―コンビニ―
老人「ビールをもらおうかの」
店員「では、年齢確認ボタンを押して下さい」
老人「貴様、ワシが未成年に見えるのか！？」
店員「そうではありませんが、決まりですので……」
老人「決まりなど絶対的なものではなかろう！ もっと臨機応変に対応せんかい！」
店員「しかし、押していただかないと商品をお売りできないんですよ」
老人「……もうよせ。おぬしの狙いはバレている」
店員「！」
老人「このボタン……核ミサイル発射ボタンなんじゃろ？」
店員「……ちっ」
元スレ
店員「年齢確認ボタンを押して下さい」老人「ワシが未成年に見えるのか！？」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1552062710/
店員「なぜ分かった？」
老人「伊達に長生きしとらんからのう。顔を見れば、なにを考えているかぐらいだいたい分かる」
老人「どうせ核ミサイルを作ったはいいが、自分では発射ボタンを押す勇気がなかったので」
老人「レジを改造し、コンビニ店員になりすまし、他人に押させようとしたってとこじゃろ？」
店員「正解だよ……なにもかもな」
店員「だったら仕方ない」
老人「？」
店員「自分で押すしかないなァ！」
ﾎﾟﾁｯ
老人「し、しまったァ！！！」
店員「ふ、ふへへへ……ふははははははっ！ 押しちまったよ……！」
店員「たった今、宇宙の人工衛星から特大の核ミサイルが発射されたァ！」
店員「五分後には、日本全土は廃墟となるのだァ！！！」
老人「……そうはさせん！」
店員「どうするつもりだ！？」
老人「このワシが核ミサイルを止めてみせるッ！」
テレビ『では本日の天気予報です』
テレビ『まもなく日本に核ミサイルが降るでしょう』
テレビ『推測される爆発の規模は、日本全土を巻き込む模様です』
テレビ『もちろん傘では防げませんので、傘を持ち歩く必要はないでしょう』
「マジかよ！」 「核ミサイルだと！？」 「オシマイだー！」
ｻﾞﾜｻﾞﾜ… ｻﾞﾜｻﾞﾜ…
妻の遺影の前に座る老人。
老人「婆さん……」
老人「おぬしと結婚してから戦いは控えていたが、久々に戦うことになってしまったよ」
老人「どうか、許して欲しい」
老人「この竹槍を手にするのは、何十年ぶりかのう」ｶﾞｼｯ
老人「いざ出陣じゃあ！！！」
B-29「待てよ、一人で行くつもりか？」
老人「おぬしは……B-29！？」
B-29「核ミサイルを落としに行くんだろ？ 俺も付き合うぜ」
B-29――いわずと知れたアメリカの爆撃機。
太平洋戦争時、幾度となく竹槍を持った若き日の老人と戦った永遠のライバルである。
老人「……ええのか？」
B-29「日本にもアメリカの人間はいるからな」
B-29「それに日本が滅びたら、アメリカにもどんな悪影響があるか分からねえ」
B-29「いずれにせよ、指をくわえて見てるわけにはいかねえよ」
B-29「昔は殺り合った仲だが……今は同盟を組むとしようぜ」
老人「日米同盟ってやつじゃのう！」
ガシィッ！
握手する二人。
B-29「乗りな」ﾌﾞﾙﾙﾙﾙ…
老人「おぬしに乗るなど、なんだか不思議な気分じゃわい」
B-29「乗り心地はよくねえぞ？」
老人「かまわんよ」
B-29「行くぜ！」
ギュオオオオオオオッ！！！
ブオオオオオオオオッ！
老人「ほーっ、速いのう！ まだまだ現役でやれるんじゃないか？」
B-29「おだてるなよ」
B-29「あと三分後には着弾すんだろ？ そろそろ肉眼で見えてもいい頃だが――」
ｷﾗｯ
老人「見えた！」
老人「あれじゃ！ あれが核ミサイルじゃ！」
B-29「うし！ 突っ込むぜ！」
ブオオオオオオオオオオッ！！！
B-29「目前まで来たぞ！」
B-29「どうすんだ！？ 竹槍でブッ刺して爆破すんのか！？」
老人「いや……ここで爆破しても日本に余波が及ぶ恐れがある」
老人「宇宙空間まで押し上げるんじゃ！」
B-29「分かったぜ！」
老人とB-29は協力して、ミサイルを宇宙に追い出すことにした。
ｸﾞｸﾞｸﾞ…
老人「うおおおおおおおおおおおおおおおおっ！！！」
B-29「うおおおおおおおおおおおおおおおおっ！！！」
老人「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ！！！」
B-29「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ！！！」
ｸﾞｸﾞｸﾞ… ｸﾞｸﾞｸﾞ…
ミサイルを上空へ押し上げていく。
二人はついに宇宙空間にたどり着いた。
老人「ここまで来ればええじゃろう」
B-29「ああ、汚染物質が地球に降り注ぐこともないだろ」
老人「ではこの核ミサイルに……竹槍をブッ刺すぞい！」
B-29「爆破してやれっ！」
ザクッ！
ドゴォォォォォォォォォォン！！！！！
テレビ『たった今、核ミサイルが宇宙空間で爆発したことが明らかになりました』
テレビ『日本は救われたのです！』
テレビ『今日はこれから晴れるでしょう！』
「やったーっ！」 「奇跡だ！」 「助かったーっ！」
店員「なんて奴だ……」
店員「あの爺さん、我が身を犠牲にして日本を救いやがった……」
店員「俺の……負けだ……！」ｶﾞｸｯ
ｷﾞｭｩｩｩｩｩﾝ…
店員「――ん？」
ギュウウウウウウンッ！
店員「あ、あれは……！？ まさか……！？」
老人「ふぅ～、久々に死ぬかと思ったわい」
B-29「俺もだぜ」
店員「爺さん、生きてたのか！」
老人「ワシはあの太平洋戦争を生き抜いた男じゃぞ？ それに比べればこれくらい屁じゃないわい」
店員「よかった……」
老人「おいおい、泣くでない。このひよっ子めが……」
老人「ところで、おぬしいくつじゃ？」
店員「18です」
B-29「18！？ 18でこんな大それたことをやったのか！ とんでもねえな！」
店員「幼稚園の頃から武器や兵器の開発が得意だったもので……」
老人「……未成年には見えなかったわい」
―おわり―
