教師「今日は抜き打ちテストを行う」
え~っ!!!
友人「うえー、かったりい……」
男「そうか? むしろ普通の授業より楽だろ」
友人「お前はよく本読むし、国語系は得意だからなぁ。親父さんが社長だし」
男「親父は関係ないだろ」
元スレ
国語の問題「作者の気持ちを答えよ」男「この作者、死にたがってる!」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1551517785/
問3『この時の作者の気持ちを答えよ』
友人「なんだこの問題? くっだらねー」
友人「作者の気持ちなんて、“早く仕事終わらせたい”とか“晩飯何にしよう”とかに決まってんじゃん!」
男「……」
教師「コラ、テスト中に喋るな! 0点にするぞ!」
男(作者の気持ち……考えてみるか)
たかしは必死に叫んだ。
「さあ、決死の死闘をしようではないか!」
すると、花子は死神のような微笑みを浮かべる。
「派手に死に化粧してあげるわ!」
その時、死語が大好きなひろしが現れ――
男(問題に使われてるこの小説、やたら“死”って文字が多いな……)
男(しかも、この台詞――)
太郎は高らかにこう宣言した。
「人生の終着点は死だ。そして、誰もがその終着点にたどり着くためのスイッチを持っている。
あとはそれを自分で押すか、他人に任せるか、それだけの違いなのさ。
もちろん、この私は自分でスイッチを押させてもらうよ」
男(この作者、まさか……!?)
男「先生!」
教師「どうした?」
男「俺にはこの作者の気持ちが分かりました」
教師「ほう、さすがだな」
男「この作者、死にたがってる!!!」
教師「な、なんだと……!?」
友人「死にたがってるって、どういうことだよ!?」
男「見ろ、問題に使われてるこの小説を。やたらと“死”という文字が使われてる」
男「しかも、この太郎の台詞……自殺を暗示しているものだというのは明らかだ」
友人「た、たしかに……!」
男「先生、今すぐこの作者のところに行きましょう!」
教師「しかし……今は授業中でテスト中……」
男「こうしてる間にも、作者は死んでしまうかもしれないんですよ!」
教師「わ、分かった……すぐに向かおう!」
教師「だが、作者がどこに住んでいるのか分からんのでは……」
男「このテスト問題は、どこから入手したものなんです?」
教師「問題集からコピーしたものだが……」
男「だったら、その問題集を出版した会社に問い合わせれば分かるかも!」
教師「なるほど!」
教師「あー、そうですかー……分かりました……」
教師「ダメだ、個人情報は教えてくれんそうだ。大手出版社だから、こういうところはしっかりしている」
男「でしたら、次は俺に電話させて下さい」
教師「無駄だと思うよ?」
……
男「教えてもらえました」
教師「なんだと!? これじゃ私の教師としてのプライドがズタボロだ!」
男「そんなことより、すぐ作者の自宅に向かわないと!」
教師「そうだな、車を出そう! 二人ともついてこい!」
男「はいっ!」
友人「え、俺も!?」
ブロロロロロ…
教師「しゅっぱーつ!」
男「急いで下さい、先生!」
教師「ああ、分かってる! 舌噛むなよ!」
友人「……」
男「どうした?」
友人「今の俺の気持ちを答えよ」
男「“なんで俺まで”ってところかな」
友人「正解」
ブオオオオオオオオ…
友人「ひいいいっ! 飛ばしすぎィ! ここ40km/h制限っすよ!?」
男「先生、運転上手いですね」
教師「これでも教師になるかF1レーサーになるかギリギリまで悩んでたからね。ふんっ!」
ギャルルッ
友人「公道でドリフトしないでぇぇぇ!!!」
キキィーッ!
教師「着いた、このマンションだ」
友人「ひゃ~、さすが作家様、立派なマンションに住んでやがる」
男「さっそく部屋へ向かおう! 404号室だ!」
友人「4が多いな……ちょっと不安になってきたぜ」
タタタッ タタタッ タタタッ
ピンポーン…
教師「……誰も出ないな」
友人「カギもかかってるし、留守なんじゃないっすか?」
男「……」サッ
友人「本のしおり? そんなもんどうするつもり――」
男「……」カチャカチャ
ガチャッ
友人「しおりでピッキングしやがった!」
バァンッ!
男「!」
教師「!」
友人「!」
女「……」ブラーン…
友人「や、やべえ、首吊ってるぞ!」
男「床に下ろすんだ!」
女「う、うう……」
友人「よかった、首を吊って間もなかったのか、まだ生きてる!」
教師「だが、あと数分遅ければおそらく……よく作者の気持ちに気づいたな、偉いぞ! 100点だ!」
男「えへへ……」
女「わ、私は……ゲホッ、ゲホッ!」
男「無理にしゃべらないで」
友人「まったく人騒がせな作家様だぜ……」
女「……」
男「なぜ、こんなことを?」
女「私は若くして作家になれたのだけど、すぐにスランプに陥ってしまって……」
女「自分が納得できるような作品を書けなくなってしまったの」
女「才能が枯れてしまったことに気づいた私は、絶望して……」
男「才能が枯れた? そんなことはありませんよ」
女「えっ?」
男「テスト問題に使われてたあなたの小説――とても素晴らしかった」
男「あの作品は、すぐ才能が枯れてしまうような作家が書ける代物ではない」
男「納得できる作品を書けなかったとのことですが、きっとすぐ書けるようになりますよ」
男「なんだったら、いっそ本を書き下ろしてみませんか」
女「なんなの? あなた何者なの?」
友人「実はこいつの親父、大手出版社で社長をしてるんです」
女「ええっ!?」
教師(そうか、さっき住所を教えてもらえたのも社長の御曹司パワーだったのか! おのれ御曹司!)
男「いかがでしょう? 死ぬのは一度やめて、もう一度ゆっくりやり直してみませんか?」
女「はい……」
女「それに私、あなたと話してたらどんどん執筆意欲が湧いてきちゃった!」
女「これならきっと、いい小説を書けそう!」
男「それはよかった!」
女「ようし、さっそく執筆を始めよっと!」カタカタ
友人「いやー間一髪でしたね、先生」
教師「ああ、若い命が失われてしまうところだった」
友人「しかし、分からないなぁ。スランプだったのにどうして急に意欲が……?」
教師「分からないのかね?」
友人「ええ、なんでだろ……?」
教師「だとしたら、君はまだまだ人生経験が不足しているということさ」
男「タイピング速いですね!」
女「私、調子がいい時は指が速く動くの!」カタカタ
アハハハ… ウフフフ…
やがて――
プルルルル…
男「もしもし」
女『新作、出来たわよ!』
男「え、ホント? 編集部に話は通してあるからすぐにでも出版できるよ!」
女『ありがとう!』
女『でも、もし売れなかったら……』
男「大丈夫、自分の力を信じて! 絶対に売れるよ!」
こうして女の新作書き下ろし小説は発売の時を迎えた。
友人「新作、メチャクチャ売れて、どんどん刷られてるらしいですね!」
女「ありがとう、嬉しいわ」
友人「これぞ重版デライ!」
教師「出来(しゅったい)な、0点」
女「あの……」
男「ん?」
女「よかったら、私の新作読んでみて」サッ
男「もちろん読ませてもらうよ。今までずっと読むのを我慢してたんだ」
女「読み終わったら……作者の気持ちを答えてみて」
男「!」
男「ああ……絶対正解してみせるよ」
女「……」ドキドキ
男「タイトルは……『女と子という字を並べると』か」
好子(よしこ)は晩ご飯が大好物のハンバーグだったので、大いに喜んだ。
「わぁい、ハンバーグ大好き!」
好景気だった頃の日本経済を思わせる好子の大らかな笑顔は、
好色で知られる大次郎にとっても好感触であった。
男(やたら、“好”の文字が多いな……)
男(そうか、分かったぞ!)
男「ようやく君の気持ちが分かったよ」
女「えっ……」
男「答えてもいいかい?」
女「うん」
男「“あなたのことが好き”……かな?」
女「ううん、違う」
男「えっ」
女「正解は――あなたのことが大好き!」
男「くっ……やられたよ」
教師「50点だな。今日は学校休んで、二人で愛の補習に行ってこい!」
~END~
やっぱりssはこういうのだよな