社長「では、このビラを全部配ってきてくれたまえ」
バイト「分かりました」
社長「零細メーカーであるうちの起死回生の策なのだ! 頼んだぞ!」
バイト「はぁ……」
バイト(ビラ配りが起死回生の策とか、終わってんだろこの会社)
バイト(ま、バイト代もらえるなら俺としてはどうでもいいけどね……)
元スレ
バイト「ビラ配りなんてやってらんねー、全部捨てちまえ!」バサァッ
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1553337369/
バイト「お願いします」サッ
バイト「お願いしまーす」サッ
バイト「全然もらってもらえない……」
バイト(そりゃそうだろ、ポケットティッシュならまだしも、ビラなんてゴミになるだけだし)
バイト(ましてカメラメーカーのビラとか誰が欲しがるんだよ。今はスマホで綺麗な写真撮れる時代なのに)
バイト「……面倒になってきた」
バイト「ビラ配りなんてやってらんねー、全部捨てちまえ!」バサァッ
ヒラヒラ… ヒラヒラ…
美女「ハーックション!」
美女「あ……」ダラ…
美女「これからモデルの仕事があるのに、鼻水が垂れてきちゃった!」
美女「なのに、ティッシュがない!」
美女「どうしましょ、鼻を垂らしたままじゃモデルなんかできないわ!」
ヒラヒラ…
美女「ん?」
美女「こんなところにビラが……」
美女「助かったわ!」チーンッ
美女「ふう、スッキリした……」
美女「このビラがなかったら、どうなってたことか……」
美女「ふうん、カメラメーカーのビラなんだ……。覚えておこうかな」
飼い主「待てーっ!」タタタッ
犬「ワン、ワン!」タタタッ
飼い主「くそっ、追いつけない! もし、車にでも轢かれたら……!」
犬「ワン、ワン!」タタタッ
ヒラヒラ…
犬「キャウッ!?」
飼い主「よし、ビラが目隠ししてくれたおかげで犬に追いつけた!」ガシッ
飼い主「コラ、もう逃げたらダメだぞ!」
犬「クゥ~ン」
飼い主「このビラのおかげで助かったよ……」
飼い主「カメラか……ちょっと興味あるかも」
バシャバシャッ
幼女「助けてー!」バシャバシャ
父「娘が川に落ちてしまった!」
父「誰か……誰か助けて下さい! 私は泳げないし……ああ……どうすればいいんだ!」
ヒラヒラ… ヒラヒラ… ペチャッ…
幼女「あっ!」
父「ビラが何枚も降ってきて……イカダみたいになった……」
父「それにつかまるんだ!」
幼女「このビラのおかげでたすかったー!」
父「よかった……!」
父「これは……カメラメーカーのビラか」
父「昔カメラに凝ってた時期もあるし、また今度買ってみようかな」
幼女「そしたら、あたしをとってねー!」
父「もちろんさ! いっぱい撮ってやる!」
武術家「せいっ!」ビュオッ
武術家「むむむ……ダメだ、こんな突きでは世界には通用せん」
武術家「やはり、これが我の限界なのか……」
ヒラヒラ…
武術家「む?」
ヒラヒラ…
武術家「あの風に舞うビラ……そうか!」
武術家「あの紙のように風に乗って動くのだ!」
武術家「そうすれば――」ヒラヒラ…
武術家「破ッ!!!」ビュオッ
武術家「これだ!」
武術家「我、新たな極意に到達せり! あのビラに感謝!」
チンピラ「ちくしょう、紙がねえ!」
チンピラ「くそっ、ちゃんと拭かなきゃ、外に出られねーよォ!」
ヒラヒラ…
チンピラ「お?」
チンピラ「た、助かった!」
チンピラ「これでケツを拭ける!」
ゴシゴシ…
チンピラ「ちょっと痛いけど……とにかくこのビラには助けられたぜ!」
チンピラ「このビラを作った会社にゃ、いずれ借りを返さねえとな……」
会社員「かしこまりました、失礼します」ピッ
会社員「今指示されたことをメモしておかないと……」
会社員「しまった! 手帳を忘れた! どうしよう!」
会社員「かなり複雑な指示だったから、いつまでも覚えてられる自信はないぞ……」
ヒラヒラ…
会社員「おおっ、これはビラ!?」
会社員「よかった……! これにメモすればもう大丈夫だ!」カキカキ
司会者「賞金がかかった最後の問題です。亀のような怪獣の名前は?」
回答者「なんだっけ……」
回答者(ゴジラじゃないし、キングギドラでもないし、モスラもちがう……)
ヒラヒラ…
回答者(あれは……カメラメーカーのビラ?)
回答者「思い出した! ガメラだ!」
司会者「正解! 賞金1000万円!」
回答者「よっしゃあ!!!」
――
社長「――バイト君!」
バイト「な、なんですか社長!」
バイト(もしかして、ビラを全部捨てた件がバレたか!?)
社長「とんでもないことをしてくれたね!」
バイト「す、すみませんっ……!」
社長「なにを謝るんだね?」
バイト「へ?」
社長「今、うちのカメラを欲しいという注文が殺到してるんだよ!」
社長「原因は君のビラ配りだとしか考えられない! よくやってくれた!」
バイト「はぁ……」
バイト(全く心当たりないけど……売り上げが伸びたみたいだな)
バイト「だったら時給上げてくれません?」
社長「もちろんだとも!」
バイト(ラッキー!)
社長「バイト君」
バイト「なんでしょう、社長?」
社長「今度、大口の客が、ウチのカメラの性能を見たいっていうんだ」
社長「デモンストレーションのようなイベントを行うから、君も手伝ってくれ」
バイト「分かりました、社長!」
社長「えー、本日はお集まりいただきありがとうございます」
社長「今日は我が社のカメラの性能を見ていただきたいと存じます」
社長「ではバイト君、用意して」
バイト「はい、社長」カチャカチャ
バイト「セッティングOKです!」
社長「ありがとう。皆さま、あちらの画面をご覧下さい!」
社長「本日は設置者の許可を頂き、ある場所にある当社製監視カメラの映像を見て頂きます」
社長「当社の監視カメラは、録画はもちろん、音までしっかりと録音します!」
ジーッ
「おおっ!」
「鮮明に映ってるな!」
「うん、これは採用で決まりかな」
社長(よしよし、いい調子だ)
社長「……ん? あそこに映ってるの……君じゃないか?」
バイト「ホントだ。道路に立ち止まって何してんだろ」
バイト「……あ」
バイト『……面倒になってきた』
バイト『ビラ配りなんてやってらんねー、全部捨てちまえ!』バサァッ
社長「……おい、これはどういうことだね?」
バイト「あ……いや……これはその……」
バイト(もっと周囲に目を配っておくべきだった……)
おわり
こち亀の大原部長の台詞を思い出す内容だった