10 : 代行thx - 2011/06/03(金) 00:20:54.49 1pImwfiQO 1/106


「やっほー。おはよう」


地味子「……え? あ、えと、おは……」


「おっはよーっ男!」

「朝からご苦労さんだな」

「試合近いからねー」

「そうか。期待してるぞ」

「まかせろ! じゃ、またあとでねー」たったったったっ…

「ふぁいおー」



地味子(……まぁ、こうなるよね、うん。

    と言うか、私、名前覚えてもらえてるかも怪しいし……)


16 : 以下、名... - 2011/06/03(金) 00:22:57.93 1pImwfiQO 2/106


男友「よう」

「お、今日は早いな」

男友「なんか知らんが一本早い電車に乗れたんだわ」

「空いてた?」

男友「まぁまぁ。一本違うだけで結構変わるもんだな」

「この辺学校多いしなー」



地味子(……私、2日か3日に1回は男くんと同じ電車に乗ってるんだけどな……)


20 : 以下、名... - 2011/06/03(金) 00:26:28.58 1pImwfiQO 3/106


「いやー、朝から良い汗かいた!」

「お疲れ。調子良いみたいだな」

「最近は上々だね。朝は涼しいし、ご飯は美味しいし」

「俺は早くも夏バテ気味だわ」

「それはアレだよ、多分朝と夜で気温差あるからとか」

「あー。そうかもな。だから毎年この時期に体調崩すのか」

「やーいやーい、貧弱貧弱ぅー」

「うっせうっせ」



地味子(やっぱり、男くんと女さんって付き合ってるのかな。

    って言うか、化粧薄くても可愛いなー……薄い化粧が上手いのかな?

    でも、女さんも中学のときは地味な子だったよね……喋ったことはなかったけど……

    高校デビューって、成功したらあんなに変われるんだ……)


24 : 以下、名... - 2011/06/03(金) 00:31:51.00 1pImwfiQO 4/106


「うおっ! 宿題がない!」

「まーた女の忘れ物スキルか」

「なんか鞄が軽いと思ったんだよねーあーこまったーこまったぞー」チラッチラッ

「あとでアイス一個な」ぴらっ

「ありがとっ」

「部活に熱心なのはいいけど、忘れ物ぐらい気を付けろよ」

「いやー、気を付けてはいるんだけどねぇ」


女友「なんだ、まーた女の忘れ物スキルか」

「ぷぷっ、男と同じこと言ってるー!」


女友「「笑い事じゃねーよ」」



地味子(女友さん、すごく勉強できるけど派手なグループにいるよね……

    同じ眼鏡掛けてても、どうしてこう違うんだろう。

    ……あ、素が綺麗なのか。女友さんも女さんも。今更か。

    それじゃあ、私が頑張っても……仕方無いよね、うんうん)


28 : 以下、名... - 2011/06/03(金) 00:36:24.62 1pImwfiQO 5/106


女友「男も勉強してなさそうに見えて、実は成績良いよね」

「人に見えないように努力するもんなんだよ、男ってのは」

女友「お、かっこいいねぇ」

「ほめろほめろ」


「いよっ、にっぽんいち!」


「お前は早く写せよ」

女友「あはは」



地味子(男くんも、私より勉強出来そうだもんね。要領が良さそうって言うか……

    私より忙しくても、私がだらだらしてる時間に勉強してるんだろうな。

    まぁ私が真面目にやったらただのがり勉だけどさ。

    でも、勉強も何もできないよりはマシかな……)


34 : 以下、名... - 2011/06/03(金) 00:43:02.07 1pImwfiQO 6/106


きーんこーんかーんこーん、


「さて、あっと言う間に昼休みだ」

男友「学食行くか?」

「おう。混む前に席取ろうぜ」

男友「あいよ」

「最近昼は学食が多くなってきたな」

男友「そう言えば、ここんとこあんまり弁当見ないな?」

「なんか仕事が立て込んでるとからしいわ」

男友「ふーん」



地味子(お弁当……やっぱり料理って作れた方がいいのかな?

    私が作ったところでって話だけど……

    女さんとか女友さんならきっとポイント高いんだろうなー。

    バレンタインにも手作りのお菓子とか持ってきたりして……)もぐもぐ


35 : 以下、名... - 2011/06/03(金) 00:45:25.01 1pImwfiQO 7/106


「次って体育だよな?」

男友「ん? あぁ、そうだったと思うけど」

「今日シャトルランやるとか言ってなかったっけ」

男友「マジで! あれ苦手なんだよなー」


「シャトルランやるの?

  じゃあ私が勝ったらアイスおごりね!」


「現役本職にはかなわねーよ」

男友「だな」

女友「ちょっと女に運動神経わけて欲しいわ」

「まったくだ」



地味子(この場合、女の子としては運動出来る方がいいのか出来ない方がいいのか……

    ……美人だったらどっちにしてもプラス査定だよね。

    私は……平均よりちょっと出来ないぐらい?

    ……中途半端なだけか)


37 : 以下、名... - 2011/06/03(金) 00:56:27.02 1pImwfiQO 8/106


「く、くたびれた……」

男友「遅刻何回分ぐらい走ったんだろうなこれ……」

「だらしないなー。後でアイスね!」

「ちくしょー……」

男友「言っても、ちょっとは勝算があると思ったんだが……」

「がーりがーりーくーん♪」

女友「ご愁傷様。私は抹茶ね。ハーゲンダッツの」

「いやいやいや」

男友「百歩譲ってもガリガリ君だろ」

女友「こないだの宿題代。払わないならもう見せないけど?」

「じゃあおれがガリガリ君でお前がハーゲンダッツだ」

男友「な、なぜこんなことに……」



地味子(美人だから許されるわがまま、か。

    私が押し押ししても退かれるだけだろうなぁ。

    ガリガリ君にしろハーゲンダッツにしろ31にしろ……お、当たりだ)ぺろぺろ


38 : 以下、名... - 2011/06/03(金) 00:59:52.38 1pImwfiQO 9/106


「じゃあな」

男友「おう」

「ばいばいー!」ふりふり

女友「また明日ね」



地味子(男くんは部活には入ってないから、帰りは結構な確率で同じ電車になる。

    ……まぁ行きと同じで、だから何なんだって話だけど。

    気まずいから違う車両に乗ろう……)


39 : 以下、名... - 2011/06/03(金) 01:07:05.11 1pImwfiQO 10/106


ガタンゴトン、ガタンゴトン、……


地味子(うーん……私は男くんのことが好きなのかな?

    今までいわゆる恋愛ってのをしたことが無いからわかんないけど……

    ……気になってる、ってのは、多分間違いないんだよね。

    今、もし男くんと女さん、それか女友さんが手を繋いでて、それを目撃したとして……

    ……凹むかな。なんか凹みそうだな。

    やっぱり、ってなるんだろうし、全然違和感もないけど、

    それでもなんか凹みそう。

    ……恋かどうかもわからないまま失恋することになるのかな。

    いかにもありそうな話だなぁ。


    じゃあ、告白とかしちゃう?


    ……あはは。無いな、うん)


ガタンゴトン、ガタンゴトン、……


52 : 以下、名... - 2011/06/03(金) 01:36:31.95 1pImwfiQO 11/106


ガタンゴトン、ガタンゴトン、

ガタンゴトン、ガタン、ゴトン、

ガタン、……ゴトン、……ガタン、…………プシューッ……


「……」ペラッ……



地味子(おはよう、と思うだけ。

    なに読んでるのかな……)


53 : 以下、名... - 2011/06/03(金) 01:43:18.16 1pImwfiQO 12/106


ガタンゴトン、ガタンゴトン、……



「……」



地味子(駅にして4駅、時間にしておよそ10分ちょっと。

    ……長く感じるんだな、これが。

    私もこの時間を読書に使えば、ちょっとは有意義な知識も身に付くかもね)



「……」パタン、



地味子(あらら、本を閉じて……寝ちゃった。

    お疲れ気味なのかな。

    ……これ、寝顔って結構貴重なんじゃないの?)



ガタンゴトン、ガタンゴトン、……


55 : 以下、名... - 2011/06/03(金) 01:48:39.39 1pImwfiQO 13/106


『……お出口、左側に変わります。

 特急にお乗り換えのお客様は、……』



「……」



地味子(こ、これはまずいんじゃないだろうか。

    多分熟睡してるよね、男くん……

    どうしよう……声を掛けて起こす?

    ……いやいや、いや、でも、うーん……いやいや……

    え? いや、むむむ……いや、えー……)



ガタンゴトン、ガタン、ゴトン、

ガタン、……ゴトン、……ガタン、…………プシューッ……


59 : 以下、名... - 2011/06/03(金) 01:53:47.42 1pImwfiQO 14/106


「ふーっ、何とか間に合ったか……」ドサッ

男友「ギリギリだな。どうした?」

「いや、電車で寝ちまってな。

  一駅乗り過ごしたんだわ」

男友「あーあ、そりゃ朝からお疲れだな」

「夜更かしはいかんね、やっぱり」



地味子(ごめんなさい……と、思うだけ。

    チキンすぎるだろ私……ないわー……

    まぁ、いきなり私に謝られてもなんのことだかわからないだろうけどさ……)


60 : 以下、名... - 2011/06/03(金) 02:01:23.00 1pImwfiQO 15/106


「おっはー!」

「おう、おはよう。

  今日は朝練なかったのか」

「顧問の都合で休みなんだって。

  久しぶりにゆっくりご飯食べたよ」

男友「毎朝毎朝よくやるなぁ」

「まぁ趣味みたいなもんだしね」



地味子(一段と可愛く見えるのは、化粧いつもよりがしっかりしてるからかな……

    目、でっけーなぁ。ちょっとだけ手間掛けるだけでこうも変わるのか。

    ……薄化粧も、ちゃんとした化粧も似合うって、いいなぁ。可愛いなぁ)


63 : 以下、名... - 2011/06/03(金) 02:09:30.47 1pImwfiQO 16/106


男友「ん? タウンワーク?」

「そろそろバイトでもしようかなーと」

男友「あー、部活してないもんな」

「女見てたら、ただ帰宅部やってだらだらするのも情けなく思えるわけだ」

男友「わかるわかる」

「男友、何のバイトしてるんだったっけ?」

男友「俺はアレだよ、……スーパーの花屋の」


女友「似合わねー」


男友「うるせぇ!」

「おはようさん」

女友「おはよ。

   ふむふむ、バイトねぇ。感心感心」



地味子(バイトか……時間だけはたくさんあるから、私も考えてみようかな。

    ……まずお店に電話する、って時点でもうダメっぽいな……

    自分売り込むとか、落とされたら立ち直れなさそう……)


64 : 以下、名... - 2011/06/03(金) 02:17:44.72 1pImwfiQO 17/106


男友「今日、帰りどっか寄ってかね?」

「おう。ちょっと遊んで帰るか」

男友「なんかよさげなレコード屋があってさー」

「お、いいな。どの辺?」

男友「駅降りて、ちょっと裏手に入った高架下」

「ほー、そんなところよく見つけたな」

男友「バイトの先輩に教えて貰ったんだわ」

「期待しとこう」



地味子(レコード屋……レコード?

    CDじゃなくて?

    ……そう言えば男くん、音楽好きって話を前してたような……

    家にレコード聴くための機械とかあるのかな。どんなのだろう?)


65 : 以下、名... - 2011/06/03(金) 02:22:06.08 1pImwfiQO 18/106


ガタンゴトン、ガタンゴトン、……



「んじゃあ、本屋先に行く?」

男友「そうするか。俺はどっちでも」

「まぁ買うものは決まってるからすぐ済むけどな」

男友「そうか。

   最近、なんか面白かったのある?」

「そうだな、……とか」

男友「あー、あれか。今度貸してくれよ」

「おう」



地味子(……き、聞こえなかった……

    と言うか、聞き耳立ててる自分が気色悪いな……)



ガタンゴトン、ガタンゴトン、……


66 : 以下、名... - 2011/06/03(金) 02:26:09.12 1pImwfiQO 19/106


カタカタカタ……

カチッ、カチカチッ、


地味子(……へー、レコード屋って普通の中古CDも売ってるんだ。

    レコードプレイヤーもちゃんと色々あるんだね。

    値段もそんなにめちゃくちゃ高いわけでもないみたいだし。

    ……男くん、どんな音楽好きなのかな。

    やっぱり洋楽とか? レコードで聴くのかな)


68 : 以下、名... - 2011/06/03(金) 02:31:11.33 1pImwfiQO 20/106


地味子(……考えてみたら、私、普段ほとんど音楽とか聴かないから

    急に調べてみても何が何だかさっぱりわかんないや。

    さしあたり、TSUTAYAに行ってビートルズでも借りてくる?


    ……それでビートルズ聴いて、どうしようってんだろうね私は。

    挨拶すらしたこと無い人に、いきなり音楽の話振るとかもうね……

    おとなしくしておこう、うん。……でも一回聴くだけは聴いてみようかな)


70 : 以下、名... - 2011/06/03(金) 02:43:56.69 1pImwfiQO 21/106


「昨日はえらい散財してしまったなぁ」

男友「いい買い物だったろ?」

「……よし決めた。やっぱりバイトしよう」

男友「それがいいな。また行こうぜ。

   誰かに買われる前に買いたいのが結構あるし」

「だな」


「なになに? 服の話?」

「いや、音楽の話」

女友「男とか男友の聴く音楽はよくわからないね」

男友「好みの問題なんだから仕方無いだろ」

「ふーん……? 例えばどんなの?」

「こないだ俺が男友から借りたのは……」


きーんこーんかーんこーん、……


地味子(ちくしょう、チャイムのやつめ。

    また肝心なところが……ってかほんとに聞き耳自重しよう。

    さすがに自己嫌悪入ってきた……

    男くんとかが何の音楽聴いてても、私には関係ない話なのに……)


72 : 以下、名... - 2011/06/03(金) 02:55:54.52 1pImwfiQO 22/106


ガタンゴトン、ガタンゴトン、……



地味子(今度からは気付いたら男くんとは違う車両にしよう。

    そのうち目で追ってるのがばれたりしたら……

    ……ばれたらどうなるんだろう?

    気持ち悪いやつって思われるだけかな……

    多分そうだろうな。

    私みたいなのに追いかけられても、仕方ないもんね。

    女さんとか女友さんみたいな華がある人ならともかく、

    私みたいな地味なのに……ねぇ。うんうん。……はぁ)



ガタンゴトン、ガタンゴトン、……


88 : 以下、名... - 2011/06/03(金) 11:50:25.53 1pImwfiQO 23/106


【国語 ディベート班分け】


一斑:……

二班:……

三班:……

四班:男 地味子 ……

五班:……

六班:……


地味子(……って、思った矢先にこれだものなぁ)


「よろしくな」

男友「男が居るなら心強いな」

「ほんとほんと。頼りにしてるよー」

女友「まぁちゃきっとやってぱぱっと点数もらう方向で」


地味子「……」



地味子(これ、何の罰ゲーム?)


92 : 以下、名... - 2011/06/03(金) 12:19:06.33 1pImwfiQO 24/106


男友「議題が『死刑制度について』か」

「あとで賛成派反対派に分かれるけど、今はとりあえずこのメンバーで話す、と」

女友「ちなみに男と男友はどっち派?」

「俺は賛成で」

男友「んー、俺も」

女友「女は?」

「私は……よくわかんないけど、反対かなー」

女友「私も一応反対派。真っ二つになったね。

   じゃあ、地味子さんは?」


地味子「え、えっと……」



地味子(うわああああっ

    どどどどどうしようっ

    いきなり聞かれても考えたこと無いよそんなこと……

    なんとなくでどっちとも言えないし、……お、女友さんの迫力がすごいし……)


93 : 以下、名... - 2011/06/03(金) 12:21:32.54 1pImwfiQO 25/106


女友「まぁ急に聞かれても困るのはわかるけどね」

「そうだねぇ。普段あんまり考えないし」


地味子「あの、……はい、ちょっと、どっち派かはまだ……

    この班の話し合いを見て決めれたらなー、なんて……」


女友「ふーん、そっか」



地味子(自分から輪の外に出ちゃったよ!

    馬鹿か私はっ?

    ってか女友さん怖ぇえええ!

    か、帰りたい……)


95 : 以下、名... - 2011/06/03(金) 12:26:58.25 1pImwfiQO 26/106


女友「じゃ、とりあえず四人で話し合って、

   それを地味子さんにジャッジしてもらうって感じで」

「それいいな」

男友「ナイスアイディアだ」

「審判よろしくね、地味子さん」


地味子「あ、はい」


「じゃあ、とりあえず賛成派から順番で。

  まず、……」



地味子(……これでいいのか……?)


96 : 以下、名... - 2011/06/03(金) 12:36:42.34 1pImwfiQO 27/106


地味子(結局発言がほぼゼロな上、どっち派になるかも決められなかった……

    何というお邪魔虫っぷり。

    私がいなかったらすごいレベルの高い班なのに……

    男くんも男友くんも、女さんも女友さんもしっかり自分の意見持ってて、

    どっちの話もわかりやすくて説得力があって……


    ……今度と言う今度は、ほんとに自分が嫌になってきた。


    なんで、私は私なんだろう……

    なんで、変われないんだろう……)


97 : 以下、名... - 2011/06/03(金) 12:48:20.61 1pImwfiQO 28/106


ガタンゴトン、ガタンゴトン、……



地味子(そして、ついに車両どころか電車そのものまで男くんと一本ずらすようにしてしまった。

    ……前まで、ちょっとだけ男くんに気付いて貰えって、

    あわよくば声なんか掛けて貰えるのを期待してたけど、

    名前と顔を覚えられたことで余計に気まずくなってしまった……


    あーあだよほんとに、あーあ……)



ガタンゴトン、ガタンゴトン、……


98 : 忍法帖【Lv=1,xxxP】 - 2011/06/03(金) 13:01:20.79 1pImwfiQO 29/106


「バイト決まったわ」

男友「おお、おめっとさん。

   どこで何のバイト?」

「家と反対方向にここから一駅行ったとこの本屋」

男友「へー。あの辺か」

「それで、せっかくだからしばらく自転車で通学しようかなーと。

  なんか親父がロードレーサー貸してくれるらしい」

男友「マジか! いいなぁそれ!」

「定期代も浮くしな」

男友「となると、これからずっと自転車?」

「まぁ多分。

  少なくとも、バイト辞めるか首になるまではな」

男友「そうかー」



地味子「……」


107 : 以下、名... - 2011/06/03(金) 17:46:18.29 1pImwfiQO 30/106


地味子(……これは


    「身の丈をわきまえて、素直に生きろ」


    と言う天のお告げじゃないだろうか……

    張り切って勘違いして手痛い失敗をするより、

    自分に合った生き方を学べとか、そんな感じのアレじゃないだろうか……)


「へー、本屋さんでバイトかー」

女友「結構肉体労働っぽいね」

男友「そうなのか?」

「配達とか、重いもの運んだりとかもあるからさ」



地味子(……じゃあ、私は一生このままなの?

    いや、このままじゃ一生このままだ。それは間違いない。


    ……なら、どうしたら……)


111 : 以下、名... - 2011/06/03(金) 18:55:41.04 1pImwfiQO 31/106


地味子(……よし、とりあえず、男くんどうこうは一旦忘れよう。

    それで、自分で思う範囲で、ちょっと生活を変えてみよう。

    何があるかじゃなくて、誰かに見て貰うためじゃなくて、

    とにかく、何かやってみよう……


    ……途中でへこたれなければ、だけど)


112 : 以下、名... - 2011/06/03(金) 19:29:38.88 1pImwfiQO 32/106


地味子(とりあえず、音楽を聴こう。

    それから映画を観よう。本も読もう。

    美術館に行こう。ちょっと運動しよう。

    何かバイトもはじめてみよう。勉強もしよう。


    これだけやって何も変わらなかったら、その時はその時で考えよう。

    今までが空っぽだったんだ。

    きっとなにかぐらいは詰め込めるんだ)



「しかし、相変わらず寝不足だわ」

男友「勉強か? クマできてんぞ」



地味子(……頑張ろう)


114 : 以下、名... - 2011/06/03(金) 19:51:59.10 1pImwfiQO 33/106


「……ふぅ。一段落付いたな。明日の準備して寝るか……」


……Prrrrr、Prrrrr、Prr


『遅くにごめんね。今、時間いい?』

「んー、大丈夫」

『すぐ終わるようにするよ。

  あのね、ちょっと謝りたくてさ』

「謝る? 何に?」

『えと……最近、遅くまで電話に付き合ってもらっちゃって。

  男が寝不足っぽいって男友が言ってたから……』

「あぁ、いや、いいよそれは。

  電話終わってからすぐ寝ないで起きてたりするし」

『そうなの?』

「気にすんなよ。ダメなときはダメって言うからさ」

『……うん、ありがと。色々話聞いてくれて』

「おう」


『大好きだよ、男』


115 : 以下、名... - 2011/06/03(金) 19:54:10.90 1pImwfiQO 34/106




地味子(Blackbird singing in the dead of night

    Take these broken wings and learn to fly

    All your life

    You were only waiting for this moment to arise……か。


    いい歌だなぁ、これ)


161 : 忍法帖【Lv=1,xxxP】 - 2011/06/04(土) 16:42:00.88 vTE8zi+jO 35/106


チリンチリーン

「いらっしゃいませー

 お好きな席へどうぞ」


「こんな所に喫茶店あったんだ」

「地下だからわかりにくいけど、ここら辺では一番好きな店だ」

「うわ、お酒の瓶がいっぱいあるよ」

「夜はバーもやってるからな」

「よく来るの?」

「まぁ男友とかとたまに」

「ふーん……なんかコーヒーにも色々あるんだね。

  全然わかんないや」

「名前のかっこよさで選んでいいと思うぞ。

  そのうち好きなのが見付かるだろ」

「そっかなー。じゃあ……ハウスブレンド?で」

「ん」


162 : 以下、名... - 2011/06/04(土) 16:46:41.90 vTE8zi+jO 36/106


チリンチリーン

「……」


~♪

  ~♪


地味子(こんな所にレコード屋さんがあったんだ。

    そこらじゅうに段ボールが山済みになってて足の踏み場も無いや。


    えーと、CDは……あったあった。

    とりあえず、昨日メモって来たのを探してみよう。


    ……今流れてるこの曲も良いなぁ。なんだろこれ。

    店の人に聞いてみようかな……でも、なんか怖そうな人……

    ……いや、ここで聞かなきゃダメだ、うん。


    頑張れ、私)


164 : 以下、名... - 2011/06/04(土) 16:54:29.11 vTE8zi+jO 37/106


「そう言えば、こないだ貸したCDどうだった?」

「え? あぁ、うーん、かっこよかったよ」

「そうか? あの辺が好きなら、他にも色々あるけど……

  ……正直なところ、よくわからないってやつの方が多かっただろ?」

「いや、まぁ、……うん、ちょっとよくわからないのもあったね」

「だろうなー」

「でもほら、きっとそのうち、よさがわかってくるよ、多分。

  だから、もっと色々教えて?」

「……あぁ。女がそれでいいなら。

  何かいいのがあったら女も教えてくれ」

「うん」


166 : 以下、名... - 2011/06/04(土) 17:03:47.30 vTE8zi+jO 38/106


地味子(あれ、なんだろこれ。

    『Easy Rider』……映画のサントラかな?

    あ、こっちにも。『小さな恋のメロディ』……どこかで聞いたことあるな。

    よし、2つとも聴いてみよっと。TSUTAYAに映画あるかな?


    それから……うわ、このジャケット怖っ!

    なにこれぇ……変なのがいっぱいあって面白いなー。

    これも買ってみよう。宝探ししてるみたいだね)ガサガサ


167 : 以下、名... - 2011/06/04(土) 17:09:44.28 vTE8zi+jO 39/106


「じゃあそろそろ出るか」

「うん。本屋行くんだっけ?」

「時間あるなら」

「私はいいよ。あ、ワンピースの新刊買わなきゃ」

「相変わらずワンピース流行ってるなぁ」

「泣けるからねあれは!」

「最近読んでないな」

「貸したげようか?」

「あー、うん。出来たらお願いするわ」

「わかったー」



チリンチリーン、

「ありがとうございましたー」


169 : 以下、名... - 2011/06/04(土) 17:13:45.47 vTE8zi+jO 40/106


店員「……8850円です」

地味子「あ、はい(久し振りにこんなにお金使ったなぁ)」

店員「1万円で……お釣り1000円と、……150円」

地味子「あ、あの、それと……」

店員「……?」


地味子「い、今流れてるの、誰の、アルバムですか?(き、聞けた!)」


171 : 以下、名... - 2011/06/04(土) 17:18:54.85 vTE8zi+jO 41/106


「外の空気おいしーっ」スーハー

「息苦しかった?」

「えっ、あ、いや、そう言う意味じゃないよ? コーヒーおいしかったし……」

  えと、本屋こっちだっけ? あっち?」

「あぁ、そっちじゃなくて、そこの歩道橋渡ればすぐだ」

「……あっ、なるほど。やっと今居る位置がわかった!」

「ははは」


172 : 以下、名... - 2011/06/04(土) 17:25:48.11 vTE8zi+jO 42/106


地味子(結局もう一枚買っちゃったよ。


    えーと、確かこの辺にちょっと有名な喫茶店があるって……

    どうせ暇だし、ちょっと探してみよう。

    そこで買ったCDの確認とかして休憩しよっかな。

    多分、あの歩道橋を渡って、向こうに降りて少し歩いたところだったよね)




「それで、この服すごく安く買えたんだよ!」

「すごいな。そんなに……ん?」

「え? どうしたの?」


「……あ、いや、なんでもない。

  多分見間違えだった」


「?」



174 : 以下、名... - 2011/06/04(土) 17:32:38.35 vTE8zi+jO 43/106


「あった! これこれ」

「もう随分出てるんだなぁ」

「ねー。男はなに買うの?」

「ちゃんとは決めてないけど、とりあえず中島らもって人のを……知ってる?」

「んー……聞いたことないかな?」

「むしろ読んでたらびっくりするわ」

「そうなんだ? えー、どんな本?」

「読み終わったら貸すよ」

「じゃあワンピースと交換ね!」


176 : 以下、名... - 2011/06/04(土) 17:41:34.87 vTE8zi+jO 44/106


地味子(ここかなぁ……もっとちゃんと調べてくればよかった。

    まぁいいや、なんかちょっと……渋い感じで。えへへ……)



チリンチリーン、

「いらっしゃいませー

 お好きな席へどうぞー」


180 : 以下、名... - 2011/06/04(土) 18:40:06.32 vTE8zi+jO 45/106


地味子(えーと……

    メモ通り買えたのは、Buddy HollyとRolling Stonesとはっぴぃえんどで、

    アルバムが1stじゃないけどとりあえず買えたのがChuck BerryとBeach Boys、それから井上陽水。

    買う予定はなかったけど買っちゃったのがサントラ2つとVelvet Unddrground、

    BECKと……筋肉少女帯のジャケットはなんか好きだなぁ。レティクル座?

    あと、店内で流れてたハンバート・ハンバート。

    買えなかったのがPatti SmithとかMy Bloody ValentineとかDoorsとか。

    今度、他のレコード屋さんで探してみよう)がさごそ


店員「ご注文お決まりですか?」

地味子「あ、えと、……ハウスブレンドのホットでお願いします」


181 : 以下、名... - 2011/06/04(土) 18:46:44.59 vTE8zi+jO 46/106


地味子(……なんか好き勝手にむちゃくちゃな買い方した気がするけど……

    まぁいっか。気に入るかどうかは聴かなきゃわかんないし。

    帰りは映画借りて行こっと。


    ……それにしても、いい喫茶店だなぁ。

    流れてる音楽もなんかかっこいいし……雰囲気に呑まれてるだけかな?)



……When the truth is found to be lies

  and all the joy within you dies

  don't you want somebodytolove?

  Don't you need somebodytolove?

  Wouldn't you lovesomebodytolove?

  You better find somebodytolove……


202 : 以下、名... - 2011/06/04(土) 23:00:16.60 vTE8zi+jO 47/106


地味子(あ、そうだ。ついでに本屋さんにも寄って行こう。

    とりあえず有名な映画の原作とかから読んでみようかな。

    パッと思い付くのは……『ライ麦畑でつかまえて』とか?

    あと、英語の先生が『ジョニーは戦場へ行った』が良いって言ってたような……

    それと、『ファウスト』も面白いって聞いた気がする。音楽の先生だったかな?

    とりあえず、その辺を探してみよう。


    ……気付いたらコーヒーそのまま飲んじゃってたな。

    案外いけるもんなんだね……美味しいからかな?

    豆の挽き売りもしてるのか……自分で淹れれたらちょっといいかもね)


205 : 以下、名... - 2011/06/04(土) 23:10:49.66 vTE8zi+jO 48/106


ガチャ、


地味子(ただいまー、っと。

    まだ誰も帰って来てないね。


    久し振りにこんなアクティヴな休日を過ごした気がするよ……

    ……でも、不思議と疲れはあんまり無いかな?


    借りてきたDVDはともかく、他は無理せずゆっくり消化していこっと。

    最初から飛ばしたらバテちゃうもんね。


    ……ちょっとドキドキするなぁ。

    自分の部屋で音楽聴くだけなのに)


206 : 以下、名... - 2011/06/04(土) 23:17:25.01 vTE8zi+jO 49/106


チュン、チュンチュン……

チチチチ……


地味子(け、結局日付が替わるまで音楽聴いて、

    そのあと朝まで映画を観てしまった……


    ……でも、なんだろう、この感じ。

    今なら何でも出来そうな気がする……かな?

    なんか脳内麻薬出ちゃってるよこれ。

    すごい、この……何かしたい感じ。

    もっとたくさん、色んなものに触れてみたい。


    自分でもよくわかんないけど……とりあえず寝よう……うん)


207 : 以下、名... - 2011/06/04(土) 23:22:50.18 vTE8zi+jO 50/106


「……」


パチッ、

……Prrrr、Prrrr、Prrrr、


男友『あいよー』

「いま暇?」

男友『おう。駅のまわりうろうろしてたとこだ』

「すぐそっち行くからどっかで待っててくれ」

男友『じゃあ、こないだ行ったレコード屋で』

「ん。また後で」


ピッ、





地味子「……すぅ……すぅ……」


212 : 以下、名... - 2011/06/04(土) 23:34:39.64 vTE8zi+jO 51/106


男友「昨日、地味子さんを見かけた?」

「多分。

  普通だったら気付かなかったんだが……」

男友「なんで気付いたんだよ? 休みの日のでかなり人ごみになってただろ」

「最初はこの店の袋が目に入ってきたんだ。

  目立つ色してるからな」

男友「だな」

「で、なんとなくその袋を持ってる人を見たら、……地味子さんだった」

男友「マジかよ?

   あの人わざわざレコ屋で買った音楽とか聴くとは思えないぞ」


213 : 以下、名... - 2011/06/04(土) 23:38:09.57 vTE8zi+jO 52/106


「確かに普通にJポップ買ってただけかも知れない。

  でも、それだったらブックオフとかで充分だろ?」

男友「うーん……見間違えじゃね?」

「……」

男友「だって、ディベートの班の時とか、

   俺とお前が音楽の話してても全然リアクション無かっただろ」

「それは……


  ……俺、嫌われてるっぽいからな。地味子さんに。

  結構避けられてるし」





地味子「……すぅ……すぅ……

    ……う、んん……」もぞもぞ


216 : 以下、名... - 2011/06/04(土) 23:45:40.14 vTE8zi+jO 53/106


男友「まぁ仮にそうだったとして、気にするほどの事でもない。

   女と付き合ってるんだろ? それでいいじゃん」

「別にそう言う……」

男友「それに、地味子さんってさぁ、なんと言うか……地味じゃん。

   特徴が無いと言うか。だからたまたま似た人がレコ屋の袋持ってて、

   普段のイメージの反動とかギャップでそれっぽく見えたんだって」

「……まぁ確かに地味だけどさ」

男友「だろ? 別に悪いやつじゃないとは思うけど、

   俺とかお前と友達になるってタイプのやつでもないって」

「……」




地味子(……変な夢観た。

    もう夕方かぁ……)ぽやー


219 : 以下、名... - 2011/06/04(土) 23:53:10.03 vTE8zi+jO 54/106


地味子(普段ほとんど何にも使わないから、まだお金は結構あるね……

    またレコード屋さん覗きに行こうかな。

    BELLE AND SEBASTIANとかNeil Youngとか、欲しいのが増えちゃったし。

    Nirvanaとかも聴いてみたい。


    映画ももっと観たいな……ちょっと目星を付けてから行こうっと)


220 : 以下、名... - 2011/06/04(土) 23:59:02.86 vTE8zi+jO 55/106


男友「まぁとりあえず、もう一軒回ろうぜ。

   なんか色々と大量入荷したらしい」

「……そうだな」





地味子(へー、あの辺って他にもレコード屋さんあるんだ。

    ちょっと回ってみようかな。買えなかったのもあるかもだし)


222 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 00:05:37.10 irps99VXO 56/106


チリンチリーン、

店員「……」



地味子(……うーん、レコードならあるんだけどなぁ……

    こうなるとレコードプレイヤーが欲しくなってくるね。

    さすがに手持ちじゃどうにもならないだろうけど……やっぱりバイトしなきゃ。


    まぁでも、また色々買ったし、とりあえず次の店に行こうかな、うん)






「お、Captain Beefheartがある」がさごそ

男友「ジョンスペのもってないやつだ! 買い買いー」がさごそ


223 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 00:09:37.13 irps99VXO 57/106


地味子(えーっと、確か駅の反対側だよね。

    地下を抜けてくのが早いかな?

    あんまり歩きなれてないからわかんないや。

    ゆっくり行こうっと)







「結構掘り出し物あったな」

男友「やったぜー! 戦利品まとめにコーヒーでも飲みに行こうぜ!」

「あぁ、そうしよう」


226 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 00:14:00.88 irps99VXO 58/106


「そう言えば、あそこの喫茶店、女にはちょっと不評だったわ」

男友「あー、まぁそりゃ、ちょっとアングラっぽすぎるからな」

「次は大人しくスタバとかにするか……」

男友「コーヒーの味とか覚えてくれたらいいのにな」

「むしろコーヒー淹れてくれたり」

男友「いいなそれ! 畜生、彼女持ちがロック語んなよ!」

「うるせーうるせー」





地味子(ここの階段から上に出れば、もうすぐ……



    ……あ。)


232 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 00:20:12.27 irps99VXO 59/106


地味子(あの2人は……ど、どうしよう?

    引き換えそうか……うあ、目が合った……よね、今)





「ほら、やっぱりあれ地味子さんだよ」

女友「あ、ほんとだ」


「やっほー地味子さーん」ふりふり



地味子(ひ、ひぃ……

    ……だめ、だめだだめだ。

    ちゃんと挨拶しなきゃ……)



「学校の外で会うの、初めてだね」

地味子「こ、……こんにちは」ぺこり

「あはは、こんにちは!」ぺこり


女友(ん?

   ……あの袋、確か……)


240 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 01:08:34.67 irps99VXO 60/106


「地味子さんもお買い物?」

地味子「まぁ、あの、そんなところ……かな」

女友「……その袋の中、もしかしてCD?」

地味子「えっ?」

女友「いや、男がたまにその袋にCD入れて持ってたから」

「へー、地味子さんも音楽聴くんだ」

地味子「あ、あの、……私、まだあのお店見つけたばっかりで、

    音楽も、ほんとに最近聴くようになったばっかりだから……」

女友「ふぅん」

地味子「に、似合わないよね、えへへ……」

「いやー、そんなことはないけど」

女友「かなり意外だってことは否定しないわ」

地味子「だよね、うん、自分でもそう思うよ」

「あ、また今度何かいいのあったら貸してくれる?」

地味子「え……う、うん、いいよ」


242 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 01:14:08.00 irps99VXO 61/106


「やった! 約束ねっ」

女友「あんた、そんなに音楽聴くの?」

「いやぁ、よくわからないのの方が多いけど、男が色々聴いてるからさ」

女友「なんだノロケか。

   彼氏の趣味に地味子さん付き合わせちゃ可哀想でしょ」

「えぇー? そんなつもりはなかったんだけど……

  あ、もし嫌な気にさせちゃったんならごめんね……?

  もしよかったらでいいからさ、CD」


地味子「……うん、いいよ。

    気にしてないから、また学校に持ってくね」


「ほんと?

  ありがと、地味子さん!」

地味子「え、えへへ……」


248 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 01:29:13.79 irps99VXO 62/106


「地味子さんって、普通にいい子だったねー」

女友「……そう、ね」

「地味子さんはどんな音楽聴いてるのかな?」


女友「……」






「じゃあまた学校で戦利品交換だな」

男友「そうすんべ。

   楽しみ楽しみ……おぉ?」

「ん?」

男友「いや、あっち、ほら」

「あれ……」


250 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 01:34:17.23 irps99VXO 63/106


地味子(こうなる予想はしてた。

    と言うか予想通りすぎた。


    ……そりゃそうだよ、付き合ってるよそりゃ。

    私が男くんなら女さんをほっとかないだろうし、

    私が女さんだったらもっと積極的になってたもん。

    それに、私だったら、絶対私みたいな地味なやつは相手にしないもんね、うんうん。



    だって、……だって、地味なんだもん……

    私なんだもん……)


294 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 12:38:19.04 irps99VXO 64/106


男友「よう、お二人さん」


「あれっ? 男と男友だ」

女友「!」


「奇遇だな」

「だねー」

男友「これからどっか行くのか?」

女友「いや、特には考えてないけど」

男友「じゃあさ、久々にこの面子でカラオケ行かね?」

「おー、いいね!」

「俺は構わないけど、女友は?」

女友「……大丈夫よ」

男友「じゃあ、早速行くか!」

「おーう!」





地味子(……買うものは買ったし、帰って映画でも観よう)


299 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 12:52:31.63 irps99VXO 65/106


地味子(……時間が溶けてるみたい。

    もう外が明るいや……


    ……学校行く準備しなきゃ。

    またすぐ夜になっちゃいそう)



……You know that it would be untrue

  You know that I would be a liar

  If I was to say to you

  Girl, we couldn't get much higher

  Come on baby, light my fire

  Come on baby, light my fire

  Try to set the night on fire……


300 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 13:06:53.64 irps99VXO 66/106


ガタンゴトン、ガタンゴトン、……


地味子(……大槻ケンヂって、小説もエッセイも歌みたいだし、

    歌も小説かエッセイみたいだな……


    空っぽだから、自分に音楽とか映画とか本とかを詰め込んで行くって感じ、

    今ならちょっとだけわかる気がするよ。


    今度はKing CrimsonとかT-Rexとかを聴いてみようかな。

    あと、近くでやってる美術展にも行ってみよう)


ガタンゴトン、ガタンゴトン、……


303 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 13:15:25.68 irps99VXO 67/106


「今日、男は休みだってー。

  あの後いきなり風邪ひいたって」

女友「男は女と違うからね」

「……私を馬鹿にしたな?

  私だって風邪ぐらいひくわい!」

女友「どうだか」


地味子「あ、あの……」


「やー、地味子さん。

  おはよーございまーす」ぺこり

地味子「お、おはようございます」ぺこり

「あっ、その袋、もしかしてCD?」

地味子「うん、あの……気に入るかどうかわからないけど、

    とりあえず、私がいいと思ったのを5枚ぐらい持ってきたよ」

「うわー、ありがと!

  帰ったら聴くよ!」

地味子「うん……えへへ」



女友「……」


306 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 13:25:32.24 irps99VXO 68/106


地味子(……今日は男くん、お休みか……

    ちょっとホッとしちゃったけど、大丈夫かな……


    まぁ、私なんかが心配しなくても、

    女さんがお見舞いとかメールとかしてあげるだろうから……


    ……はぁ。

    心配されるなら、可愛い彼女からの方がいいよね……)




女友「ねぇ、女。

   ちょっとその袋、見せてくれない?」

「ん? いいよー」

女友「……」がさごそ

「地味子さん、あんな風にちゃんと喋ってくれるなら、

  もっと早いうちから喋って友達になっとけばよかったなー。

  これを機に、友達になってくれるかな?」


女友「……はい、ありがとう」

「知ってるやつあった?」


女友「まぁ、何枚かはね」


307 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 13:31:49.52 irps99VXO 69/106


地味子(と、言うか女さんに貸したCD、あんなんでよかったのかな……?

    選んだって言っても、私まだほとんどなんにも知らないし……

    そもそも、そんなにCD持ってないし……


    ……全然よくなかったって言われちゃったらどうしよう……


    ……もっといっぱい聴こう、音楽。

    それに、映画とかもおすすめできるようになりたいな……)




「えーっ、女友ってば音楽通!」

女友「あんただって男から色々借りてるでしょ」


309 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 13:39:43.95 irps99VXO 70/106


地味子(1日ぼーっとしてただけで終わっちゃった。

    今日は早く寝よう……)うとうと






……Did I see you down

  in a young girl's town

  With your mother in so much pain?

  I was almost there

  at the top of the stairs

  With her screamin' in the rain……


「……これ、前に男から借りたやつだ」


313 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 13:48:13.40 irps99VXO 71/106


「……これももうパソコンに入ってる。

  こっちはアルバムは違うけど、同じアーティスト……

  ハンバート・ハンバートって言うの以外は全部被ってる……」





地味子(今度は……Creamと……Bob Dylanと……

    Penguin Cafe Orchestraと……Curtis Mayfieldと……

    あと日本のバンドも探してみよう……)うつらうつら


324 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 15:30:56.86 irps99VXO 72/106


きーんこーんかーんこーん、……



地味子(今日も男くんはお休みか……

    女さんにどんな感じか聞いてみようかな……

    いや、意味不明もいいとこだよ、やめとこう……うん)


「やっほー、おはよ、地味子さん」

地味子「あっ、……おはようございます」ぺこり

「これ、借りたCD。

  ありがとね」がさっ

地味子「も、もう全部聴いたの?」

「いやー、そのうちのヴェルヴェッツ?とニールヤングと……マイブラは、

  前に男から借りたことがあったんだよね。

  やっぱり有名なんだねーそれ」

地味子「あ……そうなんだ……」


325 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 15:32:16.20 irps99VXO 73/106


「ただ、私ちょっとそう言う音楽、良くわからなくて……

  けど、ハンバート・ハンバートはすごくよかったよ!

  可愛くて聴きやすかったかな」

地味子「そ、そう? じゃあ、よかった……

    私もまだ、そんな全然音楽って詳しくないから、

    貸したのあれでよかったのかどうかわからなくて……」

「ううん、私も無理言ってごめんね。

  でも、もしよかったら、また何か貸してもらえないかな?

  もうちょっと色々聴いてたら、好きになれるのがもっと見付かる気がするんだよね」

地味子「う、うん、もちろんだよ。

    いいのがあったらまた持ってくるよ」

「やった!

  地味子さん、ありがと!

  あ、ケータイのアドレス教えてもらってもいい?」

地味子「え? あ、うん、いいよ」

「いえーい!

  あとそれから、今度から地味子ちゃんって呼んでもいい?」


女友「……」


328 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 15:40:01.31 irps99VXO 74/106


地味子(女さ……女ちゃんのアドレス、もらっちゃった。

    まさか私があんな人と友達になれるなんて……

    ……友達になれたのかな?


    とにかく、せっかくだから、女ちゃんの好きそうなのを探してみよう。

    私も、ハンバート・ハンバートみたいな感じのももっと聴きたいし)






「もしもし、男?

  風邪、大丈夫……?」

『あぁ、ほとんど治ってるよ。

  心配掛けてすまんね』

「うぅん、いいんだよ。明日は学校来れそう?」

『そうだな、多分行けると思う』

「そっか! よかったぁ……じゃあ、また明日学校でね」

『おう』

「……大好きだよ」


ピッ、……


332 : 忍法帖【Lv=2,xxxP】 - 2011/06/05(日) 15:54:02.54 irps99VXO 75/106


地味子(とりあえず、見つけてきたのはCardigansかな?

    ひょっとしたらElliott Smithなんかもいけるかも。

    ちょっと違うけど、可愛い系でbisとかどうかな……

    一応、竹村延和なんてのもあったけど、これもどうだろう。

    ヤプーズ……は違うな。ラ・ムー……もちょっと違うよね。

    大槻ケンヂの『アンプラグドセッション』なら大丈夫だよね、多分。


    ……今更だけど、インターネットって便利だなぁ)カタカタ、カチッ


333 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 16:01:45.43 irps99VXO 76/106


地味子(なぜかわからないけど、やたら早起きして学校についてしまった。

    ……女ちゃん、朝練やってるのかな?

    ちょっとグラウンド覗いてみようかな……


    あ、女ちゃん一人だけだ。

    あれは……高跳びの練習だよね?)



「……っ」バッ


ふわっ


…とさっ



地味子(――――綺麗)


335 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 16:07:49.05 irps99VXO 77/106


「ふーっ、今日は調子いいかなっと。

  ……あれっ、地味子ちゃんだ。

  おーい!」ふりふり


地味子「あっ、えと、おつかれさまですっ」ぺこり


「早いねー! どうしたの?」

地味子「いや、なんとなく早起きしちゃって……」

「あー、わかるわかる。

  朝って気持ちいいよね!

  ……あれ、その袋はもしかして」

地味子「もしよかったら……ハンバート・ハンバートが好きだったら、

    これもどうかなぁって言うのをまとめてみたから……」

「うわー、ありがとう!

  家でゆっくり聴くよ!」

地味子「えへへ……」


336 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 16:20:43.92 irps99VXO 78/106


男友「よう、久しぶりだな」

「うーっす。なんとか生きてんよ」

男友「災難だったなぁ、週明けから風邪とか」

「休みが延びたと思ってゆっくりしてたわ。

  やたらPavementばっかり聴いてたり」

男友「風邪の時はSonicyouthだろ!」

「悪化するっつーの」

男友「そこはあえて悪化させて女に看病してもらえよ!」

「ばーか。治るもんはほっといても治るんだよ」


「あーっ!

  人がせっかく心配して電話とかしてあげてたのに!」


男友「なんだよー結局ノロケかよーぺっぺっ」



地味子(女ちゃん、……ほんとに嬉しそう。

    男くんも……女ちゃんに心配されて、嬉しかったんだろうな……)


339 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 16:32:23.46 irps99VXO 79/106


地味子(さてと、宿題も終わったし、今日も早めに寝ようかな……)


Prrrrrrr、Prrrrrrr、


地味子(ってうわっ! えと、あ、女ちゃんからだ)ピッ



『もしもーし。女だよ。今時間いい?』

地味子「う、うん、大丈夫だよ。どうしたの?」

『いやー、今日貸してくれたCDあるじゃん?

  まだ全部は聴いてないんだけど、これすっごいセンスいいなーって、

  それで思わず電話しちゃったんだ。地味子ちゃん、すごいね!』

地味子「え……えっと、……え、ほんとに……?」

『うん!

  いま竹村延和って人のを聴いてるんだけど……可愛くて、落ち着いてて、

  私、これすごく好きになっちゃった!』

地味子「わぁ……嬉しい。気に入ってもらえてよかったぁ」


340 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 16:37:12.01 irps99VXO 80/106


『うん、ほんとにありがと!

  まぁそれだけなんだけど……また電話とかしていいかな?』

地味子「いつでも、私はかまわないよ」

『じゃあ、また今度、全部聴き終わったら電話しちゃうかも!

  夜遅くにごめんね? また明日ー!』

地味子「うん、また明日ね。おやすみなさい」

『おやすみーっ』


ピッ、……




地味子(……えへへ、なんか……すっごく嬉しいや)


342 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 16:54:11.92 irps99VXO 81/106


「最近さぁ」

男友「おう」

「急に……と言うか、ちょっとずつ、女が音楽聴きたがるようになって来たんだよ」

男友「へ? 前から色々貸したりはしてただろ?」

「それはそうなんだが、いまいちリアクションが悪くてな。

  まぁ無理強いするのもよくないと思って諦めてたんだが……

  ここのところ、なんか全体的に反応がいいと言うか」

男友「ほー。良かったじゃん」

「あぁ。やっぱり趣味が合うと楽しいしな」



女友「……」チラッ



地味子(竹村延和が行けるってことは、結構電子音の可愛いのも好きってことだよね。

    じゃあやっぱり、次は中田ヤスタカ……いや、あえて大正九年……

    むしろ、方向性をガラッと変えてPenguin Cafe Orchestra……うーん)


343 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 17:02:29.25 irps99VXO 82/106


Prrrrrrr、Prrr、

ピッ


『もしもし! 全部聴いたよー!

  今までこんなに音楽に集中したのって初めてかも!』

地味子「えへへ、どうだった?」

『……地味子ちゃんだから、正直に言うね?

  最初はやっぱり、どれもよくわからなかったの。

  カーディガンズは普通に聴けたけど、ちょっと退屈だったり……


  けどね、聴いてると、だんだん、それが好きになって来るっていうか……

  こう、好みの幅が一気にぐわーって広がったっていうか!

  気付いたら、全部二回づつ聴き直してて、全部好きになってたの!』

地味子「うわぁ、いいなぁそれ」

『全部地味子ちゃんのおかげだよ!

  ほんっとにありがとう!』

地味子「ううん、私も喜んでもらえて嬉しいよ。

    わざわざ電話までくれて、ありがとうね、女ちゃん」


346 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 17:10:37.37 irps99VXO 83/106


『実はね、私、男のことでちょっと悩んでたんだ』

地味子「えっ? ……そうなの?」

『うん。

  ほら、私って、全然男が聴くような音楽知らなかったし、

  せっかく貸してくれてもあんまりよくわからなかったし、

  男も気を使って、あんまりグイグイ勧めてはこなかったし、

  ……ちょっと、遠いなぁって、そう思ってたんだ』

地味子「そう、なんだ」

『でも、最近、前に借りたやつを聴いてみたら……好きになれそうな気がしたんだよ。

  無理してるとかじゃなくて、素直にかっこいいなーって。

  地味子ちゃんが貸してくれたCDがきっかけなんだよ?』

地味子「……うん」

『だから、本当にありがとう。

  好きな人と同じものを好きになれるって、こんなに楽しいんだね!

  ……あ、なんかいきなりノロケちゃってごめんね、あはは』


地味子「……聞いてるこっちが、恥ずかしくなっちゃうよ、えへへ」


347 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 17:18:59.51 irps99VXO 84/106


『そのうち、男も知らないようなかっこいい音楽見つけて来て、

  びっくりさせたいんだ、私。それって、かっこよくない?』

地味子「うん、すごくかっこいいと思うよ」

『だよね!

  だから、……これからも、私に音楽教えて?

  一緒にレコード屋とか回ってみたいなーって……いいかな?』

地味子「当たり前だよ。

    一緒にかっこいい音楽探して、男くんをびっくりさせちゃおうよ」

『地味子ちゃん……私、地味子ちゃんも大好きだよ!』

地味子「初めて人からそんなこと言われたよ……


    あ、でもね、もしすっごいかっこいい音楽を見つけても、

    男くんには『地味子ちゃんと一緒に見つけた』って言っちゃダメだよ?」

『え……なんで?』



地味子「だって、そっちの方がかっこいいでしょ?

    女ちゃんも、……私もね」


350 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 17:28:13.43 irps99VXO 85/106


「じゃ、私部活行ってくるね!」

男友「いってらー」

「頑張ってこいよ」

「おうよ!」


男友「じゃあ、俺らは帰るか」

「だな」



地味子(……女ちゃんが男くんからCDを借りてるところ、

    前よりずっと多く見るようになったなぁ。

    ほんとに好きなものって、広がっていくもんなんだね。


    ……好きなもの、か……


    ……ま、いいや。

    私は私で、もっと好きなものを探せたら――――)


ぽんぽん、


地味子「……え?」

女友「地味子さん、ちょっといい?」


372 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 19:57:42.69 irps99VXO 86/106


地味子(えええええ

    わわわ、わ、私、何か悪いことしたかな?

    こ、こここ、ここは先手必勝で先に謝っておいた方が)


女友「……これから何か用事あったりする?」

地味子「い、いえ、別に……」

女友「じゃあ、ちょっとコーヒーでも飲みに行かない?

   いくつか話したいことがあるんだけど」

地味子「は……はい……」

女友「……取って食おうってんじゃないんだから、普通にしなよ。

   少しお喋りしたいだけだから」ぽんぽん

地味子「は、……う、うん」


379 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 20:08:15.74 irps99VXO 87/106


チリンチリーン、

「いらっしゃいませー

 お好きなお席へどうぞ」



女友「ここ、いい店なんだよね」

地味子「……あの、……そうだよね」

女友「へー、知ってるんだ」

地味子「最近、来るようになったばっかりだけど……」

女友「今日さ、CD持ってる?」

地味子「え?」

女友「CD。何でもいいから」

地味子「えと……一応、何枚かは……」

女友「ちょっと見せて」

地味子「あ、はい……」ごそごそ


女友「……Vaselines、EUGENIUS、BMX Bandits、ねぇ」


地味子「……女友さんも音楽好きなの?」

女友「私はそんなに」

地味子「そ、そっか……」

女友「でも、男は音楽好きだよ。男友もだけど」

地味子「……え?」


381 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 20:15:21.65 irps99VXO 88/106


女友「話しかけりゃいいじゃん、男に。

   音楽の話」

地味子「……」

女友「映画とか小説とか、何でもいいけどさ。

   あんた、多分ばっちり趣味合うと思うよ、男と」

地味子「……いや、でも、あの……」

女友「ひょっとして、気後れしてんの?

   女がいるから?」


地味子「……」


女友「別に好きなようにすればいいと思うけどさ。

   一つ言っとくと、あんたそれ、かっこ悪いよ」

地味子「……っ」

女友「聴いてる音楽も、読んでる本も、観てる映画もかっこいいのに、

   あんたがかっこ悪いまんまでどうすんの?」


388 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 20:21:33.77 irps99VXO 89/106


地味子「そ、そんなこと……言われなくても、わかってる……」

女友「そう?

   じゃあ、自分の代わりに女がどんどん変わっていって、

   男好みな感じになっていって、二人で上手く行くのを手伝って、

   それで自分が満足した気になってるってのも当然わかってるんだよね?」


地味子「……」


女友「気に入らないのは、あんたが勝手に女を自分に置き換えてるところ。

   だってそれって、すごい失礼じゃん。

   友達なんでしょ? あんたら。じゃあそう言うのはまずいでしょ」


394 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 20:27:14.75 irps99VXO 90/106


地味子「……」ぐっ


女友「……とまぁ、キツいこと言ってごめんね。

   ここのケーキおごるからさ、許してやってよ」

地味子「……え?」

女友「ほんとはこんなこと言う気はなかったんだけどさぁ、

   何というか……見てらんなくてね。

   女に自分がいいと思ったCD貸したりしてるんでしょ?」

地味子「う、うん……」

女友「で、女はそれを返すときに、すっごい嬉しそうなわけだ。

   いい音楽みつけたー、男に自慢できるーって」

地味子「……」

女友「なのに、貸した側のあんたがそんなつらそうな顔しててどうすんのよ」


399 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 20:32:37.53 irps99VXO 91/106


地味子「え……そんな顔、してた……?」

女友「他にも、教室で女か男がノロケてるとかとかね。

   世の終わりみたいな顔してるよ」

地味子「そ、そんなに……」

女友「まぁ、あんたなりに気を使って、

   それもバレないようにしてるのはわかるけどね」

地味子「うぅ……」

女友「あ、チョコとショート、どっちがいい?」


403 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 20:42:23.83 irps99VXO 92/106


地味子「お、美味しい……」

女友「でしょ? コーヒーと合うんだわこれが。

   ショートケーキだったら、こうやってちょっと生クリームを溶かしてみたりしてね」

地味子「うわぁ」

女友「今度試してみなよ」ずずっ

地味子「うん。

    ……でも、女友さんがやったらすごくお洒落で可愛くてかっこよくても、

    私がやったらただ行儀が悪いだけみたいにならないかな……」

女友「前半はともかく、後半は取り消しなよ。

   そんなのは気にしなくていいの。わかった?」

地味子「う、うん」


405 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 20:52:10.29 irps99VXO 93/106


女友「で、あんたやっぱり男のこと好きなの?」

地味子「けほっ、けほけほっ!」

女友「わかりやすいなー」

地味子「けほんっ……そ、そんなことは……」

女友「別に今すぐアタックしろって言ってるわけじゃないのよ。

   ただ、誰かを好きになるって無条件にいいことなんだよね。

   その時が、自分を変えたりレベルアップさせるチャンスじゃん。

   私の持論なんだけどさ」

地味子「……」

女友「せっかくなんだから、モチベーションがあるときに色々試そうよってこと。

   どう? なんか異論ある?」

地味子「い、いや、確かに……」

女友「じゃあ、ちょっと今度、バイト代入ったら買い物付き合ってくれない?

   一緒に服でも買いに行こうよ」

地味子「え……ええっ!

    でも私、そんな女友さんが着るような服似合わないよ……!」

女友「あはは、ちゃんと地味子に合った服を見繕ってあげるよ。

   あ、もう呼び捨てでいいよね?」


410 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 21:01:41.54 irps99VXO 94/106


女友「わかってると思うけど、人間そう簡単には変わらないよ。中も外もね。

   化粧したらそれなりに映えるけど、それは化粧が映えてるだけ。

   元をいじるのは整形でもしない限り、無理なわけよ」

地味子「……」

女友「女みたいに素が可愛い一部を除けば、

   大体みんな似たり寄ったりの顔してるってこと」

地味子「え……で、でも、女友さんは素でも可愛いよ……?」

女友「ありがと。でも、自分では色々とコンプレックスあるのよね。

   ……さておき、そう、服とか化粧とかって、要は身嗜みなんだよ。

   単純に、寝癖ばっさばっさなのと、一応ちゃんとしてるのとどっちがいい?って話ね」

地味子「……」

女友「『私なんかがいくら化粧しても……』とか

   『私なんかがいくら可愛い服着ても……』とか思ってない?」

地味子「……女友さんってエスパーなの?」


413 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 21:08:19.56 irps99VXO 95/106


女友「それは違くて、身嗜みは誰がしても誰に咎められることは無い、

   って当たり前のことなんだけどね。わかるかな?」

地味子「り、理屈は……」

女友「普通に服をえらんで、普通に髪を整えて、普通に化粧すればいいの。

   ちょっとこだわったり、個性を出したりするのは後で考えればいいわけ。

   納得した?」

地味子「はい……」

女友「よろしい。

   じゃあ家に帰ってもう一回考えて、それでやっぱり納得したら、

   ここに電話掛けて来てね。その時に行ける日取り決めよ」かきかき

地味子「うん……わかった」

女友「どういたしまして」


415 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 21:12:57.75 irps99VXO 96/106


地味子(……なんか、思ってたよりすごい人だったなぁ、女友さん……

    でも……いい人、なのかな。

    多分、なんだかんだ言って、お節介なことしてるって、

    自分が一番気にしてたと思うし……なんとなくだけど。


    ……挑戦するぐらい、別にいいよね。

    女友さんの言うみたいに、誰かに気を使う必要なんか、ないんだよね)


カチカチ、カチカチカチ、……


……Prrrrrr、Prrrrrr、……


420 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 21:37:47.80 irps99VXO 97/106


女友「と言うわけで、これが新生地味子だ!」バーン


地味子「……へ、変じゃない、かな……?」


女友「いやー、1日歩いた甲斐があったってもんよ。

   二言目には『私、地味だから』、三言目には『私、地味だから』、

   口を開けば『私、地味だから』……」

地味子「うぅ……だって……ほんとに私、地味だし……」

女友「地味って言うな、落ち着いてるって言え!」

地味子「えぇー……」

女友「大丈夫よ、ほら、よく似合ってるから」

地味子「ほんとに……?」

女友「うん、かっこいいよ」

地味子「……そうかな……えへへ」

女友「よし、記念にプリクラ撮って帰ろう、プリクラ」

地味子「えっ、しゃ、写真はいいよ……」

女友「女子はやたらプリクラ撮りたがるもんなのよ、諦めなさい、

   サラダ記念日みたいなもんだから」

地味子「意味わかんないよ……」


422 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 21:45:15.82 irps99VXO 98/106


地味子「ねぇ、ほんとに撮るの……?」

女友「今更あとには退けないのよ、さぁ歩いた歩いた」

地味子「うぇー……あ」

女友「ん?」




「えらいレコード屋で時間食っちゃったな」

「女友と服買うのに比べたら全然だよー」




地味子「……っ」だっ

女友「え、あ、ちょっと!」


424 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 21:54:39.73 irps99VXO 99/106


地味子(二人でレコード屋さん回って、

    二人で喫茶店に入って、好きな音楽の話とかして、

    二人で手を繋いで歩いて……


    ……女友さんの言う通りだ。

    それ全部、『もし私が女ちゃんだったら』って考えてたことだ。


    じゃあ、何でいま私は逃げてるんだろう?


    ……女ちゃんは女ちゃんで、私は私で、

    男くんの彼女は女ちゃんだって、

    自分が服を選んで髪を整えて化粧をしても、

    私は私のままだって、今更、また、気付いたからだ。



    ……私、男くんのことが、どうしても好きだったんだ。

    こんなに、逃げ出したいぐらい、大好きだったんだ……)


426 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 21:59:45.49 irps99VXO 100/106


地味子(だから、女ちゃんと男くんが、

    私の入る隙間なんか全然ないぐらいにもっと仲良くなったら、

    諦められると思ったんだよね……

    だから、女ちゃんにたくさん音楽聴いてもらって、

    それで……私の代わりに、男くんとずっと一緒にいてもらおうと……


    ……これじゃ、女友さんに怒られるわけだよ……

    最初からずっと逃げてばっかりなんだもんね……)


429 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 22:04:02.05 irps99VXO 101/106


女友「……はぁ、やっとこさ見つけたぞ」

地味子「……」

女友「漫画じゃないんだから、モールの端から端まで探させるとかマジ勘弁してよね」

地味子「……ごめんなさい」

女友「あーあー、化粧直さなきゃだねこりゃ」

地味子「……」


女友「ね、地味子。

   今日のこれ、服とか髪とか、意味無かったと思う?」


432 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 22:24:06.35 irps99VXO 102/106


地味子「……」

女友「化粧はすぐ崩れるし、服は脱いだらそれまでだし、髪は寝て起きたらボサボサだし。

   やっぱり、意味無かったって思うかな?」

地味子「……」こくり

女友「それね、ある意味正解なんだよ。

   どんなに着飾ったって、地味子は地味子なんだもんね」

地味子「……」

女友「まぁ、そこら辺の解釈は自由なんだけどさー。

   考え方による損と得はあると思うんだよ」

地味子「……損と得……?」



女友「自分を好きになるか嫌いになるかってこと。

   言ったじゃん、誰かを好きになるのは無条件にいいことだってさ」


437 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 22:59:32.00 irps99VXO 103/106


地味子(『また遊ぼう』って言われて別れてきたけど……

    ……色々ありすぎて、何が何やらわかんないや。


    自分を好きになる、か……

    考えたこともなかったなぁ。


    ……これから、ゆっくり考えてみようかな……)


439 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 23:03:48.28 irps99VXO 104/106


きーんこーんかーんこーん……



女友「それで、出た結論がそれだ、と。

   いいじゃん、それ。めちゃくちゃかっこいいよ」

地味子「えへへ、そうかな……」

女友「うん、うん。

   文句の付けようがないね」


地味子「……ただ、一つ問題があって……」


女友「ん?」


442 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 23:16:22.56 irps99VXO 105/106


「んー……どうするかなぁ」

男友「やっぱり、どっかのスタジオで」


バァン!


女友「二人とも、注目しろ注目」

「うおっ! な、なんだ女友か」

男友「今は忙しいからまた後で……」

女友「いいから聞きなさい。

   今日はあんたらに朗報を持ってきたのよ」

「朗報?」

女友「バンドは組みたい、しかしギターが居ない。

   二人とも素人だし、音楽の方向性を考えるとますます人を誘いにくい。

   あーどこかに音楽大好きなギター初心者がいないかなー、

   なーんていう贅沢な悩みを解消する人材を連れてきたわけよ」

男友「ま、……マジで?」ガタッ

女友「この女友が連れてくるのよ? 間違いないに決まってるでしょ」

「だ、誰? 知り合い?」

女友「ほら、早くこっちに来なさいよ。

   あっこら、今更怖じ気づいてるんじゃないのっ、もうっ」グイッ


ドンッ


地味子「うわぁっ!……っとと、……

    ……あの、えと、……じ、地味子です。

    ギター買ったばっかりの初心者ですが、……音楽は大好きです。

    もしよかったら……バンド、組みませんか!」


445 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 23:18:14.00 irps99VXO 106/106


Deep down Louisiana close to New Orleans

Way back up in the woods among the evergreens

There stood a log cabin made of earth and wood

Where lived a country boy named JohnnyB. Goode

Who never ever learned to read or write so well

But he could play the guitar just like a ringing a bell

Go go

Go Johnny go

Go

Go Johnny go

Go

Go Johnny go

Go

Go Johnny go

Go

JohnnyB. Goode……




終わり。


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