1 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 10:01:52.31 O7eIM6It0 1/27



さんねんご!

『ひゅーどろどろどろっ うーらーめーしーやー!』きゃっきゃ

「はいはい。これからドイツ語の勉強するからあっち行ってて」

『ちぇー。最近和ちゃん冷たいよ』

「お通夜の時のあんたに比べたら冷たくないわね」

『そういう意味じゃないよ! まったくもう、和ちゃんはでりばりーってものがないよっ』

「そりゃ、私はピザ屋じゃないもの」

『でっ、でりかしー!』




5 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 10:06:05.41 O7eIM6It0 2/27



「本当、生きてた頃と変わらないわね」

『えへへ、そうかな?』

「もう私も大学三年よ、ちょっとぐらい成長しても良さそうなのにね」

『……だよねえ』ぷにぷに

「なんで胸の話になるのよ・・・・」

『うぅ・・・・あずにゃんでさえ成長したのにー・・・・化けてでてやるもんっ』

「もう化けて出てきてるでしょうが……それより唯、なんで梓ちゃんの」

『てへぺろ☆』

「……はぁ。ちょっと反省してなさい」



7 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 10:12:02.92 O7eIM6It0 3/27



『そんな、私は後輩を見守る守護霊なんだよー?』

「ところで唯、軽音部室ポルターガイスト事件って知ってるかしら」

『そっその節はたいへんもうしわけございませんでしたっ!!』

「まったくもう……あんたの悪ふざけのせいでお祓いまでしてもらったのよ」

『おかげで部室に入れなくなっちゃったもんね、私』

「自業自得でしょ」

『だってぇ……ちょっとこう、ギー太弾いてみたいなって思っただけなのに』

「私だって勝手にギターが宙に浮いて爪弾かれてたら卒倒するわよ」

『和ちゃんだけだもんね、私が見えるのって・・・』

「まあ、唯の子守りには慣れてるもの」

『和ちゃんしどい・・・えぐえぐ』



9 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 10:17:33.47 O7eIM6It0 4/27



「はぁ・・・憂はもう公務員試験の勉強はじめてるっていうのに」

『えっ、憂まだ大学二年だよね?!』

「なんでもそうだけど、意識が高い子は違うの。あなたも・・・まあ、唯はいいけれど」

『あははは・・・・地味にへこむよ、それー』

「悪かったわね」

『はぁ……そうなんだよねえ、憂もあずにゃんももう二年生かー』

「……」

『……和ちゃん。まだあずにゃんと連絡取れないの?』

「……憂は、元気そうだって言ってたけれど」

『・・・・私がいきなり死んじゃったりしなければ、よかったんだよね』

「唯のせいじゃないわよ。・・・・梓ちゃんのことは、どうしようもなかったから」

『あずにゃんも、いつか分かってくれるよ』

「……ありがとう」



14 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 10:21:48.56 O7eIM6It0 5/27



「ところで、今日はずいぶん遅かったじゃない」

『うん。一人旅もいいもんだよ』

「あんたは暇そうでいいわね……」

『昨日はね、うちの近くとか散歩してきたんだ』

「へえ。どうして?」

『うーん……雨、降ってたからかな?』

「理由になってないわよ。……まあ、今もすごいけど」

『まあ、適当に電車乗ったら桜ヶ丘着いちゃったんだよ。えへへ』

「ふうん・・・ホットミルク、飲む?」

『うん。なんだか冷えてきちゃったもんね。ありがと』



16 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 10:26:45.41 O7eIM6It0 6/27



「はい」

『えへへ。……あったまりますなあ』

「もう6月じゃない・・・」

『私は冷え性なの!』

「そりゃあ、もう夜中の二時だもの」

『え? うわあ、ほんとだ』

「それで、桜ヶ丘はどうなってたのよ」

『うーん……変わってない、わけじゃなかった・・・かも』

「どっちつかずね・・・」

『私だって、昔のことあんまり覚えてないもん』

「あんたはいつのことでもはっきりしないじゃない」

『あはは、和ちゃんひどーい』



17 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 10:33:30.40 O7eIM6It0 7/27



『あ、そうそう。あの児童公園の向こうのエスコがつぶれてた!』

「えっ・・・・ああ。スーパーたらいや、だったかしら」

『そうそう、私たちが小学校入る頃はたらいやって名前だったんだよねえ。なつかしいなあ』

「そういえばこの前、実家に帰ったときに商店街のほとんどがシャッター閉まっててびっくりしたわね」

『そうそう、そうなんだよ! あのお惣菜屋さん、とみおばあちゃんとよく一緒に行ったのになあ・・・』

「変わるものねえ……」

『……私は変わらないけどね』

「言ってないわよ、そんなこと」

『幽霊だもん、変わったらこわいよね。あはははっ』

「……言わなくてもいいじゃない、そんなこと」

『えへへ。・・・・でも、やっぱ変わったほうがいいに決まってるよ。和ちゃんも、憂も』



19 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 10:40:28.84 O7eIM6It0 8/27



「……憂、ひどく熱心に勉強してたわ。身体壊しそうなぐらいに」

『そうなんだ・・・そうだよねえ』

「・・・・・憂にも、唯が見えたらよかったのにね」

『私の言うことも、心配も、和ちゃんが伝えるしかないよ』

「でも・・・・ごめんなさい、唯」

『ううん、和ちゃんってそういうのへたっぴだもんね!』

「唯に言われるとしゃくにさわるわね・・・」

『あはは。・・・・憂やあずにゃんには、私のことは忘れて幸せになってって、それだけ伝わればじゅうぶんだよ』

(・・・忘れられるわけ、ないじゃない。少なくとも、私には)

『・・・?』

「ううん、気にしないで」



22 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 10:47:30.68 O7eIM6It0 9/27



『そういえばさ、帰るときヤマダ電機寄ったの。池袋の』

「ちょっ、ちょっと唯。パソコンとか勝手にいじったりしなかったでしょうね?」

『えへへ、やだなあ。ポルターガイストはもうこりごりだよお』

「そう・・・ならいいけど」

『それでね。薄型テレビとかのコーナーで、暇だからドラマ見てきたんだ。再放送してたやつ』

「へえ。どんなの?」

『一本目はちょうつまんなかった! えっとね、恋人と死に別れちゃうだけの話なんだよ』

「ふうん・・・」

『死んでいなくなって悲しいって、そんなのもう流行んないよ。和ちゃんが書いてる脚本の方が面白いよ』

「それは・・・たぶん、身内のひいきよ。私だって、ちゃんとしたコンテストに受かったわけじゃないんだし」

『でも有名なシナリオライターの教授にほめてもらってたじゃん! 和ちゃんはもっとがんばらなきゃ!』

「はいはい。それで、一本目ってことは二本目があったのよね」

『うん。そっちは・・・・なんか、ちょっぴり心に残ったかも』



23 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 10:54:28.83 O7eIM6It0 10/27



「へえ。参考に聞かせて」

『和ちゃんも知ってるやつだよ。三年ぐらい前、私が生きてた頃にやってたドラマ。おけぶいん、ってやつ』

「……なんだったかしら、それ」

『ほらあ、主人公の倉沢あいって子が部活に入ってがんばる話! そのころ一番人気だった女優さんだし、すごかったじゃん』

「ああ・・・・ずいぶん懐かしい話ね。映画化してどっかのコンビニとかでタイアップも取ってたものね」

『でも、あの女優さん最近見ないよね。・・・ていうか、なんて人か思い出せないし』

「そうねえ・・・浮き沈みの激しい業界、だから」

『でもテレビの中じゃさ、今も若いまんまなんだよね。・・・・・なんかね、まるで私みたいだなって』

「どういうこと? 名前?」

『違うよっ、歳とらないってこと』

「……作品になったら、歳は取れないものね」

『私みたいだよね』

「……そう、かもね」



25 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 11:04:47.96 O7eIM6It0 11/27



『おんなじなんだよ。ドラマのキャラって、歳とらないから』

「ものにもよるけど、・・・・そうね、一番かわいかった時を脚本にすることは多いわね」

『えへへー、私もかわいい? 和ちゃんあいしてるー!』だきっ

「ちょ、そういうのじゃなくて! ・・・・もう」

『・・・ねえ。ぎゅってしてよ』

「はいはい・・・・どうしたの、急に」なでなで

『・・・・・和ちゃんは、生きてるからわかんないんだよ』

「そうね。・・・・私なんて、分からないことだらけよ。だからちゃんと、言ってくれないと」

『あのドラマに出てきた子たちも、ただのキャラなんだよ』

「そんな言い方・・・・ううん、続けて」

『だからね、見た人の心の中では大人になれないで、ずっと女子高生のまんまなんだと思う』

「……それが、卒業式の日に死んだあなたみたい、って?」

『・・・・・』

「・・・・考えすぎよ」



29 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 11:15:47.22 O7eIM6It0 12/27



『・・・ごめん、変な話して。ところで和ちゃんはこれから、どうするの?』

「どうするって・・・そろそろ就活を始めて、できれば放送関係か出版系に内定とって、」

『脚本は?』

「いきなりそれだけで食べていけるほど甘くないわよ。・・・・勤めながら公募を続けるつもり。フジのヤングシナリオ大賞とか」

『ほえぇ・・・・さすが和ちゃん』

「意味わかってないでしょ、唯」

『えへへへ』

「もう、唯はかわら・・・・ううん、なんでもない」

『私は変わんないよ、変わらず和ちゃんの恋人だもん。えへへ』ぎゅっ

「・・・・ふふ、そうね」


『・・・・・ごめんね』

「どうしたの、急に」

『やっぱ、私のせいだよ。和ちゃんが演劇のサークルやめたの』



32 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 11:25:50.71 O7eIM6It0 13/27



「それこそ、唯には関係ないわよ」

『関係なくないよ』

「はぁ・・・・あのサークルでトラブったのは、私ひとりの話に決まってるじゃない」

『だって、』

「ちょっと唯。あなたがどうこうできると思う?」

『そういうんじゃなくて・・・・・ううん、そうだよね。死んでるもんね、私』

「・・・・・」

『でも、やっぱ離れた方がいいんだよ。幽霊とつきあうのはマチガイなんだよ! 和ちゃんだって――』

「それは気にしないっていつも! ……ごめんなさい」

『・・・・やだ。やっぱ和ちゃんは、私のことなんてきれいさっぱり忘れるべきなんだよ』

「・・・・・」

『3年の花田先輩とホテル行ったじゃん。そこで・・・ちゃんと、えっちすればよかったんだ』

「・・・・・」

『・・・・っ・・ごめん、わたし・・・ぐすっ・・・最低なこと、いってる・・・・』

「……唯は、悪くないって言ってるでしょう」


34 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 11:35:53.80 O7eIM6It0 14/27


――――――
――――
――

「・・・落ち着いた?」

『うん。・・・・・ごめん。やっぱ、今日の私おかしいのかも』

「ううん。私も疲れてるのよ、主に試験勉強で」

『……』

「・・・・私があの人と寝られなかったのは、単に男の人だったからよ」

『・・・・うん』

「無理やりキスまではしてみたけど、やっぱり抵抗あったわ」

『・・・・でも、私のこととか思い出したんじゃ』

「そうね。でも、それを後悔はしてないわよ」

『……後悔しなきゃ、いけないのかもしれないよ?』

「・・・・そう、かしら」

『死んだ人とつきあってるなんて、和ちゃんお父さんお母さんに言える?』

「それは・・・・・ううん。確かに、唯の言うとおりよね」



35 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 11:45:21.40 O7eIM6It0 15/27



『やっぱりさ、死んだ人とつきあうなんておかしいんだよ』

「……」

『……もうさ、2011年なんだよ。今さら死んだ恋人を思い続けるとか、ケータイ小説みたいな話なんて流行んないよ』

「・・・・・王道はいつの世でも残るものだと思うけれど」

『でも、それはドラマの中だけの話だよ。・・・・やっぱり、私は消えた方がいいんだ』

「・・・そういって戻ってきたわよね、前も」

『うるさいなあ! 今度こそ、みんなが私のことをすっかり忘れて私が消えるまで・・・・!』


ぎゅっ

「・・・ばかなこと、言わないの」

『・・・うぅっ・・・・のどかちゃんの、ばか・・・・』



40 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 12:13:41.17 O7eIM6It0 16/27



「・・・・・ねぇ唯。私が初めて書いた脚本、あったでしょう。憂や澪たち、・・・・梓ちゃんにも見せた話」

『うん。・・・・覚えてる』

「あれもね、結局は死んだ女の子の話だったじゃない」

『うん。・・・・・だからあずにゃん怒ったんだよね。唯先輩のことをネタにするんですかって』

「そう。書いたときはそんなつもりなかったけれど、気が付いたら唯の話になってたのよ」

『・・・・しかたなかったんだよ。それに、私はうれしかったな。・・・・あずにゃんには、悪いけど』

「ありがとう。・・・・唯が気に入ってくれなかったら、今まで書いてないもの」

『・・・そっか。ありがと、和ちゃん』

「・・・・認められたいとかじゃなくて、書かずにはいられなかったんだけど」

『うん。・・・・あの頃の和ちゃん、げっそりしてたもん』



42 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 12:20:53.76 O7eIM6It0 17/27



『・・・・でもね、あずにゃんのこともうれしかったんだよね。ほんとはよくないのに』

「そうね。でも自分のために怒ってくれるのは、私だってうれしいと思うわよ」

『うれしがっちゃいけないはずなのになあ・・・・ダメだね私。成長してない。・・・できっこないけど、あはは』

「・・・・」

『・・・・』


『・・・・ねぇ』

「なあに?」

『私が見えるのも、触れるのも、和ちゃんだけなんだよね』

「そうね」

『・・・・もしかしたら、今の私はただの幻覚なのかもしれないよ』



45 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 12:32:23.30 O7eIM6It0 18/27



「・・・・・!」

『そんな顔しないでってばぁ。はっきし言って、気づいてたでしょ?』

「・・・・」

『和ちゃん、もう二年ぐらい精神科も通ってないし抗うつ剤も飲んでないから悪化してきてるんだよ』

「・・・・」

『和ちゃんは、ただの病気。私は、ただの幻覚。それでもう終わりにしようよ』

「・・・・そんなこと、・・・っ!」


『私のことを、・・・・忘れてよぉ、おねがいっ、だから・・・!』

「・・・・」

『そうじゃないとっ、・・・和ちゃんまで、昔のことにしばられたまんまで・・・・死んだみたいに、なっちゃうから・・・!』

「・・・・」

『・・・・わたしっ、・・・もうのどかちゃんのこと・・・・・っ・・閉じ込めたくない・・・!』

「・・・・」ぎゅっ

『もうだきしめないでよぉ・・・ぐすっ・・・はなれられなく、なっちゃう・・・・』



46 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 12:39:06.24 O7eIM6It0 19/27



「・・・・バカね、唯は」

『・・・ぐすっ・・・・』

「そんなに思いつめてるなら、早く言いなさいよ」

『・・・・だって、のどかちゃんがっ・・・』

「……唯。昨日は、最期に桜ヶ丘を見に行こうって思ったんでしょ」

『・・・・うん』

「やっぱり・・・・自分の命は、粗末にしちゃダメでしょう」

『あは・・・わたし、もう死んでるのにね・・・・』

「……死んでなんかないわよ。私の中では、生きてるから」

『でもそれも、幻覚なんだよ・・・?』

「・・・・私にしか見えないもののことは、私が決めるわよ」



51 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 12:52:59.40 O7eIM6It0 20/27



『・・・・そんなの、ダメだよ』

「私にしか見えないものが幻覚かどうかなんて、私が決めればいいことじゃない」

『・・・そう、かな』

「・・・・あのね。脚本書くようになって、一つ分かったことがあるのよ」

『・・・・?』

「物語の登場人物なんて、頭の中にあるうちはみんな幻覚みたいなものなの」

『・・・・それは、私を登場人物にしてるからだよ。逆なんだ』

「確かに、そうかもしれないわね。でも、形にすれば、それは幻覚ではなくなる」

『・・・・』

「誰かが受け止めてくれれば、私の幻覚も誰かの記憶に変わる」

『・・・・和ちゃん』

「・・・・昔見たドラマのキャラみたいに、思い出してもらえるようにも、なるかもしれない」



53 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 12:57:21.65 O7eIM6It0 21/27



『・・・・そう、かな』

「唯。私が小説じゃなくてマンガでもアニメでもなくて、台本にしたのはね」

『うん』

「・・・・登場人物の声が、じかに伝わるからなの」

『・・・・それって、わたしのこと?』

「そうね・・・・それだけじゃないけれど」

『・・・ああー。あー、あー。ふわっふわったーいむ』

「・・・ふふっ」

『・・・えへへ。この声、か』

「そうよ。その声を、私の言葉で誰かの心に残せるなら・・・・唯は、ただの幻覚じゃなくなると思う」

『・・・・だったら、いいなあ』

「・・・・そうね。表に出さなきゃ、それこそ話にならないものね」



56 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 13:00:40.65 O7eIM6It0 22/27



『・・・もう明け方だよ』

「雨も止んだみたいね」

『・・・ちぇっ。雨降ったままだったら、今日は大学さぼろって言おうとしたのに』

「あのねえ。唯じゃないんだから」

『あはは。・・・・ところで和ちゃん。私、もうちょっとここにいていい?』

「・・・・家賃代ぐらいは、脚本書くのに協力しなさいね」

『・・・えへへ。ありがとう』



58 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 13:09:09.32 O7eIM6It0 23/27



『・・・前にさ、私がもう一度死ぬ時の話、したよね』

「そうね。この世の誰からも忘れられた時、だったかしら」

『うん。・・・・でも、今思ったんだけど』

「うん」

『それまでの間は、もう一つの世界で生きてるってことで、いいのかな』

「・・・・そうね。なんだかオカルトじみてるけれど」

『オカルトなんていったら私自体がオカルトだよぉ』

「あはは。そうだったわね」


『私決めた。もう、和ちゃんのそばを離れない』



59 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 13:14:50.83 O7eIM6It0 24/27



「・・・・そう」

『ネタにしてほしいなんて思わない。ただ、和ちゃんの見る幻覚の中に、時々でいいから顔を出したいんだ』

「・・・そうね。うん」

『絶世の美少女に書いてよ?』

「・・・・唯を?」くすっ

『もー、笑わないでよぉ』

「でも、そうね。死んでお別れの話なんて、そんな悲しいだけの話なんて、もう流行らないらしいもんね」

『・・・・あはは、さっき私が言ったことじゃん』

「うん。・・・そのうち、どっかの話で使わせてもらうわね」

『えー、和ちゃんパクったー!』

「私の幻覚ならいいじゃないの」

『げっ幻覚じゃないもん! 私は私だし!』

「ついに認めたわね」

『うぐっ。・・・・えへへ』



60 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 13:22:17.68 O7eIM6It0 25/27



  ◆  ◆  ◆

 明け方四時過ぎ、机の上に突っ伏したまま寝ていた私はノートパソコンの熱に起こされた。

 画面を見ると途中まで書いていた台本らしきものが残っている。

 やっぱり、唯の話を書いていたらしい。

 あまりの個人的な内容に消そうか迷ったけれど、もったいない気がしてとりあえず保存した。


 三年前の卒業式の後、唯は自宅でふいに息を引き取った。

 急な心臓発作だったらしい。原因は今でもわからない。ただ、よりどころを失って投薬を受け始めたのは覚えている。

 私は憂や梓ちゃん、律たちに自分の幻覚のことを話した。けれど、それは遺された人を傷つけるだけだった。

 その後、彼女たちとは距離をおき、逃げるようにサークル活動にのめりこんだ。

 それも、結果的には自分の幻覚に引きこもるだけだったらしいけれど。


 でも私は、自分の幻覚の居場所を見つけた。

 架空の物語の中でなら、唯の声を残すことができる。



62 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 13:32:12.23 O7eIM6It0 26/27



 私はずっと、幻覚の居場所を見つけられずにうなされ続けていた。

 この世から唯たちの方へ引きずられそうになったこともあった。

 けれど、彼女や他に出会った人々の居場所を物語の中に見つけた時、もう一度呼吸の方法を取り戻した気がした。

 処女作を書いたあの日、画面の向こう側に彼女の声を、はっきりと聴いた気がしたのだ。


 とうに冷めてしまったホットミルクをすすりながら、ノートパソコンに浮かぶ文字をもう一度読み返す。

 どうしようもないほど個人的な話で、唯のことも私のことも知らない人には理解できないだろう。

 けれど、彼女の声は確かに聴こえた。目を瞑ると、あの日と同じ笑顔が見える気がした。

 そんな気がした、だけだとしても。


 無数の愛しい幻覚と共に生きていこう。

 死んでお別れの悲しいだけの話より、その先に生きていくことを書かなくてはいけないから。

おわり。


66 : 以下、名... - 2011/06/05(日) 13:40:53.63 O7eIM6It0 27/27


読んでくれた人ありがとう
近所の商店街が軒並みつぶれててへこんだので書きました
次はもっとくだらない話にする


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