総理「来月より、70歳以上の男性は一人称を“ワシ”、語尾を“じゃ”にすることを義務化します」
総理「その他、語尾は“のう”“わい”などの使用も認めます」
総理「もし、こうした喋り方をしなかった場合、その方はお年寄りとは見なされません」
総理「つまり、年金やさまざまな社会福祉を始めとした、恩恵を受けられなくなるというわけです」
総理「厳しく監視いたしますので、くれぐれもご注意ください」
老人「……」
老人「なんだとぉ!?」
元スレ
総理大臣「70歳以上の男性は一人称を“ワシ”、語尾を“じゃ”にすることを義務化します」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1555412412/
老人「まったくふざけた話だ!」
老人「“ワシ”や“じゃ”を使わなきゃならないだなんて……言論の自由はどうした!」
友人「本当にな」
老人「こっちはまだ若いんだ! そんなジジ臭い言葉使うかってんだ!」
老人「恩恵が受けられない? 結構じゃないか! こっちだって奴らなんかに頼るものか!」
友人「そうだそうだ! いつまでも今の喋り方のままでいようぜ!」
TV『ワシもワシという一人称を使うことにしたんじゃよー』
TV『ワシもなんじゃ』
TV『ワシもワシも』
TV『ワシじゃよ』
老人「ったくどの番組を見ても、こんな内容ばっかりだ。ジジイ言葉にしろと訴えてくる」
老人「どいつもこいつもポリシーってもんがねえのか、ポリシーが!」
老人「もういい! 不快だ! 消そう!」ピッ
白髪「こんにちは」
老人「これはどうも。お出かけですか?」
白髪「ええ、買い物に行くところですじゃ」
老人「え……“ですじゃ”?」
白髪「はい、ワシも喋り方を変えることにしましてのう。ほっほっほ」
老人「そ、そうですか……」
老人「まったく情けない……」
老人「なーにが“ワシ”だ! なーにが“ほっほっほ”だ!」
老人「あんな喋り方してたらあっという間に老け込んで、ボケちまうぞ!」
老人「そうか、きっとそれが狙いに違いない!」
老人「年寄りはジジ臭い言葉を使って、黙って社会の隅っこにいろ、と……」
老人「そうはいくかってんだ! 俺は生涯“俺”を使い続けてやる!」
ガタンゴトン… ガタンゴトン…
老人(うう、座りたい……)
ガタンッ
老人「うわっと!」
若者「あの、よかったら座ります?」
老人「え、いいのかい? ありがとう!」
若者「ん、語尾が“じゃ”じゃない……やっぱダメ。あんた、年寄りじゃないもん」
老人「そんなぁ……」
ヨロヨロ…
老人「重い……少し買いすぎたか」
主婦「少しお持ちしましょうか?」
老人「助かるよ」
主婦「そういう時は“助かるわい”でしょ? 助けて欲しかったら老人言葉を使わないと」
老人「……!」
老人「だ、誰がそんな喋り方するものかーっ!」
主婦「まぁ、怖い!」
老人「はぁ、はぁ、はぁ……やっと家に着いた……」
老人「こんなことではくじけんぞ!」
老人「俺は……絶対に“ワシ”なんて使わんぞー!」
老人「うう、腰が……」
老人「シップどこだったっけ……」
友人「俺も……ワシにすることにしたよ」
老人「ええっ!?」
老人「ど、どうして……」
友人「やっぱり色々な恩恵が受けられないのは厳しいし、体にガタも出てきたし」
友人「突っ張る年齢でもないからのう……。おぬしも無理せん方がええぞ」
老人「ううう……」
老人(最後の盟友が脱落してしまった……)
老人「たとえ仲間がいなくなろうと、俺はやめん!」
老人「俺は俺のまま、誰にも頼らず生きていく!」
老人「こんな荷物ぐらい……!」
老人「こんな荷物ぐらいぃ……!」
ヨタヨタ… ヨロヨロ…
老人「俺はまだ若いんだ……! ジジイなんかじゃないんだ……!」
老人「あと少し……」ヨロッ…
グキッ
老人「あっ」
老人「ああああああっ……」
ドサッ…
女医「大丈夫ですか?」
老人「ここは……?」
女医「ここは病院です。あなたは救急車で運ばれてきたんですよ」
老人「ああ……そうか、ぎっくり腰で……」
老人(俺はもう、若くないんだなぁ……)
女医「お名前を教えていただけますか?」
老人「俺は――」
老人(いや、もう……)
老人「ワシは……」
老人「ワシの名は……」
女医「もう大丈夫ですよ、しっかり治療しますからね」
老人(ついに、ついに使ってしまった……“ワシ”を)
老人(これでワシもついに年寄りの仲間入りか……)
パァァァァァ…
老人「ん?」
老人「な、なんじゃ!?」
老人「“ワシ”といったとたん、急激に活力が湧いてきたわい!」
老人「あれだけ痛かった腰が、ウソみたいに直って……」シャキーンッ
女医「まあ、すごい」
老人(これは……これはどういうことなんじゃ!?)
老人「そうか……」
老人「老人が元気に生きるコツ、それは“自分が老人だとハッキリと認めること”だったんじゃ」
老人「だから、いわゆる典型的な老人言葉を使うと、このように活力が湧いてくるんじゃ」
老人「下手に自分はまだ若い、まだ元気だと言い聞かせようとするとかえって心身に無理が生じ」
老人「結果的に、ボケたり、体を壊したりすることに繋がるんじゃ……」
老人「よーし、だったらこれからは……思う存分老人ライフを満喫してやるわい!」
老人「お茶がうまいのう……」
老人「今日は俳句でも詠むか!」
老人「盆栽は楽しいのう!」チョキチョキ
老人「今日はみんなでゲートボールじゃ!」コーンッ
老人「演歌は最高じゃわい!」
老人「いやー、楽しいわい! ほっほっほー!」
……
……
総理「例の政策は上手くいっているか?」
部下「はい、年配男性の活力が増し、健康寿命がぐんぐん伸びています」
部下「介護業界の負担もだいぶ減っているとの報告が」
総理「老人が自らを老人だと振る舞うこと……まさかこれが高齢化社会の突破口だったとはな」
部下「ええ、東大と京大の共同研究から明らかになりましたが」
部下「老人が自分はまだ若いと振る舞うことはむしろ逆効果だったというのは、盲点でした」
部下「ですが、今のままでは年配女性をカバーできておりません」
部下「次はいかがいたしましょう?」
総理「うーむ、そうだな……」
総理「70歳以上の女性は頭をお団子にする髪型を義務付けよう」
完
「ぢゃ。」なら納得できる。