1 : 以下、?... - 2019/03/02 18:09:45.868 FZsGwVlR0 1/24

教師「今日は抜き打ちテストを行う」


え~っ!!!


友人「うえー、かったりい……」

「そうか? むしろ普通の授業より楽だろ」

友人「お前はよく本読むし、国語系は得意だからなぁ。親父さんが社長だし」

「親父は関係ないだろ」

元スレ
国語の問題「作者の気持ちを答えよ」男「この作者、死にたがってる!」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1551517785/

6 : 以下、?... - 2019/03/02 18:13:11.732 FZsGwVlR0 2/24

問3『この時の作者の気持ちを答えよ』


友人「なんだこの問題? くっだらねー」

友人「作者の気持ちなんて、“早く仕事終わらせたい”とか“晩飯何にしよう”とかに決まってんじゃん!」

「……」


教師「コラ、テスト中に喋るな! 0点にするぞ!」

9 : 以下、?... - 2019/03/02 18:15:32.300 FZsGwVlR0 3/24

(作者の気持ち……考えてみるか)


たかしは必死に叫んだ。

「さあ、決死の死闘をしようではないか!」

すると、花子は死神のような微笑みを浮かべる。

「派手に死に化粧してあげるわ!」

その時、死語が大好きなひろしが現れ――


(問題に使われてるこの小説、やたら“死”って文字が多いな……)

11 : 以下、?... - 2019/03/02 18:19:15.519 FZsGwVlR0 4/24

(しかも、この台詞――)


太郎は高らかにこう宣言した。

「人生の終着点は死だ。そして、誰もがその終着点にたどり着くためのスイッチを持っている。
 あとはそれを自分で押すか、他人に任せるか、それだけの違いなのさ。
 もちろん、この私は自分でスイッチを押させてもらうよ」


(この作者、まさか……!?)

13 : 以下、?... - 2019/03/02 18:22:26.723 FZsGwVlR0 5/24

「先生!」

教師「どうした?」

「俺にはこの作者の気持ちが分かりました」

教師「ほう、さすがだな」

「この作者、死にたがってる!!!」

教師「な、なんだと……!?」

15 : 以下、?... - 2019/03/02 18:26:05.664 FZsGwVlR0 6/24

友人「死にたがってるって、どういうことだよ!?」

「見ろ、問題に使われてるこの小説を。やたらと“死”という文字が使われてる」

「しかも、この太郎の台詞……自殺を暗示しているものだというのは明らかだ」

友人「た、たしかに……!」

「先生、今すぐこの作者のところに行きましょう!」

教師「しかし……今は授業中でテスト中……」

「こうしてる間にも、作者は死んでしまうかもしれないんですよ!」

教師「わ、分かった……すぐに向かおう!」

17 : 以下、?... - 2019/03/02 18:29:22.629 FZsGwVlR0 7/24

教師「だが、作者がどこに住んでいるのか分からんのでは……」

「このテスト問題は、どこから入手したものなんです?」

教師「問題集からコピーしたものだが……」

「だったら、その問題集を出版した会社に問い合わせれば分かるかも!」

教師「なるほど!」

18 : 以下、?... - 2019/03/02 18:32:52.131 FZsGwVlR0 8/24

教師「あー、そうですかー……分かりました……」

教師「ダメだ、個人情報は教えてくれんそうだ。大手出版社だから、こういうところはしっかりしている」

「でしたら、次は俺に電話させて下さい」

教師「無駄だと思うよ?」

……

「教えてもらえました」

教師「なんだと!? これじゃ私の教師としてのプライドがズタボロだ!」

「そんなことより、すぐ作者の自宅に向かわないと!」

教師「そうだな、車を出そう! 二人ともついてこい!」

「はいっ!」

友人「え、俺も!?」

20 : 以下、?... - 2019/03/02 18:36:23.678 FZsGwVlR0 9/24

ブロロロロロ…

教師「しゅっぱーつ!」

「急いで下さい、先生!」

教師「ああ、分かってる! 舌噛むなよ!」

友人「……」

「どうした?」

友人「今の俺の気持ちを答えよ」

「“なんで俺まで”ってところかな」

友人「正解」

21 : 以下、?... - 2019/03/02 18:38:30.739 FZsGwVlR0 10/24

ブオオオオオオオオ…

友人「ひいいいっ! 飛ばしすぎィ! ここ40km/h制限っすよ!?」

「先生、運転上手いですね」

教師「これでも教師になるかF1レーサーになるかギリギリまで悩んでたからね。ふんっ!」

ギャルルッ

友人「公道でドリフトしないでぇぇぇ!!!」

22 : 以下、?... - 2019/03/02 18:40:37.858 FZsGwVlR0 11/24

キキィーッ!

教師「着いた、このマンションだ」

友人「ひゃ~、さすが作家様、立派なマンションに住んでやがる」

「さっそく部屋へ向かおう! 404号室だ!」

友人「4が多いな……ちょっと不安になってきたぜ」

タタタッ タタタッ タタタッ

24 : 以下、?... - 2019/03/02 18:43:28.556 FZsGwVlR0 12/24

ピンポーン…

教師「……誰も出ないな」

友人「カギもかかってるし、留守なんじゃないっすか?」

「……」サッ

友人「本のしおり? そんなもんどうするつもり――」

「……」カチャカチャ

ガチャッ

友人「しおりでピッキングしやがった!」

26 : 以下、?... - 2019/03/02 18:46:10.738 FZsGwVlR0 13/24

バァンッ!

「!」

教師「!」

友人「!」


「……」ブラーン…


友人「や、やべえ、首吊ってるぞ!」

「床に下ろすんだ!」

27 : 以下、?... - 2019/03/02 18:49:28.773 FZsGwVlR0 14/24

「う、うう……」

友人「よかった、首を吊って間もなかったのか、まだ生きてる!」

教師「だが、あと数分遅ければおそらく……よく作者の気持ちに気づいたな、偉いぞ! 100点だ!」

「えへへ……」

「わ、私は……ゲホッ、ゲホッ!」

「無理にしゃべらないで」

友人「まったく人騒がせな作家様だぜ……」

29 : 以下、?... - 2019/03/02 18:53:14.139 FZsGwVlR0 15/24

「……」

「なぜ、こんなことを?」

「私は若くして作家になれたのだけど、すぐにスランプに陥ってしまって……」

「自分が納得できるような作品を書けなくなってしまったの」

「才能が枯れてしまったことに気づいた私は、絶望して……」

「才能が枯れた? そんなことはありませんよ」

「えっ?」

30 : 以下、?... - 2019/03/02 18:56:49.933 FZsGwVlR0 16/24

「テスト問題に使われてたあなたの小説――とても素晴らしかった」

「あの作品は、すぐ才能が枯れてしまうような作家が書ける代物ではない」

「納得できる作品を書けなかったとのことですが、きっとすぐ書けるようになりますよ」

「なんだったら、いっそ本を書き下ろしてみませんか」

「なんなの? あなた何者なの?」

友人「実はこいつの親父、大手出版社で社長をしてるんです」

「ええっ!?」

教師(そうか、さっき住所を教えてもらえたのも社長の御曹司パワーだったのか! おのれ御曹司!)

31 : 以下、?... - 2019/03/02 19:00:08.507 FZsGwVlR0 17/24

「いかがでしょう? 死ぬのは一度やめて、もう一度ゆっくりやり直してみませんか?」

「はい……」

「それに私、あなたと話してたらどんどん執筆意欲が湧いてきちゃった!」

「これならきっと、いい小説を書けそう!」

「それはよかった!」

「ようし、さっそく執筆を始めよっと!」カタカタ

33 : 以下、?... - 2019/03/02 19:03:00.917 FZsGwVlR0 18/24

友人「いやー間一髪でしたね、先生」

教師「ああ、若い命が失われてしまうところだった」

友人「しかし、分からないなぁ。スランプだったのにどうして急に意欲が……?」

教師「分からないのかね?」

友人「ええ、なんでだろ……?」

教師「だとしたら、君はまだまだ人生経験が不足しているということさ」



「タイピング速いですね!」

「私、調子がいい時は指が速く動くの!」カタカタ

アハハハ… ウフフフ…

34 : 以下、?... - 2019/03/02 19:06:17.299 FZsGwVlR0 19/24

やがて――

プルルルル…

「もしもし」

『新作、出来たわよ!』

「え、ホント? 編集部に話は通してあるからすぐにでも出版できるよ!」

『ありがとう!』

『でも、もし売れなかったら……』

「大丈夫、自分の力を信じて! 絶対に売れるよ!」



こうして女の新作書き下ろし小説は発売の時を迎えた。

36 : 以下、?... - 2019/03/02 19:10:47.850 FZsGwVlR0 20/24

友人「新作、メチャクチャ売れて、どんどん刷られてるらしいですね!」

「ありがとう、嬉しいわ」

友人「これぞ重版デライ!」

教師「出来(しゅったい)な、0点」

「あの……」

「ん?」

「よかったら、私の新作読んでみて」サッ

「もちろん読ませてもらうよ。今までずっと読むのを我慢してたんだ」

37 : 以下、?... - 2019/03/02 19:12:57.569 FZsGwVlR0 21/24

「読み終わったら……作者の気持ちを答えてみて」

「!」

「ああ……絶対正解してみせるよ」

「……」ドキドキ

38 : 以下、?... - 2019/03/02 19:16:11.798 FZsGwVlR0 22/24

「タイトルは……『女と子という字を並べると』か」


好子(よしこ)は晩ご飯が大好物のハンバーグだったので、大いに喜んだ。

「わぁい、ハンバーグ大好き!」

好景気だった頃の日本経済を思わせる好子の大らかな笑顔は、
好色で知られる大次郎にとっても好感触であった。


(やたら、“好”の文字が多いな……)

(そうか、分かったぞ!)

40 : 以下、?... - 2019/03/02 19:19:04.122 FZsGwVlR0 23/24

「ようやく君の気持ちが分かったよ」

「えっ……」

「答えてもいいかい?」

「うん」

「“あなたのことが好き”……かな?」

42 : 以下、?... - 2019/03/02 19:21:26.646 FZsGwVlR0 24/24

「ううん、違う」

「えっ」

「正解は――あなたのことが大好き!」

「くっ……やられたよ」

教師「50点だな。今日は学校休んで、二人で愛の補習に行ってこい!」







~END~

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