1 : 以下、?... - 2019/04/10 21:45:26.806 IRqhqJwL0 1/35

「んー……」

「どうしたの?」

「いや、ちょっと肩が凝ってて……」トントン

「だったら、久しぶりにあたしが呪ってあげる」

「お、いいの? サンキュー!」

「藁人形をセットして、肩に狙いを定めて……呪ってやる」ガンガンガン

「ん゛っ! き、きくぅっ!」ビクビクン

元スレ
男「嫁が何かあるとすぐ藁人形に五寸釘を打ち込む」嫁「呪ってやる……」ガンガンガン
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1554900326/

2 : 以下、?... - 2019/04/10 21:48:39.159 IRqhqJwL0 2/35

「おー……」

「肩がすっかり軽くなったよ! こんなに勢いよく回せる!」グルグル

「ふふふ……」

「じゃあ、ついでに腰もやってあげる」

「今度は腰を……」ガンガンガン

「お゛っ! お゛っ! お゛っ!」ビクンビクン

3 : 以下、?... - 2019/04/10 21:51:19.652 IRqhqJwL0 3/35

「今日の夕ご飯は……焼き魚とステーキよ」

「おお~、いいねぇ~」

「お肉は奮発して、いいの買ってきちゃった」

「食いごたえありそう! だけど、ちょっと固そうだな……」

「だから柔らかくするため……肉を呪ってやる」ガンガンガン

「ビクンビクン」

「呪いで柔らかくするの!?」

6 : 以下、?... - 2019/04/10 21:55:14.051 IRqhqJwL0 4/35

「ステーキ、柔らかくておいしい!」モグモグ

「ありがと~」

「さて、次は焼き魚を……」モグッ

「しまった! 喉に骨が刺さった!」

「だったらあなたの背中を呪ってやる……」ガンガンガン

「ゲホッ!」ポーンッ

「取れた!」

7 : 以下、?... - 2019/04/10 21:58:09.785 IRqhqJwL0 5/35

朝――

「行ってきまーす!」

「行ってらっしゃい」

「あっ!」

「あの人ったら、定期を忘れてる……」

「今だったら下手に追いかけるより、取りに戻ってきてくれた方が早いわね」

「頭のところをかる~く呪ってやる」トントントン

8 : 以下、?... - 2019/04/10 22:00:21.026 IRqhqJwL0 6/35

「!!!」ビビビッ

「あっ、定期忘れた!」



「君のおかげで思い出せたよ」

「どういたしまして」

「君が本気出せば、認知症の人も改善できるかもな……」

「どうかしら」

9 : 以下、?... - 2019/04/10 22:03:29.112 IRqhqJwL0 7/35

休日――

「今日は二人で出かけようか」

「あら嬉しい、そうしましょ」

「どこ行く?」

「もちろん……ホームセンター!」

「ホームセンター?」

10 : 以下、?... - 2019/04/10 22:06:15.374 IRqhqJwL0 8/35

「あっ、この釘ステキ!」

「わぁっ、こんなのも出たんだ!」

「この新作もいいかも! 精度の高い呪いができそう!」

「あぁ~、どれ買うか迷っちゃう!」

「……」

(世界広しといえども、こんなにも夢中になって釘を物色する嫁さんはいないだろうな)

12 : 以下、?... - 2019/04/10 22:09:22.045 IRqhqJwL0 9/35

電車内――

老人「うう……」

DQN「ふんふ~ん」シャカシャカ



「とんでもない奴だな、優先席をベッドみたいに使って独り占めして……」

「ああいう奴は……呪ってやる」

13 : 以下、?... - 2019/04/10 22:12:19.117 IRqhqJwL0 10/35

「お尻のあたりを……」ガンガンガン


DQN「いだっ! いだだだだっ!? お尻が……!」ガバッ

老人(やっと座れる……)ストン


「おおっ、すごい!」

「こういう使い方はあまりしたくないんだけどね」

15 : 以下、?... - 2019/04/10 22:15:39.221 IRqhqJwL0 11/35

「さーて、帰ろうか」

「うん」


ザワザワ…

「大変だー!」 「意識ないぞ!」 「救急車呼べ、救急車!」


「どうしたんです?」

通行人「急に人が倒れて……意識がないみたいで」


「心臓発作っぽい!」 「AEDないのか、AED!」 「やばいって!」

16 : 以下、?... - 2019/04/10 22:18:04.657 IRqhqJwL0 12/35

「まずいな……道路は混雑してるし、救急車すぐ来れるかどうか……」

「あたしに任せて」

「どうする気?」

「呪いで心臓マッサージするわ」ガンガンガン



中年「……」ビクッビクッ

17 : 以下、?... - 2019/04/10 22:21:27.068 IRqhqJwL0 13/35

中年「がはっ!」


「おおっ、蘇生した!」

「ちょうど救急車も来たみたいね。もう安心だわ」


ピーポーピーポー… ピーポーピーポー…


「呪いで人の命を救っちゃうとは……」

「“人を呪わば穴二つ”って言葉があるけど、あれは君には当てはまらないな」

「君は穴を掘るどころか、掘らずに済むようにしてるんだから」

「やだ、おだてないでよ」

18 : 以下、?... - 2019/04/10 22:24:26.642 IRqhqJwL0 14/35

別の日――

「今日は≪呪術教室≫の講師に行ってくるわ」

「行ってらっしゃい」

「だけど呪術教室って……いったいどんなことやってるの?」

「よかったら来る?」

「え、いいの?」

「大歓迎よ」

(一度見てみたかったんだよな……もし危なそうな奴がいたらすぐやめさせなきゃ!)

19 : 以下、?... - 2019/04/10 22:27:27.528 IRqhqJwL0 15/35

ワイワイ… ガヤガヤ…

会員「あ、先生、こんにちはー」

「どうもー」

会員「そちらの方は?」

「旦那です」

「はじめまして」

会員「いつも奥さんにはお世話になってます」

(どこぞの秘密結社みたくみんな怪しい格好してるのを想像してたけど……)

(普通の習い事スクールって感じだ……)

20 : 以下、?... - 2019/04/10 22:30:17.827 IRqhqJwL0 16/35

「じゃ、練習を始めまーす。藁人形と釘を準備して下さい」


「はいっ!」 「はいっ!」 「はいっ!」


「悪用したら……呪ってやるから」


ゾッ…


(今の……本気だな)

21 : 以下、?... - 2019/04/10 22:33:40.028 IRqhqJwL0 17/35

「皆さん、ご一緒に。藁人形に釘をトントントン」トントントン


トントントン… トントントン… トントントン…


(うーむ、皆で爽やかに藁人形に釘を打ち込んでる……)

「失礼ですが、なぜ呪いを?」

会員「最初は嫌な奴に恨みを晴らすため……というつもりで始めたんですがね」トントントン

会員「皆さんとふれ合ってるうち、すっかりどうでもよくなっちゃって」トントントン

会員「今ではもっぱら健康のためにやってますよ!」トントントン

「な、なるほど……」

22 : 以下、?... - 2019/04/10 22:36:46.961 IRqhqJwL0 18/35

ブラジル人「ヘロー!」

「あら、こんにちは」

ブラジル人「また日本にきましター!」

ブラジル人「あなたに教わった呪い、故郷でとても役に立ってマース!」

「そういってもらえると嬉しいわ」

「へぇー、海外の人も習ってるんだ」

23 : 以下、?... - 2019/04/10 22:39:36.587 IRqhqJwL0 19/35

「この人は故郷のブラジルで、あたしの呪いを活用して下さってるの」

ブラジル人「もちろん悪用はしていまセーン! 主に農業に使ってマース!」

ブラジル人「農作物を適度に呪うと、いい育ち方するんデース!」

「それはなによりです」

「失礼ですが、お名前は?」

ブラジル人「グレイシーと申しマース!」

「グレイシー呪術!?」

25 : 以下、?... - 2019/04/10 22:44:15.692 IRqhqJwL0 20/35

……

「ただいまー」

「お帰りなさい。このところ毎晩遅いけど、どうしたの?」

「今度、競合他社とのプレゼン合戦があってね……その準備に忙しいんだ」

「あなたが大勢の前で、社の製品や強みを発表するってこと?」

「そういうこと。プレゼン役に選ばれたのは嬉しいけど、プレッシャーだよ……」

(あたしも……なにか力になってあげたいな)

26 : 以下、?... - 2019/04/10 22:47:22.717 IRqhqJwL0 21/35

「せめて肩を……」ガンガンガン

「おっ、ありがとう!」ビクンビクン

「おかげで肩が軽くなった! よーし、追い込みかけるか!」

「あたしには呪うことくらいしかできないから……」

「いやいや、君の呪いは素晴らしいし、それ以上にその心遣いがありがたいよ」

「まぁっ……」ポッ

27 : 以下、?... - 2019/04/10 22:50:32.650 IRqhqJwL0 22/35

プレゼン当日――

「行ってきます!」

「行ってらっしゃい」

「もし、失敗してもくじけないでね」

「ハハハ、大丈夫」

「ところで……あなたがプレゼンする時間って決まってるの?」

「うん、かなり厳密に決められてるよ。よほどのトラブルがない限り、ずれないと思う」

「だったら時間を教えてくれない?」

「別にいいけど……」

28 : 以下、?... - 2019/04/10 22:53:39.375 IRqhqJwL0 23/35

司会者「続いて、○×社のプレゼンテーションをお願いします」

「はいっ!」

上司「しっかりな」

「ええ! 任せて下さい!」

「……」ザッ

(マズイ……緊張しすぎて頭が真っ白に……!)

(人という字を……ってのをやってみるか? いやこんな大勢の前でやったら笑われる!)

29 : 以下、?... - 2019/04/10 22:56:51.744 IRqhqJwL0 24/35

トーン トーン トン トーン トーン

「ん?」

トン トーン トン

(体に軽く叩くような衝撃が……)

トーン トン

(これは、まさか――妻が!?)

トン トーン トン トン

(俺に呪いでメッセージを送っているのか!)

トン トン

30 : 以下、?... - 2019/04/10 22:59:44.620 IRqhqJwL0 25/35

トン トーン トン トーン トン

トーン トン トン トン

トン トン

トン トーン トーン トン

トン トーン トン トーン トーン

(終わった……)

(この長い衝撃と短い衝撃の組み合わせは……まさか……)

(モールス信号!?)

(解読してみると――)

32 : 以下、?... - 2019/04/10 23:03:21.702 IRqhqJwL0 26/35

アナタカ゛ンハ゛ツテ



(“あなた頑張って”)

(ありがとう……ありがとう、妻よ)

(俺が緊張しやすいのを知っていて、時間を見計らって、メッセージを送ってくれたんだね)

(君の愛で緊張なんざ吹っ飛んだ! これで全力でプレゼンできる!)

33 : 以下、?... - 2019/04/10 23:06:25.127 IRqhqJwL0 27/35

「弊社のプレゼンを始めさせて頂きます」テキパキ

「新製品のコンセプトはずばり……」

「またこちらの資料をご覧いただき……」

「さらに、強調したいのはここです!」バッ



上司(おおっ、すごいぞ! なんという滑らかなプレゼン!)

上司(ただ資料を説明するのではない……まるで資料と社交ダンスしているかのようだ……!)


「ほぉ……」 「実に分かりやすいですな!」 「うむ、この社にしてみようか……」

34 : 以下、?... - 2019/04/10 23:09:29.421 IRqhqJwL0 28/35

……

「……」ギーコギーコ

「あら、外でなにやってるの?」

「今日は日曜大工でもやろうと思ってね」

「プレゼンの時のお礼に、素敵な棚を作ってあげるよ!」

「わぁ、ありがとう!」

35 : 以下、?... - 2019/04/10 23:12:42.608 IRqhqJwL0 29/35

「ちょっと休むか」

「ふぅ~……中腰で大工やってたら腰が……」

「なら、あたしが呪ってあげる」

「頼むよ……」

36 : 以下、?... - 2019/04/10 23:15:23.749 IRqhqJwL0 30/35

「どう?」ガンガンガン

「ぎぐぅ~! 一気に腰の痛みがなくなった!」

「だけど……」

「?」

「いつも呪ってもらってばかりだから、たまには君を呪ってあげたいな」

「じゃあ、やってみる?」

「いいの? ていうか、俺に呪いの心得はないんだけど……」

37 : 以下、?... - 2019/04/10 23:19:23.601 IRqhqJwL0 31/35

「この藁人形に釘を打ち込めば、あたしを呪えるわ」

「えっ……大丈夫かなぁ。もし悪いところに打ち込んじゃったら……」

「平気よ、仮に全力で釘を打ち込んでも死にはしないから」

「よーし、じゃあ」

「ここらへんを……」トントントン

「あ……」ビクッ

39 : 以下、?... - 2019/04/10 23:23:07.028 IRqhqJwL0 32/35

「や、やるじゃない……」ハァハァ…

「じゃあ、今度はこっち」トントントン

「んっ……」ピクンッ

「ふくらはぎが……刺激されるっ……! なんて絶妙な力加減っ……!」

「第二の心臓ともいわれるからね」

「んもう、はじめてでこんなにしてくるなんて、あなたってば呪いの天才じゃないの?」

「そ、そうかな」

「よーし、あたしだって!」ガンガンガン

「おほぉぉぉぉっ! 肩甲骨に響く! 可動域広がりそう!」ビクンビクン

40 : 以下、?... - 2019/04/10 23:26:24.574 IRqhqJwL0 33/35

「やるじゃないか!」トントントン

「あんっ!」ビクンッ

「そっちこそ!」ガンガンガン

「お゛お゛っ!」ビクビクッ

トントントントントントン… ガンガンガンガンガン…

「ギッ、ギモヂイイッ! だけど負けるもんかっ!」トントントントントン

「ああんっ! あたしだって! もっと気持ちよくさせてあげるんだから!」ガンガンガンガンガン



「あのー……」

43 : 以下、?... - 2019/04/10 23:29:21.065 IRqhqJwL0 34/35

隣人「回覧板を……届けに来たんですけど」

「え」

隣人「ここに……置いておきますね」ニコッ

「……」

「……」

「ハハハハハ……」

「うふふふふ……」

44 : 以下、?... - 2019/04/10 23:32:25.658 IRqhqJwL0 35/35

「恥ずかしいいいいいいい! 穴があったら入りたい!」

「隣人さんが全然気にしてないですからって態度だったのがまた辛い!」

「いっそ本当に掘る? ……二人分」

「人を呪わば穴二つって、やっぱり本当なのかもしれないなぁ……」







―おわり―

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