからな』

「うちの猫はメスだからな。華やかになるぞ」

男友『おっけい。じゃあ明日男の家に迎えに行くから。じゃ』ピッ

「迎え? って切れてるし」

『私も行っていいの?』

『うん。大歓迎だよ猫ちゃん』

『それは良かったわ。前は置いて行かれたからね』

『今回はいっぱい遊ぼうね』ナデナデ

(男と一緒にいられるだけでいいんだけどね)

233 : VIPに... - 2012/04/03 22:00:33.22 UbbawmJho 164/444

翌日

「よーし。準備万端だ」

『楽しみね』

(うずうずしてる猫ちゃん可愛い)

Prrrr! Prrrr!

「お、男友から電話だ。もしもし?」

男友『おう。男ん家着いたから。カモン!』

「テンション高いな。よし今行く」ピッ

『来たの?』

「うん。いこっか猫ちゃん!」ガチャ

『先に行くわ!』スタタタタ

「あ、待ってよー!」タタタタ

234 : VIPに... - 2012/04/03 22:01:28.87 UbbawmJho 165/444

バタバタバタバタ

「あ、母さん。遊びに行ってくるから」

「はいはい。男友くんと遊ぶんだったわね」

「うん。夕方くらいには帰ると思うから」

「わかったわ。猫ちゃんのことちゃんと見とくのよ」

「大丈夫。じゃあ行ってくる」ガチャ

『行ってくるわ』ニャーン

「いってらっしゃい」



「さてと、男友はどこに……あの車は……」

『車の中から手を振ってるわよ』

「男友だ。あいつ免許取ったのか。いくか、猫ちゃん」ダキ

『ええ』

235 : VIPに... - 2012/04/03 22:02:15.68 UbbawmJho 166/444

男友「おう、乗った乗った! ライドンライドン!」

「いつの間に免許取ったんだよ」ガチャ

男友「ちょくちょく通ってたんだ。夏休み入ってすぐに取ったわ! 驚いたか!」

「おぉ! 驚いたわ。そういや誕生日早かったもんな友は」バタン

『ふぅ、……暑いわね』

『走り出せば風が入るよ、猫ちゃん』

男友「おー相変わらず可愛い猫だなおい。男の膝におさまっちゃって」

「俺の知りうる中で最も可愛い猫だからな」ナデナデ

『男友もメロメロになっちゃうかもね』

『それは困るなぁ。多分大丈夫だけど』

男友「確かに可愛い。が、羽川には敵わんな」

「はははっ! あれは猫か?」

男友「あれはちょっと違うか! がははは!」

『……アニメの話ね』

236 : VIPに... - 2012/04/03 22:03:03.91 UbbawmJho 167/444

男友「よーし、それじゃ、出発進行!」ブロロロ

「おーう」

『車に乗るのは久しぶりだわ』

『そうだねぇ』

「なぁ、こっちの窓も開けていいか?」

男友「おう! こっちで全部開けちまうわ」

「おー涼しいようなぬるいような風が入るぜー!」

『ふふっ、なんだか楽しいわね』ニャーン

『そうだね! 天気もいいし、いい気分だよね』

男友「よーし、何かご機嫌なナンバーを流そうか」

「夏の曲にしてくれよなー。アニソンオンパもいいけどさー」

男友「今日のテーマは『リア充』だぜ? アニソンは封印してきたぜ!」

「友よ! そんなことして大丈夫なのか!?」

男友「あたぼうよ! まず初めのナンバーはこれだ!」ポチッ

スピーカー『夏の風が~ 髪を撫でる~ 気のせいかな 恋の予感――♪』

「おもいっきりアニソンじゃねぇか! あはははははは!」

男友「俺からアニソン取ってどうすんだよ! がははははははは!」

『……ばかねぇ』

237 : VIPに... - 2012/04/03 22:03:58.97 UbbawmJho 168/444

「で、今日はどこに行くんだ?」

男友「いや、特に行き先はない」

「ん?」

男友「免許取れたからドライブしたいと思ってな」

「あーそういうことか。なら海沿い走ろうぜ!」

男友「そいつはいいな! 夏といえば海だわな!」

『私も海を見たいわ』ニャーン

男友「お、猫も海を見たいのか? いいセンスだ」

「猫ちゃんはハイセンスだからな」

男友「何か気品があるもんなぁ。っていうか猫ちゃんって」

「俺は普段こう呼んでるんだよ。可愛いだろ?」

『あなたは可愛くないけどね』ニャア

男友「男は可愛くないがな」

「わかっとるわい!」

238 : VIPに... - 2012/04/03 22:05:03.64 UbbawmJho 169/444

赤信号

「……なぁ、友よ。信号にひっかかりすぎじゃないか」

男友「しゃーない。一回そういうのにハマるとどうしようもない」

スピーカー『ノンストップで行ってみましょ♪ って思ったらまた赤信号――♪』

「……わざわざシンクロさせなくていいから」

男友「偶然だぞ!」

「福留か」

男友「違うわ! それにしてもひっかかりすぎだよな」

「止まると暑いぞ!」

『風がないとキツいわよ!』ニャーオ!

男友「猫も暑いか? でもなぁ。夏のドライブでエアコンは邪道だろう」

『ふぅん、そうなの』ニャン

「気持ちはわかる。だから赤信号から抜けだせ」

男友「どうやって抜けりゃいいのよ?」

「赤信号でも突っ切りゃいいんじゃないか?」

男友「赤いパトランプで止められるわ! がははははははは!」

「違いない! あはははははは!」

『……テンション高いわね』

239 : VIPに... - 2012/04/03 22:06:09.01 UbbawmJho 170/444

男友「そういや、前に痛車を見たんだけど」

「ほー。どんな?」

男友「クドわふたー。すごい存在感だったわ」

「へー。友もやってみれば?」

男友「好きなキャラが多すぎて絞れねぇ」

「そういう問題か?」

『痛車って?』

『車体に二次元キャラのステッカーとか貼ってある車だよ』

『痛いわね』

男友「男ならどうするよ。キャラ」

「俺はそうだな……猫ちゃんがいいかなー」

男友「くくっ! まさに猫車ってか! がははははははは!」

「それ人力じゃねぇか! あはははははは!」

『猫車って何よ……』

240 : VIPに... - 2012/04/03 22:08:12.93 UbbawmJho 171/444

男友「そろそろ海が見えるんじゃないか」

「お、本当だ。ははっ、あんまり綺麗に見えないな」

『あんまり青く見えないわね』ニャン

『そうだねぇ。そういう海は――』

男友「やっぱりハワイとか沖縄じゃないとな」

『ハワイってここから近いの?』

「遠いなぁ。沖縄も遠いな」

男友「日本海側は結構綺麗だった気がする」

「俺は行ったことないなぁ」

『私もないわね』

『あはは、猫ちゃんがあったらびっくりだなぁ』

『ふふ、それもそうね』

男友「でもやっぱり自分の部屋で二次元の海にダイブが最高よ!」

「ダイブするなら瀬戸内海もいいと思うぞ! 燦ちゃんに会える!」

男友「それも二次元じゃねぇか!」

男友「ひゃははははははは!」

『……キモオタね』ニャーン

241 : VIPに... - 2012/04/03 22:09:02.68 UbbawmJho 172/444

「海が近いと風が違うな」

男友「潮風ってやつか」

『確かに、匂いが違うわね』

『あーそうだねぇ』

『海って感じがするわ』

『そうだね。なんとなく涼しいような感じだ』

男友「べたつきそうな感じだな」

「あー。そうだなぁ」

『べたつくのはイヤね……』

『帰ったらシャンプーしようか?』

『あれはあんまり好きじゃないんだけど……』

『そっかー。でも猫ちゃんって暴れたりはしないよね』ナデナデ

『当たり前じゃない。あなたがやってくれてるんだから』

(可愛すぎ!)

242 : VIPに... - 2012/04/03 22:10:27.95 UbbawmJho 173/444

男友「ずいぶん懐いてるよな、その猫」

「そらもう俺がメロメロだからな」

『そうね』

男友「それ理由になるか? 猫ってもっと気まぐれな生き物だと思ってた」

「そうだなぁ。ま、俺と猫ちゃんは特別仲が良いんだろうね」

『……』スリスリ

男友「ほう。なかなか羨ましいこったな。そんな美人な猫ちゃんに好かれまくりとは」

『ふふん。確かに私は美しくもあるわね』

「ま、可愛いのはルックスだけじゃないけどね」

男友「おいおいベタ惚れだな」

「ベタ惚れですわ。猫ちゃんみたいな性格の女いないしな」

男友「どんな性格だよ」

「一言でいうと、淑女」

男友「そりゃ高校にはいないわ」

「だろ? だからもうメロメロ」

『あんまりそう言われると照れるわね』スリスリ

243 : VIPに... - 2012/04/03 22:11:27.04 UbbawmJho 174/444

男友「匂いもしっかり付けられてるな」

「匂い?」

男友「その猫が男の腹あたりに頭をこすりつけたろ? 自分のもんだって」

「あぁ、そうなんだ。知らなかったな」

『……ま、男は私のものだからね』

『そうだねぇ。でも猫ちゃんも俺のものだよね』ナデナデ

『ふふ、そうね。でもあなたらしくないわね、そういうの』スリスリ

『あはは、確かに。柄じゃないよね』

男友「あー俺もペット飼ってみたいな。鷹とか」

「鳥かよ……でも鳥もいいよな」

『!?』

男友「だろう? 孔雀とか鷲とか梟とかいいなと思ってる」

「いいな。孔雀はロマンがある」

男友「確か羽が凄い方がオスなんだよな」

「へぇ、そうなんだ。知らなかった」

男友「擬人化妄想したいからメスの方がいいな」

「あはははははは!」

男友「笑ってんじゃねぇ」

244 : VIPに... - 2012/04/03 22:12:27.57 UbbawmJho 175/444

男友「こう、口笛を吹くと、途端に肩に降り立ってくるみたいな」

「おーそれいいなぁ」

男友「男は膝とか腹に猫が乗ってくるんだろ?」

「ああ、乗ってくるよ。すごく可愛い」

『私の特等席よ』スリスリ

男友「……まぁ、その様子を見てりゃそうだよな。可愛いわ」

「犬とかはどうよ」

男友「犬か……犬もいいよな。あのソフトバンクの犬いるじゃん? あれとか良いわ」

「わかる!」

「」カプリ

「わからない!」

男友「どっちだよ」

245 : VIPに... - 2012/04/03 22:13:25.46 UbbawmJho 176/444

男友「そろそろ帰るかね」

「そうだな。日も傾いてきたし」

男友「いやー軽く緊張したけど、案外余裕だったな」

「結構安心感あったぞ、運転」

男友「そいつは良かった。まぁ、まだ家に着いたわけじゃないけどな」

「帰りも安全運転で頼む」

男友「任せろ。イニDばりの運転を見せてやる」

「やめろ。ってかオートマじゃん」



『なかなか楽しかったわね』

『そうだね。窓全開にしたら猫ちゃんのもふもふがすごいことになったのは面白かった』

『風でぶわーってなったわね。ふふっ』

『あれも可愛かったよ』ナデナデ

『もうっ』ペシペシ



男友「……やっぱり猫がいいかねぇ」




254 : VIPに... - 2012/04/06 22:13:48.40 2217k+xWo 178/444

夏休み リビング

「エアコンって素晴らしいな……」

『そうね』

『やっぱり猫ちゃんもそう思う?』

『ええ。おかげで男の膝にいられるもの』

『そっかー』

『私が傍にいないと寂しくなっちゃうものね。男は』

『そうだねぇ』ナデナデ


「使うのはいいけど、温度を下げすぎないでね」

「がってん承知」

「じゃ、お母さん買い物いってくるから」

「うーい。いってらー」

『いってらっしゃい』ニャーン

255 : VIPに... - 2012/04/06 22:14:24.07 2217k+xWo 179/444

「何か録画しておいたものでも見よっかな」

『アニメね』

『そうとは限らないよ!」

『ふぅん?』

『よし。魔女の宅急便を見よう』ポチ

『アニメじゃない……』

『ジブリはまた別だと思うんだ』

『そうなの』

『猫も出る映画だから、猫ちゃんも楽しめるよ』

『私みたいな淑女がいるのかしら』

『それはどうだろうねぇ』

256 : VIPに... - 2012/04/06 22:14:58.89 2217k+xWo 180/444

TV『おかあさん! 天気予報聞いた? 今夜晴れるって――』

『この女の子が魔女なの?』

『そうだよー。赤いリボンが可愛いよね』

『ふぅん。なら私もリボンつける?』

『それもいいね。首につけると可愛いかも』

『いいわね。……でもそれだと私、プレゼントみたいね』

『あはは。確かに。あ、猫が出てきたよ』

『黒猫じゃない。私と真逆ね』

『そうだね。魔女の相棒は黒猫ってイメージがあるね』

『白猫の相棒は?』

『超絶イケメンの紳士かなー』

『ふぅん? なら私は相棒をかえなくちゃね』

『うそうそ!』

257 : VIPに... - 2012/04/06 22:16:16.61 2217k+xWo 181/444

TV『どれ、私の小さな魔女を見せておくれ――』

『なんというか、すごい台詞だなぁ』

『さて、私のきもーなキモオタを見せてくれる?』

『どういうこと!? きもいが2つあるよ!?』

『私バージョンを言ってみただけよ』

『キキはくるって回ってポーズして見せたけど、きもーなキモオタはどうすればいいんだろうね』

『キモオタ知識をひけらかせばいいんじゃないかしら』

『それで最後にキメ顔する感じ?』

『ふふっ。そんな感じ。まさに男ね』

『違うよ!?』

258 : VIPに... - 2012/04/06 22:17:04.57 2217k+xWo 182/444

TV『あの人のママに会うために 今ひとり列車に乗ったの――♪』

『この曲すごく好きなんだよなぁ』

『良い曲ね』

『でしょ?』

TV『その音楽止めてくださらない? 私、静かに飛ぶのが好きなの――』

『気持ちはわからなくもないけどもー! もうちょっと聞かせてよー!』

『あなたね、そこに文句をつけるのは違うと思うわ』

『まぁ、そうだね。あとでCDで聴こうっと』

『それにしても、さっきの魔女も黒猫連れてたわね』

『そうだねぇ』

『しかもいけ好かない感じだったわ』

『そうだねぇ』

『これは猫全体の品位に関わるわね』

『そこまで?』

259 : VIPに... - 2012/04/06 22:17:39.16 2217k+xWo 183/444

『お! 海の見える街だ』

『海が近くにある街はだいたいそうじゃないの?』

『あ、俺が言ったのは今流れてる曲の名前ね。可愛いねぇ猫ちゃんは!』

『……』ペシペシ

『おふ。猫パン』

『次からかったら猫ダイブするからね』

『やっぱりそれ技なんじゃん! 寝ぼけてたって嘘じゃん!』

『何のことかしら? そんな昔のことは忘れたわ』

(そんなところも可愛い!)

260 : VIPに... - 2012/04/06 22:18:17.08 2217k+xWo 184/444

TV『座ってー。コーヒーがいい?』

『そういえば、あなたもコーヒーをよく飲んでるわね』

『んー? そうだねぇ』

『おいしいの?』

『うーん……。おいしい! って思って飲んだことはないかも』

『ならお水でいいじゃない』

『そうなんだけどねぇ。なんというか、コーヒーってゆっくり飲めるからいいんだよね』

『どういうこと?』

『水とかだと、一気に飲んじゃうんだよね俺。
コーヒーとか熱い飲み物ならゆっくり飲まざるを得ないでしょ?』

『ふぅん。私は熱いのはそもそも飲めないわね』

『猫舌だもんね』

『いいこと考えたわ。男も私みたいにお水を飲めばいいのよ。ペロペロって』

『それはちょっとなー』

261 : VIPに... - 2012/04/06 22:18:59.22 2217k+xWo 185/444

『あ、猫ちゃん! 白猫も出てきたよ!』

『……お高くとまった猫ね』

『ちょっと猫ちゃんに似てるんじゃない?』

『私はあんなに感じ悪くないわ』

『そうだね』ナデナデ

『でも、あなたと初めて会った時はあんな態度をとってしまったわね』

『そうだったかなー? あんまり覚えてないや』

『そう』

『初めから可愛かったよ』

『そんなこと言うと……甘えるわよ?』スリスリ

『大歓迎だよ、猫ちゃん!』

262 : VIPに... - 2012/04/06 22:19:29.18 2217k+xWo 186/444

TV『ジジ! こうなったら最後の手段よ――』

『もしこれが猫ちゃんだったら、身代わりになる?』

『キキがあなただったら身代わりになるわ。じゃなかったらお断りね』

『そっかー。可愛いねぇ猫ちゃんは!』

『もちろん報酬は貰うけどね』

『猫缶?』

『そうね……そこは男の誠意が見たいわね』

『誠意かぁ……難しいなぁ』

『ふふっ。そんなに難しいことでもないわ』

『そうなの?』

『ええ。でも教えてあげない』

『あれー? いつもなら教えてくれそうなものだけど』

『猫はきまぐれだからね』

『ずるいなぁ。可愛いけど』

263 : VIPに... - 2012/04/06 22:19:57.54 2217k+xWo 187/444

TV『私このパイ嫌いなのよね――』

『ここはやたら印象に残ってるんだよなぁ』

『ふぅん。そうなの』

『なんだろうねぇ。キキが可哀想で』

『そうね。ずぶ濡れでパーティーにも行けないし』

『うん。あ、寝込んじゃった』

『だめな猫ねぇ。私ならちゃんと慰めてるところだわ』

『そうなんだ?』

『ええ。12月とか2月に男が落ち込んだとき、ずっと傍にいたじゃない』

『その月は……そうか。確かに猫ちゃんといたなぁ』

『でしょう? 私ほど出来た猫もいないわね』

『そうだね。猫ちゃんとはいつも一緒にいるから気付かなかったよ』

『ちゃんと私のこと見てないとだめよ?』

『うん。肝に銘じておくね』ナデナデ

264 : VIPに... - 2012/04/06 22:20:24.71 2217k+xWo 188/444

TV『リリーって言うの。今行く!』
TV『いいよ。ちょっとだから――』

『リリーって言うのかー。……可愛いな』

『ちょっと男』

『なんてね! 冗談だよー猫ちゃん』

『テレパシーが真剣だったけど』

『そう? 気のせいじゃないかなぁ』

『顔がニヤついてたけど』

『ジジがウキウキだったからさー』

『白猫の方を見てたけど』

『それは見間違いじゃないかなぁ』

『私をなでる手が止まったけど』

『たまたまじゃないかなぁ』

『……そういうことにしておいてあげる』

『本当に冗談だったのになー』ナデナデ

『……そういうことにもしておいてあげる』

(疑り深い猫ちゃん可愛すぎ!)

265 : VIPに... - 2012/04/06 22:21:21.95 2217k+xWo 189/444

TV『わたし、自転車初めてなの』

『私も乗ったことないわね』

『あれ? そうだっけ?』

『ええ。一度乗ってみたいわね』

『うん。いいよ。前のカゴに乗れるかな?』

『多分大丈夫よ』

『そっか。じゃあその時はタオルとか敷いて揺れても大丈夫なようにしないとね』

『揺れるの?』

『道にもよるけどね。ま、猫ちゃんを乗せるときはちゃんと舗装された道路を走るからねー』

『別に気を使わなくていいわ。痛くなければ揺れても大丈夫よ』

『そっか。じゃ、今度どこかいこうね』

『忘れないでね』

266 : VIPに... - 2012/04/06 22:21:56.06 2217k+xWo 190/444

TV『何よ、猫みたいな声だして。……ジジ? あなた、言葉どうしたの――』

『ジジは喋れなくなっちゃったの?』

『そうみたいだね』

『猫をかぶってるんじゃない?』

『猫だけに?』

『あら、思いがけず上手いことを言ってしまったわね』

『あはははは! 猫ちゃんはユーモアもあるんだねー』

『ええ。言葉が通じるんだから、楽しい会話をしたいじゃない?』

『そうだね。やっぱり猫ちゃんは最高だね』

『ふふっ。当然じゃない。私ほど上品で高貴で淑やかでしおらしくていじらしくて可憐で健気でユーモアのある猫もいないわ』

『そ、そうだね』ナデナデ

267 : VIPに... - 2012/04/06 22:22:28.15 2217k+xWo 191/444

『ジジは違うけど、語尾ににゃとかつけて話すのもいるじゃない? 猫に限らずね』

『あー、……いるね』

『あれはおかしいと思うのよ。なんでそんな語尾になるのかしら』

『それは……キャラ付けだよ』

『あれこそ猫をかぶってるわね。いや、猫ぶってるわね』

『そう、だね』

『……なんだか歯切れが悪いわね。あなたもしかして』

『ち、違うよ! 語尾ににゃとかついてるのが可愛いなんて断じて思ってないよ! ……あっ』

『……』

『……い、いや。猫ちゃん? 違うよ? そんなこと思ってないよ?』

『……』

『……あの』

『なでなでして欲しいにゃん?』

「ふぉおおぉおぉおお!! 可愛いよぉぉおぉ!!」ダキッ

『ちょろすぎるわね……』

268 : VIPに... - 2012/04/06 22:23:10.39 2217k+xWo 192/444

TV『魔法がなくなったら……わたし、何の取り柄も失くなっちゃう――』

『あなたには一体何の取り柄があるのかしら』

『うぉ、ずばっとインハイに決まる質問だね。……特にないかも』

『あら? 私をなでるのがうまいって取り柄があるじゃない』

『それ取り柄になるー? 限定的すぎるなぁ』

『私限定でもいいじゃない。私を骨抜きにできるのはきっとあなただけよ』

『猫ちゃん限定かー。じゃあ他の猫はそうでもないんだ?』

『試す必要はないわ』

『あはは、そっかー』ナデナデ

『ふぁ……やっぱり。あなたのそれは取り柄になるわ。私限定でね』

『なら、それを活かさない手はないよね』

『ええ。長所はどんどん伸ばすべきよ……だから、たくさんなでてね?』

『わかったよ、猫ちゃん』ナデナデ

269 : VIPに... - 2012/04/06 22:23:42.05 2217k+xWo 193/444

TV『それをキキという人に届けて欲しいの――』

『粋なおばあさんだなぁ』

『そうね。私もこんなこと言ってみたいわね』

『言うだけならできるんじゃない?』

『それを猫ちゃんという猫に届けて欲しいの』

『……それは猫ちゃんの台詞じゃないよね。ただのおねだりだよね』

『ちょっと間違えちゃったわ』

『もー猫ちゃんったらー』

『その高級猫缶を男という人に届けて欲しいの』

『……俺に渡っても猫ちゃんのものになるね』

『あなたのものは私のものよ。そしてあなたも私のもの』

『欲張りだなぁ』ナデナデ

『ふふっ。安心していいわ。逆もしかりよ』

『あはは、そっか。猫ちゃんのものって?』

『猫缶とかねこじゃらしとか。食べたかったら猫缶食べてもいいわよ』

『あ、ありがとね』

270 : VIPに... - 2012/04/06 22:24:17.35 2217k+xWo 194/444

TV『――――飛べ』

『デッキブラシでも飛べるのね』

『すごいねぇ。刷毛とかでも飛べるかな?

『跨れないじゃない』

『はは、それもそうだね』

『毛筆とかどうかしら』

『それも跨れないんじゃない?』

『そうね。後は何があるかしら……』

『やっぱり箒に近い形じゃないとダメなんじゃないかな』

『モップとかどう?』

『なるほど……ほうきと同じ形、役割を備えているね』

『案外いけそうね』

『あははは! デッキブラシもそうだけど、モップもなかなかシュールだね』

『ふふ、そうね』

271 : VIPに... - 2012/04/06 22:25:01.74 2217k+xWo 195/444

TV『な、なんだあれは! 鳥、違います少女だ! 少女が空を飛んで行きます――』

『こうやって改めて見るとさ』

『なぁに?』

『周りの人は、頑張れ頑張れとか言ってる場合じゃないよね』

『それもそうね』

『キキが間に合わなかったら大惨事だよ、ほんと』

『でもそこに突っ込むのは野暮なんじゃないかしら?』

『それはそうなんだけどね。つい、ね』

『気持ちはわからなくもないけど……あ、エンディングだわ』

『やさしさに包まれたなら、だね。これも本当にいい曲だ』

『そうね。……かーてんをひらいーてー しずかなこもれびのー♪』

『!』

『どうしたの?』

『いや、猫ちゃんが歌ってるの初めて聞いたなぁと思って』

『あら? そうだったかしら?』

『うん。これを皆に聴かせられないのがとても残念だなぁ。すごく可愛い』

『ふふっ。いいじゃない。あなただけの歌姫で』

『あーそれもいいなぁ』

272 : VIPに... - 2012/04/06 22:26:13.47 2217k+xWo 196/444

『いやーおもしろかった。やっぱり名作だなぁ』

『私も楽しかったわ』

『それはよかった。あー、他のジブリ作品も見たくなってきたなぁ』

『例えば?』

『もののけ姫とかね。猫ちゃんに似てるキャラも出てくるよ』

『あなたね……私、もののけ姫は知ってるけど、私みたいなのはいなかったわよ』

『知ってたの!? いやーあはははは! 冗談だよ冗談!』

『なぁに? 私がモロとか乙事主とかに似てるって言いたいわけ? あれは猫じゃないわよね? ねぇ?』

「さーってと! そろそろ夏休みの宿題でもしないとなー!」スタスタスタ ガチャ

『ちょっと! 待ちなさい男! どこらへんが似てるってのよ!』スタタタタタ


ばたん


「ニャーン! ニャーン!」

「あの白くてもふもふなとこ――」

「フシャー!」

「いやだから冗談だよってうわっ! 猫ダイブはダメだってもがっ――」




281 : VIPに... - 2012/04/08 21:26:36.29 bL0mp5SLo 198/444

夏休み 男の部屋

「」カリカリカリ

『ねぇ、まだ終わらないの?』

『うーん。まだかかるかなー』

『そんなにたくさん宿題あるの?』

『そうでもないんだけど、早めに終わらせようとすると多いのかなー』

『ふぅん。なら少しずつやればいいんじゃないかしら』

『それもいいんだけどねぇ。ほら、早く終わらせた方が猫ちゃんともいっぱい遊べるし』

『……そう。わかったわ。頑張ってね』

『頑張るよー……あれ?』

『どうしたの?』

「数学の教科書がない……学校に置いてきちゃったかなぁ」

『忘れん坊ね』

『そうだねぇ……ちょっと取りに行ってくるね』

『私も行っていい?』

『いや、すぐ戻るから猫ちゃんはここにいてくれる?』

『……わかったわ』

282 : VIPに... - 2012/04/08 21:27:12.25 bL0mp5SLo 199/444

玄関

「よし、制服に着替えたし、行くか」

「いってきまーす」ガチャ


『……』スタタタタ!


ばたん


「うぁ……今日も暑いな」スタスタ


(思わずついてきちゃったわ)

(男が私をほうっておくのが悪いのよ)

(……いつかの妹を尾行したときを思い出すわね)

(ふふふ。行けるとこまでついていくわよ)

283 : VIPに... - 2012/04/08 21:27:38.82 bL0mp5SLo 200/444

「」スタスタ


(男……歩くの遅いわね……)

(なーにが、すぐ戻るから、よ。全然急いでないじゃない)

(まったく……私が寂しがるとは思わないのかしら)


黒猫「ニャーオ」

「お、猫だ。なかなか可愛いな。ほらおいでー」


(男……私以外の猫にうつつを抜かすなんて……!)

(だいたいあれオスじゃない。やっぱりホモね……!)

(ま、男の身体には私の匂いをべったりつけてあるから)

(あの猫も男には近づかないでしょうけど)ギロリ


黒猫「!」タタタタタ

「あ、逃げちゃった。つれないなぁ」


(ふふん。ちゃんとわきまえてるわね)

284 : VIPに... - 2012/04/08 21:28:18.00 bL0mp5SLo 201/444


「」スタスタスタ


(このあたりから車の通りが増えるのよね……)

(普段はこの先には行かないんだけど)

(どうしようかしら)

(ま、車の通らないところを歩けば大丈夫ね)


「」スタスタスタスタ


(ちょっと歩くスピードが早くなったわね)

(いいことだわ。今まで牛歩だったからね)

(さて、そろそろ男の高校ね)

(男が高校から出てきたところでお出迎えしてあげようかしら)

(ふふっ。きっと驚くわ)

285 : VIPに... - 2012/04/08 21:29:06.33 bL0mp5SLo 202/444

高校 教室

「ふぅ。着いた着いた」

「さてと」

(机の中は……あれ? ない……)

(あ、ロッカーだわ。机になかったらロッカーだわ)

ガチャ

(ほーら見たことか。男探偵鋭すぎる推理)

(くふふふ。灰色の脳細胞もビックリだな!)

男友「なーにニヤニヤしてんだよ」

「うぉ! なんだ友か」

男友「女子のロッカーでも物色してるのかと思ったわ」

「違うわ! やるならもっと周りを警戒するわ!」

男友「そういう問題か?」

「そんなことより、なんで学校にいるんだ?」

男友「補習だ。まぁそれ自体は結構前に終わったんだけど」

「じゃあ何してたん?」

男友「トイレだ!」

「あっそ。じゃあ一緒に帰ろうぜ」

男友「あぁ、そうだな。どっか寄ってくか?」

「いや、今日はまっすぐ帰る」

男友「そうか。よし行くか」

「おーう」

286 : VIPに... - 2012/04/08 21:29:47.64 bL0mp5SLo 203/444

その頃 校門近く

(遅いわね……)

(レディーを待たせるなんて、だめな男)


「じゃあねー女」

「うん、バイバーイ」


(女……どこかで聞いた名前ね)

(それにしても男はまだ出てこないのね)

(ちょっと眠くなってきちゃったわ)


「あ! 猫だぁ!」


「」ビクッ

「あれぇ? この猫どこかで見たことあるなぁ。どこで見たんだろう……」ジー

『私も有名になったものね』ニャーン

「真っ白で可愛い猫……可愛いってより綺麗かな?」

『ふたつとも兼ね備えてるわね』ニャーン

「あ、思い出した! 男くんが見せてくれた画像の猫に似てるんだ」

『男を知ってるの? ……というか私は男の家の猫よ』ニャーン!

「男くん家の猫なのかなぁ? 男くんは補習なかっただろうから学校にいないし」

『男は忘れ物を取りに来たわ』ニャン

「うーん……まぁいいか、それより今は……!」

『……何よ?』ニャン?

「なにこのもふもふー!? 可愛すぎっ!」ダキッ

『ちょ、ちょっと!』ニャン!

「もー可愛い! こんな可愛い猫を外に出してちゃダメだよ!」

『いいじゃない! ずっと家の中じゃ飽きるわよ!』ニャーン!

「誘拐とかされたらどうするの!? もうっ!」モフモフ

『あなたに誘拐されそうだけど!? ちょっと! 離してくれる!?』ニャンニャン

「はー可愛い。持って帰っちゃおうかな。んー、首輪がついてなければ……!」

『この女……目がまずいわ! 男! 早く戻ってきて!』ニャーン!

287 : VIPに... - 2012/04/08 21:31:16.13 bL0mp5SLo 204/444

「いやだからな? ツンデレもいいけど暴力的なのはダメなんだって」スタスタ

男友「ばっきゃろ! その後に来るデレを考えればそれも良くなるんだって」スタスタ

「いやー無理だろー。俺の場合はそのツンの部分で……なんだあれ」

男友「あぁ? ……あれは女さんじゃないか」

「だよな。あとうちの猫ちゃんもいるように見えるんだけど」

男友「あの白いのはそうっぽいなー」

「うーん。なんだろうねぇ」

男友「とりあえず行ってみるか」スタスタ

「そうだな」スタスタ

288 : VIPに... - 2012/04/08 21:31:42.37 bL0mp5SLo 205/444

「もふもふ! もふもふ!」モフモフ

『ちょっと! そのもふもふってのやめなさい!』ニャンニャン!


「あのー、女さん?」

「え? あ、男くんと男友くんかー」

「どうもどうも」

男友「雑貨屋以来ですな」

『男! この女を引き剥がしてくれる?』

『うん。ちょっと難しいかなぁ』

『なんでよ!』

『いや、がっちりホールドされてるからさー』

『あなたが一言いえばいいでしょ?』

『俺にそんな度胸はない!』

『威張ってんじゃないわよ! もういいわ自力で抜ける』モゾモゾ ピョン!

「あっ! もふ猫ちゃん……」

男友「もふ猫ちゃんて」

「確かにもふもふだけどね」

『男、私をだっこしなさい』ペシペシ

『はいよー』ダッコ

『ふぅ。やっぱりここが一番落ち着くわね』

『そっか』ナデナデ

289 : VIPに... - 2012/04/08 21:33:00.63 bL0mp5SLo 206/444

「あれー? あたしの時は結構暴れたのになぁ」

『言うほど暴れてないわ』

「猫ちゃんは割とおとなしいと思うけどねぇ。女さんが興奮してたからじゃない?」

男友「傍から見るとすごかったな。女さんが男だったら通報もんだった」

「そんなに? だってもふ猫ちゃんが可愛くて」

「確かに可愛いよねぇ」

「っていうか、やっぱり男くん家の猫だったんだ」

「うん。普段はこんなとこには来ないんだけどね」ナデナデ

男友「男についてきたんじゃないか? 懐かれてるし」

「そうなの?」

『……そうよ』

「きっとそうだよ。普通こんなところまでこないもん」

「そっかー。暇だったのかなー?」ナデナデ

『それもあるし……寂しかったのよ、ばか』

『可愛すぎ!』モフモフ

『ちょっと! 二人が見てるわよ?』

『かまわんかまわん!』モフモフ

男友「おーい。きもいぞー」

「でも全然嫌がらないねーもふ猫ちゃん」

「ふぅ、思わずもふってしまった」

「いいなー。あたしももふりたいなぁ」

男友「女さんのもふり方は……」

「じゃれてるって感じじゃないんだよね……」

「そんなに?」

290 : VIPに... - 2012/04/08 21:34:37.69 bL0mp5SLo 207/444

男友「女さんってこっちの方向だったのか」

「そうだよー。たまに男くんと男友くんが一緒に帰ってるの見かけてたよ」

「へーそうなんだ。なんで俺たちは気付かなかったんだろ」

男友「絶の使い手とか?」

「普通の女子高生なんですけどー?」

『多分、強化系か放出系でしょうね』ニャーオ

『くくっ! 違いない! どっちかっていうと俺は強化系だと思う!』ニヤ

男友「んー? 女さん、男が女さんのこと強化系だろうなって言ってる」

「なぜわかった!? ……あっ」

「誰が単純バカだって?」

『あなたよ』ニャーン

「い、いや、バカとは言ってないよ? 単純なのかなーとは思うけどね?」

「ふーん? じゃそういうことにしておいてあげる」

男友「男は顔に出るからすぐわかる」

「そんなに?」

291 : VIPに... - 2012/04/08 21:35:42.31 bL0mp5SLo 208/444

男友「じゃあ俺はこっちだから。じゃあなー」ニヤ

「おーう」ギロ

「ばいばーい」

「ニャーン」

『……っべー! 猫ちゃん! 二人きりになっちゃったよ!』

『まぁ、私もいるけどね』

『どうしよう猫ちゃん。この状況は想定外だよ!』

『あなたね、今こそ女友達をつくるチャンスじゃない』

『それはそうだけど、いきなりすぎるよー!』

「男くん家ってどのへんなの?」

「えーっと、ここの通りをまっすぐ行って途中右に曲がって少し行ったところ」

「あーそうなんだ。じゃあ結構うちと近いんだねー」

「へー? そうなんだ」

「うん。あたしはここをずっとまっすぐなんだけど――」


『会話できてるじゃない』

『猫ちゃんがいなかったらもう死んでる』

『貧弱すぎるわね……さて、私は一足先に帰ろうかしら』モゾモゾ

『させないよ……!』ギュー

『んっ、ちょっとっ、苦しいわ』

『だって逃げようとするから……』

『あなたね、猫にすがるなんて情けなさすぎるわよ』

『言わないで!』

292 : VIPに... - 2012/04/08 21:36:12.36 bL0mp5SLo 209/444

「もふ猫ちゃんって、オス? メス?」

『レディーよ』ニャーン

「レディーだって」

「あはは、そうなんだ。可愛いねー」

『当たり前じゃない』ニャーン

「そうだねぇ」

「いいなー。あたしもペット飼いたいなー」

『男友みたいなこと言ってるわね』

「孔雀とかどう?」

「くじゃくー? 孔雀よりは犬とかがいいなぁ」

「犬かー。どんな?」

「ブルドッグがいいかなぁ」

「えー?」

『あなたね、ここは嫌でも、嘘でも、社交辞令でも女に同意しておくべきだったわ』ペシペシ

『えぇっ!? 猫ちゃんにそれを言われるとは思わなかったなぁ』

「男くんはブルドッグだめ?」

「ううん。味があって可愛いよね」

『あなたね、あんな不細工のどこがいいの?』カプリ

『どうしたらいいの!?』

293 : VIPに... - 2012/04/08 21:38:20.08 bL0mp5SLo 210/444

「あ、俺こっちだから」

「ここで曲がるんだ。ばいばい、もふ猫ちゃん、男くん」

「うん。またね」ヒラヒラ

「ニャーン」


「はー。すごく気疲れしたぁ」

『そう? 割りと普通に話せてたじゃない』

「猫ちゃんがいたおかげかな。実際ほとんど猫ちゃんの話だったし」ナデナデ

『そうね。ま、変にどもってなくて安心したわ』

「そっか」

『もしそうだったらまさにキモオタだもの』

「流石にそこまではね」

『でもね男、もっと自分から話を振らないとだめよ』

「それは俺も思ってたんだけどね……ほら、男友ならアニメの話とかできるけどさ」

『女相手じゃ無理ね』

「女さんが興味ありそうな話題とかわからないしなぁ。まぁいいや。女さんとは頻繁に話すわけでもないし」

『……こうして男はチャンスを潰すのでした』

「うっ」

『家に帰ったら、私とシミュレーションしましょう。レディーと話すための』

「猫ちゃんとかー。そのうちいつもどおりに喋ってるだろうなぁ」

『ふふっ。私はそれでも構わないわ。お話しましょう?』

「あはは、そうだね。じゃ、暑いしさっさと帰ろうか」

『全力でダッシュよ』

「春ならまだしも夏は……いや、行くか!」ダダダダダ

『ふふ。がんばってっ』ペシペシ



続き
男「猫ちゃんと意思疎通をとりたい」【後編】


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