1 : 以下、名... - 2019/05/27 22:08:43 BEuh8i2k 1/75

昔々

あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました

おじいさんは芝刈りに

おばあさんも芝刈りに行ったので

桃は流れて行きました

2 : 以下、名... - 2019/05/27 22:10:48 BEuh8i2k 2/75

昔々

あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。

おじいさんは芝刈りに

おばあさんは川に洗濯に行きました

すると上流からドンブラコッコドンブラコッコと

大きな桃が流れてきました

3 : 以下、名... - 2019/05/27 22:12:15 BEuh8i2k 3/75

おばあさんは洗濯に一生懸命で桃に気がつきませんでした

桃は流れて行きました

4 : 以下、名... - 2019/05/27 22:14:12 BEuh8i2k 4/75

昔々

あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。

おじいさんは芝刈りに

おばあさんは川に洗濯に行きました

すると上流からドンブラコッコドンブラコッコと大きな桃が流れてきました

5 : 以下、名... - 2019/05/27 22:16:41 BEuh8i2k 5/75

おばあさんは

「(うっわぁ…なんか変なの見える…あたし疲れてるわ…)」

と思い、家に帰って早めに休みした

桃は流れていきました

6 : 以下、名... - 2019/05/27 22:20:00 BEuh8i2k 6/75

昔々

あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。

おじいさんは芝刈りに行くふりをして朝キャバへ

おばあさんは川に選択に行きました

すると上流からドンブラコッコドンブラコッコと大きな桃が流れてきました

7 : 以下、名... - 2019/05/27 22:21:30 BEuh8i2k 7/75

おばあさんは不真面目なおじいさんと別れるべきか添い遂げるべきかの選択を強いられていたので

桃に気づきませんでした

桃は流れていきました

8 : 以下、名... - 2019/05/27 22:24:07 BEuh8i2k 8/75

昔々

あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました

おじいさんは芝刈りに

おばあさんは実家に帰りました

桃はやっぱり流れていきました

9 : 以下、名... - 2019/05/27 22:27:13 BEuh8i2k 9/75

昔々

あるところにおじいさんとおばあさんと息子と息子のお嫁さんと孫が四人とひ孫が六人すんでいました。

おじいさんとおばあさんはひ孫達の子守りにてんてこ舞いでしたが

そこそこ幸せに暮らしていました

もちろん桃は流れていきました

10 : 以下、名... - 2019/05/27 22:28:29 BEuh8i2k 10/75

昔々

あるところにおばあさんが住んでいました

おばあさんは鬼に殺されたおじいさんの墓参りに行きました

桃は今日も流れていきました

11 : 以下、名... - 2019/05/27 22:30:46 BEuh8i2k 11/75

昔々

あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいた家がありました。

それでも桃は流れていきます

12 : 以下、名... - 2019/05/27 22:32:09 BEuh8i2k 12/75

あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。

おじいさんは山へ芝刈りに

おばあさんは川へ洗濯に行きました。

すると上流からドンブラコッコドンブラコッコと大きな桃が流れてきました

13 : 以下、名... - 2019/05/27 22:33:43 BEuh8i2k 13/75

おばあさんは何となくその桃を放っておけず

洗濯物を放り出してずぶ濡れになりながら

大きな桃を川から拾い上げました

14 : 以下、名... - 2019/05/27 22:38:23 BEuh8i2k 14/75

見た目ほど重くない桃

そう例えるなら赤ん坊くらいの重さの桃を

おばあさんは家へと持ち帰りました

おばあさんはおじいさんになんと言おうかと考えていましたが

こんなおばあさんをお嫁に迎えるおじいさんですから

「でっかい桃なんてめでたい、早く切り分けて食べよう」

と大いに喜び早速薪割り用の鉈で桃を二つに割りました

15 : 以下、名... - 2019/05/27 22:39:40 BEuh8i2k 15/75









桃太郎と名付けられたその子は

おじいさんとおばあさんに大事に育てられすくすくと育ちました

16 : 以下、名... - 2019/05/27 22:46:27 BEuh8i2k 16/75

ある日桃太郎はおじいさんに尋ねました

桃太郎「じーちゃ、なんでこの村は貧乏なの?」

おじいさん「うーん…なんでじゃろな」

おじいさんは教えてくれませんでしたが、桃太郎は何となく分かっていました

村の若い者「隣の村が鬼に潰されたそうです」

村長「そうか、年貢を怠った見せしめじゃろな」

村の大人たちがより集まって話してるのを聞いていましたから

桃太郎は何の罪もない人を殺してあらゆるものを奪う鬼に激しい憎悪を燃やしていました

17 : 以下、名... - 2019/05/27 22:54:27 BEuh8i2k 17/75

それからも桃太郎は元気に…元気すぎるくらい育ちました

誰も登りきれたことのないと言われる神社の大きな御神木様を登りきったり

寺子屋剣塾の師範代をやっつけたりと

やんちゃ坊主として名を馳せていました

18 : 以下、名... - 2019/05/27 22:55:58 BEuh8i2k 18/75

いつものように桃太郎が村で遊んでいると

どこからか女性の悲鳴が聞こえてきました

19 : 以下、名... - 2019/05/27 23:04:24 BEuh8i2k 19/75

悲鳴のする方へ急いで行くと

二人のとても大きな男がいました

一人は尻をだして

悲鳴をあげる女性の上に乗っかっていました

もう一人の男は錆びた刀を地面に刺し、ニヤニヤと乗っかった男の尻を見ていました。

桃太郎はこのときはじめて鬼をみたのです

20 : 以下、名... - 2019/05/27 23:12:28 BEuh8i2k 20/75





「ありがとう桃ちゃんありがとう」

女性の声を聞いて桃太郎は我に返りました

桃太郎はこのときやっと全身の血が沸騰しているのに気がつきましたが

その時には全部終わっていました

二人の鬼の首は向いてはいけない方を向いていました

21 : 以下、名... - 2019/05/27 23:25:17 BEuh8i2k 21/75

たった一人の子供が鬼を殺したという噂は村を越えて都まで轟きました。

噂を確かめるために朝廷は桃太郎の住む村に使者を送りました

鬼の骸を見た使者は噂が本当だったことを確信し

その場で桃太郎を鬼ヶ島という島を根城とする全ての鬼の討伐を命じました

22 : 以下、名... - 2019/05/27 23:28:38 BEuh8i2k 22/75

桃太郎「おじいさん、おばあさん桃太郎は鬼退治にいきます」

おばあさん「どうしてもお断りできないのかい?」

桃太郎「毛頭からお断りする気はありません」

おじいさん「勇敢で頼もしいけど危ないことはしてほしくない」

23 : 以下、名... - 2019/05/27 23:35:38 BEuh8i2k 23/75





それから桃太郎は朝廷が用意した船に乗り鬼ヶ島へ向かいました

犬と呼ばれる負けて落ち延びた尖兵にされている人たち

雉とよばれる
普段はやんごとなき身分の人の護衛を勤めている
優秀な管兵たち

そして鬼退治に志願したたくさんの兵たち

桃太郎はたくさんの人と一緒に戦うのだとこのとき知りました。

26 : 以下、名... - 2019/05/31 23:47:07 fSrIdnes 24/75

鬼たちはの住む鬼ヶ島は

ある日、あるところに突然あらわれました

そこは色々な潮の流れの集まるところで

魚はもちろん、それはもう見たことのないような漂流物が流れ着く場所なので

漁師さんたちはそこを海の宝箱と呼んでいました

27 : 以下、名... - 2019/05/31 23:50:01 fSrIdnes 25/75

桃太郎達の船はドンブラコッコドンブラコッコと揺れながら

半日ほどで鬼ヶ島が見えるところまでやってきました

騒がしくなる船内の中で桃太郎は潮風に混じってなんだか懐かしい匂いがすると感じました

28 : 以下、名... - 2019/06/01 00:01:14 FeG1FwzY 26/75

朝廷が用意した鬼討伐作戦はこうです

まずは沖合いに船を停めて、そこから小舟を出して犬達を島に送ります

それを盾にして本隊になる志願兵達が島に攻めいります

雉はそれを遠弓で支援します

それらすべての大規模な攻撃を囮にして

桃太郎は島の裏から鬼の大将の首をとるというものです

29 : 以下、名... - 2019/06/01 00:04:53 FeG1FwzY 27/75

犬たちが盾にされると分かっているのにこの作戦に同意したのは

戦に負けてなお生かされた屈辱を晴らす

なんてものではありません。

子供や親、女房、家族全員を人質にとられていて

少しでも逆らったら自分のせいで殺されてしまうからです

犬たちの乗る船はゆっくり島に近づいていきます

30 : 以下、名... - 2019/06/01 00:08:17 FeG1FwzY 28/75

小舟が島につく前に鬼が一匹島から何かを叫んでいます

犬も何か叫んでおり、会話をしているようです

叫んでいるのはわかりますが桃太郎には何をいっているかまでは聞こえません

雉の放った矢が鬼の頭を貫きました

31 : 以下、名... - 2019/06/01 00:19:39 FeG1FwzY 29/75

すると島中から怒号が飛び荒れ

ありとあらゆる物陰から姿をあらわした沢山の鬼たちが一斉に弓をひき

犬たちを次々に射殺しました

32 : 以下、名... - 2019/06/01 00:24:05 FeG1FwzY 30/75

志願兵達も何人も殺されましたが

なんとか島に乗り込むことができました

志願兵だけに聞かされた鬼と戦う為の作戦がもうひとつありました

それは鬼相手ならどんな状況でも3対1以上で戦うこと

大きな鬼に人間が敵うとしたらそれしかないと考えた人間の知恵です

33 : 以下、名... - 2019/06/01 00:31:14 FeG1FwzY 31/75

鋼のように硬いと言われた鬼の皮膚は

簡単に一太刀で裂け、そこからは赤い鮮血が咲きました

一匹仲間が殺されると鬼たちはあわてふためき

たくさんの鬼たちが逃げ惑いはじめました

そうなればこっちのものです

志願兵達はバッタバッタと鬼たちを切り殺していきました

ですが、この感触にはみな覚えがあります

前の戦でやむを得ず、自分が生き延びるために切らざるを得なかったアレと同じ感触です

考えが心に追い付く前に志願兵達はそれらをかきけすように大声で叫び

一人また一人と鬼を切っていきました

34 : 以下、名... - 2019/06/01 00:35:35 FeG1FwzY 32/75

雉1「まるで猿だな」

船から矢を射る雉の一人がそう呟きました

身分の低い彼らの戦いぶりに嫌悪感を隠そうともしません

雉2「懸命に戦ってる同士をそういうな、桃太郎殿は島の裏にたどり着いたろうか?」

雉1「あんなちっこいの殺されてなきゃいいがね」

35 : 以下、名... - 2019/06/01 00:44:03 FeG1FwzY 33/75

島の裏

その奥にいくつかある建物の中でも一際大きい建物の中でその鬼は呪詛のような言葉を光る壁に向かって呟いていました。

桃太郎「お前が大将か!」

ハッと気がついた鬼は桃太郎の方を振り向くと

なめ回すように桃太郎の全身を見て不敵に笑いました

桃太郎は背筋が寒くなるのを感じましたが、グッと歯を食い縛りました

36 : 以下、名... - 2019/06/01 00:48:43 FeG1FwzY 34/75

鬼は首を傾げ

眉間にシワを作り、片手をかざすようにしながら

桃太郎へ向かってきました

桃太郎は剣を抜き切ろうとしましたが、そこは鬼が早く腕を取られ剣を遠くへと投げられてしまいました

37 : 以下、名... - 2019/06/01 00:52:18 FeG1FwzY 35/75

そのまま桃太郎は頭をわしづかみにされ

鬼はまた先ほどの呪詛のような言葉を呟来はじめました

桃太郎は頭がひどくいたくなりました

わしづかみににされているからではありません

内側から何かに頭のなかを突き破ろうとされているような感触です

38 : 以下、名... - 2019/06/01 00:57:37 FeG1FwzY 36/75

昔々

あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました

おじいさんは芝刈りに

おばあさんも芝刈りに行ったので

桃は流れて行きました

川をずっと下って行った桃はある日

海に出てしまいました

39 : 以下、名... - 2019/06/01 01:01:18 FeG1FwzY 37/75

海の真ん中で桃はゆっくりと溶け

中からは元気な角の生えた男の子が産まれました

桃は小さな大地になり男の子はそこで毎日明日を待ちましたとさ

40 : 以下、名... - 2019/06/01 01:02:08 FeG1FwzY 38/75

昔々

あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。

おじいさんは芝刈りに

おばあさんは川に洗濯に行きました

すると上流からドンブラコッコドンブラコッコと

大きな桃が流れてきました

41 : 以下、名... - 2019/06/01 01:03:08 FeG1FwzY 39/75

おばあさんは洗濯に一生懸命で桃に気がつきませんでした

桃は流れて行きました

川をずっと下って行った桃はある日

海に出てしまいました

42 : 以下、名... - 2019/06/01 01:04:46 FeG1FwzY 40/75

小さな大地のほとりで桃はゆっくりと溶け

中からは元気な角の生えた男の子が産まれました

桃は小さな大地になり男の子はそこでもう一人の男の子と毎日明日を待ちましたとさ

43 : 以下、名... - 2019/06/01 01:05:43 FeG1FwzY 41/75

昔々

あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。

おじいさんは芝刈りに

おばあさんは川に洗濯に行きました

すると上流からドンブラコッコドンブラコッコと大きな桃が流れてきました

44 : 以下、名... - 2019/06/01 01:07:32 FeG1FwzY 42/75

おばあさんは

「(うっわぁ…なんか変なの見える…あたし疲れてるわ…)」

と思い、家に帰って早めに休みした

桃は流れていきました

川をずっと下って行った桃はある日

海に出てしまいました

45 : 以下、名... - 2019/06/01 01:09:19 FeG1FwzY 43/75

小さな大地のほとりで桃はゆっくりと溶け

中からは元気な角の生えた男の子が産まれました

桃は小さな大地になり三人の男の子は毎日明日を待ちましたとさ

46 : 以下、名... - 2019/06/01 01:10:44 FeG1FwzY 44/75

昔々

あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。

おじいさんは芝刈りに行くふりをして朝キャバへ

おばあさんは川に選択に行きました

すると上流からドンブラコッコドンブラコッコと大きな桃が流れてきました

47 : 以下、名... - 2019/06/01 01:12:28 FeG1FwzY 45/75

おばあさんは不真面目なおじいさんと別れるべきか添い遂げるべきかの選択を強いられていたので

桃に気づきませんでした

桃は流れていきました

川をずっと下って行った桃はある日

海に出てしまいました

48 : 以下、名... - 2019/06/01 01:15:05 FeG1FwzY 46/75

島と呼べるほどの大地のほとりで桃はゆっくりと溶け

中からは元気な角の生えた男の子が産まれました

桃は島の一部になり男の子は何人もいる兄弟と楽しく暮らしましたとさ

49 : 以下、名... - 2019/06/01 01:18:40 FeG1FwzY 47/75

変なところに島ができて、そこに鬼が住み着いてる

地元に住む漁師からの報告でしぶしぶ船を出した使者は自分の目を疑いました

確かにそこには島ができていて角の生えた大男達が桃の身を食べながら幸せそうに暮らしているのです

大陸のことを勉強していた使者はそこが話に聞く桃源郷だと思いその島をどうにかやんごとなきお方に献上したいと考えました

50 : 以下、名... - 2019/06/01 01:20:17 FeG1FwzY 48/75

それからのことです

野党が出たり

大規模な焼き討ちがあると役人達がやってきて

こういうようになりました

「鬼が出た」と

51 : 以下、名... - 2019/06/01 01:22:52 FeG1FwzY 49/75

鬼は島からでません

食料は桃があるし潮の流れからいって島を抜けるのは大変ですし

仲良く鬼だけで暮らしているのですから

出る必要がないのです

ですが、なぜだか村々や都は鬼のせいでたくさんの被害が出たということになっていきました

52 : 以下、名... - 2019/06/01 01:24:47 FeG1FwzY 50/75

昔々あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。

おじいさんは山へ芝刈りに

おばあさんは川へ洗濯に行きました。

すると上流からドンブラコッコドンブラコッコと大きな桃が流れてきました

おばあさんは何となくその桃を放っておけず

洗濯物を放り出してずぶ濡れになりながら

大きな桃を川から拾い上げました

53 : 以下、名... - 2019/06/01 01:27:33 FeG1FwzY 51/75

見た目ほど重くない桃

そう例えるなら赤ん坊くらいの重さの桃を

おばあさんは家へと持ち帰りました

おばあさんはおじいさんになんと言おうかと考えていましたが

こんなおばあさんをお嫁に迎えるおじいさんですから

「でっかい桃なんてめでたい、早く切り分けて食べよう」

と大いに喜び早速薪割り用の鉈で桃を二つに割りました

すると中からは元気な角の生えた男の子が産まれました

おじいさん「お、鬼っ子じゃ!」

おじいさんとおばあさんは腰をぬかしました

54 : 以下、名... - 2019/06/01 01:29:41 FeG1FwzY 52/75

桃のなかから都を荒らす鬼が出てきたのです

家の中に鬼の子を入れて

他の村人に匿ってるとでも思われたら二人とも命はありません

殺して隠さなければ

55 : 以下、名... - 2019/06/01 01:32:28 FeG1FwzY 53/75

ですが、おじいさんもおばあさんもそれができませんでした

その赤ん坊があまりにも可愛くて鬼でも良いと魔が差したのです

おじいさんはその子の顔に傷がつかないように慎重にその角を切り落としました

二人で抱えるには重すぎる秘密を覆い隠すようにその子には桃太郎という奇妙奇天烈な名前をつけました

58 : 以下、名... - 2019/06/01 22:18:29 4iJKLtuE 54/75

同じ頃、鬼ヶ島と呼ばれるようになった島で

最初にうまれた鬼はあることに気がつき

弟たちにそのことを話しました

ですが、そのことを受け入れきれなかった

二人の鬼は島から、運命から逃げ出してしまいました

59 : 以下、名... - 2019/06/01 22:24:59 4iJKLtuE 55/75

なんとか陸地に着いた二人の鬼は

人間に見つからないように暗い時間だけを使って

人間ができるだけいないところを目指しました

昼の間は荒れてしまった寺や人のいなくなった家で眠り

何日もかけて人間のいないどこかへむかって歩き続けました

60 : 以下、名... - 2019/06/01 22:27:25 4iJKLtuE 56/75

ある日の夕刻

何日も歩いて疲れていたのかもしれません

何日も誰にも見つからず油断してしまっていたのかもしれません

隠れ家を出るところを野良仕事終わりの若い娘さんにみつかってしまいました

61 : 以下、名... - 2019/06/01 22:32:33 4iJKLtuE 57/75

娘さんは角の生えた大男を前にして一瞬で彼らの正体に気がつきました。

鬼だ!鬼が出た!と大きな声で叫びながら持っていた鎌をむちゃくちゃに振り回しました

このまま叫ばれるとたくさんの人間に見つかってしまう

それにこのままでは娘さんが自分の鎌で自分を傷つけてしまう

そう思った二人はなんとかして娘さんを押さえつけました

62 : 以下、名... - 2019/06/01 22:35:57 4iJKLtuE 58/75

その時にのし掛かるような形になったため

貞操を奪われると思った娘さんは更に狂乱して金切声をあげていました

今、口をふさいだら窒息してしまうと思った鬼はなんとか口を押さえずに黙らせようとました

ですが、二人の鬼は娘さんに通じる言葉を持っていませんでした

ですから、笑顔で娘さんを安心させようとしました

63 : 以下、名... - 2019/06/01 22:38:35 4iJKLtuE 59/75

そこに風が吹きました

その風は二人にとって懐かしい

島を出るまでは毎日嗅いでいたあの香りと

汚れを知らない少年、桃太郎を運んできました

64 : 以下、名... - 2019/06/01 22:43:19 4iJKLtuE 60/75

角はありませんでしたが、二人はすぐに気がつきました

彼は自分達の弟だと

彼になら自分達の言葉が届くと

娘さんを止めてくれと伝えました

ですが、その言葉は届きませんでした

一瞬のうちに鬼の背後をとった桃太郎は目にもとまらぬ早業で首を折りました

65 : 以下、名... - 2019/06/01 22:48:24 4iJKLtuE 61/75

残った鬼が背後に気配を感じてプツンと意識が途切れました

鬼は死の直前、兄弟を失い、兄弟に殺されるという悲しみや苦しみをおぼえる前に

この幼い弟すらも運命から逃れられないのかと哀れみだけを感じました

66 : 以下、名... - 2019/06/01 22:56:34 4iJKLtuE 62/75

桃太郎「お、おいらが鬼?それじゃあおいらは…」

桃太郎はあの日鬼の首をねじりおった時の感触を

その時よりも鮮明に思い出しました

手のひらに伝わる体温

喉仏のボコりとした突起

腕をのぼる筋肉の疲労感

それら全てが桃太郎に残酷な真実として襲いかかりました

67 : 以下、名... - 2019/06/01 23:00:09 4iJKLtuE 63/75

嗚咽とビチャビチャという不快な音をたてながら桃太郎は胃のなかをひっくり返しました

桃太郎「ち、ちがう、お、おいらは鬼、鬼なんかじゃ」

口ではこう言っていますが、桃太郎は気づいています

今見えたものが全て真実だということを

68 : 以下、名... - 2019/06/01 23:02:42 4iJKLtuE 64/75

鬼の大将「大丈夫…ではないよね」

桃太郎「お前しゃべれるのか?う、うえ…おえ…」

「無理はしなくていい、ゆっくり受け入れればいい、全て運命だよ、しかたなかったんだ」

69 : 以下、名... - 2019/06/01 23:10:06 4iJKLtuE 65/75

桃太郎「そうだ、それだよ!なんだよさっきからなんだよ!運命運命って!」

「落ち着いて、この物語の正しい姿、それが運命だよ」

桃太郎「説明になってねえよ!さっきからおかしなことばかり、それなのになんでおいらは、、お前の話を信じてんだ!?」

「すまない、ちゃんと説明しよう」

70 : 以下、名... - 2019/06/01 23:17:02 4iJKLtuE 66/75

「例えばだ、そうだね、君がある日川に釣りに行って一匹魚を釣って帰ったとしよう」

桃太郎「だから!何を言ってるかわからねえんだよ!」

「例えばの話のほうが分かりやすいんだ、聞いてくれ、川に釣りに行って一匹魚を釣って帰った」

桃太郎「う、うん」

「もしかしたら君は気が変わって川ではなく海にいくかもしれない、池にいくかもしれないし魚を一匹ではなく二匹三匹つるかもしれない、いや釣りなんていかないかもしれない」

桃太郎「うん」

71 : 以下、名... - 2019/06/01 23:21:29 4iJKLtuE 67/75

「川に行って一匹魚を釣ったのが君だ、そして魚を釣りにいかなかったのが私だ 」

桃太郎「いや全然わからない」

「言い方が悪かったね、選ばれなかった可能性そのものが私達、選ばれたのがおそらく君だ」

72 : 以下、名... - 2019/06/01 23:30:43 4iJKLtuE 68/75

桃太郎「選ばれたとか選ばれなかったとか、頭おかしいのかよ!誰に選ばれたってんだよ」

「物語を進めることを望んだものだろうね、そろそろかな?この遠眼鏡を覗いてごらん」

桃太郎「ふわふわした言葉ばっかり使って気取りやがってな、なんだよなんだってんだよ、おいら達の乗ってきた船?」

「あと少しで今日が終わる、2……1…」

桃太郎「え?船が消えた?」

73 : 以下、名... - 2019/06/01 23:39:25 4iJKLtuE 69/75

遠眼鏡のなかで起きたことが信じらなかった桃太郎は外にでて自分の目で確かめました

船どころか島には一つの死体もありませんでした。

「これに気づくまで随分かかったよ
この島に関わるものの
間違った運命は正されるんだ、物も時間も命さえも」

桃太郎「正される?時間が巻き戻るってことか?じゃ、じゃあなんで死、死んだ…おいらが殺、した鬼達は死んだままなんだよ」

「それが正しい運命なんだよ、君に殺されるのが」

74 : 以下、名... - 2019/06/01 23:54:22 4iJKLtuE 70/75

桃太郎「正しい物語を選ばないと、この島は止まったまま?」

「少々乱暴だけど、それに近いことが答えだ、少なくとも私はそう信じている」

「事実、君の生まれたであろう時期から新しい桃は島に流れ着いていない」

桃太郎「わからない」

「そうだろうね、あまりにもおかしなことが事実として起きすぎて、それら全てが君に選択を迫っている」

桃太郎「そうだけど、そうじゃない、正しい運命って、おいらがあんたらを殺すことだろう?」

「…………………あぁ」

75 : 以下、名... - 2019/06/01 23:58:40 4iJKLtuE 71/75

桃太郎「正しい運命だか物語だか知らないけど、なんであんたらは死ぬなんて、殺されるなんてことを受け入れようとしてるんだ?」

「難しい、難しい質問だ」

「さっきもいったようにこの島では君の住んでいる村と違う時間が流れている」

「この島に住む一番幼いものでも君を育てたおじいさんが生きてきた人生数万回分を生きているんだ」

桃太郎「そんな時間を生きているの?」

76 : 以下、名... - 2019/06/02 00:01:26 DHsPj1sw 72/75

「残酷だけど君に任せる、ただ君以外の全ての鬼と人間は君が正しい物語を選ぶことを望んでいる」






桃太郎「桃太郎…………の物語」

77 : 以下、名... - 2019/06/02 00:09:16 DHsPj1sw 73/75

昔々

あるところに鬼ヶ島がありました

そこにはたくさんの鬼が住んでいました

そこに住む一番小さな鬼は健気にも毎日

二つの骸の納められていない墓に

78 : 以下、名... - 2019/06/02 00:15:23 DHsPj1sw 74/75

新しい花を置いて一生懸命に二人の魂の安らぎを願っていました。

毎日毎日、終わりのこない物語を生きましたとさ

79 : 以下、名... - 2019/06/02 00:16:40 DHsPj1sw 75/75

昔々

あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。

おじいさんは柴刈りに

おばあさんは川に洗濯に行きました

すると上流からドンブラコッコドンブラコッコと

おしまい

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