1 : 以下、名... - 2009/05/19(火) 23:57:03.57 BseKkhlP0 1/12


「臭い部屋ですね。換気の方はどうなっているのでしょうか?」

「あー、そういえば閉め切ったままだな」

「それにしても汚い部屋ですね」

「うるさいな」

「とても私の兄の部屋とは思えないのですが」

「どういう意味だ?」

「13歳でハーバード大学に入学して博士号を取り、テレビで『天才美少女アイドル』として超人気の私の兄とは思えないと言っています」

「説明ありがとう」



元スレ
海外留学してた妹が久しぶりに帰ってきた
http://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1242745023/

5 : 以下、名... - 2009/05/19(火) 23:58:28.58 BseKkhlP0 2/12


「兄、普通に生活していて部屋が散らかるということが理解できないのですが」

「知るかよ・・・で、なんだ?嫌味を言いに来たのか?」

「いいえ、ふがいない兄のために私が一肌脱いであげようと思いました」

「片付け手伝ってくれるとか?」

「いいえ、兄、知っていますか? なんでも手伝ってくれる便利ロボットが身近にいるせいでダメ男になってしまった小学生の話を。私は兄がそんな風になって欲いとは思いません」

「はあ?じゃあ一体何を――」

「兄、取引です。(スルスルスル・・・)」

「!!!!???ちょっ、何脱いで・・・」

「今から1時間以内に部屋を片付けてもらいます。もし綺麗に片付いたなら、私は兄の言うことを何でも聞きましょう」

「・・・・・・マジ?」


9 : 以下、名... - 2009/05/20(水) 00:00:03.79 W17mxaRE0 3/12


「ええ」

「俺はやると言ったらやるぜ?」

「取引成立ですね。それでは健闘を祈ります」

――1時間後

「終わりましたか?」

「ああ、バッチリだぜ!」

「ダメですね」

「え?」

「臭いです。換気はしてくださいと言ったはずです。部屋を閉め切ってクーラーをかけているからいけないのです。フィルターにカビが繁殖しています」

「・・・・・・」

「それに・・・」ツカツカツカ・・・ガラッ!

「そっ、そこは!」


10 : 以下、名... - 2009/05/20(水) 00:01:48.14 BseKkhlP0 4/12


「見事に雪崩が起きましたね。押入れに押し込むだけでは片付けとは言いません」

「くっ!」

「残念ですが、これまでです。私は今からCMの撮影の仕事があるので事務所の方へいかなければなりません。まあ、歩く場所もなかった兄の部屋が多少はマシになったようなのでよかったです」

「お前、俺を騙したな!」

「それは言いがかりです。それに、私は兄が部屋を本気で片付けしてくれることを期待していました。働く気がないならせめて部屋の片付けだけども、などとは言いません。ですが私は兄の努力が見たかった。そして兄が私にしかできない頼みをしてくれることを願っていました。それが私の願いでした」

「お前・・・・・・」

「申し訳ありません。少し感情的になってしまいました。今の話は忘れてください。仕事に行ってきます」

「あっ、待っ――」バタン!


11 : 以下、名... - 2009/05/20(水) 00:03:54.67 W17mxaRE0 5/12


――6時間後

「兄、ただいま」

「よう、お帰り」

「兄、部屋を掃除したのですか?」

「ああ、綺麗なもんだろ」

「なるほど、一度カーペットをはがして雑巾かけした跡までありますね。タンスの裏に溜まったホコリも全て除去されています」

「分かるのか?」

「兄、私は嬉しいです。兄はやっぱり私の兄です。やればできる人なんですね」

「ま、まあな。取引の方はもうナシになっちまったけどな」

「兄、これを・・・」


12 : 以下、名... - 2009/05/20(水) 00:06:18.80 BseKkhlP0 6/12


「ん?マフラー?」

「仕事の合間を見つけて編んでいたのです。初めてなので上手くできなくて恥ずかしいのですが」

「いや、なんかペルシャ絨毯みたいに複雑な模様が刺繍されてるんですけど・・・さすが天才」

「気に入っていただけましたか?」

「ああ、ありがとうな」

「兄、私は兄が私の兄でよかったと思っています」

「そ、そうか?」

「兄には夢とかありますか?」

「なんだ急に?」

「私には夢があります」


14 : 以下、名... - 2009/05/20(水) 00:08:31.78 W17mxaRE0 7/12


「へーどんな?」

「お嫁さんになることです」

「そりゃまた地味な」

「ですが、夢というのは実現することが難しいから夢と呼ばれるのです。そして、私の夢も叶いそうにありません」

「なんでだよw これからだろ」

「えっ・・・。い、いえ。そうですね。申し訳ありません、変なことを言ってしまいました」

「それにしてもお前がお嫁さんか~。よく考えると可愛らしくてお前らしい夢だな」

「そうですか?」

「ああ」


15 : 以下、名... - 2009/05/20(水) 00:10:43.19 W17mxaRE0 8/12


「私は自分の夢の話は人にしたことがありません。なぜなら私は一般に『天才美少女アイドル』で通っていて、普通の女の子のイメージとはかけ離れているからです。事務所からNGがでなくても、周囲の反応は容易に想像がつきます。」

「そんなもんか」

「ええ。ですから、兄にそう言ってもらえて私はとても嬉しいです」

「俺もお前の夢が叶うのを祈ってるよ。でも、そうだな~、兄としてはお前が誰かに嫁ぐってのは結構キツいもんがあるな」

「そうなのですか?」

「そりゃそうだろ。天才とかアイドルの肩書きが無くたってお前は俺のこの世でたった一人の妹なんだからさ」

「兄・・・・・・・」

「よしよし・・・・っと?撫でるの避けるなよ」


16 : 以下、名... - 2009/05/20(水) 00:13:46.29 W17mxaRE0 9/12


「いえ、避けた訳ではありません。少し泣いてしまったので、涙を見られないようにうつむいただけです。でもこうして話してしまっては同じですね。恥ずかしいです」

「おおげさだな~、当たり前のことだろ」

「そうですね。私は兄のことも夢見ています」

「俺のこと?」

「はい。兄、自分の小学生の頃の文集を覚えていますか?兄は消防士になるのが夢でした。私は燃え盛る炎に果敢に飛び込んで人命を救助する兄の姿を想像しました」

「ああ、そうだったかな・・・」

「私にとって兄はヒーローでした。きっと私が火事の建物の中に閉じ込められていても、兄が助けてくれると思っていました。でも、消防士でなくてもいいのです。なぜなら、私は兄が一生懸命ならそれがどんな職業であっても、輝いて見えるに決まっているからです。今日本気を出した兄は、とてもかっこよかったです」

「あ、ああ・・・・」

「じゃあ、おやすみなさい」パタン


17 : 以下、名... - 2009/05/20(水) 00:16:47.85 W17mxaRE0 10/12


「おやすみ・・・・」

――次の日

「兄、どちらにお出かけでしたか?」

「いや、ちょっと散歩に行ってきた」

「珍しいですね。兄が外出など何年ぶりですか、などと嫌味を言うつもりはありませんが」

「言ってる言ってる」

「失礼しました。今日はとてもいい天気ですから、お出かけしたくなる気持ちは分かります」

「そ、そうだよな。はは、は。じゃあ俺部屋戻るから」

「いいお返事が来るといいですね」

「えっ!!!!???」

「なんでもありません、ふふ・・・」

「(ハローワークに行ってたのがバレたのか!?)」


19 : 以下、名... - 2009/05/20(水) 00:21:19.83 W17mxaRE0 11/12


――5年後

「兄、立派になりましたね。それでこそ私の兄です」

「まさかこの俺が総理大臣にな。いや~色々あったな」

「そうですか?」

「ああ、勉強も散々したし、色々スポーツもやったよな。思い出してみると、なんかお前に乗せられてたような気がするんだが」

「きっと気のせいだと思います」

「あの時の俺はバカだったからな~。いや今なら分かる気がする。やっぱお前俺のこと色々ハメてただろ」

「気のせいではないでしょうか?」

「そうだ、昔言ってた「私にしかできない兄の頼みを聞くのが私の願い」っての。あれは本気だったのか?」


20 : 以下、名... - 2009/05/20(水) 00:23:21.89 W17mxaRE0 12/12


「!!き、気のせいでは・・・・・・・・・・・・・・ないです」

「はっはーやっぱりそうか。じゃあ今頼んだら俺のお願い、聞いてくれるか?」

「分かりました。何なりと仰ってください」

「じゃあ耳をこっちに・・・・・ゴニョゴニョ」

「!!!!!・・・・・・うわぁぁぁぁぁん!」

「お、おい泣くなよ」

「だって、だってぇぇぇぇっ!」

「しょうがないな~・・・・よしよし」

「うぇぇぇぇん、ひっく・・・兄、私ももう子供ではありません。頭を撫でるのは恥ずかしいです」

「ははは、そう言えばようやくお前の頭を撫でられた気がするよ。お前も俺を認めてくれたってことか」

「兄、何を言っているのですか。私は認めていました・・・・・・・・最初から」


こうして妹の夢は叶いましたとさ      END


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