男「朝食にはトーストを一枚、トーストの上には薄いハムが乗っている」
男「チーズの時もあるが、どちらかというと僕はハムのほうが好きだ」
男「それを牛乳でもってして慌ただしく胃袋に流し込む」
男「そうしたら自分でアイロンをかけたワイシャツを着て、社会人の証であるネクタイを締める」
男「ジャケットを羽織れば、もうどこに出しても恥ずかしくないサラリーマンの出来上がり」
元スレ
男「僕は社会の歯車だ」 女「おこがましいぞ」
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男「そうして10分で作り上げた真っ当な大人を身にまとい、汗水流して時には涙をこらえ仕事に励む」
男「仕事が終われば、まっすぐ家に帰る」
男「そんなローテーションを毎日だ。毎日毎日毎日毎日」
男「そうしていると、俺は社会の歯車なんだなって……。俺の人生って一体なんなんだろうって思えてくるんだ」
男「なあ、君はどう思う?」
女「ダウト」
男「……?」
女「『仕事が終わればまっすぐ帰る……』?まっすぐ帰ってないじゃん。私と飲みに出てるじゃん」
男「人は誰でも幸せ探す旅人のようなものだからな……幸せそれすなわち仕事終わりの生中」
女「ゴダイゴじゃないのかよ」
男「うむ」
女「それに自分を社会の歯車だなんて、ちょっと思い上がりもいいところじゃないかな」
男「では僕は一体……」
女「月並みな言葉だけど、君や私の代わりはいくらでもいるんだ。君がいなくなったところで社会はまわるのさ」
女「そうだな、せいぜいが歯車を構成する凹凸の一つぐらいじゃないの?」
男「私が死んでも代わりはいるもの……ってやつだね。僕が死んでも、三人目の僕がその穴を埋めるわけだ」
女「なに?君はクローン培養でもされてるの?」
女「というか既に二人目なのかよ。一人目何処行った」
男「優しさと夢の源へ……」
女「相変わらずアニメ映画が好きなんだな」
男「実写も好きだよ」
女「さいですか」
男「話をまとめると、僕は社会の歯車ではないと?」
女「そうだね」
男「つまり僕は歯車を整備する人で、最期は社会の歯車に巻き込まれて死ぬってことか」
女「また随分古い映画をもってきたね」
男「わかるんだ」
女「まあ私も映画好きだから」
男「……しゅき」
女「やめろ、気持ち悪い」
男「さて、そんなこんなですが終電の時間が差し迫って参りました」
女「ああ、もうそんな時間か~」
男「……」
女「なによ?」
男「僕を連れてってくれませんか?」
女「なに?口説いてるの?にしては随分、女々しいわね」
男「いえ、貴方が乗る電車に一緒に乗せていってほしいのです」
女「……おいおい、なんだかプロポーズじみた台詞になってきたぞ」
男「違うんだ、僕はただ社会の歯車になりたいだけなんです」
女「いったいこの会話は何処に行きつくんだ……?」
男「僕を、タダで機械の体にしてくれる星へ連れてってください!」
女「物理的に歯車になる気かよ!?というか、それだと歯車じゃなくてネジになっちまうぞ!」
男「メーテル!」
女「哲郎!」
https://www.youtube.com/watch?v=Bot9lsuIbfM
銀河鉄道999
歌 ささきいさお
作詞 橋本淳 作曲 平尾昌晃
男「……」
女「ゴダイゴじゃないのかよ」
おわり